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特開2024-158133ビルの消費電力を制御するシステム、方法およびエレベータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158133
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】ビルの消費電力を制御するシステム、方法およびエレベータ
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20241031BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20241031BHJP
   G06Q 50/163 20240101ALI20241031BHJP
   G16Y 10/35 20200101ALI20241031BHJP
   G16Y 20/30 20200101ALI20241031BHJP
   G16Y 40/30 20200101ALI20241031BHJP
【FI】
G06Q50/06
B66B5/02 J
G06Q50/16 300
G16Y10/35
G16Y20/30
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073077
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 和久
【テーマコード(参考)】
3F304
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
3F304CA05
3F304EC01
5L049CC06
5L049CC29
5L050CC06
5L050CC29
(57)【要約】
【課題】非常時において自力移動困難者のエレベータによる避難を可能にしつつ、平常時において当該ビルの消費電力を低減することが可能な技術を提供する。
【解決手段】ビル消費電力制御システムは、ビルの消費電力を制御するシステムであって、当該ビルの階毎の人数を表す情報である在館者情報を記録する在館者情報記録部を備え、在館者情報に基づいて、当該ビルの消費電力を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルの消費電力を制御するビル消費電力制御システムであって、
当該ビルの階毎の人数を表す情報である在館者情報を記録する在館者情報記憶部を備え、
前記在館者情報に基づいて、当該ビルの消費電力を制御する
ビル消費電力制御システム。
【請求項2】
前記在館者情報は、自力での移動が困難な人を表す自力移動困難者の人数を含む、請求項1に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項3】
前記在館者情報は、車椅子使用者の人数を含む、請求項2に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項4】
前記ビルへの電力供給を制御する給電制御部をさらに備える、請求項1に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項5】
前記給電制御部は、商用系統からの供給電力に係る電力料金を目的関数として制御する、請求項4に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項6】
前記給電制御部は、電力消費に伴って生じる二酸化炭素の排出量を目的関数として制御する、請求項4に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項7】
前記給電制御部は、前記商用系統からの電力が停止した状態で、在館者の避難に必要なエネルギーを確保したうえで制御を行う、請求項5に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項8】
前記在館者の避難に必要なエネルギーは、前記在館者情報のうち、自力での移動が困難な人を表す自力移動困難者が避難できる階まで昇降機で移動するためのエネルギーを含む、請求項7に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項9】
前記在館者情報に基づいて、当該ビル内の電力負荷を制御する、請求項1に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項10】
前記ビル内の電力負荷は、空調装置、照明装置および昇降機の少なくともいずれかを含む、請求項9に記載のビル消費電力制御システム。
【請求項11】
請求項2に記載のビル消費電力制御システムにより、避難が必要な場合に前記自力移動困難者を誘導手段によって搭乗させて、避難階に移動させる運転を行う、エレベータ。
【請求項12】
ビルの消費電力を制御するビル消費電力制御方法であって、
少なくともプロセッサと記憶装置とを備えるコンピュータが、
当該ビルの階毎の人数を表す情報である在館者情報を記録し、
前記在館者情報に基づいて、当該ビルの消費電力を制御する
ビル消費電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビルの消費電力を制御するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、中高層の建築物(以下、「ビル」と総称する)には、他の階への昇降移動の手段として、エレベータが設置されていることが多い。このエレベータは、例えば車椅子の利用者や高齢者等のビル内を自ら昇降移動することが困難である者(以下、「自力移動困難者」と称する)に対するバリアフリーの観点において、必要不可欠な存在である。
【0003】
しかしながら、例えば大規模な自然災害の発生等に伴って停電が生じた場合、大多数の一般的なエレベータを利用したビル内の昇降移動は、大幅に制約されることが通常である。そこで、このような場合、すなわち災害発生時にもエレベータを利用して、ビル内に取り残された自力移動困難者の避難や救助を円滑かつ確実に行うための各種技術が提案されている(例えば特許文献1~2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-116520号公報
【特許文献2】特開2011-178483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、各種ビル設備を含むビルの消費電力に関しても、省エネルギーの要求が高まっている。
【0006】
このような観点の下、平常時においては当該ビルの消費電力を低減して省エネルギーの要求に応えつつ、災害発生時のような非常時において自力移動困難者のエレベータによる避難を可能にしようとした場合には、既存の技術によっては難しく、新規な技術の開発が待たれていた。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、非常時において自力移動困難者のエレベータによる避難を可能にしつつ、平常時において当該ビルの消費電力を低減する
することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるビル消費電力制御システムは、ビルの消費電力を制御するシステムであって、当該ビルの階毎の人数を表す情報である在館者情報を記録する在館者情報記録部を備え、在館者情報に基づいて、当該ビルの消費電力を制御する。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、非常時において自力移動困難者のエレベータによる避難を可能にしつつ、平常時において当該ビルの消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るビル消費電力制御システムを含むシステム全体の構成例を示す図である。
図2】実施形態に係るビル消費電力制御システムの動作の一例を示す図である。
図3】ビル消費電力制御システムが実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図4】平常時給電制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5】平常時負荷制御処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図6】非常時における避難優先表示の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザーインターフェースデバイス、例えば、キーボードおよびポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0013】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、または、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0015】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0016】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「xxxテーブル」といった表現にて、入力に対して出力が得られる情報を説明することがあるが、当該情報は、どのような構造のテーブルでもよいし、入力に対する出力を発生するニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムやランダムフォレストに代表されるような学習モデルでもよい。従って、「xxxテーブル」を「xxx情報」と言うことができる。また、以下の説明において、各テーブルの構成は一例であり、一つのテーブルは、二つ以上のテーブルに分割されてもよいし、二つ以上のテーブルの全部または一部が一つのテーブルであってもよい。
【0018】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0019】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムを主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。また、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0020】
また、以下の説明では、「ビル消費電力制御システム」は、一つ以上の物理的な計算機で構成されたシステムでもよいし、物理的な計算リソース群(例えば、クラウド基盤)上に実現されたシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)を含んでいてもよい。ビル消費電力制御システムが表示用情報を「表示する」ことは、計算機が有する表示デバイスに表示用情報を表示することであってもよいし、計算機が表示用計算機に表示用情報を送信することであってもよい(後者の場合は表示用計算機によって表示用情報が表示される)。
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態を詳細に説明する。
【0022】
なお、以下の説明においては、同一の、または類似する構成に共通の符号を付すことにより、重複した説明を省略することがある。
【0023】
また、同一あるいは同様の機能を有する要素が複数存在する場合に、当該複数の要素を区別するために、同一の符号に異なる添字を付して説明することがある。他方、当該複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明することがある。
【0024】
<ビル消費電力制御システム100の構成例>
まず、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100の構成例について、図1~2を参照しつつ説明する。図1は、ビル消費電力制御システム100を含むシステム全体の構成の一例を概略的に示した図である。また、図2は、ビル消費電力制御システム100の動作の一例を示した図である。
【0025】
(システム全体の構成例)
本実施形態のビル消費電力制御システム100は、制御対象であるビル10の消費電力を制御することが可能なコンピュータシステムであり、後述の各構成を備えるコンピュータ装置またはサーバ装置によって実現される。
【0026】
なお、以下の本実施形態の説明は、このビル消費電力制御システム100が、A号機30a、B号機30bおよびC号機30cの三つの号機を備えるエレベータ30が設置されている10階建てのビル10の消費電力を制御する場合を例に行う。
【0027】
ビル消費電力制御システム100は、図1に例示したように、当該ビル10に設置されたエレベータ30の動作を制御するエレベータ制御装置31(詳細後述)と、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されている。
【0028】
同様に、このビル消費電力制御システム100は、図1に例示したように、当該ビル10の各階に設置された空調装置60a、60b、60c・・・60n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「空調装置60」と総称する)や照明装置70a、70b、70c・・・70n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「照明装置70」と総称する)等といった、各階の主要な電力負荷である各種ビル設備の制御システムとも、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されている。
【0029】
さらに、ビル消費電力制御システム100には、図1に例示したように、当該ビル10の内部に設置された蓄電装置(以下、「ビル内蓄電装置」とも称する)41や、当該ビル10の屋上や外壁等に設置された太陽光発電装置や小型風力発電装置等の発電装置42、当該ビル10の外部から電力を供給する系統電源51、動力源として蓄電装置が搭載された電気自動車52等といった各種電力供給源からの、当該ビル10への給電を制御する給電制御システム20が、通信ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されている。なお、この給電制御システム20は、上述したエレベータ制御装置31や各種ビル設備の制御システムとも、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されている。ここで、給電制御システム20は給電制御の機能を有しているが、給電回路は一般的なパワーエレクトロニクス装置で構成されるため、本明細書では説明を省略して、制御機能についても説明する。
【0030】
