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特開2024-158126障害物検知装置、電動シャッター、障害物検知方法、及び障害物検知プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158126
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】障害物検知装置、電動シャッター、障害物検知方法、及び障害物検知プログラム
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/84 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
E06B9/84 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073065
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬郡 匠汰
【テーマコード(参考)】
2E042
【Fターム(参考)】
2E042AA01
2E042CA01
2E042CB06
2E042CC10
(57)【要約】
【課題】種々のシャッターを採用した場合であっても、障害物を精度良く検知すること。
【解決手段】障害物検知装置100は、建物の開口部を開閉するシャッター2の動作の障害となる障害物を検知する。この障害物検知装置100は、シャッター2を動作させるモーター3に流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得部44と、モーター電流値を示す第1の電流値に対する第1の電流値に基づくモーター電流値よりも前に取得されたモーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部44と、第2の電流値に対する第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部44と、電流差及び電流比に基づいて、障害物の有無を判定する判定部44とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の開口部を開閉するシャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置であって、
前記シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、
前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、
前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、
前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備える
ことを特徴とする障害物検知装置。
【請求項2】
前記第1の電流値及び前記第2の電流値は、
前記モーター電流値の移動平均値である
ことを特徴とする請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項3】
前記判定部は、
前記電流差が第1の閾値以上となった場合、または、前記電流比が第2の閾値以上となった場合に、前記障害物があると判定し、
前記電流差が前記第1の閾値未満であり、かつ、前記電流比が前記第2の閾値未満である場合に、前記障害物がないと判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の障害物検知装置。
【請求項4】
前記第1の閾値は、
前記障害物によって第1の重量である前記シャッターの動作に障害があった場合での前記電流差を基準として設定された閾値であり、
前記第2の閾値は、
前記障害物によって前記第1の重量よりも小さい第2の重量である前記シャッターの動作に障害があった場合での前記電流比を基準として設定された閾値である
ことを特徴とする請求項3に記載の障害物検知装置。
【請求項5】
建物の開口部を開閉するシャッターと、
前記シャッターを動作させるモーターと、
前記モーターに流れる電流のモーター電流値を検出する電流検出部と、
前記シャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置とを備え、
前記障害物検知装置は、
前記モーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、
前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、
前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、
前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備える
ことを特徴とする電動シャッター。
【請求項6】
障害物検知装置のプロセッサが実行する障害物検知方法であって、
前記プロセッサは、
シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、
前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、
前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、
前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行する
ことを特徴とする障害物検知方法。
【請求項7】
障害物検知装置のプロセッサに実行させる障害物検知プログラムであって、
前記障害物検知プログラムは、
前記プロセッサに、
シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、
