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特開2024-158145携帯用切断機用スタンドおよび定置式切断機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158145
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】携帯用切断機用スタンドおよび定置式切断機
(51)【国際特許分類】
   B23D 47/00 20060101AFI20241031BHJP
   B23D 45/04 20060101ALI20241031BHJP
   B23D 45/16 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B23D47/00 Z
B23D45/04 A
B23D45/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073104
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000137292
【氏名又は名称】株式会社マキタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 弦
(72)【発明者】
【氏名】川井 智史
【テーマコード(参考)】
3C040
【Fターム(参考)】
3C040AA01
3C040BB13
3C040CC05
3C040LL02
3C040LL05
(57)【要約】
【課題】携帯用切断機をスタンドに装着して定置式切断機として使用する際に、可動カバーを円滑に開閉して携帯用切断機をスムーズに上下揺動できる構造が必要とされている。
【解決手段】スタンド1は、チップソーを開閉する可動カバー25を備える携帯用切断機20が装着される。スタンド1は、ベース2を有する。スタンド1は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。スタンド1は、取付アーム5の下動に従って携帯用切断機20の可動カバー25を使用者側の前方へ押すカバー開き機構10を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転刃具を開閉する可動カバーを備える携帯用切断機が装着される携帯用切断機用スタンドであって、
ベースと、
前記ベースに上下に揺動可能に連結されかつ前記携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームと、
前記取付アームの下動に従って前記携帯用切断機の前記可動カバーを使用者側に押すカバー開き機構を有する携帯用切断機用スタンド。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記カバー開き機構は、1つまたは複数のリンクを有し、
前記カバー開き機構の一端側が前記ベースに回転可能に連結され、
前記カバー開き機構の他端側が前記可動カバーに当接または係合する携帯用切断機用スタンド。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記カバー開き機構の前記一端側の回転中心は、前記携帯用切断機の上下の揺動全領域において前記可動カバーの開閉の回転中心と前記取付アームの揺動中心を結んだ直線の下方に位置する携帯用切断機用スタンド。
【請求項4】
請求項2または3に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記カバー開き機構の前記複数のリンクは、前記ベースに回転可能に連結される第1リンクと、前記第1リンクに回転可能に連結されかつ前記可動カバーを押す第2リンクを含む携帯用切断機用スタンド。
【請求項5】
請求項4に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記第2リンクの回転中心は、前記取付アームの揺動中心の反使用者側に位置する携帯用切断機用スタンド。
【請求項6】
請求項4または5に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記第1リンクは、前記第1リンクの回転中心から前記取付アームの揺動中心の反使用者側に向けて凸となるように延出した円弧形状である携帯用切断機用スタンド。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記第1リンクは、前記ベースのテーブル面より下方で前記ベースに連結される携帯用切断機用スタンド。
【請求項8】
請求項4~7のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記ベースは、被切断材が載置されるベース本体と、前記ベース本体に装着されて前記取付アームを上下に揺動可能に支持する揺動支持部材を有し、
前記第1リンクは、前記揺動支持部材に回転可能に連結される携帯用切断機用スタンド。
【請求項9】
請求項8に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記揺動支持部材を前記ベース本体に固定するボルトを有し、
前記ボルトは、前記携帯用切断機を上死点に位置決めする上死点ストッパを兼ねる携帯用切断機用スタンド。
【請求項10】
請求項8または9に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記揺動支持部材には、凹凸形状を含む位置決め部が設けられ、
前記ベース本体のテーブル面には、前記位置決め部と係合する被係合部が設けられる携帯用切断機用スタンド。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記第2リンクは、前記携帯用切断機に対して直線移動可能に連結される携帯用切断機用スタンド。
【請求項12】
請求項11に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記携帯用切断機は、前記携帯用切断機用スタンドと独立して使用される際に被切断材の上に載置されるベース部材を有し、
前記第2リンクは、前記携帯用切断機の前記ベース部材の下面と平行に連結される携帯用切断機用スタンド。
【請求項13】
請求項12に記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記第2リンクは、前記携帯用切断機の前記ベース部材の下面に対向する前記取付アームの上面に形成された案内溝に沿ってスライドする携帯用切断機用スタンド。
【請求項14】
請求項2~13のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記ベースには、前記1つまたは複数のリンクが挿通される貫通孔が設けられる携帯用切断機用スタンド。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記可動カバーは、前記携帯用切断機を前記携帯用切断機用スタンドと独立して使用する際に最閉じ位置から開き位置の間で回転可能であり、
前記可動カバーは、前記取付アームの上死点において前記最閉じ位置になる携帯用切断機用スタンド。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドであって、
前記携帯用切断機に設けられるねじに代えて、前記ベースに連結されるチェーンに引掛け可能な引掛部材を取付け可能である携帯用切断機用スタンド。
【請求項17】
回転刃具を開閉する可動カバーを備える携帯用切断機が装着される携帯用切断機用スタンドであって、
ベースと、
前記ベースに上下に揺動可能に連結されかつ前記携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームと、
前記ベースに回転可能に連結される第1リンクと、
前記第1リンクに回転可能に連結されかつ前記可動カバーに当接または係合する第2リンクを有し、前記第2リンクが前記取付アームの下動に連動して前記可動カバーを開く携帯用切断機用スタンド。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1つに記載の携帯用切断機用スタンドと、
前記携帯用切断機用スタンドに装着された携帯用切断機を備えた定置式切断機。
【請求項19】
定置式切断機であって、
回転刃具を回転させる電動モータを具備する切断機本体と、
前記電動モータに電力を供給するバッテリと、
前記回転刃具を開閉する可動カバーと、を備える携帯用切断機と、
ベースと、
前記ベースに上下に揺動可能に連結されかつ前記携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームと、
