(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158094
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】内装部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
B60K 37/00 20240101AFI20241031BHJP
B60R 13/02 20060101ALI20241031BHJP
B60K 37/20 20240101ALI20241031BHJP
【FI】
B60K37/00 A
B60R13/02 Z
B60K37/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072964
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 真也
【テーマコード(参考)】
3D023
3D344
【Fターム(参考)】
3D023BB01
3D023BC01
3D023BD12
3D023BE02
3D023BE11
3D023BE31
3D344AA03
3D344AC04
(57)【要約】
【課題】内装部材における部品コストを抑えながらも反射光を低減することが可能な内装部材の製造方法を提供する。
【解決手段】車内と車外を区画するウインドガラス5と対向する位置に配置される車両1の内装部材10の製造方法は、発泡樹脂成形体10Aを射出成形により成形する成形工程S1と、発泡樹脂成形体10Aの内部の発泡層13が露出するように、発泡樹脂成形体10Aの表層11,12のうち、ウインドガラス5と対向する表層11を除去する除去工程S2と、を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内と車外を区画するウインドガラスと対向する位置に配置される車両の内装部材の製造方法であって、
発泡樹脂成形体を射出成形により成形する成形工程と、
前記発泡樹脂成形体の内部の発泡層が露出するように、前記発泡樹脂成形体の表層のうち、前記ウインドガラスと対向する表層を除去する除去工程と、を含む内装部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内装部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両走行時に、車両と太陽等の光源との位置関係によって、鏡面現象等が発生し、車室内の内装部材が、フロントガラスなどのウインドガラスに反射光として生じることがある(窓移り、映り込み等ともいう)。この場合、車室内の乗員、とりわけドライバーは、反射光によって、視野が乱されて良好な視野が得られなくなるおそれがある。
【0003】
反射光を低減する技術として、たとえば特許文献1には、車室内においてフロントガラスの下方に位置するインストルメントパネル(以下、インパネともいう)等の内装部材の表面に、車両幅方向成分の光振動を吸収する偏光層を設ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている偏光層を設ける構成では、偏光層の基となる部品の追加が必要になるなど、主に内装部材における部品コストの増加が懸念される。
【0006】
本発明は、このような懸念点を解決するためになされたもので、内装部材における部品コストを抑えながらも反射光を低減することが可能な内装部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る内装部材の製造方法は、車内と車外を区画するウインドガラスと対向する位置に配置される車両の内装部材の製造方法であって、発泡樹脂成形体を射出成形により成形する成形工程と、前記発泡樹脂成形体の内部の発泡層が露出するように、前記発泡樹脂成形体の表層のうち、前記ウインドガラスと対向する表層を除去する除去工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、内装部材における部品コストを抑えながらも反射光を低減することが可能な内装部材の製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材が適用された車両の車内構造における一例の概略構成を示す斜視図。
【
図3】本実施形態に係る内装部材の製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10について図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10が適用された車両1の車内構造における一例の概略構成を車内側から視て示した斜視図である。
図2は、
図1を車内左側面側から視た要部拡大断面図である。
【0011】
図1に示すように、車両1は、ウインドガラス5と、内装部材10と、を備えている。なお、ウインドガラス5としては、フロントガラス、サイドガラス、及び、リアガラス等が挙げられる。また、内装部材10としては、インパネ、コンソールボックス、及び、ドアトリム等が挙げられる。本実施形態では、ウインドガラス5としてフロントガラスを示し、内装部材10としてインパネを示して説明する。
【0012】
ウインドガラス5は、車両1前方に向けて傾斜した状態で組付けられている。ウインドガラス5は、車内と車外を区画する。
【0013】
内装部材10は、ウインドガラス5と対向する位置に配置される。具体的には、内装部材10は、ウインドガラス5の鉛直方向Z下方、且つ、運転席及び助手席よりも前後方向Y前方に配置される。内装部材10は、車内における幅方向X全域に広がっている。
【0014】
内装部材10は、発泡層13と、表層12と、を有する発泡樹脂成形体である。内装部材10の材料は、発泡性を有する樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン(PP)等の熱可塑性樹脂に発泡性を付与したものであればよい。
【0015】