前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、
前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、
前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行させる
ことを特徴とする障害物検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の開口部を開閉するシャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置、電動シャッター、障害物検知方法、及び障害物検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値に基づいて、当該モーターにおけるトルク-電流特性を利用して、当該シャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の障害物検知装置は、モーターに流れる電流のモーター電流値と特定の閾値とを比較し、当該モーター電流値が当該閾値を超えた場合に、シャッターの動作の障害となる障害物が存在する(シャッターに障害物が挟まれた)と判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-194973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、シャッターとしては、重量の異なる種々のシャッターが存在する。このため、特許文献1に記載の障害物検知装置では、採用するシャッターの重量によっては、障害物を検知し難い場合がある。障害物の検知に用いる閾値を低く設定することで、当該検知をし易くすることも考えられるが、採用するシャッターによっては、当該シャッターの通常の開閉動作の中での負荷の変化で障害物が存在すると誤検知し易くなってしまう。
そこで、種々のシャッターを採用した場合であっても、障害物を精度良く検知することができる技術が要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、種々のシャッターを採用した場合であっても、障害物を精度良く検知することができる障害物検知装置、電動シャッター、障害物検知方法、及び障害物検知プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る障害物検知装置は、建物の開口部を開閉するシャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置であって、前記シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る電動シャッターは、建物の開口部を開閉するシャッターと、前記シャッターを動作させるモーターと、前記モーターに流れる電流のモーター電流値を検出する電流検出部と、前記シャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置とを備え、前記障害物検知装置は、前記モーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る障害物検知方法は、障害物検知装置のプロセッサが実行する障害物検知方法であって、前記プロセッサは、シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る障害物検知プログラムは、障害物検知装置のプロセッサに実行させる障害物検知プログラムであって、前記障害物検知プログラムは、前記プロセッサに、シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る障害物検知装置、電動シャッター、障害物検知方法、及び障害物検知プログラムによれば、種々のシャッターを作用した場合であっても、障害物を精度良く検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る電動シャッターを説明する図である。
図2】実施の形態に係る電動シャッターを説明する図である。
図3】電動シャッターの動作を示すフローチャートである。
図4】第1,第2の閾値情報を説明する図である。
図5】第1,第2の閾値情報を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態)について説明する。なお、以下に説明する実施の形態によって本発明が限定されるものではない。さらに、図面の記載において、同一の部分には同一の符号を付している。
【0013】
〔電動シャッターの概略構成〕
図1及び図2は、実施の形態に係る電動シャッター1を説明する図である。具体的に、図1は、電動シャッター1を室外側から見た図である。図2は、電動シャッター1の構成を示すブロック図である。
電動シャッター1は、シャッター2と、モーター3と、制御装置4と、リモートコントローラー5とを備える。
以下では、説明の便宜上、リモートコントローラー5をリモコン5と記載する。
【0014】
シャッター2は、建物の開口部を開閉する。このシャッター2は、左右方向にそれぞれ延在する長尺状のシャッタースラット21が上下方向に沿って互いに連結され、建物の開口部の左右両側に設けられた2つのガイドレールGRに沿って上下方向の移動が案内される。そして、シャッター2は、建物の開口部の上方側に設けられたシャッターボックスBX内の巻取軸(図示略)に巻き取られる、または、当該巻取軸から繰り出されることで、当該開口部を開閉する。
【0015】
モーター3は、シャッター2を動作させるモーターである。本実施の形態では、モーター3は、DCモーターによって構成されている。なお、モーター3としては、DCモーターに限らず、ACモーターによって構成しても構わない。
【0016】
