(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158099
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】点滴スタンド
(51)【国際特許分類】
A61J 1/16 20230101AFI20241031BHJP
A61M 5/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61J1/16 D
A61M5/14 532
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072971
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】513180842
【氏名又は名称】鹿島木材株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504300181
【氏名又は名称】国立大学法人浜松医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】金指 憲人
(72)【発明者】
【氏名】松本 勝富
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 岳児
【テーマコード(参考)】
4C047
4C066
【Fターム(参考)】
4C047EE04
4C066AA09
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD01
4C066LL30
(57)【要約】
【課題】被点滴者の周囲のスペースの使用効率を向上させることができる点滴スタンドを提供する。
【解決手段】点滴スタンド100は、支柱本体101とベース体130とで構成されている。支柱本体101は、上下方向に延びる平坦面からなる第1主面102と第2主面103とを有するとともに、これらの第1主面102および第2主面103にそれぞれ直交する方向がこれらの第1主面102および第2主面103の各幅よりも短い幅で形成された第1側面120および第2側面122とを有して全体として板状に形成されている。この支柱本体101の上端部には、第1主面102および第2主面103に点滴液容器Bを吊下げるためのフック状の容器保持部107がそれぞれ設けられている。また、支柱本体101は、板状に形成されてキャスタ131を備えるベース体130の上面に起立した状態で支持されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
点滴液容器を吊下げるための容器保持部と、
上下方向に延びて前記容器保持部を支持する支柱本体とを備えた点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体は、
上下方向に延びる平坦面からなる主面と、
前記主面に直交する方向が同主面の幅よりも短い幅で形成された側面とを有する板状に形成されていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項2】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記容器保持部は、
前記主面に設けられていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項3】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記主面は、
上方部分が下方部分よりも幅が狭く形成されていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項4】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記主面は、
手が通る程度の貫通孔からなる主面貫通孔が形成されていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項5】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体は、
木製であることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項6】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体は、
互いに相対的に硬さの異なる硬質部と軟質部とで構成されていることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項7】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体は、
幅方向の端部近傍に貫通孔または有底穴が形成されており、
前記端部が手で握るまたは手を掛けることができる把持部であることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項8】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記側面は、
