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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158144
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/104 20220101AFI20241031BHJP
   F24H 15/296 20220101ALI20241031BHJP
   F24H 15/395 20220101ALI20241031BHJP
   F24H 15/238 20220101ALI20241031BHJP
   H04Q 9/00 20060101ALI20241031BHJP
   F24H 15/45 20220101ALI20241031BHJP
【FI】
F24H15/104
F24H15/296
F24H15/395
F24H15/238
H04Q9/00 301D
F24H15/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073103
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡本 真一
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 篤史
【テーマコード(参考)】
5K048
【Fターム(参考)】
5K048AA06
5K048BA14
5K048DA09
5K048DC03
5K048EB01
5K048GA09
5K048GA12
5K048GC02
5K048HA01
5K048HA02
5K048HA03
(57)【要約】
【課題】複数の給湯器に対して給湯器間を区別する情報を入力することなく、協調制御のための役割分担を自動的に決定する。
【解決手段】通信線9を用いて順次直列に通信接続された複数の給湯器100a~100fの各々は、通信線9を介して、下流側に隣接する他の給湯器と通信するための第1通信ユニット111と、上流側に隣接する他の給湯器と通信するための第2通信ユニット112を含む。各給湯器のコントローラは、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112による通信の有無に基づいて、通信接続を構成する直列接続の最上流に位置して協調制御のための統括制御を実行するように動作するリーダーと、通信接続を構成する直列接続の最下流に位置する末端フォロワと、リーダーおよび末端フォロワの間に位置する中間フォロワとのいずれの役割であるかを認識する制御処理を実行する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給湯システムであって、
共通の出湯経路に対して並列に連結された複数の給湯器を備え、
前記複数の給湯器の各々は、
異なる通信線に対して接続可能な第1の通信ユニットおよび第2の通信ユニットと、
当該給湯器の動作を制御するコントローラとを有し、
各前記給湯器の前記コントローラは、前記通信線を介して直列に通信接続された給湯器群を協調して動作させるための統括制御の機能を予め有するように構成され、
前記給湯器群は、前記通信接続を構成する直列接続内で隣接する給湯器間で、前記直列接続の予め定められた一端側である上流側の給湯器の前記第1の通信ユニットおよび前記直列接続の他端側である下流側の給湯器の前記第2の通信ユニットが順次前記通信接続され、
各前記コントローラは、
前記第1の通信ユニットおよび前記第2の通信ユニットによる通信の有無に応じて、当該コントローラが、前記給湯器群のうちで前記直列接続の最上流に位置するリーダー給湯器に搭載されて前記統括制御を実行するように動作するリーダーコントローラと、前記給湯器群のうちで前記直列接続の最下流に位置する末端フォロワ給湯器に搭載された末端フォロワコントローラと、前記リーダー給湯器および前記末端フォロワ給湯器の間に通信接続される給湯器に搭載される中間フォロワコントローラのいずれであるかを認識する第1の制御処理と、
前記リーダーコントローラで初期化されたデータを、各前記中間フォロワコントローラによって予め定められた規則に従って変化させながら前記末端フォロワコントローラまで送信し、かつ、前記末端フォロワコントローラによって前記規則に従ってさらに変化された前記データを、各前記中間フォロワコントローラによってそのままの内容で前記リーダーコントローラまで転送する第2の制御処理を実行するように構成される、給湯システム。
【請求項2】
前記データは、前記リーダーコントローラで初期化された後に、前記中間フォロワコントローラによって所定値ずつ変化されて前記末端フォロワコントローラまで送信され、かつ、前記末端フォロワコントローラによって前記所定値だけさらに変化された後に、各前記中間フォロワコントローラによってそのままの値で前記リーダーコントローラまで転送されるカウンタ値である、請求項1記載の給湯システム。
【請求項3】
前記リーダーコントローラは、前記末端フォロワコントローラからの転送された前記カウンタ値に基づいて前記給湯器群の台数を取得して前記統括制御を実行する、請求項2記載の給湯システム。
【請求項4】
前記リーダーコントローラは、前記カウンタ値の初期値に基づいて、当該コントローラが搭載された前記給湯器のアドレスを認識し、
前記末端フォロワコントローラ、および、前記中間フォロワコントローラの各々は、前記所定値ずつ変化させた後の前記カウンタ値に基づいて、当該コントローラが搭載された前記給湯器のアドレスを認識し、
各前記給湯器は、各前記コントローラによって認識されたアドレスを表示するための表示部をさらに含む、請求項2記載の給湯システム。
【請求項5】
前記統括制御は、前記給湯器群内での、給湯流量の増加に対応した作動開始順序の指定のローテーション処理を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【請求項6】
各前記コントローラは、前記給湯システムの動作中に前記第1の制御処理および前記第2の制御処理を繰り返し実行する、請求項1~4のいずれか1項に記載の給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給湯システムに関し、より特定的には、出湯経路に対して並列に連結された複数の給湯器を備えた、連結型の給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
出湯経路に対して並列に連結された複数の給湯器を備えることで、大容量の出湯に対応可能な給湯システムが公知である。
【0003】
例えば、特開2021-116977号公報(特許文献1)には、数珠つなぎ(デイジーチェイン)の態様で通信接続される複数の給湯器の協調制御によって給湯システムを構成することが記載される。
【0004】
