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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158127
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/47 20210101AFI20241031BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20241031BHJP
   B33Y 40/20 20200101ALI20241031BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20241031BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20241031BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20241031BHJP
   B22F 10/18 20210101ALI20241031BHJP
【FI】
B22F10/47
B33Y10/00
B33Y40/20
B33Y70/00
B22F10/64
B28B1/30
B22F10/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073067
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 茂
【テーマコード(参考)】
4G052
4K018
【Fターム(参考)】
4G052DA02
4G052DB12
4G052DC06
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】三次元造形物からサポート層を除去する負担を軽減可能な技術を提供する。
【解決手段】ステージに材料を吐出して層を積層することで、造形物を造形すると共に、造形物を支持するためのサポート領域の少なくとも一部にサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。サポート領域は、第1サポート領域、第1サポート領域に隣り合う第2サポート領域、及び、第3サポート領域を有し、この製造方法は、第1工程であって、第1サポート領域に、第1造形条件で第1サポート構造を造形し、第2サポート領域に、第2造形条件で第2サポート構造を造形する、又は、材料を吐出しないで空間を形成する、第1工程と、サポート構造を、造形物から分離する第2工程と、を有し、第3サポート領域は、第2サポート領域と造形物との間に位置し、第1造形条件及び第2造形条件は、互いに異なる造形条件である。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージに材料を吐出して層を積層することで、造形物を造形すると共に、前記造形物を支持するためのサポート領域の少なくとも一部にサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法であって、
前記サポート領域は、第1サポート領域、前記第1サポート領域に隣り合う第2サポート領域、及び、第3サポート領域を有し、
第1工程であって、
前記第1サポート領域に、第1造形条件で第1サポート構造を造形し、
前記第2サポート領域に、第2造形条件で第2サポート構造を造形する、又は、前記材料を吐出しないで空間を形成する、前記第1工程と、
前記サポート構造を、前記造形物から分離する第2工程と、を有し、
前記第3サポート領域は、前記第2サポート領域と前記造形物との間に位置し、
前記第1造形条件及び前記第2造形条件は、互いに異なる造形条件である、
三次元造形物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記造形条件は、前記材料の種類、前記材料の線幅、前記材料の積層ピッチ、前記材料の造形パターンの少なくともいずれかに関する条件である、三次元造形物の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3サポート領域に、第3サポート構造を造形する工程を有し、
前記第1工程では、前記第2サポート領域に、前記空間を形成する、三次元造形物の製造方法。
【請求項4】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第3サポート領域に、第3サポート構造を造形する工程を有し、
前記造形物は、第1金属を含み、
前記第1サポート構造、及び、前記第3サポート構造は、第2金属を含み、
前記第2サポート構造はセラミックを含み、
前記第2工程に先立ち、前記第1金属及び前記第2金属の焼結温度以上、前記セラミックの焼結温度未満の温度で、前記造形物及び前記サポート構造を加熱する工程を有する、三次元造形物の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1工程に先立ち、前記造形物の凹凸構造に基づいて、前記第2サポート領域の位置を決定する工程を備える、三次元造形物の製造方法。
【請求項6】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記サポート領域は、前記ステージに接するベース領域と、前記造形物と上方又は下方で接する接触領域と、前記ベース領域及び前記接触領域とは異なるボディー領域とを有し、
前記第2サポート領域は、前記ボディー領域内の領域である、三次元造形物の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の三次元造形物の製造方法であって、
前記第1工程では、前記第2サポート領域に、前記空間を形成し、