なお、ビル消費電力制御システム100、エレベータ制御装置31および給電制御システム20と、通信ネットワークとは、それぞれ周知の通信用機器(不図示)を介して有線で接続されるが、無線で接続されてもよい。
【0031】
また、このビル消費電力制御システム100に対して、例えば、ビル消費電力制御システム100のユーザである当該ビル10の管理業務担当者が保有するラップトップPCやタブレット、スマートフォン等のユーザ端末(不図示)が、インターネットや専用線等の適宜な通信ネットワークを介して相互にデータ通信可能に接続されていてもよい。この場合、ユーザ端末と通信ネットワークとは無線で接続されてもよいし、有線で接続されてもよい。
【0032】
なお、本実施形態では、図1に例示したように、ビル消費電力制御システム100が一つの装置からなるものとして説明した。しかしながら、例えば、ビル消費電力制御システム100は、複数の装置から構成されていてもよい。
【0033】
また、本実施形態では、図1に例示したように、ビル消費電力制御システム100とエレベータ制御装置31および給電制御システム20とが別々の装置からなるものとして説明した。しかしながら、ビル消費電力制御システム100と、エレベータ制御装置31および/または給電制御システム20とは、同一の装置によって構成されていてもよい。この場合、ビル消費電力制御システムは、例えば、エレベータ制御装置31および/または給電制御システム20を含むシステムとして構成されていてもよい。また、例えば、ビル消費電力制御システムは、エレベータ制御装置31および/または給電制御システム20が担う一部または全部の機能を含む形で構成されていてもよい。
【0034】
(ビル消費電力制御システム100のハードウェア構成例)
次に、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100のハードウェア構成の一例について説明する。
【0035】
本実施形態のビル消費電力制御システム100は、一台の汎用コンピュータ装置によって実現される。以下の説明は、ビル消費電力制御システム100が、一つ以上のプロセッサ、一つ以上の記憶装置、一つ以上のインターフェース装置、およびそれらを連結する有線または無線の通信線(いずれも不図示)を備える一台の汎用コンピュータ装置により実現されているものとして行う。
【0036】
すなわち、ビル消費電力制御システム100は、永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置と、インターフェース装置と、それらに接続されたプロセッサとを有する。
【0037】
永続記憶装置は、フラッシュメモリ(Flash Memory)のような不揮発性記憶素子からなる補助記憶デバイスである。永続記憶装置の具体例としては、SSD(Solid State Drive)やHDD(Hard Disk Drive)等が挙げられる。永続記憶装置は、少なくともビル消費電力制御プログラムを格納する。ビル消費電力制御プログラムは、ビル消費電力制御システム100として必要な機能を実装するためのコンピュータプログラムである。
【0038】
すなわち、ビル消費電力制御プログラムがプロセッサにより実行されることで、後述する平常時給電制御処理(図3~4に関連して詳細後述)や平常時負荷制御処理(図4~5に関連して詳細後述)をはじめとする各種処理が行われる。
【0039】
なお、ビル消費電力制御プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えばプログラム配布計算機や計算機が読み取り可能な記録媒体等であってもよい。また、ビル消費電力制御プログラムは、デバイスドライバ、オペレーティングシステム、それらの上位層に位置する各種アプリケーションプログラム、また、これらのプログラムに共通機能を提供するライブラリによって構成されてもよい。さらに、二つ以上のプログラムが一つのビル消費電力制御プログラムとして実現されてもよいし、一つのビル消費電力制御プログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0040】
メモリは、主にRAM(Random Access Memory)のような揮発性記憶素子からなる主記憶デバイスである。メモリには、永続記憶装置から読み込んだ各種情報を表すデータや、エレベータ制御装置31および/または給電制御システム20から取得した各種データが一時的に保持される。
【0041】
プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)および各種コプロセッサ(Co-processor)等のプロセッサデバイスである。このプロセッサは、ビル消費電力制御プログラムをメモリに呼び出して実行することにより、ビル消費電力制御システム100自体の統括制御を行なうとともに、演算処理や判定処理等の各種処理を行う制御部110を司る。
【0042】
インターフェース装置は、通信ネットワークに接続して他の装置や端末等と通信を行う通信インターフェースデバイスと、I/Oインターフェースデバイスとを含む。
【0043】
(ビル消費電力制御システム100の機能ブロック例)
次に、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100が備える各種機能のブロックの一例について、図1~2を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0044】
ビル消費電力制御システム100は、制御部110、記憶部120および通信部(不図示)と、入力部および出力部からなるユーザーインターフェース部(いずれも不図示)との各機能ブロックを備えて構成される。
【0045】
制御部110は、記憶部120が格納しているプログラムやデータ、および、通信部により取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行する。また、制御部110は、例えば、後述する在館者情報記憶部210に記憶されている在館者情報に基づいて給電制御や負荷制御を行うための各種処理や、各負荷に対して制御指令を与えるための各種処理を実行する。制御部110は、記憶部120および通信部のインターフェースとしても機能する。
【0046】
制御部110は、図2に示すように最低必要消費電力量算出部111、使用可能放電量算出部112および給電制御部113の各機能ブロックを有する。
【0047】
最低必要消費電力量算出部111は、最低必要消費電力量を算出する処理を実行する。
【0048】
使用可能放電量算出部112は、使用可能な放電量を算出する処理を実行する。
【0049】
給電制御部113は、前述した電力負荷および電力供給源に対する給電を制御するための各種処理を実行する。給電制御部113は、この処理を、給電制御システム20の制御部と協働して実行する。また、給電制御部113は、この処理を、単独で実行することもできる。
【0050】
制御部110は、プロセッサを用いて構成され、所定のビル消費電力制御プログラムを実行することによって、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、プロセッサの代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路を用いて制御部110を構成してもよい。また、プロセッサと論理回路との組合せによって制御部110を構成してもよい。
【0051】