制御装置4は、モーター3の動作を制御する。この制御装置4は、電流検出部41と、操作信号受信部42と、記憶部43と、プロセッサ44とを備える。
【0017】
電流検出部41は、モーター3に流れる電流のモーター電流値を検出する。そして、電流検出部41は、検出したモーター電流値に応じた信号をプロセッサ44に出力する。
【0018】
ここで、リモコン5は、ユーザ操作を受け付け、シャッター2を動作させるための操作デバイスである。そして、リモコン5は、当該ユーザ操作に応じた操作信号を制御装置4に送信する。
【0019】
操作信号受信部42は、リモコン5との間で通信可能に接続し、当該リモコン5から送信された操作信号を受信する。なお、操作信号受信部42とリモコン5との間の通信としては、無線通信でもよく、あるいは、有線通信でも構わない。
【0020】
記憶部43は、プロセッサ44が実行する各種のプログラム(本発明に係る障害物検知プログラムを含む)の他、当該プロセッサ44が処理を行う時に必要な情報(データ)等を記憶する。当該プロセッサ44が処理を行う時に必要な情報としては、第1,第2の閾値情報を例示することができる。
【0021】
なお、第1,第2の閾値情報の詳細については、後述する「第1,第2の閾値情報について」において説明する。
【0022】
プロセッサ44は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のコントローラーによって、記憶部43に記憶された各種のプログラムが実行されることにより実現され、電動シャッター1全体の動作を制御する。なお、プロセッサ44としては、CPUやMPUに限らず、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路によって構成されても構わない。このプロセッサ44は、本発明に係るモーター電流値取得部、差算出部、比算出部、及び判定部としての機能を有する。
なお、プロセッサ44のモーター電流値取得部、差算出部、比算出部、及び判定部としての機能の詳細については、後述する「電動シャッターの動作」において説明する。
【0023】
以上説明したプロセッサ44及び記憶部43は、本発明に係る障害物検知装置100に相当する。
【0024】
〔電動シャッターの動作〕
次に、上述した電動シャッター1の動作について説明する。
図3は、電動シャッター1の動作を示すフローチャートである。
なお、以下では、電動シャッター1の動作として、シャッター2が全開状態から全閉状態へと下降動作を行う際に、当該シャッター2の下降動作の障害となる障害物の有無(シャッター2に障害物が挟まれたか否か)を判定する障害物検知方法を主に説明する。
ここで、上述したシャッター2の全開状態とは、当該シャッター2が建物の開口部を全て開放する上限位置に位置した状態を意味する。また、上述したシャッター2の全閉状態とは、当該シャッター2が建物の開口部を全て閉塞する下限位置に位置した状態を意味する。
【0025】
先ず、プロセッサ44は、ユーザによるリモコン5へのシャッター2を全閉状態に設定する旨のユーザ操作に応じた操作信号を当該リモコン5から操作信号受信部42を介して受信したか否かを常時、監視する(ステップS1)。
【0026】
操作信号を受信したと判定した場合(ステップS1:Yes)には、プロセッサ44は、モーター3の動作を制御し、シャッター2の全閉状態への下降動作を開始させる(ステップS2)。
【0027】
また、プロセッサ44は、シャッター2の下降動作の開始と同時に、電流検出部41にて検出されたモーター電流値の取得を開始する(ステップS3:モーター電流値取得ステップ)。本実施の形態では、プロセッサ44は、1ms毎に、モーター電流値を取得する。なお、プロセッサ44がモーター電流値を取得する周期は、1msに限らず、その他の周期でも構わない。そして、プロセッサ44は、取得したモーター電流値を順次、記憶部43に記憶させる。すなわち、プロセッサ44は、本発明に係るモーター電流値取得部としての機能を有する。
【0028】
ステップS3の後、プロセッサ44は、記憶部43に記憶された複数のモーター電流値に基づいて、移動平均値を算出する(ステップS4)。本実施の形態では、プロセッサ44は、100ms毎にモーター電流値の平均値I及び移動平均値Imaを算出する。具体的に、プロセッサ44は、現時点で算出した平均値Iと、100ms前に算出した平均値Ia-1との和を2で割った値を移動平均値Imaとして算出する。なお、プロセッサ44が平均値I及び移動平均値Imaを算出する周期は、100msに限らず、その他の周期でも構わない。そして、プロセッサ44は、算出した移動平均値Imaを記憶部43に記憶させる。
【0029】
ステップS4の後、プロセッサ44は、当該ステップS4にて算出した移動平均値(以下、第1の移動平均値と記載)に対する当該第1の移動平均値の算出よりも前に算出した移動平均値(以下、第2の移動平均値と記載)の差である電流差を算出する(ステップS5:差算出ステップ)。本実施の形態では、プロセッサ44は、100ms毎に、現時点で算出した第1の移動平均値Imaに対する300ms前に算出した第2の移動平均値Ima-3の差を電流差として算出する。なお、プロセッサ44が電流差を算出する周期は、100msに限らず、その他の周期でも構わない。また、第2の移動平均値についても、300ms前に算出した移動平均値Ima-3に限らず、現時点で算出した第1の移動平均値Imaよりも前に算出した移動平均値であれば、その他の移動平均値を採用しても構わない。ここで、第1の移動平均値は、本発明に係る第1の電流値に相当する。また、第2の移動平均値は、本発明に係る第2の電流値に相当する。すなわち、プロセッサ44は、差算出部としての機能を有する。
【0030】
