IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-電池の製造方法 図1
  • 特開-電池の製造方法 図2
  • 特開-電池の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158105
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0585 20100101AFI20241031BHJP
   H01M 10/0562 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M10/0585
H01M10/0562
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072989
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】柿下 健一
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ12
5H029AJ14
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL11
5H029AL12
5H029AM12
5H029BJ12
5H029CJ04
5H029CJ12
5H029HJ12
(57)【要約】
【課題】本開示は、電極積層体の一括切断時にバリ等の異物が生じたとしても、電極積層体の断面に傷が生じることを抑制しつつ、異物を除去可能な電池の製造方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本開示においては、電池の製造方法であって、正極層、固体電解質層および負極層を、この順に積層した電極積層体を準備する準備工程と、上記電極積層体を、上記電極積層体の積層方向に沿って一括で切断することにより、断面を形成する切断工程と、軸部および軸部の周囲に設けられた複数のブラシ部を有する回転ブラシを、上記積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、上記ブラシ部を上記電極積層体の断面に接触させることで、上記電極積層体の断面に存在する異物を除去する異物除去工程と、を有し、上記異物除去工程において、上記ブラシ部に付着した上記異物を除去しつつ、上記電極積層体の断面から上記異物を除去する、電池の製造方法を提供することにより、上記課題を解決する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池の製造方法であって、
正極層、固体電解質層および負極層を、この順に積層した電極積層体を準備する準備工程と、
前記電極積層体を、前記電極積層体の積層方向に沿って一括で切断することにより、断面を形成する切断工程と、
軸部および軸部の周囲に設けられた複数のブラシ部を有する回転ブラシを、前記積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、前記ブラシ部を前記電極積層体の断面に接触させることで、前記電極積層体の断面に存在する異物を除去する異物除去工程と、を有し、
前記異物除去工程において、前記ブラシ部に付着した前記異物を除去しつつ、前記電極積層体の断面から前記異物を除去する、電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対の電極材料層間に電解質材料層を設けて積層体を作製する工程と、前記積層体を一括で切断する工程と、を備える二次電池用電池部材の製造方法が開示されている。また、特許文献1には、上記の切断工程を備えることにより、積層体側面に略連続面が形成されることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/221010号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電極積層体を一括で切断すると、切断部分にバリ(突起)が発生する場合があり、例えば、集電体に金属バリが発生する場合がある。また、電極積層体の断面が略面一となるため、正負極間の端面距離が短くなる。そのため、電極積層体の断面に存在する金属バリ等の異物が原因となり、短絡が生じやすい。異物を除去するために、例えばブラシを用いることが想定されるが、ブラシを用いて異物を除去する際に、電極積層体の断面に傷(異物による引きずり傷)が発生する場合がある。
【0005】
本開示は、上記問題に鑑みてなされたものであり、電極積層体の一括切断時に発生する異物(金属バリ等の異物)を、電極積層体の断面に傷が生じることを抑制しつつ、除去可能な電池の製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
