(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158109
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20241031BHJP
H01L 23/28 20060101ALI20241031BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20241031BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L21/60 301M
H01L23/28 E
H01L23/36 A
H01L23/40 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072997
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】別芝 範之
【テーマコード(参考)】
4M109
5F044
5F136
【Fターム(参考)】
4M109AA01
4M109BA01
4M109CA21
4M109DB17
4M109EA02
4M109GA02
5F044AA01
5F136BC02
5F136BC03
5F136DA27
5F136FA01
5F136FA86
(57)【要約】
【課題】半導体素子の異常発熱による封止樹脂の破損を防止することが可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置100は、半導体素子1と接合部2と封止樹脂7とを備える。接合部2は、半導体素子1に接続されている。封止樹脂7は、半導体素子1および接合部2に接続されている。接合部2は低溶融部20を含む。低溶融部20の融点は、封止樹脂7の熱分解温度より低い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体素子と、
前記半導体素子に接続されている接合部と、
前記半導体素子および前記接合部に接続されている封止樹脂とを備え、
前記接合部は低溶融部を含み、
前記低溶融部の融点は、前記封止樹脂の熱分解温度より低い、半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子から見て前記接合部が配置されている方向を第1方向としたときに、
前記第1方向からみた平面視において、
前記低溶融部は、前記半導体素子の中心に配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低溶融部は、複数の溶融部を含み、
複数の前記溶融部の各々は、前記半導体素子において前記接合部が接続している面が延在する方向に互いに間隔を隔てて配置されている、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
ヒートシンクを更に備え、
前記接合部は、第1接合部を含み、
前記第1接合部の材料はシンタリング材料であり、
前記第1接合部は、前記半導体素子と前記ヒートシンクとの間に配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
端子を更に備え、
前記接合部は、第2接合部を含み、
前記第2接合部の融点が、前記封止樹脂の前記熱分解温度以上であり、
前記端子は、前記第2接合部を介して前記半導体素子と接続されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第2接合部の材料はシンタリング材料である、請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第2接合部を構成する材料は錫を含む、請求項5に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置として、半導体素子と、端子と、封止樹脂とを備えた半導体装置が知られている。(例えば、特開2022-114048号公報参照)。特開2022-114048号公報では、放熱性を改善するために、半導体素子にシンタリングペーストが接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記のような半導体装置においては、半導体素子を覆う封止樹脂の熱分解温度が相対的に低い。そのため、半導体素子が異常発熱した場合、熱により封止樹脂が破損する恐れがある。
【0005】
本開示は、上記のような課題を解決するために成されたものであり、本開示の目的は、半導体素子の異常発熱による封止樹脂の破損を防止することが可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従った半導体装置は、半導体素子と接合部と封止樹脂とを備える。接合部は、半導体素子に接続されている。封止樹脂は、半導体素子および接合部に接続されている。接合部は低溶融部を含む。低溶融部の融点は、封止樹脂の熱分解温度より低い。
【発明の効果】
【0007】
上記によれば、半導体素子の異常発熱による封止樹脂の破損を防止することが可能な半導体装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1に係る半導体装置の断面図である。
【
図2】実施の形態2に係る半導体装置の断面図である。
【
図3】実施の形態3に係る半導体装置の断面図である。
【
図4】実施の形態4に係る半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を説明する。なお、特に言及しない限り、以下の図面において同一または対応する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
【0010】
実施の形態1.
