(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158081
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 451
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072943
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】臼井 将人
(72)【発明者】
【氏名】中野 潤
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 弘臣
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 奈緒子
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB08
2C056EB27
2C056EB40
2C056EB41
2C056HA58
(57)【要約】
【課題】 吐出ヨレが発生しているノズルを個別的に正確に検出する。
【解決手段】 吐出不良ノズル検出部83は、(a)記録ヘッドでテストパターンをプリントシートにプリントし、(b)そのテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する。このテストパターンは、それぞれ、注目ノズルが不吐出ノズルとして設定され前記注目ノズルのドット位置にドットが形成されないようにしたライン状またはバンド状の複数のテストパターン画像を含み、その複数のテストパターン画像の注目ノズルは、主走査方向に沿って1ノズルずつずらされている。そして、吐出不良ノズル検出部83は、その読取画像における複数のテストパターン画像の濃度低下部分の濃度低下幅に基づいて、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントすべき画像に対応するインクを配列されたノズルで吐出する記録ヘッドと、
前記プリントすべき画像に対応するノズルを決定し、前記記録ヘッドに、前記ノズルからインクを吐出させる制御部と、
(a)前記記録ヘッドでテストパターンをプリントシートにプリントし、(b)前記テストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する吐出不良ノズル検出部とを備え、
前記テストパターンは、それぞれ、注目ノズルが不吐出ノズルとして設定され前記注目ノズルのドット位置にドットが形成されないようにしたライン状またはバンド状の複数のテストパターン画像を含み、
前記複数のテストパターン画像の前記注目ノズルは、主走査方向に沿って1ノズルずつずらされており、
前記吐出不良ノズル検出部は、前記読取画像における前記複数のテストパターン画像の濃度低下部分の濃度低下幅に基づいて、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定すること、
を特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記吐出不良ノズル検出部は、前記濃度低下幅が最大値であるテストパターン画像の前記注目ノズルの位置と前記濃度低下幅が最小値であるテストパターン画像の前記注目ノズルの位置との間にあるノズルを、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記吐出不良ノズル検出部は、前記テストパターンのプリントの前に、別のテストパターンを前記記録ヘッドで別のプリントシートにプリントし、前記別のテストパターンの読取画像における、前記吐出不良ノズルに起因する濃度欠損を検出し、検出した前記濃度欠損位置に基づいて、主走査方向における前記注目ノズルの位置の範囲を設定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記吐出不良ノズル検出部は、(a)前記テストパターンのプリントの前に、別のテストパターンを前記記録ヘッドで別のプリントシートにプリントし、前記別のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、不吐出となっている吐出不良ノズルを特定し、(b)特定した不吐出となっている前記吐出不良ノズルを除外して、吐出ヨレが発生している前記吐出不良ノズルを特定することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記読取画像の解像度は、前記記録ヘッドで前記プリントシートにプリントされる前記テストパターンの解像度より低いことを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれか1項記載の画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
