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特開2024-158148媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法
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  • 特開-媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法 図1
  • 特開-媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法 図2
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  • 特開-媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法 図9
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  • 特開-媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法 図11
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158148
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 5/06 20060101AFI20241031BHJP
   B65H 7/14 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B65H5/06 M
B65H7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073107
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】細川 達也
(72)【発明者】
【氏名】塩原 浩
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 知明
(72)【発明者】
【氏名】小口 武
【テーマコード(参考)】
3F048
3F049
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048BA05
3F048BB02
3F048BC03
3F048BD07
3F048BD08
3F048CC01
3F048CC11
3F048CC13
3F048DC14
3F048EB22
3F048EB29
3F049AA01
3F049AA03
3F049EA10
3F049EA28
3F049EA29
3F049LA07
3F049LB03
(57)【要約】
【課題】搬送ローラーの使用期間を延ばしつつ、スループットの低下を抑制する装置が求められていた。
【解決手段】媒体搬送装置は、媒体を搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、搬送方向において、第1搬送ローラーよりも下流に位置し、媒体を検出する第1センサーと、搬送方向において、第1センサーよりも上流に設けられ、媒体を検出する第2センサーと、制御部と、を備え、制御部は、媒体を第1所定搬送速度で搬送するために第1搬送ローラーを第1回転速度で回転させるとき、第2センサーが媒体を検出してから、第1センサーが媒体を検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、第1搬送ローラーの回転速度を第1回転速度よりも速い第2回転速度に変更する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーよりも下流に位置し、媒体を検出する第1センサーと、
前記搬送方向において、前記第1センサーよりも上流に設けられ、媒体を検出する第2センサーと、
制御部と、
を備え、
前記制御部は、媒体を第1所定搬送速度で搬送するために前記第1搬送ローラーを第1回転速度で回転させるとき、前記第2センサーが媒体を検出してから、前記第1センサーが媒体を検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、前記第1搬送ローラーの回転速度を前記第1回転速度よりも速い第2回転速度に変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記経過時間及び前記所定時間に基づいて、前記第2回転速度を決定する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項3】
前記制御部は、媒体が前記第1所定搬送速度で搬送されるように前記第2回転速度を決定する、
ことを特徴とする、請求項2に記載の媒体搬送装置。
【請求項4】
前記第2センサーは、前記第1搬送ローラーの前記搬送方向の上流に設けられる、
ことを特徴とする、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記第2回転速度が上限回転速度に達した場合、前記第1搬送ローラーの交換を促す報知を行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記第1搬送ローラーの回転速度の変更頻度が閾値以上の場合、前記第1搬送ローラーの交換を促す報知を行う、
ことを特徴とする、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第1搬送ローラーが交換された場合、前記第1搬送ローラーの回転速度を基準回転速度に変更する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の媒体搬送装置。
【請求項8】
前記搬送方向において、前記第1搬送ローラー及び前記第1センサーよりも前記搬送方向の下流に位置し、媒体を搬送する第2搬送ローラーをさらに備え、
前記制御部は、前記第1搬送ローラーの回転速度を変更した場合、前記第2搬送ローラーにおいて前記第1所定搬送速度よりも速い第2所定搬送速度で媒体を搬送する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項9】
前記第1搬送ローラーと前記第1搬送ローラーの回転軸との間にワンウェイクラッチが設けられる、
ことを特徴とする、請求項8に記載の媒体搬送装置。
【請求項10】
前記搬送方向において、前記第2搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に位置し、媒体を搬送する第3搬送ローラーをさらに備え、
前記制御部は、媒体の前記搬送方向における下流端が前記第2搬送ローラーから前記第3搬送ローラーに搬送され、媒体の前記搬送方向における上流端が前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向における下流に位置するときに、媒体の搬送速度を前記第2所定搬送速度から前記第1所定搬送速度に変更する
ことを特徴とする、請求項8に記載の媒体搬送装置。
【請求項11】
前記第1搬送ローラーを駆動する第1駆動源をさらに備え、
前記制御部は、前記第1駆動源の駆動を制御することで、前記第1搬送ローラーの回転速度を変更する、
ことを特徴とする、請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の媒体搬送装置。
【請求項12】
前記第1搬送ローラーを駆動する第1駆動源と、
前記第2搬送ローラーを駆動する第2駆動源と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1駆動源の駆動を制御することで、前記第1搬送ローラーの回転速度を変更し、
前記第2駆動源の駆動を制御することで、前記第2搬送ローラーの回転速度を変更する、
ことを特徴とする、請求項8に記載の媒体搬送装置。
【請求項13】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項14】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体であって、前記記録部によって記録された媒体に後処理を行う後処理装置と、
を備えることを特徴とする記録システム。
【請求項15】
請求項8に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、
を備えることを特徴とする記録装置。
【請求項16】
請求項8に記載の媒体搬送装置と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、
前記媒体搬送装置で搬送される媒体であって、前記記録部によって記録された媒体に後処理を行う後処理装置と、
を備えることを特徴とする記録システム。
【請求項17】
媒体を搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーよりも下流に位置し、媒体を検出する第1センサーと、前記搬送方向において、前記第1センサーよりも上流に設けられ、媒体を検出する第2センサーと、を備える媒体搬送装置の制御方法であって、
媒体を第1所定搬送速度で搬送するために前記第1搬送ローラーを第1回転速度で回転させるとき、前記第2センサーが媒体を検出してから、前記第1センサーが媒体を検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、前記第1搬送ローラーの回転速度を前記第1回転速度よりも速い第2回転速度に変更する、
ことを特徴とする媒体搬送装置の制御方法。
【請求項18】
前記媒体搬送装置は、前記搬送方向において、第2搬送ローラーよりも前記搬送方向の下流に位置し、媒体を搬送する第3搬送ローラーをさらに備え、