前記第1工程に先立ち、前記空間が鉛直方向に沿って延びるように、前記ステージに対する前記造形物の配置を決定する工程を備える、三次元造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、三次元造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、第1の層構造体と第1の支持構造体との上に第2の層構造体を形成するステップと、第2の層構造体から第1の支持構造体を除去するステップとを有する付加製造のための方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-511990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1における第1支持構造体のように、造形物を支持するサポート層を形成することで、造形物の形状崩れを防いで精密に造形を行うことができる。一方で、サポート層を形成した場合、サポート層を除去する作業が必要となり、ユーザーの負担が大きかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の形態によれば、ステージに材料を吐出して層を積層することで、造形物を造形すると共に、前記造形物を支持するためのサポート領域の少なくとも一部にサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。前記サポート領域は、第1サポート領域、前記第1サポート領域に隣り合う第2サポート領域、及び、第3サポート領域を有し、この製造方法は、第1工程であって、前記第1サポート領域に、第1造形条件で第1サポート構造を造形し、前記第2サポート領域に、第2造形条件で第2サポート構造を造形する、又は、前記材料を吐出しないで空間を形成する、前記第1工程と、前記サポート構造を、前記造形物から分離する第2工程と、を有し、前記第3サポート領域は、前記第2サポート領域と前記造形物との間に位置し、前記第1造形条件及び前記第2造形条件は、互いに異なる造形条件である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態における三次元造形システムの概略構成を示す説明図である。
図2】フラットスクリューの概略構成を示す斜視図である。
図3】バレルの概略平面図である。
図4】三次元造形装置が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。
図5】情報処理装置の概略構成を示す説明図である。
図6】データ生成部によって生成される造形データの説明図である。
図7】造形処理のフローチャートである。
図8】造形パターンの例を示す図である。
図9】充填率の説明図である。
図10】輪郭の説明図である。
図11】第2サポート領域の位置を指定するための第1の画面例を示す図である。
図12】第2サポート領域の位置を指定するための第2の画面例を示す図である。
図13】第2実施形態における造形データの説明図である。
図14】第3実施形態における造形処理のフローチャートである。
図15】造形物を90度回転させた配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態:
図1は、第1実施形態における三次元造形システム10の概略構成を示す説明図である。図1には、互いに直交するX,Y,Z方向を示す矢印が示されている。X方向及びY方向は、水平面に平行な方向であり、Z方向は、鉛直上向きに沿った方向である。X,Y,Z方向を示す矢印は、他の図においても、図示の方向が図1と対応するように適宜、図示してある。以下の説明において、方向の向きを特定する場合には、各図において矢印が指し示す方向を「+」、その反対の方向を「-」として、方向表記に正負の符合を併用する。以下では、+Z方向のことを「上」、-Z方向のことを「下」ともいう。
【0008】
三次元造形システム10は、三次元造形装置100と情報処理装置400とを備えている。本実施形態の三次元造形装置100は、材料押出方式によって造形物を造形する装置である。三次元造形装置100は、三次元造形装置100の各部を制御するための制御部300を備えている。制御部300と情報処理装置400とは、相互に通信可能に接続されている。
【0009】
三次元造形装置100は、造形材料を生成して吐出する造形部110と、造形物の基台となる造形用のステージ210と、造形材料の吐出位置を制御する移動機構230とを備える。
【0010】
造形部110は、制御部300の制御下において、固体状態の材料を可塑化させた造形材料をステージ210上に吐出する。造形部110は、造形材料に転化される前の原材料の供給源である材料供給部20と、原材料を造形材料へと転化させる可塑化部30と、造形材料を吐出する吐出部60とを備える。
【0011】
材料供給部20は、可塑化部30に、原材料MRを供給する。材料供給部20は、例えば、原材料MRを収容するホッパーによって構成される。材料供給部20は、連通路22を介して、可塑化部30に接続されている。原材料MRは、粉末やペレットの形態で材料供給部20に投入される。
【0012】
可塑化部30は、材料供給部20から供給された原材料MRを可塑化させて流動性を発現させたペースト状の造形材料を生成し、吐出部60へと導く。本実施形態において「可塑化」とは 、溶融を含む概念であり、固体から流動性を有する状態に変化させることである。具体的には、ガラス転移が起こる材料の場合、可塑化とは、材料の温度をガラス転移点以上にすることである。ガラス転移が起こらない材料の場合、可塑化とは、材料の温度を融点以上にすることである。
【0013】
可塑化部30は、スクリューケース31と、駆動モーター32と、フラットスクリュー40と、バレル50と、を有する。フラットスクリュー40は、ローターあるいはスクロールとも呼ばれる。バレル50は、スクリュー対面部とも呼ばれる。
【0014】
フラットスクリュー40は、スクリューケース31内に収納されている。フラットスクリュー40の上面47は駆動モーター32に連結されており、フラットスクリュー40は、駆動モーター32が発生させる回転駆動力によって、スクリューケース31内で回転する。駆動モーター32は、制御部300の制御下において駆動する。なお、フラットスクリュー40は、減速機を介して駆動モーター32によって駆動されてもよい。
【0015】