<半導体装置の構成>
図1は、実施の形態1に係る半導体装置100の断面図である。
【0011】
図1に示された半導体装置100は、たとえば、電力用の半導体装置100であって、半導体素子1と、接合部2と、端子3aと、端子3bと、放熱部材4と、絶縁層5と、ヒートシンク6と、封止樹脂7とを主に備える。半導体素子1は、主面11と裏面12とを有する。裏面12は、主面11の反対側の面である。
【0012】
接合部2は、第1接合部2aと第2接合部2bと第3接合部2cと第4接合部2dとを含む。半導体素子1は第2接合部2bを介して端子3aに接続されている。第2接合部2bは、主面11に接続されている。半導体素子1と端子3aとを接続する第2接合部2bを構成する材料は、たとえば、はんだを含む。ここで、
図1に示されるように、半導体素子1から見て第2接合部2bが配置している方向を第1方向Xとする。第1方向Xは、主面11および裏面12の法線方向である。
【0013】
半導体素子1は第1接合部2aを介して放熱部材4に接続している。第1接合部2aは、裏面12に接続されている。
図1に示されるように、第1接合部2aは、半導体素子1とヒートシンク6との間に配置されている。半導体素子1と放熱部材4とを接続する第1接合部2aを構成する材料は、たとえば、はんだを含む。
【0014】
放熱部材4は、半導体素子1が接続されている面(上面)と反対側の面(下面)に、絶縁層5が接続されている。絶縁層5は、第4接合部2dを介してヒートシンク6と接続されている。第1方向Xにおいて絶縁層5からみて放熱部材4が配置されている領域の反対側にヒートシンク6が配置されている。端子3bは、第3接合部2cを介して放熱部材4と接続している。放熱部材4において、端子3bが接続されている面は、半導体素子1が接続されている面と同じである。つまり、第1方向Xにおいて放熱部材4からみて半導体素子1が配置されている領域と同じ領域に端子3bが配置されている。封止樹脂7は、半導体素子1と、第1接合部2aと、第2接合部2bと、第3接合部2cと、端子3aの一部と、端子3bの一部と、放熱部材4と、絶縁層5とを覆う。
【0015】
端子3aは半導体素子1上から封止樹脂7の外側へ延在している。端子3bは、放熱部材4の上面における外周部から封止樹脂7の外側へ接続されている。端子3aの延在する方向と反対側の方向に沿うように端子3bが伸びている。端子3aおよび端子3bは、封止樹脂7の外部において外部機器と接続できるように、それぞれの一部が封止樹脂7の表面から外側へ延在している。端子3aおよび端子3bは、封止樹脂7の外側に延在している部分において、たとえばフォーミングにより屈曲していてもよい。端子3aおよび端子3bの上記部分には、回路基板または他の半導体装置と電気的に接続するための配線または端子などの導電体(図示せず)が接続されている。導電体と上記部分との接続方法は、任意の方法を用いることができるが、たとえばネジなどの固定部材により導電体と上記部分とを固定してもよい。
【0016】
半導体素子1は、電力を制御するいわゆる電力用の半導体素子1である。半導体素子1を構成する材料として、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、酸化ガリウム(Ga2O3)、またはダイヤモンドといった材料を用いてもよい。このようなシリコンと比べてバンドギャップが広い、いわゆるワイドバンドギャップ半導体材料を半導体素子1の基材として用いることができる。ワイドバンドギャップ半導体材料を基材として用いた場合、高効率および高温対応可能な半導体装置100が得られる。
【0017】
半導体素子1の種類としては、特に限定する必要はないが、たとえばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、ショットキーバリアダイオード等を用いることができる。また、例えば、半導体素子1は、IGBTおよび還流ダイオードが1つの半導体チップに集積されたRC-IGBT(Reverse Conducting IGBT)であってもよい。
【0018】
端子3aおよび端子3bを構成する材料は、たとえば銅(Cu)である。なお、端子3aおよび端子3bを構成する材料は、導電性に加え、放熱性を有する材料であればよい。たとえば、端子3aおよび端子3bを構成する材料は、銅、またはアルミニウム(Al)のいずれかを含む合金、あるいはこれらの金属を積層した複合材料であってもよい。
【0019】
