(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158106
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】液抜き装置及び消火装置
(51)【国際特許分類】
A62C 33/02 20060101AFI20241031BHJP
A62C 27/00 20060101ALI20241031BHJP
A62C 35/68 20060101ALI20241031BHJP
F16L 55/07 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A62C33/02
A62C27/00 507
A62C35/68
F16L55/07 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072992
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】廖 赤虹
(72)【発明者】
【氏名】松島 至俊
(72)【発明者】
【氏名】大室 健
(72)【発明者】
【氏名】金川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山野 光一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 直久
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189FA02
2E189LA07
(57)【要約】
【課題】送液ホース内の液体を強制的に排出できる液抜き装置、及びその液抜き装置の使用に適した消火装置を提供する。
【解決手段】送液ホース30を介して液体を放射具11へ圧送する供給源40と送液ホース30との間に設け、送液ホース30内に残留した液体を強制的に排出する装置であって、負圧発生器20と、供給源40から放射具11へ向かう送液ホース30内の液体を負圧発生器20へ導く導入管21とを備え、負圧発生器20は、導入管21から供給される液体の流れを利用して負圧を生じ、送液ホース30に残留している液体を吸引する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送液ホースを介して液体を放射具へ圧送する供給源と前記送液ホースとの間に設け、前記送液ホース内に残留した前記液体を強制的に排出する装置であって、
負圧発生器と、
前記供給源から前記放射具へ向かう前記送液ホース内の前記液体を前記負圧発生器へ導く導入管と、を備え、
前記負圧発生器は、前記導入管から供給される前記液体の流れを利用して負圧を生じ、前記送液ホースに残留している前記液体を吸引することを特徴とする液抜き装置。
【請求項2】
前記負圧発生器は、ノズル部とディフューザー部を有するエジェクターであることを特徴とする請求項1に記載の液抜き装置。
【請求項3】
複数本からなる前記送液ホースの間に挿入する接続管と、
前記接続管に設ける第一の開閉弁と、
一端を前記第一の開閉弁よりも下流側で前記接続管に接続し、他端を前記エジェクターの吸込側入口に接続する吸込管と、を備え、
前記接続管に前記導入管の一端が前記第一の開閉弁よりも上流側で接続されると共に、前記エジェクターの駆動側入口に前記導入管の他端が接続されており、
前記第一の開閉弁を開にすると、前記供給源から圧送された前記液体が前記放射具へ流れ、
前記第一の開閉弁を閉にすると、前記供給源から圧送された前記液体が前記導入管から前記エジェクターに入り前記ノズル部から前記ディフューザー部へ向けて噴射されて前記エジェクターの吸込側に負圧が生じ、前記送液ホースに残留している前記液体が前記吸込管を介して前記エジェクターに吸引されることを特徴とする請求項2に記載の液抜き装置。
【請求項4】
前記導入管に設けられた第二の開閉弁と、前記吸込管に設けられた第三の開閉弁と、を備え、
前記第一の開閉弁、前記第二の開閉弁、及び前記第三の開閉弁は、それぞれ手動操作部を有することを特徴とする請求項3に記載の液抜き装置。
【請求項5】
請求項1に記載の液抜き装置を適用する装置であって、
本体と、
供給源から送液ホースを介して圧送される液体を放射する放射具と、
前記本体に設けられ先端に前記放射具が取り付けられる本体配管と、
前記本体配管と前記送液ホースとの間に脱着自在に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第一の逆止弁と、を備えることを特徴とする消火装置。
【請求項6】
請求項1に記載の液抜き装置を適用する装置であって、
本体と、
供給源から送液ホースを介して圧送される液体を放射する放射具と、
前記本体に設けられ先端に前記放射具が取り付けられる本体配管と、
前記本体配管に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第二の逆止弁と、