媒体の前記搬送方向における下流端が前記第2搬送ローラーから前記第3搬送ローラーに搬送され、媒体の前記搬送方向における上流端が前記第1搬送ローラーよりも前記搬送方向における下流に位置するときに、媒体の搬送速度を第2所定搬送速度から前記第1所定搬送速度に変更する、
ことを特徴とする、請求項17に記載の媒体搬送装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体搬送装置、記録装置、記録システム、及び、媒体搬送装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に示すように、紙の搬送の遅れの発生率を算出し、発生率が閾値を超過した場合、搬送ローラーの交換を促す装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-7758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の装置では、まだ使用できる可能性がある搬送ローラーであっても交換されてしまうおそれがある。一方、装置が、紙の搬送の遅れが発生した搬送ローラーをそのまま使用し続けると、搬送速度が低下しスループットが低下するおそれがある。
したがって、搬送ローラーの使用期間を延ばしつつ、スループットの低下を抑制する装置が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
媒体搬送装置は、媒体を搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーよりも下流に位置し、媒体を検出する第1センサーと、前記搬送方向において、前記第1センサーよりも上流に設けられ、媒体を検出する第2センサーと、制御部と、を備え、前記制御部は、媒体を第1所定搬送速度で搬送するために前記第1搬送ローラーを第1回転速度で回転させるとき、前記第2センサーが媒体を検出してから、前記第1センサーが媒体を検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、前記第1搬送ローラーの回転速度を前記第1回転速度よりも速い第2回転速度に変更する。
【0006】
記録装置は、上述の媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、を備える。
【0007】
記録システムは、上述の媒体搬送装置と、前記媒体搬送装置で搬送される媒体に記録を行う記録部と、前記媒体搬送装置で搬送される媒体であって、前記記録部によって記録された媒体に後処理を行う後処理装置と、を備える。
【0008】
媒体を搬送方向へ搬送する第1搬送ローラーと、前記搬送方向において、前記第1搬送ローラーよりも下流に位置し、媒体を検出する第1センサーと、前記搬送方向において、前記第1センサーよりも上流に設けられ、媒体を検出する第2センサーと、を備える媒体搬送装置の制御方法であって、媒体を第1所定搬送速度で搬送するために前記第1搬送ローラーを第1回転速度で回転させるとき、前記第2センサーが媒体を検出してから、前記第1センサーが媒体を検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、前記第1搬送ローラーの回転速度を前記第1回転速度よりも速い第2回転速度に変更する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】記録システムの構成を示す模式図。
図2】記録装置、媒体搬送装置の主要部を示す模式図。
図3】第nローラーの構成を示す模式図。
図4】第nローラーの制御を示すフローチャート。
図5】第1実施形態に係る搬送であって、第nローラーがシートを搬送するときの模式図。
図6】第1実施形態に係る搬送であって、図5に続き、第(n+1)ローラーもシートを搬送するときの模式図。
図7】第2実施形態に係る搬送であって、第nローラーがシートを搬送するときの模式図。
図8】第2実施形態に係る搬送であって、図7に続き、第(n+1)ローラーもシートを搬送するときの模式図。
図9】第3実施形態に係る搬送であって、第nローラーがシートを搬送するときの模式図。
図10】第3実施形態に係る搬送であって、図9に続き、第(n+1)ローラーもシートを搬送するときの模式図。
図11】第3実施形態に係る搬送であって、図10に続き、第(n+2)ローラーもシートを搬送するときの模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態に係る記録システム10、記録システム10に含まれる記録装置1及び媒体搬送装置4について、図1図11を参照して説明する。なお、図4を除き、図中における方向を、三次元座標系を用いて説明する。説明の便宜上、Z軸の正方向を上方向、上方又は単に上と称し負方向を下方向、下方又は単に下と称し、Y軸の正方向を右方向、右方又は単に右と称し負方向を左方向、左方又は単に左と称し、X軸の正方向を後方向、後方又は単に後と称し負方向を前方向、前方又は単に前と称して説明する。
【0011】
1.記録システムの構成
図1に示すように、記録システム10は、少なくとも記録装置1を備える。記録システム10は、さらに中間搬送装置2及び後処理装置3の少なくともいずれかを含んで構成されてもよい。
記録装置1は、媒体搬送装置4、記録部であるヘッド110、表示部114を備える。後処理装置3は、後処理部310を備える。
媒体であり、記録紙でもあるシートSは、媒体搬送装置4の下方のカセットCに収容される。シートSは、媒体搬送装置4により搬送され、記録装置1のヘッド110により記録される。ヘッド110により記録されたシートSは、媒体搬送装置4により、右上方の第1トレイ112に排出される。
【0012】
また、記録されたシートSは、媒体搬送装置4により、右方の中間搬送装置2に搬送されることができる。中間搬送装置2は、シートSを反転することができる。
記録されたシートSは、中間搬送装置2から右方の後処理装置3へ向かって搬送され、後処理装置3の後処理部310により、所定の後処理が行われ、右上方の第2トレイ311へ排出されることができる。後処理部310は、例えば、複数のシートSを閉じることが可能なステイプル機構、シートSに穴を空けることが可能なパンチ機構などである。
なお、シートSは、中間搬送装置2を介さず、媒体搬送装置4から後処理装置3へ搬送されるようにしてもよい。
【0013】
記録装置1の上方の表示部114は、いわゆるタッチパネルである。表示部114は、表示パネル及びタッチセンサーを備える。
表示パネルは、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)で構成される。タッチセンサーは、ユーザーの操作を検出する。タッチセンサーは、表示パネルと一体に形成される。具体的には、タッチセンサーは、表示パネルの画像表示面に形成される。
【0014】
1-1.記録装置、媒体搬送装置の構成
図2に示すように、記録装置1は、ヘッド110、制御部113、表示部114、媒体搬送装置4を備える。ヘッド110は、例えば、インクジェット方式のヘッドである。記録装置1の印刷方式は、レーザー方式など、他の印刷方式でもよい。
ヘッド110がインクジェット方式である場合、インクにより記録されたシートSは、中間搬送装置2内で搬送されることによりインクの乾燥が促進され、インクが乾いた状態で後処理装置3へ搬送されることができる。
【0015】
制御部113は、記録装置1の各部を統括的に制御するCPU(Central Processing Unit)、入出力を管理するUART(Universal Asynchronous Receiver Transmitter)、論理回路であるFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)などを含んで構成されている。CPUはプロセッサーともいう。
また、制御部113は、書き換え可能な不揮発性メモリーであるフラッシュROM(Read Only Memory)やHDD(Hard Disk Drive)、揮発性メモリーであるRAM(Random Access Memory)などのメモリーも含んで構成されている。
制御部113のCPUは、不揮発性メモリーに記憶されたファームウェアなどのプログラムを読み出し、揮発性メモリーを作業領域として用いて実行する。また、CPUはタイマーも有する。
【0016】
媒体搬送装置4は、シートSの搬送方向Fの上流から下流に向かって、シートSをガイド可能な屈曲した第1搬送路P1を備える。第1搬送路P1は、搬送方向Fの上流から下流に向かって、カセットC、ピックアップローラー101、分離ローラー対102、上流搬送ローラー対103、整列ローラー対104、第1搬送ローラーである第1搬送ローラー対11、第2搬送ローラーである第2搬送ローラー対12、第3搬送ローラーである第3搬送ローラー対13を配置する。なお、以下では、それぞれのローラー対を単にローラーと称し、搬送ローラー対も単にローラーと称する。
第1搬送路P1は、カセットCからヘッド110を経由して中間搬送装置2へシートSをガイドすることができる。
【0017】
また、媒体搬送装置4は、ヘッド110の搬送方向Fの下流において、第1搬送路P1から排出方向F1へ分岐する第2搬送路P2を備える。この分岐する部分には、フラップ111が位置される。
第2搬送路P2は、シートSの排出方向F1の上流から下流に向かって、フラップ111、排出ローラー対105、第1トレイ112を配置する。なお、以下では、排出ローラー対105を単に排出ローラー105と称する。
【0018】
フラップ111は、制御部113の制御の下、第1搬送路P1又は第2搬送路P2のいずれかを閉鎖し、他方を開放するように移動可能である。フラップ111は、開放した第1搬送路P1又は第2搬送路P2に沿って、シートSをガイド可能である。
第2搬送路P2は、ヘッド110の搬送方向Fの下流においてフラップ111により第1搬送路P1から分岐し、排出方向F1に沿ってシートSをガイドすることができ、第1トレイ112へシートSを排出することができる。
【0019】
