(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158117
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】計算機システム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/06 20060101AFI20241031BHJP
G06F 13/10 20060101ALI20241031BHJP
G06F 11/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06F3/06 304F
G06F3/06 301X
G06F3/06 301Z
G06F3/06 304P
G06F13/10 340A
G06F11/20 656
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073056
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】524132520
【氏名又は名称】日立ヴァンタラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柴山 司
(72)【発明者】
【氏名】出口 彰
【テーマコード(参考)】
5B034
【Fターム(参考)】
5B034CC02
(57)【要約】
【課題】ジャーナルボリュームに割り当てられる記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正範囲に維持できる計算機システムを提供する。
【課題解決手段】第1のストレージシステム110aは、正ボリュームと、正ジャーナルボリュームと、を備え、第2のストレージシステム110bは、副ボリュームと、副ジャーナルボリュームと、を備える。管理計算機130は、正ボリュームPVOL1と、正ジャーナルボリュームJVOL1と、副ジャーナルボリュームJVOL2と、副ボリュームSVOL1と、をペアとするリモートコピーを管理し、そして、リモートコピーに関係するリソースの稼働情報に応じて、正ジャーナルボリューム、及び/又は、副ジャーナルボリュームの容量を拡張、又は、解放する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正サイトを構成する第1のストレージシステム、
副サイトを構成する第2のストレージシステム、そして、
管理計算機と、
を備える計算機システムであって、
前記第1のストレージシステムは、正ボリュームと、正ジャーナルボリュームと、を備え、
前記第2のストレージシステムは、副ボリュームと、副ジャーナルボリュームと、を備え、
前記管理計算機は、
前記正ボリュームと、前記正ジャーナルボリュームと、前記副ジャーナルボリュームと、前記副ボリュームと、をペアとするリモートコピーを管理し、そして、
前記リモートコピーに関係するリソースの稼働情報に応じて、前記正ジャーナルボリューム、及び/又は、前記副ジャーナルボリュームの容量を拡張、又は、解放する、
計算機システム。
【請求項2】
前記管理計算機は、
前記リソースの稼働情報に応じて、前記正ジャーナルボリューム、及び、前記副ジャーナルボリューム夫々について、使用率の増加傾向、又は、その減少傾向を判定し、
前記増加傾向の判定に従って前記容量を拡張し、
前記減少傾向の判定に従って前記容量を解放する、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項3】
前記リソースの稼働情報は、前記正ジャーナルボリュームの負荷、前記第1のストレージシステムの負荷、前記第2のストレージシステムの負荷、そして、前記正ジャーナルボリュームと前記副ジャーナルボリュームとの間のネットワークの負荷を含む、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項4】
前記管理計算機は、
前記リモートコピーに関係する複数のリソースの稼働情報毎に負荷の傾向を求め、
当該複数の傾向の組み合わせ毎に前記容量を拡張、又は、解放するパターンを設定する、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項5】
前記管理計算機は、
前記稼働情報の履歴に基づいて当該稼働情報の傾向値を求め、
当該稼働情報の現状値と前記傾向値とを比較して前記負荷の傾向を求める、
請求項4記載の計算機システム。
【請求項6】
前記管理計算機は、
前記稼働情報の現状値と当該稼働情報の傾向値とを比較し、
当該比較結果に基づいて、前記容量の拡張、又は、解放を実行する、
請求項5記載の計算機システム。
【請求項7】
前記管理計算機は、
前記副ボリュームにその構成を変更する操作があった場合、前記容量の拡張、及び、解放のいずれも、前記正ジャーナルボリューム、及び/又は、前記副ジャーナルボリュームに対して実行しない、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項8】
前記管理計算機は、
前記正ボリュームと前記副ボリュームとの間のネットワークに障害がある場合、前記容量の拡張、及び、解放のいずれも、前記正ジャーナルボリューム、及び/又は、前記副ジャーナルボリュームに対して実行しない、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項9】
前記管理計算機は、
前記使用率の増加傾向を判定した際、ジャーナルボリュームの使用率が閾値以上のときに前記容量の拡張を実行する、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項10】
前記管理計算機は、
前記ジャーナルボリュームの容量が所定値以下のときに前記容量の拡張を実行する、
請求項9記載の計算機システム。
【請求項11】
前記管理計算機は、
前記リモートコピーの初期設計時、前記正ジャーナルボリューム、及び、前記副ジャーナルボリュームの夫々に所定の記憶容量を割り当て、
前記リモートコピーの開始後、前記正ジャーナルボリューム、及び/又は、前記副ジャーナルボリュームへの容量の割り当てはリモートコピーの運用状態に応じて実行する、
請求項1記載の計算機システム。
【請求項12】
管理計算機が、正サイトを構成する第1のストレージシステムと、副サイトを構成する第2のストレージシステムとの間のリモートコピーを管理する、ストレージシステムの制御方法であって、
前記管理計算機は、前記リモートコピーの運用に関係するリソースの稼働情報に応じて、ジャーナルボリュームの容量を動的に、拡張、又は、解放変更するようにした、
ストレージシステムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リモートコピーのための計算機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
オンプレミスとクラウドとを組合わせたハイブリッドクラウドの運用形態において、リモートコピーが利用されている。リモートコピーとして、特開2005-18506号公報に記載のストレージシステムが知られている。
