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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158151
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】緩衝材及び緩衝材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 1/425 20120101AFI20241031BHJP
   D04H 1/732 20120101ALI20241031BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D04H1/425
D04H1/732
B27N3/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073110
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】瀧澤 順
(72)【発明者】
【氏名】藤田 徹司
(72)【発明者】
【氏名】中村 友亮
【テーマコード(参考)】
2B260
4L047
【Fターム(参考)】
2B260AA20
2B260BA19
2B260BA26
2B260CA10
2B260CB10
2B260DA11
2B260DA13
2B260DA18
2B260DC05
2B260DC09
2B260EA05
2B260EB12
2B260EB13
2B260EC01
4L047AA08
4L047AB02
4L047AB06
4L047BA12
4L047BC01
(57)【要約】
【課題】吸湿による緩衝性能の低下を抑制することが可能な緩衝材及び緩衝材の製造方法を提供する。
【解決手段】緩衝材は、セルロース繊維と、セルロース繊維を結着させる結合材料とを含み、結合材料は、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩を含む。また、緩衝材の製造方法は、セルロース繊維を含む原料を乾式で解繊する解繊工程と、解繊工程で解繊されたセルロース繊維と結合材料とを空気中で混合し、混合物を生成する混合工程と、混合物を加熱することにより緩衝材を成形する成形工程と、を備え、結合材料には、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩が含まれることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース繊維と、前記セルロース繊維を結着させる結合材料とを含む緩衝材であって、
前記結合材料は、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩を含むことを特徴とする緩衝材。
【請求項2】
前記ステアリン酸金属塩は、ステアリン酸亜鉛である、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項3】
前記セルロース繊維及び前記結合材料の合計質量に対する前記結合材料の質量の割合は、20質量%以上50質量%以下である、請求項1に記載の緩衝材。
【請求項4】
前記セルロース繊維及び前記結合材料の合計質量に対する前記ステアリン酸金属塩の質量の割合は、10質量%以上25質量%以下である、請求項3に記載の緩衝材。
【請求項5】
セルロース繊維を含む原料を乾式で解繊する解繊工程と、
前記解繊工程で解繊された前記セルロース繊維と結合材料とを空気中で混合し、混合物を生成する混合工程と、
前記混合物を加熱することにより緩衝材を成形する成形工程と、を備え、
前記結合材料には、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩が含まれることを特徴とする緩衝材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材及び緩衝材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、緩衝材等に利用可能な古紙ボートが提案されている。この古紙ボードは、古紙を解繊して得られる古紙パルプ繊維と、熱可塑性樹脂の繊維とによって生成される。具体的には、古紙パルプ繊維と熱可塑性樹脂の繊維とが乾式で混合され、混合により得られる繊維集合体から乾式でウェブが形成される。そして、このウェブが熱可塑性樹脂の融点以上に加熱されつつ圧着成型されることにより、古紙パルプ繊維同士が結合し、古紙ボードが生成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-220709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような古紙ボードからなる緩衝材は、輸送時等に高湿環境下に配置された場合に、空気中の水分を吸収して軟化するため、緩衝性能が低下してしまうという問題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
緩衝材は、セルロース繊維と、前記セルロース繊維を結着させる結合材料とを含む緩衝材であって、前記結合材料は、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩を含む。
【0006】
緩衝材の製造方法は、セルロース繊維を含む原料を乾式で解繊する解繊工程と、前記解繊工程で解繊された前記セルロース繊維と結合材料とを空気中で混合し、混合物を生成する混合工程と、前記混合物を加熱することにより緩衝材を成形する成形工程と、を備え、前記結合材料には、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】緩衝材を製造することができる製造装置の一例を模式的に示す図。
図2】緩衝材の製造工程を示すフローチャート。
図3】緩衝材に加わる応力と、緩衝材に生じる歪みとの関係の一例を示すグラフ。
