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▶ アルプス電気株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158130
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】スピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/34 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
H04R1/34 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073074
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105784
【弁理士】
【氏名又は名称】橘 和之
(74)【代理人】
【識別番号】100098497
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 恭三
(74)【代理人】
【識別番号】100099748
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 克志
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】田地 良輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 亮
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA16
5D019FF01
5D019GG04
(57)【要約】
【課題】異物による超音波放射ユニットの損傷を防止しつつ、所望の向きに超音波が放射できる「スピーカ」を提供する。
【解決手段】超音波を放射向きに放射する超音波放射ユニット2と、超音波放射ユニット2の放射向き側に設けられ、超音波放射ユニット2から放射された超音波が所定向きに向かうように反射する反射部材17と、超音波放射ユニット2と反射部材17との間に設けられ、超音波放射ユニット2から反射部材17に至るまでの超音波の向きが変わらず、かつ、反射部材17が反射した超音波の向きが変わらないようにスリットが形成され、更に異物が超音波放射ユニット2に向かって侵入することを阻害するルーバユニット9とを備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を放射向きに放射する超音波放射ユニットと、
前記超音波放射ユニットの前記放射向き側に設けられ、前記超音波放射ユニットから放射された超音波が所定向きに向かうように反射する反射部材と、
前記超音波放射ユニットと前記反射部材との間に設けられ、前記超音波放射ユニットから前記反射部材に至るまでの超音波の向きが変わらず、かつ、前記反射部材が反射した超音波の向きが変わらないようにスリットが形成され、更に異物が前記超音波放射ユニットに向かって侵入することを阻害するルーバユニットとを備える
ことを特徴とするスピーカ。
【請求項2】
前記ルーバユニットは、
前記反射部材が反射する超音波の経路上に設けられ、前記放射向きおよび前記所定向きと平行に前記スリットが形成されるように設置された複数の羽板を有する反射対応ルーバと、
前記超音波放射ユニットが放射した超音波の経路上であって、前記反射対応ルーバを避けた場所に設けられ、前記反射対応ルーバの羽板と平行に延在する羽板および前記反射対応ルーバの羽板と交わるように延在する羽板を有する放射対応ルーバとを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
前記反射対応ルーバの羽板と、前記放射対応ルーバにおいて前記反射対応ルーバの羽板と平行に延在する羽板とは1つの部材により一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
前記ルーバユニットは、
前記反射部材が反射する超音波の経路上に設けられ、前記放射向きおよび前記所定向きと平行に前記スリットが形成されるように設置された複数の羽板を有する反射対応ルーバと、
前記超音波放射ユニットが放射した超音波の経路上であって、前記反射対応ルーバを避けた場所に設けられ、前記反射対応ルーバの羽板と交わるように延在する羽板を有する放射対応ルーバとを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項5】
前記ルーバユニットは、
前記反射部材が反射する超音波の経路上に設けられ、前記放射向きおよび前記所定向きと平行に前記スリットが形成されるように設置された複数の羽板を有する反射対応ルーバと、