一端が前記本体配管に前記第二の逆止弁よりも上流側で接続され、他端が大気開放された外気吸入管と、
前記外気吸入管に設けられた第四の開閉弁と、を備えることを特徴とする消火装置。
【請求項7】
前記外気吸入管には、一端側から他端側へ向かう流体を止める第三の逆止弁が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の消火装置。
【請求項8】
前記本体は自走可能な走行体であることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の消火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水系消火剤等の液体を放射具へ送液する送液ホース内に残った液体を強制的に排出する液抜き装置、及びその液抜き装置を適用する消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱輻射などにより人が接近できない火災現場において消火ロボットが使用されている。消火ロボットは、主に本体の走行部と、本体に搭載した放水銃及び制御装置から構成される。消火ロボットを使用するには、消防車等の供給源(圧力水源)と、供給源から消火ロボットに水を供給するための送液ホース(消防ホース)が必要である。
火災現場に消火ロボットを投入する際は、一般的に、充水されていない送液ホースを接続した消火ロボットを遠隔操作により所定位置まで走行させ、所定位置へ到着後に送液ホースに水(水系消火剤)を送り、放水銃のノズルから水を放射する。
ここで、特許文献1には、放水砲および走行手段を有し、放水砲は、放水圧が0.4MPa以上でノズルおよび消防ホースと接続する連結部を有し、その放水角度をノズル回動点を中心に上下に変更するノズル回動機構および連結部の軸方向を連結回動点を中心に上下に変更する連結回動機構を有すると共に、連結回動機構が、ノズル回動点および連結回動点を結ぶ基軸に対し、連結部の軸方向を下方に5°から45°の範囲で変更できる自走式放水砲が開示されている。
また、特許文献2には、無限軌道アセンブリが取り付けられたハウジングと、ハウジング内に蓄電池を備えた制御パネル及び駆動部と、遠隔制御機能を備え、ハウジングに取り付けられた消火剤供給要素と、ビデオ監視システムと、接続パイプラインとを備え、接続パイプラインの出口が消火剤供給要素の入口に接続され、接続パイプラインがハウジング内に設置され、その中心軸がハウジングの垂直対称面内に位置し、接続パイプラインの入口軸は、消火剤供給要素の出口軸に対して、小型の移動式ロボット消火ユニットの高さの少なくとも半分以下に位置し、接続パイプラインの出口は、ハウジングの上面中央に位置する小型の移動式ロボット消火ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-077446号公報
【特許文献2】特表2020-531060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
下表1は送液ホースの口径ごとの重量の例を示したものである。
【表1】
充分な放水流量を確保するため、消火ロボットには口径65A(内径約65mm)以上の送液ホースを接続することが多い。また、送液流量を確保するため1台の消火ロボットに2本の送液ホースを並列に使用することもよくある。表1に示すように、口径65Aの送液ホースは、自重が約0.3kg/mであり、充水時は約3.6kg/mになるため、長さが100mだとすれば、総重量は約360kgにも上る。更に、100mの送液ホースを2本並列に使用する場合は、総重量が約720kgとなる。
消火ロボットは送液ホースを引き摺りながら移動するため、次の放水位置へ消火ロボットを移動しようとするときに、充水され重くなった送液ホースは消火ロボットの円滑な走行を妨げる。特に、倉庫やスーパー、工場などでの火災発生時に消火ロボットを屋内に投入して消火作業に供する場合は、棚や保管物等といった散水障害が多いため消火ロボットを頻繁に移動させる必要があるが、通路が狭いため重いホースを引っ張りながらではUターンやバックなどの動作が簡単ではなく、機動性が損なわれる。
ここで、特許文献1の自走式放水砲、及び特許文献2の移動式ロボット消火ユニットは、建物内へ投入して消火作業を行うことを可能とするものであるが、上述のような問題点の解決策については何ら記載されていない。
【0005】
消火ロボットを移動させる際に、送液ホース内の水を抜くことができれば送液ホースの総重量が軽くなるため、消火ロボットは走行(移動)しやすくなる。また、送液ホースの総重量が軽くなると、消防隊員等が送液ホースを圧力水源側に引っ張り戻すことも容易となるので、消火ロボットの移動がより自由になる。
しかし、圧力水源側の送液ホースを接続媒介(継手)から外して大気に開放しても、送液ホースの敷かれた場所が供給源側に向かって下方へある程度傾いた地形でなければ送液ホースの中の水が自然には流れ出てこない。