放熱部材4は、半導体素子1および端子3bの各々と電気的および機械的に接続されている。放熱部材4を構成する材料は、高熱伝導性を有している材料であればよい。たとえば、放熱部材4は、銅、アルミニウム、銅-モリブデン(CuMo)合金などの金属材料で構成されてもよい。また、放熱部材4は、炭化珪素-アルミ複合材(AlSiC)または炭化珪素-マグネシウム複合材(MgSiC)などの複合材料で構成されてもよい。
【0020】
ヒートシンク6は第4接合部2dを介して絶縁層5に接続されている。ヒートシンク6の材料は、たとえばアルミニウムを含む熱伝導性にすぐれた金属である。ヒートシンク6の冷却方法は、空冷式あるいは水冷式でよい。
【0021】
放熱部材4およびヒートシンク6間は、絶縁層5によって、電気的に絶縁されている。絶縁層5を構成する材料は、たとえば、酸化アルミニウム(Al2O3)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化珪素(Si3N4)、二酸化珪素(SiO2)、または窒化ホウ素(BN)のいずれかであってもよい。
【0022】
封止樹脂7は、半導体素子1と放熱部材4と端子3aの一部と端子3bの一部とを覆うように配置されている。封止樹脂7の一部は端子3aと放熱部材4との間の空間を充填している。そのため、当該半導体装置100は、高い絶縁性および熱疲労に対する信頼性を確保することができる。封止樹脂7の主成分となる材料は、たとえば熱硬化性樹脂である。熱硬化性樹脂としては、たとえばエポキシ樹脂を用いることができる。なお、封止樹脂7を構成する材料は、熱硬化性に加え、半導体装置100の外形サイズ及び内部構造に応じた弾性率、密着性、耐熱性及び絶縁性を有する樹脂でもよい。例えば、当該材料として、エポキシ樹脂の他に、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂等を用いてもよい。また、半導体装置100としての強度および熱伝導性を確保するため、封止樹脂7は、分散された微粒子またはフィラーを含んでもよい。微粒子およびフィラーを構成する材料は、たとえば無機セラミックス材料であってもよい。無機セラミックス材料は、たとえば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化珪素、二酸化珪素、窒化ホウ素、ダイヤモンド、炭化珪素(SiC)または酸化ホウ素(B2O3)である。封止樹脂7は、微粒子またはフィラーを含むことで、発熱する半導体素子1から半導体装置100外部への放熱性を向上させることができる。
【0023】
半導体素子1の動作温度の上昇に伴い、当該半導体装置100の放熱性を改善することが重要である。また、熱疲労に対する信頼性の改善も重要である。そのため、接合部2の材料がシンタリング材料であることが好ましい。シンタリング材料の主成分は、アルミニウム、銅、あるいは銀(Ag)などである。放熱性および信頼性の改善のため、接合部2の材料は、錫(Sn)を主成分とし、高融点材料で複合化した材料であってもよい。高融点材料は、たとえば、アルミニウム、銅、銀、ニッケル、鉄などである。アルミニウムの融点は、たとえば、約660℃である。銀の融点は、たとえば、約960℃である。銅の融点は、たとえば、約1080℃である。ニッケルの融点は、たとえば、約1455℃である。鉄の融点は、たとえば、約1538℃である。
【0024】
接合部2を形成するために、シンタリングペーストが使用され得る。シンタリングペーストの主成分はナノオーダーサイズの微細な金属粒子である。金属粒子の材料はたとえば銀、アルミニウム、銅などを用いることができる。シンタリングペーストに圧力および熱を与えることで、金属粒子同士が接合される。このようにして、接合部2の緻密度が向上する。接合部2を形成した後は、当該接合部2に含まれる金属粒子の融点まで耐熱温度を引き上げることができる。このようにして、半導体素子1の動作温度を上昇させることができる。半導体素子1と、第1接合部2aと、第2接合部2bと、第3接合部2cと、端子3aの一部と、端子3bの一部と、放熱部材4と、絶縁層5とを上記の様に封止樹脂7で封止することで、接合部2の歪みを抑制することができる。その結果、接合部2に繰り返し加わる熱応力による当該半導体装置100の劣化を抑制することができる。
【0025】
このように、半導体装置100の放熱性の改善に伴い半導体素子1の動作温度を上昇させることができる。ただし、半導体素子1が過昇温状態にならないように当該半導体装置100には過熱保護制御が実装されることが好ましい。半導体装置100のOn/Off動作が正常に実施されない場合、半導体素子1は異常発熱する。他にも、半導体素子1がショート故障した場合、当該半導体素子1の電気抵抗が低くなる。その結果、当該半導体素子1に大電流が流れ、半導体素子1および端子3aが異常発熱する。