記憶部120は、例えば永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置を用いて構成されており、制御部110に各種処理命令を供給するプログラム、および制御部110が実行する処理において用いられる各種情報を表すデータを格納する。
【0052】
記憶部120は、在館者情報記憶部210を機能ブロックとして有する。
【0053】
在館者情報記憶部210は、当該ビル10の在館者の人数に関する情報である在館者情報を記憶する。在館者情報記憶部210は、この在館者情報を、図1~2に例示した在館者情報テーブルに格納することによって記憶する。在館者情報テーブルは、在館者情報を管理するためのテーブルである。在館者情報テーブルは、当該ビル10の階毎にレコードを有する。レコードは、例えば当該ビル10の階数と、当該階の在館者全体の人数と、当該階の在館者のうち、自力移動困難者の人数とを表す。この自力移動困難者の人数は、さらに、車椅子の利用者(以下、「車椅子利用者」と称する)の人数と、事前登録を行った者(以下、「事前登録者」と称する)の人数とに区分される。すなわち、在館者情報テーブルは、レコード毎に、当該ビル10の階数と、当該階の在館者全体の人数および各種自力移動困難者の人数とを紐付けて記録することにより、自力移動困難者を中心とした各種在館者の人数を階毎に管理するものである。図1~2に示す例によれば、在館者情報テーブルには、当該ビル10の2階には、在館者が15人いること、そのうち1人が車椅子利用者であること、2人が事前に自力移動困難であると登録済みの事前登録者であることが記録されている。
【0054】
在館者情報は、図2に例示したように、ビル消費電力制御システム100の制御部110が、当該ビル10の各階に設置された入退室管理装置80a、80b、80c・・・80n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「入退室管理装置80」と総称する)から取得した当該階の入退室人数に関する情報や、対応するエレベータ制御装置(31a、31b、31c)から取得した号機毎のエレベータ(30a、30b、30c)の乗降人数や利用状況に関する情報から求めることによって生成される。当該エレベータ(30a、30b、30c)の利用状況に関する情報は、ビル消費電力制御システム100の制御部110が、各階の乗り場付近に設置された車椅子呼び装置38に対する入力操作の履歴や、乗りかご33内のカメラが撮影した画像等から取得する。
【0055】
在館者情報は、いずれかの項目について人数に変化がある毎に更新される。これにより、常に最新の在館者情報が在館者情報記憶部210に記憶される。
【0056】
なお、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、上述した自力移動困難者の事前登録を、入退室管理装置80から取得した情報や、エレベータ制御装置(31a、31b、31c)から取得したホール呼びの登録に関する情報に基づいて、自動的に行ってもよい。
【0057】
制御部110は、これらの情報を記憶部120に読み書きすることで、前述の平常時給電制御処理(図3~4に関連して詳細後述)や平常時負荷制御処理(図4~5に関連して詳細後述)をはじめとする各種処理を実行することができる。すなわち、ビル消費電力制御システム100は、在館者情報記憶部210に記憶されている上記の在館者情報に基づいて、給電制御および負荷制御を行う。
【0058】
通信部は、インターネット(通信ネットワークの一例)を介して行われる、エレベータ制御装置31や給電制御システム20等の他の機器との通信処理を担当する。通信部は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0059】
ユーザーインターフェース部(不図示)は、入力部および出力部の各機能ブロックを含んで構成される。
【0060】
入力部は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、ユーザからの入力操作の受け付け等、入力に関する処理を担当する。入力部は、例えばキーボードやポインティングデバイス、タッチパネル等を用いて構成され、ユーザからの各種操作を検出する。
【0061】
出力部は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示や音声出力等、出力に関する処理を担当する。出力部は、例えば液晶ディスプレイやタッチスクリーン等を用いて構成される。
【0062】
すなわち、ビル消費電力制御システム100の各構成要素は、プロセッサ、メモリや永続記憶装置といった記憶装置、それらを連結する有線または無線の通信線やインターフェース装置を含むハードウェアと、記憶装置に格納され、演算器に処理命令を供給するソフトウェアによって実現される。
【0063】
本実施形態では、ビル消費電力制御システム100の各機能が一台のコンピュータ装置により一体的に実現されているものとして説明した。しかしながら、これらの各機能は相互に接続された複数台のコンピュータ装置またはサーバ装置によって実現されてもよい。また、ビル消費電力制御システム100は、ラップトップPC等の汎用コンピュータ装置と、これにインストールされたウェブブラウザとを含む構成であってもよいし、ウェブサーバや各種携帯機器を含む構成であってもよい。
【0064】
また、ビル消費電力制御システム100が、上述した各種機能に加えて、さらに別の機能を備えていてもよい。
【0065】
(エレベータ制御装置31の構成例)
本実施形態のエレベータ制御装置31は、一つ以上の号機を備えるエレベータ30の動作を制御するためのコンピュータシステムであり、それぞれ後述の各構成を備える複数のコンピュータ装置および/または制御基板によって実現される。
【0066】
このエレベータ制御装置31は、例えば、全体管理部、号機制御部およびホール端末個別制御部と、制御用の各種専用線やインターネット等によりこれらを相互に通信可能に接続する通信ネットワークとを備えて構成される。
【0067】
全体管理部は、例えば、エレベータ制御装置31の制御対象であるエレベータ30が設置されているビル10の管理室等に設置されて、当該エレベータ30の全体を管理する情報処理端末である。すなわち、全体管理部は、当該エレベータ30を構成している全ての号機(30a、30b、30c)を管理対象とする。
【0068】
全体管理部は、表示部および通信部の各機能ブロックを含んで構成される。
【0069】
表示部は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示をはじめとする、出力に関する処理を担当する。表示部は、例えば液晶ディスプレイやタッチスクリーン等を用いて構成される。
【0070】
通信部は、LAN(Local Area Network)や専用線等といった通信線(通信ネットワークの一例)を介して行われる、当該エレベータ30の号機毎に設けられた号機制御部等の他の機器との通信処理を担当する。通信部は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0071】
号機制御部は、制御対象の号機の制御に関する各種処理を実行する。
【0072】
号機制御部は、通信インターフェース部、モータ制御部、かご制御部およびホール端末全体制御部の各機能ブロックを含んで構成される。
【0073】