特許文献1の給湯システムでは、協調制御における統括制御機能用のプログラムを各給湯器のコントローラに搭載することで、統括制御用の別個のコントローラの設置を不要としている。すなわち、複数の給湯器のうちの1台の給湯器のコントローラが上記統括制御機能用のプログラムを実行することでマスタコントローラとして動作することで協調制御が実現される。
【0005】
特許文献1では、数珠つなぎの通信接続で通信不良が発生した場合には、現在のマスタコントローラとの通信が途絶する給湯器群が発生することになる。このため、当該給湯器群の中で新たなマスタコントローラを自動的に決定するための制御処理が、通信途絶の検知に応じて実行されることで、協調制御の対応台数が減少することを回避して、給湯システム全体での給湯能力の低下を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-116977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の給湯システムでは、通信途絶が発生すると、マスタコントローラと通信接続できなくなった給湯器が、予め定められた順番に従って制御機能用のプログラムを起動することで、新たなマスタコントローラが自動的に決定される。このため、給湯システムの配設時に、予め定められた順番を認識するための複数の給湯器間を区別する情報の入力が必要となることから、作業員による設定作業が煩雑になることが懸念される。
【0008】
本発明はこのような問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、複数の給湯器が数珠つなぎの態様で通信接続された給湯システムにおいて、複数の給湯器に対して給湯器間を区別する情報を入力することなく、協調制御のための役割分担を自動的に決定することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、給湯システムが提供される。給湯システムは、共通の出湯経路に対して並列に連結された複数の給湯器を備える。複数の給湯器の各々は、異なる通信線に対して接続可能な第1の通信ユニットおよび第2の通信ユニットと、当該給湯器の動作を制御するコントローラとを有する。各給湯器のコントローラは、通信線を介して直列に通信接続された給湯器群を協調して動作させるための統括制御の機能を予め有するように構成される。給湯器群は、通信接続を構成する直列接続内で隣接する給湯器間で、直列接続の予め定められた一端側である上流側の給湯器の第1の通信ユニットおよび直列接続の他端側である下流側の給湯器の第2の通信ユニットが順次通信接続される。各コントローラは、第1の制御処理と、第2の制御処理とを実行する。各コントローラは、第1の制御処理では、第1の通信ユニットおよび第2の通信ユニットによる通信の有無に応じて、当該コントローラが、給湯器群のうちで直列接続の最上流に位置するリーダー給湯器に搭載されて統括制御を実行するように動作するリーダーコントローラと、給湯器群のうちで直列接続の最下流に位置する末端フォロワ給湯器に搭載された末端フォロワコントローラと、リーダー給湯器および末端フォロワ給湯器の間に通信接続される給湯器に搭載される中間フォロワコントローラのいずれであるかを認識する。第2の制御処理では、リーダーコントローラで初期化されたデータを、各中間フォロワコントローラによって予め定められた規則に従って変化させながら末端フォロワコントローラまで送信し、かつ、末端フォロワコントローラによって規則に従ってさらに変化されたデータを、各中間フォロワコントローラによってそのままの内容でリーダーコントローラまで転送するように各コントローラは動作する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、各給湯器のコントローラが第1および第2の制御処理を実行することにより、複数の給湯器に対して給湯器間を区別する情報を入力することなく、協調制御のための役割分担を自動的に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施の形態に係る給湯システムの構成を説明する概略図である。
図2図1に示された各給湯器の構成例を説明する概略図である。
図3図1に示された給湯システムでの協調制御を説明する第1の図表である。
図4図1に示された給湯システムでの協調制御を説明する第2の図表である。
図5】本実施の形態に係る給湯システムによる協調制御の役割分担の決定スキームを説明する概念図である。
図6図5に示された協調制御の役割分担の決定スキームを実行するための各給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートである。
図7】リーダー給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートである。
図8】中間フォロワ給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートである。
図9】末端フォロワ給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートである。
図10】本実施の形態に係る給湯システムでの通信不良の第1の発生例を説明する概念図である。
図11】本実施の形態に係る給湯システムでの通信不良の第2の発生例を説明する概念図である。
図12】本実施の形態に係る給湯システムにおいて図10または図11に例示した通信不良の発生後に再設定された役割分担での制御処理を説明する概念図である。
図13】本実施の形態の変形例に係る給湯システムの構成例を説明する概念図である。
図14図13に示した給湯システムにおける協調制御の役割分担を決定するための制御処理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付してその説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
(給湯システムの構成)
図1は、本実施の形態に係る給湯システム10の構成を説明する概略図である。
【0014】
図1を参照して、本実施の形態に係る給湯システム10は、入水経路5と、出湯経路6と、出湯経路6に対して並列に連結された複数の給湯器100a~100fとを備える。
【0015】
以下、本実施の形態では、6台の給湯器100a~100fによって、給湯システム10が構成されるものとするが、給湯システム10を構成する、並列に連結された給湯器100の台数は任意である。又、以下では、6個の給湯器の間を区別する記載では、各要素に添字a~fを付す一方で、6個の給湯器に共通する記載では、当該添字a~fを付することなく各要素を表記するものとする。
【0016】
なお、図1の例では、給湯器100a~100fは、入水経路5に対しても並列に連結されているが、給湯システム10内において、入水経路5は、給湯器100a~100fの間で完全に共通でなくてもよい。
【0017】