あるインクジェット方式の画像形成装置は、記録ヘッドでテストパターンをプリントし、プリントされたテストパターンの画像に基づいて、記録ヘッドにおけるインクを吐出するノズルのうち、インクを正常に吐出できなくなった吐出不良ノズルを検出し、隣接ドットのインク量を増加させている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
別のインクジェット方式の画像形成装置は、テストパターンとして、ノズルごとに1ドット幅の縦線をプリントし、縦線の有無によって、不吐出となっているノズルを検出している(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-169760号公報
【特許文献2】特開2012-139901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の画像形成装置では、不吐出となっているノズルは検出されるものの、吐出ヨレ(インク着滴位置のずれ)が発生しているノズルであっても縦線が形成されるため、吐出ヨレ(インク着滴位置のずれ)が発生しているノズルを検出すること困難である。また、バンド状の単一濃度の画像であるテストパターンをプリントし、テストパターンの読取画像における濃度欠損の有無に基づいて、吐出不良が発生しているか否かを判定することはできるものの、吐出不良が発生しているノズルを個別的に正確に特定することは困難である。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、吐出ヨレが発生しているノズルを個別的に正確に検出する画像形成装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像形成装置は、プリントすべき画像に対応するインクを配列されたノズルで吐出する記録ヘッドと、前記プリントすべき画像に対応するノズルを決定し、前記記録ヘッドに、前記ノズルからインクを吐出させる制御部と、(a)前記記録ヘッドでテストパターンをプリントシートにプリントし、(b)前記テストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する吐出不良ノズル検出部とを備える。前記テストパターンは、それぞれ、注目ノズルが不吐出ノズルとして設定され前記注目ノズルのドット位置にドットが形成されないようにしたライン状またはバンド状の複数のテストパターン画像を含み、前記複数のテストパターン画像の前記注目ノズルは、主走査方向に沿って1ノズルずつずらされている。そして、前記吐出不良ノズル検出部は、前記読取画像における前記複数のテストパターン画像の濃度低下部分の濃度低下幅に基づいて、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出ヨレが発生しているノズルを個別的に正確に検出する画像形成装置が得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す画像形成装置10における記録ヘッド1a,1b,1c,1dの一例を示す平面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3に示す画像形成装置10においてプリントされるテストパターンの一例を示す図である。
【
図5】
図5は、吐出ヨレについて説明する図である。
【
図6】
図6は、吐出ヨレが発生しているノズルがある場合にプリントされるテストパターン画像101-1~101-Mの一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置によって正確に特定された吐出ヨレのノズル数の一例について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
実施の形態1.
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置の機械的な内部構成を説明する側面図である。この実施の形態に係る画像形成装置10は、プリンター、コピー機、ファクシミリ機、複合機などといった装置である。
【0014】