【0026】
いずれの場合においても、半導体素子1が発熱した場合、当該半導体素子1に接続している封止樹脂7の温度が上昇する。封止樹脂7として使用されるエポキシ樹脂の熱分解温度は、たとえば250℃以上350℃以下である。これは、半導体素子1に接続されている他の各部材の融点よりも低い。そのため、半導体素子1が過昇温状態になった場合、当該エポキシ樹脂が溶解する恐れがある。エポキシ樹脂の温度が熱分解温度に達すると、当該エポキシ樹脂は熱分解によって気体が発生する。発生した気体は封止樹脂7の内部に閉じ込められる。そのため、封止樹脂7の内部の圧力が上昇する。その結果、封止樹脂7は破損する。封止樹脂7が破損することで、たとえば封止樹脂7によって封止されていた半導体装置100の各部材が飛散する可能性がある。たとえば、導電性を有する部材が飛散した場合、当該半導体装置100の周囲に配置された部材のうち絶縁耐圧を確保しなければならない部材の絶縁耐圧が劣化する恐れがある。そのため、半導体素子1が過昇温状態になっても、封止樹脂7が破損する前に、当該半導体素子1での発熱を抑制・停止させる必要がある。
【0027】
ここで、本実施の形態1に係る半導体装置100の特徴は、
図1に示されるように、接合部2が低溶融部20を含む点である。具体的には、低溶融部20の融点は、たとえば、220℃以上240℃以下である。前述の通り、封止樹脂7の熱分解温度は、250℃以上350℃以下である。つまり、低溶融部20の融点は、封止樹脂7の熱分解温度より低い。そのため、半導体素子1が過昇温状態になった場合、封止樹脂7が熱分解するよりも先に、低溶融部20が溶融する。
【0028】
低溶融部20が溶融することで、当該低溶融部20の体積が膨張する。低溶融部20の体積が膨張することで、半導体素子1に当該溶融した低溶融部20から応力が加わり、その結果、半導体素子1にてクラックが発生する。当該クラックは半導体素子1の主面11から裏面12にまで伸びるように形成され得る。溶融した低溶融部20は半導体素子1の表面に濡れ広がる。溶融した低溶融部20の一部は半導体素子1のクラックに入り込む。このようにして、半導体素子1内に電気抵抗が低い通電経路が形成される。当該通電経路は、半導体素子1の主面11から裏面12まで貫通するように形成される。また、低溶融部20の体積が膨張することで、封止樹脂7の内部に圧力が加わり、半導体素子1と封止樹脂7との界面および端子3aと封止樹脂7との界面に剥離が発生する。溶融した低溶融部20は、上記2つの界面において剥離が発生した領域に濡れ拡がる。つまり、溶融した低溶融部20は、当該半導体素子1および端子3aの表面において封止樹脂7との界面に剥離が発生した領域に濡れ広がる。その結果、半導体素子1の主面11および裏面12をショートさせることができる。このように、半導体素子1をショートさせることができれば、半導体素子1がショートしたことを制御側で検知し、当該半導体素子1に対する電流供給の停止など必要な制御を行うことができる。そのため、半導体素子1での異常な発熱を抑制できるので、当該半導体装置100において致命的な故障に至ることを防止できる。また、低溶融部20が半導体素子1および端子3aに濡れ広がることで、半導体素子1に流れる電流密度が緩和し、この点からも当該半導体素子1の発熱を抑制することができる。このようにして、封止樹脂7が破裂する前に、半導体素子1での発熱を抑制・停止させることができる。
【0029】
低溶融部20を構成する材料は、Snを主成分にした合金であることが好ましい。低溶融部20は、銀、銅、ビスマス(Bi)、リチウム(Li)のいずれかを含む金属材料が含まれてもよい。低溶融部20を構成する材料は、熱分解温度が低い材料であればよく、樹脂材料でもよい。
【0030】
半導体素子1の異常発熱時において、当該低溶融部20が確実に半導体素子1をショートさせるために、低溶融部20の分量は多い方が好ましい。具体的には、低溶融部20の分量は、接合部2の第1方向Xでの厚みに1.0mm
2を乗じた値以上であってもよい。
図1に示されるように、低溶融部20は、半導体素子1および端子3aに接続されてもよい。このようにすれば、低溶融部20が溶融したときに、半導体素子1および端子3aに溶融した低溶融部20が濡れ広がりやすくなる。なお、低溶融部20は、たとえば半導体素子1および端子3aに接続されずに、接合部2に完全に覆われてもよい。
【0031】
半導体素子1がIGBTの場合、第1方向Xからみた平面視において半導体素子1の中心にて、動作時における半導体素子1の温度が最も高くなる場合がある。そのため、