前記超音波放射ユニットが放射した超音波の経路上であって、前記反射対応ルーバを避けた場所に設けられ、前記反射対応ルーバの羽板と平行に延在する羽板を有する放射対応ルーバとを備える
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ。
【請求項6】
前記反射対応ルーバの羽板と、前記放射対応ルーバにおいて前記反射対応ルーバの羽板と平行に延在する羽板とは1つの部材により一体的に形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載のスピーカ。
【請求項7】
前記ルーバユニットは、
前記超音波放射ユニットが放射した超音波の経路上であって、前記反射部材が反射する超音波の経路を避けた場所に設けられたルーバである放射対応ユニットを備え、
前記反射部材が反射する超音波の経路上にはルーバが設けられない
ことを特徴とする請求項1に記載のスピーカ
【請求項8】
前記反射部材が反射する超音波の経路上にルーバが設けられないことにより生じるスペースを利用して前記所定向きが変わるように前記反射部材の姿勢を変更可能に構成されている
ことを特徴とする請求項7に記載のスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカに関し、特に、車両の車体の外側に設置され、超音波を放射するスピーカに用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の車体の外側に設定され、超音波を放射するスピーカに関する様々な技術が提案されている。例えば特許文献1には、車両の車体の外側に設けられたスピーカから到達点に向かって超音波を放射し、この到達点において仮想音源を生成する技術が記載されている。特許文献1によれば、到達点からあたかも音声が出力されているような状態を作ることができる。特に近年、内燃機関のない車両が広く普及してきており、エンジン音に代替する音声を出力する手段として、この種のスピーカの需要は増大していくことが想定される。
【0003】
超音波を放射するスピーカの構造に関して、特許文献1には詳しく記載されていないものの、特許文献2に以下の技術が記載されている。すなわち超音波放射ユニット(パラメトリック・スピーカ)が放射する超音波を反射する反射部材(反射器)を備え、この反射部材によって超音波を反射させて、超音波を所望の向きに放射する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-359042号公報
【特許文献1】特表2006-511128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スピーカを車両の車体の外側に設ける場合、車両の車体の外側にスピーカが設置されるという特性上、小石、ゴミ、その他の異物による超音波放射ユニットの損傷を防止しつつ、所望の向きに超音波が放射できるようにする必要がある。しかしながら特許文献1には、車両の車体の外側にスピーカを設置する点が記載されているものの、異物による損傷を防止する点については開示がなく、また特許文献2には、所望の向きに超音波が放射できるようにする点が記載されているものの、異物による損傷を防止する点については開示がない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するために成されたものであり、車両の車体の外側に設置されるスピーカについて、異物による超音波放射ユニットの損傷を防止しつつ、所望の向きに超音波が放射できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するために、本発明に係るスピーカは、超音波を放射向きに放射する超音波放射ユニットと、超音波放射ユニットの放射向き側に設けられ、超音波放射ユニットから放射された超音波が所定向きに向かうように反射する反射部材と、超音波放射ユニットと反射部材との間に設けられ、超音波放射ユニットから反射部材に至るまでの超音波の向きが変わらず、かつ、反射部材が反射した超音波の向きが変わらないようにスリットが形成され、更に異物が超音波放射ユニットに向かって侵入することを阻害するルーバユニットとを備えている。
【発明の効果】
【0008】
上記のように構成した本発明によれば、スピーカに反射部材が設けられているため、この反射部材の機能により所望の向きに超音波を放射することが可能である。その上で超音波放射ユニットと反射部材との間には、超音波の向きを変えることなく通過させ、かつ、異物が超音波放射ユニットに向かって侵入することを阻害するルーバユニットが設けられているため、超音波の向きが変わることなく、異物による超音波放射ユニットの損傷を防止できる。すなわち本発明によれば、車両の車体の外側に設置されるスピーカについて、異物による超音波放射ユニットの損傷を防止しつつ、所望の向きに超音波を放射できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るスピーカの斜視図である。
