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  • 特開-交流給電装置及び交流給電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158093
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】交流給電装置及び交流給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20241031BHJP
   H02M 3/28 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H02M7/48 E
H02M3/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072963
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】723014807
【氏名又は名称】岩崎電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】516131843
【氏名又は名称】ANP株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521452681
【氏名又は名称】DC Power Vil.株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160967
【弁理士】
【氏名又は名称】▲濱▼口 岳久
(72)【発明者】
【氏名】菊地 誠次
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 創
(72)【発明者】
【氏名】羽田 正二
(72)【発明者】
【氏名】村 文夫
【テーマコード(参考)】
5H730
5H770
【Fターム(参考)】
5H730BB43
5H730BB57
5H730BB86
5H730DD04
5H730EE02
5H730EE07
5H730FD01
5H730FG05
5H770BA11
5H770CA01
5H770CA05
5H770DA01
5H770DA21
5H770DA41
5H770EA01
5H770GA16
5H770GA17
5H770HA03Y
(57)【要約】
【課題】直流発電装置から交流電圧配線に交流電圧を供給する交流給電装置を簡素かつ安価な構成で提供する。
【解決手段】交流給電装置2は、直流発電装置3からの直流入力電圧を交流電圧配線4の電圧に同期する脈流直流出力電圧に変換するDC/DCコンバータ10と、直流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータ20を含む。DC/ACコンバータ20は、FET21-23及びFET22-24のフルブリッジ回路であり、交流電圧配線4に接続される配線L2が高電位側となる期間TBでは配線L2から第1の電圧が充電され、交流電圧配線4に接続される配線L1が高電位側となる期間TAでは配線L1から第2の電圧が充電され、期間TAでは、第1の電圧に基づいてFET21がオンされ、配線L1の電圧によってFET24がオンされ、期間TBでは、第2の電圧に基づいてFET22がオンされ、配線L2の電圧によってFET23がオンされる。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流発電装置から交流電圧配線に交流出力電圧を供給する交流給電装置であって、
前記直流発電装置から直流入力電圧が供給され、該直流入力電圧を前記交流電圧配線の交流電圧の全波整流波形に同期する脈流波形の直流出力電圧に変換するDC/DCコンバータと、
第1、第2、第3及び第4のスイッチング素子並びに駆動回路を含み、前記直流出力電圧を前記交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータと、
を備え、
前記第1及び第3のスイッチング素子は、前記第1のスイッチング素子を高電位側として前記DC/DCコンバータの出力端間に直列接続され、前記第1のスイッチング素子と前記第3のスイッチング素子との接続点は第1の配線を介して前記交流電圧配線の一方に接続され、前記第2及び第4のスイッチング素子は、前記第2のスイッチング素子を高電位側として前記DC/DCコンバータの出力端間に直列接続され、前記第2のスイッチング素子と前記第4のスイッチング素子との接続点は第2の配線を介して前記交流電圧配線の他方に接続され、
前記駆動回路は、
前記第2の配線が前記第1の配線よりも高電位となる負位相期間では前記第2の配線の電圧に基づいて第1の電圧を充電し、前記第1の配線が前記第2の配線よりも高電位となる正位相期間では前記第1の配線の電圧に基づいて第2の電圧を充電するように構成され、
前記正位相期間では、前記第2及び第3のスイッチング素子がオフした状態で、前記第1の電圧に基づいて前記第1のスイッチング素子がオンするとともに前記第1の配線の電圧によって前記第4のスイッチング素子がオンし、前記負位相期間では、前記第1及び第4のスイッチング素子がオフした状態で、前記第2の電圧に基づいて前記第2のスイッチング素子がオンするとともに前記第2の配線の電圧によって前記第3のスイッチング素子がオンするように構成された、交流給電装置。
【請求項2】
前記第1、第2、第3及び第4のスイッチング素子はそれぞれ第1、第2、第3及び第4のFETからなり、前記第1及び第2のFETのドレインが前記DC/DCコンバータの出力端の高電位側に接続され、前記第3及び第4のFETのソースが前記DC/DCコンバータの出力端の低電位側に接続され、前記第1のFETのソース及び前記第3のFETのドレインが前記第1の配線に接続され、前記第2のFETのソース及び前記第4のFETのドレインが前記第2の配線に接続され、
前記駆動回路は、前記第1及び第2のFETのゲート接続されたハイサイド駆動回路並びに前記第3及び第4のFETのゲートに接続されたローサイド駆動回路を含み、
前記ハイサイド駆動回路は、第1のコンデンサ(201)、第1のダイオード(202)、第1のツェナーダイオード(203)、第2のダイオード(204)、第1の抵抗(205)、第1のN型トランジスタ(206)、第1のP型トランジスタ(207)、第2のN型トランジスタ(208)、第2のコンデンサ(211)、第3のダイオード(212)、第2のツェナーダイオード(213)、第4のダイオード(214)、第2の抵抗(215)、第3のN型トランジスタ(216)、第2のP型トランジスタ(217)、第4のN型トランジスタ(218)、第3のコンデンサ(210)及び第3の抵抗(220)を含み、
前記第1のコンデンサの低電位側ノードには、前記第1のツェナーダイオードのアノード、前記第2のダイオードのアノード、前記第1のP型トランジスタのコレクタ及び前記第2のN型トランジスタのエミッタが接続され、前記第1のコンデンサの高電位側ノードには、前記第1のダイオードのカソード及び前記第1のN型トランジスタのコレクタが接続され、前記第1のダイオードのアノードは前記第1のツェナーダイオードのカソードに接続され、前記第1のN型トランジスタ及び前記第1のP型トランジスタの共通ベースが前記第1の抵抗を介して前記第1のコンデンサの高電位側ノードに接続されるとともに前記第2のN型トランジスタのコレクタに接続され、前記第1のN型トランジスタ及び前記第1のP型トランジスタの共通エミッタが、前記第1のFETのゲートに接続され、前記第2のN型トランジスタのベースが前記第2のダイオードのカソードに接続され、
