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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015814
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】アオリ開閉機構
(51)【国際特許分類】
   B62D 33/037 20060101AFI20240130BHJP
   B62D 33/03 20060101ALI20240130BHJP
   E05F 15/63 20150101ALI20240130BHJP
   B60J 7/08 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
B62D33/037 K
B62D33/03
E05F15/63
B60J7/08 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118128
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】福永 崇
(72)【発明者】
【氏名】中村 玄樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 史明
(72)【発明者】
【氏名】橋本 悠
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052CA06
2E052DA05
2E052DB05
2E052EB01
2E052EC01
(57)【要約】
【課題】サイズの大型化を招来することなく、自動開閉時にアオリが円滑に動作するアオリ自動開閉機構を提供する。
【解決手段】第1アーム1の下端部をアオリAの外向き面A3よりも外側に持ち出す突っ張り姿勢(3T)と、第1アーム1の下端部をブラケットBに対する第1アーム1の枢着点R1の真下または略真下に位置付ける収納姿勢(3S)との間で姿勢変更可能なリンク部3と、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)に維持する突っ張り姿勢維持部6とを備え、アオリAが閉状態(A1)にある場合に第2アーム2を固定軸RF1周りに回動させることで、リンク部3を収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)に切り替え、リンク部3が収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)に切り替わった時点以降に突っ張り姿勢維持部6により突っ張り姿勢(3T)を維持したままアオリAを閉状態(A1)から開状態(A2)に切り替えるようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨物車両の荷台に設けられたアオリを自動開閉させるアオリ開閉機構であり、
前記アオリを支持するブラケットと、
先端部を前記ブラケットに枢着し且つ前記アオリが閉状態にある場合に当該アオリの起立方向と平行または略平行な方向に起立する第1アームと、
前記荷台の下方空間において固定軸周りに回動する第2アームと、
前記第1アームと前記第2アームの間に設けられ、且つ前記第1アームの下端部を前記アオリの外向き面よりも前記荷台から遠い位置に持ち出す突っ張り姿勢と、前記第1アームの下端部を前記ブラケットに対する前記第1アームの枢着点の真下または略真下に位置付ける収納姿勢との間で姿勢変更可能なリンク部と、
前記リンク部を前記突っ張り姿勢に維持する突っ張り姿勢維持部とを備え、
前記アオリが閉状態にある場合に前記第2アームを前記固定軸周りに回動させることで、前記リンク部を前記収納姿勢から前記突っ張り姿勢に切り替えるように構成し、
前記リンク部が前記収納姿勢から前記突っ張り姿勢に切り替わった時点以降に前記突っ張り姿勢維持部により当該突っ張り姿勢を維持したまま前記アオリを閉状態から開状態に切り替えることを特徴とするアオリ開閉機構。
【請求項2】
前記突っ張り姿勢維持部が、前記突っ張り姿勢にある前記リンク部の姿勢変更を規制するロック部を備えている請求項1に記載のアオリ開閉機構。
【請求項3】
前記突っ張り姿勢維持部が、前記ロック部による前記リンク部の作動規制状態を解除するロック解除部を備えている請求項2に記載のアオリ開閉機構。
【請求項4】
前記リンク部が、
一端部に前記第1アームに対する枢着点である第1枢着点を設け、第1枢着点から所定距離離間した位置に前記第2アームに対する枢着点である第2枢着点を設けたメインリンクと、
前記メインリンクの他端部に枢着した第1ロックリンクと、
一端部を前記第1ロックリンクに枢着し且つ他端部を前記第2アームに枢着した第2ロックリンクとを備えたものであり、
前記突っ張り姿勢維持部が、
前記突っ張り姿勢にある前記リンク部において枢着点を中心に相互に拡開した前記第1ロックリンクと前記第2ロックリンクとの間に嵌入するロックピンを備え、前記ロックピンによって前記第1ロックリンクと前記第2ロックリンクが相互に折り畳まれる方向に移動することを規制するものである請求項1乃至3の何れかに記載のアオリ開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラック等の貨物車両の荷台に設けられるアオリを開閉するアオリ開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
日本のGDP約5%を占める運輸業の中において、運輸業の約6割超を占める市場をもつ物流業界は環境変化により拡大しており、今後も大きな成長が見込まれる。一方で、物流業界において、トラック運転手の人手不足対策、安全性向上を図るべく、トラック荷役作業の自動化が求められている。
【0003】
従来、アオリの開閉動作は作業者が手動開閉補助装置によるアシストを受けながら自身の力で行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-291956公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、手動開閉補助装置によるアシストを受けながらアオリの開閉動作をする場合、アオリを持ち上げる(開状態から閉状態に切り替える)作業には一定以上の力が必要であり、作業者に負担を強いるものであった。また、従来の手動開閉補助装置に電動機構を追加してアオリを自動開閉する機構を実現しようとした場合であっても、閉状態にあるアオリを開状態に動作させる際に、従来の手動開閉補助装置の構成上、アオリが急に倒れ出す(開き始める)事態になり、アオリのスムーズな開閉動作を確保することは困難である。
【0006】
また、トラックの側方へ飛び出した部分がある場合にはその飛び出した部分が車幅の広さを規定することになるため、アオリ開閉機構が荷台よりも側方に飛び出した形態で配置すると、飛び出した分だけ荷台の幅が小さくなり、それに伴い荷台の大きさが小さくなり、積載量が下がることになる。したがって、従来のアオリ手動開閉補助装置はトラックの側方から飛び出さないように構成されている。