通信インターフェース部は、LAN(Local Area Network)や専用線等といった通信線(通信ネットワークの一例)を介して行われる、全体管理部や、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末(不図示)に対応して設けられ、対応関係にあるホール端末の制御をそれぞれ行うホール端末個別制御部(不図示)等の他の機器との通信処理を担当する。通信インターフェース部は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0074】
モータ制御部は、当該号機の動力源であるモータ32をはじめとする、各種エレベータ駆動装置の制御に関する処理を実行する。モータ32は、乗りかご33および錘34に取り付けられたロープ35を巻回して、乗りかご33を昇降させる。モータ制御部は、ホール呼びが登録された乗り場階や、行先呼びが登録された行先階に乗りかご33が停止するように、モータ32の動作を制御する。モータ制御部の動作は、かご制御部により制御される。モータ32は、不図示のプログラム格納部から読み出したプログラムに従って動作する。
【0075】
かご制御部は、当該号機の乗りかご33の制御に関する各種処理を実行する。乗りかご33は、当該ビル10に設けられた不図示の昇降路を昇降する。かご制御部は、この昇降動作をはじめとする乗りかご33の各種かご動作を制御する。他のかご動作としては、例えば、ホール階における乗りかご33の到着を知らせるランタンの点灯、乗りかご33内の行先階ボタンの登録に応じた行先呼びの設定、乗りかご33のかごドアの開閉制御等が挙げられる。
【0076】
ホール端末全体制御部は、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末の制御に関する各種処理を、当該ホール端末とそれぞれ対応関係にあるホール端末個別制御部と協働して実行する。ホール端末は、当該ビル10の各ホール階の当該号機の乗り場に設けられ、利用者がホール呼びを登録するために用いられる。ホール端末全体制御部は、ホール端末に登録されたホール呼びの情報を取得して、かご制御部にホール呼びの情報を出力する。また、ホール端末全体制御部は、ホールボタン(図6の37a~37c)が押されたことを示す情報をかご制御部に出力してもよい。
【0077】
ホール端末個別制御部は、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末にそれぞれ対応して設けられている。ホール端末個別制御部は、対応関係にあるホール端末の制御のための各種処理を実行する。
【0078】
入出力制御部は、ホール呼びを登録するためのホールボタン37や移動中の乗りかご33の階床数を表示するインジケータといったホール端末の構成要素や、ホール端末に接続された、乗りかご33のホール階への到着を点灯して利用者に知らせるホールランタン等の制御を行う。
【0079】
電源監視部は、ホール端末個別制御部および/またはホール端末に電力を供給する電源を監視する。
【0080】
なお、上述した各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0081】
例えば、本実施形態では、全体管理部と号機制御部とが通信ネットワークを介して相互に接続されている別々の装置からなるものとして説明したが、全体管理部および号機制御部は、同一の装置によって構成されていてもよい。
【0082】
また、エレベータ制御装置31が、上述した各種機能に加えて、さらに別の機能を備えていてもよい。例えば、エレベータ制御装置31は、給電制御システム20が備える後述の機能の一部を含む形で構成されていてもよい。
【0083】
(給電制御システム20の機能ブロック例)
次に、本実施形態に係る給電制御システム20が備える各種機能のブロックの一例について説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0084】
本実施形態の給電制御システム20は、当該ビル10の各種ビル設備に対して給電制御を行うためのコンピュータシステムであり、それぞれ後述の各構成を備える複数のコンピュータ装置および/または制御基板によって実現される。
【0085】
給電制御システム20は、制御部、記憶部および通信部と、入力部および出力部からなるユーザーインターフェース部(いずれも不図示)との各機能ブロックを備えて構成される。
【0086】
制御部は、記憶部が格納しているプログラムやデータ、および通信部により取得されたデータに基づいて各種データ処理を実行する。また、制御部は、ビル消費電力制御システム100の給電制御部113と協働して、前述した電力負荷および電力供給源に対する給電を制御する処理を実行する。なお、制御部は、この電力負荷および電力供給源に対する給電制御処理を、単独でも実行することができる。制御部は、記憶部および通信部のインターフェースとしても機能する。
【0087】
制御部は、プロセッサを用いて構成され、所定のプログラムを実行することによって、これらの機能ブロックを実現することができる。なお、プロセッサの代わりに、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路を用いて制御部を構成してもよい。また、プロセッサと論理回路との組合せによって制御部を構成してもよい。
【0088】
記憶部は、例えば永続記憶装置およびメモリからなる記憶装置を用いて構成されており、制御部に各種処理命令を供給するプログラム、および制御部が実行する処理において用いられる各種情報を表すデータを格納する。制御部は、これらの情報を記憶部に読み書きすることで、各種処理を実行することができる。
【0089】
通信部は、インターネット(通信ネットワークの一例)を介して行われる、ビル消費電力制御システム100等の他の機器との通信処理を担当する。通信部は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0090】
ユーザーインターフェース部(不図示)は、入力部(不図示)および出力部(不図示)の各機能ブロックを含んで構成される。
【0091】
入力部は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、ユーザからの入力操作の受け付け等、入力に関する処理を担当する。入力部は、例えばタッチパネル等を用いて構成され、ユーザからの各種操作を検出する。
【0092】
出力部は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示や音声出力等、出力に関する処理を担当する。出力部は、例えばタッチスクリーンや液晶ディスプレイ等を用いて構成される。
【0093】
なお、上述した各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0094】
また、給電制御システム20が、上述した各種機能に加えて、さらに別の機能を備えていてもよい。例えば、給電制御システム20は、エレベータ制御装置31が備える前述の機能の一部を含む形で構成されていてもよい。
【0095】
(ビル消費電力制御システム100の動作例)
次に、ビル消費電力制御システム100が備える各構成の動作例について、図2を参照しつつ説明する。
【0096】
ビル消費電力制御システム100は、図2に例示したように、当該ビル10の各階にある入退室管理装置80から取得した入退室情報と、エレベータ30の乗降人数とに基づいて在館者情報を取得し、在館者情報記憶部210に記憶していく。なお、在館者情報は、人数に変化がある毎に更新される。これにより、常に最新の在館者情報が、在館者情報記憶部210に記憶される。
