(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158123
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】端子矯正装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20241031BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B23K26/21 L
H01L23/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073062
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 駿
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA29
4E168BA87
4E168CB04
4E168CB07
4E168EA15
(57)【要約】
【課題】端子間のクリアランスを抑制し、安定したレーザ溶接品質を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【解決手段】端子矯正装置30は、各リード端子12と各外部端子13とを溶接するための溶接用レーザ21を照射するレーザヘッド32と、各リード端子12と各外部端子13との間のクリアランス24を計測するレーザ変位計31と、クリアランス24を抑制するために行われる、各リード端子12または各外部端子13の矯正に必要な変形量を算出し、変形量に応じた矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定する制御部33とを備えている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のリード端子を有するコアと前記コアの外周側に配置されかつ複数の外部端子を有するケース部とで構成された半導体装置の組み立て時に、レーザによって各前記リード端子と各前記外部端子とが溶接される端子構造に用いられる端子矯正装置であって、
各前記リード端子と各前記外部端子とを溶接するための前記レーザを照射するレーザヘッドと、
各前記リード端子と各前記外部端子との間のクリアランスを計測するレーザ変位計と、
前記クリアランスを抑制するために行われる、各前記リード端子または各前記外部端子の矯正に必要な変形量を算出し、前記変形量に応じた矯正用レーザの出力および照射時間を決定する制御部と、
を備える、端子矯正装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記矯正用レーザによる矯正後のスプリングバックを考慮した前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間を決定する、請求項1に記載の端子矯正装置。
【請求項3】
各前記リード端子と各前記外部端子とを溶接するための前記レーザと、前記矯正用レーザは、同一の前記レーザヘッドから照射される、請求項2に記載の端子矯正装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドは、前記矯正用レーザとして低出力レーザを複数点に対して照射する、請求項2に記載の端子矯正装置。
【請求項5】
複数のリード端子を有するコアと前記コアの外周側に配置されかつ複数の外部端子を有するケース部とで構成された半導体装置を製造する製造方法であって、
(A)各前記リード端子と各前記外部端子との間のクリアランスを計測する工程と、
(B)前記クリアランスを抑制するために行われる、各前記リード端子または各前記外部端子の矯正に必要な変形量を算出し、前記変形量に応じた矯正用レーザの出力および照射時間を決定する工程と、
(C)前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間に従って、各前記リード端子または各前記外部端子に対して前記矯正用レーザを照射する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記工程(C)では、前記矯正用レーザによる矯正後のスプリングバックを考慮した前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間を決定する、請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、端子矯正装置および半導体装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の電動化に合わせて、車両のキーパーツであるパワーモジュールの配線に使用されている銅接合の需要が増加している。それに伴い、銅に対する吸収率が高いブルーレーザでの溶接が注目されている。
【0003】
しかし、パワーモジュールの構造上、外部端子とリード部とを重ね合わせ溶接する場合に、外部端子とリード端子との間に公差に起因するクリアランスが発生する。レーザ溶接ではクリアランスが溶接品質に大きく影響するため、レーザ溶接前に端子間のクリアランスを抑制する必要がある。