また、プロセッサ44は、ステップS5と同時に、第2の移動平均値に対する第1の移動平均値の比である電流比を算出する(ステップS6:比算出ステップ)。本実施の形態では、プロセッサ44は、100ms毎に、現時点よりも300ms前に算出した第2の移動平均値Ima-3に対する現時点で算出した第1の移動平均値Imaの比を電流比として算出する。なお、プロセッサ44が電流比を算出する周期は、電流差を算出する周期と同一であれば、100msに限らず、その他の周期でも構わない。また、第2の移動平均値についても、300ms前に算出した移動平均値Ima-3に限らず、現時点で算出した第1の移動平均値Imaよりも前に算出した移動平均値であれば、その他の移動平均値を採用しても構わない。すなわち、プロセッサ44は、比算出部としての機能を有する。
【0031】
ステップS5,S6の後、プロセッサ44は、記憶部43に記憶された第1の閾値情報を参照し、ステップS5にて算出した電流差が当該第1の閾値情報に基づく第1の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS7)。
【0032】
電流差が第1の閾値以上であると判定した場合(ステップS7:Yes)には、プロセッサ44は、ステップS9に移行する。
一方、電流差が第1の閾値未満であると判定した場合(ステップS7:No)には、プロセッサ44は、記憶部43に記憶された第2の閾値情報を参照し、ステップS6にて算出した電流比が当該第2の閾値情報に基づく第2の閾値以上であるか否かを判定する(ステップS8)。
【0033】
電流比が第2の閾値以上であると判定した場合(ステップS8:Yes)には、プロセッサ44は、ステップS9に移行する。
一方、電流比が第2の閾値未満であると判定した場合(ステップS8:No)には、プロセッサ44は、ステップS4に戻る。
【0034】
電流差が第1の閾値以上であると判定した場合(ステップS7:Yes)、または、電流比が第2の閾値以上であると判定した場合(ステップS8:Yes)には、プロセッサ44は、モーター3の動作を制御し、シャッター2の下降動作を停止する(ステップS9)。
【0035】
ステップS9の後、プロセッサ44は、モーター3の動作を制御し、シャッター2を上限位置まで上昇動作させる(ステップS10)。すなわち、プロセッサ44は、電流差が第1の閾値以上であると判定した場合(ステップS7:Yes)、または、電流比が第2の閾値以上であると判定した場合(ステップS8:Yes)には、障害物が存在する(シャッター2が障害物を挟んだ)と判定し、ステップS9,10を実行する。この後、プロセッサ44は、本制御フローを終了する。
【0036】
以上説明したステップS7,S8は、本発明に係る判定ステップに相当する。すなわち、プロセッサ44は、本発明に係る判定部としての機能を有する。
【0037】
〔第1,第2の閾値情報について〕
図4及び図5は、第1,第2の閾値情報を説明する図である。具体的に、図4及び図5は、縦軸を電流差及び電流比とし、横軸を時間としたグラフであって、シャッター2を全開状態から下降動作させた場合の電流差及び電流比の挙動を示している。なお、図4及び図5において、時間T1は、シャッター2が障害物を挟んだタイミングである。また、図4及び図5において、一点鎖線で示した曲線L1は、電流差の挙動である。一方、実線で示した曲線L2は、電流比の挙動である。ここで、図4は、シャッター2として第1のサイズ(第1の重量)のシャッターを採用した場合での電流差及び電流比の挙動を示している。一方、図5は、シャッター2として第1のサイズ(第1の重量)よりも小さい第2のサイズ(第1の重量よりも小さい第2の重量)のシャッターを採用した場合での電流差及び電流比の挙動を示している。
次に、第1,第2の閾値情報について説明する。
【0038】
ところで、シャッター2を動作させる時のモーター電流値は、当該シャッター2のサイズ(重量)が大きいほど、大きくなる。また、シャッター2が障害物を挟んだ時の電流差は、図4及び図5を比較して分かるように、当該シャッター2のサイズ(重量)が大きいほど、大きくなる。一方、シャッター2が障害物を挟んだ時の電流比は、図4及び図5を比較して分かるように、当該シャッター2のサイズ(重量)が小さいほど、大きくなる。
【0039】
そして、障害物を検知するための閾値を電流差だけで設定する場合には、以下の問題が生じる虞がある。
すなわち、第1,第2のサイズ(第1,第2の重量)のシャッター2の双方で障害物を検知可能とするためには、第2のサイズ(第2の重量)のシャッター2が障害物を挟んだ時の電流差を基準として閾値(第1の閾値Th1)を設定する必要がある。しかしながら、第1のサイズ(第1の重量)のシャッター2を採用した場合において、当該シャッター2には第1の閾値Th1が比較的に低いため、当該シャッター2の通常の開閉動作の中での負荷の変化で障害物が存在すると誤検知し易くなってしまう。
【0040】
同様に、障害物を検知するための閾値を電流比だけで設定する場合には、以下の問題が生じる虞がある。
すなわち、第1,第2のサイズ(第1,第2の重量)のシャッター2の双方で障害物を検知可能とするためには、第1のサイズ(第1の重量)のシャッター2が障害物を挟んだ時の電流比を基準として閾値(第2の閾値Th2)を設定する必要がある。しかしながら、第2のサイズ(第2の重量)のシャッター2を採用した場合において、当該シャッター2には第2の閾値Th2が比較的に低いため、当該シャッター2の通常の開閉動作の中での負荷の変化で障害物が存在すると誤検知し易くなってしまう。
【0041】
そこで、本実施の形態では、電流差を示す第1の閾値と、電流比を示す第2の閾値との2つの閾値を用いている。
具体的に、第1の閾値情報に基づく第1の閾値は、第1のサイズ(第1の重量)のシャッター2が障害物を挟んだ時の電流差を基準として設定された閾値である。
一方、第2の閾値情報に基づく第2の閾値は、第2のサイズ(第2の重量)のシャッター2が障害物を挟んだ時の電流比を基準として設定された閾値である。
【0042】
(その他の実施形態)
ここまで、本発明を実施するための形態を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態によってのみ限定されるべきものではない。