図2】第1実施形態に係るスピーカの正面図である。
図3】第1実施形態に係るスピーカの平面図である。
図4】第1実施形態に係るスピーカの左側面図である。
図5図3のA-A断面図である。
図6図3のB-B断面図である。
図7】放射対応ルーバの一部を示す図である。
図8】スピーカ下部とスピーカ上部との境目でスピーカを切断し、切断面の一部を上方から見た図である。
図9】超音波が放射される態様の説明に用いる図である。
図10】スピーカが設置された様子を示す図である。
図11】第2実施形態に係るスピーカの斜視図である。
図12】第2実施形態に係るスピーカの正面図である。
図13】第2実施形態に係るスピーカの平面図である。
図14図13のC-C断面図である。
図15図13のD-D断面図である。
図16】第3実施形態に係るスピーカの斜視図である。
図17】第3実施形態に係るスピーカの正面図である。
図18】第3実施形態に係るスピーカの平面図である。
図19図18のE-E断面図である。
図20】第4実施形態に係るスピーカの斜視図である。
図21】第4実施形態に係るスピーカの正面図である。
図22】第4実施形態に係るスピーカの平面図である。
図23】第4実施形態に係るスピーカの左側面図である。
図24図22のF-F断面図である。
図25】第4実施形態の変形例に係るスピーカの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係るスピーカ1の斜視図である。図2は、スピーカ1を前方から見た正面図である。図3は、スピーカ1を上方から見た平面図である。図4は、スピーカを左方から見た左側面図である。図5は、図3のA-A断面図である。図6は、図3のB-B断面図である。なお本実施形態では、スピーカ1を基準とした前方、後方、右方、左方、上方および下方を、図1~6の各図で示したように定義する。なお前方と後方とを含む方向が「前後方向」であり、右方と左方とを含む方向が「左右方向」でり、上方と下方とを含む方向が「上下方向」である。ただし、本実施形態で定義する「向き」は説明の便宜上のものであり、スピーカ1が車両の車体に設置された状態のときの「向き」とは何ら関係ない。
【0011】
本実施形態に係るスピーカ1は、車両の車体の外側に設置されることが想定された装置である。スピーカ1は、地面、その他の対象に指向性の強い音波である超音波を放射し、超音波が到達した地点において可聴音を発生させ、これにより歩行者、その他の人間に何らかの警告を行い或いは車両の存在を気付かせるものである。ただしスピーカ1の使用目的および使用態様は、これに限られるものではない。スピーカ1は、車両の車体の外側に設置されるため、小石、ゴミ、その他の異物に晒されることになる。後述するように本実施形態では、スピーカ1の構造的な特徴によって、異物による音波放射ユニット2の損傷が防止されている。
【0012】
図1、2、4~6で示すように、スピーカ1は、大きく分けてスピーカ下部3と、このスピーカ下部3の上方に位置するスピーカ上部4との2つの部位に分かれている。後述するようにスピーカ下部3には放射対応ルーバ11が設けられ、スピーカ上部4には反射対応ルーバ20が設けられている。放射対応ルーバ11および反射対応ルーバ20によりルーバユニット9が構成される。
【0013】
スピーカ下部3は、有底円筒状の下部ケース5を備えている。下部ケース5の底板6には、音波放射ユニット2が取り付けられている。詳述すると、音波放射ユニット2は、円盤状の基板7と、この基板7上に配列された複数の素子8と含んで構成されている。素子8は、所定波長の粗密波を発生させるものであり、一例としてピエゾ素子を含んで構成される。音波放射ユニット2は、その基板7の裏面が下部ケース5の底板6に固着されることによって、底板6に取り付けられている。
【0014】
音波放射ユニット2が放射する超音波の向き(以下「放射向き」という)は、本実施形態で定義される「上方」と一致する。なお図5、6では、放射向きを明示している。下部ケース5の円筒の部位に対応する筒部10の内周は、音波放射ユニット2が放射する超音波の放射口として機能する。
【0015】
下部ケース5において、音波放射ユニット2の上方には、放射対応ルーバ11が設けられている。以下、放射対応ルーバ11について詳述する。放射対応ルーバ11は、板状の羽板である下部左右延在羽板12と、板状の羽板である下部前後延在羽板13との2種類の羽板を含んで構成されている。図7は、放射対応ルーバ11の説明のために、3つの下部左右延在羽板12と3つの下部前後延在羽板13とを含む領域を切り出して、前後、上下、左右方向を示す矢印および放射向きを示す矢印と共に示す図である。