【0003】
リモートコピーのための計算機システムは、正サイト(業務サイト)の正ボリュームにホストサーバから書き込まれる更新データを、ジャーナルボリューム(マスタジャーナルボリューム)にコピーして格納する。このデータは、正ボリュームのI/Oとは非同期に、副サイト(バックアップサイト)のジャーナルボリューム(リストアジャーナルボリューム)にコピーされる。
【0004】
このように、正サイトの正ボリュームにホストから書き込まれるデータは、ライト要求とは非同期に副サイトへ転送される。リストアジャーナルボリュームから副ボリュームにデータを書き込むことで、リモートコピーが完了されたことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ジャーナルボリュームには、正ボリュームに対するIO負荷、正サイトと副サイトを接続するネットワーク帯域、そして、ネットワークの安定性等に基づいて、最適なサイズが見積もられる。しかしながら、ストレージシステムの管理者がジャーナルボリュームの適正サイズを決定することは元来難しい。
【0007】
ジャーナルグループ(JNL)の初期設計の段階では、実運用でのIO負荷の最大ライト量や最悪の回線状況等を事前に正しく把握することが困難である。そもそも正サイト、副サイト間のネットワーク瞬断、ネットワーク事業者の都合で一時的な転送劣化も発生し得る。
【0008】
また、ジャーナルボリュームに所定の記憶容量からなるブロックを一旦割り当てると、ジャーナルボリュームに割り当てたままの状態となって容量が回収されない。一方、初期設計が困難であるが故に、最初に大容量をジャーナルボリュームに割り当てると、ネットワーク瞬断等の一時的な転送速度劣化状態でもIOのライトページがジャーナルボリュームに割り当たってしまい、ジャーナルボリュームの容量が無駄に消費される。
【0009】
ジャーナルボリュームは、先ず妥当な容量で作成され、以後、必要に応じてその容量が拡張されるのが望ましい。そして、不要となった過剰な容量はジャーナルボリュームから解放されて有効利用されることが好ましい。本発明は、ジャーナルボリュームに割り当てられる記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正範囲に維持できる計算機システム、及び、その方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は、正サイトを構成する第1のストレージシステム、副サイトを構成する第2のストレージシステム、そして、管理計算機と、を備える計算機システムであって、前記第1のストレージシステムは、正ボリュームと、正ジャーナルボリュームと、を備え、前記第2のストレージシステムは、副ボリュームと、副ジャーナルボリュームと、を備え、前記管理計算機は、前記正ボリュームと、前記正ジャーナルボリュームと、前記副ジャーナルボリュームと、前記副ボリュームと、をペアとするリモートコピーを管理し、そして、前記リモートコピーに関係するリソースの稼働情報に応じて、前記正ジャーナルボリューム、及び/又は、前記副ジャーナルボリュームの容量を拡張、又は、解放する、というものである。
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、さらに、管理計算機が、正サイトを構成する第1のストレージシステムと、副サイトを構成する第2のストレージシステムとの間のリモートコピーを管理する、ストレージシステムの制御方法であって、前記管理計算機は、前記リモートコピーの運用に関係するリソースの稼働情報に応じて、前記ジャーナルボリュームの容量を動的に、拡張、又は、解放変更するようにした、というものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ジャーナルボリュームに割り当てられる記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正範囲に維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る計算機の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1の計算機システムの非同期リモートコピーの機能ブロック図である。
【
図3】ストレージシステムの記憶構造のブロック図である。
【
図4】管理計算機のメモリの記憶構造のブロック図である。
【
図5】ジャーナルボリュームにおけるジャーナルデータの管理方法を示すブロック図である。
【
図7A】ボリューム稼働情報管理テーブルの一例である。
【
図7B】ジャーナル間稼働情報管理テーブルの一例である。
【
図7C】ストレージシステムの稼働情報管理テーブルの一例である。
【
図8B】正副ジャーナル構成管理テーブルの一例である。
【
図9】ストレージシステムに対して実行された操作ログの一例である。
【
図10A】正副ジャーナル使用率履歴管理テーブルの一例である。
【
図10B】ジャーナル間稼働情報履歴管理テーブルの一例である。
【
図11】判断用履歴傾向管理テーブルの一例である。
【
図13】ジャーナルボリュームの作成のためのフローチャートである。
【
図14】判断用履歴傾向管理テーブルの更新のフローチャートである。
【
図15】判断用履歴傾向管理テーブルの更新のフローチャート(
図14の続き)である。
【
図16】リモートコピーの運用状況に応じてジャーナルボリュームの容量変更のための対処のフローチャートである。
【
図17】判断用マップに基づいて、正副ジャーナルボリュームの容量の拡張、又は、解放を行うためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略及び簡略化がなされることがある。本発明が本実施形態に制限されることは無く、本発明の思想に合致するあらゆる実施形態が本発明の技術的範囲に含まれる。特に限定しない限り、各構成要素は複数でも単数でも構わない。
【0015】
以下の説明では、例えば、「xxxテーブル」の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報はテーブル以外のデータ構造で表現されていてもよい。各種情報がデータ構造に依存しないことを示すために、「xxxテーブル」を「xxx情報」と呼ぶことがある。
【0016】
また、以下の説明では、同種の要素を区別しないで説明する場合には、参照符号(又は参照符号における共通部分)を使用し、同種の要素を区別して説明する場合は、要素のID(又は要素の参照符号)を使用することがある。
【0017】
また、以下の説明では、「計算機システム」は、1以上の計算機を含むシステムである。このため、「計算機システム」は、1つの計算機であってもよいし、複数の計算機であってもよいし、計算機の他に計算機以外のデバイスを含んでいてもよい。その1以上の計算機は、典型的には、少なくとも1つの物理計算機を含む。その1以上の計算機は、少なくとも1つの仮想計算機を含んでもよい。
【0018】