そこで本発明は、送液ホース内の液体を簡単に排出できる液抜き装置、及びその液抜き装置の使用に適した消火装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の液抜き装置2は、送液ホース30を介して液体を放射具11へ圧送する供給源40と送液ホース30との間に設け、送液ホース30内に残留した液体を強制的に排出する装置であって、負圧発生器20と、供給源40から放射具11へ向かう送液ホース30内の液体を負圧発生器20へ導く導入管21とを備え、負圧発生器20は、導入管21から供給される液体の流れを利用して負圧を生じ、送液ホース30に残留している液体を吸引することを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の液抜き装置2において、負圧発生器20は、ノズル部とディフューザー部を有するエジェクターであることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の液抜き装置2において、複数本からなる送液ホース30の間に挿入する接続管22と、接続管22に設ける第一の開閉弁23と、一端を第一の開閉弁23よりも下流側で接続管22に接続し、他端をエジェクター20の吸込側入口20Bに接続する吸込管24とを備え、接続管22に導入管21の一端が第一の開閉弁23よりも上流側で接続されると共に、エジェクター20の駆動側入口20Aに導入管21の他端が接続されており、第一の開閉弁23を開にすると、供給源40から圧送された液体が放射具11へ流れ、第一の開閉弁23を閉にすると、供給源40から圧送された液体が導入管21からエジェクター20に入りノズル部からディフューザー部へ向けて噴射されてエジェクター20の吸込側に負圧が生じ、送液ホース30に残留している液体が吸込管24を介してエジェクター20に吸引されることを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の液抜き装置2において、導入管21に設けられた第二の開閉弁27と、吸込管24に設けられた第三の開閉弁28とを備え、第一の開閉弁23、第二の開閉弁27、及び第三の開閉弁28は、それぞれ手動操作部を有することを特徴とする。
請求項5記載の本発明の消火装置100は、請求項1に記載の液抜き装置2を適用する装置であって、本体10と、供給源40から送液ホース30を介して圧送される液体を放射する放射具11と、本体10に設けられ先端に放射具11が取り付けられる本体配管12と、本体配管12と送液ホース30との間に脱着自在に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第一の逆止弁14とを備えることを特徴とする。
請求項6記載の本発明の消火装置200は、請求項1に記載の液抜き装置2を適用する装置であって、本体10と、供給源40から送液ホース30を介して圧送される液体を放射する放射具11と、本体10に設けられ先端に放射具11が取り付けられる本体配管12と、本体配管12に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第二の逆止弁15と、一端が本体配管12に第二の逆止弁15よりも上流側で接続され、他端が大気開放された外気吸入管16と、外気吸入管16に設けられた第四の開閉弁17とを備えることを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の消火装置200において、外気吸入管16には、一端側から他端側へ向かう流体を止める第三の逆止弁18が設けられていることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項5又は請求項6に記載の消火装置100、200において、本体10は自走可能な走行体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の液抜き装置は、供給源から圧送される液体を利用して送液ホース内の液体を簡単に排出できるため、消火装置をスムーズに次の放射位置へ移動させること等が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第一の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図
【
図2】同第二の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図
【
図3】同第三の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による液抜き装置は、送液ホースを介して液体を放射具へ圧送する供給源と送液ホースとの間に設け、送液ホース内に残留した液体を強制的に排出する装置であって、負圧発生器と、供給源から放射具へ向かう送液ホース内の液体を負圧発生器へ導く導入管とを備え、負圧発生器は、導入管から供給される液体の流れを利用して負圧を生じ、送液ホースに残留している液体を吸引するものである。
