(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158084
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】タイヤ評価用雪面の形成方法
(51)【国際特許分類】
B60C 19/00 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B60C19/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072948
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡史
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131LA22
3D131LA40
(57)【要約】
【課題】凹凸が抑えられた均一な雪面を形成することができる技術を提供する。
【解決手段】 タイヤ評価用雪面の形成方法は、ドラム2の内面に設けられた圧雪層6の表面6aに形成されるタイヤ評価用雪面の形成方法である。この形成方法は、ドラム2の内面側を走行するタイヤTを支持する支持機構4に、圧雪層6を切削するための切削刃32を設ける第1工程と、切削刃32の先端32a1が圧雪層6の表面6aから所定深さとなるように切削刃32を圧雪層6に接触させ、ドラム2を所定の周速で回転させつつ、圧雪層6の表面6aの第1位置P1と第2位置P2との間で切削刃32を圧雪層6の幅方向に平行移動させる第2工程と、圧雪層6が所定の厚みになるまで、第2工程を繰り返す第3工程と、を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラムの内面に設けられた圧雪層表面に形成されるタイヤ評価用雪面の形成方法であって、
前記ドラムの内面側を走行するタイヤを支持する支持機構に、前記圧雪層を切削するための切削刃を設ける第1工程と、
前記切削刃の先端が前記圧雪層表面から所定深さとなるように前記切削刃を前記圧雪層に接触させ、前記ドラムを所定の周速で回転させつつ、前記圧雪層表面の第1位置と第2位置との間で前記切削刃を前記圧雪層の幅方向に平行移動させる第2工程と、
前記圧雪層が所定の厚みになるまで、前記第2工程を繰り返す第3工程と、
を含む
タイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項2】
前記第3工程の後に、前記切削刃によって切削された雪を除去する工程をさらに含む
請求項1に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項3】
前記切削刃による切削痕は、軸方向に隙間無く螺旋状に形成される
請求項1に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項4】
前記所定深さは、0.3mm以上、5.0mm以下である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項5】
前記第1位置から前記第2位置までの距離は、1000mm以上、3000mm以下である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項6】
前記所定の周速は、30km/h以上、100km/h以下である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【請求項7】
前記切削刃の移動速度は、5mm/s以上、40mm/s以下である