【0097】
また、ビル消費電力制御システム100は、前述した最低必要消費電力量算出部111、使用可能放電量算出部112および給電制御部113の各機能部によって給電制御システム20への充放電指令を出力する。
【0098】
まず、最低必要消費電力量算出部111が、在館者情報と、エレベータ30の仕様に関する情報およびかご位置に関する情報とから、自力移動困難者が避難できる階へ移動するために最低限必要な電力量を算出する。
【0099】
次に、使用可能放電量算出部112が、最低必要消費電力量算出部111が算出した上記の必要消費電力量に加えて、蓄電装置41の蓄電残量と、天気予報に基づいて予測した発電装置42の発電量とを考慮して、使用可能な放電量を算出する。なお、前述したように、本実施形態に係る発電装置42は、当該ビル10の屋上や外壁等に設置された太陽光発電装置や小型風力発電装置等である。そのため、ここでは、発電装置42の発電量が天気予報に基づいて予測されるものとして説明した。しかしながら、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100は、当該ビル10内に設置された発電装置が他の発電方式によって発電を行う発電装置である場合には、当該発電装置の発電量を、他の適宜な指標に基づいて予測する。
【0100】
さらに、給電制御部113は、時間帯毎に変化する電力料金情報に基づいて、充放電指令を導出する処理を実行する。
【0101】
なお、給電制御部113は、当該電力料金情報の代わりに、時間帯毎の二酸化炭素の排出量に基づいて、充放電指令を導出する処理を実行してもよい。
【0102】
また、導出される充電指令と放電指令とが相反する傾向にある場合には、給電制御部113は、あらかじめ制御における重みづけを行っておく等の方法によって、両者の最適化を図ってもよい。
【0103】
<処理フロー例>
次に、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100で実行される各処理について、図3~5を参照しつつ説明する。
【0104】
(ビル消費電力制御処理)
図3は、本実施形態に係るビル消費電力制御システム100が実行するビル消費電力制御処理の流れの一例を示したフローチャートである。
【0105】
ステップS9において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、非常時(停電している)か否かを判定する処理を実行する。この判定処理は、当該制御の周期毎に実行される。ステップS9で非常時である(停電している)と判定された場合(ステップS9:Y)は、後述する非常時空調・照明指令を発出するためにステップS991に進む。当該ビル10内の負荷電力を低減するためである。他方、ステップS9で非常時でない(停電していない)と判定された場合(ステップS9:N)は、平常時給電制御(図4に関連して詳細後述)を行うためにステップS91に進む。
【0106】
ステップS991において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、非常時空調・照明指令を発出する処理を実行する。ある程度長時間の停電が想定される場合には、あらかじめ在館人数に応じて決めておいた避難階のみ最低限の空調装置60や照明装置70の稼働とすることで、消費電力を低減することができるためである。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS991における処理が完了すると、ステップS992に進む。
【0107】
ステップS992において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、自力移動困難者昇降指令を発出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS992における処理が完了すると、ステップS993に進む。
【0108】
ステップS993において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、エレベータ30に自力移動困難者昇降運転を行わせる制御処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS993における処理が完了すると、ステップS994に進む。
【0109】
ステップS994において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、非常時給電制御として、蓄電装置41に放電を指令する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS994における処理が完了すると、再びステップS9に戻る。
【0110】
他方、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS91における平常時給電制御処理が完了したときも、再びステップS9に戻る。この平常時給電制御処理の詳細は、図4に関連して後述する。
【0111】
(平常時給電制御処理)
図4は、本実施形態で行われる平常時給電制御処理の流れの一例を示したフローチャートである。この平常時給電制御処理は、前述したように、ビル消費電力制御システム100の制御部110が、図3のステップS91において実行する処理である。
【0112】
ステップS911において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、電力情報の読取を行う処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS911における処理が完了すると、ステップS9121に進む。
【0113】
ステップS9121において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、天気予報に関する情報の読取を行う処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9121における処理が完了すると、ステップS9122に進む。
【0114】
ステップS9122において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、当該ビル10内の発電量を算出する処理を実行する。なお、電力情報や天気予報に関する情報、当該ビル10内の発電量に関する情報は、いずれも頻繁に変化するものではない。そのため、ステップS911~ステップS9122の各処理は、例えば30分おきの更新周期で実行される。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9122における処理が完了すると、ステップS9131に進む。
【0115】
ステップS9131において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、在館者情報の読取を行う処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9131における処理が完了すると、ステップS9132に進む。
【0116】