前記第2のコンデンサの低電位側ノードには、前記第2のツェナーダイオードのアノード、前記第4のダイオードのアノード、前記第2のP型トランジスタのコレクタ及び前記第4のN型トランジスタのエミッタが接続され、前記第2のコンデンサの高電位側ノードには、前記第3のダイオードのカソード及び前記第3のN型トランジスタのコレクタが接続され、前記第3のダイオードのアノードは前記第2のツェナーダイオードのカソードに接続され、前記第3のN型トランジスタ及び前記第2のP型トランジスタの共通ベースが前記第2の抵抗を介して前記第2のコンデンサの高電位側ノードに接続されるとともに前記第4のN型トランジスタのコレクタに接続され、前記第3のN型トランジスタ及び前記第2のP型トランジスタの共通エミッタが、前記第2のFETのゲートに接続され、前記第4のN型トランジスタのベースが前記第4のダイオードのカソードに接続され、
前記第3のコンデンサは、前記第1のダイオードと前記第1のツェナーダイオードの接続点と、前記第3のダイオードと前記第2のツェナーダイオードの接続点との間に接続され、前記第3の抵抗は、前記第3のN型トランジスタのベースと前記第4のN型トランジスタのベースとの間に接続され、
前記ローサイド駆動回路は、第4の抵抗(221)、第3のツェナーダイオード(222)、第5の抵抗(223)及び第4のツェナーダイオード(224)を含み、前記第4の抵抗は前記第3のFETのゲートと前記第2のFETのソースの間に接続され、前記第5の抵抗は前記第4のFETのゲートと前記第1のFETのソースの間に接続された、請求項1に記載の交流給電装置。
【請求項3】
前記DC/DCコンバータの前記直流出力電圧を検出し、検出された前記直流出力電圧が所定の上限値を超える場合に前記DC/DCコンバータの出力を停止させる出力電圧検出回路をさらに備える請求項1に記載の交流給電装置。
【請求項4】
前記交流電圧配線の前記交流電圧を検出し、検出された前記交流電圧が所定の下限値未満となる場合に前記DC/DCコンバータの出力を停止させる電源電圧検出回路をさらに備える請求項1に記載の交流給電装置。
【請求項5】
前記所定の下限値は、前記交流電圧配線に関する定格交流電圧の90%である、請求項4に記載の交流給電装置。
【請求項6】
前記交流電圧配線が商用電源とコンセントの間に接続された配線であり、前記第1及び第2の配線を前記コンセントに接続するためのプラグを備える請求項1に記載の交流給電装置。
【請求項7】
請求項1に記載の交流給電装置と、
前記交流給電装置の前記DC/DCコンバータの入力端子に接続される前記直流発電装置と、
を備える交流給電システム。
【請求項8】
前記直流発電装置は、太陽光パネル又は風力発電装置である、請求項7に記載の交流給電システム。
【請求項9】
前記交流電圧配線は商用電源とコンセントの間に接続された配線であり、前記交流給電装置は、前記第1及び第2の配線を前記コンセントに接続するための配線及びプラグを備える、請求項7に記載の交流給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流給電装置及びそれを用いた交流給電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、商用電力系統に連系する系統連系発電装置を開示する。この系統連系発電装置は、交流スイッチが商用電力系統に接続される一対の交流端子と、所定の直流出力が流入する一対の直流端子とを備える。直流出力端Tと一対の直流端子との間にチョークコイルが挿入され、制御回路が、商用電力系統の波形情報に基づいて、フルブリッジ回路を備える交流スイッチの極性を切替制御する。
【0003】
特許文献2は、電力変換装置を開示する。この電力変換装置は、直流電源からの入力電圧を昇圧又は降圧する直流-直流変換回路と、直流-直流変換回路が出力する中間電圧を交流に変換するフルブリッジ回路である直流-交流変換回路と、直流-直流変換回路及び直流-交流変換回路を制御する制御ユニットとを有する。制御ユニットは、直流-交流変換回路を操作する信号波と搬送波との振幅比である変調度が目標変調度となるように、直流-直流変換回路を制御する回路制御部を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-211861号公報
【特許文献2】再表2011-105589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、制御回路の詳細が開示されていないが、一般に、フルブリッジ回路の制御回路(駆動回路)は、制御ICなどを用いてフルブリッジ回路の各トランジスタを個別に駆動する他励式の形態をとることが多い。実際に、特許文献2のフルブリッジ回路を制御する制御ユニットは、フルブリッジ回路を構成する4個のスイッチング素子に対してデジタル回路から個別の駆動信号を生成している。しかし、このような回路構成では、制御が複雑化し、高コスト化の原因となる。このことが、一般家庭などにおける比較的小規模な太陽光パネルなどの発電装置の導入の妨げとなっている。
【0006】
そこで、本発明は、直流発電装置から交流電圧配線に交流電圧を供給する交流給電装置及びそれを用いた交流給電システムを簡素かつ安価な構成で提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の交流給電装置は、直流発電装置から交流電圧配線に交流出力電圧を供給する交流給電装置であって、直流発電装置から直流入力電圧が供給され、直流入力電圧を交流電圧配線の交流電圧の全波整流波形に同期する脈流波形の直流出力電圧に変換するDC/DCコンバータと、第1、第2、第3及び第4のスイッチング素子並びに駆動回路を含み、直流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータと、を備える。第1及び第3のスイッチング素子は、第1のスイッチング素子を高電位側としてDC/DCコンバータの出力端間に直列接続され、第1のスイッチング素子と第3のスイッチング素子との接続点は第1の配線を介して交流電圧配線の一方に接続され、第2及び第4のスイッチング素子は、第2のスイッチング素子を高電位側としてDC/DCコンバータの出力端間に直列接続され、第2のスイッチング素子と第4のスイッチング素子との接続点は第2の配線を介して交流電圧配線の他方に接続される。駆動回路は、第2の配線が第1の配線よりも高電位となる負位相期間では第2の配線の電圧に基づいて第1の電圧を充電し、第1の配線が第2の配線よりも高電位となる正位相期間では第1の配線の電圧に基づいて第2の電圧を充電するように構成され、正位相期間では、第2及び第3のスイッチング素子がオフした状態で、第1の電圧に基づいて第1のスイッチング素子がオンするとともに第1の配線の電圧によって第4のスイッチング素子がオンし、負位相期間では、第1及び第4のスイッチング素子がオフした状態で、第2の電圧に基づいて第2のスイッチング素子がオンするとともに第2の配線の電圧によって第3のスイッチング素子がオンするように構成される。