図4】緩衝係数と歪みとの関係の一例を示すグラフ。
図5】結合材料の配合率と、歪みが0.2となるときの応力との関係を示すグラフ。
図6】結合材料の配合率と、最小緩衝係数との関係を示すグラフ。
図7】ステアリン酸金属塩の配合率と、歪みが0.2となるときの応力との関係を示すグラフ。
図8】ステアリン酸金属塩の配合率と、最小緩衝係数との関係を示すグラフ。
図9】ステアリン酸金属塩の配合率と、撥水性との関係を示す表。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態の緩衝材及び緩衝材の製造方法について詳細に説明する。
本実施形態の緩衝材及び緩衝材の製造方法は、以下に説明する内容に限定されず、要旨を変更しない範囲において種々の変更が可能である。
【0009】
[1]緩衝材
まず、緩衝材について説明する。
本実施形態の緩衝材は、複数本のセルロース繊維と、セルロース繊維同士を結着させる結合材料とを含んでいる。
【0010】
[1-1]セルロース繊維
セルロース繊維は、植物由来で豊富な天然素材であり、繊維としてセルロース繊維を用いることにより、環境問題や埋蔵資源の節約等に好適に対応することができる。また、緩衝材にセルロース繊維を用いることは、緩衝材の安定供給、コスト低減等の観点からも好ましい。また、セルロース繊維は、各種繊維の中でも、理論上の強度が特に高いものであり、緩衝材の強度の向上の観点からも有利である。
【0011】
セルロース繊維は、通常、主としてセルロースで構成されたものであるが、セルロース以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、ヘミセルロース、リグニン等が挙げられる。
【0012】
また、セルロース繊維中におけるセルロースの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。
【0013】
また、セルロース繊維としては、例えば、漂白等の処理が施されたものを用いてもよい。また、セルロース繊維は、例えば、紫外線照射処理、オゾン処理、プラズマ処理等の処理が施されたものであってもよい。
【0014】
セルロース繊維としては、動物セルロース繊維、植物セルロース繊維等の天然セルロース繊維のほか、有機セルロース繊維、無機セルロース繊維、有機無機複合セルロース繊維等の化学セルロース繊維を用いてもよい。より詳しくは、セルロース繊維としては、セルロース、綿、大麻、ケナフ、亜麻、ラミー、黄麻、マニラ麻、サイザル麻、針葉樹、広葉樹等からなるセルロース繊維が挙げられ、これらは単独で用いられてもよいし、適宜混合して用いられてもよいし、精製等を行った再生セルロース繊維として用いられてもよい。また、セルロース繊維は、各種の表面処理が施されていてもよい。
【0015】
セルロース繊維の平均長さは、特に限定されないが、長さ-長さ加重平均セルロース繊維長として、10μm以上50mm以下であることが好ましく、20μm以上5.0mm以下であることがより好ましく、30μm以上3.0mm以下であることがさらに好ましい。
【0016】
これにより、緩衝材の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材の緩衝性能をより優れたものとすることができる。
【0017】
本実施形態の緩衝材に含まれるセルロース繊維は、独立した1本のセルロース繊維としたときに、その平均太さが、1.0μm以上1000μm以下であることが好ましく、2.0μm以上100.0μm以下であることがより好ましい。
【0018】
これにより、緩衝材の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材の緩衝性能をより優れたものとすることができる。また、緩衝材の表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0019】
なお、セルロース繊維の断面が円でない場合には、この断面の面積と等しい面積を有する円の直径を当該セルロース繊維の太さとして取り扱うものとする。
【0020】
セルロース繊維の平均アスペクト比、即ち平均太さに対する平均長さは、特に限定されないが、10以上1000以下であることが好ましく、15以上500以下であることがより好ましい。
【0021】
これにより、緩衝材の形状の安定性、強度等をより優れたものとすることができる。また、緩衝材の緩衝性能をより優れたものとすることができる。また、緩衝材の表面に不本意な凹凸が生じることをより効果的に防止することができる。
【0022】
本明細書において、セルロース繊維というときには、1本のセルロース繊維のことを指す場合と、複数本のセルロース繊維の集合体のことを指す場合とがある。また、セルロース繊維は、被解繊物を解繊処理することにより繊維状に解きほぐされたセルロース繊維、即ち解繊物であってもよい。ここで被解繊物としては、例えば、パルプシート、紙、古紙、ティッシュペーパー、キッチンペーパー、クリーナー、フィルター、液体吸収材、吸音体、緩衝材、マット、段ボール等の、セルロース繊維が絡み合いまたは結着されたもの等が挙げられる。
【0023】
[1-2]結合材料
本実施形態の結合材料は、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩を含む。
このような構成によれば、ステアリン酸金属塩が有する疎水性により、緩衝材の吸湿による緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0024】
結合材料は、セルロース繊維とセルロース繊維とを結着させる機能以外の機能を有してもよい。例えば、結合材料は、後述する着色剤等、セルロース繊維以外の成分が緩衝材から脱落することを抑制する機能を有してもよい。
【0025】
セルロース繊維及び結合材料の合計質量に対する結合材料の質量の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