本実施の形態によれば、送液ホース内に残留している液体を供給源から圧送される液体を利用して簡単に排出することができるため、送液ホースの総重量を軽くでき、送液ホースを繋げたまま放射具を別の場所に移動させることが容易となる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による液抜き装置において、負圧発生器をノズル部とディフューザー部を有するエジェクターとしたものである。
本実施の形態によれば、負圧発生器にポンプ等を設けることなく負圧を発生させることができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による液抜き装置において、複数本からなる送液ホースの間に挿入する接続管と、接続管に設ける第一の開閉弁と、一端を第一の開閉弁よりも下流側で接続管に接続し、他端をエジェクターの吸込側入口に接続する吸込管とを備え、接続管に導入管の一端が第一の開閉弁よりも上流側で接続されると共に、エジェクターの駆動側入口に導入管の他端が接続されており、第一の開閉弁を開にすると、供給源から圧送された液体が放射具へ流れ、第一の開閉弁を閉にすると、供給源から圧送された液体が導入管からエジェクターに入りノズル部からディフューザー部へ向けて噴射されてエジェクターの吸込側に負圧が生じ、送液ホースに残留している液体が吸込管を介してエジェクターに吸引されるものである。
本実施の形態によれば、放射具からの放射作業と送液ホース内の残留液体の排出作業との切り替えを、第一の開閉弁の操作によって簡単に行うことができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による液抜き装置において、導入管に設けられた第二の開閉弁と、吸込管に設けられた第三の開閉弁とを備え、第一の開閉弁、第二の開閉弁、及び第三の開閉弁は、それぞれ手動操作部を有するものである。
本実施の形態によれば、放射具からの液体放射作業を行う際は第二の開閉弁と第三の開閉弁を閉じておくことで、負圧発生器に液体が流れることを簡単に防止できる。また、各開閉弁の操作を手動とすることで、装置構成を簡素化して故障可能性を低減できる。さらに第二の開閉弁の開度を独立で調整することにより、エジェクターの吸込側に発生する負圧の強さを調整できるため、よりスムーズに送液ホース内の液体を排出できる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態による消火装置は、第1の実施の形態による液抜き装置を適用する装置であって、本体と、供給源から送液ホースを介して圧送される液体を放射する放射具と、本体に設けられ先端に放射具が取り付けられる本体配管と、本体配管と送液ホースとの間に脱着自在に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第一の逆止弁とを備えるものである。
本実施の形態によれば、第一の逆止弁が脱着自在であるため、送液ホースとして用いるホースの種類に応じて第一の逆止弁を設けるか否かを選択できる。例えば、送液ホースとして布ホースを使用する場合は、送液ホース内に残留している液体を排出するときに、送液ホースへの外気の流入を遮断して布ホースのうち液体が抜けた部分から元の平坦な形状に戻るようにすることで液体を迅速に排出できるので、第一の逆止弁を設けることが好ましく、送液ホースとして保形ホースを使用する場合は、送液ホース内に残留している液体を排出するときに、送液ホースに外気を下流側から流入させることで液体を迅速に排出できるので、第一の逆止弁を設けないことが好ましい。
【0014】
本発明の第6の実施の形態による消火装置は、第1の実施の形態による液抜き装置を適用する装置であって、本体と、供給源から送液ホースを介して圧送される液体を放射する放射具と、本体に設けられ先端に放射具が取り付けられる本体配管と、本体配管に設けられ下流から上流へ向かう流体を止める第二の逆止弁と、一端が本体配管に第二の逆止弁よりも上流側で接続され、他端が大気開放された外気吸入管と、外気吸入管に設けられた第四の開閉弁とを備えるものである。
本実施の形態によれば、第二の逆止弁が設けられているので、例えば送液ホースとして布ホースを使用する場合は、第四の開閉弁を閉とすることで、送液ホース内に残留している液体を排出するときに送液ホースへ外気が流入することを防止できる。また、例えば送液ホースとして保形ホースを使用する場合は、第四の開閉弁を開とすることで、送液ホース内に残留している液体を排出するときに外気吸入管から送液ホースへ外気を流入させることができる。これにより、送液ホースとして布ホースを使用する場合も保形ホースを使用する場合も、送液ホースに残留している液体をより迅速に排出することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による消火装置において、外気吸入管には、一端側から他端側へ向かう流体を止める第三の逆止弁が設けられているものである。