前記取付アームの下動に従って前記携帯用切断機の前記可動カバーを開くカバー開き機構を有し、
前記カバー開き機構は、1つまたは複数のリンクを有し、
前記カバー開き機構の一端側が前記ベースに回転可能に連結され、
前記カバー開き機構の他端側が前記可動カバーに当接または係合する定置式切断機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
例えばチップソーカッタ等の携帯用切断機を装着してチップソー切断機等の定置式切断機として使用可能なスタンド、およびスタンドから切断機本体を取外して携帯用切断機として使用可能な定置式切断機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばチップソーカッタ、カッタ、携帯用マルノコ等の携帯用切断機が従来提供されている。使用者が携帯用切断機の本体部を把持して被切断材に対して移動させることで、携帯用切断機に備えられた回転刃具が被切断材を切断する。特許文献1に記載されるように、携帯用切断機を装着することで定置式の切断機として利用可能なスタンドが従来知られている。携帯用切断機が装着された切断機本体をスタンド本体に対して下方へ揺動させることで、回転刃具をスタンド本体に載置された被切断材に切り込ませることができる。
【0003】
携帯用切断機には、回転刃具の下方領域を覆うことが可能な可動カバーが設けられる。可動カバーは、携帯用切断機を切断進行方向へ移動させることで被切断材に対して摺動する。これにより可動カバーは、回転刃具の下方領域を露出する開き方向へ回転する。特許文献1には、携帯用切断機をスタンドに装着した状態で所定の開き位置まで開かれる可動カバーが記載されている。携帯用切断機が装着された切断機本体をスタンド本体に対して下方へ揺動させることで、可動カバーはスタンド本体に載置された被切断材またはスタンド本体に対して摺動する。これにより可動カバーは、所定の開き位置から回転刃具の下方領域をさらに露出するように回転する。
【0004】
可動カバーは、携帯用切断機として使用する場合と、定置式切断機として使用する場合で、被切断材に当接する位置や被切断材に対する相対移動が異なる。可動カバーは、携帯用切断機として使用する際に好適に開くように設計されている。可動カバーと被切断材は、両者ともに凹凸形状を有する。そのため定置式切断機として使用する際に、可動カバーと被切断材の相互の凹凸形状によって可動カバーが円滑に摺動できない場合がある。したがって定置式切断機として使用する際に可動カバーを円滑に開閉できるように改善の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-214536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって携帯用切断機をスタンドに装着して定置式切断機として使用する際に、可動カバーを円滑に開閉して携帯用切断機をスムーズに上下揺動できる構造が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の1つの特徴によると携帯用切断機用スタンドは、回転刃具を開閉する可動カバーを備える携帯用切断機が装着される。携帯用切断機用スタンドは、ベースを有する。携帯用切断機用スタンドは、ベースに上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームを有する。携帯用切断機用スタンドは、取付アームの下動に従って携帯用切断機の可動カバーを使用者側に押すカバー開き機構を有する。
【0008】
したがってカバー開き機構は、取付アームを下方へ揺動させることでスタンドに装着された携帯用切断機の可動カバーを自動的に開く。そのため可動カバーを被切断材に対して摺動させることなく開くことができる。可動カバーと被切断材との摩擦摺動を抑制することで、可動カバーを円滑に開くことができる。これにより可動カバーの開閉動作に妨げられることなく、携帯用切断機をスムーズに上下揺動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施例に係るスタンドに携帯用切断機を装着した定置式切断機の携帯用切断機が上死点に位置する状態を示す斜視図である。
図2】携帯用切断機が上死点に位置する状態の右側面図である。
図3】携帯用切断機が下死点に位置する状態の右側面図である。
図4】携帯用切断機が下死点に位置する状態の上面図である。
図5】携帯用切断機が上死点に位置する状態の前面図である。
図6】携帯用切断機が上死点に位置する状態の後面図である。
図7】携帯用切断機が上死点に位置する状態の左側面図である。
図8】携帯用切断機が上死点と下死点の中間に位置する状態の左側面図である。
図9】携帯用切断機が下死点に位置する状態の左側面図である。
図10図6中のX-X線断面矢視図である。
図11図6中のX-X線断面に相当し、携帯用切断機が上死点と下死点の中間に位置する状態を示す断面図である。
図12図6中のX-X線断面に相当し、携帯用切断機が下死点に位置する状態を示す断面図である。
図13】取付アームが上死点に揺動した状態におけるスタンドの斜視図である。
図14】取付アームが下死点に揺動した状態におけるスタンドの斜視図である。
図15】揺動支持部材、取付アームおよびカバー開き機構のアッセンブリと、スタンド本体との分解斜視図である。
図16】揺動支持部材、取付アームおよびカバー開き機構のアッセンブリを下方から見た斜視図である。
図17】揺動支持部材、取付アームおよびカバー開き機構のアッセンブリの右側面図である。
図18】第2実施例に係るスタンドに携帯用切断機を装着した定置式切断機の携帯用切断機が上死点に位置する状態を示す断面図である。
図19】携帯用切断機が上死点と下死点の中間に位置する状態を示す断面図である。
図20】携帯用切断機が下死点に位置する状態を示す断面図である。
図21】第3実施例に係るスタンドに携帯用切断機を装着した定置式切断機の携帯用切断機が上死点に位置する状態を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の他の特徴によるとカバー開き機構は、1つまたは複数のリンクを有する。カバー開き機構の一端側がベースに回転可能に連結される。カバー開き機構の他端側が可動カバーに当接または係合する。したがってカバー開き機構にリンクを用いることで、可動カバーを円滑に開閉できる。しかも携帯用切断機の上下揺動に連動して、可動カバーを確実に開閉させることができる。
【0011】
本開示の他の特徴によるとカバー開き機構の一端側の回転中心は、携帯用切断機の上下の揺動全領域において可動カバーの開閉の回転中心と取付アームの揺動中心を結んだ直線の下方に位置する。したがって携帯用切断機を下方へ揺動させる際、カバー開き機構の一端側の回転中心と可動カバーの開閉の回転中心が近づく。そのため携帯用切断機を下方へ揺動させるシンプルな動作で、カバー開き機構の一端側のリンクを回転させることができる。これにより携帯用切断機の上下揺動に連動して、可動カバーを自動的かつ確実に開閉させることができる。
【0012】
本開示の他の特徴によるとカバー開き機構の複数のリンクは、ベースに回転可能に連結される第1リンクと、第1リンクに回転可能に連結されかつ可動カバーを押す第2リンクを含む。したがって第2リンクの動作の自由度を高めることができる。そのため第2リンクの動作について、可動カバーを円滑に開閉できる好適な動作を選択できる。これにより可動カバーの開閉動作の円滑性を更に高めることができる。
【0013】
本開示の他の特徴によると第2リンクの回転中心は、取付アームの揺動中心の反使用者側に位置する。したがって携帯用切断機を下方へ揺動させる際、第2リンクの回転中心が取付アームの揺動中心に近づくように使用者側へ移動する。そのため携帯用切断機を下方へ揺動させるエネルギーを、第2リンクを使用者側に向けて移動させるエネルギーへと効率良く変換できる。そのため可動カバーを使用側に向けて円滑に開くことができる。
【0014】
本開示の他の特徴によると第1リンクは、第1リンクの回転中心から取付アームの揺動中心の反使用者側に向けて凸となるように延出した円弧形状である。したがって第1リンクを、取付アームの揺動中心を避けて動作するように設けることができる。これにより第1リンクの回転の円滑性を高めて、可動カバーをより円滑に開閉させることができる。
【0015】
本開示の他の特徴によると第1リンクは、ベースのテーブル面より下方でベースに連結される。したがって第1リンクの回転中心から第2リンクの回転中心までの距離を長くすることができる。これにより携帯用切断機を上死点から下死点まで揺動させる際の第2リンクの移動距離を長くすることができる。これにより第2リンクに押される可動カバーを最閉じ位置から開き位置まで開くことができる。