【0007】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、主たる目的は、従来と同様のサイズでアオリを自動で開閉することができ、特にアオリが急に開き始める事態を防止・抑制して安全性を高め、円滑でスムーズなアオリの開閉動作を実現可能なアオリ自動開閉機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、貨物車両の荷台に設けられたアオリを自動開閉させるアオリ開閉機構に関するものである。荷台を有する貨物車両としては、トラック、トレーラ、ダンプカー等を挙げることができる。また、アオリは、ゲートとも称されるものであり、具体例として、荷台の側面を規定する側アオリ(サイドゲート)、荷台の後面を規定する後アオリ(テールゲート)を挙げることができる。
【0009】
そして、本発明に係るアオリ開閉機構は、アオリを支持するブラケットと、先端部をブラケットに枢着し且つアオリが閉状態にある場合に当該アオリの起立方向と平行または略平行な方向に起立する第1アームと、荷台の下方空間において固定軸周りに回動する第2アームと、第1アームと第2アームの間に設けたリンク部と、リンク部を所定の姿勢にロック可能な突っ張り姿勢維持部と備え、特に、以下の点において特徴を有するものである。つまり、本発明に係るアオリ開閉機構は、第1アームの下端部をアオリの外向き面よりも荷台から遠い位置に持ち出す突っ張り姿勢と、第1アームの下端部をブラケットに対する第1アームの枢着点の真下または略真下に位置付ける収納姿勢との間で姿勢変更可能なリンク部と、リンク部を突っ張り姿勢にロックする突っ張り姿勢維持部とを備え、アオリが閉状態にある場合に第2アームを固定軸周りに回動させることで、リンク部が収納姿勢から突っ張り姿勢に切り替わるように構成し、リンク部が収納姿勢から突っ張り姿勢に切り替わった時点以降に突っ張り姿勢維持部により当該突っ張り姿勢を維持したままアオリを閉状態から開状態に切り替えることを特徴としている。
【0010】
このような本発明に係るアオリ開閉機構であれば、第1アームと第2アームの間に設けたリンク部を突っ張り姿勢にすることで、第1アームの下端部をアオリの外向き面よりも荷台の幅方向中心から遠い位置に持ち出すことができ、この突っ張り姿勢を突っ張り姿勢維持部によって維持している間は第2アームが見掛け上リンク部の分だけ延伸した構成になり、アオリと第1アームに角度を持たせることでアオリを支える状態を確保することができ、アオリに力を伝達することができる。その結果、アオリが開き始める際に加速度的に作動することなくスムーズに閉状態から開状態に切り替わるアオリ自動開閉機構を実現することができる。
【0011】
加えて、本発明に係るアオリ開閉機構であれば、アオリを閉状態にして開閉動作を行わない場合にはリンク部を収納姿勢にしておくことで、アオリ開閉作業を伴わない通常使用時に第1アーム及びリンク部が荷台の側方または後方へ張り出す事態を回避することができ、特に、荷台よりも側方へ張り出した分だけ荷台の幅が小さくなり、それに伴い荷台のサイズが小さくなり積載量が下がるという事態を回避することができる。
【0012】
本発明における突っ張り姿勢維持部の好適な構成としては、突っ張り姿勢にあるリンク部の姿勢変更を規制するロック部を備えた構成や、さらにはロック部によるリンク部の作動規制状態を解除するロック解除部を備えた構成を挙げることができる。ロック部を備えた構成であれば、リンク部の作動をロック部によって規制することでリンク部を突っ張り姿勢に維持することができる。また、ロック解除部を備えた構成であれば、アオリを開状態から閉状態に切り替え終えた時点、すなわちアオリを+90度の起立姿勢に変更し終えた時点でロック解除部によってリンク部の作動規制状態を解除することで、突っ張り姿勢維持部によるリンク部の突っ張り姿勢維持状態を解除することができ、リンク部を突っ張り姿勢から収納姿勢に切り替えて当該リンク部を荷台よりも外側に飛び出していない形態で限られた所定のスペースに収めることができる。なお、「アオリを開状態から閉状態に切り替え終えた時点」とは、アオリが開状態から閉状態(+90度の起立姿勢)に切り替わった時点を意味し、オペレータによるアオリ閉処理の完全終了時点と同義ではない。すなわち、オペレータによるアオリ閉処理の完全終了時点は、少なくともアオリが開状態から閉状態(+90度の起立姿勢)に切り替わってから、さらにリンク部を突っ張り姿勢から収納姿勢に切り替えてリンク部全体を荷台よりも外側に飛び出していない形態で荷台の下方スペースに収めた時点またはそれ以降の適宜の時点である。
【0013】
特に、本発明に係るアオリ開閉機構において、リンク部として、一端部を第1アームに対する枢着点に設定し、且つこの枢着点から所定距離離間した位置に第2アームに対する枢着点を設定したメインリンクと、他端部をメインリンクに対する枢着点に設定した第1ロックリンクと、一端部を第1ロックリンクに対する枢着点に設定し、且つ他端部を第2アームに対する枢着点に設定した第2ロックリンクとを備えたものを適用し、突っ張り姿勢維持部が、突っ張り姿勢にあるリンク部においてロックリンク(第1ロックリンク、第2ロックリンク)同士の枢着点を中心に相互に拡開した第1ロックリンクと第2ロックリンクとの間に嵌入するロックピンを備え、ロックピンによって第1ロックリンクと第2ロックリンクが相互に折り畳まれる方向に移動することを規制するものであれば、リンク部及び突っ張り姿勢維持部を比較的簡素な構成で実現することができ、好適である。なお、本願発明が請求項1に請求項2及び請求項4の要件を限定した発明(請求項1+請求項2+請求項4の発明)または請求項1に請求項2、請求項3及び請求項4の要件を限定した発明(請求項1+請求項2+請求項3+請求項4の発明)であれば、ロックピンはロック部に相当するパーツとして機能するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1アームと第2アームの間に設けたリンク部を突っ張り姿勢にすることで、起立姿勢にある閉状態のアオリを第1アームが所定の角度で支持することができ、この支持状態を維持することによって、アオリの閉状態から開状態への動作中にアオリが急に開き出すことなく、円滑に動作するアオリ開閉機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るアオリ開閉機構を実装した貨物車両の全体模式図。
図2】同実施形態に係るアオリ開閉機構及びその周辺機器を模式的に示す図。
図3】同実施形態におけるアオリ閉状態(リンク部は収納姿勢)を示す図。
図4】同実施形態におけるアオリ閉状態(リンク部は突っ張り姿勢)を示す図。
図5図4の要部を拡大して一部省略して示す斜視図。
図6】同実施形態における突っ張り姿勢維持部を説明する図。
図7】同実施形態におけるロック解除部を説明する図。
図8】同実施形態におけるアオリ角度0度の状態(リンク部は突っ張り姿勢)を示す図。
図9】同実施形態におけるアオリ開状態(リンク部は突っ張り姿勢)を示す図。
図10】従来のアオリ開閉機構による力伝達及びアオリの開き始めの挙動を説明する図。
図11】本発明に係るアオリ開閉機構による力伝達を説明する。