このような構成によれば、良好な緩衝性能を有する緩衝材を得ることができる。なお、セルロース繊維及び結合材料の合計質量とは、緩衝材の質量から、後述するその他の成分の質量を除いた質量に相当する。
【0026】
熱可塑性澱粉は、澱粉にデキストリン等の可塑剤を混合した混合物である。
澱粉は、複数のα-グルコース分子がグリコシド結合によって重合した高分子材料である。澱粉は、直鎖状であってもよいし、分岐を含んでもよい。
【0027】
澱粉としては、例えば、各種植物由来のものを用いることができる。澱粉の原料としては、トウモロコシ、小麦、米等の穀類、ソラマメ、緑豆、小豆等の豆類、ジャガイモ、サツマイモ、タピオカ等のイモ類、カタクリ、ワラビ、葛等の野草類、サゴヤシ等のヤシ類が挙げられる。
【0028】
また、澱粉としては、例えば、加工澱粉を用いてもよい。加工澱粉としては、アセチル化アジピン酸架橋澱粉、アセチル化澱粉、酸化澱粉、オクテニルコハク酸澱粉ナトリウム、ヒドロキシプロピル澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸化澱粉、リン酸物エステル化リン酸架橋澱粉、尿素リン酸化エステル化澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、高アミロースコーンスターチ等が挙げられる。
【0029】
ステアリン酸金属塩は、熱可塑性澱粉に混合される。ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0030】
ステアリン酸金属塩は、これらのうち、ステアリン酸亜鉛であることが好ましい。
このような構成によれば、高い緩衝性能を有する緩衝材を低コストで実現することができる。
【0031】
また、本実施形態の結合材料は、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩以外の結合材料を含んでいてもよい。例えば、結合材料には、各種の合成樹脂からなる結合材料が含まれていてもよい。
【0032】
合成樹脂としては、例えば、AS樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等が挙げられる。
【0033】
合成樹脂のうち、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリヒドロキシブタン酸等の生分解性樹脂を用いてもよい。
生分解性樹脂を用いることにより、緩衝材の環境適合性をより優れたものとすることができる。
また、樹脂は、例えば、共重合体化や変性がなされていてもよい。
【0034】
緩衝材が熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩以外の結合材料を含む場合、これらの結合材料の緩衝材中における含有率は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0035】
セルロース繊維及び結合材料の合計質量に対するステアリン酸金属塩の質量の割合は、10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
このような構成によれば、良好な緩衝性能を有する緩衝材を得ることができるとともに、吸湿による緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0036】
[1-3]その他の成分
本実施形態の緩衝材は、セルロース繊維と、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩からなる結合材料とを含んでいればよいが、さらにこれら以外の成分を含んでいてもよい。以下、このような成分を「その他の成分」とも言う。
【0037】
その他の成分としては、例えば、難燃剤、着色剤、凝集抑制剤、界面活性剤、防黴剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0038】
緩衝材中におけるその他の成分の含有率は、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0039】
[1-4]緩衝材の性状等
本実施形態の緩衝材は、いかなる大きさ、形状のものであってもよく、例えば、シート状をなすものであってもよいし、三次元形状を有するものであってよい。
【0040】
また、本実施形態の緩衝材は、例えば、予め用意しておいたシート状の緩衝材に対して、必要時に、成形型を用いた成型、切断、折り曲げ、切り込み、組み立て等の処理を施すことにより、所定の三次元形状に加工されたものであってもよい。
【0041】
上記のように、緩衝材が、三次元形状を有するものであり、シート状の緩衝材から製造されたものである場合、三次元形状を有する緩衝材は、複数枚のシート状の緩衝材を重ね合わせて製造されたものであってもよい。
【0042】
[2]緩衝材の製造方法
次に、緩衝材の製造方法について説明する。
【0043】
[2-1]緩衝材製造用組成物
まず、本実施形態の緩衝材の製造方法で用いる緩衝材製造用組成物について説明する。
【0044】
[2-1-1]セルロース繊維
本実施形態の緩衝材製造用組成物は、複数本のセルロース繊維を含んでいる。
緩衝材製造用組成物中に含まれるセルロース繊維としては、上記[1-1]で説明したものを用いることができる。
これにより、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0045】
[2-1-2]結合材料
本実施形態の緩衝材製造用組成物は、結合材料を含んでいる。
緩衝材製造用組成物中に含まれる結合材料としては、上記[1-2]で説明したものを用いることができる。
これにより、前述した効果と同様の効果が得られる。
【0046】
緩衝材製造用組成物中において結合材料が粒子として含まれる場合、結合材料は、その体積平均粒子径が、セルロース繊維の太さよりも小さいものであることが好ましい。
これにより、結合材料とセルロース繊維とをより均一に混合しやすくなり、緩衝材中における不本意な組成のばらつきの発生をより効果的に防止することができる。
