(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158101
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20241031BHJP
B41J 2/145 20060101ALI20241031BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B41J2/14 603
B41J2/14 605
B41J2/14 609
B41J2/145
B41J2/14 305
B41J2/14 611
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072978
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】田中 大樹
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA04
2C056HA05
2C056KB16
2C057AF41
2C057AG12
2C057AG15
2C057AG33
2C057AG44
2C057AG68
2C057AG81
2C057AG92
2C057AP02
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】供給口と帰還口との差圧を大きくすることなく供給流路及び帰還流路に多くの液体を流通させる。
【解決手段】ヘッド1は、2つの流路群41,42を有する流路構造体11を含む。流路群41は、2つの供給流路31A,31B、2つの帰還流路32A,32B、2つの接続流路33A,33B、複数の個別流路20、及び、複数のダミー個別流路60を有する。ダミー個別流路60は、供給流路31Aの第1方向の一端と他端との間であって、第1方向において供給流路31Aの他端と間に個別流路20を挟む位置に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流路群を有する流路構造体を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記第1流路群は、
供給口が設けられた一端から第1方向に延びる供給流路と、
排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向において前記供給流路と並んで配置された帰還流路と、
前記第1方向に配列され、前記供給流路に連通する一端と前記帰還流路に連通する他端とを有し、ノズルをそれぞれ含む複数の第1個別流路と、
前記供給流路に連通する一端と前記帰還流路に連通する他端とを有する第2個別流路と、
前記供給流路の前記第1方向の他端と前記帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する接続流路と、を有し、
前記第2個別流路は、液体を外部に吐出させずに前記供給流路から前記帰還流路に流通させ、
前記第2個別流路が、前記供給流路の前記一端と前記他端との間であって、前記第1方向において前記供給流路の前記他端との間に前記複数の第1個別流路の少なくとも1つを挟む位置に設けられたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記第1流路群は、複数の前記第2個別流路を有していることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第2個別流路は、前記ノズルを含んでいないことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記流路構造体は、前記第1流路群と前記第1方向と交差する第3方向に配列された第2流路群をさらに有しており、
前記第2流路群は、少なくとも前記供給流路、前記帰還流路、前記複数の第1個別流路及び前記接続流路を有し、
前記第1流路群の前記第1個別流路及び前記第2個別流路の合計数と、前記第2流路群の前記第1個別流路及び前記第2個別流路の合計数とが同じであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路構造体は、複数のプレートが積層して構成されており、
前記第1個別流路及び前記第2個別流路は、それぞれ、前記プレートに形成された孔が互いに接続されることで構成されており、
前記複数の第1個別流路及び前記第2個別流路が、前記第1方向において、等間隔に配列されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
前記第1個別流路及び前記第2個別流路は、前記供給流路に対して、前記第1方向と交差する第3方向の一方側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項7】
前記複数の第1個別流路は、前記供給流路に対して、前記第1方向と交差する第3方向の一方側に配置され、
前記第2個別流路は、前記供給流路に対して、前記第3方向の他方側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項8】
前記流路構造体は、前記第1流路群と前記第1方向と交差する第3方向に配列された第2流路群をさらに有しており、
前記第2流路群は、少なくとも前記供給流路、前記帰還流路、前記複数の第1個別流路及び前記接続流路を有し、
前記流路構造体の表面に固定され、複数のアクチュエータを有するアクチュエータ部材を、さらに備え、
前記複数のアクチュエータは、それぞれ、前記流路構造体内の液体に前記複数のノズルの1つから液体を吐出させるエネルギーを付与するものであり、前記ノズルに対応して前記第1方向に沿って配置されており、
前記アクチュエータ部材は、
圧電層と、
前記圧電層の一表面に配置され、前記複数のアクチュエータを構成する複数の個別電極と、
前記圧電層の一表面とは反対側の面に配置され、前記複数の個別電極と対向する位置に配置された共通電極と、を含み、
前記共通電極は、給電部と接続される接点領域を有しており、
前記第2流路群は、前記第1流路群よりも前記接点領域から離隔しており、
前記第1流路群に設けられる前記第2個別流路の数は、前記第2流路群に設けられる前記第2個別流路の数よりも多いことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項9】
前記第1個別流路の前記一端から前記他端における第1流路抵抗と、前記第2個別流路の前記一端から前記他端における第2流路抵抗との差が、前記第1流路抵抗の10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項10】
前記第1個別流路の形状と前記第2個別流路の形状とが互いに同じであることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項11】
流路群を有する流路構造体を備えた液体吐出ヘッドであって、
前記流路群は、
第1供給口が設けられた一端から第1方向に延びる第1供給流路と、
第1排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1供給流路と並んで配置された第1帰還流路と、
前記第1方向に配列され、前記第1供給流路に連通する一端と前記第1帰還流路に連通する他端とを有し、第1ノズルをそれぞれ含む複数の第1個別流路と、
第2供給口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第3方向において前記第1供給流路と並んで配置された第2供給流路と、