カセットCに収容されたシートSは、ピックアップローラー101により送り出され、分離ローラー102により一枚ずつに分離される。一枚となったシートSは、上流搬送ローラー103により、第1搬送路P1にガイドされて搬送方向Fへ搬送される。
上流搬送ローラー103により搬送されたシートSの下流端である先端STは、停止している整列ローラー104に突き当てられて整列される。
その後、整列ローラー104が駆動を開始し、先端STが整列されたシートSは、第1搬送路P1にガイドされて搬送方向Fへ搬送され、ヘッド110の位置に到達する。
【0020】
ヘッド110へ到達したシートSは、ヘッド110により画像や文字などが記録される。
シートSは、ヘッド110により記録された後、第nローラーnでもある第1ローラー11、第(n+1)ローラー(n+1)でもある第2ローラー12により搬送される。なお、nは任意の自然数である。
【0021】
このとき、フラップ111は、第2搬送路P2を閉鎖し、第1搬送路P1を開放する位置にあるものとする。
シートSは、引き続き第1搬送路P1にガイドされて搬送方向Fへ搬送されていき、右方の第(n+2)ローラー(n+2)でもある第3ローラー13に至る。シートSは、第3ローラー13により、右方の中間搬送装置2へ搬送される。
【0022】
一方、フラップ111が、第1搬送路P1を閉鎖し、第2搬送路P2を開放する位置にある場合には、シートSは、第1搬送路P1から分岐し、第2搬送路P2にガイドされるようになる。
シートSは、第(n+1)ローラー(n+1)でもある第2ローラー12から、右上方向の排出方向F1へ搬送され、第2搬送路P2の排出ローラー105に至る。シートSは、排出ローラー105により搬送され、右上方の第1トレイ112へ排出され、載置される。
なお、媒体搬送装置4は、シートSを反転させる反転機構(図示省略)も備えることができる。記録装置1は、媒体搬送装置4の反転機構によりシートSを反転させ、ヘッド110によりシートSの両面に記録することもできる。
【0023】
1-2.搬送ローラーの構成
図3に、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)の一例として第nローラーnを示し、構成を詳細に説明する。
第nローラーnは、駆動ローラーna、従動ローラーnbを含んで構成される。駆動ローラーna及び従動ローラーnbは、上下からシートSを挟んで搬送することができる。なお、図3では、駆動ローラーnaを下方に従動ローラーnbを上方に配置しているが、上下を逆にして配置してもよく、従動ローラーnbを備えなくてもよい。
また、第nローラーnは、第n駆動源である第nモーターMn、第nギア列Gn、第nクラッチCRn、第nセンサーDnを備える。
【0024】
例えば、第1ローラー11は、第1駆動ローラー1a、第1従動ローラー1bを含み、第1駆動源である第1モーターM1、第1ギア列G1、第1クラッチCR1、第1センサーD1を備える。第2ローラー12は、第2駆動ローラー2a、第2従動ローラー2bを含み、第2駆動源である第2モーターM2、第2ギア列G2、第2クラッチCR2、第2センサーD2を備える。このように、第nローラーnは、それぞれ独立して構成される。
【0025】
なお、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)は、シートSを搬送するローラーであり、媒体搬送装置4の任意の位置に配置されてもよく、少なくともいずれかのローラーは、中間搬送装置2、又は、後処理装置3に配置されてもよい。
例えば、いずれかのローラーは、中間搬送装置2内に配置され、後処理装置3へ搬送するローラーであってもよい。
後処理装置3内には、後処理部310により処理する前に、複数のシートSを載置しておくスタッカー(図示省略)がある。例えば、いずれかのローラーは、後処理部310内に配置され、このスタッカーへ搬送するローラーであってもよい。
【0026】
第nモーターMnは第nローラーnのみに対応しており、第nローラーnを独立して駆動することができる。制御部113の制御の下、第nモーターMnは、第n回転速度MVnで駆動され、第nギア列Gn、第nクラッチCRnを介して、トルクを駆動ローラーnaへ伝達する。
トルクが伝達された駆動ローラーnaは、時計回りに回転する。駆動ローラーnaの回転に伴って、従動ローラーnbは従動して、反時計回りに回転する。
制御部113の制御の下、第nローラーnが有する駆動ローラーna及び従動ローラーnbは、回転速度Rnで回転し、シートSの搬送速度が、シートSを搬送するときの目標とする所定搬送速度である、搬送速度Vnとなるように、シートSを搬送することができる。
なお、以下では、制御部113がシートSを搬送するときの制御上の目標とする所定搬送速度である搬送速度Vnなどを、単に、目標とする搬送速度Vnなどと称する。後述のように第nローラーnの搬送力が低下していくと、実際に第nローラーnがシートSを搬送する搬送速度は、目標とする搬送速度Vnより遅くなることがある。
【0027】
制御部113は、例えば、第1モーターM1の駆動を制御することで、第1ローラー11を第1回転速度R1にし、目標とする第1搬送速度V1にすることができる。他の第nローラーnの場合も同様である。なお、制御部113は、第nモーターMnを介して第nローラーnによりシートSを搬送させるが、以下では、第nローラーnによりシートSを搬送させる際、第nモーターMnを省略して説明する場合もある。他のローラーについても同様である。
【0028】
第nクラッチCRnは、いわゆるワンウェイクラッチ(One-way Clutch)である。ワンウェイクラッチは、一方向だけにトルクを伝達するクラッチである。
第nクラッチCRnは、第nモーターMnによりトルクが加わった状態のときにはトルクを伝達する。一方、第nクラッチCRnは、後述のように搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の方が速いなど、外力によるオーバーラン状態となるときには、第nモーターMnのトルクが加わらない状態となり、空転するように構成される。
例えば、第1ローラー11と第1ローラー11の回転軸との間に、ワンウェイクラッチである第1クラッチCR1が設けられる。
なお、搬送方向Fの最も下流に位置する第(n+2)ローラー(n+2)は、さらに下流のローラーによるオーバーラン状態となることがないので、第nクラッチCRnを備えなくてもよい。
【0029】
第nセンサーDnは、シートSの有無を検出可能であり、さらに、シートSの搬送方向Fにおける下流端である先端ST、及び、搬送方向Fにおける上流端である後端SBの少なくとも一方を検出可能である。第nセンサーDnは、例えば、反射型のフォトセンサーである。第nセンサーDnは、透過型のフォトセンサーでもよく、シートSに接触可能なレバーと、レバーの位置を検出する機械式のスイッチとを用いて構成されてもよい。
第nセンサーDnは、第nローラーnに対して、搬送方向Fの上流に位置する第2センサーである第n上流センサーDna、下流に位置する第1センサーである第n下流センサーDnbを備える。例えば、第1センサーD1は、第1ローラー11に対して、搬送方向Fの上流に位置する第2センサーである第1上流センサーD1a、下流に位置する第1センサーである第1下流センサーD1bを備える。
なお、少なくとも一つのセンサーが第1ローラー11に対して搬送方向Fの下流に位置しており、第1ローラー11によって搬送されているシートSの後述の経過時間を算出することができれば、上述のセンサーの配置に限らない。
制御部113は、第n上流センサーDnaにより、第nローラーnが搬送を始めたタイミングから後述の経過時間を算出することができる。例えば、制御部113は、第1上流センサーD1aにより、第1ローラー11が搬送を始めたタイミングから経過時間を算出することができる。
【0030】
第n上流センサーDna、及び、第n下流センサーDnbは、第nローラーnを挟んで、所定間隔だけ離れて配置されている。所定間隔は、予め、制御部113のメモリーに記憶されている。
制御部113は、タイマーを用いて、第n上流センサーDnaがシートSの先端STを検出してから、第n下流センサーDnbがシートSの先端STを検出するまでの時間である経過時間を算出することができる。
制御部113は、この経過時間に基づき、第nローラーnによるシートSの搬送速度を、目標とする搬送速度Vnにすることができる。なお、制御部113は、この経過時間と、メモリーから取得した所定間隔とに基づき、実際に搬送されるシートSの搬送速度Vnを算出することもできる。具体的には、制御部113は、所定間隔を経過時間で除算して、実際に搬送されるシートSの搬送速度Vnを算出することができる。この場合、制御部113は、算出された、実際に搬送されるシートSの搬送速度Vnに基づき、第nローラーnによるシートSの搬送速度を、目標とする搬送速度Vnに制御するようにすることもできる。
制御部113は、第nモーターMnの駆動を制御し、すなわち第n回転速度MVnを制御し、第nローラーnによるシートSの搬送速度が目標とする搬送速度Vnとなるような回転速度Rnに変更して、第nローラーnを回転させることができる。例えば、第nモーターMnはステップモーターである。この場合、制御部113は、第nモーターMnを駆動する駆動周波数を制御することにより、第n回転速度MVnを変更することができる。また、第nモーターMnは直流モーターでもよい。この場合、制御部113は、第nモーターMnを駆動するパルス幅を変調する制御(PWM制御)により、第n回転速度MVnを変更することができる。
【0031】
なお、制御部113は、第n上流センサーDnaがシートSの後端SBを検出してから、第n下流センサーDnbがシートSの後端SBを検出するまでの時間を経過時間として算出するようにしてもよい。
また、第nセンサーDnは、第n上流センサーDna、及び、第n下流センサーDnbのいずれか1つだけ有するようにしてもよい。例えば、第n上流センサーDnaのみとした場合、制御部113は、第n上流センサーDnaが、シートSの先端STを検出してから後端SBを検出するまでの時間を経過時間として算出することができる。