図1に示す画像形成装置10は、プリントエンジン10aと、シート搬送部10bとを備える。プリントエンジン10aは、プリントすべきページ画像をプリントシート(プリントシートなど)上に物理的に形成する。この実施の形態では、プリントエンジン10aは、ライン型のインクジェット方式のプリントエンジンである。
【0015】
この実施の形態では、プリントエンジン10aは、シアン、マゼンタ、イエロー、およびブラックといった4つのインク色に対応するライン型の記録ヘッド1a~1dを備える。
【0016】
図2は、
図1に示す画像形成装置10における記録ヘッド1a,1b,1c,1dの一例を示す平面図である。例えば
図2に示すように、この実施の形態では、各記録ヘッド1a,1b,1c,1dは、複数(ここでは3個)のヘッド部11を有する。それらのヘッド部11は、主走査方向に沿って配列されており、装置本体に対して着脱可能になっている。なお、記録ヘッド1a,1b,1c,1dのヘッド部11は、1つでもよい。記録ヘッド1a,1b,1c,1dのヘッド部11は、主走査方向に配列された吐出位置に対応して2次元状に配列されたノズルを備え、プリントすべき画像に対応するインクをそのノズルで吐出する。
【0017】
シート搬送部10bは、所定の搬送路に沿って、プリント前のプリントシートをプリントエンジン10aに搬送するとともに、プリント後のプリントシートをプリントエンジン10aから所定の排出先(排出トレイ10cなど)へ搬送する。
【0018】
シート搬送部10bは、メインシート搬送部10b1と循環シート搬送部10b2とを備える。両面プリントにおいて、メインシート搬送部10b1は、第1面のページ画像のプリントに使用するプリントシートをプリントエンジン10aへ搬送し、循環シート搬送部10b2は、所定枚数のプリントシートを滞留させつつ、プリントエンジン10aの後段から前段へプリントシートを搬送する。
【0019】
この実施の形態では、メインシート搬送部10b1は、プリントエンジン10aに対向して配置されプリントシートを搬送する環状の搬送ベルト2と、搬送ベルト2を懸架される駆動ローラー3および従動ローラー4と、搬送ベルト2ととともにプリントシートをニップする吸着ローラー5と、排出ローラー対6,6aとを備える。
【0020】
駆動ローラー3および従動ローラー4は、搬送ベルト2を周回させる。そして、後述の給紙カセット20-1,20-2から搬送されてきたプリントシートを吸着ローラー5がニップし、ニップされたプリントシートは、搬送ベルト2によって記録ヘッド1a~1dのプリント位置へ順番に搬送されていき、記録ヘッド1a~1dによりそれぞれの色の画像をプリントされる。そして、カラープリント完了後のプリントシートが排出ローラー対6,6aによって、排出トレイ10cなどに排出される。
【0021】
さらに、メインシート搬送部10b1は、複数の給紙カセット20-1,20-2を備えている。給紙カセット20-1,20-2は、プリントシートSH1,SH2を収容しており、リフト板21,24でプリントシートSH1,SH2を上方に押し上げてピックアップローラー22,25に当接させる。給紙カセット20-1,20-2に載置されたプリントシートSH1,SH2は上側から1枚ずつピックアップローラー22,25によって給紙ローラー23,26へピックアップされる。給紙ローラー23,26は、給紙カセット20-1,20-2からピックアップローラー22,25によって給紙されたプリントシートSH1,SH2を1枚ずつ搬送路上へ搬送するローラーである。搬送ローラー27は、給紙カセット20-1,20-2から搬送されてくるプリントシートSH1,SH2に共通な搬送路上の搬送ローラーである。
【0022】
循環シート搬送部10b2は、両面プリントの際にプリントシートをプリントエンジン10aの下流側の所定位置から上流側の所定位置(ここでは、後述のラインセンサー31の上流側の所定位置)へ戻す。循環シート搬送部10b2は、搬送ローラー41と、プリントエンジン10aに面するプリントシートの面を第1面から第2面へ切り替えるためにプリントシートの進行方向を反転させるスイッチバック搬送路41aを備える。
【0023】
さらに、画像形成装置10は、ラインセンサー31と、シート検知センサー32とを備える。
【0024】
ラインセンサー31は、プリントシートの搬送方向の垂直方向に沿って配置され、プリントシートの両端エッジ(両側面エッジ)の位置を検出する光学センサーである。例えば、ラインセンサー31は、CIS(Contact Image Sensor)である。この実施の形態では、ラインセンサー31は、レジストローラー28とプリントエンジン10aとの間に配置されている。