図12】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図13】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図14】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図15】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図16】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図17】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図2に対応して示す要部拡大図。
図18】同実施形態に係るアオリ開閉機構の一変形例を図4に対応して示す要部拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0017】
本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、例えば図1に示す貨物車両T(トラック)に実装することで、荷台T1のアオリAを自動開閉動作可能にするものである。
【0018】
トラックTは、タイヤT2が取り付けられたトラックボディT3と、このトラックボディT3に架載される荷台T1とを備えた大型トラック(例えば、25tトラック)である。図1(a)、(b)はそれぞれトラックTの側面模式図、背面模式図である。
【0019】
トラックTの荷台T1は、荷室の床T6の周囲に設けた台枠T4にヒンジT5(図2参照)を介して回動自在に取り付けられ、荷室の左右の側面下部を開放可能に覆うアオリA(具体的には、左右にそれぞれ1対、合計4枚のアオリA)と、荷室の上方空間を開放可能に覆うウイングWとを備えている。なお、各アオリAを起立した閉状態(A1)を維持するために、台枠T4の左右の中間部及び端部には図示しない柱がそれぞれ設けられている。
【0020】
荷室の床T6及び台枠T4の下方には、種々の部品・機構が配設されている。したがって、荷室の床T6及び台枠T4の下方における空きスペースは、かなり狭く、このような狭いスペースに、図2及び図3に示す本実施形態のアオリ開閉機構Xを配置している。ここで、図2にアオリ開閉機構X及びアオリ開閉機構Xを駆動させる駆動源である電源を含めた周辺機器(ハードウェア)を模式的に示している。
【0021】
本実施形態では、アオリAの配置枚数(本実施形態では4枚)に対応した個数のアオリ開閉機構Xを荷室の床T6及び台枠T4の下方の空きスペースにそれぞれ設けて、各アオリAを各アオリ開閉機構Xによって個別に自動開閉可能に設定している。アオリ開閉機構Xにより、作業者にとって大きな負担となり得るアオリAの開閉作業を自動で実施することができ、トラックTの運転手が年配者や女性等の非力な人であってもアオリAの開閉作業を容易に実施することができる。
【0022】
アオリ開閉機構Xは、図2及び図3に示すように、アオリAを支持するブラケットBと、ブラケットBに一端部(上端部)を枢着した第1アーム1と、荷台T1の下方空間において固定軸RF1周りに回動する第2アーム2と、第1アーム1と第2アーム2との間に設けたリンク部3とを備えている。なお、図2ではリンク部3を省略している。
【0023】
ブラケットBは、閉状態(A1)にあるアオリAのアオリ回転軸(ヒンジT5)よりも高い位置でアオリAに固定したものであり、アオリ回転軸T5を中心にアオリAが開閉動作する際に、第1アーム1との枢着点R1を中心にアオリAと一体に回動しながら移動する。
【0024】
第1アーム1は、一端部(上端部)をブラケットBに枢着し、他端部(下端部)をアオリ回転軸T5よりも低い位置においてリンク部3に枢着したものである。本実施形態では、ブラケットBに対する第1アーム1の枢着点R1を閉状態(A1)のアオリAの外向き面A3における所定高さ位置に設定している。なお、「閉状態(A1)のアオリAの外向き面A3」とは、閉状態(A1)にあるアオリAにおいて荷室を臨む面(内向き面A4)とは反対側の面である。また、第1アーム1等の説明における「上下方向」は、アオリAが図2及び図3に示す+90度の起立姿勢である閉状態(A1)にある場合の上下方向と一致する方向である。
【0025】
第2アーム2は、荷室の床T6の周囲に設けた台枠T4よりも下側の空間に配置され、固定軸RF1(第1固定軸RF1)を中心に回動するものである。本実施形態では、第2アーム2の固定軸RF1を荷台T1の幅方向Wにおいてアオリ回転軸(ヒンジT5)よりも内側(幅方向W中心側)に設定し、高さ方向Hにおいてアオリ回転軸(ヒンジT5)よりも下側に設定している。また、第2アーム2の先端部(上端部)をリンク部3に枢着し、第2アーム2の長手方向中央部付近をロッドM1の先端部に第2固定軸RF2を中心に揺動する第3アーム4を接続するとともに、第3アーム4と第2アーム2とを連結アーム5を介して接続している。アクチュエータM(ロッドM1)の周辺には、補助動力を付与する補助動力バネ機構M3を配置している。
【0026】
アクチュエータMは、台枠T4よりも下側の空間に配置され、駆動モータM2の回転力を動力伝達機構(例えば、固定軸RF1や駆動モータM2の軸方向上に設置したスプロケットS1,S2やチェーンC1等による機構)を介して、固定軸RF1を回動させるものである。駆動モータM2と動力伝達機構(スプロケットS2)の間は、適宜のギアを介して接続される。駆動モータとして、直流モータ以外のモータ、例えば交流モータ、サーボモータ等を適用可能である。また、モータの回転力を固定軸RF1に伝達できればどのような動力伝達機構も適用することができ、モータの形式も回転式やリニア式を問わずに適用可能である。第3アーム4は、第2固定軸RF2を中心に揺動する。連結アーム5を介して第3アーム4に連結されている第2アーム2は、第3アーム4の揺動に伴って第1固定軸RF1を中心に回動する。したがって、アオリAが図2及び図3に示す+90度の起立姿勢である閉状態(A1)にある場合に、アクチュエータMを駆動させて第2アーム2の回動に伴ってリンク部3が作動し、第1アーム1が下方へ移動することによって、アオリAが閉状態(A1)から図9に示す開状態(A2)に漸次変化する。リンク部3のメカニカルな構成について以下に詳細する。また、本実施形態の第2アーム2の第1固定軸RF1及び第3アーム4の第2固定軸RF2は、これらを収容可能なボックスGBに回転可能に支持されている。
【0027】
第2アーム2は固定軸RF1を中心に回転し、リンク部3との枢着点R2も移動することで、リンク部3が作動する。
【0028】
リンク部3は、複数のリンク31,32,33からなり、これらのリンク31,32,33が第2アーム2の回動に伴って展開状態になったり、折り畳み状態になることで第1アーム1と第2アーム2の離間距離を大きくしたり、小さくするものである。本実施形態のリンク部3は、一端部を第1アーム1に枢着し、一端部から所定距離離間した部分を第2アーム2に枢着したメインリンク31と、一端部をメインリンク31の他端部に枢着した第1ロックリンク32と、一端部を第1ロックリンク32の他端部に枢着し、他端部を第2アーム2の所定部分に枢着した第2ロックリンク33とを備えている。
【0029】
メインリンク31は、中央部分に屈曲部を設定した「くの字」状をなし、一端部を第1アーム1に対する枢着点R3に設定し、他端部を第1ロックリンク32に対する枢着点R4に設定し、屈曲部を第2アーム2に対する枢着点R2に設定したものである。
【0030】