【0032】
また、制御部113は、これらの経過時間のいずれかと、シートSの先端STから後端SBまでの長さに基づき、上述のように、実際に搬送されるシートSの搬送速度Vnを算出することもできる。
なお、シートSの先端STから後端SBまでの長さを含むシートSのサイズは、ユーザーにより表示部114で設定され、制御部113のメモリーに記憶されている。
【0033】
上述では、第nローラーnを例として説明したが、他のローラーについても同様である。
なお、第nモーターMnは、第nローラーnを含む複数のローラーをセットにして、それぞれを駆動するようにしてもよい。この場合、第nセンサーDnは、セットを構成する任意のローラーに配置するようにしてもよい。
また、実施形態において、上述の、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)の任意の2つのローラーのうち、搬送方向Fの上流に配置されたものを、第1ローラー11と称するようにしてもよく、搬送方向Fの下流に配置されたものを、第2ローラー12と称するようにしてもよい。さらに、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)の任意の3つのローラーのうち、搬送方向Fの最も下流に配置されたものを、第3ローラー13と称するようにしてもよい。
【0034】
ところで、第nローラーnは、ゴムなどの可撓性のある樹脂などの材料で円柱形状に形成される。第nローラーnは、搬送したシートSの枚数が増えていくに従って、表面が摩耗したり、紙粉などの異物が付着していく。
このため、第nローラーnとシートSとの間の摩擦力が低下していき、実際に第nローラーnがシートSを搬送する搬送力も低下していく。この結果、制御部113が、第nセンサーDnを用いて算出する経過時間も長くなっていく。第nローラーnによるシートSの実際の搬送速度Vnも低下していき、制御部113が目標とする搬送速度Vnより遅くなる場合がある。
【0035】
記録装置1による記録に対するスループット(Throughput)は実際の搬送速度Vnに対応するため、実際の搬送速度Vnが低下していくと記録装置1のスループットも低下していくことになる。
制御部113は、スループットの低下を抑制するように、第nセンサーDnを用いて算出したシートSの経過時間に基づき、第nローラーnによるシートSの搬送速度が目標とする搬送速度Vnになるように、回転速度Rnを算出する。なお、制御部113は、算出した実際のシートSの搬送速度Vnに基づき、この回転速度Rnを算出するようにしてもよい。制御部113は、第nモーターMnの駆動を制御し、算出した回転速度Rnで第nローラーnを回転させる。
制御部113は、第nローラーnが交換後で新しくなるなど、第nローラーnが摩耗等していないときには、経過時間に対応する、目標とする搬送速度Vn、回転速度Rn、第n回転速度MVnなどは、それぞれ初期値とすることができる。なお、目標とする搬送速度Vnの初期値を基準搬送速度とも称し、回転速度Rnの初期値を基準回転速度とも称する。
【0036】
2.媒体搬送装置の制御方法
図4に示すように、記録装置1が含む媒体搬送装置4の制御部113の制御の一例として、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)のうち、第nローラーnを取り上げて説明する。なお、他のローラーも下記の第nローラーnの場合と同様である。
上述のように、制御部113は、第nモーターMnを第n回転速度MVnで回転させて、第nローラーnを回転速度Rnで回転させ、目標とする搬送速度VnになるようにシートSを搬送させることができる。
【0037】
まず、制御部113は、第nローラーnが目標とする第1所定搬送速度Vn1になるように、シートSを搬送させる(S100)。
具体的には、制御部113は、それぞれの初期値或いは前回の値を用い、目標とする第1所定搬送速度Vn1でシートSを搬送させるように、第nモーターMnの駆動を制御し、第nローラーnを第1回転速度Rn1で回転させる。なお、それぞれの初期値或いは前回の値である、第1所定搬送速度Vn1、第1回転速度Rn1などは、予め、制御部113のメモリーに記憶されている。
【0038】
シートSが搬送され、制御部113は、タイマーを用いて、第nセンサーDnの第n上流センサーDnaが、シートSの先端STを検出してから、第n下流センサーDnbがシートSの先端STを検出するまでの経過時間を、算出する(S101)。
なお、制御部113は、複数枚のシートSに亘る印刷ジョブの場合には、1枚目のシートSに対する経過時間を算出するようにしてもよい。制御部113の処理が簡易化できる。また、制御部113は、例えば5回など、直近の複数回の経過時間の平均値を算出するようにしてもよい。制御部113は、検出時のノイズの影響を低減し、精度を向上することができる。
【0039】
制御部113は、算出した経過時間が所定時間より長いか否かを判断する(S102)。なお、制御部113は、算出した実際のシートSの搬送速度Vnが、第1所定搬送速度Vn1より遅いかを判断するようにしてもよい。
制御部113は、算出した経過時間が所定時間より長いと判断すると(S102:YES)、スループットが低下したと判断することができる。なお、制御部113は、算出した実際のシートSの搬送速度Vnが、第1所定搬送速度Vn1より遅いと判断すると、スループットが低下したと判断するようにしてもよい。制御部113は、スループットの低下を抑制するように、目標とする第2所定搬送速度Vn2を算出する(S103)。
例えば、第2所定搬送速度Vn2は、第1所定搬送速度Vn1と同一の値でもよく、実際のシートSの搬送速度Vnより速く第1所定搬送速度Vn1より遅い値でもよい。制御部113は、第2所定搬送速度Vn2と第1所定搬送速度Vn1とを同一の値にする場合、第2所定搬送速度Vn2を算出しなくてもよい。制御部113は、引き続きメモリーから初期値である第1所定搬送速度Vn1を読み込み、第2所定搬送速度Vn2として、第nモーターMnを制御することができる。
また、第1所定搬送速度Vn1は印刷ジョブ毎に決定してもよく、第2所定搬送速度Vn2も印刷ジョブ毎に決定してもよい。
【0040】
一方、制御部113は、算出した経過時間が所定時間より長くないと判断すると(S102:NO)、処理を終了する。すなわち、制御部113は、算出した経過時間が所定時間以下であり、スループットが低下していないと判断することができる。
この場合には、制御部113は、引き続きメモリーからそれぞれの初期値を読み込み、第1所定搬送速度Vn1になるように、第nモーターMnの駆動を制御し、第nローラーnを第1回転速度Rn1で回転させる。
【0041】
なお、算出した経過時間が所定時間より長い場合における、経過時間と、経過時間に対応する目標とする第2所定搬送速度Vn2との関係式は、予め制御部113のメモリーに記憶されている。制御部113は、関係式をメモリーから読み出して、経過時間に基づき、この第2所定搬送速度Vn2を算出することができる。
この場合、それぞれの経過時間と、対応する第2所定搬送速度Vn2は、予め制御部113のメモリーに記憶されているようにしてもよい。制御部113は、経過時間に基づき、メモリーから、対応する第2所定搬送速度Vn2を読み出して制御することができる。
なお、制御部113は、算出した実際のシートSの搬送速度Vnを用いる場合も、メモリーを用いて、同様に制御することができる。
【0042】
制御部113は、目標とする第2所定搬送速度Vn2に対応する、第nローラーnの第2回転速度Rn2を算出する。第2回転速度Rn2は第1回転速度Rn1より速い値である。
なお、制御部113は、メモリーに記憶されている関係式から、第2所定搬送速度Vn2に基づき、第2回転速度Rn2を算出することができる。第2所定搬送速度Vn2に対応する第2回転速度Rn2は、予め制御部113のメモリーに記憶されているようにしてもよい。
なお、制御部113は、算出した実際のシートSの搬送速度Vnを用いる場合も、メモリーを用いて、同様に制御することができる。
【0043】
また、後述の所定回転速度は、例えば、第nモーターMnを含む能力の上限値であり、第nローラーnを回転させるときの上限の回転速度である。所定回転速度は、第nモーターMnの出力トルクなどの能力の他、駆動伝達経路や第nローラーnまわりのメカ的な性能の制約などの条件を含み、予め決められる。
所定時間及び所定回転速度は、予め制御部113のメモリーに記憶されており、制御部113はメモリーから読み出して処理することができる。
【0044】
制御部113は、算出した第2回転速度Rn2が所定回転速度より小さいか否かを判断する(S104)。上述のように、所定回転速度は第nモーターMnにより第nローラーnを回転させる際の上限回転速度である。
制御部113は、第2回転速度Rn2が所定回転速度より小さいと判断すると(S104:YES)、第2回転速度Rn2になるように変更する(S105)。制御部113は、第nローラーnを、変更した第2回転速度Rn2になるように第nモーターMnを制御し、シートSを搬送する(S106)。
制御部113は、第1回転速度Rn1から第2回転速度Rn2に変更するなど、第nローラーnの回転速度Rnを変更した場合、変更頻度である変更回数をカウントしてメモリーに記憶する。
なお、制御部113は、第1所定搬送速度Vn1から第2所定搬送速度Vn2に変更するなど、目標とする搬送速度Vnを変更した場合に、変更頻度である変更回数をカウントしてメモリーに記憶するようにしてもよい。
【0045】
一方、制御部113は、第2回転速度Rn2が所定回転速度より小さくなく、所定回転速度以上であると判断すると(S104:NO)、回転速度Rnを所定回転速度に変更する(S111)。制御部113は、第nローラーnを、変更した所定回転速度になるように第nモーターMnを制御し、シートSを搬送する(S106)。