【0047】
結合材料の体積平均粒子径は、0.8μm以上100μm以下であることが好ましく、1.5μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0048】
粒子状の結合材料は、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、単軸押出機、多軸押出機、二本ロール、三本ロール、連続式ニーダー、連続式二本ロール等を用いて混練した後、適宜の方法でペレタイズし、粉砕することにより得ることができる。結合材料には、様々な大きさの粒子が含まれている場合もあり、公知の分級装置を用いて分級してもよい。また、結合材料の粒子の外形形状は、特に限定されず、球状、円盤状、繊維状、不定形等の形状であってもよい。
【0049】
本実施形態において、緩衝材製造用組成物を構成する全固形分に含まれるセルロース繊維及び結合材料の合計質量に対する結合材料の質量の割合は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
この構成によれば、良好な緩衝性能を有する緩衝材を得ることができる。なお、緩衝材製造用組成物を構成する全固形分に含まれるセルロース繊維及び結合材料の合計質量とは、緩衝材製造用組成物を構成する全固形分の質量から、後述するその他の成分を構成する全固形分の質量を除いた質量に相当する。
【0050】
また、本実施形態において、緩衝材製造用組成物を構成する全固形分に含まれるセルロース繊維及び結合材料の合計質量に対するステアリン酸金属塩の質量の割合は、10質量%以上25質量%以下であることが好ましい。
この構成によれば、良好な緩衝性能を有する緩衝材を得ることができるとともに、吸湿による緩衝性能の低下を抑制することができる。
【0051】
緩衝材製造用組成物中において、結合材料は、いかなる状態で含まれていてもよく、例えば、他の成分に溶解した状態等で含まれていてもよいが、分散した状態、特に、粉末として分散した状態で含まれていることが好ましい。
【0052】
これにより、製造される緩衝材中に空隙を好適に形成することができ、緩衝材の緩衝性能をより確実に優れたものとすることができる。
【0053】
[2-1-3]液体成分
本実施形態の緩衝材製造用組成物は、例えば、液体成分を含んでいてもよい。
【0054】
液体成分を含むことにより、例えば、緩衝材製造用組成物中において、セルロース繊維が好適にほぐれた状態としたり、緩衝材製造用組成物中における各成分の不本意な偏在等を好適に防止したりすることができる。
【0055】
緩衝材製造用組成物が液体成分を含むものである場合、結合材料は、液体成分に溶解した状態で含まれていてもよいし、液体成分に分散した状態で含まれていてもよい。
【0056】
液体成分としては、例えば、水や、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒等の各種有機溶媒等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
緩衝材製造用組成物が液体成分を含むものである場合、緩衝材製造用組成物中における前記液体成分の含有率は、例えば、10質量%以上70質量%以下とすることができる。
【0058】
[2-1-4]その他の成分
本実施形態の緩衝材製造用組成物は、上記以外の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、上記[1-3]で説明したものを用いることができる。
【0059】
緩衝材製造用組成物を構成する全固形分中に占めるその他の成分の割合は、7.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以下であることがより好ましく、3.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0060】
[2-1-5]緩衝材製造用組成物の性状
緩衝材製造用組成物は、例えば、粉体状、分散液状、ウェブ状等、いかなる形状を有するものであってもよい。
【0061】
[2-1-6]緩衝材製造用組成物の調製
緩衝材製造用組成物は、例えば、緩衝材製造用組成物の構成成分を混合することにより調製することができる。
【0062】
より具体的には、例えば、解繊されたセルロース繊維と、粉末状の熱可塑性澱粉と、粉末状のステアリン酸金属塩とを撹拌混合することにより、緩衝材製造用組成物を調製することができる。このような場合、例えば、後に詳述するような装置を用いて好適に緩衝材製造用組成物を調製することができる。
【0063】
[2-2]製造装置
次に、緩衝材の製造に用いることができる製造装置について説明する。
【0064】
図1は、緩衝材を製造することができる製造装置の一例を模式的に示す図である。
図1に示すように、製造装置100は、供給部10と、粗砕部12と、解繊部20と、選別部40と、第1ウェブ形成部45と、回転体49と、混合部50と、堆積部60と、第2ウェブ形成部70と、緩衝材形成部80とを有している。
【0065】
供給部10は、粗砕部12にセルロース繊維を含む原料を供給する。供給部10は、例えば、粗砕部12に原料を連続的に投入するための自動投入部である。
【0066】
粗砕部12は、供給部10によって供給された原料を、空気等の気中で裁断して細片にする。細片の形状や大きさは、例えば、数cm角の細片である。図示の例では、粗砕部12は、粗砕刃14を有し、粗砕刃14によって、投入された原料を裁断することができる。粗砕部12としては、例えば、シュレッダーが用いられる。粗砕部12によって裁断された原料は、ホッパー1で受けられ、その後、管2を介して、解繊部20に搬送される。
【0067】
解繊部20は、粗砕部12によって裁断された原料、即ちセルロース繊維を含む原料を解繊する。ここで、「解繊する」とは、複数本のセルロース繊維が結着されてなる原料、即ち被解繊物を、セルロース繊維1本1本に解きほぐすことをいう。解繊部20は、原料に付着した樹脂粒やインク、トナー、填料、にじみ防止剤等の物質を、セルロース繊維から分離させる機能も有する。