第1ロックリンク32は、一端部をメインリンク31に対する枢着点R4に設定し、他端部を第2ロックリンク33に対する枢着点R5に設定したものである。
【0031】
第2ロックリンク33は、一端部を第1ロックリンク32に対する枢着点R5に設定し、他端部を第2アーム2に対する枢着点R6に設定したものである。
【0032】
アオリAが図3に示す閉状態(A1)にある場合に、メインリンク31、第1ロックリンク32及び第2ロックリンク33は相互に折り畳まれた状態であり、この状態がリンク部3の収納姿勢(3S)である。リンク部3が収納姿勢(3S)にある場合、メインリンク31と第1アーム1の枢着点R3に対して、メインリンク31と第2アーム2の枢着点R2が真上または略真上の位置にあり、さらにメインリンク31と第2アーム2の枢着点R2の略真上にブラケットBと第1アーム1部の枢着点R1が位置付けられ、第1アーム1部が略90度の起立姿勢になり、リンク部3(メインリンク31、第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)及び第2アーム2は第1アーム1の外向き面A3よりも荷台T1の幅方向W中心側の領域に配置される。
【0033】
このような閉状態(A1)にあるアオリAを開状態(A2)に変更する場合、また開状態(A2)にあるアオリAを閉状態(A1)に変更する場合には適宜の命令に基づいてアクチュエータMを駆動させる。具体的には、オペレータ(トラックの運転手等)による適宜のボタン、スイッチ、またはタッチパネル等の入力デバイスに対する駆動指令入力操作に基づく駆動指令(「アオリを開放しなさい」、「アオリを閉めなさい」等の指令であり、図2に示す開閉指令と同義である)を上位のコントローラ(制御部C)が受け付けると、当該制御部Cが、アオリAの角度に基づいてモータM2を駆動制御して、アオリAを自動開閉させることができる。
【0034】
アオリAが図2及び図3に示す+90度の起立姿勢である閉状態(A1)にある場合に、アクチュエータMを駆動させて第2アーム2の固定軸RF1を回動させると、第2アーム2の回動に伴ってリンク部3が図3に示す収納姿勢(3S)から図4に示す突っ張り姿勢(3T)に切り替わり、第1アーム1がリンク部3との枢着点R3である下端部を外側(幅方向W中心から離間する方向)へ張り出した傾斜姿勢になる。この時点におけるアオリAに対する第1アーム1の傾斜角度θ(内角)を本実施形態では、例えば15度に設定している。
【0035】
第2アーム2の回動に伴ってリンク部3が収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)に切り替わる動作は、以下の通りである。すなわち、第2アーム2の回動に伴ってリンク部3のうちメインリンク31は第2アーム2との枢着点R2を中心に傾動し、第1アーム1との枢着点R3が第2アーム2との枢着点R2よりも外側となる姿勢に切り替わる。さらに具体的には、第2アーム2が回動し始めると、リンク部3の第1ロックリンク32と第2ロックリンク33が両者の枢着点R5を中心に互いに離間する方向に傾動し、ある傾動角度に到達すると、図6(a)の領域Q1に示すように、両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)にそれぞれ設けた当接部32a,33a同士が接触して両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)のそれ以上の展開(拡開)する方向への移動を規制する。両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)にそれぞれ設けた当接部32a,33a同士が接触した時点でリンク部3の収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)への姿勢変更は完了する。この時点において第2アーム2は、図2及び図3に示す初期姿勢(斜め上方に向かって起立した姿勢)から図4に示す横臥姿勢になり、当該第2アーム2の先端部からリンク部3のメインリンク31がさらに外側に向かって延伸する形態になる。つまり、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)になることで、メインリンク31を第2アーム2の一部と捉えた場合に第2アーム2が延伸した形態(第2アーム延伸形態)になる。なお、図5に、図4の要部を拡大した斜視図を一部(各枢着点を規定する軸(連結軸)等)省略して示す。
【0036】
アクチュエータMを駆動させて固定軸RF1を回動させると第2アーム2が傾動し、第2アーム延伸形態になった時点以降、さらに第2アーム2が固定軸RF1を中心に同一方向(正方向)へ傾動すると、リンク部3の各リンク(メインリンク31、第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)が相互に開く方向への移動は当接部32a,33a同士が接触していることによって規制されるとともに、リンク部3の各リンク(メインリンク31、第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)が相互に折り畳む展開する方向への移動は突っ張り姿勢維持部6によって規制される。突っ張り姿勢維持部6は、ロックピン61(本発明における「ロック部」に相当)と、ロックピンアーム62と、ロック解除用爪63(本発明における「ロック解除部」に相当)とを備えたものである。本実施形態では、図6(b)の領域Q2に示すように、両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)の枢着点R5近傍にロックピン61を配置し、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33にそれぞれ設けたロックピン受け32b,33bがロックピン61(ロック部61)を挟むことで、リンク部3に対して収納姿勢(3S)に戻す力が作用しても突っ張り姿勢(3T)を維持できるように構成している。このように、本実施形態の突っ張り姿勢維持部6は、突っ張り姿勢(3T)にあるリンク部3の収納姿勢(3S)への姿勢変更を規制するロック部61を備えている。そして、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、ロックピン61と、第1ロックリンク32及び第2ロックリンク33に設けたロックピン受け32b,33bによって、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)にロックするように構成している。
【0037】
以上の構成により、アクチュエータMを駆動させて第2アーム2が傾動し、第2アーム延伸形態になった時点以降、さらに第2アーム2が固定軸RF1を中心に同一方向(正方向)へ傾動すると、第2アーム延伸形態が維持された第2アーム2の傾動に伴って第1アーム1とリンク部3との枢着点R3が下方に移動し、第1アーム1を下方に引き込むことで、アオリAを図4に示す+90度の起立姿勢から図8に示す0度の横臥姿勢に向かって移動させることができる。さらに第2アーム2を第2アーム延伸形態のまま固定軸RF1を中心に同一方向(正方向)へ回動させることで、アオリAを図9に示す開状態(A2)(本実施形態ではマイナス85度の垂下姿勢)にすることができる。
【0038】