第2排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第2方向において前記第2供給流路と並んで配置された第2帰還流路と、
前記第1方向に配列され、前記第2供給流路に連通する一端と前記第2帰還流路に連通する他端とを有し、第2ノズルをそれぞれ含む複数の第2個別流路と、
前記第1供給流路の前記第1方向の他端と前記第2帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する第1接続流路と、
前記第2供給流路の前記第1方向の他端と前記第1帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する第2接続流路と、
前記第1供給流路に連通する一端と前記第1帰還流路に連通する他端とを有する第3個別流路と、を有し、
前記第3個別流路は、液体を外部に吐出させずに前記第1供給流路から前記第1帰還流路に流通させ、
前記第3個別流路が、前記第1供給流路の前記一端と前記他端との間であって、前記第1方向において前記第1供給流路の前記他端との間に前記複数の第1個別流路の少なくとも1つを挟む位置に設けられたことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項12】
前記第2方向は、前記供給流路の前記第1方向に直交する幅方向と直交することを特徴とする請求項1又は11に記載の液体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を吐出する液体吐出ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流路群を有する流路構造体を備えたヘッドについて記載されている。流路群は、供給口が設けられた一端から第1方向に延びる供給マニホールド(供給流路)と、帰還口(排出口)が設けられた一端から第1方向に延びる帰還マニホールド(帰還流路)と、供給マニホールドの第1方向の他端と帰還マニホールドの第1方向の他端とを接続するバイパス路(接続流路)と、供給マニホールドと帰還マニホールドとにそれぞれ接続された複数の個別流路(第1個別流路)と、を有する。複数の個別流路は、それぞれノズルを含む。また、流路群は、供給マニホールドの他端近傍と帰還マニホールドの他端近傍とに接続されたダミー流路(第2個別流路または第3個別流路)を有している。
【0003】
上記特許文献1において、例えば、ポンプにより供給口と帰還口とに差圧(供給口の圧力が帰還口よりも大きい)が生じる状態で供給口からインクが供給されると、供給されたインクは、供給マニホールドの一端から他端へと第1方向に沿って流れる。その後、インクは、バイパス路を介して帰還マニホールドの他端から一端へと第1方向に沿って流れ、帰還口から排出される。このようなインクの流れにより、供給マニホールド及び帰還マニホールド内に存在する気泡を排出させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のヘッドにおいては、複数の個別流路が形成されていることで、供給マニホールドのインクが複数の個別流路を介して帰還マニホールドへ流通する。これにより、供給マニホールドのインクが帰還マニホールドへと流れやすくなり、ひいては供給口から供給マニホールドへ流入するインク量も増加する。
【0006】
また、特許文献1に記載のヘッドには、ダミー流路も形成されているが、当該ダミー流路は供給マニホールドにおける供給口が設けられた一端とは反対側の他端近傍に接続されている。このため、供給口から供給マニホールドに流入したインクが供給マニホールドの圧損により、ダミー流路に流入しにくくなる。つまり、ダミー流路を設けても、供給口から供給マニホールドへ流入するインク量がほとんど増加せず、供給マニホールド及び帰還マニホールドに多くのインクを流通させることができない。
【0007】
供給口と帰還口との差圧を大きくすることで供給マニホールド及び帰還マニホールドに多くのインクを流通させることは可能であるが、ノズルのインクメニスカスに生じる正又は負の圧力が大きくなりすぎてインクメニスカスが破損する虞がある。インクメニスカスが破損すると、気泡がノズルを介して流路内に侵入したり、ノズルからインクが漏れ出す問題が生じる。
【0008】
そこで、本発明の目的は、供給口と帰還口との差圧を大きくすることなく供給流路及び帰還流路に多くの液体を流通させることが可能な液体吐出ヘッドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の液体吐出ヘッドは、第1の観点では、第1流路群を有する流路構造体を備えた液体吐出ヘッドであって、前記第1流路群は、供給口が設けられた一端から第1方向に延びる供給流路と、排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向において前記供給流路と並んで配置された帰還流路と、前記第1方向に配列され、前記供給流路に連通する一端と前記帰還流路に連通する他端とを有し、ノズルをそれぞれ含む複数の第1個別流路と、前記供給流路に連通する一端と前記帰還流路に連通する他端とを有する第2個別流路と、前記供給流路の前記第1方向の他端と前記帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する接続流路と、を有し、前記第2個別流路は、液体を外部に吐出させずに前記供給流路から前記帰還流路に流通させ、前記第2個別流路が、前記供給流路の前記一端と前記他端との間であって、前記第1方向において前記供給流路の前記他端との間に前記複数の第1個別流路の少なくとも1つを挟む位置に設けられている。
【0010】
また、本発明の液体吐出ヘッドは、第2の観点では、流路群を有する流路構造体を備えた液体吐出ヘッドであって、前記流路群は、第1供給口が設けられた一端から第1方向に延びる第1供給流路と、第1排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第2方向において前記第1供給流路と並んで配置された第1帰還流路と、前記第1方向に配列され、前記第1供給流路に連通する一端と前記第1帰還流路に連通する他端とを有し、第1ノズルをそれぞれ含む複数の第1個別流路と、第2供給口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第1方向と交差する第3方向において前記第1供給流路と並んで配置された第2供給流路と、第2排出口が設けられた一端から前記第1方向に延び、前記第2方向において前記第2供給流路と並んで配置された第2帰還流路と、前記第1方向に配列され、前記第2供給流路に連通する一端と前記第2帰還流路に連通する他端とを有し、第2ノズルをそれぞれ含む複数の第2個別流路と、前記第1供給流路の前記第1方向の他端と前記第2帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する第1接続流路と、前記第2供給流路の前記第1方向の他端と前記第1帰還流路の前記第1方向の他端とを接続する第2接続流路と、前記第1供給流路に連通する一端と前記第1帰還流路に連通する他端とを有する第3個別流路と、を有し、前記第3個別流路は、液体を外部に吐出させずに前記第1供給流路から前記第1帰還流路に流通させ、前記第3個別流路が、前記第1供給流路の前記一端と前記他端との間であって、前記第1方向において前記第1供給流路の前記他端との間に前記複数の第1個別流路の少なくとも1つを挟む位置に設けられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の液体吐出ヘッドの第1の観点によると、供給流路と帰還流路とが複数の第1個別流路に加えて第2個別流路を介して接続されている。さらに、第2個別流路は、第1方向において、供給流路の他端近傍以外の部分に接続されている。このため、供給口から供給流路に流入した液体が第2個別流路にも流入しやすくなる。したがって、供給口と排出口との差圧を大きくしなくても、供給流路に多くの液体を流入させることが可能となる。この結果、ノズルの液体メニスカスに生じる正又は負の圧力が大きくなるのを抑制しつつ、供給流路及び帰還流路に多くの液体を流通させることが可能となり、供給流路及び帰還流路から気泡を排出しやすくなる。