すなわち、制御部113は、算出した第2回転速度Rn2が所定回転速度以上であると判断すると、第nモーターMnの能力等の上限値を超えないようにすべく、第2回転速度Rn2ではなく所定回転速度となるように、第nモーターMnの駆動を制御する。このように、制御部113は、第nモーターMnの能力等の範囲内で駆動を制御するようにする。
この場合も、制御部113は、目標とする回転速度Rnを変更したものとして、変更回数をカウントしてメモリーに記憶する。
【0046】
このように、制御部113は、経過時間及び所定時間に基づいて、第2回転速度Rn2、第2所定搬送速度Vn2を決定することができる。制御部113は、経過時間の長さの程度に基づいて、第2回転速度Rn2を決定することで、目標とする第2所定搬送速度Vn2になるようにすることができ、第nローラーnの搬送力が低下しても、効果的にパフォーマンスの低下を抑制できる。すなわち、制御部113は、経過時間に基づき、実際のシートSの搬送速度Vnを、目標とする第2所定搬送速度Vn2に近付けるように、第nモーターMnの駆動を制御することができる。引き続き、第nローラーnが交換されずに使用される。
また、制御部113は、メモリーに、第2回転速度Rn2、第2所定搬送速度Vn2を記憶し、次回の第1回転速度Rn1、第1所定搬送速度Vn1としてもよい。
【0047】
上述のように、第nローラーnが摩耗等すると、実際の搬送速度Vnも低下していくこととなる。
制御部113は、実際にシートSを搬送するときの搬送速度Vnが、目標とする第2所定搬送速度Vn2となるように、経過時間及び所定時間に基づいて、第2回転速度Rn2を決定し、第nモーターMnを制御するようにすることができる。
制御部113は、実際にシートSを搬送するときの搬送速度Vnが、パフォーマンスの低下を抑制する第2所定搬送速度Vn2となるように、第2回転速度Rn2を決定することができる。
なお、上述のように、目標とする第2所定搬送速度Vn2は、第1所定搬送速度Vn1と同一でもよい。制御部113は、第nローラーnの搬送力が低下しても、引き続き、実際の搬送速度を同一の第1所定搬送速度Vn1となるように、シートSを搬送することができる。
【0048】
制御部113は、メモリーから変更回数を読み出し、閾値である所定回数以上となったか否かを判断する(S107)。
制御部113は、変更回数が所定回数以上となったと判断すると(S107:YES)、第nローラーnの交換を促す旨の情報を、表示部114により報知する(S108)。
このように、制御部113は、第nローラーnの回転速度Rnの変更が繰り返されて変更回数が所定回数以上となった場合、摩耗等によりスループットが低下し、第nローラーnを交換するタイミングに至ったと判断することができる。所定回数は、例えば、5回である。
制御部113は、第nローラーnの交換を促すことで、第nローラーnの劣化による不具合の発生も抑制できる。
【0049】
なお、制御部113は、算出した第2回転速度Rn2が所定回転速度に達したと判断した場合、第nローラーnの交換を促す旨の情報を、表示部114により報知するようにしてもよい。
制御部113は、第nローラーnの交換を促すことで、第nローラーnの劣化による不具合の発生も抑制できる。
【0050】
また、制御部113は、算出した第2回転速度Rn2が所定回転速度に達した後は、第nローラーnを停止して搬送しないようにしてもよく、一定期間は所定回転速度で搬送するようにしてもよい。
また、制御部113は、所定回転速度を、遅い方から順に第1所定回転速度、第2所定回転速度などと、複数段階設定してもよい。制御部113は、算出した第2回転速度Rn2が、第1所定回転速度を超え、第1所定回転速度と第2所定回転速度との間であれば、一旦報知した後、回転速度Rnを上げていき、第2所定回転速度に達すると再度報知し、今度は搬送しないようにすることもできる。
【0051】
制御部113は、ユーザーにより第nローラーnが新しいものに交換されると(S109)、回転速度Rnを初期値に変更する(S110)。
制御部113は、スループットが低下する前のように、メモリーからそれぞれの初期値を読み込み、第1回転速度Rn1で第nローラーnを回転させてシートSを搬送させるように、第nモーターMnを制御し、第1所定搬送速度Vn1となるように、シートSを搬送することができる。
【0052】
なお、制御部113は、表示部114により、ユーザーが第nローラーnの交換を終了したとき表示部114を操作するように表示する。制御部113は、ユーザーによる表示部114の操作を検出すると、第nローラーnが交換されたと判断することができる。
制御部113は、ユーザーが第nローラーnの交換に伴うカバー(図示省略)などの開閉を検出するセンサー(図示省略)により、第nローラーnが交換されたと判断するようにしてもよい。
【0053】
なお、制御部113は、第nローラーnが交換されたと判断すると、メモリーにおいて、その旨を示すフラグをセットするようにしてもよい。
制御部113は、第nローラーnを制御するとき、メモリーを参照し、フラグがセットされている場合には、搬送速度Vnなどを初期値に戻すことができる。
【0054】
一方、制御部113は、変更回数が所定回数以上ではないと判断すると(S107:NO)、処理を終了する。引き続き、第nローラーnが交換されずに使用されることとなる。
このように、制御部113は、変更回数が所定回数になるまで回転速度Rnを変更することにより、第nローラーnの使用期間を延ばしつつ、スループットの低下を抑制することができる。
【0055】
なお、上述では、第nローラーnの例について説明した。後述のように、例えば、媒体搬送装置4が備える複数のローラーである第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、制御部113は、上流の第nローラーnの第nセンサーDnにより経過時間を算出し、下流の第(n+1)ローラー(n+1)に対して、それぞれの回転速度を変更するようにしてもよい。
【0056】
3.媒体搬送装置による搬送
図5図11を参照しながら、目標とする搬送速度Vnとなるように第nローラーnの回転速度Rnを変更する際、記録装置1が含む媒体搬送装置4のシートSの搬送の実施形態について説明する。なお、図4を参照して説明した上述の第1所定搬送速度Vn1、第2所定搬送速度Vn2、第1回転速度Rn1、第2回転速度Rn2などは、それぞれ下記の第1搬送速度V1、第2搬送速度V2、第1回転速度R1、第2回転速度R2などに対応することができる。
【0057】
上述の図3で示したように、第nローラーnは、駆動ローラーna、従動ローラーnbを含み、第nモーターMn、第nギア列Gn、第nクラッチCRn、第nセンサーDnを備える。第(n+1)ローラー(n+1)、第(n+2)ローラー(n+2)も、第nローラーnと同様の構成である。
なお、図5図11では、第nセンサーDn、第nモーターMn等を省略し、第nローラーnなどのローラーを中心に示す。
【0058】
下記の実施形態では、制御部113が、例えば第nセンサーDnなどのセンサーにより、経過時間が所定時間より長いと判断した場合であり、スループットが低下したと判断した場合の制御の例を示す。
具体的には、制御部113が、経過時間が所定時間より長いと判断した場合、例えば第nモーターMnの駆動を制御して、第nローラーnの第n回転速度Rnを変更し、第nローラーnを目標とする搬送速度Vnにすることにより、スループットの低下を抑制するような搬送をする例を示す。制御部113は、第nモーターMnの能力の上限値を超えない範囲で、継続して第nローラーnを使用するものとする。この結果、第nローラーnの搬送力が低下しても、制御部113は、例えば、シートSの実際の搬送速度Vnを維持するようにすることができ、パフォーマンスの低下を抑制することができる。
また、下記の実施形態は、搬送方向Fの上流から下流に向かって配置する、第nローラーn、第(n+1)ローラー(n+1)、第(n+2)ローラー(n+2)のうち、少なくとも2つ以上のローラーの搬送に係る例を示す。
【0059】
3-1.第1実施形態に係る搬送
第1実施形態は2つのローラーの搬送に係る例を示す。媒体搬送装置4は、まず、図5に示すように、第nローラーnが、シートSを挟んで、目標とする第n搬送速度Vnになるように搬送方向Fへ搬送する。具体的には、制御部113は、第nモーターMnの駆動を制御し、第nローラーnを第n回転速度Rnで回転させる。
図6は、図5に続き、第nローラーnによりシートSが搬送され、先端STが第(n+1)ローラー(n+1)に到達して挟まれた状態を示す。
【0060】
制御部113は、搬送方向Fの上流の第nローラーnの第nセンサーDnにより、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第(n+1)搬送速度V(n+1)を算出し、下流の第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSの搬送を開始する。すなわち、制御部113は、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御し、第(n+1)ローラー(n+1)を第(n+1)回転速度R(n+1)で回転させるように変更する。
又は、制御部113は、一旦、第(n+1)ローラー(n+1)を第nローラーnと同じく、目標とする第n搬送速度Vnとなるように第n回転速度RnでシートSの搬送を開始した後、第(n+1)センサーD(n+1)により、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第(n+1)搬送速度V(n+1)になるように、第(n+1)ローラー(n+1)を第(n+1)回転速度R(n+1)で回転させるように変更するようにしてもよい。
なお、図4を参照して説明した上述の第1所定搬送速度Vn1、第2所定搬送速度Vn2、第1回転速度Rn1、第2回転速度Rn2などを、それぞれ第n搬送速度Vn、第(n+1)搬送速度V(n+1)、第n回転速度Rn、第(n+1)回転速度R(n+1)などと対応させるようにすることもできる。