また、以下の説明では、「ストレージ管理装置」は、1以上の計算機で構成されてよい。具体的には、例えば、管理計算機が表示デバイスを有していて管理計算機が自分の表示デバイスに情報を表示する場合、管理計算機が管理システムでよい。
【0019】
また、例えば、管理計算機(例えばサーバ)が表示用情報を遠隔の表示用計算機(例えばクライアント)に送信し表示用計算機がその情報を表示する場合(管理計算機が表示用計算機に情報を表示する場合)、管理計算機と表示用計算機とのうちの少なくとも管理計算機を含んだシステムがストレージ管理装置でよい。
【0020】
以下の説明では、「プログラム」あるいはそのプロセスを主語として処理を説明する場合があるが、プログラムは、プロセッサ、又は、コントローラ(例えば、CPU)によって実行されることで、定められた処理を、適宜に記憶資源(例えば、メモリ)及び/又は通信インタフェース装置(例えば、通信ポート)を用いながら行うため、処理の主語がプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従って動作することによって、所定の機能を実現する機能部として動作する。プロセッサを含む装置及びシステムは、これらの機能部を含む装置及びシステムである。
【0021】
また、以下の説明では、「ストレージデバイス」は、例えば、HDD又はSSDでよい。ストレージシステムに異なる種類のデバイスが混在していてもよい。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態に係る計算機システム100の構成を示すブロック図である。計算機システム100は、第1のストレージシステム110aと第2のストレージシステム110bとを有する。これらストレージシステムの間で非同期リモートコピーが運用されるため、ストレージシステム110aを正ストレージシステムと呼び、ストレージシステム110bを副ストレージシステムと呼ぶこともあるとする。計算機システム100は、さらに、管理計算機130、ホスト150a(ホスト1),ホスト150b(ホスト2)を備える。
【0023】
ストレージシステム110a(110b)は、データ記憶装置であるストレージデバイス116a(116b)と、管理計算機130が接続する管理ネットワーク122に接続するためのポート113a(113b)と、メモリ112a(112b)と、及び、これらの要素に接続されるCPU:プロセッサ111a(111b)を有する。
【0024】
さらに、ストレージシステム110a(110b)は、ホスト150a(ホスト1)とホスト150b(ホスト2)とが接続するストレージネットワーク121への接続用ポート114a(114b)を備える。
【0025】
ポート114a(114b)は、ストレージシステム110a(110b)と、ホスト150a(150b)の間で入出力されるデータのインタフェース処理を行うものであり、例えばHBAでよい。
【0026】
ポート113a(113b)は、ストレージシステム110a(110b)と管理計算機130の間で入出力されるデータのインタフェース処理を行うものであり、例えばNICでよい。ネットワーク121,122は、例えば、FCSANでよい。
【0027】
ストレージシステム110a(110b)は、データを読み書き可能な1つまたは複数の論理ボリュームをホスト150a(150b)に提供する。ストレージシステム110a(110b)は、ホスト150a(150b)から、論理ボリュームを指定したI/Oコマンド(例えば、ライトコマンド又はリードコマンド)を受信し、そのI/Oコマンドを処理する。
【0028】
ストレージシステム110a(110b)は、ホスト150a(150b)から入力されるライトコマンドやリードコマンドに応じて、指定された論理ボリューム内の当該ライトコマンド又はリードコマンドにおいて指定されたアドレス位置にデータを読み書きする。
【0029】
ストレージシステムは1台のサーバ(ノード)によって構成されてもよいし、複数台のサーバ(ノード)を1つのクラスタとしてそのクラスタを1台のストレージシステムとみなしてもよい。管理計算機、ストレージシステム、ホストは、オンプレミスのデータセンタにおいて、物理的/仮想サーバ上で動作されてもよい。パブリッククラウドが提供するクラウド環境で動作させてもよい。ストレージデバイスは、オンプレミスの場合は、物理的なHDD、SSD等でよい。パブリッククラウドの場合は、パブリッククラウドベンダが提供する仮想的なデバイス(AWSの例だとEBS、S3等)であってもよい。管理計算機はストレージシステムに含まれていてもよい。
【0030】
管理計算機130は、ネットワーク122に接続するポート133、ストレージデバイス134、メモリ132、及び、これらの要素に接続されるCPU:プロセッサ131を有する。ポート133は、管理計算機130とストレージシステム110a(110b)の間で入出力されるデータのインタフェース処理を行う。
【0031】
CPU131は、メモリ132やストレージデバイス134に記憶された各種プログラムやデータを用いて所定の処理を実行することで、ポート133の動作を制御するとともに、管理計算機130の全体制御を行う。管理計算機130は、ストレージシステム110a(110b)、ホスト150a(150b)に提供する論理ボリュームを管理する。
【0032】
ホスト150a(150b)は、ネットワーク121に接続するポート152a(152b)、ストレージデバイス158a(158b)、メモリ154a(154b)、及び、これらの要素に接続されるCPU:プロセッサ156a(156b)を有する。ポート152a(152b)は、ストレージシステム110a(110b)の間で入出力されるデータのインタフェース処理を行う。CPU156a(156b)は、メモリ154a(154b)やストレージデバイス158a(158b)に記憶された各種プログラムやデータを用いて所定の処理を実行することで、ポート152a(152b)の動作を制御するとともに全体制御を行う。
【0033】
図2に、正サイトの正ストレージシステム110aと副サイトの副ストレージシステム110bとの間で行われる非同期リモートコピーの機能ブロック図を示す。非同期リモートコピーとは、業務サイト(正サイト)のストレージシステムにホストから書き込まれるデータを、ライト要求とは非同期にバックアップサイト(副サイト)のストレージシステムへ転送する機能のことである。
【0034】
正サイト110aと副サイト110bとからなるリモートコピーシステムには、第1のコンシステンシーグループ(CTG1)160からなる第1のリモートコピーペアと、第2のコンシステンシーグループ(CTG2)162からなる第2のリモートコピーペアとが設定されている。
【0035】
第1のコンシステンシーグループ(CTG1)160の正サイト110aには、正ボリュームPVOL1と、(マスタ)ジャーナルPJNL1(170a)とが設定されている。ジャーナルはジャーナルグループとも称される。ジャーナルPJNL1(170a)には、(マスタ)ジャーナルボリューム(JVOL1)が含まれている。
【0036】
そして、CTG1(160)の副サイト110bには、副ボリュームSVOL1と、(リストア)ジャーナルSJNL1(170b)とが設定されている。ジャーナルSJNL1(170b)には、(リストア)ジャーナルボリューム(JVOL2)が含まれている。