本発明の液体吐出ヘッドの第2の観点によると、第1供給流路と第1帰還流路とが複数の第1個別流路に加えて第3個別流路を介して接続されている。さらに、第3個別流路は、第1方向において、第1供給流路の他端近傍以外の部分に接続されている。このため、第1供給口から第1供給流路に流入した液体が第3個別流路にも流入しやすくなる。したがって、第1供給口と第1排出口との差圧を大きくしなくても、第1供給流路に多くの液体を流入させることが可能となる。この結果、第1ノズルの液体メニスカスに生じる正又は負の圧力が大きくなるのを抑制しつつ、第1供給流路及び第1帰還流路に多くの液体を流通させることが可能となり、第1供給流路及び第1帰還流路から気泡を排出しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るヘッドを備えたプリンタの平面図である。
【
図3】
図2のIII-III線に沿ったヘッドの断面図である。
【
図4】本発明の第2実施形態に係るヘッドの平面図である。
【
図5】
図4のV-V線に沿ったヘッドの断面図である。
【
図6】本発明の第3実施形態に係るヘッドの平面図である。
【
図7】本発明の第4実施形態に係るヘッドの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
先ず、
図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るヘッド1を備えたプリンタ100の全体構成について説明する。
【0014】
プリンタ100は、4つのヘッド1を含むヘッドユニット1X、プラテン3、搬送機構4及び制御部5を備えている。プラテン3の上面に、用紙9が載置される。
【0015】
搬送機構4は、搬送方向にプラテン3を挟んで配置された2つのローラ対4A,4Bを有する。制御部5の制御により搬送モータ(図示略)が駆動されると、ローラ対4A,4Bが用紙9を挟持した状態で回転し、用紙9が搬送方向に搬送される。
【0016】
ヘッドユニット1Xは、紙幅方向(本発明の「第1方向」:搬送方向及び鉛直方向の双方と直交する方向)に長尺であり、位置が固定された状態でノズル21(
図2及び
図3参照)から用紙9に対してインクを吐出するライン式である。4つのヘッド1は、それぞれ紙幅方向に長尺であり、紙幅方向に千鳥状に配列されている。
【0017】
制御部5は、ROM、RAM及びASICを有する。ASICは、ROMに格納されたプログラムに従い、記録処理等を実行する。記録処理において、制御部5は、PC等の外部装置から入力された記録指令(画像データを含む)に基づき、各ヘッド1のドライバIC及び搬送モータ(共に図示略)を制御し、用紙9上に画像を記録する。
【0018】
次いで、
図2及び
図3を参照し、ヘッド1の構成について説明する。ヘッド1は、
図2に示すように、流路構造体11及びアクチュエータ部材12を有する。
【0019】
流路構造体11は、
図3に示すように、鉛直方向(本発明の「第2方向」)に積層されかつ互いに接着された11枚のプレート11A~11Kで構成されている。各プレート11A~11Kには、流路を構成する貫通孔が形成されている。つまり、流路構造体11内に形成された流路は、複数の貫通孔が接続されることで構成されている。当該流路は、複数の個別流路20、供給流路31、帰還流路32、接続流路33、及び、複数のダミー個別流路60を含む。
【0020】
流路構造体11には、
図2に示すように、2つの流路群41,42が設けられている。流路群41,42は、搬送方向と平行な方向(本発明の「第3方向」:供給流路31及び帰還流路32の幅方向であり、第1方向及び第2方向の双方と直交する方向)に並んでいる。本実施形態における2つの流路群41,42は同様な構成であるため、流路群41について説明し、流路群42の詳細の説明を省略する。
【0021】
流路群41は、
図2及び
図3に示すように、複数の個別流路20と、2つの供給流路31と、2つの帰還流路32と、2つの接続流路33と、複数のダミー個別流路60とで構成される。複数の個別流路20は、それぞれが、第1方向に沿って配列された第1個別流路列20A及び第2個別流路列20Bを構成する。第1個別流路列20A及び第2個別流路列20Bは、第3方向に並んでいる。複数のダミー個別流路(本発明の「第3個別流路」)60も、それぞれが、第1方向に沿って配列された第1ダミー個別流路列60A及び第2ダミー個別流路列60Bを構成する。第1ダミー個別流路列60A及び第2ダミー個別流路列60Bは、第3方向に並んでいる。
【0022】
流路群41の2つの供給流路31は、
図2に示すように、第3方向に並んで配置されている。各供給流路31は、第1方向(紙幅方向)に延びている。また、各供給流路31の断面積(幅×高さ)が互いに略同じである。また、流路群41の2つの帰還流路32も、第3方向に並んで配置され、それぞれ第1方向に延びている。また、各帰還流路32の断面積(幅×高さ)が互いに略同じである。
【0023】
2つの供給流路31のうち一方(
図2中左側)の供給流路(本発明の「第1供給流路」)31A及び2つの帰還流路32のうち一方(
図2中左側)の帰還流路(本発明の「第1帰還流路」)32Aは、
図3に示すように、第2方向に並んで配置されている。2つの供給流路31のうち他方(
図2中右側)の供給流路(本発明の「第2供給流路」)31B及び2つの帰還流路32のうち他方(
図2中右側)の帰還流路(本発明の「第2帰還流路」)32Bも、第2方向に並んで配置されている。
【0024】
第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20(本発明の「第1個別流路」)は、一方の供給流路31A及び一方の帰還流路32Aに連通する。また、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20は、
図2に示すように、一方の供給流路31Aに対して、第3方向(当該供給流路31Aの幅方向)の一方側(左側)に配置され、第1方向に沿って等間隔に配列されている。
【0025】
第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20(本発明の「第2個別流路」)は、他方の供給流路31B及び他方の帰還流路32Bに連通する。また、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20は、
図2に示すように、他方の供給流路31Bに対して、第3方向(当該供給流路31Bの幅方向)の一方側(左側)に配置され、第1方向に沿って等間隔に配列されている。
【0026】
第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60は、一方の供給流路31A及び一方の帰還流路32Aに連通する。また、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60は、