給湯器100a~100fの各々は、異なる通信線9と接続可能な第1通信ユニット111および第2通信ユニット112を有する。給湯器100a~100fは、接続順序が隣接する給湯器間で、一方の給湯器の第1通信ユニット111と、他方の給湯器の第2通信ユニット112との間を通信線9によって順次接続することによって、数珠つなぎの態様で直列に通信接続される。第1通信ユニット111および第2通信ユニット112は、例えば、全二重のシリアル通信によって、データを送受信する。すなわち、通信接続を構成する直列接続において、予め定められた一端側が「上流側」と定義され、その反対の他端側が「下流側」と予め定義される。
【0018】
なお、図1では、表記の都合上、通信線9が、給湯器100a~100fの上部側に記載されているが、実際には、給湯器100a~100fの下部に設けられた通信用端子(図示せず)間を通信線9で接続することで、通信接続が確立されてもよい。また、図1中では、複数の通信線9が同じ符号で表記されているが、各通信線9は、1台の給湯器100と、他の1台の給湯器100とを1対1で接続するものであり、本実施の形態において、複数の給湯器100を結ぶ同一の通信ラインが構成されるものではない点について、確認的に記載する。
【0019】
以下では、並列配置された給湯器100a~100fに対して、給湯器100a側(図中左側)を上流側、給湯器100f側(図面右側)を下流側とする。通信接続についても、隣接する給湯器間を各通信線9で接続する自然な態様とすることで、給湯器100aを最上流、給湯器100fを最下流とするように、直列な通信接続(数珠つなぎ)が形成されるものとして説明を進める。
【0020】
図2には、給湯器100の構成例が示される。
図2を参照して、給湯器100は、入水経路5と連結された入水口32と、出湯経路6と連結された出湯口33と、熱交換器34と、入水路35と、出湯路36と、バイパス路37と、燃焼バーナ38と、流量調整弁42と、コントローラ110と、第1通信ユニット111と、第2通信ユニット112と、第1通信コネクタ121と、第2通信コネクタ122とを含む。
【0021】
入水路35は、入水口32から熱交換器34へ低温水を導く。燃焼バーナ38は、作動時(燃焼オン時)に、燃料(代表的には、ガス)の燃焼熱を発生する。熱交換器34は、燃焼バーナ38が発生した熱量を用いて、当該熱交換器34を通流する低温水を加熱する。出湯路36は、熱交換器34を通流した加熱後の高温水を出湯口33へ導く。燃焼バーナ38および熱交換器34によって「加熱機構」が構成される。
【0022】
バイパス路37は、熱交換器34を迂回して、低温水を直接、出湯路36へ導く。出湯口33からは、熱交換器34からの高温水と、バイパス路37を通過した低温水が混合された、適温の湯が出力される。バイパス路37には、バイパス流量調整弁44が介挿接続されており、バイパス流量調整弁44の開度調整によって、出湯路36における、高温水および低温水の混合比率を制御することができる。
【0023】
入水路35には給湯要求(例えば、図示しない給湯栓の開放)に応じた入水流量を検出するための流量センサ39と、入水温度を検出する入水温度センサ40とが設けられている。又、出湯路36には、缶体温度センサ41および出湯温度センサ43が設けられる。缶体温度センサ41は、バイパス路37との合流位置よりも上流側(熱交換器34側)に配置されて、熱交換器34から出力された高温水の温度を検出する。出湯温度センサ43は、上記合流位置よりも下流側(出湯口33側)に配置されて、出湯口33からの出湯温度を検出する。
【0024】
出湯路36の上記合流位置よりも下流側には、出湯流量を調整するための流量調整弁42が介挿接続されている。流量調整弁42は、開度を全閉(流量=0)に制御する機能を有している。即ち、流量調整弁42によって、給湯器100の給湯流量は、Q=0からQ=Qmax(最大開度における流量)まで調整可能である。
【0025】
コントローラ110は、代表的には、マイクロコンピュータによって構成される。コントローラ110は、上述の各センサの検出値を用いて、給湯器100の各要素を制御する。図2の例では、コントローラ110により、流量調整弁42およびバイパス流量調整弁44の開度、ならびに、燃焼バーナ38の燃焼オンオフおよび発生熱量を制御することができる。
【0026】
コントローラ110は、流量センサ39の検出値に基づいて、「加熱機構」の通流量が予め定められた最低作動流量(MOQ)以上になったこと(以下、「通水オン」とも称する)が検出されると、燃焼バーナ38での燃焼(即ち、加熱機構の作動)を開始することにより、給湯を開始する。この際には、流量センサ39の検出値(入水流量、即ち、給湯流量)と、バイパス流量調整弁44の開度に基づく混合比率とを用いて、加熱機構の通流量を求めることができる。したがって、給湯器100は、流量調整弁42が全閉であるときには、入水流量がMOQを超えないため、給湯を実行しないことになる。
【0027】
なお、流量センサ39は、バイパス路37との接続点よりも下流側に配置されても良い。この場合には、流量センサ39の検出値をそのまま用いて「通水オン」を検出することができる一方で、上記混合比率をさらに用いて、給湯器100への入水流量、即ち、給湯流量を求めることができる。
【0028】
給湯時には、コントローラ110は、給湯温度制御を実行する。例えば、入水流量(流量センサ39)、入水温度(入水温度センサ40)、および、出湯温度(出湯温度センサ43)の検出値に基づき、出湯温度の検出値が出湯設定温度に一致するように、供給燃料量に依存する燃焼バーナ38の発生熱量と、バイパス流量調整弁44の開度に依存する混合比率とが制御される。
【0029】
さらに、給湯システム10を構成する給湯器100において、コントローラ110は、流量調整弁42による流量制御を実行する。具体的には、各給湯器100は、協調制御の一部として、後述のリーダーコントローラからの制御指令により、待機モードおよび通水モードのいずれかに設定される。
【0030】
通水モードの給湯器100では、流量調整弁42は開放されて、基本的には、上述の最大流量Qmaxに対応した最大開度に設定される。これに対して、待機モードの給湯器100では、流量調整弁42は全閉状態に制御される。
【0031】
各給湯器100の第1通信ユニット111は、第1通信コネクタ121に接続された通信線9を経由して、隣接する他の給湯器の第2通信ユニット112との間でデータを送受信する。同様に、第2通信ユニット112は、第2通信コネクタ122に接続された通信線9を経由して、隣接するさらに別の給湯器の第1通信ユニット111との間でデータを送受信する。
【0032】
各給湯器100において、第1通信ユニット111、第1通信コネクタ121、第2通信ユニット112、および、第2通信コネクタ122は、例えば、コントローラ110が搭載されるプリント基板上に実装することができる。また、図2では、コントローラ110と、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112とを、個別の要素として記載しているが、コントローラ110の要部がマイクロコンピュータを用いて構成される場合は、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112のそれぞれの一部機能は、当該マイクロコンピュータによって実現されてもよい。
