(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024015816
(43)【公開日】2024-02-06
(54)【発明の名称】非水電解質二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/052 20100101AFI20240130BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240130BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20240130BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240130BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/449 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20240130BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240130BHJP
【FI】
H01M10/052
H01M4/62 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M50/417
H01M50/449
H01M50/489
H01M4/131
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022118132
(22)【出願日】2022-07-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 智哉
【テーマコード(参考)】
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H021BB07
5H021CC01
5H021CC04
5H021EE04
5H021HH03
5H021HH04
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029DJ04
5H029DJ08
5H029EJ04
5H029HJ02
5H029HJ05
5H029HJ07
5H029HJ08
5H050AA15
5H050BA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB08
5H050DA02
5H050DA10
5H050DA19
5H050EA08
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA07
5H050HA08
(57)【要約】
【課題】発熱時の温度上昇を緩やかにすることができる非水電解質二次電池を提供すること。
【解決手段】本発明に係る非水電解質二次電池は、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、セパレータは、ポリプロピレンを含む少なくとも一層のポリプロピレン層と、ポリエチレンを含む少なくとも一層のポリエチレン層と、を有し、ポリプロピレン層は、幹状フィブリルおよび枝状フィブリルを有し、ポリプロピレン層の表面において、幹状フィブリルの面積(A)と枝状フィブリルの面積(B)との合計に対する枝状フィブリルの面積(B)の面積比(B/(A+B))が30%以上50%以下であり、ポリプロピレン層の細孔径が、20nm以上50nm以下であり、ポリエチレン層の細孔径が、50nm以上90nm以下であり、正極は、導電助材を含み、導電助材は、粒度分布において、二つのピークを有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、
前記セパレータは、
ポリプロピレンを含む少なくとも一層のポリプロピレン層と、
ポリエチレンを含む少なくとも一層のポリエチレン層と、
を有し、
前記ポリプロピレン層は、幹状フィブリルおよび枝状フィブリルを有し、
前記ポリプロピレン層の表面において、前記幹状フィブリルの面積(A)と前記枝状フィブリルの面積(B)との合計に対する前記枝状フィブリルの面積(B)の面積比(B/(A+B))が30%以上50%以下であり、
前記ポリプロピレン層の細孔径が、20nm以上50nm以下であり、
前記ポリエチレン層の細孔径が、50nm以上90nm以下であり、
前記正極は、導電助材を含み、
前記導電助材は、粒度分布において、二つのピークを有する、
ことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
前記導電助材は、前記粒度分布において、0.03μm以上0.1μm以下の範囲と、2.0μm以上6.0μm以下の範囲にそれぞれピークを有する、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記ポリプロピレン層は、前記正極と前記ポリエチレン層との間に少なくとも一層設けられる、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記導電助材は、炭素系材料を用いてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記セパレータは、三つの層によって構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記正極は、正極活物質を有し、
前記正極活物質は、下式(1)に示す一般式で表される層状化合物を含む、
LiaNixCoyM11-x-yO2(ただし、0<a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.5、0<x+y<1)・・・(1)
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
ただし、M1は、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Mn、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、Cu、Ag、Ce、Pr、Ge、Bi、Ba、Er、La、Sm、Yb、Sb、Bi、SおよびZnから選ばれる少なくとも1種である。
【請求項7】
前記正極は、すべての正極活物質が、式(1)を満たす層状化合物からなる、
