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特開2024-158162人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置、及び人協働ロボットの動作速度監視機能の確認プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158162
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置、及び人協働ロボットの動作速度監視機能の確認プログラム
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/06 20060101AFI20241031BHJP
   B25J 3/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B25J19/06
B25J3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073124
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】501428545
【氏名又は名称】株式会社デンソーウェーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(72)【発明者】
【氏名】寺下 昇吾
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707JS01
3C707JT04
3C707JU02
3C707KS22
3C707LU01
3C707LV15
3C707MS27
3C707MS29
(57)【要約】
【課題】人協働ロボットが想定した環境よりも汚損度が高い環境で使用された場合に、動作速度監視機能が正常であるか否か確認可能とする。
【解決手段】所定汚損度の環境で使用されることが想定された人協働ロボット(20)の動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有する人協働ロボットに適用され、動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認装置(40)であって、画像を表示する表示部(41)と、人協働ロボットが所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する判定部と、汚損使用が実行されたと判定された場合に、動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を表示させる手順通知部と、確認手順が実行された結果に基づいて、動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を表示させる結果通知部と、を備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人と協働し且つ所定汚損度の環境で使用されることが想定された人協働ロボットの動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有する前記人協働ロボットに適用され、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認装置であって、
画像を表示する表示部と、
前記人協働ロボットが前記所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する判定部と、
前記判定部により前記汚損使用が実行されたと判定された場合に、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる手順通知部と、
前記確認手順が実行された結果に基づいて、前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を前記表示部により表示させる結果通知部と、
を備える、人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項2】
前記人協働ロボットは、ユーザが加えた外力により姿勢が変更され、前記人協働ロボットの姿勢に一致するように産業用ロボットの姿勢を制御する主従ロボット動作機能を実行可能であり、
前記所定汚損度は、前記産業用ロボットが使用される環境の汚損度よりも低く、
前記判定部は、前記主従ロボット動作機能の実行が終了した場合に、前記汚損使用が実行されたと判定する、請求項1に記載の人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項3】
前記速度上限値は、第1速度上限値と、前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定される第2速度上限値とを含み、
前記動作速度監視機能は、前記人協働ロボットの動作速度が前記第1速度上限値を超えた場合に、第1エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第1動作速度監視機能と、前記第1動作速度監視機能よりも信頼性が低く、且つ前記人協働ロボットの動作速度が前記第2速度上限値を超えた場合に、第2エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第2動作速度監視機能とを含み、
前記手順通知部は、前記第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる際に、前記第2速度上限値が前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定されることを禁止する、請求項1又は2に記載の人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項4】
前記人協働ロボットは、相対回転可能に連結された複数のリンクと、隣り合う前記リンクをそれぞれ相対回転させる複数の軸とを備え、
前記動作速度監視機能は、前記複数の軸の動作速度のいずれかがそれぞれの軸に設定された速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる機能であり、
前記手順通知部は、前記人協働ロボットの前記複数の軸を1つずつ駆動させて前記動作速度監視機能が正常である否か確認させるように、前記確認手順を示す前記画像を前記表示部により表示させる、請求項1又は2に記載の人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項5】
前記手順通知部は、前記速度上限値を設定可能な最低値に設定させるように、前記確認手順を示す前記画像を前記表示部により表示させる、請求項1又は2に記載の人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項6】
前記人協働ロボットを動作させるためにユーザが同時に操作する必要がある2つの被操作部を備え、
前記手順通知部は、前記確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる際に、前記2つの被操作部の少なくとも一方が操作されていない状態になった場合に、前記人協働ロボットを停止させる、請求項1又は2に記載の人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置。
【請求項7】