【0068】
解繊部20を通過したものを「解繊物」という。「解繊物」は、解きほぐされたセルロース繊維の他に、セルロース繊維を解きほぐす際にセルロース繊維から分離した樹脂粒や、インク、トナー、填料等の色剤や、にじみ防止材、紙力増強剤等の添加剤を含んでいる場合もある。セルロース繊維から分離した樹脂粒としては、例えば、複数本のセルロース繊維同士を結着させるための樹脂を含む粒子が挙げられる。
【0069】
解繊部20は、乾式で解繊を行う。水等の液体中でスラリー状に溶解させる湿式ではなく、空気等の気中において解繊等の処理を行う方式を乾式と称する。解繊部20として、本実施形態では、インペラーミルが用いられる。解繊部20は、原料を吸引し、解繊物を排出するような気流を発生させる機能を有している。これにより、解繊部20は、自ら発生する気流によって、導入口22から原料を気流とともに吸引し、解繊処理して、解繊物を排出口24へと搬送することができる。解繊部20を通過した解繊物は、管3を介して、選別部40に移送される。なお、解繊部20から選別部40に解繊物を搬送させるための気流としては、解繊部20が発生させる気流を利用してもよいし、ブロアー等の気流発生装置を設け、その気流を利用してもよい。
【0070】
選別部40は、解繊部20により解繊された解繊物を導入口42から導入し、セルロース繊維の長さによって選別する。選別部40は、ドラム部41と、ドラム部41を収容するハウジング部43とを有している。ドラム部41は、網を有し、網の目開きの大きさより小さく網を通過するセルロース繊維または粒子である第1選別物と、網の目開きの大きさより大きく網を通過しないセルロース繊維や未解繊片やダマである第2選別物とを分けることができる。第1選別物は、例えば、後述する管7を介して、混合部50に移送される。第2選別物は、排出口44から管8を介して、解繊部20に戻される。ドラム部41は、具体的には、網によって形成された円筒状の篩であり、モーターによって回転駆動される。ドラム部41の網としては、例えば、金網、切れ目が入った金属板を引き延ばしたエキスパンドメタル、金属板にプレス機等で穴を形成したパンチングメタルが用いられる。
【0071】
第1ウェブ形成部45は、選別部40を通過した第1選別物を、混合部50に搬送する。第1ウェブ形成部45は、メッシュベルト46と、複数の張架ローラー47と、吸引部48とを含む。
【0072】
吸引部48は、メッシュベルト46を挟んで選別部40の下側に配置され、選別部40にてドラム部41の網を通過して空気中に分散された第1選別物をメッシュベルト46上に吸引する。第1選別物は、移動するメッシュベルト46上に堆積し、ウェブVを形成する。メッシュベルト46、張架ローラー47及び吸引部48の基本的な構成は、後述する第2ウェブ形成部70のメッシュベルト72、張架ローラー74及びサクション機構76と同様である。
【0073】
ウェブVは、選別部40及び第1ウェブ形成部45を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態に形成される。メッシュベルト46に堆積されたウェブVは、管7へ投入され、混合部50へと搬送される。
【0074】
回転体49は、管7の入り口の近傍に配置され、混合部50に搬送される前のウェブVを切断する。図示の例では、回転体49は、基部49aと、基部49aから放射状に突出する複数の突部49bとを有している。突部49bは、例えば、板状の形状を有している。図示の例では、突部49bは4つ設けられ、4つの突部49bが等間隔に設けられている。回転体49は、基部49aを回転軸として方向Rに回転することにより、突部49bによってウェブVを切断する。回転体49によってウェブVを切断することにより、例えば、堆積部60に供給される単位時間当たりの解繊物の量の変動を小さくすることができる。
【0075】
回転体49は、第1ウェブ形成部45の近傍に設けられている。図示の例では、回転体49は、複数の張架ローラー47のうち、第1ウェブ形成部45におけるウェブVの搬送経路の最も下流側に位置する張架ローラー47の横に設けられている。回転体49は、突部49bがウェブVと接触可能な位置であって、ウェブVが堆積されるメッシュベルト46と接触しない位置に設けられている。突部49bとメッシュベルト46との間の最短距離は、例えば、0.05mm以上0.5mm以下である。
【0076】
混合部50は、選別部40を通過した第1選別物、言い換えると、第1ウェブ形成部45により搬送されたウェブVと、結合材料を含む添加物とを空気中で混合する。これにより、セルロース繊維と結合材料とが混合された混合物が生成される。混合部50は、添加物を供給する添加物供給部52と、第1選別物と添加物とを搬送する管54と、ブロアー56とを有している。管54は、管7と連続しており、ウェブVとして管7に投入された第1選別物は、管7を経て管54に搬送される。また、図示の例では、添加物は、添加物供給部52からホッパー9を介して管54に供給される。
【0077】
混合部50は、ブロアー56によって気流を発生させることにより、管54内において、第1選別物と添加物とを混合させながら、搬送することができる。なお、第1選別物と添加物とを混合させる機構は、特に限定されず、高速回転する羽根により攪拌するものであってもよいし、V型ミキサーのように容器の回転を利用するものであってもよい。
【0078】
添加物供給部52としては、図1に示すようなスクリューフィーダーや、図示しないディスクフィーダー等が用いられる。添加物供給部52から供給される添加物は、上述の結合材料を含む。結合材料が供給された時点では、複数のセルロース繊維は結着されていない。結合材料は、緩衝材形成部80を通過する際に一部が溶融して、緩衝材WSの表面領域の複数のセルロース繊維を結着させる。
【0079】