図1に示されるように、低溶融部20は半導体素子1の中心に配置されていることが好ましい。具体的には、平面視において半導体素子1の形状が四角形状である場合、平面視において低溶融部20は、半導体素子1の中心からの距離が半導体素子1の長辺の長さの20%以下である領域に配置されていればよい。低溶融部20は、半導体素子1の中心からの距離が半導体素子1の長辺の長さの10%以下である領域に配置されれていてもよい。長辺の長さとは、平面視において半導体素子の外周を構成する辺のうち最も長い1辺の長さである。このようにすれば、半導体素子1が過昇温状態になった場合、封止樹脂7が破裂する前に、予め半導体素子1を上述のようにショートさせ、結果的に当該半導体素子1での発熱を停止させることができる。
【0032】
図1に示されるように、低溶融部20は、第2接合部2bに含まれている。後述するように、低溶融部20は、第1接合部2aに含まれていてもよい。第1接合部2aおよび第2接合部2bの少なくともいずれかに低溶融部20が含まれていればよい。
【0033】
半導体素子1を構成する材料がたとえばSiCまたはGaNである場合、半導体素子1は200℃以上250℃以下における高温動作が可能となる。ただし、半導体素子1が、たとえば、175℃以上の温度条件で使用される場合において、接合部2の融点に近い温度で当該半導体素子1が使用されると、接合部2の材料特性が劣化する可能性がある。そのため、接合部2の融点は250℃以上であることが好ましい。
【0034】
前述したように、第2接合部2bを構成する材料(具体的には第2接合部2bにおいて低溶融部20以外の部分を構成する材料)は、アルミニウム、銅、銀などの金属のいずれかを含む高融点材料であってもよい。シンタリング材料がアルミニウムである場合、当該シンタリング材料の融点は約660℃である。シンタリング材料が銀である場合、当該シンタリング材料の融点は約960℃である。シンタリング材料が銀である場合、当該シンタリング材料の融点は約1080℃である。そのため、上記の金属材料を含むシンタリング材料を用いれば、第2接合部2bにおいて低溶融部20以外の部分を構成する材料の融点は封止樹脂7の熱分解温度以上となる。つまり、半導体素子1は、封止樹脂7の熱分解温度以上まで、動作可能となる。このようにして、半導体装置100の耐熱性を確保することができる。
【0035】
<作用効果>
本開示に従った半導体装置100は、半導体素子1と接合部2と封止樹脂7とを備える。接合部2は、半導体素子1に接続されている。封止樹脂7は、半導体素子1および接合部2に接続されている。接合部2は低溶融部20を含む。低溶融部20の融点は、封止樹脂7の熱分解温度より低い。このようにすれば、半導体素子1が過昇温状態になった場合、封止樹脂7が破損する前に、予め半導体素子1の主面11と裏面12との間をショートさせ、結果的に当該半導体素子1での発熱を停止させることができる。
【0036】
上記半導体装置100において、半導体素子1から見て接合部2が配置されている方向を第1方向Xとする。第1方向Xからみた平面視において、低溶融部20は、半導体素子1の中心に配置されている。第1方向Xからみた平面視において半導体素子1の中心にて、動作時における半導体素子1の温度が最も高くなる。そのため、低溶融部20が半導体素子1の中心に配置されていれば、半導体素子1が過昇温状態になった場合、封止樹脂7が破損する前に、予め半導体素子1での発熱を停止させることができる。
【0037】
上記半導体装置100は、ヒートシンク6を備える。接合部2は、第1接合部2aを含む。第1接合部2aの材料はシンタリング材料である。第1接合部2aは、半導体素子1とヒートシンク6との間に配置されている。このようにすれば、半導体装置100の放熱性が改善する。また、接合部2に繰り返し加わる熱応力による当該半導体装置100の劣化が抑制される。
【0038】
上記半導体装置100は、端子3aを備える。接合部2は、第2接合部2bを含む。第2接合部2bの融点が、封止樹脂7の熱分解温度以上である。端子3aは、第2接合部2bを介して半導体素子1と接続されている。このようにすれば、半導体素子1の動作温度が封止樹脂7の熱分解温度以上まで当該半導体素子1は動作可能となる。その結果、半導体装置100の耐熱性を確保することができる。
【0039】
上記半導体装置100において、第2接合部2bの材料は、シンタリング材料である。このようにすれば、半導体装置100の放熱性が改善する。また、接合部2に繰り返し加わる熱応力による当該半導体装置100の劣化が抑制される。
【0040】
実施の形態2.