【0016】
本開示の他の特徴によるとベースは、被切断材が載置されるベース本体を有する。ベースは、ベース本体に装着されて取付アームを上下に揺動可能に支持する揺動支持部材を有する。第1リンクは、揺動支持部材に回転可能に連結される。したがって揺動支持部材に取付アームと第1リンクを連結させ、その後に揺動支持部材とベース本体を組付けることができる。これによりベースの組付け性を向上させることができる。
【0017】
本開示の他の特徴によると携帯用切断機用スタンドは、揺動支持部材をベース本体に固定するボルトを有する。ボルトは、携帯用切断機を上死点に位置決めする上死点ストッパを兼ねる。したがって揺動支持部材をベース本体に組付けるボルトを上死点ストッパと兼用することで、部品点数を減らして組付け作業の効率を高めることができる。
【0018】
本開示の他の特徴によると揺動支持部材には、凹凸形状を含む位置決め部が設けられる。ベース本体のテーブル面には、位置決め部と係合する被係合部が設けられる。したがって揺動支持部材をベース本体に組付ける際、容易にかつ精度良く位置決めできる。しかもカバー開き機構の動作に製品毎でバラツキがないように揺動支持部材を位置決めできる。
【0019】
本開示の他の特徴によると第2リンクは、携帯用切断機に対して直線移動可能に連結される。したがって第2リンクを最小限のスペース内で移動させることができる。そのため第2リンクが移動して可動カバーを開く際に、回転刃具の切断作業の妨げになることを抑制できる。これにより回転刃具の切断能力を維持できる。
【0020】
本開示の他の特徴によると携帯用切断機は、携帯用切断機用スタンドと独立して使用される際に被切断材の上に載置されるベース部材を有する。第2リンクは、携帯用切断機のベース部材の下面と平行に連結される。したがって第2リンクを最小限のスペース内でかつ確実に直線移動させることができる。そのため回転刃具の切断能力を維持しながら可動カバーを確実に開くことができる。
【0021】
本開示の他の特徴によると第2リンクは、携帯用切断機のベース部材の下面に対向する取付アームの上面に形成された案内溝に沿ってスライドする。したがって第2リンクの上面を携帯用切断機のベース部材の下面で案内できる。第2リンクの下面を取付アームの案内溝で案内できる。そのため第2リンクを確実に直線運動するように案内できる。これにより第2リンクに押される可動カバーを確実に開くことができる。
【0022】
本開示の他の特徴によるとベースには、1つまたは複数のリンクが挿通される貫通孔が設けられる。したがって貫通孔に挿通されるリンクを長く設けることができる。そのため携帯用切断機を上死点から下死点まで揺動させる際、リンクの移動距離を長くすることができる。これにより可動カバーを最閉じ位置から開き位置まで開くことができる。
【0023】
本開示の他の特徴によると可動カバーは、携帯用切断機を携帯用切断機用スタンドと独立して使用する際に最閉じ位置から開き位置の間で回転可能である。可動カバーは、取付アームの上死点において最閉じ位置になる。したがって取付アームが上死点に位置する時には、最閉じ位置の可動カバーは回転刃具を覆って回転刃具の露出を抑制できる。取付アームを下方へ揺動させる時には、可動カバーを被切断材またはベースに干渉しないように最閉じ位置から開くことができる。かくして可動カバーを円滑に開閉できる。
【0024】
本開示の他の特徴によると、携帯用切断機に設けられるねじに代えて、ベースに連結されるチェーンに引掛け可能な引掛部材が取付け可能である。したがって取付アームに装着された携帯用切断機が下死点に位置する状態で、引掛部材にチェーンを引掛けることができる。これにより切断機本体がベースから分離しない従来の定置式切断機と同じ使用感で、携帯用切断機を下死点で保持できる。
【0025】
本開示の他の特徴によると携帯用切断機用スタンドは、回転刃具を開閉する可動カバーを備える携帯用切断機が装着される。携帯用切断機用スタンドは、ベースを有する。携帯用切断機用スタンドは、ベースに上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームを有する。携帯用切断機用スタンドは、ベースに回転可能に連結される第1リンクを有する。携帯用切断機用スタンドは、第1リンクに回転可能に連結されかつ可動カバーに当接または係合する第2リンクを有する。第2リンクが取付アームの下動に連動して可動カバーを開く。
【0026】
したがって取付アームを下方へ揺動させることで、第1リンクがベースに対して回転し、第2リンクが第1リンクに対して回転する。第2リンクは、携帯用切断機の可動カバーを自動的に開く。そのため可動カバーを被切断材に対して摺動させることなくかつ確実に開くことができる。しかも第2リンクの動作の自由度を高めることができる。そのため可動カバーをより円滑に開閉できる。可動カバーと被切断材との摩擦摺動を抑制することで、可動カバーを円滑に開くことができる。これにより可動カバーの開閉に妨げられることなく、携帯用切断機をスムーズに上下揺動させることができる。
【0027】
本開示の他の特徴によると定置式切断機は、携帯用切断機用スタンドに装着された携帯用切断機を備える。したがって携帯用切断機として使用する場合と、定置式切断機として使用する場合で容易に切り替えることができる。
【0028】
本開示の他の特徴によると定置式切断機は、携帯用切断機を有する。携帯用切断機は、回転刃具を回転させる電動モータを具備する本体部を備える。携帯用切断機は、電動モータに電力を供給するバッテリを備える。携帯用切断機は、回転刃具を開閉する可動カバーを備える。定置式切断機は、ベースを有する。定置式切断機は、ベースに上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機が取外し可能に装着される取付アームを有する。定置式切断機は、取付アームの下動に従って携帯用切断機の可動カバーを開くカバー開き機構を有する。カバー開き機構は、1つまたは複数のリンクを有する。カバー開き機構の一端側がベースに回転可能に連結される。カバー開き機構の他端側が可動カバーに当接または係合する。
【0029】
したがってバッテリを電源とする携帯用切断機を独立して使用することができる。しかも定置式切断機として使用する場合には、取付アームを下方へ揺動させることでカバー開き機構が携帯用切断機の可動カバーを自動的に開く。そのため被切断材に対して摺動させることなく可動カバーを円滑に開くことができる。これにより携帯用切断機をスタンドに対してスムーズに上下揺動させて定置式切断機として使用できる。
【0030】
本開示の第1実施例を図1~16に基づいて説明する。本実施例では携帯用切断機用のスタンド1に装着される携帯用切断機としてチップソーカッタと称される携帯用切断機20を例示する。スタンド1に携帯用切断機20を装着することで、定置式切断機40の一種であるチップソー切断機として使用することができる。携帯用切断機20は、スタンド1の上方において上下方向に揺動可能に支持される。携帯用切断機20の本体部22には、回転刃具として円盤状のチップソー23が回転可能に支持される。使用者は、図1において左側に位置して切断作業を行う。携帯用切断機20の本体部22は、携帯用切断機20をスタンド1に装着した状態で、上下に揺動可能な定置式切断機40の切断機本体として機能する。以下の説明において前後方向は、定置式切断機の慣例に従い使用者から見て手前側を前側、奥側を後側とする。上下左右方向については使用者を基準にして規定する。携帯用切断機の説明については、携帯用切断機の慣例である手前側を後側とはせず、定置式切断機の慣例と合わせて手前側を前側とする。
【0031】
図1,2に示すようにスタンド1は、被切断材を載置可能なベース2を有する。ベース2は、ベース本体3と、ベース本体3に取付けられる揺動支持部材4と、上下方向に揺動可能に揺動支持部材に支持される板状の取付アーム5を有する。ベース本体3は、水平方向に延出する矩形状に形成される。ベース本体3は、上面として水平方向に延出して被切断材を載置可能なテーブル面3aを有する。ベース本体3の4つの角部の下端には、床面等の設置面に載置するための脚部3bが設けられる。テーブル面3aの右部には、チップソー23が進退可能なスリット3eが前後方向に直線状に延出して設けられる。
【0032】
図1~3に示すようにベース本体3のテーブル面3a上には、上方に向けて起立したフェンス7が設けられる。フェンス7は、被切断材に当接可能に前方を向いた平面状の前面7aを有する。フェンス7は、前面7aの下端から後方へ水平方向に延出する水平面部7bを有する。水平面部7bの右部には、上下方向に延出する回転支軸7cが設けられる。水平面部7bは、回転支軸7cを中心にして水平方向に回転し、ベース2のテーブル面3aに対して摺動する。これにより、チップソー23の延出方向と直交する左右方向に対する前面7aの角度を変更可能である。例えば前面7aがチップソー23の延出方向に対して直交する時の角度は0°である。この時、チップソー23は前面7aに当接される被切断材を直角切りする。例えばチップソー23の延出方向に対して前面7aが前方左側に向けて45°で傾斜する時の前面7aの角度は45°である。この時、チップソー23は前面7aに当接される被切断材を45°で斜め切り(英語名:miter cut)する。
