(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158119
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ステッピングモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 37/14 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H02K37/14 535M
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073058
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新谷 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小幡 修平
(72)【発明者】
【氏名】川島 琴司
(72)【発明者】
【氏名】新井 忠
(57)【要約】
【課題】モータ外部への磁束漏れを低減する。
【解決手段】周方向に交互に配設された第一の櫛歯を有するインヨーク7、8と、第一の櫛歯間に配置される第二の櫛歯を有するアウトヨーク3、4と、インヨーク7、8とアウトヨーク3、4との間に配置された励磁コイル5、6を有するステータ16と、ステータ16内部に配設されるとともに、その周面が異なる極に交互に着磁されたマグネット9を有するロータ17と、ロータ17を回転自在に支持する軸受2と、軸受2の端部に設けられた押さえ板1とを備え、押さえ板1が磁性体からなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に交互に配設された第一の櫛歯を有するインヨークと、前記第一の櫛歯間に配置される第二の櫛歯を有するアウトヨークと、前記インヨークと前記アウトヨークとの間に配置された励磁コイルを有するステータと、
前記ステータ内部に配設されるとともに、その周面が異なる極に交互に着磁されたマグネットを有するロータと、
前記ロータを回転自在に支持する軸受と、
前記軸受の端部に設けられた押さえ板と
を備え、
前記押さえ板が磁性体からなることを特徴とするステッピングモータ。
【請求項2】
前記押さえ板は、前記アウトヨークとその周縁部において接触していることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【請求項3】
前記軸受に保持され、前記ロータの回転軸となるシャフトを有し、
前記押さえ板は、前記シャフトの端部を覆っていることを特徴とする請求項1または2に記載のステッピングモータ。
【請求項4】
前記押さえ板は、貫通穴を有することを特徴とする請求項1または2に記載のステッピングモータ。
【請求項5】
前記軸受に保持され、前記ロータの回転軸となるシャフトを有し、
前記シャフトは非磁性体からなることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータ内で回転するシャフトとマグネットを有するロータと、そのロータのスラスト方向に位置規制する押さえ板を備えたステッピングモータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のモータにおいて、ステータ内のロータの凹部に設けられたコイルバネによってロータがスラスト方向に付勢され、モータの回転時にシャフトがスラスト方向に暴れることでたたき音が発生することがあった。これに対し、例えば特許文献1に開示されているように、ロータをスラスト方向に位置規制する押さえ板が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、押え板が非磁性体であると、モータ内部から発生する磁束がスラスト方向に漏れやすく、例えばカメラ内で使用されるセンサが近接して配置された場合には、ノイズとなってしまう可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記を鑑み、本発明に係るステッピングモータは、
周方向に交互に配設された第一の櫛歯を有するインヨークと、前記第一の櫛歯間に配置される第二の櫛歯を有するアウトヨークと、前記インヨークと前記アウトヨークとの間に配置された励磁コイルを有するステータと、
前記ステータ内部に配設されるとともに、その周面が異なる極に交互に着磁されたマグネットを有するロータと、
前記ロータを回転自在に支持する軸受と、
前記軸受の端部に設けられた押さえ板と
を備え、
前記押さえ板が磁性体からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、モータ外部に漏れる磁束を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例1に係るステッピングモータの断面図
【
図2】本発明の実施例1に係るステッピングモータの分解斜視図
【
図3】本発明の実施例2に係るステッピングモータの断面図
【
図4】本発明の実施例5に係るステッピングモータの上面図
【
図5】本発明の実施例6に係るステッピングモータの上面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
(実施例1)
以下、本発明の実施例1に係るステッピングモータの一例であるモータMについて説明する。モータMは、PM(Parmanent Magnet)型ステッピングモータであり、
図1はその構造を示す断面図である。また、
図2はモータMの分解斜視図であり、以下の説明においては少なくともいずれかの図面に記載された構成について説明する。
【0009】
モータMは、非磁性体からなるシャフト10(回転軸)を含むロータ17がステータ16内部に排泄され、ステータ16に対し回転自在に支持されることで構成されている。ロータ17はシャフト10と、その周面が周方向に交互に異なる極に着磁されたマグネット9から構成される。