【0037】
ホスト150a(150b)から正ボリューム(PVOL1)に書き込まれる更新データはコピーされ、正ジャーナルボリューム(JVOL1)に格納される。正ボリューム(PVOL1)へのI/Oとは非同期にジャーナルボリューム(JVOL1)の更新データ(ジャーナルデータ)は、副サイト110bの副ジャーナルボリューム(JVOL2)にコピーされる。
【0038】
副ジャーナルボリューム(JVOL2)の更新データは副サイト110bの副ボリューム(SVOL1)に書き込まれる。CTG1には、PVOL1-JVOL1-JVOL2-SVOL1のリモートコピーペアが設定されている。
【0039】
第2のコンシステンシーグループ(CTG2)162の正サイト110aには、正ボリューム(PVOL2,PVOL3)と正ジャーナルPJNL2(180a)とが設定されている。正ジャーナルPJNL2には、正ジャーナルボリューム(JVOL3)が含まれる。
【0040】
そして、CTG2(162)の副サイト110bには、副ボリューム(SVOL2,SVOL3)と副ジャーナルSJNL2(180b)とが設定されている。副ジャーナルSJNL2には副ジャーナルボリュームJVOL4が含まれる。CTG2には、PVOL2-JVOL3-JVOL4-SVOL2のリモートコピーペアと、PVOL3-JVOL3-JVOL4-SVOL3のリモートコピーペアとが設定されている。
【0041】
図3は、ストレージシステム110a(110b)のメモリ112a(112b)の記憶構造の機能ブロック図である。ビットマップ管理プログラム300は、ジャーナルボリュームのブロック管理ビットマップ310(
図5)を管理するためのプログラムである。ボリューム管理プログラム302は、ボリュームの作成、削除などのその構成を管理するためのプログラムである。
【0042】
ジャーナル管理プログラム304は、ジャーナル、ジャーナルボリュームの作成、削除など夫々を管理するためのプログラムである。ペア管理プログラム306は、ボリュームペアの作成、削除などペアを管理するためのプログラムである。
【0043】
稼働情報管理プログラム308はリモートコピーの運用に関係するリソース(ハードウェア、ソフトウェア)である、CPU、ボリューム等の稼働情報を計測・保存、管理するためのプログラムである。
【0044】
ブロック管理ビットマップ310は、ジャーナルボリュームについて、ジャーナルデータの転送、未転送、未使用を管理するビットマップである(
図5)。ビットマップ管理プログラム300によって更新される。ボリューム管理テーブル312は、ボリュームの構成情報を管理するためのテーブルであり、ボリューム管理プログラム302によって更新される。
【0045】
ジャーナル管理テーブル314は、ジャーナルの構成情報を管理するためのテーブルであり、ジャーナル管理プログラム304によって更新される。ペア管理テーブル316は、ペアの構成情報を管理するためのテーブルであり、ペア管理プログラム306によって更新される。
【0046】
装置稼働情報管理テーブル318は、ストレージシステムのCPUやメモリの稼働情報のテーブルであり、稼働情報管理プログラム308によって更新される。ボリューム稼働情報管理テーブル320は、ボリュームの稼働情報を管理するためのテーブルであり、稼働情報管理プログラム308によって更新される。ジャーナル間稼働情報管理テーブル322は、ジャーナル間の稼働情報のテーブルであり、稼働情報管理プログラム308によって更新される。操作ログ324は、ストレージシステムに対して実施された操作のログのテーブルである。
【0047】
図4は管理計算機130のメモリ132の記憶構造の機能ブロック図である。構成管理プログラム400は、管理対象ストレージシステム110a,110bの構成を管理する。傾向管理プログラム402は、ストレージシステム110a,110bの複数の管理対象リソース夫々の稼働情報の傾向を管理する。情報収集・更新プログラム404は、管理対象ストレージシステム110a,110bから構成情報や稼働情報を収集して、更新する。
【0048】
ペア構成管理テーブル406は、管理対象ストレージシステム110a,110bのリモートコピーペア構成を管理するためのテーブルであり、構成管理プログラム400によって更新される。正副ジャーナル構成管理テーブル408は、管理対象ストレージシステムの正側ジャーナル(PJNL)と副側のジャーナル(SJNL)との構成を管理するためのテーブルであり、構成管理プログラム400によって更新される。
【0049】
正副ジャーナル使用率履歴管理テーブル410は、管理対象ストレージシステムの正側ジャーナル(PJNL)と副側ジャーナル(SJNL)の使用率の履歴傾向を管理するためのテーブルであり、傾向管理プログラム402によって更新される。ジャーナル間稼働情報履歴管理テーブル412は、管理対象ストレージシステムの正側ジャーナルと副側ジャーナル間の稼働情報の履歴を管理するためのテーブルであり、傾向管理プログラム402によって更新される。
【0050】
装置稼働情報履歴管理テーブル414は、装置稼働情報管理テーブル318の履歴を管理するためのテーブルであり、傾向管理プログラム402によって更新される。判断用履歴傾向管理テーブル416は、正副ジャーナルボリュームの属性、仕様、運用を含む構成を変更、調整、修正、補正等するための判断用テーブルであり、傾向管理プログラム402によって更新される。判断用マップ418は、リモートコピーの運用に関係するリソースに複数のイベントが発生した時に、構成管理プログラム400がジャーナル、ジャーナルボリュームの構成をどのように変更するかの制御テーブルである。これは事前に準備されるか、もしくは、ユーザ入力によって必要に応じて更新されてもよい。
【0051】
図5はジャーナルボリュームにおけるジャーナルデータの管理方法を示すブロック図である。ジャーナルボリュームJVOLは、正ボリュームにWriteされたデータを受け取り、副ボリュームにデータを送るためのバッファとして機能する。
【0052】
ジャーナルボリュームの先頭のメモリアドレスLから、ジャーナルデータ(更新データとメタデータ)が順次取り出されて副ストレージシステム110bに送信される。ジャーナルボリュームの領域として、副ジャーナルボリュームにジャーナルデータが転送された転送済み領域、ジャーナルデータが格納されているが副ジャーナルボリュームに未転送の領域、未使用の領域が存在する。
【0053】
ブロック管理ビットマップ310は、ジャーナルボリュームJVOLの各ブロックが使用中であるか、未使用であるかの値を記憶する。対応するブロックが使用中である場合には、ビット値“1”が設定され、未使用である場合には、ビット値“0”が設定される。ジャーナルボリュームは、所定の共通の固定サイズの複数のブロックに区分されて管理されている。各ブロックは、複数のジャーナルデータが格納可能なサイズである。
【0054】
管理計算機130の構成管理プログラム400はリモートコピーの運用に関係する、または、それに影響を与えるリソースの稼働状態の傾向に基づいてブロック管理ビットマップ310を参照してジャーナルボリュームの容量の拡張、または容量の解放を実行する。