なお、添加物供給部52から供給される添加物には、結合材料の他、製造される緩衝材WSの種類に応じて、セルロース繊維を着色するための着色剤や、セルロース繊維の凝集や結合材料の凝集を抑制するための凝集抑制剤、セルロース繊維等を燃えにくくするための難燃剤が含まれていてもよい。混合部50を通過した混合物、即ち第1選別物と添加物との混合物である緩衝材製造用組成物は、管54を介して、堆積部60に移送される。
【0080】
堆積部60は、混合部50から搬送された混合物を導入口62から導入し、絡み合ったセルロース繊維の解繊物をほぐして、空気中で分散させながら降らせる。これにより、堆積部60は、第2ウェブ形成部70に、混合物を均一性よく堆積させることができる。
【0081】
堆積部60は、ドラム部61と、ドラム部61を収容するハウジング部63とを有している。ドラム部61としては、回転する円筒状の篩が用いられる。つまり、ドラム部61は、網を有し、混合部50を通過した混合物のうち、網の目開きの大きさより小さいセルロース繊維または粒子を降らせる。ドラム部61の構成は、例えば、ドラム部41の構成と同じである。
【0082】
なお、ドラム部61の「篩」は、特定の対象物を選別する機能を有していなくてもよい。つまり、ドラム部61として用いられる「篩」とは、網を備えたもの、という意味であり、ドラム部61は、ドラム部61に導入された混合物の全てを降らせてもよい。
【0083】
第2ウェブ形成部70は、堆積部60を通過した通過物を堆積して、緩衝材WSとなる堆積物であるウェブWを形成する。この際、図1中に示さない成形型をメッシュベルト72に乗せて受け皿のようにして、成形型内にウェブWを形成することができる。第2ウェブ形成部70は、例えば、メッシュベルト72と、複数の張架ローラー74と、サクション機構76とを有している。
【0084】
第2ウェブ形成部70は、メッシュベルト72を移動させながら、堆積部60にてドラム部61の網を通過した通過物をメッシュベルト72上の成形型に堆積させる。メッシュベルト72及び成形型は、張架ローラー74によって張架され、通過物を通しにくく空気を通す構成となっている。メッシュベルト72は、張架ローラー74が自転することによって移動する。メッシュベルト72が連続的に移動しながら、堆積部60を通過した通過物が連続的に降り積もることにより、メッシュベルト72上の成形型にウェブWが形成される。メッシュベルト72及び成形型は、例えば、金属、樹脂、布、不織布等によって形成されるものである。
【0085】
サクション機構76は、メッシュベルト72を挟んで堆積部60の下側に設けられている。サクション機構76は、下方に向く気流、即ち堆積部60からメッシュベルト72に向く気流を発生させることができる。このサクション機構76によって、堆積部60により空気中に分散された混合物をメッシュベルト72上に吸引することができる。これにより、堆積部60からの排出速度を大きくすることができる。さらに、サクション機構76によって、混合物の落下経路にダウンフローを形成することができ、落下中に解繊物や添加物が絡み合うことを抑制できる。
【0086】
以上のように、堆積部60及び第2ウェブ形成部70で行われるウェブ形成工程を経ることにより、空気を多く含み柔らかくふくらんだ状態のウェブWが形成される。メッシュベルト72上の成形型に堆積されたウェブWは、緩衝材形成部80へと搬送される。
【0087】
緩衝材形成部80は、メッシュベルト72上の成形型に堆積したウェブWを加熱して緩衝材WSを成形する。緩衝材形成部80では、第2ウェブ形成部70において混ぜ合わされた解繊物及び添加物の混合物の堆積物であるウェブWを加熱することにより、結合材料を軟化・溶融させ、これにより複数本のセルロース繊維を結着させる。
【0088】
緩衝材形成部80は、ウェブWを加熱する加熱部84を備えている。加熱部84としては、例えば、ヒートプレス、加熱ローラー等が用いられるが、以下は加熱ローラーを用いた例で説明する。加熱部84における加熱ローラー86の数は、特に限定されない。図示の例では、加熱部84は、一対の加熱ローラー86を備えている。加熱部84を加熱ローラー86として構成することにより、ウェブWを連続的に搬送しながら緩衝材WSを成形することができる。
【0089】
一対の加熱ローラー86は、例えば、ウェブWの表裏両側に、それぞれの回転軸が平行になるように配置される。そして、表裏両面でウェブW接触し、ウェブWを挟んで搬送しつつウェブWを加熱する。
【0090】
本実施形態の製造装置100は、必要に応じて、切断部90を有してもよい。図示の例では、加熱部84の下流側に切断部90が設けられている。切断部90は、緩衝材形成部80によって成形された緩衝材WSを含む成形型を切断する。図示の例では、切断部90は、緩衝材WSの搬送方向と交差する方向に緩衝材WSの成形型を切断する第1切断部92と、搬送方向に平行な方向に緩衝材WSを切断する第2切断部94とを有している。第2切断部94は、例えば、第1切断部92を通過した緩衝材WSを含む成形型を切断する。第2切断部94によって切断がなされた緩衝材WSは、排出部96に排出される。
【0091】
その後、緩衝材WSが成形された成形型から緩衝材WSだけを型抜きすることにより、三次元成形体としての緩衝材WSが得られる。
【0092】
[2-3]製造工程
図2は、本実施形態の緩衝材の製造工程を示すフローチャートである。
本実施形態の緩衝材は、図1に示した製造装置により、図2に示す工程を経て製造される。具体的には、本実施形態の緩衝材の製造方法は、解繊工程S1と、混合工程S2と、成形工程S3とを備える。
【0093】
解繊工程S1は、セルロース繊維を含む原料を解繊部20により乾式で解繊する工程である。
混合工程S2は、解繊工程S1で解繊されたセルロース繊維と結合材料とを混合部50により空気中で混合し、混合物を生成する工程である。ここで、セルロース繊維に混合される結合材料には、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩が含まれる。
成形工程S3は、緩衝材形成部80で混合物を加熱することにより、緩衝材を成形する工程である。この成形工程S3によって本実施形態の緩衝材が成形される。
【0094】