【0010】
その周囲には、インヨーク7、8と励磁コイル5、6とアウトヨーク3、4から構成されるステータ16が配置される。
【0011】
マグネット9の周囲には、軟磁性材からなり周方向に交互に配設された複数の櫛歯を有するインヨーク7、8が配置される。
【0012】
インヨーク7、8の径方向外周側には、軟磁性材からなり周方向に交互に配設された複数の櫛歯を有するアウトヨーク3、4が設けられている。
【0013】
励磁コイル5、6は、インヨーク7、8とアウトヨーク3、4の間に配置され、電流が印可されると磁界を発生し、インヨーク7、8とアウトヨーク3、4を励磁させる。
【0014】
シャフト10の出力側とは反対側の端部側(後端側)には、樹脂で形成された後端軸受2が設けられている。後端軸受2は、その外径とアウトヨーク3、4の内径とで同軸位置決めされた中空円筒型であり、シャフト10を回転可能に保持している。
【0015】
ロータ17は、各ヨークに設けられた櫛歯と所定のギャップを介してステータ16内に同軸関係に配設されている。
【0016】
先端軸受14は、モータMを装置に取り付けるための取付板であるフランジ15にカシメ固定され、その軸受カシメ部14Aがアウトヨーク4の複数の櫛歯間に設けられた5カ所の切欠き部4B(
図2参照)に対応する周方向位置5カ所に設けられており、アウトヨーク4の内径と先端軸受14の外径の嵌合にて位置決めされている。
【0017】
先端軸受14のマグネット9との対向面にはコイルバネ設置用の凹部19が設けられており、この凹部19内に設けられたワッシャ13とマグネット端面に設けられたワッシャ11に挟まれるようにコイルバネ12が設けられており、その付勢力によってマグネット9がモータMの後端側に付勢され、ロータ17全体が押さえ板1側に付勢されている。すなわち、押さえ板1によってロータ17の軸方向における位置決めがなされ、押さえ板1と後端部が球面に形成されたシャフト10とが常に点接触した状態となっている。
【0018】
以上説明した構成において、励磁コイル5、6が通電されると、インヨーク7、8とアウトヨーク3、4が励磁されて各櫛歯が誘磁され、マグネット9の着磁極と反発・吸引してトルクが発生する。励磁コイル5、6の通電に従ってロータ17が回転移動されて、シャフト10から外部に駆動力を伝達する。
【0019】
その際、励磁コイル5、6及びマグネット9から発生する磁束がモータMのシャフト10の軸線を中心として、スラスト方向に向き、磁束がモータより外側に漏れようとする。シャフト10及び後端軸受2の抜け止め、位置規制を目的として使用している押さえ板1は、アウトヨーク3の端部に例えばレーザ溶接などの手段で固着されており、少なくともアウトヨーク3の内径(マグネット外径)より大きい径を平面で覆っている構成となるよう配置されている。押さえ板1は磁性体により構成されているため、モータM内部からシャフト10などを通ってモータスラスト方向にモータMの外部に流れ出ようとする磁束が、押さえ板1からアウトヨーク3を伝ってモータ内部に還元されるため、モータMの外部に流れ出ようとする磁束の漏れを低減することができる。これによりカメラなどの精密機器に搭載された場合に、モータM周囲に配置されるセンサなどへの磁束漏れによるノイズ影響を低減できる。
【0020】
(実施例2)
以下、本発明の実施例2に係るモータMについて説明する。本実施例において実施例1と基本的に同じ構成は同じ符号を用いるとともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。本実施例は、実施例1のモータMにおける非磁性体からなるシャフト10をステンレス等の磁性体からなるシャフトへと変更したものである。シャフトを磁性体とすることで、実施例1よりもシャフトを伝って外部へ流れ出る磁束が生じやすくなるが、シャフト後端を磁性体の押さえ板1で遮蔽しているため、流れ出る磁束をモータM近傍に留めることができている。そのため、カメラなどの精密機器に搭載された場合に、実施例1同様に、モータM周囲に配置されるセンサなどへの磁束漏れによるノイズ影響を低減できる。
【0021】
(実施例3)
以下、本発明の実施例3に係るモータMについて説明する。本実施例において実施例1と基本的に同じ構成は同じ符号を用いるとともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。
図3は本実施例に係るモータMの構造を示す説明図である。本実施例は、実施例1における押さえ板1のシャフトを受ける部分(中央部)に、シャフト径以上で軸受22の径以下の大きさの貫通穴21aを設けた押さえ板21へ変更したものである。
【0022】
実施例1とは異なり、本実施例ではコイルバネ12によって押さえ板21側に付勢されたロータ17を突き当てて軸方向の位置決めをするために、マグネット9と後端軸受22との間に少なくとも1枚以上のワッシャ18が配置されており、マグネット9を面接触させる構造としている。ワッシャ18はマグネット9と一体に回転するようにロータ17の一部として設けられていてもよく、その場合、ワッシャ18と後端軸受22の接触部分には接触面積を調整(低減)するための構造が設けられていることが好ましい。本実施例はこのように構成されており、接触面積を調整するための構造として、樹脂で成形された後端軸受22のワッシャ18側の面に、同心円状の複数のリブが設けられており、そのリブの部分のみでワッシャ18と摺接するようになっている。
【0023】
なお、シャフト30には実施例1と同様に非磁性体を用いている。ロータ17とステータ16を面接触させることで、点接触する実施例1に比べてロータ17とステータ16の摩擦力が増大しており、通電OFF時にディテントトルクなどの影響を受けてもロータ17の回転位置ずれが発生するのを防止することができる。これにより、例えばカメラ内の光量絞り装置に本実施例のモータMを搭載した場合、カメラ本体側で通電OFF(省電力化)にしてもモータMが回転しないため、光量の変化のない絞り装置を実現できる。