図2に示すように、一方の供給流路31Aに対して、第3方向(当該供給流路31の幅方向)の他方側(右側)に配置され、第1方向に沿って等間隔に配列されている。また、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60は、連通する供給流路31Aの第1方向の一端(
図2中上端)及び他端(
図2中下端)間に配置されている。
【0027】
第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60は、他方の供給流路31B及び他方の帰還流路32Bに連通する。また、第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60は、
図2に示すように、他方の供給流路31Bに対して、第3方向(当該供給流路31の幅方向)の他方側(右側)に配置され、第1方向に沿って等間隔に配列されている。また、第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60は、連通する供給流路31Bの第1方向の一端(
図2中上端)及び他端(
図2中下端)間に配置されている。
【0028】
第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20の配列ピッチと、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20の配列ピッチと、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60の配列ピッチと、第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60の配列ピッチとが同じである。
【0029】
本実施形態においては、一方の供給流路31A及び一方の帰還流路32Aに接続する個別流路20及びダミー個別流路60が、一方の供給流路31Aに対して、第3方向に互いに反対側に配置され、且つ第1方向に半ピッチ分だけズレて配置されている。また、他方の供給流路31B及び他方の帰還流路32Bに接続する個別流路20及びダミー個別流路60が、他方の供給流路31Bに対して、第3方向に互いに反対側に配置され、且つ第1方向に半ピッチ分だけズレて配置されている。
【0030】
また、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60のうち、供給流路31Aの第1方向の他端(
図2中下端)に最も隣接して配置されたダミー個別流路60は、
図2に示すように、当該供給流路31Aの第1方向の他端との間において、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20のうちの1つを挟む位置に配置されている。また、第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60のうち、供給流路31Bの第1方向の他端(
図2中下端)に最も隣接して配置されたダミー個別流路60は、当該供給流路31Bの第1方向の他端との間において、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20のうちの1つを挟む位置に配置されている。
【0031】
2つの接続流路33のうち一方の接続流路33A(本発明の「第1接続流路」)は
図2及び
図3に示すように、一方の供給流路31Aの第1方向の他端と他方の帰還流路32Bの第1方向の他端とを接続している。また、2つの接続流路33のうち他方の接続流路33B(本発明の「第2接続流路」)は、他方の供給流路31Bの第1方向の他端と一方の帰還流路32Aの第1方向の他端とを接続している。
【0032】
流路群41の一方の供給流路31A及び一方の帰還流路32Aは、それぞれの第1方向の一端に連通する供給口(本発明の「第1供給口」)31XA及び排出口(本発明の「第1排出口」)32XAを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給口31XA及び排出口32XAは、第1方向に並んで配置されている。一方の供給流路31A及び一方の帰還流路32Aは、供給口31XA及び排出口32XAが設けられた一端から第1方向に延びている。
【0033】
また、流路群41の他方の供給流路31B及び他方の帰還流路32Bも、それぞれの第1方向の一端に連通する供給口(本発明の「第2供給口」)31XB及び排出口(本発明の「第2排出口」)32XBを介して、サブタンク(図示略)に連通している。供給口31XB及び排出口32XBも、第1方向に並んで配置されている。他方の供給流路31B及び他方の帰還流路32Bは、供給口31XB及び排出口32XBが設けられた一端から第1方向に延びている。
【0034】
これら2つの供給口31XA,31XB及び2つの排出口32XA,32XBは、流路構造体11の上面(本発明の「表面」)11Xに流路群41,42ごとに開口している。
【0035】
サブタンクは、インクを貯留するメインタンクに連通し、メインタンクから供給されたインクを貯留する。制御部5の制御によりポンプ(図示略)が駆動されることで供給口31XA,31XBと排出口32XA,32XBとに所定の差圧が生じる。本実施形態においては、供給口31XA,31XBに正圧が生じ、排出口32XA,32XBに負圧が生じる。これにより、サブタンク内のインクが供給口31XA,31XBから供給流路31に流入し、帰還流路32内のインクが排出口32XA,32XBからサブタンクへと戻る。なお、ポンプの駆動のより、供給口31XA,31XBと排出口32XA,32XBとに生じる差圧は、供給口31XA,31XBに生じる圧力が排出口32XA,32XBに生じる圧力よりも大きい圧力による差圧であればよい。
【0036】
一方の供給流路31Aに流入したインクは、供給流路31A内を第1方向の一端(
図2の上端)から他端(
図2の下端)に向かって移動しつつ、第1個別流路列20Aを構成する各個別流路20及び第1ダミー個別流路列60Aを構成する各ダミー個別流路60に供給される(
図3参照)。各個別流路20及び各ダミー個別流路60から流出したインクは、一方の帰還流路32Aに流入する。また、他方の供給流路31Bに流入したインクは、供給流路31B内を第1方向の一端(
図2の上端)から他端(
図2の下端)に向かって移動しつつ、第2個別流路列20Bを構成する各個別流路20及び第2ダミー個別流路列60Bを構成する各ダミー個別流路60に供給される。各個別流路20及び各ダミー個別流路60から流出したインクは、他方の帰還流路32Bに流入する。
【0037】
また、一方の供給流路31Aの第1方向の他端(
図2の下端)に到達したインクは、接続流路33Aを通って他方の帰還流路32Bに流入する。他方の帰還流路32Bに流入したインクは、他方の帰還流路32B内を第1方向の他端から一端(
図2の上端)に向かって移動し、排出口32XBを介してサブタンクに戻される。また、他方の供給流路31Bの第1方向の他端(
図2の下端)に到達したインクは、接続流路33Bを通って一方の帰還流路32Aに流入する。一方の帰還流路32Aに流入したインクは、一方の帰還流路32A内を第1方向の他端から一端(
図2の上端)に向かって移動し、排出口32XAを介してサブタンクに戻される。
【0038】
図3に示すように、供給流路31A,31Bは、プレート11Eに形成された各貫通孔で構成されている。帰還流路32A,32Bは、プレート11Hに形成された各貫通孔で構成されている。第2方向において供給流路31A,31Bと帰還流路32A,32Bとの間には、ダンパ室30がそれぞれ設けられている。ダンパ室30は、プレート11Fに形成された凹部と、プレート11Gに形成された凹部とで構成されている。プレート11Fにおける凹部の底部は、供給流路31A,31Bのダンパ膜31Dとして機能する。プレート11Gにおける凹部の底部は、帰還流路32A,32Bのダンパ膜32Dとして機能する。