【0033】
図1,3に示すように水平面部7bには、回転支軸7cを中心に円弧状に延出する円弧状孔7dが設けられる。円弧状孔7dには、レバー7eのレバー回転支軸7fが挿通される。レバー回転支軸7fは、ベース本体3のテーブル面3aに取付けられる。レバー回転支軸7fを中心にレバー7eを締め方向へ回転させると、水平面部7bがテーブル面3aに向けて押圧される。これによりフェンス7は、ベース本体3のテーブル面3aに固定される。レバー回転支軸7fを中心にレバー7eを緩み方向へ回転させると、水平面部7bをテーブル面3aに向けて押す押圧力が解除される。レバー7eのレバー回転支軸7fは、円弧状孔7dに沿って水平面部7bに対して相対移動可能である。そのため回転支軸7cを中心にフェンス7を回転可能である。
【0034】
図1,2に示すようにベース本体3のテーブル面3aには、バイス装置(横バイス)8が設けられる。バイス装置8は、フェンス7の前方で前後方向にスライド可能なバイスプレート8cを有する。バイスプレート8cは、前方に延出する送りねじ8bと回転可能に連結される。バイスプレート8cは、上下方向に延出する回転支軸8dを中心に回転可能である。そのためバイスプレート8cは、後面をフェンス7の前面7aと対向する姿勢へと回転可能である。送りねじ8bは、ベース2の前端に設けられたバイスベース8eとねじ係合する。送りねじ8bは、前方から見て右方向に回転することで後方へ進行する。送りねじ8bの前端には、送りハンドル8aが一体に設けられる。送りハンドル8aを回転させることで、バイスプレート8cを前後方向に移動させることができる。フェンス7の前面7aとバイスプレート8cとの間に被切断材を挟み込むことで、テーブル面3aに載せた被切断材を保持できる。
【0035】
図1~3,6に示すように揺動支持部材4は、ベース本体3のテーブル面3aの後部に取付けられる。取付アーム5の後部は、取付アーム5の前部が上下方向に揺動可能に揺動支持部材4に支持される。取付アーム5は、上死点と下死点の間で上下方向に揺動可能である。取付アーム5の上死点は、揺動支持部材4側のボルト(上死点ストッパ)4eに取付アーム5側のストッパ当接部5fが当接することで位置決めされる(図7参照)。取付アーム5の下死点は、揺動支持部材4の上面に取付アーム5の下面が当接することで位置決めされる。取付アーム5には、携帯用切断機20のベース21を取外し可能に装着できる。揺動支持部材4と取付アーム5の詳細については後述する。
【0036】
図1~5に示すように携帯用切断機20は、単独で使用する際に被切断材の上に載置される略矩形板状のベース(ベース部材)21を有する。ベース21には、板厚方向に貫通しかつ概ね前後方向に延出する窓部21cが設けられる。チップソー23は、窓部21cを介してベース21の下面21aよりも下方へ突き出すことができる。このチップソー23の下方への突き出し領域は、ベース本体3のテーブル面3aに載置された被切断材に切り込ませることができる。ベース21の上面後部には、携帯用切断機20を単独で使用する際に平行定規を挿通可能な平行定規挿通部21bが設けられる。平行定規挿通部21bは、ベース21の左右両端で上方へ延出するリブそれぞれに、左右方向に貫通する矩形状の貫通孔を形成することで構成される。ベース21の後部であって平行定規挿通部21bの前方には、ベース21に対して切断機本体22を上下方向に揺動可能に支持する上下揺動支軸22aが設けられる。
【0037】
図4,5に示すようにベース21の前部には、上方へ延出するデプスガイド26bが設けられる。デプスガイド26bには、上下揺動支軸22a(図2参照)を中心とする円弧状孔が左右方向に貫通して設けられる。デプスガイド26bは、ボルト26aによって後述する固定カバー24に連結される。ボルト26aには、固定レバー26が上下方向に揺動可能に連結される。固定レバー26を締め方向に回転させると、デプスガイド26bに対する本体部22の上下揺動位置が固定される。これによりベース21の下面21aからのチップソー23の突き出し長さが固定される。そのため被切断材に対するチップソー23の切り込み深さが固定される。固定レバー26を緩み方向に回転させると、デプスガイド26bに対して本体部22が上下揺動可能になる。これによりベース21の下面21aからのチップソー23の突き出し長さ、換言すると被切断材に対するチップソー23の切り込み深さを変更できる。本実施例の各図においては、ベース21に対して本体部22を下死点で固定した状態で携帯用切断機20をスタンド1に装着している。
【0038】
図1,2,10に示すように携帯用切断機20の本体部22は、チップソー23の上部を覆う固定カバー24を有する。固定カバー24の側面には、チップソー23の回転方向を示す矢印24aが表示されている。固定カバー24には、チップソー23の回転方向に回転可能な可動カバー25が組付けられる。可動カバー25は、常態の最閉じ位置でチップソー23の下側領域を覆うように閉じ方向に付勢されている。可動カバー25は、チップソー23の回転中心23aから外れた位置の回転中心25aを中心に回転して開閉する。可動カバー25の後部開口端は、後述するカバー開き機構10と当接して開き方向に付勢される被作用部25bである。なお、可動カバー25は、アルミニウム等のダイキャスト合金またはポリカーボネート等の合成樹脂を材料にして形成される。被作用部25bは、鋼を材料にして形成される。被作用部25bは、ねじ等によって可動カバー25に固定される。
【0039】
図4に示すように固定カバー24の左側には、ギヤハウジング29が設けられる。ギヤハウジング29には、不図示の減速ギヤ列が収容される。ギヤハウジング29の左側には、略円筒形状のモータハウジング27が設けられる。モータハウジング27には、DCブラシレスモータと称される電動モータ28が収容される。電動モータ28の回転駆動は、ギヤハウジング29に収容される減速ギヤ列を介して減速されてチップソー23に伝達される。モータハウジング27の前方には、動力源としての充電式のバッテリ31を取外し可能に装着できるバッテリ装着部30が設けられる。バッテリ31は、スタンド1に対して携帯用切断機20が下死点に位置する状態で上方から下方へスライドさせることでバッテリ装着部30に装着できる。バッテリ31は、スタンド1に対して携帯用切断機20が下死点に位置する状態で下方から上方へスライドさせることでバッテリ装着部30から取外すことができる。
【0040】
図1,4に示すように本体部22は、固定カバー24の上方に前後方向に延出するループ形状のメインハンドル32を有する。使用者は、メインハンドル32を把持して携帯用切断機20をスタンド1に対して上下方向に揺動させることができる。メインハンドル32のループ形状の上部内周側には、トリガ33が設けられる。メインハンドル32を把持した手の指先でトリガ33を引くと、電動モータ28が起動してチップソー23が回転する。トリガ33の上方には、押し操作可能なロックオフボタン34が設けられる。ロックオフボタン34を押すことで、トリガ33のロック状態が解除されてトリガ33の引き操作が可能となる。そのためトリガ33の不用意な引き操作が防止される。本体部22は、固定カバー24とバッテリ装着部30を跨ぐようにして左右方向に延出するループ形状のサブハンドル35を有する。
【0041】
図2,3に示すようにメインハンドル32の下側前部には、本体部22を組付けるねじ36が設けられる。このねじ36に代えて、図4,5に示すようにメインハンドル32の左方へ突出する段付きの軸形状の引掛部材37を取付けても良い。引掛部材37には、ねじ36と同様に本体部22を組付ける機能を備えたねじ部が設けられている。引掛部材37には、切断機本体22(スタンド1に組付けられた携帯用切断機20)が下死点に位置する状態でバイスベース8eに設けられたチェーン9を引き掛けることができる。これにより切断機本体22を下死点で固定できる。
【0042】
図1,10に示すようにスタンド1は、スタンド1に対する切断機本体22(携帯用切断機20)の下動に連動して可動カバー25を開き方向に回転させるカバー開き機構10を有する。カバー開き機構10は、揺動支持部材4と取付アーム5に組付けられる。カバー開き機構10は、円弧状の第1リンク11と、略矩形板状で前後方向に長い第2リンク12の2つのリンクを有する。第1リンク11と第2リンク12は、回転中心12aで相互に相対移動可能に連結される。第1リンク11と第2リンク12を1つに繋がったカバー開き機構10として見た時、カバー開き機構10の一端側である回転中心11aにおいて、第1リンク11が揺動支持部材4に回転可能に連結される。カバー開き機構10の他端側である第2リンクの先端の作用部12dは、可動カバー25の被作用部25bに当接する。