アオリAを開状態(A2)にすることで、荷台T1に対して荷物の積み卸し作業を行うができ、当該積み卸し作業の終了後にアオリAを開状態(A2)から閉状態(A1)に切り替える。この切替処理は、図9図8図4図3の順にアオリAを作動させる処理であり、当該切替処理中においても、図4に示す状態になるまでは突っ張り姿勢維持部6のロックピン61によってリンク部3を突っ張り姿勢(3T)にロックしている(突っ張り姿勢状態にあるリンク部3の作動を規制している)ため、第2アーム延伸形態が維持される。そして、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、図9に示す状態から図8に示す状態を経て図4に示す状態になった時点、すなわち、アオリAを開状態(A2)から図4に示す閉状態(A1)に切り替え終えた時点で、突っ張り姿勢維持部6のロックピン61によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)をロック解除用爪63(本発明における「ロック解除部」に相当)によって解除するように構成している。本実施形態では、図7(a)の領域Q3に示すように、両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)のロックピン受け32b,33bに嵌入するロックピン61を先端部に有する突っ張り姿勢維持部6のロックピンアーム62のうち、ロックピン61とは反対側にロック解除用爪63を設け、このロック解除用爪63に対してロック解除作動部7による所定の力を作用させることで、同図(b)の領域Q4に示すように、ロックピン61が両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)のロックピン受け32b,33bから抜け外れるように構成している。ロック解除作動部7は、例えば金属製のワイヤ本体71にホルダ72を設け、ホルダ72に解除用ピン73を設けたものであり、ロック解除用爪63に解除用ピン73を引っ掛けた状態でワイヤ本体71を所定方向(図7(a)の矢印7A方向)に引っ張って移動させることでロックピンアーム62を所定方向に回転させるものである。ロックピンアーム62を所定方向に回転させると、ロックピン61が両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)のロックピン受け32b,33bから抜け外れるように構成している。このように、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、ロックピン61によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)をロック解除用爪63により解除する突っ張り姿勢維持部6を備えている。
【0039】
本実施形態では、突っ張り姿勢維持部6によるリンク部3の突っ張り姿勢維持状態を解除した時点以降、第2アーム2が固定軸RF1を中心に図4に示す横臥姿勢から起立姿勢になる方向(逆方向)へ回動すると、図3に示すように、ロックピン61によるリンク部3の姿勢変更が規制されていないため、リンク部3は突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わり、その結果、第2アーム延伸形態も崩れて、起立姿勢にある第1アーム1の外向き面A3よりも幅方向W内側(幅方向W中心側)の空間であって且つ荷台T1の下方空間にリンク部3及び第2アーム2を収めることができる。
【0040】
このように、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、第1アーム1と第2アーム2の間にリンク部3を設け、このリンク部3を突っ張り姿勢(3T)と収納姿勢(3S)との間で姿勢変更可能に構成し、アオリAが閉状態(A1)にある場合にアクチュエータMの駆動に伴って第2アーム2が固定軸RF1周りに回動すると、リンク部3が収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)に切り替わり、当該突っ張り姿勢(3T)を突っ張り姿勢維持部6によって維持したまま第2アーム2が回動し続けることでアオリAを閉状態(A1)から開状態(A2)に切り替えることができる。すなわち、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、第1アーム1と第2アーム2の間に設けたリンク部3を突っ張り姿勢(3T)にすることで、第1アーム1の下端部をアオリAの外向き面A3よりも荷台T1の幅方向W中心から遠い位置に持ち出すことができ、この突っ張り姿勢(3T)を突っ張り姿勢維持部6によって維持している間は第2アーム2が見掛け上リンク部3の分だけ延伸した構成になり、アオリAと第1アーム1に所定の角度θを持たせることでアオリAを支える状態を確保することができ、アオリAに力を伝達することができる。その結果、アオリAが急に動作することなくスムーズに閉状態(A1)から開状態(A2)に切り替わるアオリ自動開閉機構Xを実現することができる。
【0041】
ここで、従来のアオリ開閉補助装置の機構を図10に示す。同図では、本実施形態のアオリ開閉機構Xにおける各パーツと対応する部分に同じ符号を付している。
【0042】
同図(a)に示すように、アオリAが閉状態(A1)にある場合に起立姿勢をとる第1アーム1の下端部を第2アーム2に直接枢着(枢着点Rx)する従来の構造であれば、ブラケットBと第1アーム1の枢着点R1に作用する力は、アオリAの幅方向Wに働く力AFが小さく、アオリAの高さ方向Hに働く力1Fが支配的である。そのため、第2アーム2を固定軸RF1周りで回動し始めても、アオリAが動かない状態が発生し、同図(b)に示すように、力AFが第2アーム2の回転力によりアオリAを開ける程度に大きくなったタイミングでアオリAが急に開き出すことになり、円滑な開閉動作を行えない。
【0043】
一方、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、アクチュエータMを駆動させて第2アーム2が固定軸RF1周りに回動し始めてから、第1アーム1と第2アーム2の間に設けたリンク部3によって第2アーム2を延長するような形態(第2アーム延伸形態)に移行する。そのため、図11に示すように、枢着点R1に力2Fが作用し、アオリAの幅方向Wに働く力AFが、図10(a)に比べて大きくなっている。これにより、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、アオリAが急に動くことを防止でき、アオリAの開閉動作を円滑に行うことができる。
【0044】
すなわち、本発明者は、従来の構造であれば生じる不具合を解消するためには、アオリAが開き動作を始める前の時点においてアオリAと第1アーム1が起立姿勢で略平行に並ぶ形態を積極的に解消して、アオリAに対して第1アーム1を所定角度θだけ傾斜させた形態にして、アオリAと第1アーム1に角度を持たせることが肝要であることを見出した。
【0045】