ことを特徴とする請求項6に記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
前記正極は、正極活物質を有し、
前記正極活物質の平均粒径が、10μm以上14μm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【請求項9】
前記正極は、前記導電助材を含む正極合剤が塗工されてなり、
前記正極の塗膜密度は、2.6g/cc以上3.0g/cc以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の非水電解質二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やノートパソコン、さらには電気自動車などの普及に伴い、蓄電デバイスに対する高容量化のニーズが高まってきている。その中でも、非水電解質二次電池は、作動電圧が高く、エネルギー密度の向上が期待できる。非水電解質二次電池は、正極、負極、電解液、セパレータで構成されている。このセパレータは、正極と負極とを電気的に絶縁する機能を有する。
【0003】
非水電解質二次電池では、高温下においてセパレータが収縮あるいは溶融することで内部短絡が発生し、発火に至るおそれがある。そのため、セパレータの構成として、単層ではなく、二層以上のものを使用したり、シャットダウン温度とメルトダウン温度との差を大きくしたりすることで、セパレータを含む非水電解質二次電池の安全性を向上する試みがなされている。しかしながら、シャットダウン温度とメルトダウン温度との差が大き過ぎる場合、セパレータの工程性が低下する。また、セパレータのメルトダウン温度を制御する技術として、メルトダウン温度を高めるために、架橋剤を添加した架橋ポリオレフィン多孔性膜を用いる技術(例えば、特許文献1を参照)や、セパレータのシャットダウン温度を特定の数値範囲に制御する技術(例えば、特許文献2を参照)によって、電気化学素子の抵抗値を下げる試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2020-536357号公報
【特許文献2】特表2020-527846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように架橋ポリオレフィン多孔性膜を用いる場合、抵抗値が上昇するため、電気化学素子の性能が低下する。また、特許文献2は、安全性の検証としては、釘刺し試験を実施しているだけであり、加熱試験では同様の結果が出るとは限らない。
【0006】
通常、例えばリチウムイオン電池は、複数の電池を並べた電池パックの形式で供給される。電池パックでは、一部の電池が外部からの衝撃などによって短絡を起こした場合に、隣り合う電池が、短絡を起こした電池によって加熱され、セパレータが溶けて短絡に至る、いわゆるメルトダウンを起こすことによって、連鎖的に短絡が引き起こされることが問題となっている。この問題に対し、一部が短絡を起こして発熱した際に、すぐに冷却すれば連鎖的な短絡を防ぐことができる。この際、冷却開始までの時間を長く取れれば、より多くのケースで連鎖的な短絡を防げるため、電池側には、発熱時の温度上昇を抑えることが求められる。
【0007】
本発明は上記に鑑みてなされたものであり、発熱時の温度上昇を緩やかにすることができる非水電解質二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一の観点として、正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備える非水電解質二次電池であって、前記セパレータは、ポリプロピレンを含む少なくとも一層のポリプロピレン層と、ポリエチレンを含む少なくとも一層のポリエチレン層と、を有し、前記ポリプロピレン層は、幹状フィブリルおよび枝状フィブリルを有し、前記ポリプロピレン層の表面において、前記幹状フィブリルの面積(A)と前記枝状フィブリルの面積(B)との合計に対する前記枝状フィブリルの面積(B)の面積比(B/(A+B))(以下、単純に「面積比」または「非結晶の面積比」と表記することがある)が30%以上50%以下であり、前記ポリプロピレン層の細孔径が、20nm以上50nm以下であり、前記ポリエチレン層の細孔径が、50nm以上90nm以下であり、前記正極は、導電助材を含み、前記導電助材は、粒度分布において、二つのピークを有する、ことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一の観点に加えて、第二の観点として、前記導電助材は、前記粒度分布において、0.03μm以上0.1μm以下の範囲と、2.0μm以上6.0μm以下の範囲にそれぞれピークを有する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一または第二の観点に加えて、第三の観点として、前記ポリプロピレン層は、前記正極と前記ポリエチレン層との間に少なくとも一層設けられる、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第三の観点のいずれか一点に加えて、第四の観点として、前記導電助材は、炭素系材料を用いてなる、ことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第四の観点のいずれか一点に加えて、第三の観点として、前記セパレータは、三つの層によって構成される、ことを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第四の観点のいずれか一点に加えて、第五の観点として、前記正極は、正極活物質を有し、前記正極活物質は、下式(1)に示す一般式で表される層状化合物を含む、
LiaNixCoyM11-x-yO2(ただし、0<a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.5、0<x+y<1)・・・(1)
ことを特徴とする。
ただし、M1は、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Mn、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、Cu、Ag、Ce、Pr、Ge、Bi、Ba、Er、La、Sm、Yb、Sb、Bi、SおよびZnから選ばれる少なくとも1種である。