【0039】
各個別流路20は、
図3に示すように、ノズル21と、圧力室22と、連通流路23と、流入流路24と、流出流路25とを含む。
【0040】
ノズル21(本発明の「第1ノズル及び第2ノズル」)は、プレート11Kに形成された貫通孔で構成され、流路構造体11の下面11Yに開口している。圧力室22は、プレート11Aに形成された貫通孔で構成され、流路構造体11の上面11Xに開口している。圧力室22は、第3方向に長尺な略矩形平面形状を有している。圧力室22に対し、第3方向の一端に流入流路24が接続し、第3方向の他端に連通流路23が接続している。
【0041】
連通流路23は、プレート11B~11Jに形成された貫通孔で構成され、第2方向に延びている。連通流路23は、第2方向においてノズル21と圧力室22との間に配置され、ノズル21と圧力室22とを互いに接続している。
【0042】
流入流路24は、プレート11B~11Dに形成された貫通孔で構成されている。流入流路24は、圧力室22に接続する上端と、供給流路31に接続する下端とを有する。流出流路25は、プレート11I,11Jに形成された貫通孔で構成されている。流出流路25は、連通流路23の下端に接続する一端と、帰還流路32に接続する他端とを有する。流入流路24及び流出流路25は、それぞれ、圧力室22の幅(第1方向の長さ)よりも小さい幅を有し、絞りとして機能する。
【0043】
供給流路31から各個別流路20に供給されたインクは、流入流路24を通って圧力室22に流入し、圧力室22内を略水平に移動して、連通流路23に流入する。連通流路23に流入したインクは、下方に移動し、一部がノズル21から吐出され、残りが流出流路25を通って帰還流路32に流入する。
【0044】
各ダミー個別流路60は、
図3に示すように、圧力室62と、連通流路63と、流入流路64と、流出流路65とを含む。これら圧力室62、連通流路63、流入流路64、及び、流出流路65は、個別流路20を構成する圧力室22、連通流路23、流入流路24、及び、流出流路25と同様な形状及びサイズを有する。また、ダミー個別流路60を構成する圧力室62、連通流路63、流入流路64、及び、流出流路65は、
図2に示すように、同じ供給流路31に連通する個別流路20を構成する圧力室22、連通流路23、流入流路24、及び、流出流路25と点Qに対して点対称に配置されている。本実施形態における点Qは、各個別流路20の
図2中右上近傍部分であって連通する供給流路31の第3方向の中心を通る中心線上に位置する。このようにダミー個別流路60は、個別流路20のノズル21を除く部分と同様な形状及びサイズに形成されている。なお、点Qは、説明の便宜上、
図2の流路群41の第1個別流路列20Aの中央付近に配置される個別流路20に対応するものだけに示す。
【0045】
また、ダミー個別流路60は、個別流路20の一端(流入流路24の下端)から他端(流出流路25の他端)における第1流路抵抗とダミー個別流路60の一端(流入流路64の下端)から他端(流出流路65の他端)における第2流路抵抗との差が、第1流路抵抗の10%以内となるように、構成されている。
【0046】
供給流路31から各ダミー個別流路60に供給されたインクは、流入流路64を通って圧力室62に流入し、圧力室62内を略水平に移動して、連通流路63に流入する。連通流路63に流入したインクは、下方に移動し、流出流路65を通って帰還流路32に流入する。
【0047】
このようにサブタンクと流路構造体11との間でインクを循環させることで、流路構造体11に形成された供給流路31及び帰還流路32、さらには個別流路20及びダミー個別流路60における、エアの排出やインクの増粘防止が実現される。また、インクが沈降成分(沈降が生じ得る成分。顔料等)を含む場合、当該成分が攪拌されて沈降が防止される。
【0048】
アクチュエータ部材12は、
図3に示すように、下から順に、振動板12A、共通電極12B、圧電層12C及び複数の個別電極12Dを含む。振動板12A、共通電極12B及び圧電層12Cは、流路構造体11の上面11Xに配置され、プレート11Aに形成された全ての圧力室22を覆っている。一方、複数の個別電極12Dは、圧電層12Cの上面(本発明の「一表面」)12C1上に配置されている。個別電極12Dは、個別流路20に含まれる圧力室22毎に設けられており、圧力室22のそれぞれと第2方向に重なっている。なお、個別電極12Dは、ダミー個別流路60に含まれる圧力室62のそれぞれと第2方向に重なる位置に配置されていない。つまり、個別電極12Dは、ダミー個別流路60に含まれる圧力室62には対応して設けられていない。
【0049】
共通電極12B及び複数の個別電極12Dは、ドライバIC(図示略)と電気的に接続されている。共通電極12Bは、共通電極本体12B1と、2つの接点領域12B2と、複数の繋ぎ部12B3とを有する。共通電極本体12B1は、圧電層12Cの下面12C2(上面12C1とは反対側の面)に配置されている。また、共通電極本体12B1は、すべての圧力室22,62に跨って配置されている。2つの接点領域12B2は、
図2に示すように、第3方向において、最も外側に配置された供給流路31よりも外側に配置されており、ドライバICを介して給電部(共に図示略)と接続される。各接点領域12B2は、
図3に示すように、圧電層12Cの上面12C1に配置されている。また、各接点領域12B2、
図2に示すように、第1方向に延びている。圧電層12Cの各接点領域12B2と重なる部分には、
図2及び
図3に示すように、複数の貫通孔12C3が形成されている。繋ぎ部12B3は、各貫通孔12C3に配置されており、共通電極本体12B1と各接点領域12B2とを電気的に接続する。
【0050】
ドライバICは、共通電極12Bの電位をグランド電位に維持する一方、個別電極12Dの電位を変化させる。具体的には、ドライバICは、制御部5からの制御信号に基づいて駆動信号を生成し、当該駆動信号を個別電極12Dに付与する。これにより、個別電極12Dの電位が所定の駆動電位とグランド電位との間で変化する。このとき、振動板12A及び圧電層12Cにおいて個別電極12Dと圧力室22とで挟まれた部分(アクチュエータ12X)が、圧力室22に向かって凸となるように変形することにより、圧力室22の容積が変化し、圧力室22内のインクに圧力が付与され、ノズル21からインクが吐出される。アクチュエータ部材12は、個別流路20に含まれる圧力室22のそれぞれに対応する複数のアクチュエータ12Xを有する。複数のアクチュエータ12Xは、ノズル21に対応して第1方向に沿って配置されている。
【0051】
以上に述べたように、本実施形態のヘッド1によると、供給流路31A,31Bと帰還流路32A,32Bとが複数の個別流路20に加えてダミー個別流路60を介して接続されている。さらに、ダミー個別流路60は、第1方向において、供給流路31A,31Bの他端近傍以外の部分に接続されている。より詳細には、ダミー個別流路60は、第1方向において供給流路31A,31Bの他端との間に、少なくとも1つの個別流路20を挟む位置に配置されている。このため、供給口31XA,31XBから供給流路31A,31Bに流入したインクがダミー個別流路60にも流入しやすくなる。つまり、供給流路31A,31Bから帰還流路32A,32Bへとインクが流通する量が多くなる。したがって、供給口31XA,31XBと排出口32XA,32XBとの差圧を大きくしなくても、供給流路31A,31Bに多くのインクを流入させることが可能となる。この結果、ノズルのインクメニスカスに生じる正又は負の圧力が大きくなるのを抑制しつつ、供給流路31A,31B及び帰還流路32A,32Bに多くのインクを流通させることが可能となり、供給流路31A,31B及び帰還流路32A,32Bから気泡を排出しやすくなる。