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイヤ評価用雪面の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ評価用雪面の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雪面におけるタイヤ性能を評価には、屋外での評価の他に、屋内に人工的な雪面を設け、人口的な雪面上でタイヤ性能の評価が行われることがある。特許文献1には、屋内にタイヤ評価用の人口雪面を形成する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、凹凸が抑えられた均一な雪面を形成することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係るタイヤ評価用雪面の形成方法は、ドラムの内面に設けられた圧雪層表面に形成されるタイヤ評価用雪面の形成方法である。この形成方法は、前記ドラムの内面側を走行するタイヤを支持する支持機構に、前記圧雪層を切削するための切削刃を設ける第1工程と、前記切削刃の先端が前記圧雪層表面から所定深さとなるように前記切削刃を前記圧雪層に接触させ、前記ドラムを所定の周速で回転させつつ、前記圧雪層表面の第1位置と第2位置との間で前記切削刃を前記圧雪層の幅方向に平行移動させる第2工程と、前記圧雪層が所定の厚みになるまで、前記第2工程を繰り返す第3工程と、を含む。
【0006】
上記構成によれば、支持機構に設けられた切削刃によって圧雪層表面を切削することでタイヤ評価用雪面を形成することができる。よって、切削刃を設けるための機構等を追加する必要がなく、切削条件を適切に調整することで、凹凸が抑えられた均一な雪面を形成することができる。
【0007】
(2)上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、前記第3工程の後に、前記切削刃によって切削された雪を除去する工程をさらに含むことが好ましい。
この場合、切削された雪がタイヤ評価に影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0008】
(3)上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、記切削刃による切削痕は、軸方向に隙間無く螺旋状に形成されることが好ましい。
この場合、圧雪層の表面を均一に切削することができる。
【0009】
(4)上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、前記所定深さは、0.3mm以上、5.0mm以下であることが好ましい。
所定深さが0.3mmより小さいと、圧雪層の切削量が少なくなり、評価用雪面の形成に要する時間が大きくなる。所定深さが5.0mmより大きいと、圧雪層の切削量が比較的多くなり、圧雪層の厚みの調整が困難になるおそれがある。
所定深さを、0.3mm以上、5.0mm以下とすることで、適切に評価用雪面を形成することができる。
【0010】
(5)また、上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、前記第1位置から前記第2位置までの距離は、1000mm以上、3000mm以下であることが好ましい。
第1位置から第2位置までの距離が1000mmより小さいと、タイヤ評価のために十分な雪面を得ることができない。また、第1位置から第2位置までの距離が3000mmより大きいと、評価用雪面の形成に要する時間が大きくなる。第1位置から第2位置までの距離を、1000mm以上、3000mm以下とすることで、適切に評価用雪面を形成することができる。
【0011】
(6)上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、前記所定の周速は、30km/h以上、100km/h以下であることが好ましい。
周速が30km/hより低いと、評価用雪面の形成に要する時間が大きくなる。周速が100km/hより高いと、切削刃の幅方向への平行移動の速度の調整幅が少なくなり、切削条件を適切に設定するのが困難となる。ドラムの周速を、30km/h以上、100km/h以下とすることで、短時間で適切に評価用雪面を形成することができる。
【0012】
(7)上記タイヤ評価用雪面の形成方法において、
前記切削刃の移動速度は、5mm/s以上、40mm/s以下であることが好ましい。