図2は、フラットスクリュー40の下面48側の概略構成を示す斜視図である。図2に示したフラットスクリュー40は、技術の理解を容易にするため、図1に示した上面47と下面48との位置関係を、鉛直方向において逆向きとした状態で示されている。フラットスクリュー40は、その中心軸に沿った方向である軸線方向における長さが、軸線方向に垂直な方向における長さよりも小さい略円柱状を有する。フラットスクリュー40は、その回転中心となる回転軸RXがZ方向に平行になるように配置される。
【0016】
フラットスクリュー40の、回転軸RXと交差する面である下面48には、渦状の溝部42が形成されている。上述した材料供給部20の連通路22は、フラットスクリュー40の側面から、当該溝部42に連通する。本実施形態では、溝部42は、凸条部43によって隔てられて3本分形成されている。なお、溝部42の数は、3本に限られず、1本でもよいし、2本以上であってもよい。溝部42は、渦状に限らず、螺旋状あるいはインボリュート曲線状であってもよいし、中央部から外周に向かって弧を描くように延びる形状であってもよい。
【0017】
図1に示すように、フラットスクリュー40の下面48は、バレル50の上面52に対面しており、フラットスクリュー40の下面48の溝部42と、バレル50の上面52との間には空間が形成される。フラットスクリュー40とバレル50との間のこの空間には、材料供給部20から図2に示した材料流入口44を通じて原材料MRが供給される。
【0018】
バレル50には、回転しているフラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRを加熱するためのバレルヒーター58が埋め込まれている。バレル50の中心には連通孔56が設けられている。
【0019】
図3は、バレル50の上面52側を示す概略平面図である。バレル50の上面52には、連通孔56に接続され、連通孔56から外周に向かって渦状に延びている複数の案内溝54が形成されている。なお、案内溝54の一端は、連通孔56に接続されていなくてもよい。また、案内溝54は省略することも可能である。
【0020】
フラットスクリュー40の溝部42内に供給された原材料MRは、溝部42内において可塑化されながら、フラットスクリュー40の回転によって溝部42に沿って流動し、造形材料としてフラットスクリュー40の中央部46へと導かれる。中央部46に流入した流動性を発現しているペースト状の造形材料は、バレル50の中心に設けられた連通孔56を介して吐出部60に供給される。なお、造形材料では、造形材料を構成する全ての種類の物質が可塑化していなくてもよい。造形材料は、造形材料を構成する物質のうちの少なくとも一部の種類の物質が可塑化することによって、全体として流動性を有する状態に転化されていればよい。
【0021】
図1の吐出部60は、造形材料を吐出するノズル61と、フラットスクリュー40とノズル開口62との間に設けられた造形材料の流路65と、造形材料の吐出を制御する吐出制御部77を備える。
【0022】
ノズル61は、流路65を通じて、バレル50の連通孔56に接続されている。ノズル61は、可塑化部30において生成された造形材料を、先端のノズル開口62からステージ210に向かって吐出する。
【0023】
吐出制御部77は、流路65を開閉する吐出調整部70と、造形材料を吸引して一時的に貯留する吸引部75とを備える。
【0024】
吐出調整部70は、流路65内に設けられており、流路65内で回転することにより流路65の開度を変化させる。本実施形態において、吐出調整部70は、バタフライバルブによって構成されている。吐出調整部70は、制御部300による制御下において、第1駆動部74によって駆動される。第1駆動部74は、例えば、ステッピングモーターによって構成される。制御部300は、第1駆動部74を用いて、バタフライバルブの回転角度を制御することによって、可塑化部30からノズル61に流れる造形材料の流量、つまり、ノズル61から吐出される造形材料の吐出量を調整することができる。吐出調整部70は、造形材料の吐出量を調整可能であると共に、造形材料の流出のオン/オフを制御可能である。
【0025】
吸引部75は、流路65において吐出調整部70とノズル開口62との間に接続されている。吸引部75は、ノズル61からの造形材料の吐出停止時に、流路65中の造形材料を一時的に吸引することによって、造形材料がノズル開口62から糸を引くように垂れる尾引き現象を抑制する。本実施形態において、吸引部75は、プランジャーにより構成されている。吸引部75は、制御部300による制御下において、第2駆動部76によって駆動される。第2駆動部76は、例えば、ステッピングモーターや、ステッピングモーターの回転力をプランジャーの並進運動に変換するラックアンドピニオン機構等によって構成される。
【0026】
ステージ210は、ノズル61のノズル開口62に対向する位置に配置されている。第1実施形態では、ノズル61のノズル開口62に対向するステージ210の造形面211は、X,Y方向、すなわち水平方向に平行となるように配置される。ステージ210には、ステージ210上に吐出された造形材料が急激に冷却することを抑制するためのステージヒーター212が備えられている。ステージヒーター212は制御部300によって制御される。
【0027】
移動機構230は、制御部300の制御下において、ステージ210とノズル61との相対位置を変化させる。本実施形態では、ノズル61の位置が固定されており、移動機構230は、ステージ210を移動させる。移動機構230は、3つのモーターの駆動力によって、ステージ210をX,Y,Z方向の3軸方向に移動させる3軸ポジショナーによって構成される。本明細書において、特に断らない限り、ノズル61の移動とは、ノズル61や吐出部60をステージ210に対して相対的に移動させることを意味する。
【0028】