【0004】
端子間のクリアランスを抑制する方法として、例えば、特許文献1には、レーザビーム照射位置において、被溶接体の裏面に形成された凸部を溶接体に接触させた状態で、重ね合わせ溶接を行う方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パワーモジュールは外部端子とリード端子とを共に複数有しており、複数の外部端子と複数のリード端子の各々が公差を持つため、外部端子とリード端子との間で異なる寸法を有するクリアランスが発生する。しかし、特許文献1に記載の技術では、被溶接体の裏面に形成された凸部の大きさは一定であり、異なる寸法を有するクリアランスを抑制することは難しかった。
【0007】
端子間にクリアランスがある状態でレーザ溶接を実施すると、クリアランスが0の場合と比べて、熱の伝わりが遅く十分な溶接面積を確保することができない。端子間を溶接することができた場合でも端子間にブリッジが発生する。パワーモジュールに対する振動などにより、ブリッジの根元部に応力がかかることでブリッジが破断し、端子間の溶接強度が低下するという問題があった。
【0008】
そこで、本開示は、端子間のクリアランスを抑制し、安定したレーザ溶接品質を実現することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係る端子矯正装置は、複数のリード端子を有するコアと前記コアの外周側に配置されかつ複数の外部端子を有するケース部とで構成された半導体装置の組み立て時に、レーザによって各前記リード端子と各前記外部端子とが溶接される端子構造に用いられる端子矯正装置であって、各前記リード端子と各前記外部端子とを溶接するための前記レーザを照射するレーザヘッドと、各前記リード端子と各前記外部端子との間のクリアランスを計測するレーザ変位計と、前記クリアランスを抑制するために行われる、各前記リード端子または各前記外部端子の矯正に必要な変形量を算出し、前記変形量に応じた矯正用レーザの出力および照射時間を決定する制御部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、各リード端子または各外部端子を矯正することで、端子間のクリアランスを抑制することができるため、安定したレーザ溶接品質を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態1における端子矯正装置の構成を示す正面図である。
【
図2】実施の形態1における端子矯正手順を示す断面図である。
【
図3】実施の形態1における端子矯正原理を示す断面図である。
【
図4】関連技術におけるパワーモジュールの斜視図である。
【
図7】関連技術におけるパワーモジュールの断面図である。
【
図8】関連技術における外部端子とリード端子との溶接時の状態を示す断面図である。
【
図9】関連技術におけるパワーモジュールの組み立て時に発生する端子間のクリアランスを示す断面図である。
【
図10】関連技術におけるパワーモジュールの組み立て時に端子間のクリアランスが発生した場合の溶接時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<関連技術>
<パワーモジュールの構成>
最初に、本開示の実施の形態の関連技術について説明する。
図4は、関連技術におけるパワーモジュール10の斜視図である。
図5は、関連技術におけるコア11の斜視図である。
図6は、関連技術におけるケース部14の斜視図である。
【0013】
図4において、X方向、Y方向およびZ方向は、互いに直交する。以下の図に示されるX方向、Y方向およびZ方向も、互いに直交する。以下においては、X方向と、当該X方向の反対の方向である-X方向とを含む方向を「X軸方向」ともいう。また、以下においては、Y方向と、当該Y方向の反対の方向である-Y方向とを含む方向を「Y軸方向」ともいう。また、以下においては、Z方向と、当該Z方向の反対の方向である-Z方向とを含む方向を「Z軸方向」ともいう。
【0014】
図4に示すように、パワーモジュール10(半導体装置)は、集積化されたパワー半導体チップ114(
図7参照)が樹脂でモールドされたコア11と、コア11の外周側に配置されたケース部14と、ベース15とを備えている。
【0015】
図4と
図5に示すように、コア11は、上方(Z方向)から視て矩形状に形成され、かつ、パワー半導体チップ114(
図7参照)と接続されている複数のリード端子12を備えている。複数のリード端子12は、6本のリード主端子121と10本のリード信号端子122とを含んでいる。3本のリード主端子121と5本のリード信号端子122が、コア11のX方向の側面からX方向へ突出し、同様に3本のリード主端子121と5本のリード信号端子122が、コア11の-X方向の側面から-X方向へ突出している。
【0016】
図4と