【0008】
上記構成によると、交流給電装置は直流入力電圧を交流電源に同期する脈流波形の直流出力電圧に変換するDC/DCコンバータと、この直流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータとを備え、DC/ACコンバータは交流電源に同期して自励駆動される。これにより、直流発電装置から交流電圧配線に交流電圧を供給する交流給電装置を簡素かつ安価な構成で実現することができる。
【0009】
本開示の交流給電システムは、上記交流給電装置と、交流給電装置のDC/DCコンバータの入力端子に接続される直流発電装置と、を備える。
【0010】
上記構成によると、交流給電システムは、直流入力電圧を交流電源に同期する脈流波形の直流出力電圧に変換するDC/DCコンバータと、交流電源に同期して自励駆動されて直流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータとを備える交流給電装置を含む。したがって、直流発電装置から交流電圧配線に交流電圧を供給する交流給電システムを簡素かつ安価な構成で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態による交流給電装置を含む交流給電システムを示す概略図である。
図2】本発明の実施形態による交流給電装置の回路図である。
図3図2の交流給電装置の動作に関する各部波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、本発明の実施形態による交流給電装置2を含む交流給電システム1を示す。交流給電システム1は、交流給電装置2及び直流発電装置3を含み、交流電圧配線4を介して交流電源ACに接続される。直流発電装置3は、本実施形態では、比較的小規模又は低容量(例えば、出力電力100~200W程度)の太陽光パネルである(以下、「太陽光パネル3」ともいう)。交流電源ACは、本実施形態では、定格100Vの商用電源であり、分電盤5を介して交流電圧配線4を介してコンセント4a(壁コンセント)に配電される。交流電源ACの周波数は、50Hzであっても60Hzであってもよい。交流電圧配線4は、本実施形態では、送電線ではなく、送電線から家庭用の分電盤5を介して宅内に引き込まれた配線である。交流電圧配線4には、家電機器などの負荷6が接続され得る。
【0013】
太陽光パネル3は、太陽光を直流電圧(直流電流)に変換し、変換した直流電圧を配線3aに出力する。配線3aは、交流給電装置2のDC入力端子(不図示)に接続される。なお、本実施形態では、配線3aは太陽光パネル3の付属物であるが、配線3aは交流給電装置2の付属物であってもよい。交流給電装置2は、DC入力端子から入力された直流電圧を交流電圧配線4の電圧に同期した交流電圧に変換し、変換した交流電圧をAC入出力端子(不図示)から配線2aに出力する。配線2aの終端には、コンセント4aと同規格のプラグ2bが接続される。すなわち、交流給電装置2は、太陽光パネル3から入力された直流電圧を、交流電源ACの交流電圧と位相及び振幅が同期する交流電圧に変換し、変換した交流電圧を交流電圧配線4の電圧に重畳する。
【0014】
本実施形態の交流給電システム1の使用態様として、以下が想定される。例えば、マンションのベランダに太陽光パネル3が設置又は配置され、交流給電装置2が宅内に設置又は配置される。配線3aがエアコンのダクト配管などの適宜の壁孔を通じて宅内に引き込まれ、交流給電装置2のDC入力端子に接続される。そして、交流給電装置2の配線2aのプラグ2bが、コンセント4aに差し込まれる。あるいは、コンセント4aが屋外(例えば、ベランダ内の外壁)にある場合には、交流給電装置2は屋外に設置又は配置されてもよい。この場合、配線3a及び配線2aとも屋外に配置され、プラグ2bが屋外のコンセント4aに差し込まれる。また、コンセント4aが屋外になくても、交流給電装置2が屋外に設置又は配置され、配線2aがエアコンのダクト配管などの適宜の壁孔を通じて宅内に引き込まれ、プラグ2bが屋内のコンセント4aに差し込まれるようにしてもよい。
【0015】
詳細を後述するように、交流給電装置2には、交流電圧配線4の電圧によって駆動されるため、主電源スイッチなどは存在せず、プラグ2bがコンセント4aに差し込まれると、交流給電装置2は動作を開始する。これにより、負荷6は、交流電源AC及び交流給電装置2の双方から給電され得る。具体的には、負荷6は、太陽光パネル3の非発電時(夜間など)には交流電源ACから給電され、太陽光パネル3の発電時には、その発電量及び負荷6の消費電力に応じて、交流電源AC及び交流給電装置2の双方から又は交流給電装置2のみから給電され得る。言い換えると、交流給電システム1又は交流給電装置2によって、太陽光パネル3の発電時には、交流電源ACから交流電圧配線4に取り込まれる電力を節約することができる。本実施形態では、交流給電装置2の定格出力電力として、100~200W程度、特に150W程度が想定されている。
【0016】
上述したように、交流給電システム1又は交流給電装置2のユーザが行うべき電気配線に関する作業は、配線3aとDC入力端子の接続及びプラグ2bとコンセント4aの接続のみであり、専門的な電気工事は不要である。また、交流給電システム1は、上述したようにユーザ宅での電力を補完する目的で使用されるものであり、送電線に逆潮流を行うものではないため、それに伴う設備(整流装置など)及びその工事は不要である。したがって、一般的なユーザが、容易に交流給電装置2又は交流給電システム1の導入することができる。
【0017】
図2に、本実施形態の交流給電装置2の回路図を示す。交流給電装置2の回路が実装された基板(不図示)は、金属製の筐体などの適宜の筐体(不図示)に内包される。交流給電装置2の回路は、太陽光パネル3に接続されるDC入力端子CN2と、交流電圧配線4に接続されるAC入出力端子CN1との間に構成される。交流給電装置2は、主電流回路として、DC/DCコンバータ10、DC/ACコンバータ20及びフィルタ回路30を備える。DC/DCコンバータ10はDC入力端子CN2に接続され、DC/ACコンバータ20はフィルタ回路30を介してAC入出力端子CN1に接続される。交流給電装置2は、信号回路として、制御電源生成回路40、出力電圧検出回路50及び電源電圧検出回路60をさらに備える。
【0018】
なお、図2においては、本発明の原理を説明するのに必要な回路素子のみが記載され、現実の実施において実装される全ての回路素子が記載されているわけではない。また、本開示において、トランジスタという用語は、電界効果トランジスタ(以下、「FET」という)、バイポーラトランジスタなどのスイッチ素子を総称するものであり、特に断りがない限り、FET、バイポーラトランジスタなどの適宜の素子が用いられるものとする。トランジスタについて、制御端子とはFETのゲート又はバイポーラトランジスタのベースを意味し、入力端子とはFETのドレイン又はバイポーラトランジスタのコレクタを意味し、出力端子とはFETのソース又はバイポーラトランジスタのエミッタを意味するものとする。また、FETをバイポーラトランジスタに変更する場合又はバイポーラトランジスタをFETに変更する場合、上記の各端子の名称は適宜読み替えられるものとする。また、本開示において、「接続される」という文言は、素子同士が直接接続されるという意味だけでなく、素子同士が非常に低い直流抵抗の要素(例えば、100Ω以下の抵抗素子、ノイズ除去用のインダクタ素子など)を介して接続されるという意味も含むものとする。