移動速度が5mm/sより小さいと、ドラムの周速を大幅に低下させなければならない場合が生じ、評価用雪面の形成に要する時間が大きくなる。移動速度が40mm/sより大きいと、ドラムの周速を大幅に増加させなければならない場合が生じ、切削条件を適切に設定するのが困難となる。切削刃の移動速度を、5mm/s以上、40mm/s以下とすることで、短時間で適切な評価用雪面を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、凹凸が抑えられた均一なタイヤ評価用雪面を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、タイヤ評価用雪面の形成に用いられるタイヤ評価装置の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、評価用雪面を形成するための各工程を説明するための図である。
【
図3】
図3は、切削刃を圧雪層に接触させたときの状態を示す図である。
【
図4】
図4は、摩擦係数とすべり速度との関係を示したグラフである。
【
図5】
図5(a)は、従来例のそりが有する複数の歯の一例を示す図、
図5(b)は、凹凸が生じた雪面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[本発明の基礎となった知見]
上記特許文献1による従来例では、圧縮した雪面に対して、雪面の幅方向に沿って並ぶ複数の歯を有するそりを走行させ、雪面の加工が行われる。
図5(a)は、従来例のそりが有する複数の歯の一例を示す図である。
図5(a)中、複数の歯100は、そり後方の端縁部材102に設けられている。複数の歯100は、端縁部材102の下面102aから突出している。複数の歯100は、下面102aに一列に配列されている。また、複数の歯100は、雪面中に数センチ進入するように設けられている。
そり(端縁部材102)は、端縁部材102の長手方向に直交する方向(
図5(a)中の矢印の方向)に向かって走行する。
すると、複数の歯は、雪面を掘り起こしてしまい、雪面に凹凸を生じさせる。
【0016】
図5(b)は、凹凸が生じた雪面の一例を示す図である。
図5(b)に示すように、圧雪層104の雪面104aは、平滑部105と、凹部106と、を有する。平滑部105は、圧雪されたときに平滑とされた面である。凹部106は、平滑部105に対して凹んだ部分である。凹部106は、複数の歯100によって掘り起こされることでそりの進行方向に沿う溝状に形成される。
このような凹凸が評価用雪面に存在すると、タイヤ評価試験の精度を低下させる要因となる。このため、凹凸が抑えられた均一な雪面を形成する技術が望まれていた。
【0017】
[実施形態の詳細]
以下、好ましい実施形態について図面を参照しつつ説明する。
〔タイヤ評価装置について〕
図1は、タイヤ評価用雪面の形成に用いられるタイヤ評価装置の一例を示す図である。
図1に示すタイヤ評価装置1は、タイヤTが内周側を走行するドラム2と、タイヤTをドラム2の内面側で支持する支持機構4と、有する。つまり、タイヤ評価装置1は、いわゆるインサイドドラム式の評価装置である。
【0018】
ドラム2は、駆動機構(図示省略)によって支持される。ドラム2は、円筒部2aと、円板部2bと、円環部2cと、を備える。
円筒部2aは、水平な中心軸Cを有する。中心軸Cは水平である。ドラム2と、支持機構4と、は中心軸Cに沿って並べられている。
なお、以下の説明では、中心軸Cに平行な方向を軸方向といい、軸方向のうち、ドラム2側からから支持機構4側へ向かう方向を第1方向、支持機構4側からドラム2側へ向かう方向を第2方向という。
【0019】
円筒部2aの内周面2a1には、基盤層5および圧雪層6が設けられる。基盤層5および圧雪層6については、後に説明する。
円板部2bは、円筒部2aの第2方向側の開口を塞いでいる。円板部2bの第2方向側の外面2b1には、軸部3が設けられている。軸部3の軸中心は、中心軸Cに一致している。駆動機構は、軸部3を保持し、ドラム2を円筒部2aの中心軸C回りに回転駆動する。
円環部2cは、円筒部2aの第1方向側の開口の縁部に沿って設けられている。円環部2cは、円筒部2aの縁部から径方向内側に突出している。円環部2cは、基盤層5および圧雪層6の第1方向側の側面に当接している。これにより円環部2cは、基盤層5および圧雪層6が軸方向へ移動するのを制限している。
【0020】
タイヤTおよび支持機構4の一部は、円環部2cの内周側を通じて円筒部2aの内部に差し込まれ、円筒部2aの内部に配置される。