【0016】
図7で示すように下部左右延在羽板12は、2つの表面(厚み部分の4つの側面ではない広い面)が、上下方向および左右方向を含む仮想面α(前後方向に直交する仮想面α)と平行になるように設置されている。下部左右延在羽板12は、前後方向に並べて配置されており(図5も併せて参照)、隣り合う2つの下部左右延在羽板12の間には、スリットSAが形成されている。下部左右延在羽板12は、放射向きと平行にスリットSAが形成されるように設置されている。「スリットSAが放射向きと平行である」とは、スリットSA内で放射向きに伸びる仮想線を伸ばしたときに、下部左右延在羽板12の表面が、当該仮想線と交わらないことを意味する。
【0017】
図5で示すように、下部ケース5の筒部10の内側には、その全域に複数の下部左右延在羽板12が等間隔で並んで配置されている。下部左右延在羽板12のそれぞれは、下部ケース5の筒部10の内周に固着されており、これにより下部ケース5に対して固定されている。下部左右延在羽板12は、前後方向の中間部に位置しているものが最も左右方向の長さが長く、中間部の下部左右延在羽板12に対して前方に位置している羽板ほど、あるいは、後方に位置している羽板ほど、左右方向の長さが短い。
【0018】
図7で示すように下部前後延在羽板13は、2つの表面(厚み部分の4つの側面ではない広い面)が、上下方向および前後方向を含む仮想面β(左右方向に直交する仮想面β)と平行になるように設置されている。下部前後延在羽板13は、左右方向に並べて配置されており、隣り合う2つの下部前後延在羽板13の間には、スリットSBが形成されている。下部前後延在羽板13は、放射向きと平行にスリットSBが形成されるように設置されている。「スリットSBが放射向きと平行である」とは、スリットSB内で、放射向きに伸びる仮想線を伸ばしたときに、下部前後延在羽板13の表面が、当該仮想線と交わらないことを意味する。
【0019】
図6で示すように、下部ケース5の筒部10の内側には、その全域に複数の下部前後延在羽板13が等間隔で並んで配置されている。下部前後延在羽板13のそれぞれは、下部ケース5の筒部10の内周に固着されており、これにより下部ケース5に対して固定されている。下部前後延在羽板13は、左右方向の中間部に位置しているものが最も前後方向の長さが長く、中間部の下部前後延在羽板13に対して右方に位置している羽板ほど、或いは左方に位置している羽板ほど、前後方向の長さが短い。
【0020】
図8は、図2、4、5、6で示すスピーカ下部3とスピーカ上部4との境目Kでスピーカ1を切断し、切断面の一部を上方から見た様子を単純化して示す図である。図7、8で示すように下部左右延在羽板12と下部前後延在羽板13とは、上方から見たときに直角に交わるように配置されている。このため図8の断面図で示すように、スピーカ下部3とスピーカ上部4との境目Kの切断面を上方から見ると、下部左右延在羽板12と下部前後延在羽板13とにより格子形状が形成され、各羽板の間に、平面視で矩形のスリットSCが形成される。このスリットSCは、放射方向に平行なスリットである。なお後に明らかとなる通り、下部前後延在羽板13と、後述する上部前後延在羽板15とは1つの部材により一体的な部材で形成されている。そして下部前後延在羽板13において、下部左右延在羽板12と交わる部位には切り欠きが形成され、この切り欠きに下部左右延在羽板12が挿通している。なお、放射対応ルーバ11の最下端と、音波放射ユニット2の最上端との間には、隙間16が形成されている。
【0021】
上述したようにスピーカ下部3の上方にはスピーカ上部4が形成されている。スピーカ上部4の最上端部には、反射部材17が設けられている。つまり反射部材17は、超音波放射ユニット2の放射向き側に設けられている。反射部材17は、超音波放射ユニット2が放射した超音波について、超音波が所定向きに向かうように反射する部材である。以下、反射部材17により反射された後の超音波が向かう向きを「反射後向き」という。反射部材17は円板状の部材であり、超音波放射ユニット2に対向する表面は、超音波の反射効率の高い素材によって形成されている。反射部材17は、その後端部から前方に向かうに従って上方に向かうように傾いた状態で設置されている。以下、図5で示すように、上下方向に対する反射部材17の角度を「反射部材角度」という。反射部材角度は、実現したい反射後向きに応じて、適切に設定されている。
【0022】
図1、2、4、6(特に図4)で示すように、下部ケース5の筒部10から、スピーカ下部3とスピーカ上部4との境目Kを超えて上方に向かって筒部延在部18が延在している。反射部材17は、この筒部延在部18および全体前後延在羽板19(後述)に接続されており、これら部材によって支持されている。