【0052】
流路群41,42が、それぞれ複数のダミー個別流路60を有している。このため、複数のダミー個別流路60を介して供給流路31A,31B及び帰還流路32A,32Bにより多くのインクを流通させることが可能となる。
【0053】
ダミー個別流路60が、ノズル21を含んでいない。これにより、仮にダミー個別流路がノズルを含んでいる場合は、当該ノズルからインクが漏れたり、ノズルを介してインクが乾燥してインク粘度が増加することがあるが、ダミー個別流路60がノズル21を含んでいないため、インク漏れやインク粘度の増加を防ぐことができる。
【0054】
2つの流路群41,42はいずれも同じ構成であるため、流路群41の個別流路20とダミー個別流路60の合計数と、流路群42の個別流路20とダミー個別流路60の合計数とが同じである。これにより、流路群41と流路群42とに供給されるインク流量差を小さくすることが可能となる。このため、流路群41と流路群42とで気泡の排出のバラツキを小さくすることができる。
【0055】
また、供給流路31Aと、帰還流路32Aと、これら供給流路31A及び帰還流路32Aに連通する複数の個別流路20及び複数のダミー個別流路60とを1つの流路群とし、供給流路31Bと、帰還流路32Bと、これら供給流路31B及び帰還流路32Bに連通する複数の個別流路20及び複数のダミー個別流路60とを1つの流路群とした場合、いずれの流路群においても個別流路20とダミー個別流路60の合計数が同じとなる。これにおいても各流路群に供給されるインク流路差を小さくすることが可能となり、上述と同様な効果を得ることができる。
【0056】
第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60及び第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60のそれぞれが同じ配列ピッチで配列されている。これにより、第1方向において隣接する2つの個別流路20間及び2つのダミー個別流路60間の第1方向における離隔距離が等しくなる。このため、各個別流路20間及び各ダミー個別流路60間におけるプレート間の接着代のばらつきが小さくなり、個別流路20及びダミー個別流路60の途中部位からインクが漏れるのを抑制することができる。
【0057】
第1個別流路列20A及び第2個別流路列20Bをそれぞれ構成する複数の個別流路20が、連通する供給流路31A,31Bに対して、第3方向の一方側(
図2中左側)に配置され、第1ダミー個別流路列60A及び第2ダミー個別流路列60Bをそれぞれ構成する複数のダミー個別流路60が、連通する供給流路31A,31Bに対して、第3方向の他方側(
図2中右側)に配置されている。これにより、各個別流路列20A,20Bを構成する個別流路20間にダミー個別流路60が配置されない。このため、各個別流路列20A,20Bを構成する複数の個別流路20に含まれる複数のノズル21を第1方向に所望のピッチで配置しやすくなる。
【0058】
個別流路20における第1流路抵抗とダミー個別流路60における第2流路抵抗との差が、第1流路抵抗の10%以内である。これにより、個別流路20を流れるインク量とダミー個別流路60を流れるインク量との差が小さくなる。このため、個別流路20及びダミー個別流路60における気泡の排出、増粘したインクの回収などをバラツキなく効果的に行うことができる。
【0059】
ノズル21を除く個別流路20の形状とダミー個別流路60の形状とが互いに同じである。これにより、ノズル21を除く個別流路20及びダミー個別流路60の寸法にばらつきが生じにくくなる。このため、個別流路20を流れるインク量と、ダミー個別流路60を流れるインク量との差が小さくなる。したがって、個別流路20及びダミー個別流路60における気泡の排出、増粘したインクの回収などをバラツキなく効果的に行うことができる。
【0060】
<第2実施形態>
続いて、
図4及び
図5を参照し、本発明の第2実施形態に係るヘッド201について説明する。第1実施形態と同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。本実施形態におけるヘッド201の流路構造体211は、3つの流路群241~243を有する。流路群241,242は流路構造体211の第3方向の両端側に設けられており、流路群243は流路構造体211の第3方向の中央、すなわち、2つの流路群241,242間に配置されている。
【0061】
流路群241,242は、ダミー個別流路60に代えてダミー個別流路260を含むだけで、それ以外は第1実施形態の流路群41,42と同様である。第1及び第2ダミー個別流路列260A,260Bを構成する複数のダミー個別流路260は、個別流路20と同様なノズル21を含むだけでそれ以外はダミー個別流路60と同様である。また、
図5に示すように、ダミー個別流路260に含まれる圧力室62と第2方向に重なる位置に個別電極12Dが設けられていない。つまり、ダミー個別流路260は、その形状が個別流路20と同形状であるものの、アクチュエータ部材212には圧力室62に対応するアクチュエータ12Xが設けられていない。これにより、圧力室62内のインクにはノズル21からインクを吐出するための吐出エネルギーが付与されない。なお、本実施形態におけるアクチュエータ部材212は、流路構造体211に流路群243が形成されている分だけ、第1実施形態のアクチュエータ部材12よりも第3方向の幅が大きくなっている。また、流路群243に含まれる各個別流路20の圧力室22と第2方向に重なる位置には、個別電極12Dが設けられている。つまり、アクチュエータ部材212には、個別流路20に含まれる圧力室22のそれぞれに対応する複数のアクチュエータ12Xが設けられている。
【0062】
流路群243は、流路群241から複数のダミー個別流路260が省略されたものと同様であり、供給流路31A,31B、帰還流路32A,32B、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20及び接続流路33A,33Bを有する。
【0063】
本実施形態においては、
図4に示すように、接点領域12B2に第3方向に隣接する流路群241,242が複数のダミー個別流路260を有し、接点領域12B2から第3方向に流路群241,242よりも離れた流路群243にはダミー個別流路260が設けられていない。つまり、流路群241,242に設けられるダミー個別流路260の数が、流路群243に設けられるダミー個別流路260の数よりも多い。これにより、供給口31XA,31XBと排出口32XA,32XBとの差圧が流路群241,242,243毎に同じであっても、流路群241,242の供給流路31A,31Bに流路群243の供給流路31A,31Bよりも多くのインクを流入させることが可能となる。接点領域12B2は、給電により発熱量が比較的高い。このため、流路構造体211の接点領域12B2近傍部分、すなわち、流路構造体211の第3方向の両端部が加熱される。しかしながら、接点領域12B2に近い流路群241,242において、供給流路31A,31Bに対するインク供給量を多くすることが可能となるため、接点領域12B2の発熱による流路構造体211の加熱を効果的に冷却することが可能となる。この結果、流路群241,242におけるインクの乾燥による増粘を抑制することが可能となる。なお、第1実施形態と同様な構成においては同様の効果を得ることができる。