図6に示すように、ケース部14は、上方(Z方向)から視て矩形枠状に形成され、かつ、外部機器(図示しない)と接続される複数の外部端子13を備えている。複数の外部端子13は、6本の外部主端子131と10本の外部信号端子132とを含んでいる。3本の外部主端子131と5本の外部信号端子132が、ケース部14のX方向の側壁からX軸方向へ突出し、同様に3本の外部主端子131と5本の外部信号端子132が、ケース部14の-X方向の側壁からX軸方向へ突出している。各外部主端子131は、各リード主端子121と接続され、各外部信号端子132は、各リード信号端子122と接続されている。
【0017】
ベース15は、上方(Z方向)から視て矩形状に形成され、ベース15の表面(Z方向の面)には、コア11とケース部14がはんだにより固定されている。
【0018】
次に、パワーモジュール10の内部構造について説明する。
図7は、関連技術におけるパワーモジュール10の断面図である。
図7に示すように、コア11は、コアベース板111と、絶縁シート112と、ヒートスプレッダ113と、パワー半導体チップ114と、リード主端子121と、リード信号端子122とを備えており、これらはモールド樹脂115によって封止されている。パワー半導体チップ114は、ヒートスプレッダ113にはんだ付けされており、リード主端子121は、パワー半導体チップ114と直接はんだ接合するDLB(Direct Lead Bond)技術を用いて、パワー半導体チップ114と接続されている。リード信号端子122は、ワイヤ116によってパワー半導体チップ114と接続されている。
【0019】
<パワーモジュールの組み立て>
次に、パワーモジュール10の組み立て手順について説明する。まず、ベース15の表面(Z方向の面)にコア11を配置し、ベース15の表面(Z方向の面)とコア11の底面(-Z方向の面)とをはんだ117により固定する。このとき、コア11はベース15の基準位置に配置されている。その後、複数の外部端子13を有するケース部14をコア11に対して上方(Z方向)からかぶせるように配置する。このとき、ケース部14もベース15の基準位置に配置されている。ケース部14を配置した状態で、各リード端子12と各外部端子13は重なり合っている。次に、レーザを用いて各リード端子12と各外部端子13とを溶接する。
【0020】
<リード端子と外部端子のレーザ溶接>
次に、各リード端子12と各外部端子13とのレーザ溶接について説明する。
図8は、関連技術における外部端子13とリード端子12との溶接時の状態を示す断面図である。
図9は、関連技術におけるパワーモジュール10の組み立て時に発生する端子間のクリアランス24を示す断面図である。
図10は、関連技術におけるパワーモジュール10の組み立て時に端子間のクリアランス24が発生した場合の溶接時の状態を示す断面図である。
【0021】
図8に示すように、外部端子13はリード端子12よりも上側(Z方向)に位置している。外部端子13とリード端子12は共に直線状に形成されており、互いに平行である。また、
図8には示されていないが、外部端子13とリード端子12のうちの外部主端子131とリード主端子121、外部信号端子132とリード信号端子122が重なり合っている。
【0022】
溶接用レーザ21は、外部端子13の上方(Z方向)から、外部端子13とリード端子12が重なり合っている部分に対して照射される。このとき、溶接用レーザ21によって外部端子13が先に溶融し、その後、溶接用レーザ21がリード端子12まで到達することでリード端子12が溶融する。溶接用レーザ21の照射が止まる、または走査することにより、溶接用レーザ21が照射された部分であるレーザ照射部22が冷却され、溶接部23が形成されることにより、リード端子12と外部端子13が溶接される。
【0023】
次に、
図9に示すように、外部端子13とリード端子12との間、つまり、端子間のクリアランス24が発生した場合を考える。パワーモジュール10は外部端子13とリード端子12とを共に複数有しており、複数の外部端子13と複数のリード端子12の各々が公差を持つため、外部端子13とリード端子12との間で異なる寸法を有するクリアランス24が発生する。
【0024】
端子間のクリアランス24が発生した場合、
図10に示すように、溶接部としてブリッジ25が形成される可能性がある。ブリッジ25が形成された場合、パワーモジュール10に対する振動、またはケース部14の膨張などにより、ブリッジ25の根元部に応力がかかることでブリッジ25が破断し、端子間の溶接強度が低下するという問題があった。実施の形態では、このような問題を解決するためになされたものであり、以下に詳細に説明する。
【0025】
<実施の形態1>
<端子矯正装置の構成>
実施の形態1について、図面を用いて以下に説明する。
図1は、実施の形態1における端子矯正装置30の構成を示す正面図である。
【0026】
次に、端子矯正装置30の構成について説明する。端子矯正装置30は、パワーモジュール10の組み立て時に、溶接用レーザ21によって各リード端子12と各外部端子13とが溶接される前に各リード端子12の矯正に用いられる。
【0027】
図1に示すように、端子矯正装置30は、レーザ変位計31と、レーザヘッド32と、制御部33と、ステージ34とを備えている。
【0028】
レーザヘッド32は、各リード端子12と各外部端子13とを溶接するための溶接用レーザ21(