【0033】
(協調制御の説明)
次に図3および図4を用いて、給湯システム10での協調制御を説明する。
【0034】
図3に示されるように、協調制御は、給湯器100a~100fを、1台の「メイン1給湯器」、1台以上の「メイン2給湯器」および、その他の「サブ給湯器」に分類することで実行される。給湯システム10の給湯待機時には、各サブ給湯器は、待機モードに設定されて、流量調整弁42(図2)は閉止される。一方で、メイン1給湯器およびメイン2給湯器の各々は通水モードとされて、流量調整弁42(図2)は開放される。
【0035】
給湯システム10の給湯が開始されると、流量調整弁42が閉止されたサブ給湯器の各々では、通水は検出されず、燃焼は開始されない。これに対して、流量調整弁42が開放されているメイン1給湯器およびメイン2給湯器の各々では、流量センサ39によってMOQ以上の通水が検出される。
【0036】
メイン1給湯器が、通水の検出に応じて燃焼を開始すると、出湯路36への給湯が開始される。さらに、メイン1給湯器は、給湯を開始すると、メイン2給湯器に対して、待機モードへの移行、すなわち、流量調整弁42の閉止を指示する。これにより、1台分の給湯能力(メイン1給湯器)によって給湯を開始することができるので、給湯待機時に全ての給湯器で流量調整弁42を開放する場合と比較して、給湯可能流量の下限範囲を拡大することができる。
【0037】
その後、メイン1給湯器の給湯流量(燃焼オン中の流量センサ39による検出流量)が、予め定められた第1基準流量を超えると、メイン2給湯器に対して通水モードへの移行要求が生成される。これに応じて、メイン2給湯器の流量調整弁42が開放されると、流量センサ39によって通水が検出されるのに応じて、メイン2給湯器からも給湯されて、2台の給湯器による給湯が開始される。給湯器100a~100fは並列接続されているので、流量調整弁42の開度が同等であれば、この状態でのメイン1給湯器およびメイン2給湯器での流量(給湯流量)は同等である。
【0038】
したがって、メイン2給湯器は、通水検出のバックアップとして位置付けられる。すなわち、メイン2給湯器は、通水オンの検出時に、一定時間が経過しても、メイン1給湯器からの待機モードへの移行指令が受信されない場合には、メイン1給湯器の異常を検知する。この場合には、メイン2給湯器が、当該異常検知に応じて燃焼を開始することで、出湯路36への給湯が開始される。さらに、メイン1給湯器の異常が、協調制御を統括するリーダーコントローラ(後述)に対して送信される。
【0039】
なお、給湯システム10内の2台以上の給湯器が給湯運転を行っている場合、給湯運転を行っている給湯器のうちの最後に給湯運転を開始した1台の給湯器は、流量調整弁42の開度制御を伴って給湯流量が変化する「能力調整用」として給湯運転する一方で、残りの給湯器は、流量調整弁42の開度が固定されることで給湯流量が固定された、「能力固定用」として給湯運転を実行する。この能力調整用として給湯運転している給湯器において、給湯流量が第1基準流量を超えると、その給湯器が能力固定用の給湯器になるとともに、待機中の給湯器のうちの1台が新たに能力調整用として、給湯運転を開始する。例えば、第1基準流量は、能力固定用の給湯器による給湯流量と同等である。これにより、一例として、下流側に向かって給湯器を1台ごとに待機モードから通水モード(能力調整用)へ移行させる態様で、給湯流量の増加に対応する複数の給湯器100a~100fの協調制御が実現される。
【0040】
また、能力調整用として給湯運転している給湯器において、給湯流量が、上記第1基準流量よりも低く設定される第2基準流量を下回ると、当該給湯器は、給湯を停止して待機モードへ移行するとともに、それまで能力固定で給湯運転していた給湯器のうちの1台が新たに能力調整用の給湯器として給湯運転を行う。これにより、一例として、上流側へ向かって給湯器を1台ごとに通水モード(能力調整用)から待機モードへ移行させる態様で、給湯流量の減少に対応する複数の給湯器100a~100fの協調制御が実現される。なお、メイン1給湯器およびメイン2給湯器では、加熱機構の流量がMOQよりも低下して、通水オフが検出されても、燃焼はオフさせる一方で、流量調整弁42の開放は維持される。
【0041】
上記協調制御によれば、給湯運転時には、メイン1給湯器が優先的に給湯し、次に、メイン2給湯器が優先的に給湯する。したがって、図3で説明した、給湯流量の増加に対応した作動(燃焼)開始順序の指定が変わらないと、給湯器100a~100fの一部の給湯器の作動時間(具体的には、燃焼時間)が突出することで、故障が発生し易くなることが懸念される。
【0042】
したがって、図4に示されるローテーションが実行される。
図4に示されるように、状態1では、給湯器100aがメイン1給湯器、給湯器100bがメイン2給湯器に指定され、給湯器100c~100fはサブ給湯器に指定される。給湯器100a~100fの各々は、各自の作動時間(燃焼時間)の積算値を逐次算出する。状態1において、給湯器100aの作動時間(積算値)が予め定められた時間基準値に達すると、状態1から状態2へ遷移するローテーションが行われる。状態2では、メイン1給湯器およびメイン2給湯器の指定が、状態1から1台ずつ上流側から下流側にシフトされる。
【0043】
これにより、給湯器100bがメイン1給湯器、給湯器100cがメイン2給湯器に指定され、給湯器100d~100f,100aはサブ給湯器に指定される。給湯器100aは、サブ給湯器のうちで、給湯開始の順序が最も遅い給湯器に指定することができる。この段階で、時間基準値と比較される、給湯器100aの作動時間(積算値)はクリアされてもよい。
【0044】
状態2において、給湯器100bの作動時間(積算値)が予め定められた時間基準値に達すると、状態2から状態3へ遷移するローテーションが行われる。状態3では、メイン1給湯器およびメイン2給湯器の指定が、状態2から1台ずつ上流側から下流側にシフトされる。
【0045】
これにより、給湯器100cがメイン1給湯器、給湯器100dがメイン2給湯器に指定され、給湯器100e~100f,100a,100bはサブ給湯器に指定される。給湯器100bは、状態1から状態2への遷移時における給湯器100aと同様に扱われる。
【0046】
以降では、メイン1給湯器に指定されている給湯器の作動時間(積算値)が時間基準値に達する毎に、メイン1給湯器およびメイン2給湯器の指定を1台ずつ上流側から下流側にシフトされるローテーションが実行される。最下流側の給湯器100fがメイン1給湯器に指定される場合は、最上流側の給湯器100aがメイン2給湯器に指定され、この状態からローテーションが実行されると、状態1が再び形成される。
【0047】
(協調制御の役割分担の決定)