【0023】
スピーカ上部4には、反射対応ルーバ20が設けられている。以下、反射対応ルーバ20について詳述する。図1、2、4、5、6で示すように、反射対応ルーバ20は、板状の羽板である上部前後延在羽板15を複数、含んで構成されている。上部前後延在羽板15のそれぞれは、スピーカ下部3の下部前後延在羽板13のそれぞれと一体的な部材であり、下部前後延在羽板13がスピーカ下部3とスピーカ上部4との境目Kを超えて延在した部分に上部前後延在羽板15が形成されている。上部前後延在羽板15は、2つの表面(厚み部分の4つの側面ではない広い面)が、上下方向および前後方向を含む仮想面β(左右方向に直交する仮想面β)(図7参照)と平行になるように設置されている。
【0024】
上部前後延在羽板15は、左右方向に並べて配置されており、隣り合う2つの上部前後延在羽板15の間には、スリットSDが形成されている。上部前後延在羽板15は、放射向きおよび反射後向きと平行にスリットSDが形成されるように設置されている。「スリットSDが放射向きと平行である」とは、スリットSD内で、放射向きに伸びる仮想線を伸ばしたときに、上部前後延在羽板15の表面が、当該仮想線と交わらないことを意味する。また「スリットSDが反射後向きと平行である」とは、スリットSD内で、反射後向きに伸びる仮想線を伸ばしたときに、上部前後延在羽板15の面が、当該仮想線と交わらないことを意味する。上述の通り、上部前後延在羽板15と下部前後延在羽板13とは一体的な部材である。以下、上部前後延在羽板15と下部前後延在羽板13とを含む一体的な部材のことを「全体前後延在羽板19」という。
【0025】
図1、4、5、6で示すように、上部前後延在羽板15のそれぞれの上端は、反射部材17に接している。従って図2で示すように、反射部材17の表面(超音波放射ユニットに対向する側の表面)の全域の前方に、上部前後延在羽板15が間隔をあけて設けられ、上部前後延在羽板15によってスリットSDが形成された状態となっている。
【0026】
スピーカ1では、以上の構造の下、以下の態様で超音波を放射する。図9は、超音波が放射される態様の説明に用いる図であり、図5の断面図に、超音波の経路(ただし単純化した経路)を示したものである。超音波放射ユニット2からは、放射向き(上方)に向かって超音波が放射される。超音波放射ユニット2が放射した超音波は、矢印Y1で示すように、スピーカ下部3の放射対応ルーバ11に形成されたスリットSC(図8も参照)を通って、放射向きに向かって進んでいく。ここでスリットSCは、放射向きに平行のスリットである。換言すれば、スリットSCのそれぞれは、放射向きに貫通した孔と言える。従ってスピーカ下部3において、超音波がスリットCを通る過程で、超音波が向かう向きが変わることはない。
【0027】
スピーカ下部3を上方に超えた超音波は更に、矢印Y2で示すように、スピーカ上部4の反射対応ルーバのスリットSDを通って、放射向きに向かって進んでいき、反射部材17に至る。ここでスリットSDは、放射向きに平行のスリットである。従ってスピーカ上部4において、超音波が反射部材17に至るまでに、超音波が向かう向きが変わることはない。
【0028】
矢印Y3で示すように、反射部材17に至った超音波は、反射部材17にて反射され、スピーカ上部4の反射対応ルーバ20のスリットSDを通って、反射後向きに向かって進んでいく。ここでスリットSDは、反射後向きに平行なスリットである。従ってスピーカ上部4において、反射部材17により反射された後の超音波について、超音波が向かう向きが変わることはない。
【0029】
以上の通り、ルーバユニット9は、超音波放射ユニット2と反射部材17との間に設けられ、超音波放射ユニット2から反射部材17に至るまでの超音波の向きが変わらず、かつ、反射部材17が反射した超音波の向きが変わらないようにスリット(スリットSC、スリットSD)が形成された部材である。つまりスピーカ1は、ルーバユニット9の存在によって超音波放射ユニット2から反射部材17に至るまでの超音波の向きが変わることはなく、かつ、反射部材17が反射した超音波の向きが変わることはなく、反射部材17の反射部材角度によって規定される所望の向きに超音波を放射する機能を有する。
【0030】
その上で、本実施形態に係るスピーカ1は、ルーバユニット9が存在することにより、異物による超音波放射ユニット2の損傷を効果的に防止できる。詳述すると、まずスピーカ上部4の反射対応ルーバ20がスピーカ1の内部に異物が侵入することを阻害する。すなわち反射対応ルーバ20が存在することにより、スリットSDよりも大きな異物についてはスリットSDの中に侵入できず、またスリットSDよりも小さな異物についても、上部前後延在羽板15の前端の側面や、表面に接触して跳ね返り、その大部分がスピーカ1の内部に侵入できない状態が構築される。