前記主面の幅方向に張り出しまたは引っ込んだ段部を有していることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項9】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体の下部部分に錘を備えることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項10】
請求項1に記載した点滴スタンドにおいて、
前記支柱本体の下部部分に水平方向に広がって前記支柱本体を起立した状態で支持するベース体を備えることを特徴とする点滴スタンド。
【請求項11】
請求項10に記載した点滴スタンドにおいて、
前記ベース体は、
人が載ることができる大きさに形成されているとともに床面上を転がるキャスタを備えていることを特徴とする点滴スタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点滴用の薬液を収容する点滴液容器を吊るす点滴スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、病院、介護施設または自宅で点滴を行う際に点滴用の薬液を収容する点滴容器を吊るす点滴スタンドが用いられている。例えば、下記特許文献1には、ベースから鉛直方向に延びる支柱にフックを備えた点滴スタンドが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された点滴スタンドにおいては、点滴液容器を支持するためだけに点滴を受ける被点滴者の限られた周囲のスペースの一部を専有するため、スペースの使用効率が低いという問題がある。
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、被点滴者の周囲のスペースの使用効率を向上させることができる点滴スタンドを提供することにある。
【発明の概要】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、点滴液容器を吊下げるための容器保持部と、上下方向に延びて容器保持部を支持する支柱本体とを備えた点滴スタンドにおいて、支柱本体は、上下方向に延びる平坦面からなる主面と、主面に直交する方向が同主面の幅よりも短い幅で形成された側面とを有する板状に形成されていることにある。
【0007】
このように構成した本発明の特徴によれば、点滴スタンドは、平坦面からなる主面と厚さ方向の側面とを有する板状に形成されているため、主面部分にメモ紙、注意書き、メッセージカードまたは写真などを貼り付けたり、スマートフォン、フォトフレームまたは鍵類などの小物を吊下げたりすることができるなど点滴液容器以外の他の物品を保持するホルダー、掲示板またはメッセージボードとしての機能を発揮させることができ患者の周囲のスペースの使用効率を向上させることができる。また、点滴スタンドは、支柱本体が板状に形成されているため、周囲(例えば、隣のベッド)からの目線を遮る衝立としても使用することができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、容器保持部は、主面に設けられていることにある。
【0009】
これによれば、点滴スタンドは、容器保持部が主面に設けられているため、吊り下げられた点滴液容器の背面が主面に当たって点滴液容器の揺れを抑制して安定的に支持することができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、主面は、上方部分が下方部分よりも幅が狭く形成されていることにある。
【0011】
これによれば、点滴スタンドは、主面の上方部分が下方部分よりも幅が狭く形成されているため、上方に延びる点滴スタンドの重心位置を下げて安定性を確保することができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、主面は、手が通る程度の貫通孔からなる主面貫通孔が形成されていることにある。
【0013】
これによれば、点滴スタンドは、主面に手が通る程度の主面貫通孔が形成されているため、板状に形成された支柱本体の周囲を迂回することなく貫通孔を介して会話、物品の受け渡しまたは支柱本体の反対側の様子を視認することができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、支柱本体は、木製であることにある。
【0015】
これによれば、点滴スタンドは、支柱本体が木材で構成されているため、種々の物品の取り付けが容易であるとともに、製造者のみならず点滴スタンドの使用者側での加工も容易になるため点滴スタンドの使い勝手を飛躍的に向上させることができる。具体的には、例えば、使用者は、メモ紙などの紙類、写真などのシート類、フォトフレーム、掲示板、物品を収容または保持するホルダー(例えば、物を収納するための布製または樹脂製のポケットまたはクリップ)、または物を引っ掛けるためのピンまたはフックなどを画鋲などのピン、粘着テープまたは接着剤などを用いて容易に主面部分に脱着自在な状態または脱着不能な状態で取り付けることができる。
【0016】
また、使用者は、主面における所望する場所に工具などを用いて棚またはタオル掛けなどの掛け具を作ったり、貫通孔または有底穴を形成したりまたは手で握る取っ手を取り付けたりすることができる。また、点滴スタンドは、木製であるため、使用者に対して安心感または癒し感を与えることができる。また、点滴スタンドは、支柱本体を彫ることで名前またはメッセージを刻むことができる。