【0025】
シート検知センサー32は、プリントシートSH1,SH2の先端が搬送路上の所定の位置を通過したことを検知する光学式センサーである。ラインセンサー31は、シート検知センサー32によりプリントシートSH1,SH2の先端が検出された時点で、プリントシートの両端エッジの位置を検出する。
【0026】
なお、例えば、
図1に示すように、プリントエンジン10aは、プリントシートの搬送路の上方および下方の一方(ここでは上方)に配置され、ラインセンサー31は、プリントシートの搬送路の上方および下方の他方(ここでは下方)に配置され、循環シート搬送部10b2は、プリントエンジン10aより下流側からラインセンサー31より上流側へスイッチバックさせてプリントシートを搬送する。
【0027】
図3は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置10の電気的な構成を示すブロック図である。
図3に示すように、画像形成装置10は、
図1および
図2に示すような機械的構成を有する画像出力部71の他、さらに、操作パネル72、記憶装置73、画像読取装置74、およびコントローラー75を備える。
【0028】
操作パネル72は、画像形成装置10の筐体表面に配置され、液晶ディスプレイなどの表示装置72a、およびハードキー、タッチパネルなどの入力装置72bを備え、その表示装置72aでユーザーに対して各種メッセージを表示し、その入力装置72bでユーザー操作を受け付ける。
【0029】
記憶装置73は、画像形成装置10の制御に必要なデータ、プログラムなどを記憶する不揮発性の記憶装置(フラッシュメモリー、ハードディスクドライブなど)である。
【0030】
画像読取装置74は、プラテングラスおよび自動原稿給紙装置を備え、プラテングラス上に載置された原稿、または自動原稿給紙装置によって搬送されてくる原稿の画像を光学的に読み取り、その画像の画像データを生成する。
【0031】
コントローラー75は、プログラムに従ってソフトウェア処理を実行するコンピューター、所定のハードウェア処理を実行するASIC(Application Specific Integrated Circuit)などを備え、各種処理部として動作する。そのコンピューターは、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)などを備え、ROM、記憶装置73などに記憶されているプログラムをRAMにロードし、CPUで実行することで、(必要に応じてASICとともに)各種処理部として動作する。ここでは、コントローラー75は、制御部81、画像処理部82、吐出不良ノズル検出部83、および補正処理部84として動作する。
【0032】
制御部81は、画像出力部71(プリントエンジン10a、シート搬送部10bなど)を制御し、ユーザーにより要求されたプリントジョブを実行する。この実施の形態では、制御部81は、画像処理部82に所定の画像処理を実行させ、プリントエンジン10a(ヘッド部11)を制御してインクを吐出させてプリントシート上にプリント画像を形成する。画像処理部82は、RIP(Raster Image Processing)、色変換、ハーフトーニングなどの所定の画像処理を、プリントシートにプリントすべき画像の画像データに対して実行する。
【0033】
具体的には、制御部81は、プリントエンジン10aに、ユーザーにより指定されたプリント画像データに基づくユーザー原稿画像をプリントさせる。
【0034】
また、この実施の形態では、制御部81は、(a)ラインセンサー31によって検出されたプリントシートの両端エッジの位置に基づきプリントシートのセンター位置をシートセンター実際位置として特定し、(b)シートセンター実際位置に基づいてプリントすべき画像のセンター位置を調整する自動センタリング機能を有し、自動センタリング機能をハードウェア処理として実行する。具体的には、自動センタリング機能において、制御部81は、主走査方向に沿って、プリントすべき画像の描画位置を、プリントエンジン10aの基準センター位置とシートセンター実際位置との差分だけ変更させている。この実施の形態では、記録ヘッド1a~1dにおけるノズルは移動しないため、プリントすべき画像の描画位置に応じて、プリントすべき画像における各画素に対応するノズルが変更される。
【0035】
このように、制御部81は、(ここでは、プリントシートの位置に応じて)プリントすべき画像に対応するノズル(画像の各画素に対応するノズル)を決定し、記録ヘッド1a~1dに、ノズルからインクを吐出させる。
【0036】