【0024】
この構成において、シャフト30に対応する中央部に貫通穴21aが設けられた磁性体の押さえ板21を用いることで、貫通穴21aを通る磁束が生じるものの、概ね実施例1同様に磁束漏れを低減できるため、結果的に通電OFF時の角度ずれのない特性に加え、カメラ側のセンサに影響のないモータを提供することができる。なお、押さえ板21の貫通穴21aはシャフト30と干渉しない最小限の径にしておくことが好ましい。
【0025】
(実施例4)
以下、本発明の実施例4に係るモータMについて説明する。本実施例において実施例3と基本的に同じ構成は同じ符号を用いるとともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。本実施例は、実施例3のモータMにおける非磁性体からなるシャフト30をステンレス等の磁性体からなるシャフトへと変更したものである。シャフトを磁性体とすることで、実施例3よりもシャフトを伝って外部へ流れ出る磁束が生じやすくなるが、シャフト後端側に磁性体の押さえ板1を設け、流れ出る磁束をモータM近傍に留めることができている。そのため、カメラなどの精密機器に搭載された場合に、実施例3同様に、モータM周囲に配置されるセンサなどへの磁束漏れによるノイズ影響を低減できる。
【0026】
(実施例5)
以下、本発明の実施例5に係るモータMについて説明する。本実施例において実施例3と基本的に同じ構成は同じ符号を用いるとともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。本実施例は、実施例3の押さえ板21に対し、さらにシャフトを受ける中央部以外の部分にも貫通穴を設けるように変更したものである。
【0027】
図4には、本実施例に係るモータMの上面図を示している。本実施例においては、実施例3における押さえ板21に対応するものとして押さえ板51を設けている。また、後端軸受22に対応して後端軸受52を設けている。
図4に示すとおり、押さえ板51にはシャフト30が挿通された貫通穴51aとその周囲4カ所に周囲貫通穴51bとが設けられている。
【0028】
このとき、
図4に示すように、後端軸受52において周囲貫通穴51bに対向する位置に凸部52aを設け、周囲貫通穴51bの内部に進入あるいは貫通するようにしてもよい。その際、凸部52aを押さえ板51の位置決めとして機能させてもよい。
【0029】
本実施例においても、上記各実施例と同様に押さえ板51を磁性体とすることでモータM周囲へ流れ出る磁束を低減することができる。押さえ板51の周縁部とアウトヨーク3とが接続していることにより、モータMの外部に流れ出ようとする磁束を、押さえ板51とアウトヨーク3とで形成される磁路側に導くことで外部への漏れ磁束を低減することができる。
【0030】
(実施例6)
以下、本発明の実施例6に係るモータMについて説明する。本実施例において実施例5と基本的に同じ構成は同じ符号を用いるとともに説明を省略し、相違点についてのみ説明する。本実施例は、実施例5の押さえ板51から、シャフトを取り囲む部分を排除したものである。
【0031】
図5には、本実施例に係るモータMの上面図を示している。本実施例においては、実施例5における押さえ板51に対応するものとして押さえ板61を設けている。また、後端軸受52に対応して後端軸受62を設けている。
図5に示すとおり、押さえ板61にはその中央部に貫通穴61aが設けられており、実施例5において示した押さえ板51から、シャフト30周囲を取り囲んだ部分を排除した構造となっている。
【0032】
このとき、
図5に示すように、後端軸受62において貫通穴61aに対向する位置に凸部62aを設け、貫通穴61aの内部に進入あるいは貫通するようにしてもよい。その際、凸部62aを押さえ板61の位置決めとして機能させてもよい。
【0033】
本実施例においても、上記各実施例と同様に押さえ板61を磁性体とすることでモータM周囲へ流れ出る磁束を低減することができる。押さえ板61の周縁部とアウトヨーク3とが接続していることにより、モータMの外部に流れ出ようとする磁束を、押さえ板61とアウトヨーク3とで形成される磁路側に導くことで外部への漏れ磁束を低減することができる。
【0034】
実施例5、6についてまとめると、押さえ板として、貫通穴を有しているものを用いるが、その周縁部においては環状に連続した部分を有する磁性体の押さえ板を用い、その周縁部においてアウトヨークと接触させることにより、モータM周囲へ流れる出る磁束を低減することができる。但しこれに限られず、例えば周縁部の一部を非連続としたC形状の押さえ板であってもよいし、非連続の部分を複数設け、複数に分割された周縁部を、シャフト周囲を取り囲む部分と連ならせることで、押さえ板として一体のものとして構成しても良い。いずれにしても、押さえ板を磁性体により構成しつつ、その周縁部においてアウトヨークと接触させて磁路を形成することによって、外部への漏れ磁束を低減することができる。上述したとおり、その周縁部の一部が非連続となっていてもよいが、好ましくはその周縁部のうちの半分以上の部分に磁性体の押さえ板が配置されるようにすることが好ましく、より好ましくは、その周縁部全体が連続であること(実施例5、6)が好ましい。
【符号の説明】
【0035】
1 押さえ板
2 後端軸受
3 アウトヨーク
4 アウトヨーク
5 励磁コイル
6 励磁コイル
7 インヨーク
8 インヨーク
9 マグネット
10 シャフト(回転軸)
11 ワッシャ
12 コイルバネ
13 ワッシャ
14 先端軸受
16 ステータ
17 ロータ
18 ワッシャ
21 押さえ板
30 シャフト