【0043】
図15,16に示すように揺動支持部材4と取付アーム5とカバー開き機構10は、1組のアッセンブリ13として組付け可能である。アッセンブリ13は、ベース本体3と別体で組付けることができる。さらにアッセンブリ13をベース本体3に組み付けることでベース2が構成される。なお、説明の便宜上アッセンブリ13に第1リンク11を組付けた状態で説明するが。実際の組付け作業においては揺動支持部材4をベース本体3に組付けた後に第1リンク11をアッセンブリ13に組付けると作業性が良い。
【0044】
図13~17に示すように揺動支持部材4の左右両側には、軸支持部4aが設けられる。軸支持部4aは、左右方向に延出する取付アーム5の揺動支軸5aを支持する。揺動支持部材4の下面には、下方へ突出するピン形状の位置決め部4bが左右に計2つ設けられる。揺動支持部材4の4つの角部には、ボルト4d,4eを挿通するための透孔4cがそれぞれ設けられる。揺動支持部材4の後方左側の透孔4cに挿通されるボルト4eは、上死点ストッパを兼ねる。取付アーム5が上死点へ揺動した時、傾斜した平面状に面取りされたストッパ当接部5fにボルト4eが当接する。揺動支持部材4の前側下部には、下方へ延出するリンク連結部4fが設けられる。リンク連結部4fには、第1リンク11の回転中心11aが連結される。第1リンク11は、回転中心11aを中心にしてリンク連結部4fに対して上下に回転可能である。
【0045】
図15に示すようにベース本体3のテーブル面3aには、スリット3eの後方に設けられた矩形の貫通孔3dが設けられる。貫通孔3dには、揺動支持部材4のリンク連結部4fが挿通される。ベース本体3のテーブル面3aには、貫通孔3dの後方に設けられかつ貫通孔3dよりも前後方向に長い矩形状の貫通孔3cが設けられる。貫通孔3cには、上下方向に回転する第1リンク11が挿通される。取付アーム5が上死点近傍に位置する場合には、貫通孔3cに第2リンク12が挿通される。
【0046】
図15に示すようにベース本体3のテーブル面3aには、円形の貫通孔である被係合部3fと、被係合部3fよりも左右方向に長い長円形の貫通孔である被係合部3gが設けられる。被係合部3f,3gには、揺動支持部材4の位置決め部4b(図16参照)が挿通される。これにより揺動支持部材4をベース本体3に対して容易にかつ前後方向および左右方向に精度良く位置決めできる。被係合部3gを長円形に設けることで、製品毎のわずかな寸法の違いに合わせて揺動支持部材の取付け位置を微調整して対応できる。ベース本体3のテーブル面3aには、4つのねじ孔3hが設けられる。4つのねじ孔3hには、揺動支持部材4の透孔4cに挿通されたボルト4d,4eが締結される。
【0047】
図1,6,13~15に示すように取付アーム5の上面には、前後方向に延出する案内溝5bが設けられる。案内溝5bには、第2リンク12が前後方向に摺動可能に挿通される。取付アーム5の上面後端には、案内溝5bの後端を上方から覆うリンク押え部材5cが取付けられる。リンク押え部材5cによって第2リンク12が案内溝5bから脱離することが抑制される。取付アーム5の上面には、携帯用切断機20のベース21の後端を囲むように起立したリブ5dが設けられる。ベース21の平行定規挿通部21bと左右方向に並ぶリブ5dの一部は、切り欠かれている。平行定規挿通部21bとリブ5dの切り欠き部には、矩形板状のバー6が挿通される。バー6に挿通させた左右2つのボルト6aを取付アーム5の2つのねじ孔5eに締結させる。これによりベース21を取付アーム5に固定できる。バー6は、第2リンク12が案内溝5bから離脱することを抑制するリンク押え部材を兼ねる。取付アーム5は、揺動支軸5aの周囲にトーションばね5gを有する。取付アーム5は、トーションばね5gの付勢力によって上死点に向けて付勢される。取付アーム5の後面に設けた雌ねじに止めねじ5hが螺挿される。止めねじ5hの先端には、トーションばね5gの一方の腕が当接している。止めねじ5hの締め込み量を増減させることで、トーションばね5gの角度を変更して付勢力を調整することができる。
【0048】
図10~12に示すように第1リンク11は、回転中心11aから後方へ円弧状に延出する円弧状部11bを有する。円弧状部11bは、後方に向けて凸の円弧上に形成される。円弧状部11bの後端には、回転中心12aで第2リンク12に連結されるリンク連結部11cが設けられる。第1リンク11が揺動支持部材4に連結される回転中心11aは、ベース本体3のテーブル面3aよりも下方かつ取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aよりも前方に位置する。第2リンク12が第1リンク11に連結される回転中心12aは、取付アーム5が上死点から下死点までのいずれに位置する場合でも、取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aよりも後方に位置する。
【0049】
図15,16に示すように第2リンク12は、回転中心12aで第1リンク11に連結されるリンク連結部12bを有する。第2リンク12は、リンク連結部12bの前方に向けて直線状に延出する略矩形板状の直線状部12cを有する。リンク連結部12bは、直線状部12cの左右幅内に収めてコンパクトにするため、また、第1リンク11との干渉を抑制するために、直線状部12cよりも小さい左右幅で設けられる。直線状部12cの前端には、可動カバー25の被作用部25bに当接する作用部12dが設けられる。第2リンク12の前端近傍は、直線状部12cよりも左方に突出している。この突出部12eは、ベース21の窓部21cよりも左方へ突出する(図5参照)。そのため突出部12eは、ベース21の下面21aに沿って前後方向に摺動する。これにより第2リンク12をベース21の下面21aに沿ってスライドするように案内できる。
【0050】
図7~12に基づいて携帯用切断機20をスタンド1に対して上下方向に揺動する際に、可動カバー25を開閉するカバー開き機構10の動作について説明する。先ず図10に示すように携帯用切断機20が上死点に位置する場合、第1リンク11の回転中心11aは、取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aと可動カバー25の開閉の回転中心25aを通る直線Lに対して下方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、直線Lの延長線上よりも上方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、ベース本体3のテーブル面3aよりも下方に位置する。第1リンク11の円弧状部11bは、設置面に当接しない高さで前後方向に延出する。第2リンク12は、取付アーム5の案内溝5bとベース21の下面21aに案内されることで、下面21aに沿って直線的にスライドするように移動を規制されている。そのため作用部12dは、可動カバー25の被作用部25bと当接したまま後方へ退避する。可動カバー25は、最閉じ位置P1まで閉じている。図7に示すように最閉じ位置P1の可動カバー25は、ベース本体3のテーブル面3aに載置された被切断材Wよりも上方に位置しており、被切断材Wに当接していない。
【0051】
図11に示すように携帯用切断機20を上死点から下方へ下動させると、可動カバー25の開閉の回転中心25aが第1リンク11の回転中心11aに近づく。直線Lの傾斜方向は、上死点の場合よりも水平方向に近づく。第1リンク11の回転中心11aは、直線Lに対して下方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、直線Lの延長線上よりも上方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、ベース本体3のテーブル面3aよりも上方へ移動し、かつ取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aに近づくように前方へ移動する。第2リンク12は、回転中心12aの移動に伴って前方へスライドする。作用部12dは、可動カバー25の被作用部25bを前方へ押す。これにより可動カバー25は、携帯用切断機20の下動に従って徐々に開く。図8に示すように可動カバー25は、ベース本体3のテーブル面3aに載置された被切断材Wに当接する前に開き方向へ回転する。チップソー23の下方領域の後部は被切断材Wに切り込み可能に露出する。そのため可動カバー25と被切断材Wの干渉が抑制されて、可動カバー25の開き動作と携帯用切断機20の下動が円滑になる。