【0014】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第五の観点のいずれか一点に加えて、第六の観点として、前記正極は、すべての正極活物質が、式(1)を満たす層状化合物からなる、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第六の観点のいずれか一点に加えて、第七の観点として、前記正極は、正極活物質を有し、前記正極活物質の平均粒径が、10μm以上14μm以下である、ことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る非水電解質二次電池は、第一乃至第七の観点のいずれか一点に加えて、第八の観点として、前記正極は、前記導電助材を含む正極合剤が塗工されてなり、前記正極の塗膜密度は、2.6g/cc以上3.0g/cc以下である、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電池の晒される温度が急激に上昇した場合でも、電池の放熱を促すことで、加熱による温度上昇を緩やかにし、安全性の高い電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る非水電解質二次電池の構成を説明するための図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る非水電解質二次電池が備える電極群の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の記載に限定されるものではない。また、本実施形態には種々の変更または改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。
【0020】
(実施の形態)
図1は、本発明の一実施の形態に係る非水電解質二次電池の構成を説明するための図である。
図2は、本発明の一実施の形態に係る非水電解質二次電池が備える電極群の構成を説明するための図である。
図3は、
図2に示す電極群の断面図である。
図3は、
図2に示すA-A線断面に相当する。
【0021】
非水電解質二次電池1は、ラミネートシート2と、正極端子3と、負極端子4と、電極群5と、シーラント6とを備える。電極群5は、正極7と、負極8と、セパレータ9とによって構成される。
【0022】
ラミネートシート2は、電極群5を収納し、非水電解質二次電池1の外装体を構成する。ラミネートシート2は、外縁が矩形をなす。また、ラミネートシート2は、二つのシート部材を、電極群5を挟んで貼り合わせてなる。電極群5の一方には、凸状のシート部材が設けられ、電極群5の他方には、凹状のシート部材が設けられる。ラミネートシート2の周縁部は、シート部材同士が熱溶着で封止されており、ラミネートシート2によって電極群5が密閉された構造をとる。また、正極端子3および負極端子4は、ラミネートシート2の周縁部の一部から延出し、ラミネートシート2が熱溶着されている構造となる。具体的には、正極端子3および負極端子4と、ラミネートシート2との間には、シーラント6が接着層としてそれぞれ介在する。すなわち、正極端子3および負極端子4の各表面のラミネートシート2の封止部を通過する部分には、シーラント6が被覆されている。このような構成であれば、シーラント6とラミネートシート2との内面の熱溶着性樹脂層が加熱によって接合するため、非水電解質が浸透して漏液することを防止できる。
【0023】
正極端子3は、その一端が電極群5を構成する正極7に接続される。また、負極端子4は、その一端が電極群5を構成する負極8に接続される。正極7と負極8とは、セパレータ9を介して積層されることで電極群5を構成する。電極群5は、最外層からセパレータ9、負極8、セパレータ9、正極7、セパレータ9の順になるように交互に積層されている(
図3参照)。
【0024】
非水電解質は、ラミネートシート2内に保持されている。なお、図示は省略しているが、非水電解質は、非水溶媒に電解質を溶解して調整される。
【0025】
なお、
図1では実施の形態の一例としてラミネート型非水電解質二次電池の場合の構成例を示しているが、本発明における非水電解質二次電池の形状は特に制限されず、扁平型や、円筒型、角型、コイン型などであってもよい。また、非水電解質二次電池の外装体も特に限定されず、ラミネートフィルムのほか、アルミニウム、アルミニウム合金、ステンレスなど公知のものを使用することができる。
以下、非水電解質、正極、負極、セパレータおよび外装体(ラミネートシート)について詳述する。
【0026】
(非水電解質)
非水電解質は、非水溶媒に電解質を溶解することにより調整される液状の非水電解質を用いることができる。
非水溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート(VC)などの環状カーボネート、ジエチルカーボネート(DMC)などの鎖状カーボネート、テトラヒドロフラン(THF)、2メチルテトラヒドロフラン(2-MeTHF)などの環状エーテル、ジメトキシエタン(DME)などの鎖状エーテル、アセトニトリル(AN)、スルホラン(SL)等を挙げることができる。非水溶媒は、特に、耐酸化性が高いジエチルカーボネート(DEC)を含むことが好ましい。
電解質は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)、四フッ化硼酸リチウム(LiBF4)、六フッ化ヒ素リチウム(LiAsF6)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、およびトリフルオロメタスルホン酸リチウム(LiCF3SO3)等のリチウム塩から選ばれる一種単独、または二種以上の塩を組み合わせて用いることができる。電解質は、熱的安定性の観点でLiBF4が特に好ましい。
また、非水電解質には、その他添加剤を添加してもよい。
【0027】
(正極)
正極7は、正極活物質と、導電助材、結着材を含む正極合剤と、該正極合剤が塗工される正極集電体とを有する。
正極合剤は、正極集電体の片面もしくは両面に担持される。正極合剤は、例えば、分散溶液で分散された正極スラリーを、正極集電体に塗工し、乾燥させてなる。
正極集電体には、例えば、アルミニウム、あるいはアルミニウム合金を用いることができる。
【0028】