本実施の形態によれば、放射具から液体を放射している際に液体が外気吸入管から外部へ漏出することを防止できる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第5又は第6の実施の形態による消火装置において、本体を自走可能な走行体としたものである。
本実施の形態によれば、液抜き装置を適用することで消火装置の移動走行がより自由で迅速なものとなり、消火活動を効率的に行うことができる。
【実施例0017】
以下、本発明の実施例による液抜き装置及び消火装置について説明する。
図1は第一の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図である。
消火装置1は、遠隔操作可能な消火ロボットであり、自走可能な走行体(本体)10と、放射ノズル11Aを有し水系消火剤としての液体を放射する放射具11と、走行体10に設けられ先端に放射具11が取り付けられる本体配管12と、本体配管12の後端に設けられ送液ホース30との接続に用いる本体継手13を備える。
消火ロボット1は、送液ホース30を介して消防車や水源等の供給源40から水系消火剤の供給を受けて消火活動を行う。水系消火剤は例えば水や泡消火薬剤等の液体であり、供給源40から所定の圧力で送液ホース30に送り出される。
送液ホース30には、火災現場の状況に応じて布ホース又は保形ホースを使用する。布ホースは、軽量であり、また折り畳むことでコンパクトに保管できるという特長を有する。一方で保形ホースは、屈折しにくく、またホースリールを利用すれば展開しなくても通液できるという特長を有する。
【0018】
消火ロボット1は、走行体10に、バッテリー(二次電池)と、走行用クローラー(無限軌道)と、周囲撮影用のカメラを備える。当該カメラで撮影された周囲の映像は消防隊員が持つモニター等の表示手段においてリアルタイムに表示される。消防隊員は、表示手段に表示された映像により消火ロボット1の周囲状況を確認しながら無線又は有線のコントローラを用いて消火ロボット1の移動や放射等を遠隔操作する。
【0019】
本実施例において、送液ホース30は、消火ロボット1側に位置する第一のホース30Aと供給源40側に位置する第二のホース30Bからなる。第一のホース30Aは、先端に本体継手13と係合する第一ホース先端継手31を有し、後端に第一ホース後端継手32を有する。第二のホース30Bは、先端に第二ホース先端継手33を有し、後端は供給源40に接続されている。
【0020】
液抜き装置2は、供給源40から圧送された水系消火剤等の液体の流れを利用して負圧を生じさせる負圧発生器20と、供給源40から放射具11へ向かう送液ホース30内の液体を負圧発生器20へ導く導入管21と、第一のホース30Aと第二のホース30Bの間に挿入する接続管22と、接続管22に設けられたボールコック等の第一の開閉弁23と、送液ホース30に残留している液体が負圧発生器20に吸引される際の流路となる吸込管24を備える。
負圧発生器20は、導入管21から供給される流体を噴射するノズル部と、ノズル部よりも下流に設けられたディフューザー部を有するエジェクターとしている。これにより、負圧発生器20にポンプ等を設けることなく負圧を発生させることができる。
導入管21の一端は、第一の開閉弁23よりも上流側で接続管22に接続しており、導入管21の他端は、エジェクター20の駆動側入口20Aに接続している。吸込管24の一端は、第一の開閉弁23よりも下流側で接続管22に接続しており、吸込管24の他端は、エジェクター20の吸込側入口20Bに接続している。
接続管22は、先端に第一のホース30Aとの接続に用いる接続管先端継手25を有し、後端に第二のホース30Bとの接続に用いる接続管後端継手26を有する。接続管先端継手25は第一ホース後端継手32と係合し、接続管後端継手26は第二ホース先端継手33と係合する。
導入管21には第二の開閉弁27が設けられ、吸込管24には第三の開閉弁28が設けられている。第一の開閉弁23、第二の開閉弁27、及び第三の開閉弁28は、それぞれ開閉レバーや開閉ハンドル等の手動操作部を備える。液抜き装置2は、供給源40の近傍に設置するか、又は消火ロボット1の遠隔制御を行う地点である制御ポイントに設置することが好ましい。これにより消防隊員は、各開閉弁の手動操作を火災が発生している建物等から離れた位置で安全に行うことができる。また、各開閉弁の操作を手動とすることにより、装置構成を簡素化して故障可能性を低減できる。
【0021】
放射具11の放射ノズル11Aから水系消火剤を放射するときは、第二の開閉弁27と第三の開閉弁28を閉とし、第一の開閉弁23を開とする。これにより、供給源40から圧送される水系消火剤は、第二のホース30B→接続管22→第一のホース30A→本体配管12の順に流れて放射ノズル11Aから放射される。