図3および図4で説明した協調制御の統括機能、特に、メイン1給湯器、メイン2給湯器、および、サブ給湯器を指定する機能は、給湯器100a~100fのうちの1台のコントローラ110が、特許文献1でのマスタコントローラに相当する、当該統括機能を実現するための統括機能プログラムを実行する「リーダーコントローラ」として動作することで実現される。
【0048】
また、給湯器100a~100fの各々のコントローラ110には、図3で説明したメイン1給湯器、メイン2給湯器、および、サブ給湯器として動作するためのプログラムもそれぞれ格納されている。また、給湯運転の実行時において、「能力調整用」および「能力固定用」の各々として動作するためのプログラムについても同様に、給湯器100a~100fの各々のコントローラ110に予め格納されている。このため、リーダーコントローラからの指定に従ってこれらのプログラムによる処理を選択的に実行することで、メイン1給湯器、メイン2給湯器、および、サブ給湯器のいずれの役割についても、給湯器100a~100fの各々は実行可能である。
【0049】
本実施の形態に係る給湯システムでは、給湯器100a~100fの各々のコントローラ110に当該統括機能プログラムを格納し、その実行(起動)を選択的に行うことで、給湯器100a~100fの各コントローラ110は、いずれもリーダーコントローラとして動作することができる。これにより、特許文献1と同様に、上位の統括コントローラを配置することなく、給湯器100a~100fの協調制御を行うことができる。
【0050】
このような構成とすることで、上記統括機能プログラムを実行するコントローラが、実際にリーダーコントローラとして動作するとともに、これまでリーダーコントローラとして動作していなかったコントローラが、統括機能プログラムを実行することで、新たにリーダーコントローラとして動作することも可能である。
【0051】
本実施の形態に係る給湯システムでは、下記の様な制御処理によって、各給湯器のコンロ-ラがリーダーコントローラとして動作するかを自動的に判断することを伴って、協調制御の役割分担を実行する。
【0052】
図5には、本実施の形態に係る給湯システムによる協調制御の役割分担の決定スキームを説明する概念図が示される。
【0053】
図5に示されるように、給湯器100a~100fは、隣接する給湯器の第1通信ユニット111および第2通信ユニット112の間を通信線9で接続することで、数珠つなぎに通信接続される。このとき、最上流側の給湯器100aは、第1通信ユニット111が隣の給湯器100bの第2通信ユニット112との間で通信する一方で、第2通信ユニット112では通信が行われない。
【0054】
一方で、最下流側の給湯器100fは、第2通信ユニット112が隣の給湯器100eの第1通信ユニット111との間で通信する一方で、第1通信ユニット111では通信が行われない。また、その他の中間の給湯器100b~100eの各々は、第1通信ユニット111によって隣(下流側)の給湯器100の第2通信ユニット112との間で通信するとともに、第2通信ユニット112によって隣(上流側)の給湯器100の第1通信ユニット111との間で通信する。
【0055】
このような給湯器間での、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112による通信状態の組み合わせに応じて、本実施の形態に係る給湯システムでは、複数の給湯器が、上述のリーダーコントローラを備える「リーダー給湯器」、数珠つなぎにおいてリーダー給湯器の反対側に位置することになる「末端フォロワ給湯器」、および、その他の「中間フォロワ給湯器」のいずれかとなる役割分担が決定される。
【0056】
例えば、第1通信ユニット111が通信を行っている一方で、第2通信ユニット112が通信を実行しない給湯器(図5では、給湯器100a)が「リーダー給湯器」となる。また、第2通信ユニット112が通信を行っている一方で、第1通信ユニット111が通信を実行しない給湯器(図5では、給湯器100f)が「末端フォロワ給湯器」となり、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112の両方が通信を実行している給湯器(図5では、給湯器100b~100e)が「中間フォロワ給湯器」となる。すなわち、数珠つなぎの一端の給湯器が「リーダー給湯器」となる一方で、他端の給湯器が「末端フォロワ給湯器」となり、両者の間に通信接続された給湯器が「中間フォロワ給湯器」となる。
【0057】
リーダー給湯器である給湯器100aは、アドレスカウンタ値ADRを初期化するとともに(例えば、ADR=1)、初期化したアドレスカウンタ値ADRを、下流側の隣の給湯器100bに対して、第1通信ユニット111により送信する。給湯器100aは、送信したアドレスカウンタ値ADR(送信ADR)に基づいて、自機アドレスを認識する(例えば、♯01)。
【0058】
中間フォロワの給湯器100bは、第2通信ユニット112によって、上流側の隣の給湯器100aから送信されたアドレスカウンタ値ADRを受信すると、受信したアドレスカウンタ値(受信ADR)に所定値を加算して、下流側の隣の給湯器100cに対する送信ADRを算出する。例えば、送信ADR=1+1=2に算出される。給湯器100bは、送信ADRに基づいて、自機アドレスを認識する(例えば、♯02)。さらに、送信ADRは、第1通信ユニット111によって、下流側の隣の給湯器100cに対して送信される。
【0059】
その他の中間フォロワの給湯器100c~100eも、上述の給湯器100bと同様に動作する。この結果、給湯器100c~100eは、送信ADRに基づいて、それぞれの自機アドレスを認識する(例えば、給湯器100c=♯03,給湯器100d=♯04,給湯器100e=♯05)。そして、給湯器100eの第1通信ユニット111から末端フォロワ給湯器である給湯器100fの第2通信ユニット112に対して、送信ADR(=5)が送信される。
【0060】
末端フォロワである給湯器100fは、給湯器100eから受信したアドレスカウンタ値(受信ADR)に所定値を加算して、送信ADRを算出する。給湯器100fは、この送信ADRに基づいて自機アドレスを認識する(例えば、♯06)。末端フォロワでの送信ADRの値(例えば「6」)は、数珠つなぎで通信接続された給湯器の台数、即ち、協調制御を実行する給湯器の台数を示す、トータル台数を示すことが理解される。
【0061】
末端フォロワである給湯器100fの第2通信ユニット112は、送信ADRをリーダー給湯器に返送するために、上流側の隣の給湯器100eの第1通信ユニット111に送信する。中間フォロワである給湯器100b~100eの各々では、下流側の隣の給湯器の第2通信ユニット112から送信された送信ADRを受信すると、当該送信ADRの値をそのまま、上流側の隣の給湯器の第1通信ユニット111へ順次送信する。
【0062】
この結果、リーダー給湯器である給湯器100aは、第1通信ユニット111が、給湯器100b~給湯器100e(中間フォロワ給湯器)によって転送された、末端フォロワ給湯器(給湯器100f)での送信ADRを受信する。これにより、リーダー給湯器は、上記トータル台数を取得することができる。