正極合剤に含まれる正極活物質は、リチウムを吸蔵・放出可能なものが使用できる。中でも、リチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物が好ましい。容量が高く、広く普及しているが、安全性に課題を抱えることが多く、本発明の恩恵をより強く受ける活物質であるためである。具体的には、下式(1)に示す一般式で表される層状化合物であるリチウム遷移複合酸化物を用いることができる。
LiaNixCoyM11-x-yO2(ただし、0<a≦1.2、0<x≦0.9、0<y≦0.5、0<x+y<1)・・・(1)
(ただし、M1は、Ti、Zr、Nb、W、P、Al、Mg、V、Mn、Ca、Sr、Cr、Fe、B、Ga、In、Si、Mo、Y、Sn、Cu、Ag、Ce、Pr、Ge、Bi、Ba、Er、La、Sm、Yb、Sb、Bi、SおよびZnから選ばれる少なくとも1種)
また、リチウム遷移複合酸化物の平均粒径は、10μm以上14μm以下であることが好ましい。なお、本明細書中で平均粒径とは、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0029】
正極に用いられる導電助材は、正極合剤中におけるリチウムイオンの吸蔵・放出反応で生じた電子の正極電極への伝達を補助できる物質であれば制限はない。正極の導電助材としては、炭素系材料が好ましく、例えば、黒鉛やアセチレンブラックなどが挙げられる。
【0030】
正極に用いられる結着材は、正極活物質および導電助材、ならびに、正極合剤および集電体を結着させることが可能であり、非水電解質との接触により劣化しないことが望ましい。結着材の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。
正極の分散溶液としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)や水が挙げられる。
【0031】
正極活物質、導電助材および結着材の組成比は、正極活物質が85重量%以上95重量%以下、導電助材が3重量%以上9重量%以下、結着材が2重量%以上6重量%以下の範囲であることが好ましい。導電助材を添加することで、正極の加熱に対する安全性は増加する。
【0032】
なお、発明者は、鋭意研究の結果、導電助材の粒度分布のピークと、電池の放熱量とに相関があることを見出した。本発明において、導電助材は、粒度分布において、0.03μm以上0.1μm以下と、2μm以上6μm以下との範囲において、それぞれピークを有する。粒度分布は、例えば、レーザ回折・散乱法で測ることができる。上記範囲にそれぞれピークを有するようにするには、例えば、平均粒径が0.03μm以上0.1μm以下である、粒径の分布が正規分布に近く、Bのピークに重ならない程度に標準偏差が十分小さい、すなわち、急峻、かつピークの頭頂部を通過する軸に対して対称な波形の分布を有する導電助材Aと、平均粒径が2μm以上6μm以下である、粒径の分布が正規分布に近く、Aのピークに重ならない程度に標準偏差が十分小さい導電助材Bとを混合させる方法がある。また、導電助材同士は異なる炭素系材料でも構わない。上述した以外の製造方法でも、上述の二つのピークを有するのであれば製法に制限はない。上記のピークを有することで、導電助材が活物質を取り囲み、多様な導電性パスがとれる良好な導電性ネットワークが形成されるとともに、正極の放熱が促進される。一方で、上記の範囲外にピークを有する場合は、導電助材が正極活物質を取り囲むような配置になり難く、活物質間の導電性パスが不十分で、放熱が抑制される。具体的には、ピークが一つしかない場合や、一つ目のピークが0.1μmより大きい場合や、二つ目のピークが6μmより大きい場合は、充填性が悪く、導電性パスが十分に確保できなくなる。また、一つ目のピークが0.03μmより小さい場合は、電子伝導性が極度に高くなり、発熱量が大きくなる。二つ目のピークが2μmより小さい場合は、塗膜密度が上がり難くなるため、導電性パスがとり難くなる。なお、使用する材料が変われば、最適なピークの範囲が変わることがある。
導電性パスや導電性ネットワークと放熱量とに相関がある理由は定かではないが、熱は物質の微細な運動からなることからして、電子が自由に動けるようになればなるほど、電解液やその他部材を通して外部へ微細な運動が伝わり、放熱に繋がるものと考えられる。
【0033】
加熱試験下での電池は、80度で負極のSEI(Solid Electrolyte Interface)被膜が溶け、140度~180度でセパレータのシャットダウンと呼ばれるイオンの遮断が発生し、200度強でセパレータのメルトダウンが発生し、短絡する。短絡が起き、正極が酸素を有する場合には、200度強で酸素が抜け、結晶構造が崩壊し、さらなる発熱に至る。以上の流れにおいて、導電助材の二つのピークによる放熱は、セパレータのシャットダウン以降、メルトダウンまでの間の放熱に特に寄与する。発明者は、鋭意検討の結果、短絡を起こした電池が自ら発熱し始める温度は大多数の場合で200度弱であることを見出した。加えて、200度弱で加熱された電池の内部で起きる現象は、上述の発熱過程の中では、メルトダウンが起きる寸前の状況であり、セパレータ9がシャットダウンしている状況であることも見出した。一部の短絡による発熱が発生した際に、いち早く冷却すれば連鎖的な短絡となること防ぐことができることに着眼し、冷却開始までの時間を可能な限り長くとるための手法が本発明である。
また、本発明において、正極の塗膜密度は、2.6g/cc以上3.0g/cc以下であり、放熱の観点から2.7g/cc以上2.9g/cc以下であることが好ましい。十分な放熱量を確保するためには、密度が高いと電解液との接触が不足し、密度が低いと導電性パスがとりづらくなる。
なお、本明細書中において、温度を示す「度」は、摂氏(℃)を指す。
【0034】
(負極)
負極8は、負極合剤と、該負極合剤が塗工される負極集電体とを有する。
負極合剤は、導電助材を含むことが好ましい。負極合剤は、負極集電体の片面もしくは両面に担持される。
負極集電体には、例えば、銅を用いることができる。
負極8は、リチウムイオンを吸蔵・放出できる負極活物質を含み、例えば、負極活物質、導電助材、および結着材を含んでいる。負極活物質としては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛等の炭素類を単独または混合して使用することができる。
【0035】