<半導体装置の構成>
図2は、実施の形態2に係る半導体装置100の断面図である。
図2は
図1に対応する。
図2に示された半導体装置100は、基本的には
図1に示された半導体装置100と同様の構成を備えるが、低溶融部20が、複数の溶融部20aを含む点で異なる。具体的には、複数の溶融部20aの各々は、半導体素子1において接合部2が接続している面が延在する方向に互いに間隔を隔てて配置されている。異なる観点から言えば、複数の溶融部20aは、半導体素子1の主面11と端子3aとの間の領域に位置し、第2接合部2bの内部に分散配置されている。このようにすれば、半導体素子1が過昇温状態になった場合、半導体素子1の主面11において温度分布があったとしても、複数の溶融部20aのうちいずれかの溶融部20aが溶融する。この結果、封止樹脂7が破裂する前に、予め半導体素子1の主面11と裏面12との間をショートさせ、結果的に当該半導体素子1での発熱を停止させることができる。なお、第1接合部2aの材料として高放熱なシンタリング材料を用いる事が好ましい。第2接合部2bの材料として、封止樹脂7の熱分解温度と同等以上の融点を有するシンタリング材料を用いる事が好ましい。第1接合部2aの材料の融点は、第2接合部2bの材料の融点より高くてもよい。
【0041】
接合部2の融点と封止樹脂7の熱分解温度とが近い場合、半導体素子1の温度が封止樹脂7の熱分解温度に達する前に、確実に低溶融部20を溶融させる必要がある。特に、半導体素子1がショート故障した際に、半導体素子1の主面11と裏面12とを電気的に接続し、電気抵抗が低い新たな経路を形成する必要がある。たとえば半導体素子1がMOSFETである場合、平面視において半導体素子1の中央が最も温度が高いとは限らない。また、半導体素子1の主面11における温度分布は、端子3aの形状にも依存する。そのため、複数の溶融部20aの各々が、半導体素子1において接合部2が接続している面が延在する方向に互いに間隔を隔てて配置されていることが好ましい。
【0042】
低溶融部20は、たとえば5つの溶融部20aを含んでいてもよい。5つの溶融部20aの各々は、たとえば、半導体素子1の主面11における中心と、半導体素子1の主面11における外周に沿って実質的に等間隔に配置されてもよい。半導体素子1の平面形状が四角形状である場合、4つの溶融部20aが主面11における四隅に配置されてもよい。低溶融部20は、9つの溶融部20aを含んでいてもよい。9つの溶融部20aの各々は、たとえば、半導体素子1の中心と、半導体素子1の四隅と、中心と四隅との間の位置に配置されてもよい。また、複数の溶融部20aは、半導体素子1の主面11上においてマトリックス状に配置されてもよい。このようにすれば、半導体素子1の主面11において温度分布が生じても、複数の溶融部20aのうちのいずれかが溶融する。この結果、封止樹脂7が破裂する前に、半導体素子1での発熱を停止させることができる。
【0043】
複数の溶融部20aを構成する材料は、Snを主成分にした合金であることが好ましい。複数の溶融部20aは、銀、銅、ビスマス、リチウムのいずれかを含む金属材料が含まれてもよい。複数の溶融部20aを構成する材料は、熱分解温度が低い材料であればよく、樹脂材料でもよい。
【0044】
<作用効果>
上記半導体装置100において、低溶融部20は、複数の溶融部20aを含む。複数の溶融部20aの各々は、半導体素子1において接合部2が接続している面が延在する方向に互いに間隔を隔てて配置されている。このようにすれば、半導体素子1の主面11において温度分布があったとしても、封止樹脂7が破裂する前に、半導体素子1での発熱を停止させることができる。
【0045】
実施の形態3.