【0063】
次に、図5で説明した、協調制御の役割分担の決定スキームを、自動的に実行するための各給湯器での制御処理について説明する。
【0064】
図6には、各給湯器のコントローラで実行される処理が示される。図6に示された制御処理は、給湯システム10の動作中において給湯器100a~100fの各コントローラ110によって繰り返し実行される。
【0065】
図6に示されるように、コントローラ110は、ステップ(以下、単に「S」と表記する)S110により、第2通信ユニット112で通信が行われているか否かを判定する。第2通信ユニット112で通信が行われていない場合には(S110のNO判定時)、コントローラ110は、S130により、自機が「リーダー給湯器」であると認識する。
【0066】
これに対して、コントローラ110は、第2通信ユニット112で通信が行われている場合には(S110のYES判定時)、S120により、第1通信ユニット111で通信が行われているか否かをさらに判定する。第1通信ユニット111で通信が行われている場合には(S120のYES判定時)、コントローラ110は、S140により、自機が「中間フォロワ給湯器」であると認識する。
【0067】
また、第1通信ユニット111で通信が行われていない場合には(S120のNO判定時)、コントローラ110は、S150により、自機が「末端フォロワ給湯器」であると認識する。
【0068】
図5の構成例に対して図6のフローチャートによる制御処理を適用すると、給湯器100aでは、S110がNO判定となるため「リーダー給湯器」であることが認識される(S130)。また、給湯器100fでは、S110がYES判定となる一方で、S120がNO判定となることで、「末端フォロワ給湯器」であることが認識される(S150)。同様に、給湯器100b~100eの各々では、S110およびS120がYES判定となることで「中間フォロワ給湯器」であることが認識される(S140)。図6の処理が、定期的に起動されることにより、数珠つなぎで通信接続された給湯器100a~100fの各々は、自機が「リーダー給湯器」、「中間フォロワ給湯器」、および、「末端フォロワ給湯器」のいずれとして動作するか、即ち、協調制御による役割分担を、自動的に決定することができる。
【0069】
図7図9には、リーダー給湯器、中間フォロワ給湯器および、末端フォロワ給湯器のそれぞれによる制御処理を説明するフローチャートが示される。
【0070】
図7には、リーダー給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートが示される。図7による制御処理は、例えば、S130によりリーダー給湯器であることを認識した給湯器のコントローラによって、S130の後に実行される。
【0071】
図7に示されるように、リーダー給湯器のコントローラ110は、S210により、アドレスカウンタ値ADRを初期値である「1」に設定すると、S220により、第1通信ユニット111によってアドレスカウンタ値ADRを、下流側の隣の給湯器へ送信する。図5の例では、S220により、給湯器100aから給湯器100bへアドレスカウンタ値ADR(ADR=1)が送信される。
【0072】
さらに、リーダー給湯器のコントローラ110は、S230では、S220で送信したアドレスカウンタ値ADR(送信ADR)を、自機アドレスと認識する。すなわち、リーダー給湯器のアドレスは「♯01」となる。
【0073】
リーダー給湯器のコントローラ110は、S240により、第1通信ユニット111が下流側の隣の給湯器からアドレスカウンタ値ADRを受信したか否かを判定し、受信すると(S240のYES判定時)、受信したアドレスカウンタ値ADR(受信ADR)を、数珠つなぎによる通信接続の接続台数と認識する。アドレスカウンタ値ADRが受信されるまでは(S240のNO判定時)、S250の実行は待機される。例えば、図5の例において、通信不良が発生していない場合には、S250において、受信ADR=6であるので、接続台数は6台であると認識される。
【0074】
図8には、中間フォロワ給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートが示される。図8による制御処理は、例えば、S140により中間フォロワ給湯器であることを認識した給湯器のコントローラによって、S140の後に実行される。
【0075】
図8に示されるように、中間フォロワ給湯器のコントローラ110は、S310により、第2通信ユニット112が上流側の隣の給湯器からアドレスカウンタ値ADRを受信したか否かを判定し、受信すると(S310のYES判定時)、S320により、受信したアドレスカウンタ値ADR(受信ADR)をカウントアップ(+1)して、下流側の隣の給湯器に送信するアドレスカウンタ値ADR(送信ADR)を生成する。
【0076】
中間フォロワ給湯器のコントローラ110は、S330により、S320でカウントアップしたアドレスカウンタ値ADR(送信ADR)を、自機アドレスと認識する。これにより、中間フォロワ給湯器のアドレスは「♯02」以降の順次カウントアップされた値となる。そして、中間フォロワ給湯器のコントローラ110は、S340により、S320で算出した送信ADRを、第1通信ユニット111によって下流側の隣の給湯器へ送信する。
【0077】
さらに、中間フォロワ給湯器のコントローラ110は、S350により、第1通信ユニット111が下流側の隣の給湯器からアドレスカウンタ値ADRを受信したか否かを判定し、受信すると(S350のYES判定時)、S360により、受信したアドレスカウンタ値ADR(受信ADR)を、カウントアップせずにそのまま、第2通信ユニット112によって、上流側の給湯器へ送信する。アドレスカウンタ値ADRが受信されるまでは(S350のNO判定時)、S360の実行は待機される。
【0078】
これにより、図5の例では、給湯器100b~100eは、アドレスカウンタ値ADR=1~4を上流側からそれぞれ受信して、アドレスカウンタ値ADR=2~5を下流側にそれぞれ送信する。さらに、下流側から受信したアドレスカウンタ値については、そのまま転送することで、上述の接続台数に相当する、後述する末端フォロワからの送信ADRを、そのままリーダー給湯器まで転送することができる。
【0079】
図9には、末端フォロワ給湯器のコントローラによる制御処理を説明するフローチャートが示される。図9による制御処理は、例えば、S150により末端フォロワ給湯器であることを認識した給湯器のコントローラによって、S150の後に実行される。
【0080】
図9に示されるように、末端フォロワ給湯器のコントローラ110は、図8と同様のS310~S330を実行して、上流側の隣の給湯器からの受信ADRをカウントアップ(+1)して、送信ADRを算出する(S320)。さらに、末端フォロワ給湯器のコントローラ110は、カウントアップ後の送信ADRを、自機アドレスと認識する。これにより、末端フォロワ給湯器のアドレスは、給湯器1台毎にカウントアップされた値、すなわち、数珠つなぎによる通信接続の接続台数と同等の値となる(S330)。