【0019】
DC/DCコンバータ10は、DC入力端子CN2から入力されるDC入力電圧を昇降圧し、詳細を後述するように、交流電圧配線4の電圧に同期した略正弦波の全波整流波形に対応する脈流波形の出力電圧(以下、「脈流出力電圧」という)を出力する。DC/DCコンバータ10は、少なくとも、平滑コンデンサ11、トランス12、スイッチング素子13、ダイオード14、出力コンデンサ15及びDC/DCコンバータ駆動回路16を含む昇降圧型のフライバックコンバータである。すなわち、一次側では、DC入力端子CN2の両端間に平滑コンデンサ11が接続され、平滑コンデンサ11の低電位側端子がグランドGNDとなる。トランス12の一次巻線とスイッチング素子13の直列回路が、平滑コンデンサ11に並列接続される。なお、不図示であるが、スイッチング素子13とトランス12の一次巻線の入力ノードとの間に適宜のスナバ回路が設けられる。二次側では、トランス12の二次巻線、ダイオード14及び出力コンデンサ15の直列回路が構成され、出力コンデンサ15の両端電圧が脈流出力電圧となる。なお、図2では出力段として1つの出力コンデンサ15を示しているが、出力段は2つのコンデンサ及び1つのコイルからなるπ型回路などであってもよい。
【0020】
スイッチング素子13は、本実施形態ではMOSFETであるが(以下、「FET13」ともいう)、IGBTなどの他の素子であってもよい。FET13は、DC/DCコンバータ駆動回路16からのPWM信号によってオン/オフされる。FET13のオン時に、平滑コンデンサ11からトランス12の一次巻線に流れる電流によってトランス12にエネルギーが蓄積される。FET13のオフ時に、トランス12に蓄積されていたエネルギーがトランス12の二次巻線から放出され、ダイオード14によって整流されつつ出力コンデンサ15に充電される。本実施形態では、DC入力電圧は、例えば47V(昼間などの通常発電時)に設定され、脈流出力電圧のピーク電圧は141V(=100V×ルート2)に設定される。なお、太陽光パネル3は、出力電圧47V付近で実質的に最大の出力電流となる特性を有するものとする。以下の説明において、DC/DCコンバータ10の出力端の高電位側ノード及び低電位側ノードをそれぞれノードH及びノードLという。
【0021】
DC/DCコンバータ駆動回路16は、三角波発生回路17及びPWM信号発生回路18を含む。三角波発生回路17は、少なくとも、オペアンプ101及び102、抵抗103~107並びにコンデンサ108を含む。PWM信号発生回路18は、少なくとも、コンパレータ(又はオペアンプ)109、抵抗110及び111並びにN型トランジスタ112及びP型トランジスタ113を含む。三角波発生回路17は、一般的な三角波発生回路であればよい。すなわち、オペアンプ101の反転入力端子は制御電源Vccの抵抗103及び104による分圧点に接続され、オペアンプ101の非反転入力端子と出力端子とは抵抗105を介して接続される。オペアンプ101の非反転入力端子はさらに、抵抗106を介してオペアンプ102の出力端子及びコンパレータ109の反転入力端子に接続される。オペアンプ101の出力端子は、抵抗107を介してオペアンプ102の反転入力端子に接続される。オペアンプ102の反転入力端子と出力端子が、コンデンサ108を介して接続される。
【0022】
コンパレータ109の非反転入力端子は、抵抗110及び111による分圧点に接続される。この分圧点の電圧は、交流電圧配線4の電圧が後述のトランス41によって降圧され、その降圧電圧が抵抗110及び111で分圧されることによって生成される。なお、抵抗110及び111は、微調整可能な可変抵抗で代替されもよい。コンパレータ109の出力端子は、コンプリメンタリ接続されたN型トランジスタ112及びP型トランジスタ113の共通ベースに接続される。N型トランジスタ112のコレクタは制御電源Vccに接続され、P型トランジスタ113のコレクタはグランドGNDに接続される。N型トランジスタ112及びP型トランジスタ113の共通エミッタが適宜のゲート抵抗など(不図示)を介してFET13のゲートに接続される。これにより、コンパレータ109の出力がハイレベルの場合にはN型トランジスタ112がオンするとともにP型トランジスタ113がオフし、共通エミッタには制御電源Vccの電圧が出力される。コンパレータ109の出力がローレベルの場合にはN型トランジスタ112がオフするとともにP型トランジスタ113がオンし、共通エミッタにはグランドGNDの電圧が出力される。
【0023】
これにより、コンパレータ109の反転入力端子には、振幅が制御電源Vccの電圧に等しく、抵抗105~107及びコンデンサ108によって決まる周波数の三角波が入力される(図3のグラフ(b)参照)。この周波数は、例えば30kHz程度である。コンパレータ109の非反転入力端子には、交流電圧配線4の電圧値、トランス41の降圧比並びに抵抗110及び111の分圧比によって決まる振幅を有して交流電源ACの周波数の2倍の全波整流電圧が入力される(図3のグラフ(b)参照)。これにより、コンパレータ109の出力端子において、上記全波整流波形のピーク付近に対応する期間ではゼロクロス付近に対応する期間よりも相対的に広いパルス幅(長いハイレベル期間)が得られる。このパルス幅に従ってPWM信号が生成され、このPWM信号によってFET13がPWM駆動される(図3のグラフ(c)参照)。すなわち、FET13のパルス幅(オン期間)は、上記全波整流波形のピーク付近に対応する期間では上記全波整流波形のゼロクロス付近に対応する期間よりも相対的に長くなる。したがって、DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧は、交流電圧配線4の交流電圧の全波整流波形に位相同期する脈流波形の電圧となる(図3のグラフ(d)参照))。
【0024】
DC/ACコンバータ20は、DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧を交流変換して配線L1及びL2に出力する。この交流変換は、交流電圧配線4の電圧に同期する。DC/ACコンバータ20は、少なくとも、スイッチング素子21~24、並びにスイッチング素子21~24のフルブリッジ駆動回路25を含むフルブリッジ回路である。スイッチング素子21~24の各々は、本実施形態ではMOSFETであるが(以下、「FET21~24」ともいう)、IGBTなどの他の素子であってもよい。FET21及び23はノードH-L間に直列接続され、FET21とFET23の接続点(以下、「ノードA」という)は配線L1に接続される。配線L1は、フィルタ回路30及びAC入出力端子CN1を介して交流電圧配線4の一方に接続される。FET22及び24はノードH-L間に直列接続され、FET22とFET24の接続点(以下、「ノードB」という)は配線L2に接続される。配線L2は、フィルタ回路30及びAC入出力端子CN1を介して交流電圧配線4の他方に接続される。なお、フィルタ回路30は、コンデンサ、コイルなどで構成された一般的なノイズフィルタ回路である。フルブリッジ駆動回路25は、後述する回路素子201~224を含む。