<半導体装置の構成>
図3は、実施の形態3に係る半導体装置100の断面図である。
図3は
図2に対応する。
図3に示された半導体装置100は、基本的には
図2に示された半導体装置100と同様の構成を備えるが、第2接合部2eを構成する材料にSnを含む点で異なる。具体的には、Snを主成分とし、CuボールまたはNiボールなどを含んだペーストを半導体素子1の主面11と端子3aとの間に配置し、当該ペーストを熱処理することで第2接合部2eを形成する。この結果、第2接合部2eとしてSnCu系の合金あるいはSnNi系の合金が形成される。これらの合金は、Snに比べて融点が高い。そのため、当該半導体装置100の耐熱性が向上する。また、複数の溶融部20aを構成する材料は、前述のようにSnを主成分とした合金であることが好ましい。
図3に示された半導体装置100における複数の溶融部20aは、上述したペーストの熱処理によりSnを主成分としてCuを含む合金として形成され得る。
【0046】
このように、第2接合部2eを形成する工程として、Snペーストに予め球状のCuボールあるいはNiボールを混合させた混合物を準備し、当該混合物を半導体素子1の主面11に塗布するという工程を適用できる。この工程において、複数の溶融部20aも同時に形成される。このように、第2接合部2eの形成を容易に行うことができる。具体的には、複数の溶融部20aを含む第2接合部2eを形成するために、1種類の材料(混合物)を印刷あるいはディスペンサにより半導体素子1の主面11に供給するといった工程を採用できる。その結果、当該半導体装置100の生産性が向上する。
【0047】
<作用効果>
上記半導体装置100において、第2接合部2bを構成する材料は錫を含む。このようにすれば、低溶融部20を含む第2接合部2eの形成が容易となり、当該半導体装置100の生産性が向上する。
【0048】
実施の形態4.
<半導体装置の構成および作用効果>
図4は、実施の形態4に係る半導体装置100の断面図である。
図4は
図1に対応する。
図4に示された半導体装置100は、基本的には
図1に示された半導体装置100と同様の構成を備え、同様の効果を得ることができるが、低溶融部20が、第1接合部2aに含まれている点で異なる。前述したように、第1方向Xからみた平面視において半導体素子1の中心にて、動作時における半導体素子1の温度が最も高くなる場合がある。そのため、低溶融部20は半導体素子1の中心に配置されていることが好ましい。低溶融部20を予めバンプ形成することで、当該低溶融部20を、半導体素子1の中心に配置することが容易となる。
【0049】
低溶融部20および第1接合部2aが流動性のある材料を用いて形成される場合を考える。このとき、各々の材料を独立して供給する際に、低溶融部20の材料について位置決めが難しい。そのため、低溶融部20を半導体素子1の中心に配置することが困難である。低溶融部20を予めバンプ形成することで、低溶融部20の位置を厳密に決めることができる。その後、第1接合部2aとなるシンタリング材料を印刷あるいはディスペンサを用いて半導体素子1に供給すれば、容易に、低溶融部20を半導体素子1の中心に配置することができる。なお、低溶融部20の分量(体積)は、第1接合部2aの第1方向Xにおける厚みに1.0mm2を乗じた値以上であってもよい。
【0050】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本開示の基本的な範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。
【0051】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
(付記1)
半導体素子と、
前記半導体素子に接続されている接合部と、
前記半導体素子および前記接合部に接続されている封止樹脂とを備え、
前記接合部は低溶融部を含み、
前記低溶融部の融点は、前記封止樹脂の熱分解温度より低い、半導体装置。
(付記2)
前記半導体素子から見て前記接合部が配置されている方向を第1方向としたときに、
前記第1方向からみた平面視において、
前記低溶融部は、前記半導体素子の中心に配置されている、付記1に記載の半導体装置。
(付記3)
前記低溶融部は、複数の溶融部を含み、
複数の前記溶融部の各々は、前記半導体素子において前記接合部が接続している面が延在する方向に互いに間隔を隔てて配置されている、付記1または付記2に記載の半導体装置。
(付記4)
ヒートシンクを更に備え、
前記接合部は、第1接合部を含み、
前記第1接合部の材料はシンタリング材料であり、
前記第1接合部は、前記半導体素子と前記ヒートシンクとの間に配置されている、付記1から付記3のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記5)
端子を更に備え、
前記接合部は、第2接合部を含み、
前記第2接合部の融点が、前記封止樹脂の前記熱分解温度以上であり、
前記端子は、前記第2接合部を介して前記半導体素子と接続されている、付記1から付記4のいずれか1項に記載の半導体装置。
(付記6)
前記第2接合部の材料はシンタリング材料である、付記5に記載の半導体装置。
(付記7)
前記第2接合部を構成する材料は錫を含む、付記5に記載の半導体装置。
【符号の説明】
【0052】
1 半導体素子、2 接合部、2a 第1接合部、2b,2e 第2接合部、2c 第3接合部、2d 第4接合部、3a,3b 端子、4 放熱部材、5 絶縁層、6 ヒートシンク、7 封止樹脂、11 主面、12 裏面、20 低溶融部、20a 溶融部、100 半導体装置、X 第1方向。