ステップS9132において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、在館者情報に変化があるか否かを判定する処理を実行する。在館者情報に変化があると判定された場合(ステップS9132:Y)は、新たな在館者情報に基づいて、非常時において空調装置60や照明装置70を動作させるために必要であると想定される電力量を算出するためにステップS914に進む。他方、在館者情報に変化がないと判定された場合(ステップS9132:N)は、在館者情報の更新は行なわずに、ステップS9161に進む。
【0117】
ステップS914において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、非常時において空調装置60および照明装置70を動作させるために必要であると想定される電力量を、新たな在館者情報に基づいて算出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS914における処理が完了すると、ステップS9151に進む。
【0118】
ステップS9151において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、在館者情報に含まれる各階の人数および特性を表す情報から、自力移動困難者の人数を特定する処理を実行する。また、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、自力移動困難者の所在場所や特性等を特定してもよい。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9151における処理が完了すると、ステップS9152に進む。
【0119】
ステップS9152において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、当該エレベータ30の号機の移動に必要な電力量(移動必要電力量)を算出して、更新する処理を実行する。なお、エレベータ30の現在のかご位置によって必要な消費電力量は変化するが、ここでは、かご位置の変化に関する情報については更新対象としていない。基準階あるいは避難階に乗りかご33があるものとして計算することで、自力移動困難者の救出可能なエネルギーを確保できる。ただし、超高層ビルなど長行程の場合には、算出される移動必要電力量が実際に必要な電力量に比べてかなり余裕をもつ可能性がある。その場合にはエレベータ制御装置31からかご位置情報を取得するステップを入れて計算するのが望ましい。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9152における処理が完了すると、ステップS9161に進む。
【0120】
ステップS9161において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、当該ビル10内において最低限、必要な電力量(最低必要電力量)を算出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9161における処理が完了すると、ステップS9162に進む。
【0121】
ステップS9162において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9122で算出されたビル内発電量を加味して、最低蓄電残量(最低蓄電残量)を算出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9162における処理が完了すると、ステップS9163に進む。
【0122】
ステップS9163において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9162で算出された最低蓄電残量を現在の蓄電残量と比較することで、使用可能な放電量(使用可能放電量)を算出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS9163における処理が完了すると、ステップS92に進む。
【0123】
ステップS92において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、平常時負荷制御処理を実行する。なお、この平常時負荷制御処理の詳細は、図5に関連して後述する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS92における処理が完了すると、ステップS917に進む。
【0124】
ステップS917において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS92における平常時負荷制御処理の内容を踏まえて、給電制御処理として、充放電指令を発出する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS917における処理が完了すると、ステップS918に進む。
【0125】
ステップS918において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、更新周期が到来しているか否かを判定する処理を実行する。ここで、在館者情報は逐次変化するため、短い周期毎、例えば数秒おきに更新することが好ましいが、電力情報は30分程度おきに更新すれば足りる。そのため、本実施形態においては、この更新周期の初期値として、30分が設定されている。既に30分が経過しており、更新周期であると判定された場合(ステップS918:Y)は、引き続き平常時給電制御処理を実行(続行)するために、再びステップS991に戻る。他方、30分が経過しておらず、更新周期でないと判定された場合(ステップS918:N)は、在館者情報の読み取りを再び行うために、再びステップS9131に戻る。
【0126】
これにより、非常時において自力移動困難者を確実に避難させることができるとともに、平常時において当該ビル10の外部からの電力供給を制御することによって、二酸化炭素の排出量や電力料金等を低減させることができる。
【0127】
なお、本実施形態の説明では、ビル消費電力制御システム100において初期値として設定されている更新周期が30分であるものとして説明したが、この更新周期は、在館者情報と電力情報とのそれぞれの性質・特徴を踏まえた値であればよく、具体的な値はその範囲内において設計者が適宜に変更可能である。
【0128】
また、本実施形態の説明では、ステップS9152の処理において、かご位置の変化については更新されないものとして説明したが、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、かご位置の変化についても更新の対象とすることができる。エレベータ30の移動に必要な電力量は、厳密には、かご位置に応じて変化する。そのため、かご位置の変化についても更新の対象とした場合には、ビル消費電力制御システム100は、必要な電力量をより精度よく算出することができる。
【0129】
(平常時負荷制御処理)
図5は、本実施形態で行われる平常時負荷制御処理の流れの一例を示したフローチャートである。この平常時負荷制御処理は、主に、在館者情報に基づいて節電制御を行う処理である。
【0130】
ステップS921において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、在館者情報と、エレベータ30の制御に用いられている群管理情報とに基づいて、在館者の移動を推測する処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS921における処理が完了すると、ステップS922に進む。
【0131】