電池の製造方法であって、
正極層、固体電解質層および負極層を、この順に積層した電極積層体を準備する準備工程と、
前記電極積層体を、前記電極積層体の積層方向に沿って一括で切断することにより、断面を形成する切断工程と、
軸部および軸部の周囲に設けられた複数のブラシ部を有する回転ブラシを、前記積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、前記ブラシ部を前記電極積層体の断面に接触させることで、前記電極積層体の断面に存在する異物を除去する異物除去工程と、を有し、
前記異物除去工程において、前記ブラシ部に付着した前記異物を除去しつつ、前記電極積層体の断面から前記異物を除去する、電池の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示の電池の製造方法によれば、電極積層体の断面に傷が生じることを抑制しつつ、異物を除去することができる。従って、短絡を抑制可能な電池を製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示における切断工程後の電極積層体を例示する概略断面図である。
図2】本開示における異物除去工程を説明する概略断面図である。
図3】本開示における異物除去工程を説明する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示について、図面を用いて詳細に説明する。以下に示される各図は例示であり、各部の大きさ、および、各部の形状は、理解を容易にするために、誇張している場合がある。
【0010】
本開示においては、電池の製造方法であって、正極層、固体電解質層および負極層を、この順に積層した電極積層体を準備する準備工程と、上記電極積層体を、上記電極積層体の積層方向に沿って一括で切断することにより、断面を形成する切断工程と、軸部および軸部の周囲に設けられた複数のブラシ部を有する回転ブラシを、上記積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、上記ブラシ部を上記電極積層体の断面に接触させることで、上記電極積層体の断面に存在する異物を除去する異物除去工程と、を有し、上記異物除去工程において、上記ブラシ部に付着した上記異物を除去しつつ、上記電極積層体の断面から上記異物を除去する、電池の製造方法を提供する。
【0011】
本開示によれば、異物除去工程において、回転ブラシを積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、ブラシ部を電極積層体の断面に接触させることで、金属バリなどの異物を、傷の発生を抑制しつつ除去することができる。さらに、異物除去工程を、ブラシ部に付着した異物を除去しつつ行うことにより、電極積層体を常に清浄なブラシで清掃できるため、異物の再付着を抑制できる。また、回転ブラシに付着した異物によって電極積層体の断面に傷が生じることを抑制できる。さらに、連続加工を行う場合においては、次の電極積層体の断面を清浄なブラシで清掃できるため、回収した異物による悪影響を与えにくい。以下、各工程について詳述する。
【0012】
1.準備工程
本工程は、正極層、固体電解質層および負極層を、この順に積層した電極積層体を準備する工程である。電極積層体は、正極層の集電を行う正極集電体を含んでいてもよい。電極積層体は、負極層の集電を行う負極集電体を含んでいてもよい。
【0013】
正極層は、少なくとも正極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。正極活物質としては、例えば、コバルト酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム(NCA)、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(NCM)、マンガン酸リチウム等が挙げられる。導電材としては、例えば、炭素材料が挙げられる。固体電解質としては、例えば、後述するものと同様のものが用いられる。また、バインダーとしては、例えば、ゴム系バインダー、フッ化物系バインダーが挙げられる。
【0014】
負極層は、少なくとも、負極活物質を含み、必要に応じて、固体電解質、導電材およびバインダーの少なくとも一つを含有していてもよい。負極活物質としては、例えば、Si及びSi合金や、スズ及びスズ合金、酸化ケイ素等のシリコン系活物質、グラファイトやハードカーボン等の炭素系活物質、チタン酸リチウム等の各種酸化物系活物質、金属リチウム及びリチウム合金等が挙げられる。
【0015】
固体電解質層は、少なくとも固体電解質を含有する。固体電解質としては、例えば、硫化物固体電解質、酸化物固体電解質、窒化物固体電解質、及びハロゲン化物固体電解質が挙げられる。