【0052】
図12に示すように携帯用切断機20を下死点まで下動させると、可動カバー25の開閉の回転中心25aが第1リンク11の回転中心11aにさらに近づく。直線Lの傾斜方向は、さらに水平方向に近づく。第1リンク11の回転中心11aは、直線Lに対して下方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、直線Lの延長線上よりも上方に位置する。第2リンク12の回転中心12aは、取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aに近づきながら前方および上方へ移動する。第2リンク12は、回転中心12aの移動に伴って前方へスライドする。作用部12dは、可動カバー25の被作用部25bを前方へ押す。これにより可動カバー25は、開き位置P2まで開く。図9に示すように可動カバー25は、ベース本体3のテーブル面3aに載置された被切断材Wに当接する前に開き位置P2まで開く。チップソー23の下方領域は、被切断材Wに切り込み可能に露出する。そのため携帯用切断機20が下死点へ移動するまで、可動カバー25の開き動作と携帯用切断機20の下動が円滑になる。
【0053】
携帯用切断機20を上方へ揺動させる際には、カバー開き機構10の動作が携帯用切断機20を下動させる場合と逆になる。そのため携帯用切断機20が上動するのに従って、第2リンク12の作用部12dが後方へ移動する。可動カバー25が図12に示す開き位置P2から図10に示す最閉じ位置P1へと回転する。
【0054】
上述するようにスタンド1は、図1,7,10に示すようにチップソー23を開閉する可動カバー25を備える携帯用切断機20が装着される。スタンド1は、ベース2を有する。スタンド1は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。スタンド1は、取付アーム5の下動に従って携帯用切断機20の可動カバー25を使用者側の前方へ押すカバー開き機構10を有する。
【0055】
したがってカバー開き機構10は、取付アーム5を下方へ揺動させることでスタンド1に装着された携帯用切断機20の可動カバー25を自動的に開く。そのため可動カバー25を被切断材Wに対して摺動させることなく開くことができる。可動カバー25と被切断材Wとの摩擦摺動を抑制することで、可動カバー25を円滑に開くことができる。これにより可動カバー25の開閉動作に妨げられることなく、携帯用切断機20をスムーズに上下揺動させることができる。
【0056】
図10~12に示すようにカバー開き機構10は、複数のリンク11,12を有する。カバー開き機構10の一端側(第1リンク11)がベース2に回転可能に連結される。カバー開き機構10の他端側(第2リンク12)が可動カバー25に当接する。したがってカバー開き機構10にリンク11,12を用いることで、可動カバー25を円滑に開閉できる。しかも携帯用切断機20の上下揺動に連動して、可動カバー25を確実に開閉させることができる。
【0057】
図10~12に示すようにカバー開き機構10の一端側(第1リンク11)の回転中心11aは、携帯用切断機20の上下の揺動全領域において可動カバー25の開閉の回転中心25aと取付アーム5の揺動中心を結んだ直線Lの下方に位置する。したがって携帯用切断機20を下方へ揺動させる際、カバー開き機構10の一端側の回転中心11aと可動カバー25の開閉の回転中心25aが近づく。そのため携帯用切断機20を下方へ揺動させるシンプルな動作で、カバー開き機構10の一端側の第1リンク11を回転させることができる。これにより携帯用切断機20の上下揺動に連動して、可動カバー25を自動的かつ確実に開閉させることができる。
【0058】
図10~12に示すようにカバー開き機構10の複数のリンクは、ベース2に回転可能に連結される第1リンク11と、第1リンク11に回転可能に連結されかつ可動カバー25を押す第2リンク12を含む。したがって第2リンク12の動作の自由度を高めることができる。そのため第2リンク12の動作について、可動カバー25を円滑に開閉できる好適な動作を選択できる。これにより可動カバー25の開閉動作の円滑性を更に高めることができる。
【0059】
図10~12に示すように第2リンク12の回転中心12aは、取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aの反使用者側である後方に位置する。したがって携帯用切断機20を下方へ揺動させる際、第2リンク12の回転中心12aが取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aに近づくように使用者側の前方へ移動する。そのため携帯用切断機20を下方へ揺動させるエネルギーを、第2リンク12を使用者側に向けて移動させるエネルギーへと効率良く変換できる。そのため可動カバー25を使用側に向けて円滑に開くことができる。
【0060】
図10~12に示すように第1リンク11は、第1リンク11の回転中心11aから取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aの反使用者側である後方に向けて凸となるように延出した円弧形状である。したがって第1リンク11を、取付アーム5の揺動支軸(揺動中心)5aを避けて動作するように設けることができる。これにより第1リンク11の回転の円滑性を高めて、可動カバー25をより円滑に開閉させることができる。
【0061】
図10~12に示すように第1リンク11は、ベース2のテーブル面3aより下方でベース2に連結される。したがって第1リンク11の回転中心11aから第2リンク12の回転中心12aまでの距離を長くすることができる。これにより携帯用切断機20を上死点から下死点まで揺動させる際の第2リンク12の移動距離を長くすることができる。これにより第2リンク12に押される可動カバー25を最閉じ位置P1から開き位置P2まで開くことができる。
【0062】
図10~12に示すようにベース2は、被切断材W(図7参照)が載置されるベース本体3を有する。ベース2は、ベース本体3に装着されて取付アーム5を上下に揺動可能に支持する揺動支持部材4を有する。第1リンク11は、揺動支持部材4に回転可能に連結される。したがって揺動支持部材4に取付アーム5と第1リンク11を連結させ、その後に揺動支持部材4とベース本体3を組付けることができる。これによりベース2の組付け性を向上させることができる。
【0063】
図7,15に示すようにスタンド1は、揺動支持部材4をベース本体3に固定するボルト4eを有する。ボルト4eは、携帯用切断機20を上死点に位置決めする上死点ストッパを兼ねる。したがって揺動支持部材4をベース本体3に組付けるボルト4eを上死点ストッパと兼用することで、部品点数を減らして組付け作業の効率を高めることができる。
【0064】
図15に示すように揺動支持部材4には、凹凸形状を含む位置決め部4b(図16参照)が設けられる。ベース本体3のテーブル面3aには、位置決め部4bと係合する被係合部3f,3gが設けられる。したがって揺動支持部材4をベース本体3に組付ける際、容易にかつ精度良く位置決めできる。しかもカバー開き機構10の動作に製品毎でバラツキがないように揺動支持部材4を位置決めできる。
【0065】
図10~12に示すように第2リンク12は、携帯用切断機20に対して直線移動可能に連結される。したがって第2リンク12を最小限のスペース内で移動させることができる。そのため第2リンク12が移動して可動カバー25を開く際に、チップソー23の切断作業の妨げになることを抑制できる。これによりチップソー23の切断能力を維持できる。
【0066】
図7~9に示すように携帯用切断機20は、スタンド1と独立して使用される際に被切断材の上に載置されるベース21を有する。第2リンク12は、携帯用切断機20のベース21の下面21aと平行に連結される。したがって第2リンク12を最小限のスペース内でかつ確実に直線移動させることができる。そのためチップソー23の切断能力を維持しながら可動カバー25を確実に開くことができる。
【0067】
図10~12に示すように第2リンク12は、携帯用切断機20のベース21の下面21aに対向する取付アーム5の上面に形成された案内溝5bに沿ってスライドする。したがって第2リンク12の上面を携帯用切断機20のベース21の下面21aで案内できる。第2リンク12の下面を取付アーム5の案内溝5bで案内できる。そのため第2リンク12を確実に直線運動するように案内できる。これにより第2リンク12に押される可動カバー25を確実に開くことができる。
【0068】