図8参照)を照射する。ここで、各リード端子12と各外部端子13の材料として、例えば、銅(Cu)が採用される。また、レーザヘッド32は、出力の制御が可能であり、溶接用レーザ21だけでなく、各リード端子12を矯正するための矯正用レーザ36(
図2(c)参照)を照射することが可能である。つまり、溶接用レーザ21と矯正用レーザ36は、同一のレーザヘッド32から照射される。なお、レーザヘッド32として、ガルバノスキャナまたは固定光学系のどちらも採用可能である。
【0029】
レーザ変位計31は、各リード端子12と各外部端子13の高さ位置を計測し、各リード端子12と各外部端子13とのクリアランス24(
図9参照)を計測する。
【0030】
ステージ34は、表面(Z方向の面)上にワークであるパワーモジュール10、具体的には、コア11またはケース部14を載置し、コア11またはケース部14をX軸方向およびY軸方向に移動させる。
【0031】
制御部33は、レーザヘッド32、レーザ変位計31、およびステージ34を制御する。また、制御部33は、クリアランス24を抑制するために行われる、各リード端子12の矯正に必要な変形量を算出し、変形量に応じた矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定する。このとき、制御部33は、矯正用レーザ36による矯正後のスプリングバックを考慮した矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定する。
【0032】
なお、ステージ34は、パワーモジュール10を水平方向(X軸方向およびY軸方向)だけでなく、レーザヘッド32側(Z軸方向)に移動させてもよい。また、レーザ変位計31はレーザヘッド32と同軸に配置されてもよく、レーザ変位計31は計測用レーザ35(
図2(a)参照)を矯正用レーザ36と同軸で照射してもよい。
【0033】
<端子矯正装置の動作>
次に、
図2(a)~(c)と
図3(a),(b)を用いて、端子矯正装置30の動作について説明する。
図2(a)~(c)は、実施の形態1における端子矯正手順を示す断面図である。
図3(a),(b)は、実施の形態1における端子矯正原理を示す断面図である。
【0034】
まず、
図2(a),(b)に示すように、レーザ変位計31は、計測用レーザ35を照射し、ベース15に接合されたコア11の各リード端子12と、ケース部14の各外部端子13の高さ位置を計測し、各リード端子12と各外部端子13の高さ位置から、各リード端子12と各外部端子13との間のクリアランス24(
図9参照)を計測する。
【0035】
次に、制御部33は、各リード端子12の矯正に必要な変形量を算出し、変形量に応じた矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定する。このとき、矯正後のスプリングバックを考慮した矯正用レーザ36の出力および照射時間が決定される。
【0036】
次に、
図2(c)に示すように、レーザヘッド32は、制御部33により決定された矯正用レーザ36の出力および照射時間に基づいて、矯正用レーザ36を1回照射する。換言すると、レーザヘッド32は、矯正用レーザ36を1点(1箇所)に照射する。なお、
図2(c)では、矯正用レーザ36照射前のリード端子12を2点鎖線で示し、照射後のリード端子12を実線で示している。
【0037】
次に、端子矯正原理について説明する。
図3(a)に示すように、矯正用レーザ36が照射されることにより、各リード端子12において熱が集中するエリア41が発生し、それに伴い熱膨張42が発生する。その結果、各リード端子12は、下側(-Z方向)に変形する。さらに、熱膨張42が発生した部分の周辺の低温部から圧縮応力43がかかることにより、一部で圧縮塑性歪が発生する。なお、
図3(a)では、矯正用レーザ36照射前のリード端子12を2点鎖線で示し、照射後のリード端子12を実線で示している。
【0038】
図3(b)に示すように、矯正用レーザ36の照射が終了すると、急激な放熱による温度変化に伴い、矯正用レーザ36の照射位置であるエリア41を中心に収縮する。このとき、矯正用レーザ36の照射時に発生した圧縮塑性歪は元に戻らないため、各リード端子12は、矯正用レーザ36の照射前よりも上側(Z方向)に変形する。なお、
図3(b)では、変形前のリード端子12を2点鎖線で示し、変形後のリード端子12を実線で示している。
【0039】
なお、上記では、各リード端子12の矯正を行うとして説明したが、各リード端子12に代えて各外部端子13の矯正を行うことも可能である。各外部端子13の矯正を行う場合については、各リード端子12の矯正を行う場合と同様の動作となるため、説明は省略する。
【0040】
<効果>
以上のように、実施の形態1では、端子矯正装置30は、各リード端子12と各外部端子13とを溶接するための溶接用レーザ21を照射するレーザヘッド32と、各リード端子12と各外部端子13との間のクリアランス24を計測するレーザ変位計31と、クリアランス24を抑制するために行われる、各リード端子12または各外部端子13の矯正に必要な変形量を算出し、変形量に応じた矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定する制御部33とを備えている。