負極8に用いられる導電助材は、負極合剤中におけるリチウムイオンの吸蔵・放出反応で生じた電子の負極電極への伝達を補助できる物質であれば制限はない。負極の導電助材としては、例えば、アセチレンブラックやカーボンブラックなどの炭素系材料が挙げられる。
【0036】
負極8に用いられる結着材は、負極活物質および導電助材、ならびに、負極合剤および集電体を結着させることが可能であり、非水電解質との接触により劣化しないことが望ましい。結着材の例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素系ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、およびカルボキシメチルセルロース(CMC)などが挙げられる。分散溶液としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)や水が挙げられる。
【0037】
負極活物質、導電助材および結着材の組成比は、負極活物質が93重量%以上98重量%以下、導電助材が0重量%以上1重量%以下、結着材が1重量%以上3重量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0038】
(セパレータ)
セパレータ9は、正極と負極の間に配置され、正極と負極が接触するのを防止する。セパレータ9は、絶縁材料で構成される。また、セパレータ9は、正極7および負極8の間を電解質が移動可能な形状を有する。セパレータ9としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、セルロース、またはポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む多孔質フィルム、合成樹脂製不織布等を挙げることができる。中でも、PEまたはPPからなる多孔質フィルムは、一定温度において溶融し、電流を遮断することが可能であり、安全性向上の観点から好ましい。本発明で使用されるセパレータ9は、二層以上からなり、少なくともPPを含んでいる。セパレータ9としては、例えば、PP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムが用いられる。一般的に、PEは、PPに比べて細孔が大きく、軟化温度が低いため、シャットダウンおよびメルトダウン温度が低くなる。一方で、PPは、PEに比べて細孔が小さく、シャットダウンおよびメルトダウン温度が高くなる傾向がある。
【0039】
また、PP内の枝状フィブリルの割合が多いほど、シャットダウン温度は低くなるが、メルトダウン温度も低くなる。一方で、PP内の枝状フィブリルの割合が少ないほど、シャットダウン温度は高くなるが、メルトダウン温度も高くなる。つまり、シャットダウンからメルトダウンまでの温度に差が生じ、その温度差を最適化することによって、安全性が向上し、電池の発火等のリスクを下げることが可能となる。加えて、単層セパレータでは効果が小さく、二層以上の材質を組み合わせることで、一層効果的になる。
【0040】
ここで、本発明において、「幹状フィブリル」、「枝状フィブリル」とは、セパレータの樹脂組成物をシート化した時、分繊化された樹脂の部分として枝幹状のフィブリルが形成される際のそれぞれ幹状と枝状のフィブリルのことである。幹状フィブリルは、枝状フィブリルより太いことが多く、枝状フィブリルは、幹状フィブリルに対しほぼ垂直に延びて存在し、細孔部とラメラ構造をなす。なお、PP内における幹状フィブリルの面積をA、枝状フィブリルの面積をBとしたとき、PP内における幹状フィブリルの面積Aと枝状フィブリルの面積Bとの合計に対する枝状フィブリルの面積Bの面積比(B/(A+B))は、セパレータの表面のSEM像をもとに算出した。
【0041】
また、発明者は、PP層の幹状フィブリルおよび枝状フィブリルの割合と、各層の細孔径の大きさとが、加熱した状態から放熱するまでの時間に影響することも突き止めた。また、PP層は、正極とPE層との間に少なくとも一層存在するのが好ましい。理由は定かではないが、以下のように考えられる。セパレータ9がシャットダウンすると、イオンがセパレータ9を透過せず、正極7と負極8との反応が抑制される。反応が抑制されることで、例えば、負極8から正極7へと一定方向で流れていた電子のふるまいが変化し、電子は自由に導電性の高い物質間を移動することができるようになり、放熱が可能となる。この際、溶融した高分子が、セパレータ9と正極7との間の隙間を被覆し、正極7間や、正極7と電解液との間の電子の移動を妨げてしまうことがある。被覆を防ぐために重要なのが、PP層の幹状フィブリルおよび枝状フィブリルの割合と、各層の細孔径の大きさとである。
【0042】
PP層は、PE層より後にシャットダウンする。PP層はすでにシャットダウンしているPE層の溶融部が細孔に侵入しないよう、20nm以上50nm以下の細孔径とする。この細孔径とすることで、PEが正極7と接しないようすることができ、上述の放熱を妨げない。細孔径が50nmより大きいと、PEの溶融部が侵入する可能性が増え、細孔径が20nmより小さいと、電池が非加熱の状態でセパレータ9として有すべきイオン透過性が不十分となる。
【0043】
PE層は、細孔径を50nm以上90nm以下にすると、PEの溶融部が正極7と接することを防ぐことができる。細孔径が90nmより大きいと、シャットダウン時に細孔が残りやすくなってイオンを遮断することが難しくなる。また、細孔径が50nmより小さいと、溶融部がPE層からPP層に侵入しやすくなる。
【0044】
PP層もシャットダウンすると、ラメラ構造を構成する枝状フィブリルの割合の大小が放熱に影響する。本発明において、幹状フィブリルの面積Aと枝状フィブリルの面積Bとの合計に対する枝状フィブリルの面積Bの面積比(B/(A+B))は、30%以上50%以下(0.3以上0.5以下)である。枝状フィブリルの割合が少ないと、セパレータ9が溶融してシャットダウン機能を起こす際に、溶融した高分子がラメラであった空間に吸収しきれず、セパレータ9から溢れ、セパレータ9と正極7との隙間を埋め、電子の移動を妨げるように被覆してしまうことがある。被覆が起こると、電子の移動が阻害され、放熱に影響する電子の移動が抑制され、電池内部にこもった熱が抜け難くなる。また、枝状フィブリルが多すぎると、シャットダウン時に細孔が残りやすくなってイオンを遮断することが難しくなる。
【0045】