【0016】
正極集電体の材料は特に限定されず、例えば、アルミニウム、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。正極集電体層の厚みは特に限定されず、例えば、0.1μm以上1mm以下の範囲である。負極集電体の材料は特に限定されず、例えば、銅、SUS、ニッケル等の金属が挙げられる。負極集電体層の厚みは特に限定されず、例えば、0.1μm以上1mm以下の範囲である。
【0017】
電極積層体は、正極層、固体電解質層および負極層を、積層方向においてこの順に有する。正極層、固体電解質層および負極層のセットを発電単位とした場合、電極積層体は、発電単位を1つのみ有していてもよく、2つ以上有していてもよい。電極積層体が2つ以上の発電単位を有する場合、それらの発電単位は、直列接続されていてもよく、並列接続されていてもよい。
【0018】
2.切断工程
本工程は、電極積層体を積層方向に沿って一括で切断することにより、電極積層体の断面を形成する工程である。具体的には、少なくとも正極層、固体電解質層、負極層の端部を一括で切断する。図1は、切断工程後における電極積層体を例示する概略断面図である。図1における電極積層体10は、略面一な断面Sを有する。断面Sには金属バリが生じる場合がある。金属バリは、切断方向(積層方向)に向かうようにして形成される。
【0019】
電極積層体の一括切断は、例えば、鋸刃を備えた切断装置を用いることができる。鋸刃は丸鋸刃であることが好ましい。切断時における異物の発生を抑制できるためである。一括切断は、電極積層体を平面視したときに、任意の形状になるように切断すればよい。
【0020】
図1に示す電極積層体10は、2つの発電単位が並列接続されており、負極集電体1と、負極集電体1の一方の面s11から順に配置された、第1負極層2a、第1固体電解質層3a、第1正極層4aおよび第1正極集電体5aと、負極集電体1の他方の面s12から順に配置された、第2負極層2b、第2固体電解質層3b、第2正極層4bおよび第2正極集電体5bと、を有する。
【0021】
3.異物除去工程
本工程は、軸部および軸部の周囲に設けられた複数のブラシ部を有する回転ブラシを、積層方向に平行な方向を回転軸として回転させつつ、ブラシ部を電極積層体の断面に接触させることで、電極積層体の断面に存在する異物を除去する工程である。本開示においては、ブラシ部に付着した異物を除去しつつ、電極積層体から異物を除去する。
【0022】
図2は、本工程を説明する概略断面図である。図2に示すように、回転ブラシ30は、軸部31および軸部31の周囲に設けられた複数のブラシ部32を有する。ブラシ部32は、通常、軸部31の周囲に、軸部31の軸方向に対して垂直方向に立設されている。本工程においては、回転ブラシ30を、電極積層体10の積層方向Dに平行な方向を回転軸Rとして回転させつつ、ブラシ部32を断面Sに接触させる。この際、ブラシ部32は積層方向に対して垂直な面内で回転移動する。このようにブラシ部を断面に接触させることにより、従来の非接触式のエアブロー等に比べて異物の除去が容易となる。また、回転ブラシの回転方向を上述のように制御することにより、バリの向きが変わり、バリの除去が容易となる。回転ブラシを、積層方向に平行な方向からずれた方向を回転軸として回転させた場合には、電極積層体の断面に傷が発生する恐れがある。
【0023】
本工程では、ブラシ部に付着した異物を除去しつつ、電極積層体から異物を除去する。ブラシ部に付着した異物を除去する方法としては、図2に示すように、回転ブラシ30に対して、電極積層体10とは反対側に配置された、櫛歯形状を有する突起部41および本体部42を有するブラシクリーナー40および吸引装置50を使用して行うことが好ましい。櫛歯形状を有する突起部41を備えるブラシクリーナー40に、回転ブラシ30のブラシ部32を通過させることにより、ブラシ部32に絡まった異物を除去することができる。さらに、吸引装置50によってブラシクリーナー40上に回収された異物を吸引して回収することができる。
【0024】
回転ブラシにおけるブラシ部の直径は、例えば、30μm以上であり、50μm以上であってもよい。一方、80μm以下であってもよい。ブラシ部の材質としては、特に限定されないが、樹脂等の絶縁性を有する材料で構成されることが好ましい。樹脂としては、例えば、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0025】
図3(a)は、本工程における回転ブラシと電極積層体との接触部の一例を示す拡大断面図である。図3(a)に示すように、本工程においては、ブラシ部32を電極積層体10の断面Sに押し付けつけるようにして接触させることが好ましい。具体的には、回転ブラシ30の軸部31と電極積層体10の断面Sとの間の距離Dが、ブラシ部32の長さよりも小さくなるように、回転ブラシ30を電極積層体10に押し付けることが好ましい。このように回転ブラシを電極積層体に押し付けることにより、ブラシ部間の距離が、異物の大きさよりも小さくなり、異物の除去が容易となる。