【0064】
本実施形態におけるダミー個別流路260の形状と個別流路20との形状が、点対称で同じとなるため、これらの第1流路抵抗と第2流路抵抗との差が第1流路抵抗の10%以内となる。このため、上述の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
変形例として、流路群241の第1ダミー個別流路列260Aを構成する複数のダミー個別流路260の圧力室62と重なる位置にアクチュエータ12Xを設けてもよい。つまり、圧力室62内のインクにノズル21からインクを吐出させるための吐出エネルギーを付与可能にして、第1ダミー個別流路列260Aを構成する複数のダミー個別流路260をノズル21からインクを吐出可能な個別流路20としてもよい。これにおいても、流路群241の個別流路20とダミー個別流路260の合計数と、流路群242の個別流路20とダミー個別流路260の合計数とが同じとなる。これにより、流路群241と流路群242とに供給されるインク流量差を小さくすることが可能となる。このため、流路群241と流路群242とで気泡の排出のバラツキを小さくすることができる。
【0066】
<第3実施形態>
続いて、
図6を参照し、本発明の第3実施形態に係るヘッド301について説明する。第1実施形態と同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。本実施形態におけるヘッド301の流路構造体311は、2つの流路群341,342を有する。
【0067】
流路群341,342は、第3方向において、第1ダミー個別流路列360Aが第1個別流路列20Aと同じ位置に配置され、第2ダミー個別流路列360Bが第2個別流路列20Bと同じ位置に配置されている。つまり、第1ダミー個別流路列360Aを構成する複数のダミー個別流路360は、供給流路31Aに対して、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20と同じ一方側(
図6中左側)に配置され、供給流路31A及び帰還流路32Aに連通している。また、第2ダミー個別流路列360Bを構成する複数のダミー個別流路360は、供給流路31Bに対して、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20と同じ一方側(
図6中左側)に配置され、供給流路31B及び帰還流路32Bに連通している。また、第1ダミー個別流路列360A及び第2ダミー個別流路列360Bを構成する複数のダミー個別流路360は、ノズル21を含まない個別流路20と同形状及び同サイズである。
【0068】
また、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20の第1方向の配列ピッチと第1ダミー個別流路列360Aを構成する複数のダミー個別流路360の第1方向の配列ピッチとが同じであり、且つダミー個別流路360が個別流路20に対して第1方向に半ピッチだけずれて配置されている。これにより、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20及び第1ダミー個別流路列360Aを構成する複数のダミー個別流路360が、第1方向に沿って交互に等間隔に配置されている。なお、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20及び第2ダミー個別流路列360Bを構成する複数のダミー個別流路360も、同様に第1方向に沿って交互に等間隔に配置されている。このように個別流路20とダミー個別流路360とが第1方向に等間隔に配置されているため、第1方向に隣接する2つの個別流路20,360間におけるプレート間の接着代のばらつきが小さくなり、個別流路20及びダミー個別流路60の途中部位からインクが漏れるのを抑制することができる。
【0069】
本実施形態においては、同じ供給流路31A,31Bに連通する個別流路20及びダミー個別流路360が、連通する供給流路31A,31Bに対して第3方向の一方側に配置されている。第1実施形態のヘッド1のように、供給流路31A,31Bに連通する個別流路20及びダミー個別流路60が供給流路31A,31Bに対して第3方向に互いに反対側に配置されていると、例えば、流路群42の供給流路31Bに連通するダミー個別流路60を設ける分だけのスペースが流路構造体11の供給流路31Bよりも
図2中右側に必要となる。しかしながら、本実施形態においては、流路群342の供給流路31Bよりも
図6中右側にダミー個別流路360を設ける分だけのスペースが必要ない。このため、ヘッド301の第3方向における幅を小さくすることが可能となる。
【0070】
上述の第1及び第2実施形態と同様な構成においては同じ効果を得ることができる。
【0071】
変形例として、同じ供給流路31A,31Bに連通する個別流路20及びダミー個別流路360が、第1方向に交互及び/又は等間隔に配置されていなくてもよい。各流路群341,342において、ダミー個別流路360が1以上設けられておればよい。このとき、ダミー個別流路360は、第1方向において供給流路31A,31Bの他端との間に、少なくとも1つの個別流路20を挟む位置に配置されておればよい。
【0072】
<第4実施形態>
続いて、
図7を参照し、本発明の第4実施形態に係るヘッド401について説明する。第1実施形態と同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。本実施形態におけるヘッド401の流路構造体411は、4つの流路群441~444を有する。これら流路群441~444は、第3方向に順に並んで配置されている。流路群441(本発明の「第1流路群」)は、第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20(本発明の「第1個別流路」)と、供給流路31Aと、帰還流路32Aと、接続流路433Aと、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60(本発明の「第2個別流路」)とで構成される。
【0073】
流路群442(本発明の「第2流路群」)は、第2個別流路列20Bを構成する複数の個別流路20と、供給流路31Bと、帰還流路32Bと、接続流路433Bとで構成される。つまり、上述の流路群41の
図2中右側部分の流路群から第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60を省いた構成とほぼ同様な構成である。接続流路433Bは、第2方向に延び、供給流路31Bの第1方向の他端と帰還流路32Bの第1方向の他端とを接続している。
【0074】
流路群443は、流路群442と同様な構成であるため、同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。流路群444は、流路群441と同様な構成であるため、同様な構成については同符号で示し、説明を省略する。
【0075】
本実施形態においても、