【0017】
また、さらに、点滴スタンドは、点滴スタンドの使用後は分解することで木材として他の用途に使用することができる。この場合、例えば、点滴スタンドの使用者が亡くなった場合においては、適当な大きさの木片に加工することで故人の形見として残しておくこともできる。
【0018】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、支柱本体は、互いに相対的に硬さの異なる硬質部と軟質部とで構成されていることにある。
【0019】
これによれば、点滴スタンドは、支柱本体が相対的に硬さの異なる硬質部と軟質部とで構成されているため、複数の使用用途に応じて使い分けることができる。具体的には、支柱本体における硬質部は、棚、タオル掛けまたは取っ手など比較的大きな力が付加されるものを取り付けることができる。また、支柱本体における軟質部は、メモ紙などの紙類、写真などのシート類、フォトフレーム、掲示板、物品を収容または保持するホルダー(例えば、物を収納するための布製または樹脂製のポケットまたはクリップ)、または物を引っ掛けるためのピンまたはフックなどを画鋲などのピンを用いて容易に取り付けることができる。また、軟質部は、彫ることで名前またはメッセージを簡単に刻むことができる。
【0020】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、支柱本体は、幅方向の端部近傍に貫通孔または有底穴が形成されており、端部が手で握るまたは手を掛けることができる把持部であることにある。
【0021】
これによれば、点滴スタンドは、支柱本体が幅方向の端部近傍に貫通孔または有底穴が形成されてこの端部が手で握るまたは手を掛けることができる把持部であるため、主面を取っ手として使用することができる。
【0022】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、側面は、主面の幅方向に張り出しまたは引っ込んだ段部を有していることにある。
【0023】
これによれば、点滴スタンドは、側面が主面の幅方向に張り出したまたは引っ込んだ段部を有しているため、使用者が段部を介して点滴スタンドに容易に手を掛けて支えとしたり点滴スタンドを押すまたは曳く部分として利用したりして点滴スタンドを容易に移動させることができる。
【0024】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、支柱本体の下部部分に錘を備えることにある。
【0025】
これによれば、点滴スタンドは、支柱本体の下部部分に錘を備えているため、上方に延びる点滴スタンドの重心位置を下げて安定性を確保することができる。
【0026】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、支柱本体の下部部分に水平方向に広がって支柱本体を起立した状態で支持するベース体を備えることにある。
【0027】
これによれば、点滴スタンドは、支柱本体の下部部分に水平方向に広がって支柱本体を起立した状態で支持するベース体を備えているため、上方に延びる点滴スタンドの安定性を向上させることができる。この場合、ベース体は、板状に形成してもよいし、支柱本体の中心部から放射状に延びる棒状または同中心部を中心とする環状に形成することもできる。
【0028】
また、本発明の他の特徴は、前記点滴スタンドにおいて、ベース体は、人が載ることができる大きさに形成されているとともに床面上を転がるキャスタを備えていることにある。
【0029】
これによれば、点滴スタンドにおいて、ベース体は人が載ることができる大きさに形成されているとともに床面上を転がるキャスタを備えているため、人がベース体上に載ることで人の移動を容易にすることができるとともに、災害時に人がベース体上に載ることで人を迅速に移動(避難)させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明に係る点滴スタンドの外観構成の概略を示す正面図である。
【
図2】
図1に示す点滴スタンドの外観構成の概略を示す側面図である
【
図3】
図1に示す点滴スタンドを車椅子に最接近させた状態を示す説明図である。
【
図4】
図1に示す点滴スタンドにおけるベース体上に人が載って避難する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明に係る点滴スタンドの一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明に係る点滴スタンド100の外観構成の概略を示す正面図である。また、
図2は、
図1に示す点滴スタンド100の外観構成の概略を示す側面図である。
【0032】
(点滴スタンド100の構成)
この点滴スタンド100は、病院、介護施設または家庭内において点滴を行う際に点滴用の薬液を収容する点滴液容器Bを吊るすための器具である。この点滴スタンド100は、主として、支柱本体101とベース体130とを備えている。
【0033】