ステップS922において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS921で推測された在館者の移動に基づいて、エレベータ30が余剰か否かを判定する処理を実行する。エレベータ30に余剰があると判定された場合(ステップS922:Y)は、一部の号機を停止する等の昇降機節電運転制御を行うためにステップS923に進む。他方、エレベータ30に余剰がないと判定された場合(ステップS922:N)は、昇降機節電運転制御を行わずに、ステップS924に進む。
【0132】
ステップS923において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、一部の号機の運転を停止する等の昇降機節電運転制御処理を実行する。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS923における処理が完了すると、ステップS924に進む。
【0133】
ステップS924において、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、各階の在館者人数の分布に応じてエレベータ30や空調装置60、照明装置70等の節電制御を行う処理を実行する。また、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、当該節電制御と合わせて、負荷制御を行う。ビル消費電力制御システム100の制御部110は、ステップS924における処理が完了すると、引き続き平常時負荷制御処理を実行(続行)するために、再びステップS921に戻る。
【0134】
平常時負荷制御を付加することで、平常時の電力料金低減がさらに効果的に行える。
【0135】
図6は、非常時における避難優先表示の一例を示す図である。
【0136】
自力移動困難者が居た当該階床のエレベータ30の乗場には、図6に例示したように、当該エレベータ30の各号機(30a、30b、30c)にそれぞれ対応する表示装置(36a、36b、36c)と、対応する号機(30a、30b、30c)をそれぞれ当該乗場に呼ぶためのホールボタン(37a、37b、37c)と、車椅子呼び装置38とが設置されている。なお、このエレベータ30の場合は、車椅子呼び装置38が設置されたA号機30aが車椅子対応のエレベータ30である。
【0137】
図6に例示したように、非常時には、消費電力をできるだけ低減するために、三台ある号機(30a、30b、30c)のうち、B号機30bおよびC号機30cの二台の号機の運転を停止させて、車椅子対応のエレベータ30であるA号機30aのみを避難用に運転している。そのため、停止している二台の号機(30b、30c)に対応する表示装置(36b、36c)には、「非常停止」と表示されている。他方、自力移動困難者の避難用に運転を継続させるA号機30aに対応する表示装置36aには、図6に例示したように、「避難優先」と表示されている。これにより、自力移動困難者の避難用に運転を継続させる当該エレベータ30のA号機30aへの、非対象者の乗込みを抑制することができる。なお、当該表示は適宜になされていればよく、具体的な表示内容は設計者が任意に設定可能である。例えば、「避難専用」等の他の文言によって当該表示がなされていてもよい。
【0138】
なお、停止中の号機(30b、30c)に対応する表示装置(36b、36c)を消灯させて、表示自体を消すことによって消費電力をさらに低減させることも技術上は可能である。しかしながら、表示装置(36b、36c)を点灯させることによる消費電力は、停止中の二台の号機(30b、30c)の運転を継続させる場合の消費電力に比べて小さい。そのため、ビル消費電力制御システム100の制御部110は、エレベータ制御装置31の制御部と協働して、少なくとも当該階の自力移動困難者の避難階への移動が完了するまで、当該表示装置(36b、36c)を点灯させる。
【0139】
また、自力移動困難者のみが乗車できるような仕組みがさらに付加されていてもよい。例えば、当該表示に加えて、当該乗り場において音声によってアナウンスを行うことにより、自力移動困難者の避難用に運転を継続させる当該エレベータ30のA号機30aへの、非対象者の乗込みをさらに抑制することができる。
【0140】
また、例えば、利用者毎の呼び登録(利用者所有のスマートデバイス等)がある場合には、そちらに通知することでスムーズに誘導することが可能となり、避難をスムーズに行うことができる。
【0141】
以上説明した本発明の実施形態は、以下のように総括される。
【0142】
(1)ビル消費電力制御システム100は、ビル10の消費電力を制御するシステムであって、当該ビルの階毎の人数を表す情報である在館者情報を記録する在館者情報記憶部210を備え、在館者情報に基づいて、当該ビルの消費電力を制御する。このようにしたので、ビル消費電力制御システム100は、非常時において自力移動困難者のエレベータ30による避難を可能にしつつ、平常時において当該ビル10の消費電力を低減することができる。
【0143】
(2)在館者情報は、自力での移動が困難な人を表す自力移動困難者の人数を含む。
【0144】
(3)在館者情報は、車椅子使用者の人数を含む。
【0145】
(4)当該ビル10への電力供給を制御する給電制御部113をさらに備える。
【0146】
(5)給電制御部113は、商用系統からの供給電力に係る電力料金を目的関数として制御する。
【0147】
(6)給電制御部113は、電力消費に伴って生じる二酸化炭素の排出量を目的関数として制御する。
【0148】
(7)給電制御部113は、商用系統からの電力が停止した状態で、在館者の避難に必要なエネルギーを確保したうえで制御を行う。
【0149】
(8)在館者の避難に必要なエネルギーは、在館者情報のうち、自力での移動が困難な人を表す自力移動困難者が避難できる階までエレベータ30(昇降機)で移動するためのエネルギーを含む。
【0150】
(9)在館者情報に基づいて、当該ビル10内の電力負荷を制御する。
【0151】
(10)当該ビル10内の電力負荷は、空調装置60、照明装置70およびエレベータ30の少なくともいずれかを含む。
【0152】
(11)エレベータ30は、ビル消費電力制御システム100により、避難が必要な場合に自力移動困難者を誘導手段によって搭乗させて、避難階に移動させる運転を行う。
【0153】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0154】
上記の実施形態や実施例、変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や実施例、変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0155】
上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば、実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0156】
また、以上に説明したビル消費電力制御システム100の各機能部の配置形態は一例に過ぎない。各機能部の配置形態は、ビル消費電力制御システム100が備えるハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【符号の説明】
【0157】
100:ビル消費電力制御システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6