ここで、アオリAとアームAに角度を持たせる具体的な構成として、ブラケットBと第1アーム1の枢着点R1を閉状態(A1)にあるアオリAよりトラックTの幅方向W外側にすること、つまり閉状態(A1)にあるアオリAの外向き面A3に設定すること(条件1)と、第1アーム1と第2アーム2の枢着点をトラックTの幅方向Wにおいて閉状態(A1)にあるアオリAの外向き面A3よりも外側にすること(条件2)の2点を挙げることができる。ただし、トラックTの側方へのパーツが飛び出す構成では、荷台T1の幅が小さくなる事態を招来する。そこで、本実施形態では、上述したように、第1アーム1と第2アーム2の間に拡縮変形自在なリンク部3を設け、リンク部3を収納姿勢(3S)から突っ張り姿勢(3T)に変更させて第2アーム2を延長させた形態(第2アーム延伸形態)にすることで上記条件1及び条件2を満たす構成を採用した。これにより、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、図10に示す従来の構成と比較してトラックTの外側からアオリAを支えることができ、且つアオリAを閉じ切った状態でリンク部3を収納姿勢(3S)にすることにより、アオリ開閉作業時以外の通常使用時における第1アーム1と第2アーム2の収まり具合(サイズ)を従来と同程度の収まり具合(サイズ)にすることができ、トラックTの側方へパーツが飛び出す構成に起因して荷台T1の幅が小さくなり最大積載量が少なくなるという事態を回避することが可能である。さらに、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xは、トラックTに後付けで実装することができ、サイズを大幅に変更することなくアオリAの開閉動作を電動化することが可能になり、トラック荷役作業の自動化が求められている現場に導入し易いという利点を有する。
【0046】
また、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、突っ張り姿勢維持部6のロックピン61(ロック部61)によるロック状態(突っ張り姿勢(3T)にあるリンク部3の収納姿勢(3S)への姿勢変更を規制する状態)を解除するロック解除用爪63(ロック解除部)を備え、アオリAを開状態(A2)から閉状態(A1)に切り替え終えた時点で、ロック解除作動部7を作動させてロック解除部63に対して所定の力を作用させて突っ張り姿勢維持部6のロック部61によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除するように構成しているため、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中はロック部61によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが閉状態(A1)になった時点、つまり、図4に示す+90度の起立姿勢になった時点で、ロック解除部63によってリンク部3の作動規制状態を解除して、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0047】
特に、本実施形態に係るアオリ開閉機構Xによれば、リンク部3として、一端部を第1アーム1に対する枢着点R3に設定するとともに、枢着点R3から所定距離離間した位置に第2アーム2に対する枢着点R2を設定したメインリンク31と、他端部をメインリンク31に対する枢着点R4に設定した第1ロックリンク32と、一端部を第1ロックリンク32に対する枢着点R5に設定するとともに、他端部を第2アーム2に対する枢着点R6に設定した第2ロックリンク33とを備えたものを適用し、突っ張り姿勢維持部6が、突っ張り姿勢(3T)にあるリンク部3において枢着点R5を中心に相互に拡開した第1ロックリンク32と第2ロックリンク33との間に嵌入するロックピン61(ロック部61)を備え、ロックピン61によって第1ロックリンク32と第2ロックリンク33が相互に折り畳まれる方向に移動することを規制するものであるため、リンク部3及び突っ張り姿勢維持部6を比較的簡素な構成で実現することができ、好適である。
【0048】
なお、開状態(A2)におけるアオリAの姿勢が―90度となるように構成することも可能である。また、アオリ開閉機構XによるアオリAの開閉動作には、アオリAの閉状態(A1)から開状態(A2)への切替や、開状態(A2)から閉状態(A1)への切替に限定されず、閉状態(A1)または開状態(A2)から任意のアオリA角度(―89度乃至+89度までの範囲における任意の角度)への切替や、任意のアオリA角度から閉状態(A1)または開状態(A2)への切替や、任意のアオリA角度間の切替も含まれる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態の構成に限られるものではない。例えば、リンク部及び突っ張り姿勢維持部として、図12乃至図17に示す構成を採用することもできる。なお、以下の各図は、図4に対応する要部拡大図であり、上述の本実施形態のアオリ開閉機構Xにおける各パーツと対応する部分に同じ符号を付している。
【0050】
図12に示すリンク部3は、一端部を第1アーム1の下端部に対する枢着点R3に設定し、他端部を第2アーム2の先端部に対する枢着点R2に設定したメインリンク31と、メインリンク31の他端部に設けた引っ掛け部31cに係合可能なロック爪32c(ロック部)を有する第1ロックリンク32とを備えたものである。図12に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、ロック爪32c(ロック部)を備え、当該ロック爪32cが引っ掛け部31cに係合した状態がリンク部3の突っ張り姿勢(3T)であり、この突っ張り姿勢(3T)を維持することで第2アーム延伸形態を確保することができる。また、図12に示す構成によれば、第1ロックリンク32の一部(第1ロックリンク32のうちロック爪32cを設けた端部とは反対側の端部)32dをロック解除作動部7によって押すことで引っ掛け部31cに対するロック爪32cの係合状態(ロック部によるロック状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。すなわち、図12に示す突っ張り姿勢維持部6は、ロック爪32c(ロック部)によるリンク部3の作動規制状態を解除するロック解除部(第1ロックリンク32の端部32d)を備え、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中はロック爪32c(ロック部)によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが開状態(A2)から閉状態(A1)になった時点(+90度の起立姿勢になった時点)で、第1ロックリンク32の端部32d(ロック解除部)によってリンク部3の作動規制状態を解除して、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0051】