【0025】
詳細を後述するように、ノードA(配線L1)がノードB(配線L2)よりも高電位となる期間TA(本開示では、説明の便宜上、正位相期間と定義する)では、FET21及び24がオンし、FET22及び23がオフとなる。したがって、ノードH→FET21→ノードA→配線L1、及び配線L2→ノードB→FET24→ノードLに電流が流れる。一方、ノードBがノードAよりも高電位となる期間TB(本開示では、説明の便宜上、負位相期間と定義する)では、FET22及び23がオンし、FET21及び24がオフとなる。したがって、ノードH→FET22→ノードB→配線L2、及び配線L1→ノードA→FET23→ノードLに電流が流れる。これにより、略正弦波の出力電圧が、DC/ACコンバータ20(すなわち、交流給電装置2)から交流電圧配線4に重畳される。
【0026】
FET21~24のフルブリッジ駆動回路25について説明する。フルブリッジ駆動回路25は、FET21及びFET22に対して設けられたハイサイド駆動回路25a並びにFET23及び24に対して設けられたローサイド駆動回路25bを含む。
【0027】
ハイサイド駆動回路25aは、FET21側に、コンデンサ201、ダイオード202、ツェナーダイオード203、ダイオード204、抵抗205、N型トランジスタ206、P型トランジスタ207、N型トランジスタ208及び抵抗209を含む。コンデンサ201の低電位側ノードをノードC1Lといい、コンデンサ201の高電位側ノードをノードC1Hというものとする。また、ハイサイド駆動回路25aは、FET22側に、コンデンサ211、ダイオード212、ツェナーダイオード213、ダイオード214、抵抗215、N型トランジスタ216、P型トランジスタ217、N型トランジスタ218及び抵抗219を含む。コンデンサ211の低電位側ノードをノードC2Lといい、コンデンサ211の高電位側ノードをノードC2Hというものとする。また、ハイサイド駆動回路25aは、コンデンサ210及び抵抗220を含む。ツェナーダイオード203及び213は、それぞれFET21及び22のソース-ゲート電圧を定格値以下に維持するために接続され、例えば5~20V程度、好ましくは12V程度である。コンデンサ201及び211は、例えば、10μFであり、コンデンサ210は、例えば、0.47μFである。ただし、容量値はこれに限定されない。
【0028】
ノードC1Lは、ノードA(FET21のソース)に接続される。ノードC1Lには、ツェナーダイオード203のアノード、ダイオード204のアノード、P型トランジスタ207のコレクタ及びN型トランジスタ208のエミッタが接続される。ノードC1Hには、ダイオード202のカソード及びN型トランジスタ206のコレクタが接続される。ダイオード202のアノードはツェナーダイオード203のカソードに接続される。N型トランジスタ206とP型トランジスタ207とはコンプリメンタリ接続される。N型トランジスタ206及びP型トランジスタ207の共通ベースが抵抗205を介してノードC1Hに接続されるとともにN型トランジスタ208のコレクタに接続される。N型トランジスタ206及びP型トランジスタ207の共通エミッタが(必要に応じてゲート抵抗を介して)FET21のゲートに接続される。N型トランジスタ208のベースがダイオード204を介してノードC1Lに接続され、必要に応じて抵抗209を介してノードC1Hに接続される。
【0029】
ノードC2Lは、ノードB(FET22のソース)に接続される。ノードC2Lには、ツェナーダイオード213のアノード、ダイオード214のアノード、P型トランジスタ217のコレクタ及びN型トランジスタ218のエミッタが接続される。ノードC2Hには、ダイオード212のカソード及びN型トランジスタ216のコレクタが接続される。ダイオード212のアノードはツェナーダイオード213のカソードに接続される。N型トランジスタ216とP型トランジスタ217とはコンプリメンタリ接続される。N型トランジスタ216及びP型トランジスタ217の共通ベースが抵抗215を介してノードC2Hに接続されるとともにN型トランジスタ218のコレクタに接続される。N型トランジスタ216及びP型トランジスタ217の共通エミッタが(必要に応じてゲート抵抗を介して)FET22のゲートに接続される。N型トランジスタ218のベースがダイオード214を介してノードC2Lに接続され、必要に応じて抵抗219を介してノードC2Hに接続される。
【0030】
コンデンサ210は、ダイオード202とツェナーダイオード203の接続点と、ダイオード212とツェナーダイオード213の接続点との間に接続される。なお、適宜の抵抗がコンデンサ210に直列接続されてもよい。抵抗220は、N型トランジスタ208のベースとN型トランジスタ218のベースとの間に接続される。また、ノードAとノードBの間に、バリスタなどの適宜の過電圧保護素子が接続されることが好ましい。
【0031】
ローサイド駆動回路25bは、FET23に対して抵抗221及びツェナーダイオード222を含み、FET24に対して抵抗223及びツェナーダイオード224を含む。抵抗221は、FET23のゲートとノードB(FET22のソース)の間に接続される。抵抗223は、FET24のゲートとノードA(FET21のソース)の間に接続される。なお、ツェナーダイオード222及び224は、それぞれFET22及び24のソース-ゲート電圧を定格値以下に維持するために接続され、例えば5~20V程度、好ましくは12V程度である。また、ツェナーダイオード222及び224には、それぞれ適宜の抵抗が、FET23及び24の各休止期間の調整などのために、並列接続されてもよい。
【0032】
配線L1が配線L2よりも高電位(ノードAの電位>ノードBの電位)となる正位相期間TAでは以下の動作が発生する。ハイサイド側では、配線L1→ノードA→ツェナーダイオード203→コンデンサ210→ダイオード212→コンデンサ211→ノードBに電流が流れてコンデンサ211が充電される。また、配線L1→ノードA→ダイオード204→抵抗220→N型トランジスタ218のベースに電流(又は電圧)が供給され、N型トランジスタ218がオンする。これにより、N型トランジスタ216がオフし、P型トランジスタ217がオンする。したがって、FET22のゲートに電圧は供給されず、FET22はオフとなる。一方、N型トランジスタ208のベースには電流が供給されず、N型トランジスタ208はオフとなる。これにより、(前サイクルで充電された)コンデンサ201から抵抗205を介してN型トランジスタ206及びP型トランジスタ207の共通ベースに電流(又は電圧)が供給され、N型トランジスタ206がオンし、P型トランジスタ207がオフする。これにより、N型トランジスタ206からFET21のゲートに電圧が供給され、FET21はオンする。
【0033】