なお、他の実施形態では、移動機構230によってステージ210を移動させる構成の代わりに、ステージ210の位置が固定された状態で、移動機構230がステージ210に対してノズル61を移動させる構成が採用されてもよい。また、移動機構230によってステージ210をZ方向に移動させ、ノズル61をX,Y方向に移動させる構成や、移動機構230によってステージ210をX,Y方向に移動させ、ノズル61をZ方向に移動させる構成が採用されてもよい。これらの構成であっても、ノズル61とステージ210との相対的な位置関係が変更可能である。
【0029】
図1には、造形部110が1つのみ示されているが、本実施形態の三次元造形装置100は、3つの造形部110を備えているものとする。3つの造形部110のうちの第1の造形部110からは、後述する第1金属と樹脂とを含む造形材料が吐出され、第2の造形部110からは、後述する第2金属と樹脂と含む造形材料が吐出され、第3の造形部110からは、後述するセラミックと樹脂とを含む造形材料が吐出される。
【0030】
制御部300は、三次元造形装置100全体の動作を制御する制御装置である。制御部300は、1つ、又は、複数のプロセッサー310と、主記憶装置や補助記憶装置からなる記憶装置320と、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスとを備えるコンピューターによって構成される。プロセッサー310は、記憶装置320に記憶されたプログラムを実行することによって、情報処理装置400から取得された造形データに従い、造形部110及び移動機構230を制御して、ステージ210上に造形物の造形を行う。なお、制御部300は、コンピューターによって構成される代わりに、回路を組み合わせた構成により実現されてもよい。
【0031】
図4は、三次元造形装置100が造形物を造形する様子を模式的に示す説明図である。三次元造形装置100では、上述したように、固体状態の原材料MRが可塑化されて造形材料MMが生成される。制御部300は、ステージ210の造形面211とノズル61との距離を保持したまま、ステージ210の造形面211に沿った方向に、ステージ210に対するノズル61の位置を変えながら、ノズル61から造形材料MMを吐出させる。ノズル61から吐出された造形材料MMは、ノズル61の移動方向に連続して堆積されていく。
【0032】
制御部300は、ノズル61の移動を繰り返して層MLを形成する。制御部300は、1つの層MLを形成した後、ステージ210に対するノズル61の位置を、Z方向に相対移動させる。そして、これまでに形成された層MLの上に、更に層MLを積み重ねることによって造形物を造形していく。
【0033】
制御部300は、例えば、一層分の層MLを完了した場合のノズル61のZ方向への移動や、各層で独立する複数の造形領域がある場合には、ノズル61からの造形材料の吐出を一時的に中断させることがある。この場合、吐出調整部70によって流路65を閉塞させて、ノズル開口62からの造形材料MMの吐出を停止させ、吸引部75によって、ノズル61内の造形材料を一時的に吸引する。制御部300は、ノズル61の位置を変更した後、吸引部75内の造形材料を排出しつつ吐出調整部70によって流路65を開くことによって、変更後のノズル61の位置から造形材料MMの堆積を再開させる。
【0034】
図5は、情報処理装置400の概略構成を示す説明図である。情報処理装置400は、CPU410とメモリー420と記憶装置430と通信インターフェイス440と入出力インターフェイス450とがバス460によって相互に接続されたコンピューターとして構成されている。入出力インターフェイス450には、キーボードやマウスなどの入力装置470と、液晶ディスプレイなどの表示装置480とが接続されている。情報処理装置400は、通信インターフェイス440を介して、三次元造形装置100の制御部300に接続される。
【0035】
CPU410は、記憶装置430に記憶されたプログラムを実行することによって、データ生成部411として機能する。
【0036】
データ生成部411は、造形物とサポート構造とを造形するための造形データを生成する。サポート構造は、造形物を支持するためのサポート領域の少なくとも一部に造形される構造体である。
【0037】
図6は、データ生成部411によって生成される造形データの説明図である。造形データは、造形物MDの本体を造形するための本体データと、サポート構造SSを造形するためのサポートデータとを含む。図6において、ハッチングが付されていない部分が、造形物MDの本体を示し、ハッチングが付されている部分がサポート構造SSを示している。サポート構造SSが造形されるサポート領域SAは、第1サポート領域SA1と、第1サポート領域SA1に隣接する第2サポート領域SA2と、第3サポート領域SA3と、を含む。第2サポート領域SA2は、第1サポート領域SA1同士の間、又は、第1サポート領域SA1及び第3サポート領域SA3の間を分離しやすくするための領域である。
【0038】
第3サポート領域SA3は、第1サポート領域SA1と第2サポート領域SA2とが並ぶ方向において、第1サポート領域SA1及び第2サポート領域SA2のうち造形物MDに近い方と造形物MDとの間に位置する位置関係を有する。第6に示した例では、第1サポート領域SA1と第2サポート領域SA2とが並ぶ方向を、X方向とする。図6では、第1サポート領域SA1及び第2サポート領域SA2のうち造形物MDに近い方は、第2サポート領域SA2である。図6には、第2サポート領域SA2が4つ示されている。サポート領域SAに複数の第2サポート領域SA2が含まれる場合、そのうち、少なくとも1つの第2サポート領域SA2が、第1サポート領域SA1、第3サポート領域SA3、及び、造形物MDとの間で、上述した位置関係を有する。
【0039】
データ生成部411は、第1サポート領域SA1に第1サポート構造を造形するためのデータ、及び、第2サポート領域SA2に第2サポート構造を造形するためのデータを、互いに異なる造形条件に基づいて生成する。本実施形態において、データ生成部411は、第3サポート領域SA3に第3サポート構造を造形するためのデータについては、第1サポート領域SA1に第1サポート構造を造形するためのデータと同じ造形条件に基づいて生成する。
【0040】