また、図13に示すリンク部3は、一端部を第1アーム1の下端部に対する枢着点R3に設定し、屈曲部を第2アーム2の先端部に対する枢着点R2に設定したメインリンク31と、メインリンク31の他端部に一端部を枢着し、所定領域に中空のロックガイド孔32eを有する第1ロックリンク32とを備えたものである。ロックガイド孔32eの一端部32fにガイドピン64が嵌入した状態がリンク部3の突っ張り姿勢(3T)であり、図13に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、ロックガイド孔32eの一端部32fをロック部として機能させて、突っ張り姿勢(3T)を維持するものである。また、図示しない適宜の手段(ロック解除作動部)によってガイドピン64をロックガイド孔32eの一端部32fから移動させることでガイドピン64の嵌入状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。すなわち、図13に示す突っ張り姿勢維持部6は、ロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)にガイドピン64を嵌入させたリンク部3の作動規制状態を解除するロック解除部(ロックガイド孔32eのうち一端部32fを除く領域)を備え、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中はロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)にガイドピン64を嵌入させたロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが開状態(A2)から閉状態(A1)になった時点(+90度の起立姿勢になった時点)で、ガイドピン64をロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)から移動させることによってリンク部3の作動規制状態を解除して、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0052】
また、図14に示すリンク部3は、図13に示すリンク部3に準じた構成であり、第1ロックリンク32に形成したロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)にガイドピン64が嵌入した状態がリンク部3の突っ張り姿勢(3T)である。図14に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、ロックガイド孔32eの一端部32fをロック部として機能させて、この突っ張り姿勢(3T)を維持するものであり、第1ロックリンク32がメインリンク31との枢着点R4を中心に揺動することでガイドピン64をロックガイド孔32eの一端部32fから他端部32g(ロック解除部)に自動的に移動させることでガイドピン64の嵌入状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することができる自動ロック機能を発揮する点に特徴を有する。
【0053】
また、図15に示すリンク部3は、一端部を第1アーム1の下端部に対する枢着点R3に設定し、屈曲部を第2アーム2の先端部に対する枢着点R2に設定したメインリンク31と、メインリンク31の他端部に一端部を枢着し、所定領域に中空のロックガイド孔32eを有する第1ロックリンク32とを備えたものである。図15に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、ロックガイド孔32eの一端部32fをロック部として機能させて、突っ張り姿勢(3T)を維持するものである。すなわち、メインリンク31と第1ロックリンク32との枢着点R4を規定する連結軸65がロックガイド孔32eの一端部32fに嵌入した状態がリンク部3の突っ張り姿勢(3T)であり、この突っ張り姿勢(3T)を維持することで第2アーム延伸形態を確保することができる。また、第1ロックリンク32が揺動することで連結軸65をロックガイド孔32eの一端部32fから他端部32g(ロック解除部)に移動させることで連結軸65の嵌入状態(ロック部によるロック状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。すなわち、図15に示す突っ張り姿勢維持部6は、ロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)に連結軸65を嵌入させたリンク部3の作動規制状態を解除するロック解除部(ロックガイド孔32eの他端部32g)を備え、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中はロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)に連結軸65を嵌入させたロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが開状態(A2)から閉状態(A1)になった時点(+90度の起立姿勢になった時点)で、連結軸65をロックガイド孔32eの一端部32f(ロック部)から他端部32gへ移動させることによってリンク部3の作動規制状態を解除して、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0054】
また、図16に示すリンク部3は、上述の実施形態と略同様の構成であり、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a同士が当接した状態がリンク部3の突っ張り姿勢(3T)である。図16に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33aをロック部として機能させて、突っ張り姿勢(3T)を維持するものである。図16に示す突っ張り姿勢維持部6は、第2ロックリンク33にロック解除用爪64(ロック解除部)を設け、このロック解除用爪64を適宜の手段(ロック解除作動部)で押圧して第2ロックリンク33が揺動することで第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a同士の当接状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。すなわち、図16に示す突っ張り姿勢維持部6は、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a(ロック部)同士が当節したリンク部3の作動規制状態を解除するロック解除部(ロック解除用爪64)を備え、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中は第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a(ロック部)同士を当接させたロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが開状態(A2)から閉状態(A1)になった時点(+90度の起立姿勢になった時点)で、ロック解除用爪64(ロック解除部)を作動させて当接部32a,33a(ロック部)同士の当接状態(リンク部3の作動規制状態)を解除して、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0055】