支柱本体101は、点滴液容器Bを所定の高さで支持するための部品であり、図示上下方向に延びる板状に形成されている。本実施形態においては、支柱本体101は、木材(スギの集成材)を高さが1800mmの板状に形成して構成されている。この支柱本体101は、図示上下方向に延びて支柱本体101を構成する板状体における両面を構成する第1主面102および第2主面103と、これらの第1主面102および第2主面103にそれぞれ直交する方向(つまり、厚さ方向)がこれらの第1主面102および第2主面103の幅よりも短い幅で形成された第1側面120および第2側面122とをそれぞれ有して構成されている。
【0034】
第1主面102および第2主面103は、支柱本体101を構成する板状体における互いに反対側の表面を構成しており、それぞれ平坦面で構成されている。この場合、第1主面102と第2主面103とは、互いに表裏対称に形成されている。これらの第1主面102および第2主面103には、幅広部104、第1幅狭部105および第2幅狭部106をそれぞれ備えている。
【0035】
幅広部104は、ベース体130から立ち上がって上方に延びる部分であり、第1幅狭部105よりも広い幅で形成されている。本実施形態においては、幅広部104は、145mmの幅でベース体130の上面から1000mmの高さまで延びて形成されている。また、幅広部104の幅方向の両端部の一方におけるベース体130との付け根部分には、張出部104aが形成されている。
【0036】
張出部104aは、点滴スタンド100を移動させる際における前側を示すとともに、後述する硬質部112に各種外部機械器具を取り付けた際の支柱本体101の安定性を向上させる部分であり、幅広部104の同幅方向に張り出して形成されている。この場合、張出部104aは、下方(ベース体130側)に向かって張り出し量が増加するように形成されている。なお、この支柱本体101は、この張出部104aを省略して構成することもできる。
【0037】
第1幅狭部105は、幅広部104の上方に第1段部121を介して幅広部104よりも狭い幅で上方に向かって延びて形成された部分である。また、第2幅狭部106は、第1幅狭部105の上方に第2段部123を介して第1幅狭部105よりも狭い幅で上方に向かって延びて形成された部分である。本実施形態においては、第2幅狭部106の幅は、60mmに形成されている。この第2幅狭部106の上端部には、ガード108を介して容器保持部107が形成されている。
【0038】
容器保持部107は、点滴液容器Bを着脱自在な状態で保持するための部分である。本実施形態においては、容器保持部107は、J字状に形成された金属製のフックで構成されている。この容器保持部107は、第1主面102および第2主面103の各第2幅狭部106にガード108を介してそれぞれ設けられている。この場合、各容器保持部107は、ガード108に対して針部(図示せず)を介して挿し込まれた状態で接着剤によって取り付けられている。
【0039】
ガード108は、容器保持部107を第2幅狭部106に取り付けるとともに容器保持部107が周囲の他の物品への過度の接触を防止するための部品である。具体的には、ガード108は、容器保持部107が取り付けられる板状のベース部とベース部上に取り付けられた容器保持部107の上方に庇状に張り出して形成された半円形板状の張出部とで構成されている。第1主面102および第2主面103には、主面貫通孔110、把持部111および硬質部112をそれぞれ備えている。
【0040】
主面貫通孔110は、把持部111を形成するとともに種々の用途に使うことができる部分であり、第1主面102と第2主面103を厚さ方向に貫通する貫通孔によって構成されている。具体的には、主面貫通孔110は、第1主面102および第2主面103の幅方向中央部に上下方向に延びて形成されている。この場合、主面貫通孔110は、少なくとも点滴スタンド100の使用者の手が抜き差しできる程度の大きさで形成されている。
【0041】
ここで、点滴スタンド100の使用者とは、被点滴者自身、被点滴者に点滴を受けさせる看護師または医師、被点滴者の介助者、被点滴者の家族、知人、友人など被点滴者の周囲にいて被点滴者をサポートする者または偶然居合わせた者を広く含むものである。
【0042】
また、主面貫通孔110は、支柱本体101の幅方向の端部に把持部111を形成するように同端部近傍に形成されている。本実施形態においては、主面貫通孔110は、前記幅広部104内において第1幅狭部105の近くまで幅広に延びて形成された幅広部110aと、第1幅狭部105の近く付近から上方に向かって第1幅狭部105内まで幅広部110aよりも狭い幅で形成された幅狭部110bとで構成されている。この場合、主面貫通孔110は、点滴を受ける被点滴者が床面上、ベッド上または椅子(車椅子を含む)上で把持部111を掴むことができる高さでかつ被点滴者が起立した際にも把持部111を掴むことができる高さの範囲で形成されている。
【0043】
把持部111は、点滴スタンド100の使用者が把持する部分であり、支柱本体101の幅方向の端部に沿って上下方向に延びて形成されている。本実施形態においては、把持部111は、上下方向に直線状に延びて形成されている。また、この把持部111は、点滴スタンド100を移動させる際における後ろ側(張出部104aとは反対側)に形成されている。
【0044】