吐出不良ノズル検出部83は、(a)記録ヘッド1a~1dでテストパターンをプリントシートにプリントし、(b)そのテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する。また、吐出不良ノズル検出部83は、検出した吐出不良ノズルを示す吐出不良ノズルデータ(ノズル番号など)を記憶装置73に記憶する。
【0037】
図4は、
図1~
図3に示す画像形成装置10においてプリントされるテストパターンの一例を示す図である。例えば
図4に示すように、このテストパターンは、それぞれ、注目ノズルが不吐出ノズルとして設定され注目ノズルのドット位置にドットが形成されないようにしたライン状またはバンド状の複数のテストパターン画像101-1~101-M(
図4では、M=5)を含む。この複数のテストパターン画像101-1~101-Mの注目ノズルN(1)~N(M)は、例えば
図4に示すように、主走査方向に沿って1ノズルずつずらされている。そのため、複数のテストパターン画像101-1~101-Nにおける白筋101aの位置が1ドットずつずれている。
【0038】
また、上述のテストパターンの読取画像は、ラインセンサー31や画像読取装置74を使用して取得される。ラインセンサー31でテストパターンの画像読取を行う場合、プリントエンジン10aでテストパターンがプリントされたプリントシートが、循環シート搬送部10b2を使用してラインセンサー31の位置に搬送される。
【0039】
さらに、この実施の形態では、上述の読取画像の解像度(スキャン解像度)は、記録ヘッド1a~1dでプリントシートにプリントされるテストパターンの解像度(プリント解像度)より低い。例えば、上述の読取画像の解像度は、プリント解像度の4分の1以下とされる。例えば、プリント解像度が1200dpiであり、上述の読取画像の解像度は300dpiである。
【0040】
そして、吐出不良ノズル検出部83は、上述の読取画像における複数のテストパターン画像の濃度低下部分の濃度低下幅に基づいて、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。
【0041】
具体的には、吐出不良ノズル検出部83は、上述の濃度低下幅が最大値であるテストパターン画像の注目ノズルの位置と上述の濃度低下幅が最小値であるテストパターン画像の注目ノズルの位置との間にあるノズルを、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。
【0042】
図5は、吐出ヨレについて説明する図である。例えば
図5に示すように、吐出ヨレが発生しているノズルについては、吐出されたインク液滴の着滴位置が、正常吐出の際の着滴位置から1ドット未満の幅でずれている。
図5では、ノズルN(3)で吐出ヨレが発生している場合を示している。
【0043】
図6は、吐出ヨレが発生しているノズルがある場合にプリントされるテストパターン画像101-1~101-Mの一例を示す図である。
【0044】
図5に示すようにノズルN(3)で吐出ヨレが発生している場合、例えば
図6に示すように、ノズルN(3)でインク吐出が行われるテストパターン画像101-1,101-2,101-4,101-5では、ノズルN(3)に対応する位置に1ドット未満の幅の白筋111が現れる。
【0045】
また、吐出ヨレが発生しているノズルN(3)がインク不吐出のノズルN(i)に指定されている場合、そのノズルN(3)に対応する位置に1ドット幅の白筋112が現れる。
【0046】
また、吐出ヨレが発生しているノズルN(3)および吐出ヨレが発生しているノズルN(3)の隣接ノズル(つまり、ノズルN(3)のドット位置に隣接するドット位置に対応するノズルN(2),N(4))以外のノズルがインク不吐出のノズルN(i)に指定されている場合(
図6では、i=1,5、つまり、テストパターン画像101-1,101-5において)、上述の白筋111とは別に独立して、そのノズルN(i)に対応する位置に1ドット幅の白筋112が現れる。
【0047】
また、吐出ヨレが発生しているノズルN(3)の隣接ノズル(ノズルN(2),N(4))のうち、吐出ヨレの着滴ずれ方向のノズル(ここでは、ノズルN(4))がインク不吐出のノズルN(i)に指定されている場合、そのノズルN(4)に対応する位置に1ドット未満の幅の白筋113が現れる。このとき、着滴ずれ(ずれ幅)が大きいほど、この白筋113の幅は狭くなる。
【0048】