本実施形態において、造形物MDは、第1金属を含む。つまり、造形物MDは、第1金属と樹脂とを含むペレットを可塑化することによって生成される形材料によって造形される。また、第1サポート構造、及び、第3サポート構造は、第2金属を含む。つまり、第1サポート構造及び第3サポート構造は、第2金属と樹脂とを含むペレットを可塑化することによって生成される造形材料によって造形される。第1金属と第2金属とは同種の金属であってもよいし、異種金属であってもよい。第2サポート構造は、セラミックを含む。つまり、第2サポート構造は、セラミックと樹脂とを含むペレットを可塑化することによって生成される造形材料によって造形される。これらの材料によって造形された造形物MD及びサポート構造SSは、第1金属及び第2金属の焼結温度以上、セラミックの焼結温度未満、の温度で加熱されて焼成される。
【0041】
本実施形態では、サポート領域SAは、更に、ステージ210に接するベース領域BAと、造形物MDと上方又は下方で接する接触領域CAと、ベース領域BA及び接触領域CAとは異なるボディー領域BDを有する。第2サポート領域SA2は、これらの領域のうちのボディー領域BD内の領域である。本実施形態では、ベース領域BA及び接触領域CAには、第1サポート領域SA1と同じ造形条件によってサポート構造SSが造形される。なお、ベース領域BA及び接触領域CAには、第1サポート領域SA1と異なる造形条件によってサポート構造SSが造形されてもよい。
【0042】
情報処理装置400は、データ生成部411によって生成された造形データを、三次元造形装置100の制御部300に送信する。制御部300は、受信した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御して、材料を吐出して層MLを積層方向に積層することで、造形物MD、及び、サポート構造SSをステージ210上に造形する。
【0043】
図7は、三次元造形システム10において実行される造形処理のフローチャートである。この造形処理は、三次元造形物の製造方法を実現するための処理である。図7に示すステップS10~S50の処理は、情報処理装置400において実行され、ステップS60~ステップS70の処理は、三次元造形装置100において実行される。
【0044】
ステップS10において、情報処理装置400のデータ生成部411は、他のコンピューター、記録媒体、あるいは、記憶装置430から、造形物MDの三次元形状を表す形状データを取得する。形状データは、三次元CADソフトや三次元CGソフト等を用いて作成された三次元造形物の形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL形式やAMF形式等のデータを用いることができる。
【0045】
ステップS20において、データ生成部411は、サポート構造SSを造形するための造形条件の設定を受け付ける。造形条件には、第1サポート構造を造形するための第1造形条件と、第2サポート構造を造形するための第2造形条件とが含まれる。ユーザーは、入力装置470を用いて、表示装置480に表示された設定画面を操作し、造形条件の設定を行う。造形条件には、材料の種類、材料の線幅、材料の積層ピッチ、材料の造形パターン、輪郭の有無、の少なくともいずれかに関する条件が含まれる。
【0046】
材料の種類は、ノズル61から吐出する造形材料の種類を指定する条件である。上述したように、本実施形態では、材料の種類として、第1サポート構造については第2金属を含む材料が設定され、第2サポート構造については、セラミックを含む材料が設定される。
【0047】
線幅は、ノズル61から吐出する造形材料の幅を指定する条件である。線幅は、ノズル61から吐出する造形材料の単位時間当たりの吐出量を変化させることで調整される。
【0048】
積層ピッチは、積層する層の1層ごとの高さを指定する条件である。
【0049】
造形パターンは、それぞれの層の内部領域を埋めるためのノズル61の移動経路を示すパターンを指定する条件である。
【0050】
充填率は、指定した造形パターンによって内部領域を埋める面積割合を指定する条件である。造形パターンは、パスパターンとも呼ばれる。
【0051】
輪郭の有無は、造形パターンの外周を囲う輪郭を形成するか否かの条件である。
【0052】
図8は、造形パターンの例を示す図である。本実施形態では、造形パターンとして、図8に示すパターンAからパターンEまでの異なる造形パターンが指定可能になっている。図9に示した造形パターンは、いずれも、1周分の輪郭の内側に造形パターンが配置された例を示している。
【0053】
図9は、充填率の説明図である。図9には、図8に示した造形パターンAの充填率を、90%と50%とに変化させた例を示している。図9に示すように、充填率が高くなるほど、造形パターンを形成する造形材料同士の間隔が狭くなる。
【0054】
図10は、輪郭の説明図である。図10には、図8に示した造形パターンAを、輪郭ありと、輪郭なしのそれぞれのパターンについて示している。なお、輪郭ありの場合、輪郭の周数を設定可能であってもよい。
【0055】
本実施形態では、第1造形条件によって造形される第1サポート構造よりも、第2造形条件によって造形される第2サポート構造の方が、強度が低くなるように、第1サポート領域SA1と第2サポート領域SA2とに対してそれぞれ造形条件が設定される。例えば、金属を含まない材料の方が金属を含む材料よりも強度が低い。材料の線幅は、大きいほどサポート構造内に空隙が発生しやすいため強度が低い。積層ピッチは、大きいほどサポート構造内に空隙が発生しやすいため強度が低い。充填率は、小さいほどサポート構造内に空隙が発生しやすいため強度が低い。輪郭は、造形しない方が強度が低い。
【0056】
図7のステップS30において、データ生成部411は、サポート領域SA内における第2サポート領域SA2の位置を決定する。本実施形態では、入力装置470を通じてユーザーから第2サポート領域SA2の位置の指定を受け付けることで、第2サポート領域SA2の位置を決定する。
【0057】