【0055】
構成管理プログラム400は、ジャーナルボリュームの転送済みの領域の一部、又は、全部をジャーナルボリュームから解放して、ジャーナルボリュームに割り当てられたままの記憶容量を少なくする。構成管理プログラム400は、ジャーナルボリュームの未使用領域の一部を解放することも可能である。
【0056】
図6Aはボリューム管理テーブル312の一例である。ボリューム管理テーブル312は、ボリュームリソースIDと容量とその属性を持つ。属性には、ホストからアクセスされる通常のボリュームのものと、ジャーナルボリュームとして利用されるものとがある。
【0057】
図6Bはジャーナル管理テーブル314の一例である。ジャーナル管理テーブル314は、ジャーナルリソースのIDと、ジャーナルに含まれるジャーナルボリュームのID(VOLID)、ジャーナルボリュームの容量(JVOL容量)と、そのステータス(Normal,Error)、そして、そのジャーナルボリュームの使用率の情報を持つ。
【0058】
図6Cはペア管理テーブル316の一例を示す。ペア管理テーブル316は、リモートコピーペアのID(リソースID)と、そのペアに含まれる正ボリュームのID(PVOLID)、正ジャーナルボリュームのID(PJNLID)、副ボリュームのID(SVOLID)、副ジャーナルボリュームのID(SJNLID)、複数のペアをグループ(CTG))で管理する場合のグループID、そして、ペアの状態を示すステータスを持つ。
【0059】
ステータスには、例えば、ペアのデータが正常にコピーし続けられているPAIR状態、コピーが一時停止しているサスペンド状態、ジャーナルボリュームがあふれそうなPFUL状態、何かしらのエラーにより異常が発生しているPSUE状態などがある。なお、これらのテーブルではボリューム、ジャーナルのIDがグローバルでユニークであることを前提にしているため、装置を示すIDが省略されているが、ボリュームやジャーナルのIDが装置内ユニークの場合は、正と副の各装置IDを示す情報を持たせてもよい。
【0060】
図7Aはボリューム稼働情報管理テーブル320の一例であって、ボリュームのID、メトリック(稼働情報)の種別を示す情報、時刻、そして、各時刻での稼働情報の値を含む。ボリューム稼働情報管理テーブル320は、1分ごとの値を記録しているが、時間間隔はこれに限らない。
【0061】
図7Bは、ジャーナル間稼働情報管理テーブル322の一例であって、正サイト110aのジャーナルのID(PJNLID)、副サイト110bのジャーナルのID(SJNLLID)と、メトリックの種別を示す情報と、各時刻の値を記録している。
【0062】
図7Cは装置(ストレージシステム)稼働情報管理テーブル318の一例であり、ストレージシステムのリソースの一つとしての、CPUとメモリ夫々のID、メトリックの種類、時刻、そして、時刻でのメトリックの値を示す。メモリのWrite Pending RateはWriteデータが多くなり、メモリに書けなくて溜まるデータの割合を示す。これは、ストレージシステムの負荷が高くなっていることを示す1つの指標である。メトリックはここに記載の値に限らない。たとえば、ボリュームのレスポンスタイム、ドライブごとのドライブ稼働率、メモリのキャッシュヒット率、ストレージクラスタ内ノードごとのCPU、メモリ、ドライブ稼働率などでもよい。
【0063】
図8Aはペア構成管理テーブル406の一例である。ペア構成管理テーブル406は、基本的にはストレージシステムのペア管理テーブル316と同じ情報を持つ。
図8Bは正副ジャーナル構成管理テーブル408の一例を示す。正副ジャーナル構成管理テーブル408は、管理対象ストレージシステム110a,110bのジャーナル管理テーブル314と同じ情報を持つ。基本的にはストレージシステムのジャーナル管理テーブル314と同じカラムの情報を持つ。
【0064】
図9は、ストレージシステム110a(110b)に対して実行された操作ログ324の一例である。操作ログは、操作対象リソースが複数の場合(例として、配列)には、複数の値を持ってもよい。指定パラメタは、例えば、Volume作成の時のサイズなど、操作内容で必要な値である。操作ログは、テーブル形式の他、テキストの羅列でもよい。ログとして記録するカラム(値)は、
図9の例に限られない。
【0065】
管理計算機130はストレージシステム110a、110bから、リモートコピーの運用に関係するリソースの稼働情報を収集し、稼働情報の履歴を履歴管理テーブルとして作成する。管理計算機130は収集した稼働情報履歴からその傾向を算出し、この傾向に基づいて、リモートコピーの運用状況、例えば、正ジャーナルボリューム、及び/又は、副ジャーナルボリュームの使用率の傾向(使用率の増加傾向、又は、減少傾向)を判定し、これに基づいて、ジャーナルボリュームの容量をリモートコピーの運用に合わせて動的に変更できることとした。この結果、ジャーナルボリュームに割り当てられる記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正範囲に維持できる。
【0066】
図10Aは、正副ジャーナル使用率履歴管理テーブル410の一例である。正副ジャーナル使用率履歴管理テーブル410は、管理計算機が管理する対象である、ストレージシステム110a、110bの複数のジャーナルPJNL1、PJNL2,SJNL1,SJNL2の夫々について時刻毎の使用率(ジャーナルボリューム)の履歴を持つ。
【0067】
ジャーナルボリュームの使用率とは、ジャーナルボリュームの全容量のうち、ジャーナルデータの未転送領域、そして、転送領域の合計の割合をいう。ジャーナルとジャーナルボリューム夫々の使用率(利用率)は、リモートコピーに関係するリソースの稼働情報の一例である。
【0068】
図10Bは、ジャーナル間稼働情報履歴管理テーブル412の一例である。これは、正側ジャーナル(PJNL ID)と副側ジャーナル(SJNLL ID)の組み合わせ毎のジャーナル間の稼働情報(メトリック)としてのデータ転送速度(ネットワーク121の負荷)の履歴を持つ。メトリックはここに記載の値に限らない。例えば、ジャーナルボリューム間のレスポンスタイム、ジャーナルボリュームへIO負荷(IOPS)などでもよい。複数のジャーナル間のデータ転送速度等は、リモートコピーに関係するリソースの稼働情報の一例である。
【0069】
図11は判断用履歴傾向管理テーブル416の一例である。
図11において、正ジャーナルボリューム、正ストレージシステム、副ストレージシステム、そして、正ジャーナルボリュームと副ジャーナルボリュームとの間のネットワークの夫々がリモートコピーに関係するリソースの例である。
【0070】
判断とは、リソースの稼働情報に於ける負荷の傾向(以下、単に、「傾向」と記載する。)を特定するための判断を言う。傾向とは
図12の「正常」や「性能劣化」などである。管理計算機130は、ストレージシステムのリモートコピーの運用ための稼働状態の傾向に基づいてジャーナルボリュームの構成の変更を行う。したがって、管理計算機130はリモートコピーの運用状況に応じて、正副ジャーナルボリュームの構成を動的に変更でき、ジャーナルボリュームに割り当てられる記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正範囲に継続して抑えることができる。