このような製造方法によれば、ステアリン酸金属塩が有する疎水性により、吸湿による緩衝性能の低下が抑制された緩衝材を製造することができる。
なお、本実施形態の緩衝材の製造装置及び製造工程は、上述した装置及び工程に限定されない。つまり、本実施形態の緩衝材は、上述した製造装置とは異なる装置によって製造されてもよいし、上述した製造工程とは異なる工程を経て製造されてもよい。
【0095】
[3]評価
以下に、本実施形態の緩衝材を用いて各種評価を行った結果について説明する。
【0096】
[3-1]基本特性
まず、緩衝材の基本特性として、応力-歪み曲線、及び緩衝係数-歪み曲線について説明する。
【0097】
[3-1-1]応力-歪み曲線
図3は、緩衝材に加わる応力と、緩衝材に生じる歪みとの関係の一例を示すグラフであり、横軸が歪みに対応し、縦軸が応力に対応する。
このグラフに示される応力-歪み曲線は、セルロース繊維、熱可塑性澱粉、及びステアリン酸金属塩からなる緩衝材のサンプルを厚さ方向に圧縮することによって得られたものである。つまり、このグラフは、自然状態での緩衝材の厚さに対する圧縮時の緩衝材の厚さの比率と、そのときに加えている応力との関係を示す。
【0098】
使用したサンプルは、セルロース繊維、熱可塑性澱粉、及びステアリン酸金属塩を、それぞれ70質量%、15質量%、15質量%含むものである。つまり、このサンプルは、セルロース繊維と結合材料との合計質量に対する結合材料の質量の割合が30質量%であり、セルロース繊維と結合材料との合計質量に対するステアリン酸金属塩の質量の割合が15質量%である。この評価では、ステアリン酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛が採用されている。
【0099】
図3に示すように、圧縮を開始してから比較的大きな傾きで応力が上昇した後、歪みが0.1に至る前に傾きは小さくなり、応力の上昇は緩やかになる。その後、歪みが0.3を超えてくると、徐々に応力の上昇量が大きくなり、歪みが0.7を超えると、曲線の傾きは急峻となる。
【0100】
緩衝材には、所定の歪みを生じさせるために要する応力が高いことが求められる。この応力が高いほど、荷重を受ける面積を小さくすることが可能となり、包装サイズを小さくすることができる。つまり、緩衝材を構成する各種成分やそれぞれの配合率は、この応力が高くなるように決定されることが好ましい。
【0101】
[3-1-2]緩衝係数-歪み曲線
図4は、緩衝係数と歪みとの関係の一例を示すグラフであり、横軸が歪みに対応し、縦軸が緩衝係数に対応する。
緩衝係数とは、緩衝材に応力が加わって変形した場合に、変形により吸収したエネルギーに対する応力の比である。緩衝係数は、緩衝効率を表す値であり、値が小さいほど緩衝効率が高い。緩衝係数-歪み曲線は、図3に示した応力と歪みの関係から導くことができる。
【0102】
図4に示すように、このグラフに示される緩衝係数-歪み曲線は、下に凸の曲線である。つまり、緩衝係数は、歪みの増大に伴って値が小さくなって最小値となった後、歪みの増大に伴って値が大きくなる。緩衝材の厚さを決定する際には、緩衝係数の最小値である最小緩衝係数を用いることで、最適な寸法を求めることができる。
【0103】
緩衝材には、最小緩衝係数が小さいことが求められる。最小緩衝係数が小さいほど、緩衝材の厚さを薄くすることが可能となり、包装サイズを小さくすることができる。つまり、緩衝材を構成する各種成分やそれぞれの配合率は、最小緩衝係数が小さくなるように決定されることが好ましい。
【0104】
[3-2]結合材料の配合率の決定
次に、結合材料の配合率を決定するために行った評価について説明する。
【0105】
[3-2-1]配合率と応力との関係
図5は、結合材料の配合率と、歪みが0.2となるときの応力との関係を示すグラフであり、横軸は、結合材料の配合率に対応し、縦軸は、歪みが0.2となるときの応力に対応する。
【0106】
このグラフは、結合材料の配合率を変化させた複数のサンプルを作成して、これらを圧縮することによって得られる応力と歪みの関係に基づいて生成されたグラフである。ここで、結合材料の配合率とは、セルロース繊維と、熱可塑性澱粉を含む結合材料との合計質量に対する結合材料の質量の割合である。この評価では、配合率が0質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%の7種類のサンプルを用いてグラフが作成された。つまり、図5のグラフには、配合率が0質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%の各サンプルの歪みが0.2となるときの応力がプロットされている。
【0107】
図5に示すように、結合材料の配合率が0質量%から増えるのに伴って応力は増大し、配合率が30質量%のときに最大となる。その後、応力は、配合率の増大に伴って減少するが、配合率が50質量%のときの応力は、配合率が10質量%のときの応力よりも大きい。このため、応力の観点では、結合材料の配合率は、20質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0108】
[3-2-2]配合率と最小緩衝係数との関係
図6は、結合材料の配合率と最小緩衝係数との関係を示すグラフであり、横軸は、結合材料の配合率に対応し、縦軸は、最小緩衝係数に対応する。
【0109】
このグラフは、図5のグラフの元になった応力と歪みの関係から導かれたものであり、図5と同様、配合率が0質量%、5質量%、10質量%、20質量%、30質量%、40質量%、50質量%のときの最小緩衝係数がプロットされている。
【0110】
図6に示すように、結合材料の配合率が0質量%から増えるのに伴って最小緩衝係数は減少し、配合率が10質量%のときに最小となる。その後、最小緩衝係数は、配合率の増加に伴って微増し、配合率が40質量%を超えると微減するが、配合率が40質量%のときの最小緩衝係数は、配合率が5質量%のときの最小緩衝係数よりも小さい。このため、最小緩衝係数の観点では、結合材料の配合率は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0111】