硬質部112は、第1主面102および第2主面103の使用用途の幅(バリエーション)を拡大するための部分である。具体的には、硬質部112は、第1主面102および第2主面103をそれぞれ構成する材料(本実施形態においては、スギの集成材)よりも硬質な材料(例えば、ナラ材、樫材など)で構成されている。すなわち、硬質部112は、本発明に係る硬質部に相当し、第1主面102および第2主面103は本発明に係る軟質部に相当する。
【0045】
本実施形態においては、硬質部112は、第1主面102および第2主面103における幅方向の端部を凹状に切り欠いた部分に着脱自在な状態で嵌め込まれた丸棒体で構成されている。この場合、硬質部112は、シリンジポンプなどの機器を取り付けるために上下方向に300mmの長さで支柱本体101の上下方向の中間部分に設けられている。また、硬質部112は、第1主面102および第2主面103および第1側面120から張り出さないように形成されている。第1主面102には、主面保持部113および表示部114が設けられている。
【0046】
主面保持部113は、使用者に必要または使用者が所望する物品を一時的に保持するための部分である。本実施形態においては、第1主面102の幅方向に並んだ2つの金属製のピンで構成されている。ここで、主面保持部113に保持される物品としては、ドレンバッグなどの医療用の機械器具または用具のほか、紙を挟んで保持するバインダー、カバンまたは携帯端末装置などの日用小物がある。
【0047】
表示部114は、点滴スタンド100の情報、医療関係者に必要な情報または使用者に必要な情報などの各種情報を表記する部分である。本実施形態においては、表示部114は、点滴スタンド100の識別番号および所有者の情報が記載された金属製の板状体が第1主面102の表面に面一の状態で取り付けられている。ここで、表示部114に表記される情報とは、点滴スタンド100の識別番号および所有者の情報のほか、点滴スタンド100の製造番号、製造者、管理責任者、使用者の氏名または医療情報、使用者の担当医の氏名、使用者の家族の情報または使用者へのメッセージなどがある。
【0048】
第1側面120は、支柱本体101の両側面のうちの一方の側面を構成する部分であり、ベース体130から上方に向かって延びて形成されている。この第1側面120は、ベース体130に対する付け根部分に前記した張出部104aが形成されているとともに、上下方向中央部に硬質部112が設けられている。本実施形態においては、第1側面120の幅(すなわち、支柱本体101の厚さ)は、30mmに設定されている。また、第1側面120には、前記した幅広部104と第1幅狭部105との間に第1段部121が形成されている。
【0049】
第1段部121は、使用者など点滴スタンド100の周囲に居る人が手を掛けることができる部分であり、上方に向かって内側に傾斜する傾斜面で構成されている。
【0050】
第2側面122は、支柱本体101の両側面のうちの他方の側面を構成する部分であり、ベース体130から上方に向かって延びて形成されている。この第1側面120には、前記した第1幅狭部105と第2幅狭部106との間に第2段部123が形成されている。
【0051】
第2段部123は、前記第1段部121と同様に、使用者など点滴スタンド100の周囲に居る人が手を掛けることができる部分であり、上方に向かって内側に傾斜する傾斜面で構成されている。この場合、第2段部123は、第1段部121よりも高い位置に形成されている。この支柱本体101は、ベース体130の上面中央部に起立した状態でベース体130の下面側からボルト(図示せず)によって取り付けられている。
【0052】
ベース体130は、支柱本体101を移動可能な状態で支持するための部品であり、平面視で円板状の板状体で構成されている。この場合、ベース体130は、人が載ることができる大きさに形成されている。本実施形態においては、ベース体130は、木材(例えば、スギの集成材)を直径が400mmで厚さが60mmの円板状に形成して構成されている。この場合、ベース体130は、外周部の上部から上面に向かってテーパ状に外径が縮小する斜面部130aが形成されている。このベース体130の下面には、キャスタ131および錘132がそれぞれ設けられている。
【0053】
キャスタ131は、点滴スタンド100を床面上で移動させるための車輪である。このキャスタ131は、ベース体130の下面における周縁部に周方向に沿って等間隔に6つ設けられている。この場合、キャスタ131は、車輪の向きが自由に変えられるようにベース体130の下面に取り付けられている。本実施形態においては、キャスタ131は、車輪部分がウレタン樹脂で構成されており、一般家庭における床面(フローリング、カーペット、絨毯または畳)を転がり易く形成されている。
【0054】
錘132は、点滴スタンド100の重心位置を低くして安定させるための部品であり、平面視で円板状の板状体で構成されている。本実施形態においては、錘132は、木材(例えば、スギの集成材)で構成されている。この錘132は、ベース体130の下面中央部にボルトによって取り付けられている。
【0055】
(点滴スタンド100の作動)