他方、吐出ヨレが発生しているノズルN(3)の隣接ノズル(ノズルN(2),N(4))のうち、吐出ヨレの着滴ずれ方向とは反対方向のノズル(ここでは、ノズルN(2))がインク不吐出のノズルN(i)に指定されている場合、着滴ずれ幅に拘わらず、そのノズルN(2)に対応する位置に1ドット幅の白筋112が現れる。この場合、主走査方向において白筋111と白筋112が連続しているため、1本の白筋114となる。ここで、白筋114の幅は、白筋111の幅および白筋112の幅の合計となる。
【0049】
テストパターン画像101-1~101-5において
図6に示す区間(つまり、吐出ヨレが発生しているノズルN(3)に対応する位置を含む所定幅の区間)についての、テストパターンの読取画像における1画素の濃度(画素値)を、それぞれ、D(1)~D(5)とすると、次式のような関係式が成り立つ。
【0050】
D(2)>D(1)>D(5)≧D(3)>D(4)
【0051】
したがって、
図5および
図6に示す場合では、濃度低下幅(吐出ヨレのない正常濃度からの低下幅)が最大値であるテストパターン画像101-4の注目ノズルN(4)の位置と濃度低下幅が最小値であるテストパターン画像101-2の注目ノズルN(2)の位置との間にある位置のノズルN(3)が、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルとして特定される。
【0052】
図3に戻り、補正処理部84は、プリントすべき画像に対して、補正対象ノズルに対応する補正処理(ここでは、ハードウェア処理)を実行する。なお、この補正処理では、例えば、吐出異常ノズルに対応する画素の画像データ(画素値)が、インク不吐出となるように補正され、吐出不良ノズルに隣接するノズルに対応する画素の画像データ(画素値)が、その画素の濃度が高くなるように補正される。
【0053】
次に、上記画像形成装置10の動作について説明する。
【0054】
(a)補正処理の対象となるノズルの設定
【0055】
吐出不良ノズル検出部83は、所定のタイミングで吐出不良ノズルの検出動作を行う。吐出不良ノズルの検出動作では、まず、吐出不良ノズル検出部83は、(a)制御部81を使用して、画像出力部71に、上述のテストパターン(上述の複数のテストパターン画像101-1~101-M)をプリントシートへプリントさせ、ラインセンサー31や画像読取装置74を使用して、プリントシートにプリントされたテストパターンの読取画像(RGB画像データ、グレイスケール画像データなど)を取得する。
【0056】
そして、吐出不良ノズル検出部83は、テストパターンの読取画像についての主走査方向の濃度分布(つまり、複数のテストパターン画像101-1~101-Mについての読取画像の主走査方向の濃度分布)から、複数のテストパターン画像101-1~101-Mのそれぞれについての濃度低下幅を特定し、上述のようにして、特定した濃度低下幅に基づいてテストパターン画像101-j(上述の例ではj=3)を選択し、そのテストパターン画像101-jに対応するノズルN(j)を、吐出ヨレが発生しているノズルとして特定する。
【0057】
吐出不良ノズルが検出されると、吐出不良ノズル検出部83は、特定した吐出不良ノズルについての吐出不良ノズルデータ(ノズル番号などの識別情報)を記憶装置73に記憶する。
【0058】
このようにして、吐出不良ノズルデータにおいて補正処理の対象となるノズルが設定される。
【0059】
(b)プリント時の動作
【0060】
制御部81は、プリント要求を受け付けると、画像処理部82で、そのプリント要求により指定された画像に対して画像処理を実行して、プリントすべき画像の画像データを取得し、画像出力部71で、プリントシートを搬送し、その画像データに基づいて、そのプリントすべき画像をそのプリントシート上にプリントする。
【0061】
その際、吐出不良ノズル検出部83は、プリント開始前に記憶装置73から吐出不良ノズルデータを読み出して補正対象ノズルを特定しておき、ラインセンサー31でプリントシートの位置が検出されると、(a)上述の画像における各画素に対応するノズルを特定し、(b)上述の画像について使用される補正対象ノズルを特定し、(c)その補正対象ノズルに対応する補正処理を実行する。これにより、その画像において、補正対象ノズル(および主走査方向における吐出不良ノズルの隣接ノズル)に対応する箇所に対して補正処理が実行される。そして、制御部81は、補正処理後の画像データに基づいて、上述のプリントを実行する。
【0062】