また、正位相期間TAにおいて、ローサイド側では、ノードH→FET21→ノードA→抵抗223→FET24のゲートに電圧が供給され、FET24はオンとなる。また、FET23のゲートには電圧が供給されないため、FET23はオフとなる。したがって、正位相期間TAでは、FET22及び23がオンとなり、FET21及び24がオフとなる(図3のグラフ(e)~(h)参照)。
【0034】
配線L2が配線L1よりも高電位(ノードBの電位>ノードAの電位)となる負位相期間TBでは以下の動作が発生する。ハイサイドでは、配線L2→ノードB→ツェナーダイオード213→コンデンサ210→ダイオード202→コンデンサ201→ノードAに電流が流れてコンデンサ201が充電される。また、配線L2→ノードB→ダイオード214→抵抗220→N型トランジスタ208のベースに電流(又は電圧)が供給され、N型トランジスタ208がオンする。これにより、N型トランジスタ206がオフし、P型トランジスタ207がオンする。したがって、FET21のゲートに電圧は供給されず、FET21はオフとなる。一方、N型トランジスタ218のベースには電流が供給されず、N型トランジスタ218はオフとなる。これにより、(前サイクルで充電された)コンデンサ211から抵抗215を介してN型トランジスタ216及びP型トランジスタ217の共通ベースに電流(又は電圧)が供給され、N型トランジスタ216がオンし、P型トランジスタ217がオフする。これにより、N型トランジスタ216からFET22のゲートに電圧が供給され、FET22はオンする。
【0035】
また、負位相期間TBにおいて、ローサイドでは、ノードH→FET22→ノードB→抵抗221→FET23のゲートに電圧が供給され、FET23はオンとなる。また、FET24のゲートには電圧が供給されないため、FET24はオフとなる。したがって、負位相期間TBでは、FET21及び24がオンとなり、FET22及び23がオフとなる(図3のグラフ(e)~(h)参照)。
【0036】
制御電源生成回路40は、トランス41、ダイオード401~408並びに平滑コンデンサ409~411を備える。トランス41の一次巻線は、交流電圧配線4(AC入出力端子CN1)に接続される。トランス41の二次巻線の中間タップは、グランドGNDに接続される。トランス41の二次巻線の一端に、ダイオード401及び402のカソード並びにダイオード403及び404のアノードが接続され、トランス41の二次巻線の他端に、ダイオード405及び406のアノード並びにダイオード407及び408のカソードが接続される。平滑コンデンサ409の高電位側端子はダイオード403及び406のカソードに接続され、低電位側端子はグランドGNDに接続される。これにより、平滑コンデンサ409の高電位側端子は、正極性の制御電源Vccとなる。また、平滑コンデンサ410の高電位側端子はグランドGNDに接続され、低電位側端子はダイオード401及び408のアノードに接続される。これにより、平滑コンデンサ410の低電位側端子が、負極性の制御電源となる。同様に、平滑コンデンサ411の高電位側端子はグランドGNDに接続され、低電位側端子はダイオード402及び407のアノードに接続される。これにより、平滑コンデンサ411の低電位側端子が、負極性の検出用電源となる。なお、平滑コンデンサ411は、交流電源ACの全波整流波形を実質的に平滑できる容量(例えば、10μF程度)であることが望ましい。
【0037】
トランス41において、一次巻線数:二次巻線数は、本実施形態では、100:9である。したがって、制御電源Vccは約12V(=9V×ルート2)であり、負極性の制御電源及び検出用電源は約-12V(=-9V×ルート2)である。なお、オペアンプ101及び102並びに後述するコンパレータ504は制御電源Vccを電源として動作し、コンパレータ109は制御電源Vcc及び負極性の制御電源の双方を電源として動作する。
【0038】
出力電圧検出回路50は、DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧が所定の上限値を超える場合に、DC/DCコンバータ10の動作を停止させ、結果として、交流給電装置2の出力を停止させるためのものである。本実施形態では、所定の上限値は、150V付近(150Vを若干超える値)に設定される。これは、本実施形態では交流電源ACは定格電圧100Vの商用電源であり、通常はその標準電圧が101V±6%(95V~107V)と規定され、107V×ルート2が約150Vに相当することに基づく。
【0039】
出力電圧検出回路50は、ツェナーダイオード501、抵抗502、フォトカプラ503、コンパレータ504、抵抗505~510、コンデンサ511及びトランジスタ512を含む。ノードHとノードLの間に、ツェナーダイオード501(カソードがノードH側)と抵抗502とが直列接続され、抵抗502がフォトカプラ503のフォトダイオードに並列接続される。ツェナーダイオード501に適宜の抵抗が直列接続されてもよい。本実施形態では、ツェナーダイオード501のツェナー電圧は150Vである。
【0040】
フォトカプラ503のフォトトランジスタのコレクタは制御電源Vccに接続され、そのエミッタはコンパレータ504の非反転入力端子に接続される。コンパレータ504の反転入力端子は抵抗505を介して制御電源Vccに接続されるとともに抵抗506を介してグランドGNDに接続される。すなわち、制御電源Vccの電圧の、抵抗505及び506による分圧値が、コンパレータ504の反転入力端子に入力される。コンパレータ504の非反転入力端子はさらに、抵抗507を介してグランドGNDに接続されるとともに、抵抗508及びコンデンサ511の直列回路を介してコンパレータ504の出力端子に接続される。コンパレータ504の出力端子は抵抗510及び511を介してグランドGNDに接続され、抵抗510及び511の接続点がトランジスタ512のベースに接続される。トランジスタ512のコレクタはDC/DCコンバータ駆動回路16(PWM信号発生回路18)のコンパレータ109の反転入力端子に接続され、そのエミッタはグランドGNDに接続される。
【0041】
DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧がツェナーダイオード501のツェナー電圧以下である場合、フォトカプラ503のフォトダイオードに電流は流れず、そのフォトトランジスタはオフ状態となる。それにより、コンパレータ504の非反転入力端子の電圧はグランドGNDレベルとなり、コンパレータ504の出力はローレベルとなる。したがって、トランジスタ512はオフとなり、出力電圧検出回路50はPWM信号発生回路18及びDC/DCコンバータ10の動作に影響しない。
【0042】
一方、DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧がツェナーダイオード501のツェナー電圧を超えると、それに応じてフォトカプラ503のフォトダイオードに電流が流れ、それに応じてそのフォトトランジスタがオンする。それにより、コンパレータ504の非反転入力端子の電圧は制御電源Vccレベルとなり、コンパレータ504の出力はハイレベル(又はオープン)となる。したがって、トランジスタ512はオンとなる。これにより、DC/DCコンバータ駆動回路16のコンパレータ109の非反転入力端子の電圧がグランドGNDレベルとなり、コンパレータ109の出力はローレベルに固定され、PWM信号は生成されない(duty0%となる)。これにより、FET13はオフ状態となり、DC/DCコンバータ10の動作は停止する。