【0071】
判断用履歴傾向管理テーブル416は、ストレージシステム(DKC)のID(DKC1:正ストレージシステム)と、ストレージシステムのリソースIDと、リソース稼働情報(メトリック)とを含んでいる。メトリックについて、リソースIDに関連するリソースがある場合には、関連リソースIDが記録される。傾向値は判断のためのベースとなる値であって稼働情報の値であって、例えば、直近のある一定期間(例:1日)のピーク値の平均でよい。
【0072】
図11に示すように、ストレージシステムのCPU利用率、メモリのWrite Pending Rateもリモートコピーに関係するリソースの稼働情報の一例である。リソースの稼働情報は、第1のストレージシステムの負荷、第2のストレージシステムの負荷、ジャーナルボリュームへのIO負荷、ジャーナルボリュームの利用率、そして、第1のストレージシステムと第2のストレージシステムとの間のネットワークの負荷等説明したものの少なくとも一つを含む。
【0073】
図12に判断用マップ418の一例を示す。判断用マップはテーブル形式に構成されている。判断用マップ418は、リモートコピーに関係する複数のリソース夫々の稼働情報の傾向の複数の組み合わせと、組み合わせ毎のジャーナルボリュームの容量の拡張、又は、解放のための対処のシナリオを含んでいる。PJNLVOLのIOPSの「一定」、「増加」、正DKC(正ストレージシステム)110aの負荷「正常」、ジャーナル間のネットワーク状態(JNL間NW状態)の「正常」、「性能劣化」、「上限到達」、そして、副DKC(副ストレージシステム)110bの負荷「正常」、「高負荷」は夫々の稼働情報の「傾向」の例である。
【0074】
判断用マップ418は、複数のリソース夫々の稼働情報の傾向を含んでいる。この傾向は、
図11に示す「傾向値」と現在の稼働情報とが比較されて、管理計算機によって決定される。ストレージシステム(DKC)負荷とは、例えば、CPU利用率やキャッシュWrite Pending Rateである。
【0075】
JNL間NW(ジャーナル間ネットワーク:122)状態とは、例えば、正副ジャーナル間のデータ転送速度の値を示す。判断用マップは、複数のリソース稼働情報の傾向の組み合わせによって、正ジャーナルボリューム、副ジャーナルボリュームの使用率が今後増加するか、又は、減少するかの傾向や展開等のシナリオに沿った、リモートコピーの運用調整を含んでいる。リモートコピーの運用調整は、ジャーナルボリュームの構成変更(ジャーナルボリュームの容量の拡張又は解放等)を含む。
【0076】
管理計算機130は判断用マップに従ってジャーナルボリュームの構成変更を実行する。管理計算機130は、ジャーナルボリュームの構成変更をこの判断用マップに従って対処してもよいし、判断用マップに相当するロジックをフローチャートに基づいて実行してもよい。
【0077】
図13はジャーナルボリュームの作成のためのフローチャートの一例である。正副のストレージシステム110a,110bに夫々に正ボリューム(PVOL)と副ボリューム(SVOL)が夫々作成されているとする。
図13は、リモートコピーの運用を開始する際に実行される。
【0078】
ユーザから管理計算機130へのアクセスによって
図13のフローチャートがスタートする。ユーザは、管理計算機130の構成管理プログラム400にリモートコピーペアの作成を指示する(S1300)。これを受けて、構成管理プログラム400は、正副のストレージシステム110a,110bへジャーナルボリューム作成を指示する(S1302)。
【0079】
この指示を受けて、正副ストレージシステムの夫々のボリューム管理プログラム302はジャーナルボリュームを作成する(S1304)。この際、ジャーナルボリュームの容量は最低限必要な容量でもよいし、ボリューム(PVOL)と同じ容量でもよいし、ユーザが適当な値を事前に設定してもよい。
【0080】
次いで、管理計算機130の構成管理プログラム400が正副のストレージシステムへジャーナルの作成を指示する(S1306)。これを受けて、正副のストレージシステム夫々のジャーナル管理プログラム304がジャーナルを作成し、これをジャーナル管理テーブル314に登録する(S1308)。次いで、構成管理プログラム400が、正副のストレージシステムのペア管理プログラム306へリモートコピーペア作成を指示する(S1310)。
【0081】
そして、正副ストレージシステムのペア管理プログラム306がボリューム(ジャーナルボリュームを含む。)のボリューム管理テーブル312(
図6A)情報からリモートコピーペアを作成し、これを、ジャーナル管理テーブル314(
図6B),ペア管理テーブル316(
図6C)に登録して(S1312)、フローチャートを終了する。
【0082】
次に、管理計算機130がストレージシステム110a、110bから情報を収集し、既述のテーブル(
図4)を更新する。管理計算機130は、次の
図14のフローチャートに従い、判断用履歴情報(判断用履歴傾向管理テーブル416:
図11)を更新する。管理計算機130は、所定時間毎に
図14のフローチャートを実行する。
【0083】
情報収集・更新プログラム404が正・副夫々のストレージシステム110a,110bから、ボリューム管理テーブル312、ジャーナル管理テーブル314、ペア管理テーブル316、ボリューム稼働情報管理テーブル320、そして、ジャーナル間稼働情報管理テーブル322を参照する(S1400)。
【0084】
次いで、情報収集・更新プログラム404がペア構成管理テーブル406、正副ジャーナル構成管理テーブル408、正副ジャーナル使用率履歴管理テーブル410、ジャーナル間稼働情報履歴管理テーブル412、装置稼働情報履歴管理テーブル414を更新する(S1402)。そして、情報収集・更新プログラム404は、
図15のフローチャートに基づいて、判断用履歴傾向管理テーブル416を更新する(S1404)。
【0085】
図15は、判断用履歴傾向管理テーブル416(
図11)を更新するためのフローチャートである。傾向管理プログラム402は
図14のフローチャートに基づいて更新された各管理テーブルに基づいて、判断用履歴傾向管理テーブル416を更新する。
【0086】
傾向管理プログラム402は、過去一定期間(例:過去1日)に於ける、正・副夫々のストレージシステムの装置稼働情報(CPU利用率、メモリWrite Pending Rate、ドライブ稼働率等)、正・副夫々のジャーナルボリュームのIOPS、ジャーナル間のデータ転送量等の傾向値を計算して、判断用履歴傾向管理テーブル416に登録する(S1500)。
【0087】
傾向値として、例えば、夫々のメトリック(稼働情報)のピーク値の最大・最小を除く値の平均値でよい。最大、最小値を除く理由は極端な値を除くためである。この場合のピーク値は、例えば、稼働情報の連続する時間の差分が正である場合のメトリックの値である。
【0088】