【0061】
第(n+1)搬送速度V(n+1)は第n搬送速度Vnより速く、第(n+1)搬送速度V(n+1)>第n搬送速度Vn、の関係となる。すなわち、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第(n+1)搬送速度V(n+1)は、上流の第nローラーnの第n搬送速度Vnより速くなる。
この結果、上流の第nローラーnは、第nクラッチCRnにより、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の回転に従動して、空転することとなる。
【0062】
このように、制御部113は、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第(n+1)搬送速度V(n+1)を、上流の第nローラーnの第n搬送速度Vnより速くするようにすることができ、スループットの低下を抑制することができる。
また、第nローラーn、及び、第(n+1)ローラー(n+1)の間のシートSは、搬送速度が速い下流の第(n+1)ローラー(n+1)により引っ張られて、弛みが除去されることができる。
次に、制御部113は、第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSが搬送されていき、第nセンサーDnにより、シートSの後端SBが第nローラーnから外れたことを検出すると、第nモーターMnを停止して第nローラーnを停止し、回転速度及び搬送速度を0とする。
【0063】
このように、第1実施形態の媒体搬送装置4は、第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、ローラーの搬送力が低下しても、下流の位置のローラーになるほど、順次、目標とする搬送速度を累積的に速くするようにすることができ、スループットの低下を抑制することができる。本実施形態は、シートSを3つ以上の搬送ローラーで同時に搬送する構成に適用してもよい。
なお、第1実施形態の媒体搬送装置4では、第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、後述の実施形態のように、途中で搬送速度を遅くするなどはしない。
【0064】
3-2.第2実施形態に係る搬送
第2実施形態は2つのローラーの搬送に係る別の例を示す。媒体搬送装置4は、まず、図7に示すように、第nローラーnが、シートSを挟んで、目標とする第1搬送速度V1になるように搬送方向Fへ搬送する。具体的には、制御部113は、第nモーターMnの駆動を制御し、第nローラーnを第1回転速度R1で回転させる。
図8は、図7に続き、第nローラーnによりシートSが搬送され、先端STが第(n+1)ローラー(n+1)に到達して挟まれた状態を示す。
【0065】
制御部113は、搬送方向Fの上流の第nローラーnの第nセンサーDnにより、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第2搬送速度V2を算出し、下流の第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSの搬送を開始する。すなわち、制御部113は、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御し、第(n+1)ローラー(n+1)を第2回転速度R2で回転させるように変更する。
又は、制御部113は、一旦、第(n+1)ローラー(n+1)を第nローラーnと同じく、目標とする第1搬送速度V1となるようにシートSの搬送を開始した後、第(n+1)センサーD(n+1)により、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第2搬送速度V2になるように、第(n+1)ローラー(n+1)を第2回転速度R2で回転させるように変更するようにしてもよい。
【0066】
第2搬送速度V2は第1搬送速度V1より速く、第2搬送速度V2>第1搬送速度V1、の関係となる。すなわち、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第2搬送速度V2は、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速くなる。
この結果、上流の第nローラーnは、第nクラッチCRnにより、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の回転に従動して、空転することとなる。
【0067】
このように、制御部113は、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第2搬送速度V2を、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速くするようにすることができ、スループットの低下を抑制することができる。
また、第nローラーn、及び、第(n+1)ローラー(n+1)の間のシートSは、搬送速度が速い下流の第(n+1)ローラー(n+1)により引っ張られて、弛みが除去されることができる。
【0068】
次に、制御部113は、第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSが搬送されていき、第nセンサーDnにより、シートSの後端SBが第nローラーnから外れたことを検出する。
このとき、制御部113は、第nモーターMn及び第nローラーnを停止し、回転速度及び搬送速度を0とし、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御して第(n+1)ローラー(n+1)を目標とする第1搬送速度V1となるような回転速度に変更する。この結果、制御部113は、シートSの搬送速度を第2搬送速度V2から第1搬送速度V1にするように、変更することができる。
【0069】
このように、第2実施形態の媒体搬送装置4は、第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、下流の第(n+1)ローラー(n+1)は、シートSを挟んで搬送可能となると、目標とするシートSの搬送速度を、一旦、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速くするように、第2搬送速度V2にして、シートSの弛みを除去すると共に、スループットの低下を抑制することができる。その後、第(n+1)ローラー(n+1)は、第nローラーnからシートSが外れると、当初の第nローラーnの目標とする第1搬送速度V1にすることができる。
第2実施形態では、上述の第1実施形態のように第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、下流の位置になるほど累積的に搬送速度を速くすることがない。制御部113は、第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)が、それぞれ単独でシートSを搬送しているときは、目標とする同一の第1搬送速度V1となるように、第1回転速度R1とすることができる。
【0070】
シートSの搬送速度が累積的に速くなると、媒体搬送装置4の搬送精度が低下する場合がある。制御部113は、第(n+1)ローラー(n+1)に対して、第nローラーnからシートSが外れると、目標とする搬送速度を第2搬送速度V2から第1搬送速度V1にして、搬送速度を遅くするようにする。
この結果、媒体搬送装置4はシートSの搬送精度の低下を抑制することができる。具体的には、制御部113は、ヘッド110による記録の精度低下、媒体搬送装置4から中間搬送装置2及び後処理装置3への搬送精度の低下、中間搬送装置2での反転時の搬送精度低下などを抑制することができる。
【0071】
3-3.第3実施形態に係る搬送
第3実施形態は3つのローラーの搬送に係る例を示す。媒体搬送装置4は、まず、図9に示すように、第nローラーnが、シートSを挟んで、目標とする第1搬送速度V1になるように搬送方向Fへ搬送する。具体的には、制御部113は、第nモーターMnの駆動を制御し、第nローラーnを第1回転速度R1で回転させる。
第3実施形態では、シートSが3つのローラーに掛かる場合があり、上述の第1実施形態及び第2実施形態に対して、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)の各間隔が短い、又は、シートSの搬送方向Fの長さが長い場合の例である。
図10は、図9に続き、第nローラーnによりシートSが搬送され、先端STが第(n+1)ローラー(n+1)に到達して挟まれた状態を示す。
【0072】
制御部113は、搬送方向Fの上流の第nローラーnの第nセンサーDnにより、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第2搬送速度V2を算出し、下流の第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSの搬送を開始する。すなわち、制御部113は、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御し、第(n+1)ローラー(n+1)を第2回転速度R2で回転させるように変更する。
又は、制御部113は、一旦、第(n+1)ローラー(n+1)を第nローラーnと同じく、目標とする第1搬送速度V1となるようにシートSの搬送を開始した後、第(n+1)センサーD(n+1)により、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第2搬送速度V2になるように、第(n+1)ローラー(n+1)を第2回転速度R2で回転させるように変更するようにしてもよい。
【0073】
第2搬送速度V2は第1搬送速度V1より速い。すなわち、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第2搬送速度V2は、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速くなる。