【0043】
上記動作によってDC/DCコンバータ10の動作が停止すると、その後、脈流出力電圧は低下する。コンパレータ504の非反転入力端子と出力端子間に接続された抵抗508~510及びコンデンサ511によってヒステリシス特性が付与されるため、脈流出力電圧がツェナーダイオード501のツェナー電圧以下となっても所定期間は、コンパレータ504のハイレベル状態が維持される。その後、脈流出力電圧がさらに低下すると、再度フォトカプラ503のフォトトランジスタがオフし、コンパレータ504の出力がローレベルとなり、トランジスタ512がオフとなり、PWM信号発生回路18によるPWM信号の生成及びそれに伴うDC/DCコンバータ10の動作が再開される。このように、脈流出力電圧が過大な場合には、上記動作が反復されることによって、言い換えるとDC/DCコンバータ10が間欠的に動作及び停止されることによって、その脈流出力電圧は上限値以下に維持される。したがて、脈流出力電圧が過大な場合、出力電圧検出回路50は、交流電源ACの位相全体についてみると、ゼロクロス付近では動作せず、ピーク付近で動作する。結果として、この場合のDC/DCコンバータ10の脈流出力電圧は、ピーク付近が上限値(本実施形態では約150V)にクランプされた波形となる。
【0044】
電源電圧検出回路60は、交流電源AC、すなわち、交流電圧配線4の電圧が所定の下限値未満である場合に、DC/DCコンバータ10の動作を停止させ、結果として、交流給電装置2の出力を停止させるためのものである。本実施形態では、所定の下限値は、交流電源ACの定格電圧の90%に設定される。すなわち、本実施形態では交流電源ACは定格電圧100Vの商用電源であるので、所定の下限値は90Vとなる。なお、本実施形態では、交流電源ACの電圧が所定の下限値未満の状態を電源電圧低下時といい、それ以外の状態を電源電圧正常時というものとする。
【0045】
電源電圧検出回路60は、シャントレギュレータ601、トランジスタ(FET)602並びに抵抗603~605を含む。シャントレギュレータ601のアノードが平滑コンデンサ411の一端に接続され、カソードが抵抗603を介してグランドGNDに接続されるとともにFET602のゲートに接続される。FET602のドレインがDC/DCコンバータ駆動回路16のコンパレータ109の非反転入力端子に接続され、ソースがグランドGNDに接続される。シャントレギュレータ601のアノードとグランドGNDの間に適宜の分圧比の抵抗604及び605が接続され、その接続点がシャントレギュレータ601のリファレンスに接続される。抵抗604及び605は、微調整可能な可変抵抗であってもよい。
【0046】
シャントレギュレータ601のアノード(平滑コンデンサ411の一端側)の電圧は、電源電圧正常時には約-12Vとなり、電源電圧低下時には上昇する(その絶対値が減少する)。FET602は、いわゆるNチャネルJ-FETであり、ソース-ゲート電圧がマイナスの閾値未満である場合にオフし、ソース-ゲート電圧がマイナスの閾値以上(例えば、0V)である場合にオンする。電源電圧正常時にはシャントレギュレータ601のカソード電圧が上記閾値未満となり、電源電圧低下時にはカソード電圧が0Vとなるように、シャントレギュレータ601及び抵抗604及び605が設定されるものとする。これにより、FET602は、電源電圧正常時にはオフ状態であり、電源電圧低下時にはオン状態となる。
【0047】
電源電圧正常時にFET602がオフ状態であると、電源電圧検出回路60はPWM信号発生回路18及びDC/DCコンバータ10の動作に影響しない。一方、電源電圧低下時にFET602がオンされると、DC/DCコンバータ駆動回路16のコンパレータ109の非反転入力端子の電圧がグランドGNDレベルとなり、コンパレータ109の出力はローレベルに固定され、PWM信号は生成されない(duty0%となる)。これにより、FET13はオフ状態となり、DC/DCコンバータ10の動作は停止する。
【0048】
図3に、上述した交流給電装置2の動作に関する各部波形を示す。図3では、横軸を時間として、(a)交流電圧配線4の電圧、(b)コンパレータ109の反転入力電圧(三角波)及び非反転入力電圧(全波整流波)、(c)FET13のゲートPWM信号、(d)DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧、及び(e)~(h)FET21~24の動作(オン/オフ)を示す。なお、各グラフは、説明のための模式図であり、実際の波形から適宜省略、誇張、拡縮などされている。
【0049】
以上のように、本実施形態による交流給電装置2は、直流発電装置(太陽光パネル)3から交流電圧配線4に交流出力電圧を供給する交流給電装置2であって、直流発電装置3から直流入力電圧が供給され、直流入力電圧を交流電圧配線4の交流電圧の全波整流波形に同期する脈流波形の直流出力脈流出力電圧に変換するDC/DCコンバータ10と、FET21~24並びにフルブリッジ駆動回路25を含み、脈流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータ20と、を備える。FET21及び23は、FET21を高電位側としてDC/DCコンバータ10の出力端間に直列接続され、FET21とFET23との接続点は配線L1を介して交流電圧配線4の一方に接続される。FET22及び24は、FET22を高電位側としてDC/DCコンバータ10の出力端間に直列接続され、FET22とFET24との接続点は配線L2を介して交流電圧配線4の他方に接続される。フルブリッジ駆動回路25は、配線L2が配線L1よりも高電位となる負位相期間TBでは配線L2の電圧に基づいて第1の電圧を充電し、配線L1が配線L2よりも高電位となる正位相期間TAでは配線L1の電圧に基づいて第2の電圧を充電するように構成され、正位相期間TAでは、FET22及び23がオフした状態で、第1の電圧に基づいてFET21がオンするとともに配線L1の電圧によってFET24がオンし、負位相期間TBでは、FET21及び24がオフした状態で、第2の電圧に基づいてFET22がオンするとともに配線L2の電圧によってFET23がオンするように構成される。
【0050】
このように、交流給電装置2は直流入力電圧を脈流出力電圧に変換するDC/DCコンバータ10と、この脈流出力電圧を交流出力電圧に変換するDC/ACコンバータ20とを備え、DC/ACコンバータ20は交流電源ACに同期して自励駆動される。これにより、直流発電装置3から交流電圧配線4に交流電圧を供給する交流給電装置2を簡素かつ安価な構成で実現することができる。
【0051】
より具体的には、フルブリッジ駆動回路25は、FET21及び22のゲート接続されたハイサイド駆動回路25a並びにFET23及び24のゲートに接続されたローサイド駆動回路25bを含む。ハイサイド駆動回路25aは、コンデンサ201,211、ダイオード202,212、ツェナーダイオード203,213、ダイオード204,214、抵抗205,215、N型トランジスタ206,216、P型トランジスタ207,217、N型トランジスタ208,218、コンデンサ210及び抵抗220を含む。