以上の結果を踏まえて、応力と最小緩衝係数の双方を考慮すると、結合材料の配合率は、20質量%以上50質量%以下であることが望ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより望ましい。
【0112】
[3-3]ステアリン酸金属塩の配合率の決定
次に、ステアリン酸金属塩の配合率を決定するために行った評価について説明する。
【0113】
[3-3-1]配合率と応力との関係
図7は、ステアリン酸金属塩の配合率と、歪みが0.2となるときの応力との関係を示すグラフであり、横軸は、ステアリン酸金属塩の配合率に対応し、縦軸は、歪みが0.2となるときの応力に対応する。
【0114】
このグラフは、ステアリン酸金属塩の配合率を変化させた複数のサンプルを作成して、これらを圧縮することによって得られる応力と歪みの関係に基づいて生成されたグラフである。ここで、ステアリン酸金属塩の配合率とは、セルロース繊維と、熱可塑性澱粉及びステアリン酸金属塩からなる結合材料との合計質量に対するステアリン酸金属塩の質量の割合である。この評価では、結合材料の配合率は、30質量%に固定されており、ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛が採用されている。そして、ステアリン酸金属塩の配合率が0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%の7種類のそれぞれについて、複数のサンプルを用いてグラフが作成された。つまり、図7のグラフには、配合率が0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%の各サンプルの歪みが0.2となるときの応力がプロットされている。
【0115】
図7に示すように、ステアリン酸金属塩の配合率が0質量%から増えるのに伴って応力は増大し、配合率が15質量%のときに最大となる。その後、応力は、配合率の増大に伴って減少する。このため、応力の観点では、ステアリン酸金属塩の配合率は、5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【0116】
[3-3-2]配合率と最小緩衝係数との関係
図8は、ステアリン酸金属塩の配合率と最小緩衝係数との関係を示すグラフであり、横軸は、ステアリン酸金属塩の配合率に対応し、縦軸は、最小緩衝係数に対応する。
【0117】
このグラフは、図7のグラフの元になった応力と歪みの関係から導かれたものであり、図7と同様、配合率が0質量%、5質量%、10質量%、15質量%、20質量%、25質量%、30質量%のときの最小緩衝係数がプロットされている。
【0118】
図8に示すように、ステアリン酸金属塩の配合率が0質量%から増えるのに伴って最小緩衝係数は減少し、配合率が20質量%のときに最小となる。その後、最小緩衝係数は、配合率の増加に伴って微増する。このため、最小緩衝係数の観点では、ステアリン酸金属塩の配合率は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
【0119】
[3-3-3]配合率と撥水性との関係
図9は、ステアリン酸金属塩の配合率と、撥水性との関係を示す表である。この評価では、撥水性の指標として、静止液体の自由表面の接触角が採用されている。ここで、接触角とは、緩衝材の表面に滴下された液滴の自由表面と、緩衝材の表面とのなす角度のうち、液滴の内部側の角度である。つまり、この接触角が大きいほど液滴は球体に近づき、撥水性が高いと言える。言い換えれば、接触角が大きいほど、緩衝材の吸湿が抑制され、吸湿による緩衝性能の低下が抑制される。この評価でも、結合材料の配合率は、30質量%に固定されており、ステアリン酸金属塩としては、ステアリン酸亜鉛が採用されている。
【0120】
図9には、ステアリン酸金属塩の配合率が異なる7種類のサンプルについて接触角の測定結果が示されている。図中、比較例は、ステアリン酸金属塩を含まない緩衝材、即ちステアリン酸金属塩の配合率が0質量%の緩衝材である。また、実施例1~6は、ステアリン酸金属塩を含む緩衝材であり、ステアリン酸金属塩の配合率がそれぞれ30質量%、25質量%、20質量%、15質量%、10質量%、5質量%の緩衝材である。
【0121】
図9に示すように、ステアリン酸金属塩を含む緩衝材は、ステアリン酸金属塩を含まない緩衝材に比べて接触角が大きい傾向にあり、撥水性が高い。特に、ステアリン酸金属塩の配合率が10質量%以上になると、ステアリン酸金属塩を含まない結合材料に比べて接触角に大きな差異が現れる。このため、撥水性の観点では、ステアリン酸金属塩の配合率は、10質量%以上30質量%以下であることが好ましい。
【0122】
以上の結果を踏まえて、応力、最小緩衝係数、及び撥水性のすべてを考慮すると、ステアリン酸金属塩の配合率は、10質量%以上25質量%以下であることが好ましく、15質量%以上20質量%以下であることがより好ましい。
【符号の説明】
【0123】
1…ホッパー、2,3,7,8…管、9…ホッパー、10…供給部、12…粗砕部、14…粗砕刃、20…解繊部、22…導入口、24…排出口、40…選別部、41…ドラム部、42…導入口、43…ハウジング部、44…排出口、45…第1ウェブ形成部、46…メッシュベルト、47…張架ローラー、48…吸引部、49…回転体、49a…基部、49b…突部、50…混合部、52…添加物供給部、54…管、56…ブロアー、60…堆積部、61…ドラム部、62…導入口、63…ハウジング部、70…第2ウェブ形成部、72…メッシュベルト、74…張架ローラー、76…サクション機構、80…緩衝材形成部、84…加熱部、86…加熱ローラー、90…切断部、92…第1切断部、94…第2切断部、100…製造装置、V,W…ウェブ、WS…緩衝材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9