以上のように、上記実施の形態1によれば、吐出不良ノズル検出部83は、(a)記録ヘッド1a~1dでテストパターンをプリントシートにプリントし、(b)そのテストパターンの読取画像に基づいて吐出不良ノズルを検出する。このテストパターンは、それぞれ、注目ノズルが不吐出ノズルとして設定され注目ノズルのドット位置にドットが形成されないようにしたライン状またはバンド状の複数のテストパターン画像を含み、その複数のテストパターン画像の注目ノズルは、主走査方向に沿って1ノズルずつずらされている。そして、吐出不良ノズル検出部83は、その読取画像における複数のテストパターン画像の濃度低下部分の濃度低下幅に基づいて、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。
【0063】
これにより、吐出ヨレが発生しているノズルが個別的に正確に検出される。特に、読取画像の解像度がプリント解像度より低くても、吐出ヨレが発生しているノズルが個別的に正確に検出される。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置によって正確に特定された吐出ヨレのノズル数の一例について説明する図である。
【0065】
図7に示す例において、本実施の形態に係る画像形成装置では、プリント解像度が1200dpiであり、読取画像の解像度が300dpiであり、プリントされたテストパターンの主走査方向の範囲における吐出ヨレのノズル数が86であるときに、その86個のノズルのうちの77個(89.5%)が正確に特定されている。
【0066】
他方、比較例#1,#2は、通常のバンド状のテストパターンについての濃度低下幅に基づいて吐出ヨレノズルを特定したものであり、比較例#1では、読取画像の解像度が1200dpiとされ、比較例#2では、読取画像の解像度が300dpiとされている。そして、比較例#1では、プリントされたテストパターンの主走査方向の範囲における90個の吐出ヨレのうちの82個(91.1%)が正確に特定されており、比較例#2では、プリントされたテストパターンの主走査方向の範囲における76個の吐出ヨレのうちの23個(30%)が正確に特定されている。
【0067】
このように、本実施の形態に係る画像形成装置では、読取画像の解像度が低いにも拘わらず、読取画像の解像度が高い場合(プリント解像度と同じである場合)と同等の検出率(89.5%)が得られている。また、本実施の形態に係る画像形成装置では、所要時間も、比較例#1と同等となっている。
【0068】
実施の形態2.
【0069】
実施の形態2では、吐出不良ノズル検出部83は、実施の形態1におけるテストパターンのプリントの前に、別のテストパターン(例えば単一濃度のバンド状のテストパターン)を記録ヘッド1a~1dで別のプリントシートにプリントし、その別のテストパターンの読取画像における、吐出不良ノズルに起因する濃度欠損を検出し、検出した濃度欠損位置に基づいて、主走査方向における注目ノズルの位置の範囲を設定する。
【0070】
つまり、吐出不良ノズル検出部83は、この別のテストパターンによって、吐出ヨレのノズルのおおよその位置を特定し、その位置を中心として所定幅にノズルの位置を上述の注目ノズルの位置の範囲とする。
【0071】
なお、実施の形態2に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1と同様であるので、その説明を省略する。
【0072】
実施の形態3.
【0073】
実施の形態3では、吐出不良ノズル検出部83は、(a)実施の形態1におけるテストパターンのプリントの前に、別のテストパターン(例えば複数のノズルのそれぞれに対応した1ドット幅の縦線のテストパターン)を記録ヘッド1a~1dで別のプリントシートにプリントし、その別のテストパターンの読取画像の濃度分布に基づいて、不吐出となっている吐出不良ノズルを特定し、(b)特定した不吐出となっている吐出不良ノズルを除外して、吐出ヨレが発生している吐出不良ノズルを特定する。これにより、不吐出となっている吐出不良ノズルに対して、吐出ヨレのノズルの検出動作が行われないため、所要時間が短くなるとともに、不吐出となっている吐出不良ノズルが吐出ヨレのノズルとして誤って検出されることが抑制される。
【0074】
なお、実施の形態3に係る画像形成装置のその他の構成および動作については実施の形態1または2と同様であるので、その説明を省略する。
【0075】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、例えば、インクジェット方式の画像形成装置に適用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1a~1d 記録ヘッド
10 画像形成装置
83 吐出不良ノズル検出部
84 補正処理部