この結果、上流の第nローラーnは、第nクラッチCRnにより、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の回転に従動して、空転することとなる。
【0074】
このように、制御部113は、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第2搬送速度V2を、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速くするようにすることができ、スループットの低下を抑制することができる。
また、第nローラーn、及び、第(n+1)ローラー(n+1)の間のシートSは、搬送速度が速い下流の第(n+1)ローラー(n+1)により引っ張られて、弛みが除去されることができる。
【0075】
次に、制御部113は、第(n+1)センサーD(n+1)により、第(n+1)ローラー(n+1)が所定距離に亘ってシートSを搬送したことを検出する。
このとき、制御部113は、第nローラーnに対し、目標とする搬送速度を第1搬送速度V1から第0搬送速度V0に変更し、第nモーターMnの駆動を制御して回転速度を第1回転速度R1から第0回転速度R0に変更する。また、制御部113は、第(n+1)ローラー(n+1)に対し、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御して、目標とする搬送速度を第2搬送速度V2から第1搬送速度V1となるように回転速度を変更する。
【0076】
第1回転速度R1は第0回転速度R0より速く、第1回転速度R1>第0回転速度R0、の関係となる。第1搬送速度V1は第0搬送速度V0より速く、第1搬送速度V1>第0搬送速度V0、の関係となる。すなわち、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第1搬送速度V1は、上流の第nローラーnの第0搬送速度V0より速くなる。
この結果、第nローラーnは、引き続き、第nクラッチCRnにより、第(n+1)ローラー(n+1)の回転に従動して、空転することとなる。
【0077】
このように、第3実施形態の媒体搬送装置4は、第nローラーn~第(n+1)ローラー(n+1)において、下流の第(n+1)ローラー(n+1)は、シートSを挟んで搬送可能となると、シートSの搬送速度を、一旦、上流の第nローラーnの第1搬送速度V1より速い第2搬送速度V2にすることができ、スループットの低下を抑制することができ、またシートSの弛みを除去することができる。その後、第(n+1)ローラー(n+1)は、所定距離に亘ってシートSを搬送すると、当初の第nローラーnの第1搬送速度V1にする。一方、第nローラーnは、第1搬送速度V1より遅い第0搬送速度V0にする。
【0078】
図11は、図10に続き、第(n+1)ローラー(n+1)によりシートSが搬送され、先端STが第(n+2)ローラー(n+2)に到達して挟まれた状態を示す。
制御部113は、第(n+2)ローラー(n+2)の上流の第(n+1)ローラー(n+1)の第(n+1)センサーD(n+1)により、経過時間が所定時間より長いと判断すると、目標とする第2搬送速度V2を算出し、下流の第(n+2)ローラー(n+2)によりシートSの搬送を開始する。すなわち、制御部113は、第(n+2)モーターM(n+2)の駆動を制御し、第(n+2)ローラー(n+2)を目標とする第2搬送速度V2となるような回転速度に変更する。
又は、制御部113は、一旦、第(n+2)ローラー(n+2)を第(n+1)ローラー(n+1)と同じく、目標とする第1搬送速度V1となるようにシートSの搬送を開始した後、第(n+2)センサーD(n+2)により、経過時間が所定時間より長いと判断すると、第(n+2)ローラー(n+2)を目標とする第2搬送速度V2になるような回転速度に変更するようにしてもよい。
このとき、制御部113は、搬送方向Fの下流から上流に向かって、第(n+2)ローラー(n+2)を第2搬送速度V2にすることができ、第(n+1)ローラー(n+1)を第1搬送速度V1にすることができ、第nローラーnを第0搬送速度V0にすることができる。
【0079】
ここで、第2搬送速度V2>第1搬送速度V1>第0搬送速度V0、の関係となる。すなわち、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)において、下流が最も速く、上流に向かって遅くなることとなる。
この結果、第(n+2)ローラー(n+2)の上流にある、第(n+1)ローラー(n+1)、及び、第nローラーnは、それぞれ、第(n+1)クラッチCR(n+1)、及び、第nクラッチCRnにより、下流の第(n+2)ローラー(n+2)の回転に従動して、空転することとなる。
【0080】
このように、制御部113は、搬送方向Fの下流の第(n+2)ローラー(n+2)の第2搬送速度V2を、上流の第(n+1)ローラー(n+1)の第1搬送速度V1より速くようにすることができ、さらに上流の第nローラーnの第0搬送速度V0より速くするようにすることができ、スループットの低下を抑制することができる。
また、第nローラーn、第(n+1)ローラー(n+1)、及び、第(n+2)ローラー(n+2)の各間のシートSは、下流の第(n+1)ローラー(n+1)、及び、第(n+2)ローラー(n+2)によりそれぞれ引っ張られて、弛みが除去される。
【0081】
次に、制御部113は、第(n+2)センサーD(n+2)により、第(n+2)ローラー(n+2)がシートSを所定距離に亘って搬送したことを検出する。また、制御部113は、第nセンサーDnにより、シートSの後端SBが第nローラーnから外れたことを検出する。
このとき、制御部113は、第nモーターMn及び第nローラーnを停止して、回転速度及び搬送速度を0とする。制御部113は、第(n+1)ローラー(n+1)に対し、目標とする第0搬送速度V0になるように、第(n+1)モーターM(n+1)の駆動を制御して、回転速度を変更する。制御部113は、第(n+2)ローラー(n+2)に対し、目標とする第1搬送速度V1になるように、第(n+2)モーターM(n+2)の駆動を制御して、回転速度を変更する。
【0082】
このように、第3実施形態の媒体搬送装置4は、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)において、最も下流の第(n+2)ローラー(n+2)は、シートSを挟んで搬送可能となると、目標とするシートSの搬送速度を、一旦、上流の第(n+1)ローラー(n+1)の第1搬送速度V1より速くするように、第2搬送速度V2にして、スループットの低下を抑制することができ、またシートSの弛みを除去することができる。
そして、第(n+2)ローラー(n+2)は、シートSを所定距離に亘って搬送していき、最も上流の第nローラーnからシートSが外れると、当初の第nローラーnの目標とする第1搬送速度V1にする。このとき、上流の第(n+1)ローラー(n+1)は、目標とする第0搬送速度V0にする。
【0083】
すなわち、制御部113は、シートSの搬送方向Fにおける先端STが第(n+1)ローラー(n+1)から第(n+2)ローラー(n+2)に搬送され、搬送方向Fにおける後端SBが第nローラーnよりも搬送方向Fにおける下流に位置するときに、第(n+2)ローラー(n+2)により、目標とするシートSの搬送速度を第2搬送速度V2から第1搬送速度V1に変更することができる。
この結果、媒体搬送装置4は、シートSの搬送速度が速くなることに伴う搬送精度の低下を抑制することができる。
【0084】
第3実施形態の媒体搬送装置4は、上述の第1実施形態のように、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)において、下流の位置になるほど累積的に搬送速度を速くすることがない。第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)において、シートSを挟んで最も下流となるローラーでシートSを搬送するときは、目標とするシートSの搬送速度を、一旦、第1搬送速度V1より速い第2搬送速度V2とした後、第1搬送速度V1となる。
【0085】
なお、上述の各実施形態において、第2搬送速度V2、第1搬送速度V1、第0搬送速度V0の中の任意の2つの搬送速度のうち遅いものを、図4で説明した第1所定搬送速度と称するようにしてもよく、速いものを第2所定搬送速度と称するようにしてもよい。第n搬送速度Vn~第(n+2)搬送速度V(n+2)の場合も同様である。
同様に、上述の、第2回転速度R2、第1回転速度R1、第0回転速度R0の中の任意の2つの回転速度のうち遅いものを、第1回転速度と称するようにしてもよく、速いものを第2回転速度と称するようにしてもよい。第n回転速度Rn~第(n+2)回転速度R(n+2)の場合も同様である。
【0086】
上述のように、実施形態の媒体搬送装置4は、シートSを搬送方向Fへ搬送する第1ローラー11と、第1ローラー11よりも搬送方向Fの下流に位置し、シートSを検出する第1下流センサーD1bと、第1下流センサーD1bの上流に設けられた第1上流センサーD1aと、制御部113とを備える。
制御部113は、シートSを第1搬送速度V1で搬送するために第1ローラー11を第1回転速度R1で回転させるとき、第1上流センサーD1aがシートSを検出してから、第1下流センサーD1bがシートSを検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、第1ローラー11の回転速度を第1回転速度R1よりも速い第2回転速度R2に変更する。
【0087】
すなわち、制御部113は、タイマーを用いて、第nセンサーDnの第n上流センサーDnaが、シートSの先端STを検出してから、第n下流センサーDnbがシートSの先端STを検出するまでの経過時間を算出し、経過時間が所定時間より長いと判断すると、スループットが低下したと判断する。