人と協働し且つ所定汚損度の環境で使用されることが想定された人協働ロボットの動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有する前記人協働ロボットに適用され、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認プログラムであって、
前記人協働ロボットが前記所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する処理と、
前記汚損使用が実行されたと判定された場合に、画像を表示する表示部により前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を表示させる処理と、
前記確認手順が実行された結果に基づいて、前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を前記表示部により表示させる処理と、
をコンピュータに実行させる、人協働ロボットの動作速度監視機能の確認プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人協働ロボットの動作速度監視機能が正常であるか否か確認する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、教示装置を用いてマニピュレータ(産業用ロボット)の動作を教示する教示作業において、複数の関節のうち、確認動作が実行済みである関節は設定された通常速度で動作させ、確認動作が未実行である関節は通常速度に基づいて定められた安全速度以下で動作させるロボット装置がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6381203号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的に、人と協働する人協働ロボットは、動作速度が速度上限値を超えた場合にエラーを発生させてロボットを停止させる動作速度監視機能を有している。例えばオフィス等で使用されることを想定している人協働ロボットの耐環境性能は、工場等で使用されることを想定している産業用ロボットの耐環境性能よりも低い。しかし、人協働ロボットは、持ち運びしやすく、ロボットに詳しくないユーザも使用するため、想定した環境よりも汚損度が高い環境で使用される可能性が、産業用ロボットよりも高い。その場合、動作速度監視機能が故障するおそれがあることに、本願発明者は着目した。
【0005】
本発明は、こうした課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、人協働ロボットが想定した環境よりも汚損度が高い環境で使用された場合に、動作速度監視機能が正常であるか否か確認可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の手段は、
人と協働し且つ所定汚損度の環境で使用されることが想定された人協働ロボットの動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有する前記人協働ロボットに適用され、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認装置であって、
画像を表示する表示部と、
前記人協働ロボットが前記所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する判定部と、
前記判定部により前記汚損使用が実行されたと判定された場合に、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる手順通知部と、
前記確認手順が実行された結果に基づいて、前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を前記表示部により表示させる結果通知部と、
を備える。
【0007】
上記構成によれば、人協働ロボットは、人と協働し且つ所定汚損度の環境で使用されることが想定されている。人協働ロボットは、人協働ロボットの動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有している。人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置は、前記人協働ロボットに適用され、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する。
【0008】
ここで、表示部は画像を表示する。判定部は、前記人協働ロボットが前記所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する。汚損使用が実行されたか否かは、例えば人協働ロボットの動作モードに基づいて判定したり、人協働ロボットが使用された環境をユーザにより入力させて入力結果に基づいて判定したり、人協働ロボットが使用された環境の汚損度をユーザにより入力させて入力結果に基づいて判定したりする等、任意の方法により判定することができる。
【0009】
手順通知部は、前記判定部により前記汚損使用が実行されたと判定された場合に、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる。このため、ユーザは、表示部により表示された確認手順を示す画像に従って、確認手順を実行することができる。確認手順は、通常の動作速度よりも低い速度上限値を設定して通常の動作速度で人協働ロボットを動作させて動作速度監視機能が正常に働くか確認したり、速度上限値を超える動作速度で人協働ロボットを一瞬動作させて動作速度監視機能が正常に働くか確認したりする等、任意の手順により実行することができる。結果通知部は、前記確認手順が実行された結果に基づいて、前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を前記表示部により表示させる。このため、ユーザは、表示部により表示された前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像により、動作速度監視機能が正常であるか否か確認することができる。したがって、協働ロボットが想定した環境よりも汚損度が高い環境で使用された場合に、動作速度監視機能が正常であるか否か確認することができる。
【0010】
第2の手段では、前記人協働ロボットは、ユーザが加えた外力により姿勢が変更され、前記人協働ロボットの姿勢に一致するように産業用ロボットの姿勢を制御する主従ロボット動作機能を実行可能であり、前記所定汚損度は、前記産業用ロボットが使用される環境の汚損度よりも低く、前記判定部は、前記主従ロボット動作機能の実行が終了した場合に、前記汚損使用が実行されたと判定する。
【0011】
上記構成によれば、前記人協働ロボットは、ユーザが加えた外力により姿勢が変更され、前記人協働ロボットの姿勢に一致するように産業用ロボットの姿勢を制御する主従ロボット動作機能(主従ロボット動作モード)を実行可能である。そして、前記所定汚損度は、前記産業用ロボットが使用される環境の汚損度よりも低い。この場合、産業用ロボットの使用環境に人協働ロボットが運ばれて主従ロボット動作機能が実行されるため、人協働ロボットが所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用されることとなる。
【0012】
この点、前記判定部は、前記主従ロボット動作機能の実行が終了した場合に、前記汚損使用が実行されたと判定する。したがって、人協働ロボットが使用された環境等をユーザにより入力させなくても、主従ロボット動作機能が実行されて人協働ロボットが所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用された場合に、動作速度監視機能が正常であるか否か確認することができる。