図11は、第2サポート領域SA2の位置を指定するための第1の画面例を示す図である。ユーザーは、表示装置480に表示される画面を通じて、第2サポート領域SA2の位置を指定する。図11には、X方向の位置が、「201.00mm」で、X方向に沿った厚みが「1.00mm」の第2サポート領域SA2と、Y方向の位置が、「200.00mm」で、Y方向に沿った厚みが「1.00mm」の第2サポート領域SA2と、Z方向の位置が「10.00mm」で、Z方向に沿った厚みが「2.00mm」の第2サポート領域SA2との、3つの第2サポート領域SA2の位置が指定された例を示している。表示装置480には、図11に示す項目が繰り返し表示されており、ユーザーは、必要な数だけ入力を行うことで、サポート領域SAに対して、任意の数の第2サポート領域SA2を任意の位置に配置することができる。
【0058】
図12は、第2サポート領域SA2の位置を指定するための第2の画面例を示す図である。図12に示した画面では、ユーザーは、X方向、Y方向、Z方向について、それぞれ、第2サポート領域SA2を配置する間隔と、第2サポート領域SA2の厚みを指定可能となっている。X方向、Y方向、Z方向のそれぞれの入力項目には、それらの項目に対応するように、第2サポート領域SA2の配置の有無を指定するためのチェックボックスが設けられている。図12に示す画面を用いることで、ユーザーは、サポート領域SAに対して、任意の方向に、指定した間隔で、第2サポート領域SA2を繰り返し配置することができる。
【0059】
図7のステップS30において、データ生成部411は、ユーザーからの指定を受け付けることなく、第2サポート領域SA2の位置を自動的に設定してもよい。例えば、データ生成部411は、造形物MDの外表面の凹凸構造を検出し、凸部が突き出す方向に沿って、凸部の角部から第2サポート領域SA2が延びるように、第2サポート領域SA2を配置してもよい。また、凸部の先端面に沿った平面方向に延びるように、第2サポート領域SA2を配置してもよい。造形物MDの凹凸構造を検出することで、データ生成部411は、第2サポート領域SA2の位置を自動的に設定しやすい。
【0060】
ユーザーによって配置された第2サポート領域SA2の位置や、データ生成部411によって自動的に配置された第2サポート領域SA2の位置は、ユーザーが任意に、その位置を変更可能であってもよい。ユーザーは、例えば、マウスを用いて表示装置480に表示されている第2サポート領域SA2を、ドラッグアンドドロップすることにより、第2サポート領域SA2を、サポート領域SAの中で、自由に移動させることができる。
【0061】
図7のステップS40において、データ生成部411は、サポート領域SAを特定する。このステップS40において、データ生成部411は、まず、ステップS10で取得した形状データを解析して、サポート構造SSを配置可能なサポート領域SAの範囲を決定する。具体的には、データ生成部411は、造形物MDのオーバーハング部の下方に、サポート領域SAを設定する。オーバーハング部とは、造形物MDのうちの下方に支えのない出っ張りの部分を指す。本実施形態において、オーバーハング部の意味には、ブリッジ部も含む。ブリッジ部とは、造形物MDにおいて両端が支持された橋状の部分を指す。
【0062】
データ生成部411は、決定されたサポート領域SAの範囲内で、ベース領域BAと接触領域CAとボディー領域BDとを特定する。そして、データ生成部411は、ボディー領域BDの中に、ステップS30で指定された第2サポート領域SA2を配置する。データ生成部411は、ボディーBD領域のうち、第2サポート領域SA2が配置されない領域を、第1サポート領域SA1として特定する。更に、データ生成部411は、特定された第1サポート領域SA1のうち、造形物MDと、第2サポート領域SA2とに挟まれた領域を、第3サポート領域SA3として特定する。
【0063】
ステップS50において、データ生成部411は、造形物MDを造形するための本体データと、サポート構造SSを造形するためのサポートデータとを含む造形データを生成する。
【0064】
本体データの生成にあたり、データ生成部411は、ステップS10で取得した形状データを解析して、造形物MDの形状をXY平面に沿って複数の層にスライスする。そして、データ生成部411は、各層の輪郭を形成すると共にその内部領域を予め定められた充填率や造形パターンで埋めるためのノズル61の移動経路を表す移動経路情報を生成する。移動経路情報は、直線状の複数の移動経路を表すデータを含んでいる。移動経路情報に含まれる各移動経路には、その移動経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、造形物MDの全ての層について移動経路情報及び吐出量情報を生成することによって本体データを生成する。本体データは、例えば、Gコードによって表される。
【0065】
サポートデータの生成にあたり、データ生成部411は、ステップS20で設定された造形条件に従い、ステップS40において特定されたベース領域BA、接触領域CA、第1サポート領域SA1、第2サポート領域SA2、及び、第3サポート領域SA3に対して、サポート構造SSを造形するためのサポートデータを生成する。例えば、データ生成部411は、造形条件に含まれる積層ピッチに従って、各サポート領域をそれぞれXY平面に沿って複数の層にスライスする。データ生成部411は、造形条件に含まれる線幅、造形パターン、充填率、輪郭の有無に従って、各サポート領域を造形するための移動経路情報を生成する。移動経路情報に含まれる各移動経路には、その移動経路において吐出される造形材料の吐出量を表す吐出量情報が含まれる。データ生成部411は、サポート領域SAの全ての層について移動経路情報及び吐出量情報を生成することによってサポートデータを生成する。サポートデータは、本体データと同様に、例えば、Gコードによって表される。
【0066】
ステップS60において、三次元造形装置100の制御部300は、ステップS50において情報処理装置400が生成した造形データを、情報処理装置400から取得する。
【0067】