【0031】
更に反射対応ルーバ20のスリットSDの中に侵入した異物についても、スピーカ下部3の放射対応ルーバ11により、更なる内部への侵入が防止される。すなわちスリットSCは、スリットSDよりも細かい(小さい)スリットであり、スリットSCと比較して、より厳しくスリットSC内への異物の侵入が防止される。このため異物の大部分は、下部左右延在羽板12の上端の側面に接触して跳ね返り、スリットSDを経由してスピーカ1の外部に排出される。なお、スリットCに異物が進入することもあり得るが、異物は、この段階では非常に小さいものに絞られており、更に各種羽板、その他の部材に接触してスピードが減衰された状態であり、超音波放射ユニット2への衝撃が非常に緩和された状態である。以上により、異物による超音波放射ユニット2の損傷が効果的に防止されている。
【0032】
なお本実施形態に係るスピーカ1は、車両の車体の外側において、車体に対して様々な状態で設置されることが想定されている。例えば図10の(A)で示すように、底板6が反射部材17の鉛直下方に位置した状態で設置面に設置されることがある。一方、図10(A)の例とは逆に、図10(B)で示すように、底板6が反射部材17の鉛直上方に位置した状態で設置面に設置されることもある。どのような状態でスピーカ1が設置される場合であっても、ルーバユニット9の存在により、超音波放射ユニット2の損傷が防止される。
【0033】
以上説明したように本実施形態に係るスピーカ1は、超音波を放射向きに放射する超音波放射ユニット2と、超音波放射ユニット2の放射向き側に設けられ、超音波放射ユニット2から放射された超音波が所定向き(反射後向き)に向かうように反射する反射部材17と、超音波放射ユニット2と反射部材17との間に設けられ、超音波放射ユニット2から反射部材17に至るまでの超音波の向きが変わらず、かつ、反射部材17が反射した超音波の向きが変わらないようにスリットが形成され、更に異物が超音波放射ユニット2に向かって侵入することを阻害するルーバユニット9とを備える。
【0034】
この構成によれば、スピーカ1に反射部材17が設けられているため、この反射部材17の機能により所望の向きに超音波を放射することが可能である。その上で超音波放射ユニット2と反射部材17との間には、超音波の向きを変えることなく通過させ、かつ、異物が超音波放射ユニット2に向かって侵入することを阻害するルーバユニット9が設けられているため、超音波の向きが変わることなく、異物による超音波放射ユニット2の損傷を防止できる。すなわち本発明によれば、車両の車体の外側に設置されるスピーカ1について、異物による超音波放射ユニット2の損傷を防止しつつ、所望の向きに超音波を放射できる。
【0035】
特に本実施形態に係るスピーカ1はルーバユニット9を備えており、このルーバユニット9は以下の構成を備える。すなわちルーバユニット9は、反射部材17が反射する超音波の経路上に設けられ、放射向きおよび所定向き(反射後向き)と平行にスリットが形成されるように設置された複数の上部前後延在羽板15を有する反射対応ルーバ20と、超音波放射ユニット2が放射した超音波の経路上であって、反射対応ルーバ20を避けた場所に設けられ、反射対応ルーバ20の上部前後延在羽板15と平行に延在する下部前後延在羽板13および反射対応ルーバ20の上部前後延在羽板15と交わるように延在する下部左右前在羽板12を有する放射対応ルーバ11とを備える。
【0036】
この構成によれば、反射対応ルーバ20および放射対応ルーバ11の機能により、異物が超音波放射ユニット2に向かって侵入することを効果的に阻害し、超音波の向きが変わることなく、異物による超音波放射ユニット2の損傷を防止できる。
【0037】
<第2実施形態>
次に第2実施形態について説明する。図11は、本実施形態に係るスピーカ1Aの斜視図である。図12は、スピーカ1Aを前方から見た正面図である。図13は、スピーカ1Aを上方から見た平面図である。図14は、図13のC-C断面図である。図15は、図13のD-D断面図である。以下の第2実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
以下、スピーカ1Aの構造的な特徴について、第1実施形態に係るスピーカ1との相違点を中心に説明する。スピーカ1Aは、ルーバユニット9Aを備えている。ルーバユニット9Aは、スピーカ上部4に設けられた反射対応ルーバ20と、スピーカ下部3に設けられた放射対応ルーバ11Aとを含んで構成されている。そして放射対応ルーバ11Aは、第1実施形態に係る放射対応ルーバ11と以下の点で異なっている。
【0039】