次に、傾向管理プログラム402が、判断用履歴傾向管理テーブル416に記録されている傾向値(記録値)と、今回計算した稼働情報(現状値)とを比較する(S1502)。傾向管理プログラム402は、記録値と現状値との差分を計算し、差分と閾値とを比較し(S1504)、差分が閾値を超えるメトリックが少なくとも一つある場合には、判断を肯定してS1506のステップに移行する。傾向管理プログラム402はこの判定を否定するとリモートコピーの運用に関係するリソースの稼働情報に実質的な変化は無いとして、ジャーナルボリュームの構成を変更する事無く、フローチャートを終了する。
【0089】
閾値として、事前に固定値(例:判断用履歴傾向管理テーブル416に記録されている傾向値の5%)を決めておいてもよいし、ユーザがその都度所定値を入力してもよい。リソースの稼働情報(メトリック)ごとに閾値が異なっていてもよい。
【0090】
S1504は次のようにして行われてもよい。複数のリソース夫々の稼働情報ごとに重みを設け、傾向管理プログラム402は、前記差分(S1502)と重みとの掛け合わせを複数の稼働情報夫々について行う。そして、傾向管理プログラム402は、このようにして得られた値を全ての稼働情報について合計し、合計した値と所定値とを比較するようにしてもよい。
【0091】
構成管理プログラム400は、全ての稼働情報夫々に重みを付けることによって、ジャーナルボリュームの構成の変更に与える影響度を複数の稼働情報の間で優劣をつけることができる。したがって、ジャーナルボリュームの構成の変更の要否を、リモートコピーの運用に合わせて総合的に判定することができる。
【0092】
ストレージシステムに複数のジャーナルボリュームが存在する場合にジャーナルボリュームごとに閾値を変えてもよい。閾値を変えることによってジャーナルボリュームごとにジャーナルボリュームの容量が変更されるタイミングを変えることができる。
【0093】
管理計算機130がストレージシステム内の複数のジャーナルボリュームについてその容量の変更の要否を判断する場合、複数のジャーナルボリュームごとに稼働情報に対する優先度を変えてもよい。
【0094】
例えば、管理計算機130が、ジャーナルボリュームが複数ある中で、第1のジャーナルボリュームについて、CPU利用率を優先してボリューム構成変更の判定を実行し、第2のジャーナルボリュームについてメモリWrite Pending Rateを優先するといった類のものである。このようにすることによってジャーナルボリュームの属性の違いに応じてボリューム構成変更の要否を判断することができる。
【0095】
またさらに、傾向値の差分が閾値を超えるジャーナルボリュームが複数存在する場合に、傾向管理プログラム402は、複数の稼働情報、例えば、稼働情報X,Y,Z(X=CPU利用率、Y=IOPS、Z=転送速度)の優先度、X(最優先)、Y(2番目)、Z(3番目)に基づいて、Xの値が最も大きいジャーナルボリュームに対してS1506を実行する。なお、Xの値が同じジャーナルボリュームが複数ある時、傾向管理プログラム402はYの値で比較して、Yが最も大きいジャーナルボリュームについてS1506を実行する。
【0096】
次いで、構成管理プログラム400は、残りの複数のジャーナルボリュームについて、Yの値が最も大きいジャーナルボリュームに対してS1506を実行し、最後に、Zの値が最も大きいジャーナルボリュームに対してS1506を実行する。このような優先度順番で、全ジャーナルボリュームに対してS1506を実行する。
【0097】
傾向管理プログラム402がS1504を肯定すると、フローチャートはS1506に移行する。構成管理プログラム400は、リモートコピーの運用状況に応じてジャーナルボリュームの容量変更のための対処を実行する(S1506)。詳しくは、次の
図16のフローチャートにおいて説明する。さらに、S1506を経て、フローチャートが終了された後、傾向管理プログラム402は、
図14のフローチャートに戻り、ジャーナルボリュームの構成変更が行われた後の状態で、判断用履歴傾向管理テーブル416を更新することができる(S1404)。
【0098】
構成管理プログラム400の指示を受けて、ジャーナル管理プログラム304は、ジャーナルボリュームの構成変更(容量の増減)のために、
図16のフローチャートに示す処理を実行する。ジャーナル管理プログラム304は、
図7Aに示すボリューム稼働情報管理テーブル320を参照して正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)のIOPSがゼロか否かを判定する(S1600)。
【0099】
ジャーナル管理プログラム304はS1600のステップを肯定するとS1602に移行する。S1602において、ビットマップ管理プログラム300は、正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)のビットマップ管理テーブル(
図5)を参照し、PJNLVOLのブロック(ページ)のうち、副ジャーナルボリューム(SJNLLVOL)にジャーナルデータを転送済みのページの正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)への割り当てを解放する。
【0100】
ジャーナル管理プログラム304はS1600を否定すると、ジャーナル間稼働情報管理テーブル322(
図7B)を参照して、正ジャーナルと副ジャーナルとの間のネットワークに障害があるか否かを判定する(S1604)。例えば、構成管理プログラム400は、ボリューム稼働情報管理テーブル320と、ジャーナル間稼働情報管理テーブル322とを参照し、正、副のジャーナルのStatusがErrorでなく、正ボリューム(PVOL)のIOPSがゼロでないのに、ジャーナルボリューム間データ転送速度がゼロの場合、ネットワークNW障害と判断する(S1604/YES)。
【0101】
この時、ペア管理プログラム306は、時間が経つと、ペア管理テーブル316(
図6C)のリモートコピーペアのステータスを「pair」から「suspend」に変更して、リモートコピーを停止させるため、ジャーナル管理プログラム304は、S1602のような容量解放、容量拡張などの構成変更をジャーナルボリュームに対して実行しない。
【0102】
ジャーナル管理プログラム304はS1604を否定するとS1606に進み、操作ログ324(
図9)をチェックして、直近の操作がSVOLに構成変更及ぼし、SVOL側の性能を出せなくする操作(例えば、Snapshot作成)があるか否かをチェックする。
【0103】
ジャーナル管理プログラム304がS1606を肯定して、このような操作があったことを判定するとボリューム管理プログラム302に正ボリューム(PVOL)へのIO流入を制限するよう指示を出してフローチャートを終了する(S1608)。この時SVOLの構成変更が解消されるとリモートコピーが直ちに再開されるためジャーナルボリュームの構成変更は行わないものとする。
【0104】
ジャーナル管理プログラム304はS1606を否定するとS1610に進み、PJNLVOL、SJNLLVOL、そして、SVOLの少なくとも一つに、ボリューム稼働情報管理テーブル320(