【0021】
支持機構4は、台座10と、支柱12と、水平アーム14と、上下アーム16と、を備える。
台座10は、軌道10aと、台本体10bと、アクチュエータ10cと、を有する。台本体10bは、軸方向に沿って軌道10a上を水平移動可能である。アクチュエータ10cは、軸方向に進退可能なシャフト10c1を有する。シャフト10c1の先端は、台本体10bに接続される。アクチュエータ10cは、シャフト10c1を進退させることで、台本体10bを水平移動させることができる。
【0022】
支柱12は、上下方向に延びる柱状部材であり、台本体10bの上面に設けられている。水平アーム14は、支柱12の先端部に設けられている。
水平アーム14は、支柱12からドラム2へ向かって水平に延びている。
上下アーム16は、水平アーム14の先端に設けられている。
上下アーム16は、アクチュエータ17と、アーム本体18と、回転シャフト19と、モータ20と、を備える。
アクチュエータ17は、水平アーム14の先端に固定されている。アクチュエータ17は、上下方向に進退可能なシャフト17aを有する。アーム本体18、回転シャフト19、およびモータ20は、シャフト17aに固定されている。アクチュエータ17は、シャフト17aを進退させることで、アーム本体18、回転シャフト19、およびモータ20を上下方向に移動させる。
【0023】
アーム本体18は、シャフト17aの下端に固定されている。アーム本体18は、上下方向に延びている。
回転シャフト19およびモータ20は、アーム本体18の下端に設けられている。
回転シャフト19は、軸受等を介してアーム本体18に回転自在に支持される。回転シャフト19は、軸方向に平行に支持される。
また、回転シャフト19は、中心軸Cの直下に配置される。
【0024】
回転シャフト19の第2方向側の先端には、タイヤTが一体に固定される。よって、アーム本体18は、回転シャフト19とともにタイヤTを回転自在に支持する。
モータ20は、回転シャフト19を回転駆動する。モータ20は、評価試験におけるタイヤTの回転速度を調整することができる。
【0025】
上記構成の支持機構4は、アクチュエータ17によってタイヤTを上下方向に移動させることができる。また、支持機構4は、台座10のアクチュエータ10cによってタイヤTを軸方向に移動させることができる。
よって、支持機構4は、ドラム2の外部に位置するタイヤTを第2方向に沿って移動させドラム2の内部に配置することができる。さらに、支持機構4は、タイヤTを下方向へ移動させ、タイヤTを圧雪層6に接触させることができる。
【0026】
基盤層5は、円筒部2aの内周面2a1に設けられる氷の層である。圧雪層6は基盤層5の内周面に積層される。
圧雪層6は、人工造雪機によって造られた雪を基盤層5の内周面に積層し、径方向外側へ向けて圧縮することで設けられる。
圧雪層6の内周側の表面6aは、タイヤ評価用雪面7を有する。タイヤ評価用雪面7(以下、単に評価用雪面7ともいう)は、後に説明するタイヤ評価用雪面の形成方法によって形成される。
【0027】
また、上下アーム16は、荷重測定装置22をさらに有する。荷重測定装置22は、タイヤTに作用する荷重を測定するための装置である。荷重測定装置22は、例えば、回転シャフト19の外周側に設けられる複数の荷重センサを含む。複数の荷重センサは、回転シャフト19外周に沿って等間隔に配置され、回転シャフト19に作用する荷重を示す情報を出力する。荷重測定装置22の出力は、タイヤ評価装置1を制御する制御装置へ与えられる。制御装置は、荷重測定装置22の出力に基づいて、アクチュエータ17を制御し、タイヤTに作用する荷重を調整する。
【0028】
また、タイヤ評価装置1は、回転シャフト19の回転速度およびドラム2の回転速度を検出する第1回転速度センサおよび第2回転速度センサ(いずれも図示省略)を有する。これら回転センサはモータが有するホールセンサであってもよいし、モータに独立して設けられていてもよい。
【0029】
制御装置は、アクチュエータ17の他、アクチュエータ10c、モータ20、およびドラム2の駆動機構を制御する機能を有する。制御装置は、荷重測定装置22の出力および第1回転速度センサおよび第2回転速度センサの出力に基づいて各部を制御する。