図4,10~12に示すようにベース2には、複数のリンク11,12が挿通される貫通孔3cが設けられる。したがって貫通孔3cに挿通されるリンク11,12を長く設けることができる。そのため携帯用切断機20を上死点から下死点まで揺動させる際、リンク11,12の移動距離を長くすることができる。これにより可動カバー25を最閉じ位置P1から開き位置P2まで開くことができる。
【0069】
図10~12に示すように可動カバー25は、携帯用切断機20をスタンド1と独立して使用する際に最閉じ位置P1から開き位置P2の間で回転可能である。可動カバー25は、取付アーム5の上死点において最閉じ位置P1になる。したがって取付アーム5が上死点に位置する時には、最閉じ位置P1の可動カバー25はチップソー23を覆ってチップソー23の露出を抑制できる。取付アーム5を下方へ揺動させる時には、可動カバー25を被切断材またはベース2に干渉しないように最閉じ位置P1から開くことができる。かくして可動カバー25を円滑に開閉できる。
【0070】
図4,5に示すように携帯用切断機20に設けられるねじ36(図2参照)に代えて、ベース2に連結されるチェーン9に引掛け可能な引掛部材37が取付け可能である。したがって取付アーム5に装着された携帯用切断機20が下死点に位置する状態で、引掛部材37にチェーン9を引掛けることができる。これにより携帯用切断機20がベース2から分離しない従来の定置式切断機40と同じ使用感で、切断機本体22を下死点で保持できる。
【0071】
図10~12に示すようにスタンド1は、チップソー23を開閉する可動カバー25を備える携帯用切断機20が装着される。スタンド1は、ベース2を有する。スタンド1は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。スタンド1は、ベース2に回転可能に連結される第1リンク11を有する。スタンド1は、第1リンク11に回転可能に連結されかつ可動カバー25に当接する第2リンク12を有する。第2リンク12が取付アーム5の下動に連動して可動カバー25を開く。
【0072】
したがって取付アーム5を下方へ揺動させることで、第1リンク11がベース2に対して回転し、第2リンク12が第1リンク11に対して回転する。第2リンク12は、携帯用切断機20の可動カバー25を自動的に開く。そのため可動カバー25を被切断材に対して摺動させることなくかつ確実に開くことができる。しかも第2リンク12の動作の自由度を高めることができる。そのため可動カバー25をより円滑に開閉できる。可動カバー25と被切断材W(図7参照)との摩擦摺動を抑制することで、可動カバー25を円滑に開くことができる。これにより可動カバー25の開閉に妨げられることなく、携帯用切断機20をスムーズに上下揺動させることができる。
【0073】
図1に示すように定置式切断機40は、スタンド1に装着された携帯用切断機20を備える。したがって携帯用切断機20として使用する場合と、定置式切断機40として使用する場合で容易に切り替えることができる。
【0074】
図10~12に示すように定置式切断機40は、携帯用切断機20を有する。携帯用切断機20は、チップソー23を回転させる電動モータ28(図7参照)を具備する本体部22を備える。携帯用切断機20は、電動モータ28に電力を供給するバッテリ31を備える。携帯用切断機20は、チップソー23を開閉する可動カバー25を備える。定置式切断機40は、ベース2を有する。定置式切断機40は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。定置式切断機40は、取付アーム5の下動に従って携帯用切断機20の可動カバー25を開くカバー開き機構10を有する。カバー開き機構10は、複数のリンク11,12を有する。カバー開き機構10の一端側(第1リンク11)がベース2に回転可能に連結される。カバー開き機構10の他端側(第2リンク12)が可動カバー25に当接する。
【0075】
したがってバッテリ31を電源とする携帯用切断機20を独立して使用することができる。しかも定置式切断機40として使用する場合には、取付アーム5を下方へ揺動させることでカバー開き機構10が携帯用切断機20の可動カバー25を自動的に開く。そのため被切断材に対して摺動させることなく可動カバー25を円滑に開くことができる。これにより携帯用切断機20をスタンド1に対してスムーズに上下揺動させて定置式切断機40として使用できる。
【0076】
次に本開示の第2実施例を図17~19に基づいて説明する。第2実施例の携帯用切断機用のスタンド50は、図10に示すスタンド1のカバー開き機構10に代えて、カバー開き機構51を有する。以下の説明においては、第1実施例と異なる部分のみ詳細に説明する。スタンド50に携帯用切断機20を装着することで、携帯用切断機20をスタンド50に対して上下方向に揺動可能な定置式切断機54として使用することができる。
【0077】
図17~19に示すようにカバー開き機構51は、1つのリンク52を有する。カバー開き機構51の一端側であるリンク52の回転中心52aは、揺動支持部材4のリンク連結部4fに連結される。回転中心52aは、ベース本体3のテーブル面3aよりも下方に位置する。回転中心52aは、取付アーム5の揺動中心と可動カバー25の開閉の回転中心25aを通る直線Lに対して下方に位置する。リンク52は、カバー開き機構51の他端側である作用部52cまで直線的に延出する。リンク52は、円弧状に延出する円弧状孔52bを有する。円弧状孔52bは、回転中心52aから作用部52cまで直線的に延出する方向と交差する方向に延出する。取付アーム5には、左右方向に突出するピン形状のガイド部53が設けられる。円弧状孔52bにガイド部53が挿通される。取付アーム5を上下方向に移動させる時、ガイド部53は円弧状孔52b内を移動する。これによりリンク52は、回転中心52aを中心にして前後方向に回転する。
【0078】
図17に示すように携帯用切断機20が上死点に位置する時、ガイド部53は円弧状孔52bの前端に位置する。リンク52は上下方向に起立した姿勢になる。作用部52cは、移動可能な範囲内で最後方に位置する。そのため作用部52cは、可動カバー25の被作用部25bに当接しているものの被作用部25bを前方に押していない。そのため可動カバー25は、最閉じ位置P1まで閉じている。
【0079】
図18に示すように携帯用切断機20を上死点から下方へ下動させると、ガイド部53は円弧状孔52bにリンク52に対して後方へ相対移動する。リンク52は、起立した姿勢から水平方向に延出する姿勢に近づく。作用部52cは、取付アーム5に対して前方へ移動する。そのため作用部52cは、可動カバー25の被作用部25bを前方へ押す。これにより可動カバー25は、携帯用切断機20の下動に従って徐々に開く。
【0080】
図19に示すように携帯用切断機20を下死点まで下動させると、リンク52は、さらに水平方向に延出する姿勢に近づく。ガイド部53は、円弧状孔52bの後端に位置する。そのため作用部52cは、取付アーム5に対してさらに前方へ移動する。そのため作用部52cは、可動カバー25の被作用部25bを前方へ押す。これにより可動カバー25は、チップソー23の下部領域を露出する開き位置P2まで開く。
【0081】
上述するようにカバー開き機構51は、図17~19に示すように1つのリンク52を有する。カバー開き機構51の一端側(回転中心52a)がベース2に回転可能に連結される。カバー開き機構51の他端側(作用部52c)が可動カバー25に当接する。したがってカバー開き機構51にリンク52を用いることで、可動カバー25を円滑に開閉できる。しかも携帯用切断機20の上下揺動に連動して、可動カバー25を確実に開閉させることができる。
【0082】
図17~19に示すように定置式切断機54は、携帯用切断機20を有する。携帯用切断機20は、チップソー23を回転させる電動モータ28を具備する本体部22を備える(図1参照)。携帯用切断機20は、電動モータ28に電力を供給するバッテリ31を備える。携帯用切断機20は、チップソー23を開閉する可動カバー25を備える。定置式切断機54は、ベース2を有する。定置式切断機54は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。定置式切断機54は、取付アーム5の下動に従って携帯用切断機20の可動カバー25を開くカバー開き機構51を有する。カバー開き機構51は、1つのリンク52を有する。カバー開き機構51の一端側がベース21に回転可能に連結される。カバー開き機構51の他端側が可動カバー25に当接する。
【0083】