図7A)を参照して障害があるか否かをチェックする。構成管理プログラム400はS1610を肯定するとフローチャートを終了する。
【0105】
正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)障害時、リモートコピーの運用がされないので、ジャーナル管理プログラム304は、ジャーナルボリュームの構成変更に対する処理を行うことなく、フローチャートを終了する。副ジャーナルボリューム(SJNLVOL)障害の場合、正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)の使用率が増加するが、障害サスペンドになってリモートコピーが運用されないため、ジャーナル管理プログラム304は、ジャーナルボリュームの構成変更に対する処理を行うことなく、フローチャートを終了する。
【0106】
副ボリューム(SVOL)障害の場合、正ジャーナルボリューム、副ジャーナルボリューム夫々の使用率が増加するが、障害サスペンドになってリモートコピーが運用されないため、ジャーナル管理プログラム304は、フローチャートを終了する。
【0107】
一方、ジャーナル管理プログラム304はS1610を否定すると、即ち、PJNLVOL、SJNLVOL、そして、SVOLの全てが正常である場合、リモートコピーの運用は継続されるために、
図12の判断用マップに基づいて、ジャーナルボリュームの容量の拡張、又は、解放S1612:
図17)が行われた後フローチャートは終了される。
【0108】
図17は、管理計算機130の構成管理プログラム400が
図12の判断用マップに基づいて、正副ジャーナルボリュームの容量の拡張、又は、解放を行うためのフローチャートである。傾向管理プログラム400は、既述の管理テーブルを参照してリソースの稼働情報を読み込み、
図11の傾向値と比較して、正ジャーナルボリュームの負荷(PJNLVOL IOPS)、正ストレージシステム(正DKC)の負荷、ジャーナル間ネットワーク(JNL間NW)状態、副ストレージシステム(DKC)負荷夫々に対する傾向を判定し、複数の傾向の組み合わせと
図12の判断用マップとを照合する。
【0109】
構成管理プログラム400はS1700において、
図12のマップに従い、複数の評価の組み合わせに対応する「対処」がジャーナルボリューム(JNLVOL)の使用率の閾値をチェックすべきものであるか否かを判定する。
【0110】
構成管理プログラム400は、この判定を肯定すると、即ち、リモートコピーがジャーナルボリュームの使用率を増加させようとしている状態にあることを判定するとS1702に移行する。
【0111】
構成管理プログラム400は、
図12のマップに従い、正ジャーナルボリューム(PJNLVOL)、及び/又は、副ジャーナルボリューム(SJNLVOL)の使用率が閾値以上か否かをチェックする。
図12において、「P/SJNLVOL」は、正ジャーナルボリュームと副ジャーナルボリュームの両方である。閾値は80%等予め決めておけばよい。
【0112】
構成管理プログラム400はS1702を否定すると、ジャーナルボリュームの使用率は増加する傾向にはあるが、ジャーナルボリュームにはジャーナルデータを格納する上でまだ余裕があり、ジャーナルボリュームの容量拡張の必要はないものとしてフローチャートを終了する。構成管理プログラム400がS1702を行う理由は際限なくジャーナルボリュームの容量を拡張すると、ストレージシステムの限られた記憶容量がジャーナルボリュームに浪費されることを防ぐためである。
【0113】
構成管理プログラム400がS1702を肯定するS1704に移行し、現在のジャーナルボリュームの容量が所定値、例えば、正ボリュームの容量以下か否かを判定する。このような判定を行う理由は、リモートコピーを安定して運用させるためにジャーナルボリュームのサイズが無制限に大きくならないようにするためである。構成管理プログラム400はS1704を否定するとジャーナルボリュームの容量は大きくもう拡張はできないと判断してフローチャートを終了する。
【0114】
構成管理プログラム400は、S1704を肯定するとジャーナルボリュームの容量の拡張サイズを計算する。拡張すべきサイズは、過去の傾向から決めてもよいし、現在の容量の一定の割合、又は、固定値でもよい。構成管理プログラム400はS1710に進み、ジャーナル管理プログラム304に計算されたサイズでジャーナルボリュームの容量を拡張させる。
【0115】
構成管理プログラム400はS1700を否定する、即ち、リモートコピーがジャーナルボリュームの使用率を増加させる傾向にはないことを判定するとS1712に移行する。構成管理プログラム400は「対処」が転送済みチェックとページ解放であるか否をチェックする。
【0116】
構成管理プログラム400はS1712を肯定、即ち、リモートコピーがジャーナルボリュームの使用率を減少させようとしている状態にあることを判定するとS1714に移行する。構成管理プログラム400はS1714において、ビットマップ管理プログラム300にビットマップ管理テーブル(
図5)を参照させ、転送済み領域をジャーナルボリュームから解放させて、フローチャートを終了する。
【0117】
構成管理プログラム400はS1712を否定、即ち、リモートコピーがジャーナルボリュームの使用率を減少させようとしている状態にはないと判定してフローチャートを終了する。
【0118】
以上説明したように、管理計算機は、前記リモートコピーの初期設計時、正ジャーナルボリューム、及び、副ジャーナルの夫々に所定の記憶容量を割り当て、リモートコピーの開始後、正ジャーナルボリューム、及び/又は、副ジャーナルボリュームへの容量の割り当てはリモートコピーの実行状態に応じて実行するため、リモートコピーを実行しても、ジャーナルボリュームの記憶容量の運用を効率よく実行することが出来る。
【0119】
さらに、管理計算機130が、正サイトを構成する第1のストレージシステム110aと、副サイトを構成する第2のストレージシステム110bとの間のリモートコピーを管理する、ストレージシステムの制御方法を実行する過程で、管理計算機は、リモートコピーの運用に関係するリソースの稼働情報に応じて、ジャーナルボリュームの容量を動的に、拡張、又は、解放変更するようにしたため、ジャーナルボリュームの記憶容量をリモートコピーの運用期間中適正に維持することが出来る。
【0120】
なお、正ジャーナルボリュームと副ジャーナルボリュームとの間で判断用マップを変えても、即ち、複数の傾向の組み合わせパターンに対する対処の内容(ジャーナルボリュームの容量の拡張、解放のパターン)を変えてもよい。さらに一つのストレージシステムの中に複数のジャーナルボリュームがあるときにジャーナルボリュームごとに判断用マップを変えてもよい。また、リモートコピーの運用形態や運用状態に合わせて判断用マップを変更してもよい。
【符号の説明】
【0121】
100:計算機システム、110a:正ストレージシステム(第1のストレージシステム)110b:副ストレージシステム(第2のストレージシステム)、130:管理計算機、JVOL1:正ジャーナルボリューム、JVOL2:副ジャーナルボリューム、PVOL1:正ボリューム、SVOL1:副ボリューム