さらに、PP内における枝状フィブリルの面積比が30%以上50%以下の範囲内であることで、シャットダウンとメルトダウンとの温度差が70度以上と高くなり、安全性が向上する。一方で、PP内の枝状フィブリルの面積比が30%未満では、シャットダウン温度およびメルトダウン温度が高くなり、安全性向上に寄与する温度差が得られない。逆に、PP内の枝状フィブリルの面積比が50%より大きい場合、シャットダウン温度およびメルトダウン温度が低くなり、安全性に寄与する温度差が得られない。シャットダウンとメルトダウンとの温度差が80度以上になると、製造工程内においてダイドルールが発生して、セパレータ9の製膜が難しくなる。なお、PPの細孔径が20nm以上50nm以下の範囲内であり、PEの細孔径が50nm以上90nm以下の範囲内とすることで、電池の内部短絡発生から発熱のピーク温度までに要する時間も600秒と長くなり、安全性向上に寄与する効果が得られる。一方で、PPの細孔径が50nmより大きく、かつ、PEの細孔径が90nmより大きい場合、内部短絡時のピーク温度までに要する時間も短くなり、安全性に課題が残る。逆に、PPの細孔径が20nmよりも小さく、PEの細孔径が50nmよりも小さい場合、電池の内部短絡時の発熱ピーク温度までに要する時間は長くなるが、シャットダウンとメルトダウンとの温度差も低くなり、安全性に懸念が残る。
【0046】
フィブリルの面積比を制御する方法としては、乾式法として、溶融押出時に低温押出、高ドラフト比を採用することにより、シート化した延伸前のフィルム中のフィブリル構造を制御し、これを一軸延伸することでフィブリル界面での開裂を発生させ、空隙を形成する方法がある。さらに、細孔径は、二層以上のセパレータにテープを貼り付け、引っ張ることによってPPおよびPEのセパレータに各々分離させた後、水銀圧入法によって測定することができる。細孔構造は、樹脂延伸温度を制御することにより、所定の細孔径に制御することが可能である。
【0047】
なお、細孔径を求める際は、セパレータ表面の細孔から求める。細孔径は、クライオ加工冷却走査型電子顕微鏡(クライオSEM)を用いて測ることができる。多孔性膜の細孔の開口径は、クライオSEM画像から確認できる開口の長径基準の累積細孔分布曲線において、個数基準で長径の小さいほうから累積して50%を占めるときの細孔の開口径から求めることができる。多孔性膜の細孔の長径基準の累積細孔分布曲線は、多孔性膜のクライオSEM画像から画像処理解析ソフトで算出された長径の値により算出される。画像処理解析ソフトを使用しない場合は、手動で100箇所の細孔の長軸方向の長さを測り、個数基準で長径の小さいほうから並べて50個目の細孔の開口径から求める。3層以上を有するセパレータで、セパレータ表面の細孔が断面でしか観察できない層の細孔径を測りたい場合、セパレータ表面の層を手で丁寧に剥がし、露出されるに至った面で細孔径を測るものとする。
【0048】
(外装体)
外装体に使用されるラミネートシート2は、金属層と、金属層を被覆する樹脂層とからなる多層フィルムである。金属層は、軽量化のために、アルミニウム、または、アルミニウムを主成分とするアルミニウム合金を用いることが望ましい。ラミネートシート2には、基材として厚さが138~168μmのアルミニウム製のシート(シート部材)が使用されている。アルミニウム製シートは、基材層の一方の面側には厚さが40~100μmの熱溶着性樹脂層(例えばPE、PPなど)が設けられ、他方の面側には、絶縁性を有する厚さが10~20μmの保護層(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなど)を有し、三層~五層構造で積層されたものになる。
【実施例0049】
以下、実施例に基づいて詳細を述べるが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。実施例、従来例および比較例の非水電解質二次電池の作製方法を示す。
【0050】
(実施例1)
<正極の作製>
正極活物質として、一般式Li1.05Ni0.50Co0.20Mn0.29Al0.01O2で表されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物を用いた。導電助材には、カーボンブラックおよび人造黒鉛を使用し、粒度分布のピークが0.05μmおよび6μmとなるように混合させた。結着材として、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を加え、正極活物質、導電助材および結着材の重量組成比が90:6:4を満たすように、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶液に加えて混合し、得られた塗料を20μmのアルミニウム箔からなる正極集電体の両面に塗布した後、乾燥、プレス、打ち抜きを実施して、塗膜密度が2.8g/ccの正極を作製した。
【0051】
<負極の作製>
負極活物質として、人造黒鉛を用いた。導電助材には、カーボンブラックを使用し、結着材として、スチレンブタジエンゴム(SBR)を加え、増粘剤にはカルボキシメチルセルロース(CMC)を用いた。そして、負極活物質、導電助材、増粘剤および結着材の重量組成比が96.7:0.3:1.5:1.5を満たすように、水を加えて混合し、得られた塗料を10μmの銅箔からなる負極集電体の両面に塗布した後、乾燥、プレス、打ち抜きを実施して、電極密度が1.2g/ccの負極を作製した。
【0052】
<電極群の作製>
上記で作製した負極と、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比(幹状フィブリルの面積Aと枝状フィブリルの面積Bとの合計に対する枝状フィブリルの面積Bの面積比(B/(A+B)))が30%であり、PPの細孔径が31nm、PEの細孔径が78nmであるセパレータと、上記で作製した正極と、セパレータとを、この順で負極と正極とがセパレータを介して交互に並ぶように積層機を用いて、負極が最外層に位置するように電極群を作製した。
【0053】
<非水電解質の調整>
非水溶媒として、エチレンカーボネート(EC)、メチルエチルカーボネート(MEC)およびジメチルカーボネート(DMC)を2:5:3の体積比率で混合したものを用いた。また、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を1.3mol/Lの濃度で溶解し、さらに、添加剤として、ビニレンカーボネート(VC)を3.0%の含有量で溶解して、非水電解質を調整した。