図7に示すように、接点領域12B2に第3方向に隣接する流路群441,444が複数のダミー個別流路60を有し、接点領域12B2から第3方向に流路群441,444よりも離れた流路群442,443にはダミー個別流路60が設けられていない。つまり、流路群441,444に設けられるダミー個別流路60の数が、流路群442,443に設けられるダミー個別流路60の数よりも多い。これにより、供給口31XA,31XBと排出口32XA,32XBとの差圧が流路群441~444毎に同じであっても、流路群441,444の供給流路31A,31Bに流路群442,443の供給流路31A,31Bよりも多くのインクを流入させることが可能となる。したがって、上述の第2実施形態と同様に、接点領域12B2に近い流路群441,444において、供給流路31A,31Bに対するインク供給量を多くすることが可能となるため、接点領域12B2の発熱による流路構造体411の加熱を効果的に冷却することが可能となる。この結果、流路群441,444におけるインクの乾燥による増粘を抑制することが可能となる。
【0076】
また、流路群441,444の第1個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20が、供給流路31Aに対して、第3方向の一方側(
図7中左側)に配置され、第1ダミー個別流路列60Aを構成する複数のダミー個別流路60が、供給流路31Aに対して、第3方向の他方側(
図7中右側)に配置されている。これにより、個別流路列20Aを構成する個別流路20間にダミー個別流路60が配置されない。このため、個別流路列20Aを構成する複数の個別流路20に含まれる複数のノズル21を第1方向に所望のピッチで配置しやすくなる。なお、第1実施形態と同様な構成においては同様の効果を得ることができる。
【0077】
変形例として、第4実施形態におけるダミー個別流路60においても、ノズル21を有していてもよい。これにより、ダミー個別流路60と個別流路20が点対称の同形状及び同サイズとなる。第1流路抵抗と第2流路抵抗との差が第1流路抵抗の10%以内であることで、上述と同様な効果を得ることができる。
【0078】
別の変形例として、流路群442が上述の第2ダミー個別流路列60Bを構成する複数のダミー個別流路60を有していてもよい。これにより、いずれの流路群441,442においても個別流路20とダミー個別流路60の合計数が同じとなる。このため、各流路群441,442に供給されるインク流路差を小さくすることが可能となり、流路群441と流路群442とで気泡の排出のバラツキを小さくすることができる。
【0079】
さらに別の変形例として、流路群442が流路群441の個別流路20とダミー個別流路60の合計数と同じ数となる個別流路20を有していてもよい。これにより、流路群441と流路群442とに供給されるインク流量差を小さくすることが可能となる。このため、流路群441と流路群442とで気泡の排出のバラツキを小さくすることができる。
【0080】
また、さらに別の変形例として、各流路群441,444において、ダミー個別流路60が1以上設けられておればよい。このとき、ダミー個別流路60は、第1方向において供給流路31Aの他端との間に、少なくとも1つの個別流路20を挟む位置に配置されておればよい。
【0081】
ここで、上述の第3実施形態における各流路群341,342の供給流路31Aと帰還流路32Aが接続流路33Aに代えて第4実施形態の接続流路433Aで接続され、供給流路31Bと帰還流路32Bが接続流路33Bに代えて第4実施形態の接続流路433Bで接続されてもよい。これにより、2つの流路群341,342のそれぞれが、供給流路31毎の2つの流路群を有する。このような構成においても、上述と同様に、ヘッドの幅方向を小さくすることが可能となる。
【0082】
また、この変形例においても個別流路20とダミー個別流路360とが第1方向に等間隔に配置されているため、第1方向に隣接する2つの個別流路20,360間におけるプレート間の接着代のばらつきが小さくなり、個別流路20及びダミー個別流路60の途中部位からインクが漏れるのを抑制することができる。またこの変形例においても、同じ供給流路31A,31Bに連通する個別流路20及びダミー個別流路360が、第1方向に交互及び/又は等間隔に配置されていなくてもよい。各流路群341,342において、ダミー個別流路360が1以上設けられておればよい。このとき、ダミー個別流路360は、第1方向において供給流路31A,31Bの他端との間に、少なくとも1つの個別流路20を挟む位置に配置されておればよい。
【0083】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。
【0084】
上述の第1実施形態及び第2実施形態においても、ダミー個別流路60,260が1以上設けられておればよい。このとき、ダミー個別流路60,260は、第1方向において供給流路31A,31Bの他端との間に、少なくとも1つの個別流路20を挟む位置に配置されておればよい。これにおいても、供給流路31A,31Bに多くのインクを流入させることが可能となり、上述と同様な効果を得ることができる。
【0085】
供給流路31Aと帰還流路32Aは、第3方向に並んで配置されていてもよい。つまり、供給流路31Aと帰還流路32Aは、第2方向以外であって第1方向と交差する方向に並んで配置されていてもよい。
【0086】
上述の第1実施形態における流路群41の2つの供給口31XA,31XBが1つの供給口から構成されていてもよい。また、流路群41の2つの排出口32XA,32XBも1つの排出口から構成されていてもよい。
【0087】
ノズル21を除く個別流路20とダミー個別流路60との形状が互いに異なっていてもよい。また、個別流路20とダミー個別流路260との形状も互いに異なっていてもよい。
【0088】
また、第1実施形態における第1ダミー個別流路列60A及び第2ダミー個別流路列60Bのいずれかが設けられていなくてもよい。
【0089】
上述のアクチュエータ部材12の圧電層12Cが個別電極12D毎に設けられていてもよい。つまり、圧電層12Cが、圧力室22と第2方向に重なる位置に島状に個別に形成されていてもよい。
【0090】
上述の共通電極12Bの共通電極本体12B1も、圧力室22と第2方向に少なくとも一部が重なるように個別に形成された複数の枝部と、複数の枝部を繋ぎ接点領域12B2と電気的に接続された幹部とを有していてもよい。また、上述の接点領域12B2は2つ設けられているが、1つであってもよいし、3以上設けられていてもよい。また、接点領域12B2は第1方向に沿って複数設けられていてもよい。
【0091】
液体吐出ヘッドは、ライン式に限定されず、シリアル式(紙幅方向と平行な走査方向に移動しつつノズルから吐出対象に対して液体を吐出する方式)であってもよい。
【0092】
吐出対象は、用紙に限定されず、例えば布、基板等であってもよい。
【0093】
ノズルから吐出される液体は、インクに限定されず、任意の液体(例えば、インク中の成分を凝集又は析出させる処理液等)であってよい。
【0094】
本発明は、プリンタに限定されず、ファクシミリ、コピー機、複合機等にも適用可能である。また、本発明は、画像の記録以外の用途で使用される液体吐出ヘッド(例えば、基板に導電性の液体を吐出して導電パターンを形成する液体吐出ヘッド)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0095】
1,201,301,401 ヘッド
11,211,311,411 流路構造体
11X 上面
12 アクチュエータ部材
12B 共通電極
12C 圧電層
12C1 上面
12D 個別電極
12X アクチュエータ
20 個別流路
21 ノズル
31A,31B 供給流路
32A,32B 帰還流路
31XA,31XB 供給口
32XA,32XB 排出口
33A,33B,433A,433B 接続流路
41,42,241~243,341,342,441~444 流路群
60,260,360 ダミー個別流路