コンデンサ201/211の低電位側ノードC1L/C2Lには、ツェナーダイオード203/213のアノード、ダイオード204/214のアノード、P型トランジスタ207/217のコレクタ及びN型トランジスタ208/218のエミッタが接続される。コンデンサ201/211の高電位側ノードC1H/C2Hには、ダイオード202/212のカソード及びN型トランジスタ206/216のコレクタが接続される。ダイオード202/212のアノードはツェナーダイオード203/213のカソードに接続される。N型トランジスタ206/216及びP型トランジスタ207/217の共通ベースが、抵抗205/215を介してノードC1H/C2Hに接続されるとともにN型トランジスタ208/218のコレクタに接続される。N型トランジスタ206/216及びP型トランジスタ207/217の共通エミッタが、FET21/22のゲートに接続される。N型トランジスタ208/218のベースがダイオード204/214のカソードに接続される。
コンデンサ210は、ダイオード202とツェナーダイオード203の接続点と、ダイオード212とツェナーダイオード213の接続点との間に接続される。抵抗220は、N型トランジスタ208のベースとN型トランジスタ218のベースとの間に接続される。
ローサイド駆動回路25bは、抵抗221,223及びツェナーダイオード222,224を含み、抵抗221はFET23のゲートとFET22のソースの間に接続され、抵抗223はFET24のゲートとFET21のソースの間に接続される。
これにより、最小限の回路素子で本実施形態の効果を得ることができる。
【0052】
さらに、交流給電装置2は、DC/DCコンバータ10の脈流出力電圧を検出し、検出された脈流出力電圧が所定の上限値を超える場合にDC/DCコンバータ10の出力を停止させる出力電圧検出回路50をさらに備える。これにより、交流電源ACの定格値を大きく超える交流電圧が交流電圧配線4に重畳されることに起因して交流電圧配線4に接続される負荷6(家電機器など)が故障する事態を回避することができ、安全性が確保される。
【0053】
また、交流給電装置2は、交流電圧配線4の交流電圧を検出し、検出された交流電圧が所定の下限値未満となる場合にDC/DCコンバータ10の出力を停止させる電源電圧検出回路60をさらに備える。所定の下限値は、例えば、交流電圧配線に関する定格交流電圧の90%である。これにより、交流給電装置2の電圧が交流電圧配線4の電圧を大幅に超えることによって交流給電装置2から交流電圧配線4に大電流が流れる状況を回避することができ、交流給電装置2の信頼性が高まる。また、交流電源ACの定格(例えば、100V)に対して高い定格(例えば、200V)の交流給電装置2が誤接続された場合でも、交流給電装置2の動作が確実に停止される。したがって、交流電源ACの定格値を大きく超える交流電圧が交流電圧配線4に重畳されることに起因して交流電圧配線4に接続される負荷6(家電機器など)が故障する事態を回避することができ、安全性が一層高まる。
【0054】
また、交流給電装置2は、交流電圧配線4が商用電源とコンセント4aの間に接続された配線であり、配線L1及びL2をコンセント4aに接続するためのプラグ2bを備えていてもよい。これにより、交流給電装置2又は交流給電システム1が容易に交流電圧配線4に接続可能となり、交流給電装置2又は交流給電システム1の導入容易性が高まる。
【0055】
交流給電システム1は、上記の交流給電装置2と、交流給電装置2のDC/DCコンバータ10のDC入力端子CN2に接続される直流発電装置3とを備える。また、交流電圧配線4は商用電源とコンセント4aの間に接続された配線であり、交流給電装置2は配線L1及びL2をコンセント4aに接続するための配線2a及びプラグ2bを備えていてもよい。これにより、上記の各効果を享受することができ、導入容易性の高い交流給電システム1が実現される。
【0056】
<変形例>
以上に本発明の好適な実施形態を示したが、本発明は、例えば以下に示すように種々の態様に変形可能である。
【0057】
(1)交流給電装置2の配線2aに関する変形
上記実施形態では、交流給電装置2の配線2aの先端にプラグ2bが接続される構成を示したが、配線2aの先端にプラグ2bは接続されなくてもよい。この場合、配線2aの先端は、分電盤5内の所定の端子に接続され得る。
【0058】
(2)直流発電装置3に関する変形
上記実施形態では、直流発電装置3として太陽光パネルを想定したが、直流発電装置3は風力発電装置など、他の直流出力可能な電源装置であってもよい。ただし、風力発電装置は、その発電機の交流出力を直流出力に変換するための変換器を有している必要がある。また、各直流発電装置3の出力が、少なくともDC/DCコンバータ10の許容電圧未満及び許容電流未満となるように構成される必要がある。
【0059】
(3)DC/DCコンバータ10に関する変形
上記実施形態では、DC/DCコンバータ10は昇降圧型のフライバックコンバータであるが、DC/DCコンバータ10のコンバータ形式はこれに限られず、例えば、バックブーストコンバータも採用可能である。また、上記実施形態では、太陽光パネル3の定格出力電圧が47Vに設定され、かつ太陽光パネル3の低発電時(低電圧時)にもDC/DCコンバータ10が動作するように構成されるため、DC/DCコンバータ10は昇降圧コンバータとして構成される。ただし、太陽光パネル3の定格出力電圧が交流電源電圧×ルート2(上記実施形態では141V)よりも高い電圧に設定され、かつ太陽光パネル3の低発電時(低電圧時)にDC/DCコンバータ10が停止されるように構成される場合には、DC/DCコンバータ10は降圧コンバータとして構成されてもよい。
【0060】
(4)交流電源ACの定格に関する変形
上記実施形態では、交流電源ACが定格100Vである場合を説明したが、本実施形態に適用され得る定格値はこれに限られず、110V、115V、120V、200V、220V、230V、240Vなどであってもよい。したがって、上記実施形態では、プラグ2b及びコンセント4aは標準のAタイプであることが前提となっているが、プラグ2b及びコンセント4aは、使用国、仕様などに応じて、200Vエアコン用のタンデム型又はエルバー型、Bタイプ、Cタイプ、SEタイプ、B3タイプ、BFタイプ、Oタイプ、O2タイプなどであってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 交流給電システム
2 交流給電装置
2a 配線
2b プラグ
3 太陽光パネル(直流発電装置)
3a 配線
4 交流電圧配線
4a コンセント
10 DC/DCコンバータ
20 DC/ACコンバータ
21~24 FET(スイッチング素子)
25 フルブリッジ駆動回路(駆動回路)
25a ハイサイド駆動回路
25b ローサイド駆動回路
30 フィルタ回路
40 制御電源生成回路
50 出力電圧検出回路
60 電源電圧検出回路
CN1 AC入出力端子
CN2 DC入力端子
L1、L2 配線
図1
図2
図3