制御装置は、予め設定された条件に従って各部を制御し、タイヤTを圧雪層6の評価用雪面7に接触させ、タイヤTを試験走行させることができる。
なお、制御装置は、タイヤ評価装置1のオペレータによって操作可能である。オペレータは、アクチュエータ17、アクチュエータ10c、モータ20、およびドラム2の駆動機構を任意に制御し動作させることができる。
【0030】
〔タイヤ評価用雪面の形成方法について〕
次に、タイヤ評価用雪面の形成方法について説明する。
本実施形態であるタイヤ評価用雪面の形成方法は、タイヤTを支持する支持機構4に、圧雪層6を切削するための切削刃を設ける第1工程と、前記切削刃の先端が圧雪層6の表面から所定深さとなるように前記切削刃を圧雪層6の表面6aに接触させ、ドラム2を所定の周速で回転させつつ、圧雪層6の表面6aの第1位置と第2位置との間で前記切削刃を圧雪層6の幅方向に平行移動させる第2工程と、圧雪層6が所定の厚みになるまで、第2工程を繰り返す第3工程と、を含む。
【0031】
上述のように、評価用雪面7は、圧雪層6の内周側の表面6aに形成される。
よって、まず、円筒部2aの内周面2a1に基盤層5および圧雪層6が設けられる。
内周面2a1に氷の基盤層5が設けられた後、基盤層5の内周面には人工造雪機によって造られた雪が積層される。この雪は周方向に均一に積層される。
基盤層5の内周面に積層された雪は、タイヤTによって圧縮される。つまり、基盤層5の内周面に雪を積層した後、積層した雪の上をタイヤTに走行させる。これによって、基盤層5の内周面の雪を圧縮し、圧雪層6を形成する。
その後、上述の第1工程が行われる。
【0032】
図2は、評価用雪面7を形成するための各工程を説明するための図である。
図2は、
図1中、アーム本体18(上下アーム16)の先端付近を示している。
第1工程では、まず、オペレータが、切削刃32を支持機構4のアーム本体18に固定する。
アーム本体18の下端部には、アーム本体18から第2方向に延びるブラケット30が固定されている。ブラケット30は、切削刃32を固定するための棒状部材である。ブラケット30の第1方向側の端部は、アーム本体18に固定されている。ブラケット30の第2方向側の端部には、切削刃32が固定されている。
切削刃32は、例えば、ブラケット30の端部に設けられたクランプ等によって固定されている。
【0033】
切削刃32は、シャンク32bと、刃部32aと、を有する。シャンク32bは、棒状の部分であり、ブラケット30によって長手方向が上下方向に沿うように固定される。刃部32aは、先端が軸方向に平行な矩形状を有する。
切削刃32は、例えば、機械加工用の平バイトである。
【0034】
このように、第1工程では、タイヤTが取り外されたアーム本体18の下端部に、ブラケット30および切削刃32が固定される。
切削刃32は、アーム本体18に設けられているので、支持機構4によって軸方向(圧雪層6の幅方向)および上下方向に平行移動可能である。
【0035】
切削刃32の固定(第1工程)を終えると、オペレータは、切削刃32を第1位置P1へ移動させ、第2工程に移る。
第1位置P1は、圧雪層6の表面6a上における圧雪層6の幅方向の位置である。
図2に示すように、第1位置P1は、圧雪層6の第1方向側の縁に近い位置であって予め定められた位置である。第1位置P1は、切削刃32を円環部2cにできるだけ近づけた位置に設定される。
なお、
図2では、すでに切削刃32が第1位置に位置する状態を示している。
【0036】
切削刃32を第1位置P1へ移動させると、オペレータは、アクチュエータ17を動作させて切削刃32を下方向に下げ、切削刃32を圧雪層6に接触させる。
図3は、切削刃32を圧雪層6に接触させたときの状態を示す図である。
図3に示すように、切削刃32は、刃部32aの先端32a1が圧雪層6の表面6aから所定深さDとなるように圧雪層6に差し込まれた状態で保持される。
なお、この段階での表面6aは、圧雪層6の形成時に圧縮された状態の表面である。
【0037】
次に、オペレータは、ドラム2の内周面2a1の周速が所定の周速V1となるようにドラム2を回転させつつ、第1位置P1から第2位置P2まで切削刃32を圧雪層6の幅方向に所定の移動速度V2で平行移動させる。