【0026】
回転ブラシの回転速度は、例えば、70rpm以上であってもよく、100rpm以上であってもよい。一方、回転速度は、例えば、200rpm以下であり、150rpm以下であってもよい。本工程においては、連続加工を行うために、電極積層体は直線移動していることが好ましい。直線移動における速度は、例えば、50mm/s以上である。一方、例えば、100mm/s以下である。
【0027】
図3(b)は、本工程におけるブラシクリーナーと回転ブラシとの接触部の一例を示す拡大断面図である。図3(b)に示すように、回転ブラシ30のブラシ部32は、十分に伸びた状態でブラシクリーナー40に突入させることが好ましい。ブラシ部32に絡んだ異物を容易に除去することができるためである。そして、図2および図3(c)に示すように、吸引装置50が作動されると、吸引装置50の吸引ノズル51内が負圧となり、ブラシクリーナー40上に回収された異物Xが回収される。吸引圧としては、例えば、-10kPa以下である。
【0028】
ブラシクリーナーの突起部41および本体部42の材質としては、例えば、樹脂が挙げられる。突起部41のピッチ(隣接する突起部41間の距離)は、例えば、1mm以下であることが好ましく、0.5mm以下であることがより好ましい。
【0029】
本開示においては、例えば、上記異物除去工程後の電極積層体を、外装体の内部に収容し、外装体を封止することで電池を製造することができる。電池は、全固体電池であってもよい。また、電池の種類は特に限定されないが、例えば、リチウムイオン二次電池が挙げられる。
【0030】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0031】
(比較例1)
正極層、固体電解質層および負極層をこの順に積層した電極積層体を準備した。次に、電極積層体を積層方向に沿って一括で切断し、断面を形成した。次に、ブラシ部を有するブラシを、ブラシ部が電極積層体の断面に接触するように押し付けながら、電極積層体を50mm/sの速度で直線移動させることにより、電極積層体の断面の清掃を行った。
【0032】
(比較例2)
比較例1と同様の方法で、電極積層体を準備し、積層方向に沿って一括で切断した。次に、軸部およびブラシ部を有する回転ブラシを、積層方向に平行な方向を回転軸として100rpmで回転させつつ、ブラシ部を電極積層体の断面に接触させながら、電極積層体を50mm/sの速度で直線移動させることにより、電極積層体の断面の清掃を行った。
【0033】
(比較例3)
比較例1と同様の方法で、電極積層体を準備し、積層方向に沿って一括で切断した。次に、軸部およびブラシ部を有する回転ブラシを、積層方向に平行な方向を回転軸として100rpmで回転させつつ、ブラシ部を電極積層体の断面に接触させながら、電極積層体を50mm/sの速度で直線移動させることにより、電極積層体の断面の清掃を行った。この際、回転ブラシに対して、電極積層体側とは反対側に吸引装置を配置し、回転ブラシの吸引を行った。
【0034】
(実施例)
比較例1と同様の方法で、電極積層体を準備し、電極積層体を積層方向に沿って一括で切断することにより、断面を形成した。図2に示すように、回転ブラシ30を、積層方向Dに平行な方向を回転軸Rとして100rpmで回転させ、ブラシ部32を電極積層体10の断面に接触させながら、電極積層体を50mm/sの速度で直線移動させた。これにより、電極積層体の断面の清掃を行った。この際、図2に示すように、回転ブラシ30に対して、電極積層体10側とは反対側に、ブラシクリーナー40および吸引装置50を配置し、吸引装置による吸引圧を-20kPaに設定し、ブラシ部に付着した異物を除去しつつ、電極積層体の断面の清掃を行った。
【0035】
(評価)
比較例1~3および実施例1において、清掃後に、電極積層体の断面の異物が除去されていたか否か、および、電極の断面の傷の発生の有無を評価した。結果を表1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
比較例1~3および実施例において、電極積層体の断面における異物は除去されていることが確認された。実施例では、電極積層体の断面に傷が生じなかった(評価○)。一方、比較例1は、ブラシが異物を引きずり、電極積層体の断面に傷が生じた(評価×)。比較例2は、回転ブラシに付着した異物により、部分的に傷が生じた(評価△)。比較例3は、ブラシに絡まった異物が除去できずに、比較例2と同様に部分的に傷が生じた(評価△)。
【符号の説明】
【0038】
10…電極積層体
30…回転ブラシ
40…ブラシクリーナー
50…吸引装置
図1
図2
図3