【0041】
したがって、各リード端子12または各外部端子13を矯正することで、端子間のクリアランス24を抑制することができるため、安定したレーザ溶接品質を実現することができる。
【0042】
また、レーザヘッド32を用いた矯正のため、治工具を用いた矯正を行う場合と比べて作業の高速化が可能となる。
【0043】
また、制御部33は、矯正用レーザ36による矯正後のスプリングバックを考慮した矯正用レーザ36の出力および照射時間を決定するため、さらに精度の高い矯正を行うことが可能となる。
【0044】
また、各リード端子12と各外部端子13とを溶接するための溶接用レーザ21と、矯正用レーザ36は、同一のレーザヘッド32から照射されるため、矯正位置と溶接用レーザ21の照射位置とが一致する。これにより、さらに安定した、各リード端子12と各外部端子13との溶接が可能となる。
【0045】
また、各リード端子12に代えて各外部端子13の矯正を行うことができるため、仮にパワーモジュール10のコア11の構造が複雑な形状であり、リード端子12に対して矯正用レーザ36の照射が困難の場合でも、クリアランス24の抑制が可能となる。
【0046】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2について説明する。なお、実施の形態2において、実施の形態1で説明したものと同一の構成要素については同一符号を付して説明は省略する。
【0047】
実施の形態1では、矯正用レーザ36を1点(1箇所)に照射して矯正を行っているのに対して、実施の形態2では、実施の形態1の場合よりも低出力の矯正用レーザ36を複数点(複数の異なる位置)に照射して矯正を行っている。つまり、1点(1箇所)当たりの矯正用レーザ36の照射時間を短くしている。
【0048】
<効果>
以上のように、実施の形態2では、レーザヘッド32は、矯正用レーザ36として低出力レーザを複数点に対して照射するため、実施の形態1の場合と比べて、矯正用レーザ36の照射位置周辺への熱影響が抑えられる。その結果、実施の形態1の場合よりも局所的な矯正が可能であり、複雑な端子形状に対しても対応可能である。
【0049】
なお、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0050】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0051】
(付記1)
複数のリード端子を有するコアと前記コアの外周側に配置されかつ複数の外部端子を有するケース部とで構成された半導体装置の組み立て時に、レーザによって各前記リード端子と各前記外部端子とが溶接される端子構造に用いられる端子矯正装置であって、
各前記リード端子と各前記外部端子とを溶接するための前記レーザを照射するレーザヘッドと、
各前記リード端子と各前記外部端子との間のクリアランスを計測するレーザ変位計と、
前記クリアランスを抑制するために行われる、各前記リード端子または各前記外部端子の矯正に必要な変形量を算出し、前記変形量に応じた矯正用レーザの出力および照射時間を決定する制御部と、
を備える、端子矯正装置。
【0052】
(付記2)
前記制御部は、前記矯正用レーザによる矯正後のスプリングバックを考慮した前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間を決定する、付記1に記載の端子矯正装置。
【0053】
(付記3)
各前記リード端子と各前記外部端子とを溶接するための前記レーザと、前記矯正用レーザは、同一の前記レーザヘッドから照射される、付記1または付記2に記載の端子矯正装置。
【0054】
(付記4)
前記レーザヘッドは、前記矯正用レーザとして低出力レーザを複数点に対して照射する、付記1から付記3のいずれか1項に記載の端子矯正装置。
【0055】
(付記5)
複数のリード端子を有するコアと前記コアの外周側に配置されかつ複数の外部端子を有するケース部とで構成された半導体装置を製造する製造方法であって、
(A)各前記リード端子と各前記外部端子との間のクリアランスを計測する工程と、
(B)前記クリアランスを抑制するために行われる、各前記リード端子または各前記外部端子の矯正に必要な変形量を算出し、前記変形量に応じた矯正用レーザの出力および照射時間を決定する工程と、
(C)前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間に従って、各前記リード端子または各前記外部端子に対して前記矯正用レーザを照射する工程と、
を備える、半導体装置の製造方法。
【0056】
(付記6)
前記工程(C)では、前記矯正用レーザによる矯正後のスプリングバックを考慮した前記矯正用レーザの前記出力および前記照射時間を決定する、付記5に記載の半導体装置の製造方法。
【符号の説明】
【0057】
10 パワーモジュール、11 コア、12 リード端子、13 外部端子、14 ケース部、21 溶接用レーザ、24 クリアランス、30 端子矯正装置、31 レーザ変位計、32 レーザヘッド、33 制御部、36 矯正用レーザ。