また、図17に示すリンク部3は、3本のリンク34,35,36と第2アーム2とによって平行四辺形や台形状のような四辺形状のリンク機構を構成したものであり、トラックTの幅方向Wに広がりを有する状態が突っ張り姿勢(3T)であり、この突っ張り姿勢(3T)をカム61(ロック部)によって維持することで第2アーム延伸形態を確保することができる。図17に示す構成における突っ張り姿勢維持部6は、ロックカム機構のカム61をロック部として機能させて、リンク機構の動作による重心位置の移動に伴ってカム61によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することで、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)(リンク機構がトラックTの高さ方向に広がりを有する状態)に切り替えることができる。すなわち、図17に示す突っ張り姿勢維持部6は、アオリAを開状態(A2)と閉状態(A1)との間で切り替える最中はカム61(ロック部)によるロック状態(突っ張り姿勢維持状態)を維持しつつ、アオリAが開状態(A2)から閉状態(A1)になった時点(+90度の起立姿勢になった時点)で、カム61が外れて、その結果、リンク部3の作動規制状態が解除され、リンク部3が突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替わることで、車幅内にリンク部3を収納することができる。
【0056】
本発明に係るアオリ開閉機構は、上述のアオリ開閉機構で説明したアクチュエータの駆動力を利用した電動タイプに限定されず、モータ機構の代わりに油圧シリンダ等を使用して油圧で駆動させるタイプや、アオリの自重等を利用したメカニカルな機構によってアオリを自動開閉する機構であってもよい。
【0057】
また、本発明に係るアオリ開閉機構は、少なくとも閉状態にあるアオリが開き始めてから所定角度に到達するまでのアオリの傾動速度(開閉速度)が所定の速度になるようにアオリを自動開閉させることができるものであり、例えば、アオリが開き始めてから所定角度に到達した時点以降の傾動速度(開閉速度)を速くしたり、あるいは遅くなるように構成することも可能である。
【0058】
閉状態にあるアオリに対する第1アームの傾斜角度θに関して、上述した実施形態では15度に設定しているが、種々の仕様等に応じて適宜の角度に設定することが可能である。なお、アオリが開き始める時点において第1アームの水平方向の力を確保することと、アオリを開き切った時点(開状態)において第1アーム1が荷台下に収納可能なサイズ(長さ)であること(角度を持たせるために第1アームを長くしてしまうと、アオリを開き切った時点(開状態)において、第1アームが荷台下に収納できなくなる可能性がある)が肝要である。
【0059】
本発明のアオリ開閉機構が実装可能な貨物車両は、トラック(積載量に応じて区分される小型トラック(2トン・3トントラック)、中型トラック(4トントラック)、大型トラック(10トントラック)、軽トラック)に限定されず、トレーラ、ダンプカー等の貨物車両Tにも実装することができる。
【0060】
上述した実施形態では、アオリとして、荷台の側面を規定するサイドアオリ(側部アオリ)を例にしたが、荷台の後面を規定する後部アオリの開閉動作を本発明に係るアオリ開閉機構によって行うように構成することもできる。なお、アオリは、ゲート(サイドゲート、バックゲート)とも称される。
【0061】
図7(a)に示す上述の実施形態では、ロック解除作動部7は、ロック解除用爪63を解除用ピン73で押圧してロックピン61が両ロックリンク(第1ロックリンク32、第2ロックリンク33)のロックピン受け32b,33bから抜け外れるように構成してロック状態を解除していたが、この構成についても適宜変更してもよい。例えば、図16に示す一変形例において、第2ロックリンク33にロック解除用爪64(ロック解除部)を設け、図7(a)と同様のロック解除作動部7のワイヤ本体71を所定方向(図16の矢印7B方向であり、図7(a)の矢印7A方向とは逆方向)に引っ張って移動させることで、ロック解除用爪64を所定方向に移動(回転)させる構成を採用することができる。このような構成により、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a(ロック部)同士の当接状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。
【0062】
また、ロック解除部を作動させるロック解除作動部として、メカニカルな機構によってリンク部のロック状態を解除する(ロック解除部を作動させる)構成に代えて、電磁的な機構(ソレノイドやクラッチ)を用いてリンク部のロック状態を解除する(ロック解除部を作動させる)構成を採用してもよい。その場合、リンク部3のロック状態を解除するための適宜の命令に基づいて、ソレノイドやクラッチを駆動させる。具体的には、アクチュエータMを駆動させる時の駆動指令入力操作に基づく駆動指令(「アオリを閉めなさい」等の指令であり、図2に示す開閉指令と同義)を上位のコントローラ(制御部C)が受け付けると、当該制御部Cが、その指令に基づいてソレノイドやクラッチを駆動制御して、リンク部3のロック状態を自動的に解除させることができる。
【0063】
また、図16に示すロック解除用爪64(ロック解除部)は、荷台の高さ方向において、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a(ロック部)よりも荷台に近い位置(上側の位置)に配置されていたが、図18のように、当接部32a,33a(ロック部)よりも荷台から遠い位置(下側の位置)に設けてもよい。この場合、ロック解除作動部は、図18に示すように、例えば、ソレノイドSD1(ロック解除作動部)を固定軸RF1の軸上の近辺に設置することで、ロック解除作動部の構成を簡素化でき、アオリ開閉機構Xの小型化に繋がる。また、ソレノイドSD1によりロック解除用爪64を矢印7C方向に押圧してその状態を保持することにより、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a(ロック部)同士が当接した状態になり、この突っ張り姿勢(3T)を維持することで第2アーム延伸形態を確保することができる。また、ソレノイドSD1によりロック解除用爪64を矢印7C方向と逆の方向に引っ張ることで、第1ロックリンク32と第2ロックリンク33の当接部32a,33a同士の当接状態(突っ張り姿勢維持状態)を解除することができ、リンク部3を突っ張り姿勢(3T)から収納姿勢(3S)に切り替えることができる。
【0064】
上述した実施形態及び図17に示す変形例に示すアオリ開閉機構は、突っ張り姿勢維持部のロック部を、リンク部を構成するパーツとは別パーツ(ロックアーム、ロックカム機構)に設けた態様であり、図12乃至図16、及び18に示す各変形例では、リンク部を構成するパーツの一部に突っ張り姿勢維持部のロック部を設けた態様である。特に、図12乃至図16、及び18に示す各変形例は、突っ張り姿勢維持部のロック解除部もリンク部を構成するパーツの一部に設けた態様である。
【0065】
その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…第1アーム
2…第2アーム
3…リンク部
31…メインリンク
32…第1ロックリンク
33…第2ロックリンク
61…ロックピン
6…突っ張り姿勢維持部
7…ロック解除部
A…アオリA
B…ブラケット
M2…モータ
T…貨物車両(トラック)
T1…荷台
X…アオリ開閉機構
図1
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