【0054】
<非水電解質二次電池の作製>
上記で作製した電極群を、凸状のシート部材と平坦状のシート部材とで挟み込み、シート部材の内面の熱溶着性樹脂層同士を熱溶着することで、ラミネートシートの一部を未封止の状態としつつ、他の周縁部の封止を施した。その時のヒートシール条件は、正極端子3や負極端子4が延出するタブ側については、温度を220度、圧力を0.45MPaとして30秒間保持して熱溶着した。また、他の封止部については、温度を180度、圧力を0.45MPaとして、15秒間保持して熱溶着した。その後、温度を70度、真空度を-99kPaとして12時間、真空乾燥させた後、常温で-70度~-60度の露点環境下において、非水電解質を32.5g注液し、ラミネートシートの未封止状態部分を、真空包装機を用いて、真空度を97.0%、シール時間を4.5秒、そして冷却時間を4.0秒の条件で脱気しながら封止することで、電池重量118g、設計容量5Ahとなる非水電解質二次電池を得た。
【0055】
<安全性試験>
作製した電池を用いて、安全性試験として加熱限界試験とを行った。加熱限界試験では、上限電圧4.2V、SOC100%に調整した試験電池を常温常圧環境下に置き、電池中央部の温度が200度となるまで上昇させ、電池中央部の温度が200度となるまでの時間を計測した。実施例1における物性値および試験結果を表1に示す。
【表1】
【0056】
(実施例2)
実施例2では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.08μmおよび4μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が40%であり、PPの細孔径が38nm、PEの細孔径が73nmのセパレータを使用した。上記以外は、実施例1と同様である。実施例2における物性値および試験結果を表1に示す。
【0057】
(実施例3)
実施例3では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.1μmおよび3μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が50%であり、PPの細孔径が43nm、PEの細孔径が58nmのセパレータを使用した。上記以外は、実施例1と同様である。実施例3における物性値および試験結果を表1に示す。
【0058】
(実施例4)
実施例4では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.03μmおよび4μmとなるように混合させた以外は実施例1と同様である。実施例4における物性値および試験結果を表1に示す。
【0059】
(実施例5)
実施例5では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび2μmとなるように混合させた以外は実施例1と同様である。実施例5における物性値および試験結果を表1に示す。
【0060】
(実施例6)
実施例6では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび4μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が20nm、PEの細孔径が75nmのセパレータを使用した。上記以外は実施例1と同様である。実施例6における物性値および試験結果を表1に示す。
【0061】
(実施例7)
実施例7では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が50nm、PEの細孔径が75nmのセパレータを使用した。上記以外は実施例6と同様である。実施例7における物性値および試験結果を表1に示す。
【0062】
(実施例8)
実施例8では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が35nm、PEの細孔径が50nmのセパレータを使用した。上記以外は実施例6と同様である。実施例8における物性値および試験結果を表1に示す。
【0063】
(実施例9)
実施例9では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が35nm、PEの細孔径が90nmのセパレータを使用した。上記以外は実施例6と同様にした。実施例9における物性値および試験結果を表1に示す。
【0064】
(実施例10)
実施例10では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび4μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PP細孔径が31nm、PEの細孔径が78nmのセパレータを使用した。また、プレス圧を変更して塗膜密度を2.6g/ccとした。上記以外は実施例1と同様である。実施例10における物性値および試験結果を表1に示す。
【0065】
(実施例11)
実施例11では、プレス圧を変更して塗膜密度を2.7g/ccとした以外は、実施例10と同様である。実施例11における物性値および試験結果を表1に示す。
【0066】
(実施例12)
実施例12では、プレス圧を変更して塗膜密度を2.9g/ccとした以外は、実施例10と同様である。実施例12における物性値および試験結果を表1に示す。
【0067】
(実施例13)
実施例13では、プレス圧を変更して塗膜密度を3.0g/ccとした以外は、実施例10と同様である。実施例13における物性値および試験結果を表1に示す。
【0068】
(従来例1)
従来例1では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが4μmのみとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPEの単層で構成される多孔質フィルムとしてのセパレータであり、PEの細孔径が105nmである以外は、実施例1と同様である。従来例1における物性値および試験結果を表1に示す。
【0069】
(比較例1)
比較例1では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.08μmと5μmとなるように混合させた。また、厚さ20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が10%であり、PPの細孔径が31nm、PEの細孔径が60nmのセパレータである以外は、実施例1と同様にした。比較例1における物性値および試験結果を表1に示す。