上述した実施の形態において、本発明に係る第1,第2の電流値として、モーター電流値の移動平均値を採用していたが、これに限らない。モーター電流値自体、あるいは、モーター電流値の平均値を本発明に係る第1,第2の電流値として採用しても構わない。
【0043】
上述した実施の形態で説明したフローは、図3のフローに限らず、矛盾のない範囲で順序を変更しても構わない。
【0044】
本発明に係る障害物検知装置は、建物の開口部を開閉するシャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置であって、前記シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
【0045】
本発明では、障害物検知装置は、第1の電流値に対する第2の電流値の差である電流差と、当該第2の電流値に対する当該第1の電流値の比である電流比との双方に基づいて、障害物の有無を判定する。
したがって、本発明に係る障害物検知装置によれば、重量の異なる種々のシャッターに対して共通に用いられるモーターにおけるトルク-電流特性を考慮し、当該種々のシャッターを採用した場合であっても、障害物を精度良く検知することができる。
【0046】
また、本発明では、上述した障害物検知装置において、前記第1の電流値及び前記第2の電流値は、前記モーター電流値の移動平均値であることを特徴とする。
【0047】
ところで、第1,第2の電流値としてモーター電流値自体を用いた場合には、当該モーター電流値自体の変動が大きいため、障害物を誤検知する虞がある。
本発明では、障害物検知装置は、モーター電流値の移動平均値を第1,第2の電流値とする。このため、モーター電流値自体の変動を滑らかにした移動平均値に用いて障害物を検知することができるため、当該障害物の誤検知を抑制することができる。
【0048】
また、本発明では、上述した障害物検知装置において、前記判定部は、前記電流差が第1の閾値以上となった場合、または、前記電流比が第2の閾値以上となった場合に、前記障害物があると判定し、前記電流差が前記第1の閾値未満であり、かつ、前記電流比が前記第2の閾値未満である場合に、前記障害物がないと判定することを特徴とする。
【0049】
本発明では、障害物検知装置は、上述したように、障害物の有無を判定する。このため、障害物の有無の判定を容易に行うことができ、障害物検知装置のプロセッサの処理負荷を軽減することができる。
【0050】
また、本発明では、上述した障害物検知装置において、前記第1の閾値は、前記障害物によって第1の重量である前記シャッターの動作に障害があった場合での前記電流差を基準として設定された閾値であり、前記第2の閾値は、前記障害物によって前記第1の重量よりも小さい第2の重量である前記シャッターの動作に障害があった場合での前記電流比を基準として設定された閾値であることを特徴とする。
【0051】
本発明では、第1,第2の閾値は、上述したように設定されている。このため、重量の異なる種々のシャッターに対して共通に用いられるモーターにおけるトルク-電流特性を考慮した適切な第1,第2の閾値を設定することができる。すなわち、第1,第2の閾値を用いて障害物の有無を判定すれば、当該障害物を精度良く検知することができる。
【0052】
本発明に係る電動シャッターは、建物の開口部を開閉するシャッターと、前記シャッターを動作させるモーターと、前記モーターに流れる電流のモーター電流値を検出する電流検出部と、前記シャッターの動作の障害となる障害物を検知する障害物検知装置とを備え、前記障害物検知装置は、前記モーター電流値を取得するモーター電流値取得部と、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出部と、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出部と、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記障害物の有無を判定する判定部とを備えることを特徴とする。
本発明に係る電動シャッターは、上述した障害物検知装置を備えるため、上述した障害物検知装置と同様の作用及び効果を奏する。
【0053】
本発明に係る障害物検知方法は、障害物検知装置のプロセッサが実行する障害物検知方法であって、前記プロセッサは、シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行することを特徴とする。
本発明に係る障害物検知方法は、上述した障害物検知装置のプロセッサが実行する方法であるため、上述した障害物検知装置と同様の作用及び効果を奏する。
【0054】
本発明に係る障害物検知プログラムは、障害物検知装置のプロセッサに実行させる障害物検知プログラムであって、前記障害物検知プログラムは、前記プロセッサに、シャッターを動作させるモーターに流れる電流のモーター電流値を取得するモーター電流値取得ステップと、前記モーター電流値を示す第1の電流値に対する前記第1の電流値に基づく前記モーター電流値よりも前に取得された前記モーター電流値を示す第2の電流値の差である電流差を算出する差算出ステップと、前記第2の電流値に対する前記第1の電流値の比である電流比を算出する比算出ステップと、前記電流差及び前記電流比に基づいて、前記シャッターの動作の障害となる障害物の有無を判定する判定ステップとを実行させることを特徴とする。
本発明に係る障害物検知プログラムは、上述した障害物検知方法を上述した障害物検知装置のプロセッサに実行させるプログラムであるため、上述した障害物検知装置と同様の作用及び効果を奏する。
【符号の説明】
【0055】
1 電動シャッター、2 シャッター、3 モーター、41 電流検出部、44 プロセッサ(モーター電流値取得部、差算出部、比算出部、判定部)、100 障害物検知装置、Th1 第1の閾値、Th2 第2の閾値
図1
図2
図3
図4
図5