【0081】
末端フォロワ給湯器のコントローラ110は、S335により、S330で算出した送信ADRを、第2通信ユニット112によって、上流側の給湯器へ送信する。末端フォロワ給湯器からの送信アドレスは、数珠つなぎによる通信接続の接続台数を示す値として、中間フォロワ給湯器の各々ではカウントアップされずにそのまま転送されて(図8のS360)、リーダー給湯器まで伝送される(図7のS240)。これにより、リーダー給湯器は、数珠つなぎの接続台数、すなわち、協調制御に参加する給湯器の台数を把握することができる。これにより、リーダー給湯器は、アドレスが「♯01」~「♯06」の給湯器に対して、メイン1給湯器、メイン2給湯器、および、4台のサブ給湯器の役割をローテーションさせて協調制御の管理を行うことができる。
【0082】
以上説明したように、本実施の形態に係る給湯システムでは、通信線9による接続後に電源投入した際に図6図9の制御処理が実行されることにより、初期状態、例えば、通信不良が発生していない図1の構成例において、給湯器間を区別するデータを入力することなく、協調制御を管理するリーダー給湯器を自動的に決定することができる。さらに、協調制御への給湯器の参加台数(接続台数)をリーダー給湯器が自動的に取得できるとともに、各給湯器のアドレスを付与して、各給湯器が自機アドレスを認識する処理についても、自動的に実行することができる。
【0083】
なお、給湯器100a~100fの各々は、LED(Light Emitting Diode)のセグメント表示等による表示部116を有するように構成されてもよい。この場合には、表示部116によって、上述したアドレスカウンタ値の送受信に応じて、各給湯器が認識した自機アドレスを一定期間表示させることができる。これにより、自動的な役割分担の決定スキームの下で、アドレスが正常に付与されたか否かを、作業員等が容易に確認できる。
【0084】
さらに、図7図9の処理を定期的に繰り返すことで、通信不良の発生によって数珠つなぎの態様が変化した場合に対応して、協調制御の役割分担を再決定することが可能である。
【0085】
図10および図11には、本実施の形態に係る給湯システムでの通信不良の発生例が示される。
【0086】
図10の第1の発生例では、給湯器100cから給湯器100dへの、上流側から下流側への送信が不良になった例が示される。この場合には、受信側(下流側)の給湯器100dの第2通信ユニット112が、通信不良を認識することができる。この結果、給湯器100dで図6の制御処理が実行されると、S110がNO判定となることで、給湯器100dが、新たにリーダー給湯器であることを認識する。一方で、給湯器100e,100fでは、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112による隣の給湯器との通信状態は変わらない。したがって、給湯器100eおよび100fでは、「中間フォロワ給湯器」および「末端フォロワ給湯器」の役割はそれぞれ変わらない。
【0087】
また、送信側(上流側)の給湯器100cでは、受信側の給湯器100d(第2通信ユニット112)からの通信不良を示す情報を受信することにより、第1通信ユニット111による通信が行われていないことを認識できる。したがって、給湯器100cで図6の制御処理が実行されると、S110がYES判定、かつ、S120がNO判定となることで、給湯器100cは、新たに末端フォロワ給湯器であることを認識できる。一方で、給湯器100a,100bでは、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112による隣の給湯器との通信状態は変わらない。したがって、給湯器100aおよび100bでは、「リーダー給湯器」および「中間フォロワ給湯器」の役割はそれぞれ変わらない。
【0088】
図11には、第2の発生例として、給湯器100dから給湯器100cへの、下流側から上流側への送信が不良になった例が示される。この場合には、受信側(上流側)の給湯器100cの第1通信ユニット111が、通信不良を認識することができる。この結果、給湯器100cで図6の制御処理が実行されると、S110がYES判定、かつ、S120がNO判定となることで、図10の例と同様に、給湯器100cは、新たに末端フォロワ給湯器であることを認識できる。
【0089】
一方で、送信側(下流側)の給湯器100dでは、受信側の給湯器100c(第1通信ユニット111)からの通信不良を示す情報を受信することにより、第2通信ユニット112による通信が行われていないことを認識できる。この結果、給湯器100dで図6の制御処理が実行されると、S110がNO判定となることで、給湯器100dは、図10の例と同様に、リーダー給湯器であることを認識できる。
【0090】
図11の例においても、給湯器100a,100c,100e,100fでは、第1通信ユニット111および第2通信ユニット112による隣の給湯器との通信状態は変わらない。したがって、これらの給湯器の役割分担は、通信不良の発生前と同じに維持される。
【0091】
なお、通信線9の断線による通信不良が発生した場合には、一定時間継続して、上流側または下流側からの信号が途絶したことの検出に応じて、第1通信ユニット111または第2通信ユニット112で通信が行われていないと判定することができる(図6のS110,S120)。
【0092】
図12には、図10または図11に例示した通信不良の発生後に再設定された役割分担での制御処理を説明する概念図が示される。
【0093】
図10または図11に例示された給湯器100cおよび100dの間での通信不良の発生に応じて、給湯器100c,100dの役割分担が変更された後に、各給湯器100a~100fにおいて図7図9のうちのいずれかの制御処理が実行される。
【0094】
この結果、図12に示されるように、リーダー給湯器である給湯器100a,100dからは、初期値に設定されたアドレスカウンタ値ADR(ADR=1)が、下流側の給湯器100b,100eに送信される(図7のS210,S220)。中間フォロワ給湯器である給湯器100b,100eは、受信ADR(=1)をカウントアップした送信ADRに基づいて、自機アドレスを「♯02」と認識するとともに(図8のS310~S330)、下流側の給湯器100c,100fに対して、当該送信ADR(=2)を送信する(図8のS340)。
【0095】
末端フォロワ給湯器である給湯器100c,100eは、受信ADR(=2)をカウントアップした送信ADRに基づいて、自機アドレスを「♯03」と認識するとともに(図9のS310~S330)、上流側の給湯器100b,100eに対して、当該送信ADR(=3)を送信する(図9のS335)。給湯器100b,100e(末端フォロワ給湯器)からの送信ADRは、給湯器100b,100eによって転送されて、リーダー給湯器である給湯器100a,100dへ伝送される。