一方、放射を中断して消火ロボット1を次の放射位置へ移動させるときは、第一の開閉弁23を閉とし、第二の開閉弁27と第三の開閉弁28を開とする。これにより、供給源40から圧送される水系消火剤は、第二のホース30B→接続管22→導入管21→エジェクター20の順に流れる。圧力液体である水系消火剤がエジェクター20の駆動側入口20Aから入りノズル部からディフューザー部へ向けて噴射されることで、エジェクター20の吸込側に負圧が発生する。エジェクター20の吸込側入口20Bは吸込管24及び接続管22を介して第一のホース30Aに繋がっているため、第一のホース30Aに残留している水系消火剤は、エジェクター20に吸引されて外部へ排出される。第一のホース30Aから水系消火剤を排出した後、供給源40からの水系消火剤の送出を停止し、消火ロボット1を次の放射位置へ移動させる。
このように、放射具11からの放射と送液ホース30内の残留液体の排出との切り替えは、第一の開閉弁23等の操作によって簡単に行うことができる。また、放射具11からの液体放射作業を行う際は第二の開閉弁27と第三の開閉弁28を閉じておくことで、負圧発生器20に液体が流れることを簡単に防止できる。
さらに、第二の開閉弁27と第三の開閉弁28の動作を連動させずに、第二の開閉弁27の開度を手動操作部により独立で調整することにより、エジェクター20の吸込側に発生する負圧の強さを調整できるため、よりスムーズに送液ホース30内の液体を排出できる。
【0022】
液抜き装置2を用いることで、送液ホース30内に満たされている水系消火剤等の液体を供給源40から圧送される液体を利用して簡単に排出し、水系消火剤が抜けた分だけ送液ホース30の総重量を軽くすることができるので、消火ロボット1を素早く円滑に移動させ易くなる。また、送液ホース30の総重量が軽くなることで、消防隊員が送液ホース30を供給源40側に引っ張り戻すことも可能となり、消火ロボット1の移動(走行)がより自由となる。
なお、第一ホース後端継手32と第二ホース先端継手33を接続すれば、接続管22を介さずに第一のホース30Aと第二のホース30Bを連結することも可能である。よって、まずは第一のホース30Aと第二のホース30Bを直結した状態で消火ロボット1による放射作業を行い、消火ロボット1を移動させるときに、第一のホース30Aと第二のホース30Bとの連結を解除して、その間に接続管22を挿入することもできる。
【0023】
次に本発明の第二の実施例による液抜き装置及び消火装置について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図2は第二の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図である。
第二の実施例において、液抜き装置2は第一の実施例における液抜き装置2と同様であるが、消火装置(消火ロボット)100は、本体配管12と送液ホース30との間に設ける脱着自在の第一の逆止弁14をさらに備える点において第一の実施例の消火装置1と相違する。
第一の逆止弁14は、下流(本体配管12側)から上流(送液ホース30側)へ向かう流体を止めたいときに、本体継手13と第一ホース先端継手31との間に取り付ける。
【0024】
送液ホース30内の水系消火剤をエジェクター20で吸引して排出する際において、第一のホース30A内の水系消火剤は、エジェクター20から遠いほうから無くなっていく。
第一のホース30Aに布ホースを使用している場合は、第一のホース30Aのうち水系消火剤が無くなった部分は元の平坦な形状に戻るはずであるが、第一のホース30A内が負圧となっていることにより、第一の逆止弁14を設けていない場合は、放射ノズル11Aから入った外気が第一のホース30Aに流れ込み、膨らんだ形状が維持される。
これに対して、第一の逆止弁14を設けて流体が放射ノズル11Aの方向にのみ流れるように制限した場合は、放射ノズル11Aから入った外気が第一のホース30Aに流れない。このため、第一のホース30A内において、エジェクター20による吸引により水系消火剤が抜けた部分は膨らみが解けて元の平坦な形状に戻っていく。その形状変化に伴い水系消火剤がエジェクター20側に押されるため、エジェクター20への吸引が促進され、より迅速に第一のホース30A内に残留する水系消火剤を排出することができる。
よって、第一のホース30Aに布ホースを用いる場合は、第一の逆止弁14を取り付けることが好ましい。
【0025】
第一のホース30Aに保形ホースを使用している場合は、内部が負圧となり水系消火剤が抜けた後も形状が筒状に保たれるため、布ホースを使用しているときのような変形による排出促進は期待できない。
一方で、第一の逆止弁14を設けずに、放射ノズル11Aから入った外気を第一のホース30Aに流入させれば、残留している水系消火剤が流入した外気によってエジェクター20側に押されるため、エジェクター20への吸引が促進され、より迅速に第一のホース30A内に残留する水系消火剤を排出することができる。
よって、第一のホース30Aに保形ホースを用いる場合は、第一の逆止弁14を取り付けないことが好ましい。