次に、上記のように構成した点滴スタンド100の作動について説明する。点滴スタンド100の使用者は、点滴を受ける被点滴者の近傍に点滴スタンド100を配置して点滴液容器Bを容器保持部107に引っ掛けることで被点滴者の近傍で点滴液容器Bを容器保持部107に対応する高さで点滴スタンド100に保持させることができる。この場合、使用者は、2つ以上の点滴液容器Bを2つの容器保持部107の一方または両方に引っ掛けることができる。なお、点滴液容器Bは、本実施形態においては樹脂製の袋で構成されているが、樹脂製またはガラス製のボトルであってもよいことは当然である。
【0056】
また、被点滴者は、ベッドまたは床に寝た姿勢で、ベッド、床または椅子(車椅子を含む)に座った姿勢で、または床面上に起立した姿勢で点滴を受けることができる。また、被点滴者は、歩きながら、車椅子またはベッドなどで移動しながら点滴を受けることもできる。具体的には、被点滴者は、自身または付添い者が把持部111を介してまたは支柱本体101を直接掴んで押すまたは曳くことで被点滴者とともに点滴スタンド100を移動させることができる。この場合、
図3に示すように、被点滴者Uが車椅子Cで移動する場合、被点滴者Uは、車椅子Cの足置きステップSの下方にベース体130における斜面部130aを挿し込むことで点滴スタンド100を車椅子Cに最接近させることができる。
【0057】
また、使用者は、支柱本体101に形成された主面貫通孔110によって点滴スタンド100の向こう側の状況を視認、または点滴スタンド100の向こう側の人と会話を愉しむことができる。また、使用者は、第1主面102および第2主面103に画鋲、ピンまたは粘着剤などを用いてメモ紙などを取り付けることができる。
【0058】
また、使用者は、支柱本体101に形成された主面貫通孔110にタオルまたは衣服を掛けることができる。また、使用者は、主面保持部113にドレンバッグなどの医療用具またはスマートフォンなどの日用小物を掛けることができる。また、使用者は、硬質部112にシリンジポンプなどの医療器具または点滴スタンド100を移動操作するための着脱可能なハンドル(持ち手)などの器具を取り付けることができる。
【0059】
また、使用者は、災害時に点滴スタンド100を避難具として使用することもできる。具体的には、使用者Uは、
図4に示すように、ベース体130の上面上に載ることで点滴スタンド100を自ら押してまたは他の者が押すまたは曳くことで素早く移動することができる。この場合、使用者Uは、ベース体130上に両足または片足を載せた状態で移動することができる。また、使用者Uは、ベース体130上に両足を載せる場合、両脚で支柱本体101を挟んだ姿勢でベース体130上に載ることができる。また、使用者Uは、ベース体130上に載った際に支柱本体101(特に、把持部111、第1段部121または第2段部123)に掴まることで安全に移動することができる。また、使用者Uは、ベース体130上に人以外の物、例えば、荷物を載せて移動させることもできる。
【0060】
また、使用者は、点滴スタンド100の使用を終えた場合、例えば、被点滴者が快癒した場合や死亡した場合においては、点滴スタンド100を分解して木材として再利用することができる。この場合、使用者は、分割した点滴スタンド100を更に加工して被点滴者の形見として使用することもできる。
【0061】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、点滴スタンド100は、平坦面からなる第1主面102および第2主面103と厚さ方向の第1側面120および第2側面122とを有する板状に形成されているため、第1主面102および第2主面103にメモ紙、注意書き、メッセージカードまたは写真などを貼り付けたり、スマートフォン、フォトフレームまたは鍵類などの小物を吊下げたりすることができるなど点滴液容器B以外の他の物品を保持するホルダー、掲示板またはメッセージボードとしての機能を発揮させることができ患者の周囲のスペースの使用効率を向上させることができる。
【0062】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。なお、下記各変形例において、上記実施形態と同様の構成部分については同じ符号を付して、その説明を省略する。
【0063】
例えば、上記実施形態においては、支柱本体101は、主面貫通孔110を備えて構成した。しかし、支柱本体101は、主面貫通孔110を省略して構成することができる。つまり、支柱本体101は、貫通孔を有さない状態、または支柱本体101の向こう側が視認できない程度の貫通孔を有した状態で形成することで支柱本体101の向こう側からの視線を遮る衝立として使用することもできる。
【0064】
また、支柱本体101を主面貫通孔110を省略して構成した場合、使用者は、自身の好みの位置に好みの大きさで主面貫通孔110を形成したり、主面保持部113または各種フックなどを取り付けたりすることができる。また、支柱本体101を主面貫通孔110を省略して構成した場合、使用者は、自身の好みの位置に好みに応じて支柱本体101の形状を加工することができる。
【0065】
また、上記実施形態においては、主面貫通孔110は、幅広部110aと幅狭部110bとを有して下部側に対して上部側の幅が狭くなるように形成した。これにより、主面貫通孔110は、使用者がベッドまたは椅子に座っている状態であっても起立した状態であっても把持部111を把持することができる。また、主面貫通孔110は、主面貫通孔110における下方が広く開口していることで使用者に積極的に主面貫通孔110における下方部分に手を入れて把持部111を把持させることで点滴スタンド100の安定的な使用を促すことができる。