したがってバッテリ31を電源とする携帯用切断機20を独立して使用することができる。しかも定置式切断機54として使用する場合には、取付アーム5を下方へ揺動させることでカバー開き機構51が携帯用切断機20の可動カバー25を自動的に開く。そのため被切断材に対して摺動させることなく可動カバー25を円滑に開くことができる。これにより携帯用切断機20をスタンドに対してスムーズに上下揺動させて定置式切断機54として使用できる。
【0084】
次に本開示の第3実施例を図21に基づいて説明する。第3実施例の携帯用切断機用のスタンド70は、図10に示すスタンド1のカバー開き機構10に代えて、カバー開き機構71を有する。以下の説明においては、第1,第2実施例と異なる部分のみ詳細に説明する。スタンド70に携帯用切断機20を装着することで、携帯用切断機20をスタンド70に対して上下方向に揺動可能な定置式切断機76として使用することができる。
【0085】
図21に示すようにカバー開き機構71は、1つのリンク72を有する。リンク72は、固定カバー24の上部に回転可能に連結される。リンク72の一端側は、固定カバー24の上方に露出する。リンク72の他端側は、固定カバー24の内側に進入する。可動カバー25には、チップソー23を交換する際に可動カバー25を開き位置へ開くための開閉レバー74が設けられる。開閉レバー74は、固定カバー24の内周側に位置する。リンク72は、開閉レバー74に連結される。ベース本体3の上端には、上方に向けて起立するポール73が設けられる。ポール73の上端の連結部73aと、固定カバー24から露出したリンク72の連結部72aの間には、引張りばね75が設けられる。リンク72は、引張りばね75を介してポール73に対して回転可能に連結される。
【0086】
図21を参照するように携帯用切断機20を上死点から下死点まで移動させる時、リンク72の連結部72aは前方へ移動する。そのためリンク72の連結部72aとポール73の連結部73aの距離が徐々に拡がる。これにより引張りばね75の付勢力が大きくなる。リンク72は、引張りばねに引っ張られて後方に向けて回転する。これによりリンク72は、可動カバー25の開閉レバー74を後方に向けて引っ張る。可動カバー25は、リンク72に引っ張られることで閉じ位置から開き位置へと開く。
【0087】
上述するようにカバー開き機構71は、図21に示すように1つのリンク72を有する。カバー開き機構71のリンク72の一端側がベース2に回転可能に連結される。カバー開き機構71のリンク72の他端側が可動カバー25に係合する。したがってカバー開き機構71にリンク72を用いることで、可動カバー25を円滑に開閉できる。しかも携帯用切断機20の上下揺動に連動して、可動カバー25を確実に開閉させることができる。
【0088】
図21に示すように定置式切断機76は、携帯用切断機20を有する。携帯用切断機20はチップソー23を回転させる電動モータ28(図1参照)を具備する本体部22を備える。携帯用切断機20は、電動モータ28に電力を供給するバッテリ31を備える。携帯用切断機20は、チップソー23を開閉する可動カバー25を備える。定置式切断機76は、ベース2を有する。定置式切断機76は、ベース2に上下に揺動可能に連結されかつ携帯用切断機20が取外し可能に装着される取付アーム5を有する。定置式切断機76は、取付アーム5の下動に従って携帯用切断機20の可動カバー25を開くカバー開き機構71を有する。カバー開き機構71は、1つのリンク72を有する。カバー開き機構71のリンク72の一端側がベース21に回転可能に連結される。カバー開き機構71のリンク72の他端側が可動カバー25に係合する。
【0089】
したがってバッテリ31を電源とする携帯用切断機20を独立して使用することができる。しかも定置式切断機76として使用する場合には、取付アーム5を下方へ揺動させることでカバー開き機構71が携帯用切断機20の可動カバー25を自動的に開く。そのため被切断材に対して摺動させることなく可動カバー25を円滑に開くことができる。これにより携帯用切断機20をスタンド1に対してスムーズに上下揺動させて定置式切断機76として使用できる。
【0090】
以上説明した各実施例のスタンド1,50,70には様々な変更を加えることができる。チップソーカッタと称される携帯用切断機20を装着可能な構成を例示した。これに代えて、例えばカッタ、携帯マルノコ等の他の携帯用切断機を装着可能な構成としても良い。複数種類の携帯用切断機を装着可能であっても良い。電源としてバッテリ31を装着可能な携帯用切断機20を例示した。これに代えて、AC電源に接続される携帯用切断機を利用しても良い。製品としてスタンドのみを提供する場合、あるいは携帯用切断機とスタンドを備えた定置式切断機として提供する場合のいずれにも本開示を適用できる。ベース本体3と揺動支持部材4が別体のベース2を例示した。これに代えて、ベース本体3と揺動支持部材4を一体物として設けても良い。定置式切断機は、ターンテーブルや本体傾動機構を有する卓上マルノコであっても良い。定置式切断機は、スライド機構を有するスライドマルノコであっても良い。
【0091】
1つまたは2つのリンクを備えたカバー開き機構を例示した。これに代えて、3つ以上のリンクを備えたカバー開き機構としても良い。可動カバー25の被作用部25bに他端側を当接させることで被作用部25bを開き方向に押すカバー開き機構を例示した。これに代えて、被作用部25bに他端側を係合させることで被作用部25bを開き方向に押すカバー開き機構としても良い。あるいは、被作用部25bに他端側を係合させることで被作用部25bを開き方向に引っ張るカバー開き機構としても良い。チップソー23の切断能力を維持できるように可動カバー25の被作用部25bを可動カバー25の後部開口端とした。カバー開き機構が当接または係合する被作用部25bはこれに限定されず、適宜変更しても良い。例えば開閉レバー74を被作用部25bとしても良い。
【0092】
1つのリンク52に代えて、例えばベース2に回転可能に連結される第1リンクと第2リンクの2つのリンクを設けても良い。第2リンクは、可動カバー25の被作用部25bに当接する。第1リンクは、第2リンクの後方に位置して第2リンクと例えば引張ばねで連結される。切断機本体22の下動に従って第1リンクと第2リンクが回転する。第2リンクは、第1リンクによって後方へ引っ張られながら可動カバー25を開き方向に押すように回転する。かくして切断機本体22の下動に従って可動カバー25を最閉じ位置から開き位置へと徐々に開くことができる。
【符号の説明】
【0093】
1…(携帯用切断機用)スタンド
2…ベース
3…ベース本体、3a…テーブル面、3b…脚部、3c,3d…貫通孔
3e…スリット、3f,3g…被係合部、3h…ねじ孔
4…揺動支持部材、4a…軸支持部、4b…位置決め部、4c…透孔
4d…ボルト、4e…ボルト(上死点ストッパ)、4f…リンク連結部
5…取付アーム、5a…揺動支軸(揺動中心)、5b…案内溝、5c…リンク押え部材、5d…リブ
5e…ねじ孔、5f…ストッパ当接部、5g…トーションばね、5h…止めねじ
6…バー、6a…ボルト
7…フェンス、7a…前面、7b…水平面部、7c…回転支軸、7d…円弧状孔
7e…レバー、7f…レバー回転支軸
8…バイス装置、8a…送りハンドル、8b…送りねじ、8c…バイスプレート
8d…回転支軸、8e…バイスベース
9…チェーン
10…カバー開き機構
11…第1リンク、11a…回転中心(一端側)、11b…円弧状部
11c…リンク連結部
12…第2リンク、12a…回転中心、12b…リンク連結部
12c…直線状部、12d…作用部(他端側)、12e…突出部
13…アッセンブリ
20…携帯用切断機
21…ベース(ベース部材)、21a…下面、21b…平行定規挿通部、21c…窓部
22…本体部(切断機本体)、22a…上下揺動支軸
23…チップソー(回転刃具)、23a…回転中心
24…固定カバー、24a…矢印
25…可動カバー、25a…回転中心、25b…被作用部
26…固定レバー、26a…ボルト、26b…デプスガイド
27…モータハウジング
28…電動モータ
29…ギヤハウジング
30…バッテリ装着部
31…バッテリ
32…メインハンドル
33…トリガ
34…ロックオフボタン
35…サブハンドル
36…ねじ
37…引掛部材
40…定置式切断機
50…(携帯用切断機用)スタンド
51…カバー開き機構
52…リンク、52a…回転中心(一端側)、52b…円弧状孔
52c…作用部(他端側)
53…ガイド部
54…定置式切断機
70…(携帯用切断機用)スタンド
71…カバー開き機構
72…リンク、72a…連結部(一端側)
73…ポール、73a…連結部
74…開閉レバー
75…引張りばね
76…定置式切断機
W…被切断材
L…直線
P1…最閉じ位置
P2…開き位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図16
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