【0096】
この結果、本実施の形態に係る給湯システムでは、給湯器100cおよび100dの間での通信不良によって通信が分断された、給湯器100a~100cのグループと、給湯器100d~100fのグループとのそれぞれで、接続台数が3であることを認識したリーダー給湯器(給湯器100a,100d)によって協調制御を管理することができる。
【0097】
これにより、合計6台の給湯器100a~100fの給湯能力を用いて、給湯システム10の給湯流量を確保することが可能である。このように、定期的に図6図9の制御処理を実行することで、通信不良の発生時には、通信が途絶したグループのそれぞれで協調制御の役割分担を自動的に再設定することができる。これにより、通信不良の発生前後で、協調制御の下で給湯可能な給湯器の台数が低下することを回避することができる。
【0098】
なお、表示部116によって、各給湯器が認識した自機アドレスを一定期間表示させる構成とすることにより、通信不良の発生後に役割分担が自動的に再設定された場合にも、アドレスが正常に付与されることによって協調制御が正常に実行されることを容易に確認することが可能となる。
【0099】
本実施の形態において、「末端フォロワ給湯器」に搭載されているコントローラ110は「末端フォロワコントローラ」の一実施例に対応し、「中間フォロワ給湯器」に搭載されているコントローラ110は「中間フォロワコントローラ」の一実施例に対応する。さらに、図6による制御処理は「第1の制御処理」の一実施例に対応し、図7図9による制御処理は「第2の制御処理」の一実施例に対応する。
【0100】
なお、本実施の形態では、リーダー給湯器で初期化された後、所定値ずつ変化される(例えば、1ずつカウントアップされる)アドレスカウンタ値が、中間フォロワ給湯器および末端フォロワ給湯器に順次送信され、末端フォロワ給湯器でのカウントアップ後に、そのままの値でリーダー給湯器まで転送される例を説明したが、このような「カウンタ値」に代えて、任意のデータが、予め定められた規則に従って順次変化されて、中間フォロワ給湯器および末端フォロワ給湯に順次送信される態様としても、同様の効果、すなわち、各給湯器のアドレス付与と、数珠つなぎの接続台数の取得とを実現することが可能である。
【0101】
(変形例)
図1図12では、各給湯器が2個の通信ユニットを具備することで、異なる2個の給湯器との通信接続が可能な給湯器によって給湯システムが構成される例を説明した。このような構成では、数珠つなぎによって、給湯システムを構成する給湯器の台数を柔軟に変更することができる。これにより、対応可能な給湯流量範囲の自由度を向上することができる。
【0102】
図13および図14では、変形例として、給湯器の台数が2台に限定された給湯システム(例えば、家庭用)における協調制御について説明する。
【0103】
図13は、本実施の形態の変形例に係る給湯システム10Xの構成例を説明する概念図である。
【0104】
図13を参照して、給湯システム10Xは、入水経路5と、出湯経路6と、出湯経路6に対して並列に連結された2台の給湯器100x,100yとを備える。給湯器100x,100yの各々は、単一の通信ユニット115を有するので、1台の給湯器としか通信することができない。したがって、給湯器100x,100yの通信ユニット115が通信線9によって接続されることで、給湯器100x,100yの間でデータが送受信される構成とすることで、2台の給湯器で構成される給湯システム10Xが構成される。
【0105】
給湯システム10Xでは、給湯器100xおよび100yの一方を給湯待機時に通水モードとされるメイン給湯器に指定する一方で、給湯器100xおよび100yの他方を給湯待機時に待機モードとされるサブ給湯器に指定することで、2台の給湯器による協調制御を実行することができる。
【0106】
2台の給湯器による協調制御においても、給湯器100xおよび100yの間で作動時間(燃焼時間)の積算値が均衡するように、図4と同様のローテーションを行うことが必要である。このため、給湯器100xおよび100yの一方を上述のリーダー給湯器とする役割分担の決定が必要である。
【0107】
図13の変形例では、工場出荷時に付与された給湯器毎のIDが、コントローラ110のメモリ113に格納されている。各IDは、数字のみ、または、英字および数字の組み合わせによって構成されて、予め定められたルールに従って大小比較を実行可能に付与される。
【0108】
図14は、給湯システム10Xにおける協調制御の役割分担を決定するための制御処理を説明するフローチャートである。図14に示される制御処理は、給湯器100x,100yの各コントローラ110によって電源投入時に実行することができる。
【0109】
図14に示されるように、コントローラ110は、S410では、メモリ113に記憶されている自機のID(自ID)を、通信ユニット115により、通信線9で接続された他の給湯器に対して送信する。そして、コントローラ110は、S420により、他の給湯器から送信されたID(他ID)の送信有無を確認する。他IDが受信されると(S420のYES判定時)、コントローラ110は、S430により、メモリ113に格納されている自IDと、受信した他IDとを比較する。
【0110】
コントローラ110は、上述の予め定められたルールに照らして、自IDが他IDより大きいと判定した場合(S430のYES判定時)には、S440により、自機が「リーダー給湯器」であると認識する。反対に、他IDが自IDより大きいと判定した場合(S430のNO判定時)には、S450により、自機が「フォロワ給湯器」であると認識される。
【0111】
これにより、比較例の給湯システム10Xにおいても、通信接続された2台の給湯器の一方をリーダー給湯器とする役割分担を決定して、当該2台の給湯器の協調制御による効率的な給湯を実現することができる。
【0112】
なお、給湯システム10Xは、給湯器が2台であるので、通信不良が発生すると、協調制御は不能となり、給湯器100x,100yが単独に動作することで、出湯経路6へ給湯される。したがって、図14の制御処理は、電源投入時にリーダー給湯器を決定すると、その後定期的に実行する必要はない。
【0113】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0114】
5 入水経路、6 出湯経路、9 通信線、10,10X 給湯システム、32 入水口、33 出湯口、34 熱交換器、35 入水路、36 出湯路、37 バイパス路、38 燃焼バーナ、39 流量センサ、41 缶体温度センサ、42 流量調整弁、43 出湯温度センサ、44 バイパス流量調整弁、100,100a~100f,100x,100y 給湯器、110 コントローラ、111 第1通信ユニット、112 第2通信ユニット、113 メモリ、115 通信ユニット、116 表示部、121 第1通信コネクタ、122 第2通信コネクタ。
図1
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図14