図2に示すように、第2位置P2は、第1位置P1と同様、圧雪層6の表面6a上における圧雪層6の幅方向の位置である。第2位置P2は、圧雪層6の第1方向側の縁よりも第2方向側の縁に近い位置であって予め定められた位置である。第2位置P2は、切削刃32を円板部2b(
図1)にできるだけ近づけた位置に設定される。
【0038】
このとき、刃部32aの先端32a1が圧雪層6の表面6aから所定深さDとなるように圧雪層6に差し込まれているので、ドラム2が回転すると、圧雪層6の表面6aは、切削刃32によって切削される。
さらに、切削刃32は圧雪層6の幅方向に平行移動するので、切削刃32によって表面6aに形成される切削痕は、刃部32aの先端32a1の幅の螺旋状となる。
ここで、前記切削痕は、軸方向に隙間無く螺旋状に形成される。よって、圧雪層6の表面6aを均一に切削することができる。
このような切削痕によって圧雪層6の表面6aには切削面が形成される。
ドラム2の周速V1および切削刃32の移動速度V2は、前記切削痕が軸方向に隙間無く螺旋状となるように適切に設定される。
【0039】
切削刃32が第2位置P2に到達すると、第2工程は終了する。
このように第2工程では、切削刃32の先端32a1が圧雪層6の表面6aから所定深さDとなるように切削刃32を圧雪層6の表面6aに接触させ、ドラム2を所定速度で回転させつつ、圧雪層6の表面6aの第1位置P1と第2位置P2との間で切削刃32を圧雪層6の幅方向に平行移動させる。
【0040】
次いで、オペレータは、アクチュエータ17を動作させて切削刃32をさらに下方向に下げ、切削刃32を圧雪層6に差し込む。切削刃32は、先端32a1が圧雪層6の表面6aのうちの切削面から所定深さDとなるように圧雪層6に差し込まれた状態で保持される。
【0041】
次に、オペレータは、ドラム2の内周面2a1の周速が周速V1となるようにドラム2を回転させつつ、第2位置P2から第1位置P1まで切削刃32を圧雪層6の幅方向に所定の移動速度V2で平行移動させる。
つまり、オペレータは、切削刃32を軸方向に往復動させることで、第2工程を繰り返し行う。
圧雪層6が所定の厚みに達したと判断すると、オペレータは、第2工程を繰り返すのを終了する。つまり、オペレータは、圧雪層6が所定の厚みになるまで第2工程を繰り返す第3工程を行う。
所定の厚みに達した圧雪層6の表面6aのうちの切削面は、評価用雪面7となる。
【0042】
圧雪層6が所定の厚みに達し、第3工程を終えると、オペレータは、切削刃32をドラム2の内周側からドラム2の外部へ移動させ、切削刃32によって切削された雪をドラム2内からドラム2外へ除去する。
これにより、切削された雪がタイヤ評価に影響を及ぼすのを抑制することができる。
【0043】
以上のようにして、評価用雪面7は圧雪層6の表面6aには評価用雪面7が形成される。
上記構成によれば、支持機構4に設けられた切削刃32によって圧雪層6の表面6aを切削することで評価用雪面7を形成することができる。よって、切削刃32を設けるための機構等を追加する必要がなく、切削条件を適切に調整することで、凹凸が抑えられた均一な評価用雪面7を形成することができる。
【0044】
なお、所定深さDは、0.3mm以上、5.0mm以下であることが好ましい。
所定深さDが0.3mmより小さいと、圧雪層6の切削量が少なくなり、評価用雪面7の形成に要する時間が大きくなる。所定深さが5.0mmより大きいと、圧雪層6の切削量が較的多くなり、圧雪層6の厚みの調整が困難になるおそれがある。
所定深さを、0.3mm以上、5.0mm以下とすることで、適切に評価用雪面7を形成することができる。
【0045】
また、第1位置P1から第2位置P2までの距離は、1000mm以上、3000mm以下であることが好ましい。
第1位置P1から第2位置P2までの距離が1000mmより小さいと、タイヤ評価のために十分な雪面を得ることができない。また、第1位置P1から第2位置P2までの距離が3000mmより大きいと、評価用雪面7の形成に要する時間が大きくなる。第1位置P1から第2位置P2までの距離を、1000mm以上、3000mm以下とすることで、適切に評価用雪面7を形成することができる。
【0046】