【0070】
(比較例2)
比較例2では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび4μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が20%であり、PPの細孔径が29nm、PEの細孔径が81nmのセパレータである以外は、実施例1と同様である。比較例2における物性値および試験結果を表1に示す。
【0071】
(比較例3)
比較例3では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.09μmおよび6μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が60%であり、PPの細孔径が35nm、PEの細孔径が76nmのセパレータである以外は、実施例1と同様である。比較例3における物性値および試験結果を表1に示す。
【0072】
(比較例4)
比較例4では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.03μmおよび3μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が90%であり、PPの細孔径が43nm、PEの細孔径が58nmのセパレータである以外は、実施例1と同様である。比較例4における物性値および試験結果を表1に示す。
【0073】
(比較例5)
比較例5は、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.02μmおよび4μmとなるように混合させた以外は、実施例1と同様である。比較例5における物性値および試験結果を表1に示す。
【0074】
(比較例6)
比較例6は、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.11μmおよび4μmとなるように混合させた以外は、実施例1と同様である。比較例6における物性値および試験結果を表1に示す。
【0075】
(比較例7)
比較例7は、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび1μmとなるように混合させた以外は、実施例1と同様である。比較例7における物性値および試験結果を表1に示す。
【0076】
(比較例8)
比較例8では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび7μmとなるように混合させた以外は、実施例1と同様である。比較例8における物性値および試験結果を表1に示す。
【0077】
(比較例9)
比較例9では、正極の導電助材を、粒度分布のピークが0.05μmおよび4μmとなるように混合させた。また、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が15nm、PEの細孔径が75nmのセパレータである以外は、実施例1と同様である。比較例9における物性値および試験結果を表1に示す。
【0078】
(比較例10)
比較例10では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が60nm、PEの細孔径が75nmのセパレータである以外は、比較例9と同様である。比較例10における物性値および試験結果を表1に示す。
【0079】
(比較例11)
比較例11では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が35nm、PEの細孔径が40nmのセパレータである以外は、比較例9と同様である。比較例11における物性値および試験結果を表1に示す。
【0080】
(比較例12)
比較例12では、厚さが20μmのPP/PE/PPの三層で構成される多孔質フィルムとして、PP内における非結晶の面積比が30%であり、PPの細孔径が35nm、PEの細孔径が100nmのセパレータである以外は、比較例9と同様にした。比較例12における物性値および試験結果を表1に示す。
【0081】
<結果および考察>
実施例1~13は、200℃に達するまでの時間が2000秒以上であるのに対し、従来例1および比較例1~12は最長でも1985秒であった。よって、実施例1~13は、従来例1および比較例1~12に比べて、長い時間、200℃未満を保持することがわかった。
ここで、比較例1および比較例2は、枝状フィブリルの割合が低く、溶融した高分子がラメラ構造に吸収しきれなかったものと考えられる。また、比較例3および比較例4は、枝状フィブリルの割合が多く、シャットダウンが十分に行われなかったものと考えられる。比較例5は、導電助材の小さい方のピーク(1つ目のピーク)が小さく、電子伝導性が極度に高くなり、発熱量が大きくなったものと考えられる。比較例6は、導電助材の小さい方のピーク(1つ目のピーク)が大きく、充填性が下がり、放熱のためのパスが取れなかったものと考えられる。比較例7は、導電助材の大きい方のピーク(2つ目のピーク)が小さく、充填性が下がり、放熱のためのパスが取れなかったものと考えられる。比較例8は、導電助材の大きい方のピーク(2つ目のピーク)が大きく、充填性が下がり、放熱のためのパスが取れなかったものと考えられる。比較例9は、PPの細孔径が小さく、イオン透過性が不十分であったため、放熱効果を十分に享受できなかったものと考えられる。比較例10は、PPの細孔径が大きく、PEが侵入し、PEによる被膜が起こったものと考えられる。比較例11は、PEの細孔径が小さく、PEの溶融部がPPの細孔にあふれ、PEによる被膜が起こったものと考えられる。比較例12は、PEの細孔径が大きく、シャットダウンが十分に行われなかったものと考えられる。
【0082】
以上より、本発明の非水二次電解質電池によれば、電池の晒される温度が急激に上昇した場合でも、電池の放熱を促すことで、加熱による温度上昇をゆるやかにし、安全性の高い電池を提供することができる。
本発明は、電池の内部短絡や晒される温度が急激に上昇した場合でも、電池の発火等のリスクを下げることが可能となり、安全性に優れた特性を示す非水電解質二次電池を提供するため、非水電解質二次電池の製造、販売に寄与するので、産業上の利用可能性を有する。