【0066】
しかし、主面貫通孔110は、上下方向に沿って一定の幅で形成することもできる。また、主面貫通孔110は、上方から下方に向かって幅広部110aおよび幅狭部110bを形成して上部側に対して下部側の幅が狭くなるように形成することもできる。また、主面貫通孔110は、人の手が入らない程度の大きさに形成することもできる。
【0067】
また、上記実施形態においては、容器保持部107は、支柱本体101の両面、すなわち、第1主面102および第2主面103の両方にそれぞれ設けた。しかし、容器保持部107は、支柱本体101の片面、すなわち、第1主面102および第2主面103のうちの一方にのみ設けてもよい。また、容器保持部107は、支柱本体101における第1主面102および第2主面103に代えてまたは加えて第1側面120および第2側面122のうちの少なくとも一方に設けることもできる。また、容器保持部107は、ガード108を省略して直接支柱本体101に取り付けることもできる。
【0068】
また、上記実施形態においては、第1主面102および第2主面103は、幅広部104、第1幅狭部105および第2幅狭部106を有して、上方に向かって段階的に幅が狭くなるように形成した。しかし、第1主面102および第2主面103は、上下方向に沿って一定の幅で形成することもできる。また、第1主面102および第2主面103は、上方から下方に向かって幅広部104、第1幅狭部105および第2幅狭部106を有して、下方に向かって段階的に幅が狭くなるように形成することもできる。
【0069】
また、上記実施形態においては、支柱本体101は、第1主面102および第2主面103を相対的に軟質な材料で構成するとともに、硬質部112を相対的に硬質な材料で構成した。しかし、支柱本体101は、単一な硬さの材料で構成することもできる。また、支柱本体101は、第1主面102および第2主面103を相対的に硬質な材料で構成した硬質部とし、硬質部112を相対的に軟質な材料で構成した軟質部とすることもできる。
【0070】
また、上記実施形態においては、支柱本体101は、第1主面102および第2主面103を備えて構成した。すなわち、第1主面102および第2主面103が発明に係る主面に相当する。しかし、支柱本体101は、第1主面102および第2主面103のうちの少なくとも一方を備えて構成されていればよい。
【0071】
また、上記実施形態においては、硬質部112は、支柱本体101に対して着脱自在に構成した。しかし、硬質部112は、支柱本体101に対して着脱不能に設けることもできる。すなわち、支柱本体101は、硬質部および軟質部のうちの一方に他方を埋め込んで構成することもできる。
【0072】
また、上記実施形態においては、支柱本体101は、主面貫通孔110を支柱本体101の端部近傍に形成することで把持部111を有して構成した。この場合、支柱本体101は、貫通孔である主面貫通孔110に代えてまたは加えて有底穴を支柱本体101の端部近傍に形成することで把持部111を形成することもできる。しかし、支柱本体101は、把持部111を省略して構成することもできる。なお、使用者は、把持部111に代えてまたは加えて市販されているハンドル(取っ手)を支柱本体101に取り付けて把持部とすることもできる。
【0073】
また、上記実施形態においては、支柱本体101は、第1段部121および第2段部123をそれぞれ設けて構成した。しかし、支柱本体101は、第1段部121および第2段部123をそれぞれ省略して構成することもできる。また、支柱本体101は、第1段部121および第2段部123に相当する突起を第1主面102および第2主面103のうちの少なくとも一方に設けることもできる。
【0074】
また、上記実施形態においては、点滴スタンド100は、ベース体130を備えて構成した。しかし、点滴スタンド100は、ベース体130を省略して構成することもできる。また、ベース体130は、支柱本体101の下部部分に水平方向に広がって支柱本体101を起立した状態で支持できるように構成されていればよい。したがって、ベース体130は、板状以外の形状、例えば、支柱本体101の中心部から放射状に延びる棒状または同中心部を中心とする環状に形成することもできる。
【0075】
また、上記実施形態においては、ベース体130は、人が載ることができる大きさおよび剛性で構成した。しかし、ベース体130は、必ずしも人が載ることができる大きさおよび剛性で構成される必要はない。
【0076】
また、上記実施形態においては、点滴スタンド100は、錘132を備えて構成した。しかし、点滴スタンド100は、錘132を省略して構成することもできる。
【0077】
また、上記実施形態においては、支柱本体101およびベース体130は、それぞれ木材で構成されている。しかし、支柱本体101およびベース体130は、木材以外の材料、例えば、金属材または樹脂材で構成することもできる。
【符号の説明】
【0078】
B…点滴液容器、
100…点滴スタンド、
101…支柱本体、
102…第1主面、
103…第2主面、
107…容器保持部。