すなわち図11~15で示すように放射対応ルーバ11Aは、第1実施形態に係る下部前後延在羽板13を有していない。つまり第1実施形態では、上部前後延在羽板15と下部前後延在羽板13とは一体的な部材(全体前後延在羽板19)であり、全体前後延在羽板19のスピーカ上部4に対応する部分に上部前後延在羽板15が形成され、スピーカ下部3に対応する部分に下部前後延在羽板13が形成されていた。一方、本実施形態では、上部前後延在羽板15が存在する一方、下部前後延在羽板13が存在しない。この結果、スピーカ下部3においては、放射対応ルーバ11Aの下部左右延在羽板12によってスリットSA(図14)が形成された状態となる。
【0040】
以上の説明したように、本実施形態に係るスピーカ1Aは、ルーバユニット9Aを備えており、このルーバユニット9Aは以下の構成を備える。すなわちルーバユニット9Aは、反射部材17が反射する超音波の経路上に設けられ、放射向きおよび所定向きと平行にスリット(スリットSD)が形成されるように設置された複数の上部前後延在羽板15を有する反射対応ルーバ20と、超音波放射ユニット2が放射した超音波の経路上であって、反射対応ルーバ20を避けた場所に設けられ、反射対応ルーバ20の上部前後延在羽板15と交わるように延在する下部左右延在羽板12を有する放射対応ルーバ11Aとを備える。
【0041】
この構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち超音波放射ユニット2から放射された超音波は、ルーバユニット9Aの存在によって向きが変わることがない。このためスピーカ1Aにより所望の向きに超音波を放射することが出来る。その上でルーバユニット9Aの存在により超音波放射ユニット2に向かって異物が侵入することが阻害され、超音波放射ユニット2の損傷が防止される。
【0042】
<第3実施形態>
次に第3実施形態について説明する。図16は、本実施形態に係るスピーカ1Bの斜視図である。図17は、スピーカ1Bを前方から見た正面図である。図18は、スピーカ1Bを上方から見た平面図である。図19は、図18のE-E断面図である。以下の第3実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0043】
以下、スピーカ1Bの構造的な特徴について、第1実施形態に係るスピーカ1との相違点を中心に説明する。図16~19で示すようにスピーカ1Bは、ルーバユニット9Bを備えている。ルーバユニット9Bは、スピーカ上部4に設けられた反射対応ルーバ20と、スピーカ下部3に設けられた放射対応ルーバ11Bとを含んで構成されている。そして放射対応ルーバ11Bは、第1実施形態に係る放射対応ルーバ11と以下の点で異なっている。
【0044】
すなわち放射対応ルーバ11Bは、第1実施形態に係る下部左右延在羽板12を有していない。つまり本実施形態に係るスピーカ1Bは、第1実施形態に係るスピーカ1から下部左右延在羽板12を取り除いた構造をしている。ただし全体前後延在羽板19Bには、切り欠き(第1実施形態において下部左右延在羽板12が挿通するための切り欠き)が形成されない。以上の構造のため、スピーカ下部3においては、下部前後延在羽板13BによってスリットSB(図19)が形成された状態となる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係るスピーカ1Bは、ルーバユニット9Bを備え、このルーバユニット9Bは以下の構成を備えている。すなわちルーバユニット9Bは、反射部材17が反射する超音波の経路上に設けられ、放射向きおよび所定向きと平行にスリットが形成されるように設置された複数の上部前後延在羽板15を有する反射対応ルーバ20と、超音波放射ユニット2が放射した超音波の経路上であって、反射対応ルーバ20を避けた場所に設けられ、反射対応ルーバ20の上部前後延在羽板15と平行に延在する下部左右延在羽板12を有する放射対応ルーバ11Bとを備える。
【0046】
この構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち超音波放射ユニット2から放射された超音波は、ルーバユニット9Bの存在によって向きが変わることがない。このためスピーカ1Bにより所望の向きに超音波を放射することが出来る。その上でルーバユニット9Bの存在により超音波放射ユニット2に向かって異物が侵入することが阻害され、超音波放射ユニット2の損傷が防止される。
【0047】
<第4実施形態>
次に第4実施形態について説明する。図20は、本実施形態に係るスピーカ1Cの斜視図である。図21は、スピーカ1Cを前方から見た正面図である。図22は、スピーカ1Cを上方から見た平面図である。図23は、スピーカ1Cを左方から見た左側面図である。図24は、図22のF-F断面図である。以下の第4実施形態の説明において、第1実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0048】