ステップS70において、制御部300は、情報処理装置400から取得した造形データに従って、吐出部60及び移動機構230を制御することによって、ステージ210の造形面211上に、造形物MD及びサポート構造SSを造形する。例えば、サポート構造SSのうち、第1サポート領域SA1に造形される第1サポート構造と、第2サポート領域SA2に造形される第2サポート構造とは、ステップS20で設定された異なる造形条件に従って造形される。ステップS70のことを、第1工程ともいう。
【0068】
ステップS80において、造形物MD及びサポート構造SSは、冷却又は焼結される。造形物MD、及び、サポート構造SSが樹脂のみによって造形される場合は冷却が行われる。これに対して、本実施形態では、造形物MDが第1金属を含み、第1サポート構造及び第3サポート構造が第2金属を含み、第2サポート構造がセラミックを含むため、ステップS80では焼結が行われる。この焼結工程は、上記のとおり、第1金属及び第2金属の焼結温度以上、セラミックの焼結温度未満、の温度で行われる。
【0069】
ステップS90において、サポート構造SSが造形物MDから分離される。本実施形態では、第2サポート構造が、第1サポート構造と異なる造形条件によって造形されている。より詳しくは、第1サポート構造及び第3サポート構造が第2金属を含み、第2サポート構造がセラミックを含んでおり、これらの焼結が、第1金属及び第2金属の焼結温度以上、セラミックの焼結温度未満、の温度で行われる。そのため、第1サポート構造同士の間、或いは、第1サポート構造と第3サポート構造の間に配置された第2サポ-ト構造は焼結せずに、第1サポート構造と第3サポート構造とが焼結することになるので、第1サポート構造同士、或いは、第1サポート構造と第3サポート構造とを分離することが容易になる。ステップS90のことを、第2工程ともいう。
【0070】
以上で説明した第1実施形態によれば、第1サポート領域SA1と、第1サポート領域SA1に隣り合う第2サポート領域SA2とに対して、互いに異なる造形条件でサポート構造SSが造形される。そのため、第1サポート構造同士、或いは、第1サポート構造と第3サポート構造とを分離しやすくなる。この結果、ユーザーの負担を軽減できる。
【0071】
また、本実施形態では、造形条件は、材料の種類、材料の線幅、材料の積層ピッチ、材料の造形パターンの少なくともいずれかに関する条件である。そのため、これらの条件を異なる条件とすることで、第1サポート構造と第2サポート構造とを異なる強度とすることができる。
【0072】
また、本実施形態では、サポート領域SAのうち、ステージ210に接するベース領域BAと、造形物MDと上方又は下方で接する接触領域CAとには、第2サポート構造を造形しない。そのため、造形物MDをサポート構造SSやステージ210に良好に接触させることができ、造形物MDの造形精度を高めることができる。
【0073】
なお、第1実施形態では、第1サポート構造が金属を含む材料によって造形され、第2サポート構造がセラミックを含む材料によって造形されるものとした。これに対して、例えば、第1サポート構造は、非水溶性の樹脂によって造形され、第2サポート構造は、水溶性の樹脂によって造形されてもよい。
【0074】
B.第2実施形態:
第1実施形態では、第1サポート構造と第2サポート構造とを異なる造形条件によって造形している。これに対して、第2実施形態では、第2サポート構造の造形を行わない。第2実施形態における三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同じである。
【0075】
図13は、第2実施形態における造形データの説明図である。図13には、図6に示した造形データのオーバーハング部を省略した状態を示している。第2実施形態では、図7に示した造形処理の、ステップS20において、第2サポート領域SA2に対してサポート構造SSを造形しないという造形条件の設定がなされる。そのため、ステップS50では、第2サポート構造を造形するためのサポートデータは生成されない。ステップS70では、第2サポート構造は造形されず、第1サポート領域SA1及び第3サポート領域SA3に、それぞれ、造形条件に従ったサポート構造SSが造形される。
【0076】
以上で説明した第2実施形態によれば、図13に示すように、第2サポート領域SA2に材料が吐出されず、空間が形成されることになる。そのため、第1サポート構造同士、或いは、第1サポート構造と第3サポート構造とを分離しやすくなる。
【0077】
C.第3実施形態:
第3実施形態は、造形処理の内容が、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。第3実施形態における三次元造形装置100の構成は、第1実施形態と同じである。第3実施形態では、第2実施形態と同様に、図13に示されたように第2サポート領域SA2に空間が形成される。
【0078】
図14は、第3実施形態における造形処理のフローチャートである。図7に示した造形処理のフローチャートに対して、第3実施形態では、ステップS35の処理が加わっている。図14では、図7と同じ処理内容のステップ番号には同じステップ番号を付している。
【0079】
第3実施形態では、ステップS35において、データ生成部411は、ステップS30で決定された第2サポート領域SA2の位置に基づき、造形物MDの配置を決定する。例えば、設定された第2サポート領域SA2の数が予め定められた数よりも多い場合、データ生成部411は、第2サポート領域SA2に形成される空間が、鉛直方向に沿って延びるように、ステージ210に対する造形物MDの配置を決定する。図15には、ステップS35の処理の結果、造形物MDの配置が、図6に示した配置から90度回転した結果を示している。このように、第2サポート領域SA2の位置に応じて造形物MDの配置が変更されることにより、第2サポート領域SA2に形成される空間に、第1サポート構造や第3サポート構造を造形するための材料が重力によって垂れることが抑制され、サポート構造SSを精度よく造形できる。この結果、造形物MDの造形精度を高めることができる。
【0080】
D.他の実施形態:
(D1)上記第1実施形態では、第2サポート領域SA2は、サポート領域SAを構成するベース領域BAと接触領域CAとボディー領域BDとのうち、ボディー領域BD内の領域である。これに対して、第2サポート領域SA2は、その少なくとも一部が、ベース領域BAや接触領域CAに含まれてもよい。また、データ生成部411は、サポート領域SAから、ベース領域BA、接触領域CA、及び、ボディー領域BDを特定しなくてもよい。
【0081】
(D2)上記実施形態では、三次元造形装置100は、3つの造形部110を備えている。これに対して、三次元造形装置100は、2つ又は4つ以上の造形部110を備えてもよい。また、造形物MDとサポート構造SSとを同じ種類の材料によって造形する場合、三次元造形装置100は、1つの造形部110のみを備えてもよい。
【0082】
(D3)上記実施形態において、造形部110は、フラットスクリュー40によって材料を可塑化している。これに対して造形部110は、例えば、インラインスクリューを回転させることによって材料を可塑化するものであってもよい。また、造形部110は、フィラメント状の材料をヒーターで可塑化するものであってもよい。
【0083】
(D4)上記実施形態では、可塑化した材料を積層する材料押出方式を例として説明したが、本開示は、インクジェット方式や、DMD方式(Direct Metal Deposition)、バインダージェット方式等、種々の方式に適用できる。
【0084】
E.他の形態:
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、以下に記載する各形態中の技術的特徴に対応する実施形態の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【0085】
(1)本開示の第1の形態によれば、ステージに材料を吐出して層を積層することで、造形物を造形すると共に、前記造形物を支持するためのサポート領域の少なくとも一部にサポート構造を造形する、三次元造形物の製造方法が提供される。前記サポート領域は、第1サポート領域、前記第1サポート領域に隣り合う第2サポート領域、及び、第3サポート領域を有し、この製造方法は、第1工程であって、前記第1サポート領域に、第1造形条件で第1サポート構造を造形し、前記第2サポート領域に、第2造形条件で第2サポート構造を造形する、又は、前記材料を吐出しないで空間を形成する、前記第1工程と、前記サポート構造を、前記造形物から分離する第2工程と、を有し、前記第3サポート領域は、前記第2サポート領域と前記造形物との間に位置し、前記第1造形条件及び前記第2造形条件は、互いに異なる造形条件である。このような形態によれば、サポート構造を造形物から容易に分離できるので、ユーザーの負担を軽減できる。
【0086】
(2)上記形態において前記造形条件は、前記材料の種類、前記材料の線幅、前記材料の積層ピッチ、前記材料の造形パターンの少なくともいずれかに関する条件であってもよい。
【0087】
(3)上記形態において、前記第3サポート領域に、第3サポート構造を造形する工程を有し、前記第1工程では、前記第2サポート領域に、前記空間を形成してもよい。このような形態によれば、サポート構造を造形物から容易に分離できる。
【0088】
(4)上記形態において、前記第3サポート領域に、第3サポート構造を造形する工程を有し、前記造形物は、第1金属を含み、前記第1サポート構造、及び、前記第3サポート構造は、第2金属を含み、前記第2サポート構造はセラミックを含み、前記第2工程に先立ち、前記第1金属及び前記第2金属の焼結温度以上、前記セラミックの焼結温度未満の温度で、前記造形物及び前記サポート構造を加熱する工程を有してもよい。このような形態によれば、金属によって造形されたサポート構造を容易に分離できる。
【0089】
(5)上記形態において、前記第1工程に先立ち、前記造形物の凹凸構造に基づいて、前記第2サポート領域の位置を決定する工程を備えてもよい。このような形態であれば、第2サポート領域の位置を自動的に決定できる。
【0090】
(6)上記形態において、前記サポート領域は、前記ステージに接するベース領域と、前記造形物と上方又は下方で接する接触領域と、前記ベース領域及び前記接触領域とは異なるボディー領域とを有し、前記第2サポート領域は、前記ボディー領域内の領域であってもよい。このような形態によれば、造形物の造形精度を高めることができる。
【0091】
(7)上記形態において、前記第1工程では、前記第2サポート領域に、前記空間を形成し、前記第1工程に先立ち、前記空間が鉛直方向に沿って延びるように、前記ステージに対する前記造形物の配置を決定する工程を備えてもよい。このような形態によれば、造形物の造形精度を高めることができる。
【0092】
本開示は、上述した三次元造形物の製造方法に限らず、三次元造形システム、情報処理装置、コンピュータープログラム、コンピュータープログラムをコンピューターが読み取り可能に記録した一時的でない有形な記録媒体など、種々の態様によって実現することが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10…三次元造形システム、20…材料供給部、22…連通路、30…可塑化部、31…スクリューケース、32…駆動モーター、40…フラットスクリュー、42…溝部、43…凸条部、44…材料流入口、46…中央部、47…上面、48…下面、50…バレル、52…上面、54…案内溝、56…連通孔、58…バレルヒーター、60…吐出部、61…ノズル、62…ノズル開口、65…流路、70…吐出調整部、74…第1駆動部、75…吸引部、76…第2駆動部、77…吐出制御部、100…三次元造形装置、110…造形部、210…ステージ、211…造形面、212…ステージヒーター、230…移動機構、300…制御部、310…プロセッサー、320…記憶装置、400…情報処理装置、410…CPU、411…データ生成部、420…メモリー、430…記憶装置、440…通信インターフェイス、450…入出力インターフェイス、460…バス、470…入力装置、480…表示装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15