内装部材10は、ウインドガラス5と対向する面(以下、ガラス対向面101ともいう)が発泡層13となっている。更に、内装部材10は、ウインドガラス5と対向しない面(以下、非ガラス対向面102ともいう)が表層12となっている。非ガラス対向面102は、ウインドガラス5から視てガラス対向面101よりも鉛直方向Z下方に位置する。すなわち、内装部材10の各層12,13は、鉛直方向Zにおいて、ウインドガラス5側から発泡層13、表層12の順に並んでいる。
【0016】
内装部材10は、発泡性を有した樹脂を成形型内で射出しつつ発泡させながら成形された発泡樹脂成形体から作製される。このような発泡樹脂成形体は、非発泡の表層(スキン層)を有する。表層12は、この非発泡の表層の一部である。
【0017】
発泡層13は、複数の気泡を有している。発泡層13の気泡径は、約100μmから約3mmまでの範囲にある。これにより、内装部材10におけるガラス対向面101の表面である露出した発泡層13の表面131は、複数の気泡の並びによって、凹凸形状となっている。
【0018】
図3は、本実施形態に係る内装部材10の製造方法を説明する図である。
【0019】
以下、内装部材10の製造方法について説明する。
図3に示すように、内装部材10の製造方法は、成形工程S1と、除去工程S2と、を含む。
【0020】
成形工程S1では、
図3(A)に示すように、発泡樹脂成形体10Aを射出成形により成形する。なお、発泡樹脂成形体10Aは、内装部材10の製造途中のものである。
【0021】
射出成形としては、当技術分野で公知の成形方法が挙げられ、限定されないが、例えば予め炭酸水素ナトリウム系発泡剤及びポリプロピレンを混合した混合物を成形型内に射出充填し、コアバック成形法によって充填した混合物を発泡し、保圧及び冷却をして成形する方法が挙げられる。
【0022】
例えば、上述の射出成形によって成形された発泡樹脂成形体10Aは、成形型に接触していた部分が表層11,12となり、当該表層11,12に囲まれた部分が発泡層13となる。発泡樹脂成形体10A(後の内装部材10)の表層11,12、及び、ウインドガラス5の位置関係としては、ウインドガラス5と対向する側が第1表層11であり、ウインドガラス5と対向しない側が第2表層12である。すなわち、第1表層11は、ガラス対向面101側の表層であり、第2表層12は、非ガラス対向面102側の表層である。なお、第1表層11及び第2表層12は、非発泡部分であり、いわゆるスキン層である。また、発泡層13は、発泡樹脂成形体10Aの内部にある発泡部分である。
【0023】
除去工程S2では、
図3(B)に示すように、発泡樹脂成形体10Aの内部の発泡層13が露出するように、発泡樹脂成形体10Aの表層11,12のうち、ウインドガラス5と対向する第1表層11を除去する。
【0024】
第1表層11の除去方法としては、当技術分野で公知の成形方法が挙げられ、限定されないが、例えば所定の高さに沿って引いた仮想切断線Eを基準にしてマシニングセンタによって切削する等の機械的切削方法が挙げられる。なお、除去工程S2において、発泡層13が露出するのであれば、第1表層11とともに、発泡層13の一部が除去されてもよい。
【0025】
この結果、発泡樹脂成形体10Aは、
図3(C)に示すように、第1表層11が除去され、ガラス対向面101側において発泡層13の凹凸形状の表面131が露出した状態になる。これにより、発泡樹脂成形体10Aから、内装部材10が作製される。
【0026】
本実施形態によれば、例えば
図2に示すように、太陽からの入射光Lが内装部材10に入射した場合に、露出した発泡層13の表面131が凹凸形状になっていることによって、入射光Lは、表面131で反射光Rとして拡散(乱)反射する。これにより、本実施形態における、映り込みに寄与する一定の方向の反射光Rの反射光成分は、第1表層11を除去しない内装部材のものに比べて、小さくなる。この結果、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10によれば、ウインドガラス5への内装部材10の映り込みが抑制される程度に反射光Rを低減することができる。
【0027】
従来技術における内装部材の製造方法では、反射光を低減するために、偏光用部品の素材を別途用意し、加工して偏光部品とし、内装部材に当該偏光部品を取り付けていたところ、部品コスト及び加工コストが増加していた。これに対し、本実施形態に係る内装部材10の製造方法は、従来から行われている成形工程S1以外に、発泡層13を露出するように第1表層11を除去する除去工程S2を含むのみである。すなわち、本実施形態に係る内装部材10の製造方法によれば、反射光を低減するために、増加するコストは加工コストのみとなり、部品コストを抑えることができる。したがって、本実施形態に係る内装部材10の製造方法によれば、内装部材における部品コストを抑えながらも反射光を低減することが可能となる。
【0028】
更に、本発明者は、表面が平滑面である内装部材の表面粗さの20倍以上の表面粗さを有する内装部材であれば、ウインドガラスへの内装部材の映り込みがより抑制されることを知見した。また、本発明者は、表面がシボ加工された内装部材と、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10と、をその表面粗さで比較した。シボ加工された内装部材の表面粗さは、表面が平滑面である内装部材の表面粗さの18倍程度であった。これに対し、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10の表面粗さは、表面が平滑面である内装部材の表面粗さの40倍~50倍程度の表面粗さを有していた。したがって、本実施形態に係る製造方法によって製造された内装部材10は、シボ加工されたものに比べて、ウインドガラスへの内装部材の映り込みがより抑制されるといえる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0030】
1…車両、5…ウインドガラス(フロントガラス)、10…内装部材(インストルメントパネル)、11,12…表層、13…発泡層