【0026】
このように、本実施例の消火装置100においては、第一の逆止弁14が本体配管12と送液ホース30との間に脱着自在であるため、送液ホース30として用いるホースの種類に応じて第一の逆止弁14を設けるか否かを選択できる。ここで、上記のように、送液ホース30として布ホースを使用する場合は第一の逆止弁14を設けることが好ましく、送液ホース30として保形ホースを使用する場合は第一の逆止弁14を設けないことが好ましい。
また、第一の逆止弁14は、スイング式、バタフライ式、リングセット式、又はウエハー式(デュアルプレート式)であることが好ましい。これにより、第一の逆止弁14を本体配管12と送液ホース30との間に取り付けた状態で液体を放射具11から放射するときの圧力損失を最小限に抑えることができる。
【0027】
次に本発明の第三の実施例による液抜き装置及び消火装置について説明する。なお、上記した実施例と同一機能部材には同一符号を付して説明を省略する。
図3は第三の実施例による液抜き装置と消火装置の概略構成図である。
第三の実施例において、液抜き装置2は第一の実施例における液抜き装置2と同様であるが、消火装置(消火ロボット)200は、本体配管12に設けられた第二の逆止弁15と、外気を流入させる外気吸入管16と、外気吸入管16に設けられた第四の開閉弁17及び第三の逆止弁18を更に備える点において第一の実施例の消火装置1と相違する。
第二の逆止弁15は、下流(放射ノズル11A側)から上流(送液ホース30側)へ向かう流体を止めることにより、本体配管12内の流体が放射ノズル11Aへ向かう方向にのみ流れるように制限する役割を持つ。
外気吸入管16は、一端が第二の逆止弁15よりも上流側で本体配管12に接続しており、他端は大気開放となっている。外気吸入管16に設けられている第三の逆止弁18は、本体配管12の一端側から他端側へ向かう流体を止める役割を持つ。
【0028】
本実施例において、第一のホース30Aに布ホースを使用している場合は、消火ロボット200を放射位置へ投入する前に第四の開閉弁17を閉にしておく。第二の逆止弁15が設けられていると共に第四の開閉弁17が閉じられていることにより、エジェクター20が送液ホース30内の水系消火剤を吸引する際において、放射ノズル11A又は外気吸入管16から入った外気が第一のホース30Aに流れることはない。このため、第二の実施例で説明したように、第一のホース30Aのうち水系消火剤が抜けた部分は元の平坦な形状に戻っていくため、より迅速に水系消火剤を排出することができる。
【0029】
一方で、第一のホース30Aに保形ホースを使用している場合は、消火ロボット200を放射位置へ投入する前に第四の開閉弁17を開にしておく。これにより、放射ノズル11Aから入った外気は第二の逆止弁15で止められ第一のホース30Aに流れないが、外気吸入管16から入った外気は第三の逆止弁18を経由して第一のホース30Aに流入する。これにより、エジェクター20が送液ホース30内の水系消火剤を吸引する際は、第二の実施例で説明したように、流入してくる外気によって水系消火剤がエジェクター20側に押されるため、より迅速に水系消火剤を排出することができる。
【0030】
このように、本実施例の消火装置200においては、第二の逆止弁15が設けられているので、送液ホース30として布ホースを使用する場合は、第四の開閉弁17を閉とすることで、送液ホース30内に残留している液体を排出するときに送液ホース30へ外気が流入することを防止できる。また、送液ホース30として保形ホースを使用する場合は、第四の開閉弁17を開とすることで、送液ホース30内に残留している液体を排出するときに外気吸入管16から送液ホース30へ外気を流入させることができる。これにより、送液ホース30として布ホースを使用する場合も保形ホースを使用する場合も、送液ホース30に残留している液体をより迅速に排出することができる。
また、外気吸入管16には、一端側から他端側へ向かう流体を止める第三の逆止弁18が設けられているので、放射具11の放射ノズルから放射している際に水系消火剤が外気吸入管16から外部へ漏出することを防止できる。
【0031】
以上説明したように、本発明の液抜き装置2は、負圧発生器20や導入管21等を備え、供給源40と送液ホース30との間に設けて、導入管21から供給される液体の流れを利用して負圧発生器20に負圧を生じさせ送液ホース30に残留している液体を吸引することにより、送液ホース30内に残留した液体を強制的に排出することができる。
これにより、放射具11が設けられ送液ホース30が繋がれている消火装置1、100、200を、次の放射位置など別の場所に移動させることが容易となる。特に、消火装置1、100、200が消火ロボットである場合は、送液ホース30の総重量を軽くすることで移動(走行)がより自由で迅速なものとなり、機動的に放射位置を変えつつ火源へ消火剤を放射することができるため、早期鎮火に大きく寄与することができる。