この場合、制御部113は、下流の第(n+1)ローラー(n+1)の第(n+1)回転速度R(n+1)及び第(n+1)搬送速度V(n+1)を、上流の第nローラーnの第n回転速度Rn及び第n搬送速度Vnより速く変更する。
この結果、媒体搬送装置4は、第1ローラー11を交換することなく、搬送の遅れを抑制することができる。したがって、媒体搬送装置4は、スループットの低下を抑制しつつ、第1ローラー11を長寿命化させることができる。
【0088】
上述の媒体搬送装置4の制御部113は、経過時間及び所定時間に基づいて、第2回転速度R2を決定する。
制御部113は、遅れの程度に基づいて、第2回転速度R2を決定することで、より効果的に搬送の遅れを抑制できる。
【0089】
上述の媒体搬送装置4の制御部113は、実際にシートSを搬送するときの搬送速度が第1搬送速度V1となるように、第2回転速度R2を決定することができる。
制御部113は、スループットが低下しても、シートSの実際の搬送速度が狙いの第1搬送速度V1になるように、第2回転速度R2を決定することで、より効果的に搬送の遅れを抑制できる。
【0090】
上述の媒体搬送装置4の第1上流センサーD1aは、第1ローラー11の上流に設けられる。
制御部113は、第1ローラー11が搬送力を付与し始めたタイミングからの遅れを計測することができる。
【0091】
上述の媒体搬送装置4の制御部113は、第2回転速度R2に対応する第2搬送速度V2が上限搬送速度に達した場合、表示部114により、第1ローラー11の交換を促す報知を行う。
すなわち、制御部113は、第nローラーnに対し、第2回転速度Rn2に対応する算出した第2所定搬送速度Vn2が上限搬送速度である所定搬送速度に達したと判断した場合、第nローラーnの交換を促す旨の情報を、表示部114により報知するようにしてもよい。制御部113は、第nローラーnの交換を促すことで、第nローラーnの劣化による不具合の発生も抑制できる。
【0092】
制御部113は、上限搬送速度に達した後は、第1ローラー11を搬送できないようにしてもよいし、一定期間は上限速度で搬送してもよい。制御部113は、少し早めに報知するように、第1上限速度と第2上限速度を含む複数段階の上限値を設定してもよい。制御部113は、目標とする搬送速度が第1上限速度と第2上限速度の間であれば、交換を促す報知を行い、目標とする搬送速度にし、第2上限速度に至ると、再度報知し停止するようにしてもよい。
【0093】
上述の媒体搬送装置4の制御部113は、第1ローラー11の搬送速度の変更回数が所定回数以上の場合、表示部114により、第1ローラー11の交換を促す報知を行う。
第1ローラー11が、頻繁に遅れが生じて搬送速度の変更が繰り返されるような場合には、第1ローラー11に問題が生じている可能性がある。したがって、制御部113は、第1ローラー11の交換を促すことで、第1ローラー11の劣化による不具合も抑制できる。
制御部113は、変更回数が所定回数以上になった後は、第1ローラー11を停止してもよいし、一定期間は使えるようにしてもよい。制御部113は、上述の上限搬送速度に準じて、所定回数を複数段階に設定してもよい。
【0094】
上述の媒体搬送装置4の制御部113は、第1ローラー11が交換された場合、第1ローラー11の回転速度を初期値に変更するようにしてもよい。
制御部113は、第1ローラー11が交換された場合には、回転速度を初期値に戻すことで、適切な搬送速度でシートSを搬送することができる。
【0095】
上述の媒体搬送装置4は、搬送方向Fにおいて、第1ローラー11及び第1センサーD1よりも下流に位置し、シートSを搬送する第2ローラー12をさらに備え、制御部113は、第1ローラー11の回転速度を変更した場合、第2ローラー12において第1搬送速度V1よりも速い第2搬送速度V2でシートSを搬送する。
すなわち、制御部113は、搬送方向Fの下流の第(n+1)ローラー(n+1)である第2ローラー12の第(n+1)搬送速度V(n+1)である第2搬送速度V2は、上流の第nローラーnである第1ローラー11の第n搬送速度Vnである第1搬送速度V1より速くする。このとき、第1ローラー11の第n搬送速度Vnである第1搬送速度V1は、第1所定搬送速度の一例である。また、第1ローラー11の第n搬送速度Vnである第1搬送速度V1より速い、第(n+1)搬送速度V(n+1)である第2搬送速度V2は、第1所定搬送速度よりも速い第2所定搬送速度の一例である。
第1ローラー11の下流に第2ローラー12がある場合、第1ローラー11の回転速度が速くなるように変更した場合、シートSに弛みが生じてしまう可能性がある。しかしながら、下流側の第2ローラー12における媒体の搬送速度を、第1ローラー11より速くすることで、弛みを抑制できる。
【0096】
上述の媒体搬送装置4は、第1ローラー11と第1ローラー11の回転軸との間にワンウェイクラッチが設けられる。
下流側の第2ローラー12がある場合、上流側の第1ローラー11にワンウェイクラッチを設けることで、下流側の第2ローラー12による搬送速度が速い場合でも、上流側の第1ローラー11が従動回転することで搬送負荷を抑制できる。
【0097】
上述の媒体搬送装置4は、搬送方向Fにおいて、第2ローラー12よりも下流に位置し、シートSを搬送する第3ローラー13をさらに備え、制御部113は、シートSの搬送方向Fにおける先端STが第2ローラー12から第3ローラー13に搬送され、シートSの搬送方向Fにおける後端SBが第1ローラー11よりも搬送方向Fにおける下流に位置するときに、シートSの搬送速度を第2所定搬送速度の一例である第2搬送速度V2から第1所定搬送速度の一例である第1搬送速度V1に変更する。
すなわち、制御部113は、第nローラーn~第(n+2)ローラー(n+2)である第1ローラー11~第3ローラー13において、シートSを挟んだ状態で最も下流となるローラーでシートSを搬送するときは、シートSの搬送速度を、一旦、第1搬送速度V1より速い第2搬送速度V2とした後、第1搬送速度V1とする。
搬送速度が速くなると、搬送精度の低下、記録の精度低下などの問題が生じるおそれあるが、第2ローラー12で搬送している途中で、シートSの搬送速度を元に戻すことで、問題の発生を抑制することができる。
【0098】
上述の媒体搬送装置4は、第1ローラー11を駆動する第1駆動源をさらに備え、制御部113は、第1駆動源の駆動を制御することで、第1ローラー11の回転速度を変更する。
すなわち、第n駆動源である第nモーターMnは第nローラーnのみに対応しており、制御部113は、第nローラーnを独立して駆動することができる。
【0099】
上述の媒体搬送装置4は、第1ローラー11を駆動する第1駆動源と、第2ローラー12を駆動する第2駆動源と、さらに備え、制御部113は、第1駆動源の駆動を制御することで、第1ローラー11の回転速度を変更し、第2駆動源の駆動を制御することで、第2ローラー12の回転速度を変更する。
【0100】
記録装置1は、上述の媒体搬送装置4と、この媒体搬送装置4で搬送されるシートSに記録を行うヘッド110と、を備える。
記録システム10は、上述の媒体搬送装置4と、この媒体搬送装置4で搬送されるシートSに記録を行うヘッド110と、この媒体搬送装置4で搬送されるシートSであって、ヘッド110によって記録されたシートSに後処理を行う後処理装置3と、を備える。
【0101】
上述の媒体搬送装置4における制御方法であって、シートSを第1搬送速度V1で搬送するために第1ローラー11を第1回転速度R1で回転させるとき、第1上流センサーD1aがシートSを検出してから、第1下流センサーD1bがシートSを検出するまでの時間である経過時間が、所定時間よりも長い場合、第1ローラー11の回転速度を第1回転速度R1よりも速い第2回転速度R2に変更する。
【0102】
上述の制御方法であって、媒体搬送装置4は、搬送方向Fにおいて、第2ローラー12よりも下流に位置し、シートSを搬送する第3ローラー13をさらに備え、シートSの搬送方向Fにおける先端STが第2ローラー12から第3ローラー13に搬送され、シートSの搬送方向Fにおける後端SBが第1ローラー11よりも搬送方向Fにおける下流に位置するときに、シートSの搬送速度を第2搬送速度V2から第1搬送速度V1に変更する。
【0103】
以上、これら実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない限り、変更、置換、削除等されてもよい。
【0104】
記録装置1は、スキャナー、ADF(Automatic Document Feeder)を備えていてもよい。記録装置1や中間搬送装置2は、シートSのスイッチバック経路を備えていてもよい。
媒体搬送装置4が、記録装置1に設けられる構成として説明したが、媒体搬送装置4が、中間搬送装置2に設けられていても良く、後処理装置3に設けられていても良い。また、媒体搬送装置4が、記録システムを構成する、記録装置1、中間搬送装置2、及び後処理装置3のうち、複数の装置にまたがって設けられていても良い。
【符号の説明】
【0105】
1…記録装置、Vn1…第1所定搬送速度、Rn1…第1回転速度、1a…第1駆動ローラー、1b…第1従動ローラー、2…中間搬送装置、Vn2…第2所定搬送速度、Rn2…第2回転速度、2a…第2駆動ローラー、2b…第2従動ローラー、3…後処理装置、4…媒体搬送装置、10…記録システム、11…第1搬送ローラー対、12…第2搬送ローラー対、13…第3搬送ローラー対、110…ヘッド、113…制御部、114…表示部、310…後処理部、CR1…第1クラッチ、CR2…第2クラッチ、D1…第1センサー、D1a…第1上流センサー、D1b…第1下流センサー、D2…第2センサー、F…搬送方向、M1…第1モーター、M2…第2モーター、R1…第1回転速度、R2…第2回転速度、V1…第1搬送速度、V2…第2搬送速度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11