以下、スピーカ1Cの構造的な特徴について、第1実施形態に係るスピーカ1との相違点を中心に説明する。図20~24で示すようにスピーカ1Cは、ルーバユニット9Cを備えている。ルーバユニット9Cは、スピーカ下部3に設けられた放射対応ルーバ11を含んで構成されている。すなわちルーバユニット9Cは、第1実施形態に係る反射対応ルーバ20を備えておらず、この点でスピーカ1Cは、第1実施形態に係るスピーカ1と構造が異なっている。以上の構造のため、スピーカ下部3においては、下部左右延在羽板12と下部前後延在羽板13とによってスリットSC(図24)が形成された状態となる。
【0049】
以上説明したようにルーバユニット9Cは、超音波放射ユニット2が放射した超音波の経路上であって、反射部材17が反射する超音波の経路を避けた場所に設けられたルーバである放射対応ルーバ11を備え、反射部材17が反射する超音波の経路上にはルーバが設けられない。
【0050】
この構成によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。すなわち超音波放射ユニット2から放射された超音波は、ルーバユニット9Cの存在によって向きが変わることがない。このためスピーカ1Cにより所望の向きに超音波を放射することが出来る。その上でルーバユニット9Cの存在により超音波放射ユニット2に向かって異物が侵入することが阻害され、超音波放射ユニット2の損傷が防止される。
【0051】
<第4実施形態の変形例>
次に第4実施形態の変形例について説明する。図25は、本変形例に係るスピーカ1Dの左側面図である。本変形例に係るスピーカ1Dは、第4実施形態に係るスピーカ1Cと、後述する反射部材角度調整機構22を備えている点で異なっている。
【0052】
図25で示すように、スピーカ1Dには、反射部材角度調整機構22が設けられている。反射部材角度調整機構22は、左右方向の延びる軸23を備えている。この軸23は、反射部材17を貫通した上で反射部材17に固定されている。反射部材角度調整機構22は、ロック状態と、アンロック状態とを切り替え可能に構成されている。ロック状態では、筒部延在部18に対して反射部材17が固定され、反射部材17が動かない状態とされる。一方、アンロック状態では、反射部材17が一定の範囲内で図25の矢印Y4で示す方向に回動可能な状態となる。
【0053】
スピーカ1Dは、第1実施形態に係る反射対応ルーバ20が設けられない(=反射部材17が反射する超音波の経路上にルーバ設けられない)ことにより、第1実施形態に係る反射対応ルーバ20に対応する領域にスペース24が形成されている。このスペース24の存在により、反射部材17の姿勢を事後的に変更させることが可能であり、本実施形態ではスペース24を好適に活用して、反射後向き(所定向き)が変わるように反射部材17の姿勢を変更可能に構成されている。
【0054】
ユーザは、反射部材角度調整機構22を利用して、反射部材17の反射部材角度(反射部材17の姿勢)を事後的に調整できる。すなわちユーザは、アンロック状態とした上で、反射部材17の反射部材角度を調整し、ロック状態とすることによって反射部材17を動かない状態とする。
【0055】
なお本変形例では、反射部材角度調整機構22は、手動による反射部材17の反射部材角度(反射部材17の姿勢)の調整を可能とするものである。この点に関して、反射部材角度調整機構22が、モータ、動力伝達機構、モータドライバ等を備え、ユーザの指示に基づいて自動で反射部材17の反射部材角度(反射部材17の姿勢)を調整する構成でもよい。
【0056】
以上、複数の実施形態を説明したが、上記各実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【0057】
例えば第1実施形態では、上部前後延在羽板15と、下部前後延在羽板13とは一体的な部材であった。この点に関し、上部前後延在羽板15と、下部前後延在羽板13とが異なる部材であってもよい。この点は、第3実施形態についても同様である。
【0058】
また第1実施形態では、スピーカ下部3において下部左右延在羽板12と下部前後延在羽板13とが直角に交わる構成であった。この点に関し、下部左右延在羽板12と下部前後延在羽板13とが交わる角度は直角でなくてもよい。この点は、第4実施形態についても同様である。
【符号の説明】
【0059】
1、1A、1B、1C、1D スピーカ
2 超音波放射ユニット
9、9A、9B、9C ルーバユニット
11、11A、11B 放射対応ルーバ
17 反射部材
20 反射対応ルーバ
24 スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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