また、所定の周速V1は、30km/h以上、100km/h以下であることが好ましい。
周速V1が30km/hより低いと、評価用雪面7の形成に要する時間が大きくなる。周速V1が100km/hより高いと、切削刃32の幅方向への平行移動の移動速度V2の調整幅が少なくなり、切削条件を適切に設定するのが困難となる。ドラム2の周速V1を、30km/h以上、100km/h以下とすることで、短時間で適切に評価用雪面7を形成することができる。
【0047】
切削刃32の移動速度V2は、5mm/s以上、40mm/s以下であることが好ましい。
移動速度V2が5mm/sより小さいと、ドラム2の周速V1を大幅に低下させなければならない場合が生じ、評価用雪面7の形成に要する時間が大きくなる。移動速度V2が40mm/sより大きいと、ドラムの周速V1を大幅に増加させなければならない場合が生じ、切削条件を適切に設定するのが困難となる。切削刃32の移動速度V2を、5mm/s以上、40mm/s以下とすることで、短時間で適切な評価用雪面7を形成することができる。
【0048】
なお、本実施形態では、切削刃32に機械加工用の平バイトを用いた場合を例示したが、これに限定されるわけではない。圧雪層6の表面6aを平らに切削することができるものであればよく、例えば、先端が鋭利な金属片等を用いることもできる。
【0049】
〔検証試験について〕
次に、上記形成方法により形成された、評価用雪面7によってタイヤ評価を行い、精度よくタイヤ評価することができるか否かについて検証した試験について説明する。
本試験では、下記に示す実施例および比較例による評価用雪面をドラム2内に形成し、この評価用雪面を用いてタイヤTを走行させ、摩擦係数とすべり速度との関係を比較した。
【0050】
実施例による評価用雪面は、下記の条件でドラム2内の圧雪層6に対して形成された。
試験室の室温 :-10~-1度
圧雪層を切削する際の所定深さD :1~50mm
ドラム2の周速V1 :10~120km/h
切削刃32の移動速度V2 :1~50mm/s
第1位置P1から第2位置P2までの距離:700~4000mm
基盤層5の厚さ :0.5~5cm
圧雪層6の厚さ :0.5~7cm
【0051】
また、比較例による評価用雪面は、下記の要領でドラム2内に形成された。
(a)まず、室温が-5度に設定された環境室の床面に氷の基盤層を設け、
(b)基盤層上に厚さ2cmの第1雪層を造雪機により設け、
(c)室温を-8度に下げた上で、第1雪層上に厚さ4cmの第2雪層を設け、
(d)雪層を圧縮し、
(e)圧縮後の雪層表面に水を散布し、
(f)水の被膜で被覆された雪面に対して
図5で示した複数の歯を有するそりを走行させ、
(g)雪層(第1雪層および第2雪層)の厚さが5cmとなるまで、(c)から(f)を繰り返す。
【0052】
また、実施例および比較例において評価用雪面を走行させるタイヤTは、同じ物を用いた。
実施例および比較例それぞれについてタイヤTを走行させ、摩擦係数とすべり速度との関係を求めた。
【0053】
図4は、摩擦係数とすべり速度との関係を示したグラフである。
図4中、横軸はすべり速度を示し、縦軸は摩擦係数を示している。
すべり速度は、タイヤの速度と、評価用雪面との速度差である。つまり、すべり速度は、ドラム2の周速V1とタイヤの周速との差である。
摩擦係数は、タイヤに作用する荷重を測定する荷重測定装置22の出力および第1回転速度センサおよび第2回転速度センサの出力を用いて求めた。
【0054】
図4に示すように、比較例では、雪面に凹凸があるため、摩擦係数とすべり速度との関係を示すグラフのプロファイルに大きな乱れが発生している。特にすべり速度が14km/h以上の範囲で大きく乱れている。
一方、実施例では、摩擦係数とすべり速度との関係を示すグラフのプロファイルには大きな乱れがなく滑らかに表れている。
この結果から、凹凸が抑えられた均一な雪面が得られていることが判る。また、タイヤ評価試験の精度向上の実現が可能であることが明らかとなった。
【0055】
本開示の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0056】
2 ドラム
4 支持機構
6 圧雪層
6a 表面
7 タイヤ評価用雪面
32 切削刃
32a1 先端
T タイヤ