【0013】
第3の手段では、前記速度上限値は、第1速度上限値と、前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定される第2速度上限値とを含み、前記動作速度監視機能は、前記人協働ロボットの動作速度が前記第1速度上限値を超えた場合に、第1エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第1動作速度監視機能と、前記第1動作速度監視機能よりも信頼性が低く、且つ前記人協働ロボットの動作速度が前記第2速度上限値を超えた場合に、第2エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第2動作速度監視機能とを含み、前記手順通知部は、前記第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる際に、前記第2速度上限値が前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定されることを禁止する。
【0014】
上記構成によれば、前記速度上限値は、第1速度上限値と、前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定される第2速度上限値とを含んでいる。このため、人協働ロボットの動作速度は、第1速度上限値よりも先に第2速度上限値を超えることとなる。そして、前記動作速度監視機能は、前記人協働ロボットの動作速度が前記第1速度上限値を超えた場合に、第1エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第1動作速度監視機能と、前記第1動作速度監視機能よりも信頼性が低く、且つ前記人協働ロボットの動作速度が前記第2速度上限値を超えた場合に、第2エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる第2動作速度監視機能とを含んでいる。このため、人協働ロボットの動作速度が第2速度上限値を超えた時点で第2動作速度監視機能が働いて人協働ロボットが停止され、第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認することができないおそれがある。
【0015】
この点、前記手順通知部は、前記第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる際に、前記第2速度上限値が前記第1速度上限値よりも自動的に低く設定されることを禁止する。このため、第1速度上限値を第2速度上限値よりも低く設定することが可能となり、前記第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を実行することで、第1動作速度監視機能が正常であるか否か確認することができる。
【0016】
第4の手段では、前記人協働ロボットは、相対回転可能に連結された複数のリンクと、隣り合う前記リンクをそれぞれ相対回転させる複数の軸とを備え、前記動作速度監視機能は、前記複数の軸の動作速度のいずれかがそれぞれの軸に設定された速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる機能であり、前記手順通知部は、前記人協働ロボットの前記複数の軸を1つずつ駆動させて前記動作速度監視機能が正常である否か確認させるように、前記確認手順を示す前記画像を前記表示部により表示させる。
【0017】
上記構成によれば、前記人協働ロボットは、相対回転可能に連結された複数のリンクと、隣り合う前記リンクをそれぞれ相対回転させる複数の軸とを備えている。そして、前記動作速度監視機能は、前記複数の軸の動作速度のいずれかがそれぞれの軸に設定された速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる機能である。この場合に、複数の軸を同時に駆動して動作速度監視機能が正常であるか否か確認すると、動作速度監視機能が正常である軸の動作速度が速度上限値を超えなければ人協働ロボットが動作し続け、動作速度監視機能の故障時に人協働ロボットが停止しない機会が増えるおそれがある。
【0018】
この点、前記手順通知部は、前記人協働ロボットの前記複数の軸を1つずつ駆動させて前記動作速度監視機能が正常である否か確認させるように、前記確認手順を示す前記画像を前記表示部により表示させる。このため、駆動されている1つの軸の動作速度監視機能が故障している場合のみ人協働ロボットが停止せず、人協働ロボットが停止しない機会が増えることを抑制することができる。
【0019】
第5の手段では、前記手順通知部は、前記速度上限値を設定可能な最低値に設定させるように、前記確認手順を示す前記画像を前記表示部により表示させる。こうした構成によれば、人協働ロボットの動作速度が低い状態で速度上限値を超えさせることができるため、動作速度監視機能が正常か否かを安全な状態で確認することができる。
【0020】
第6の手段では、前記人協働ロボットを動作させるためにユーザが同時に操作する必要がある2つの被操作部を備え、前記手順通知部は、前記確認手順を示す画像を前記表示部により表示させる際に、前記2つの被操作部の少なくとも一方が操作されていない状態になった場合に、前記人協働ロボットを停止させる。こうした構成によれば、動作速度監視機能が故障していて確認手順の実行中に人協働ロボットが停止しなかった場合であっても、ユーザが前記2つの被操作部の少なくとも一方の操作をやめることにより、人協働ロボットを直ちに停止させることができる。
【0021】
第7の手段は、
人と協働し且つ所定汚損度の環境で使用されることが想定された人協働ロボットの動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させて前記人協働ロボットを停止させる動作速度監視機能を有する前記人協働ロボットに適用され、前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認プログラムであって、
前記人協働ロボットが前記所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する処理と、
前記汚損使用が実行されたと判定された場合に、画像を表示する表示部により前記動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を表示させる処理と、
前記確認手順が実行された結果に基づいて、前記動作速度監視機能が正常であるか否かを示す画像を前記表示部により表示させる処理と、
をコンピュータに実行させる。
【0022】
上記構成によれば、処理をコンピュータに実行させる確認プログラムにおいて、第1の手段と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】主従ロボットシステムの模式図。
図2】操作器の構成を示すブロック図。
図3】主従ロボット動作機能を有効に設定する画像。
図4】主従ロボット動作機能を有効したことを示す画像。
図5】SLS機能を確認する手順を示すフローチャート。
図6】主従ロボット動作機能を無効に設定する画像。
図7】非常停止機能を確認することを指示する画像。
図8】非常停止機能を確認する手順を示す画像。
図9】非常停止機能のエラーを示す画像。
図10】非常停止機能が正常であると確認したことを示す画像。
図11】SLS機能を確認することを指示する画像。
図12】SLS値を設定する手順を示す画像。
図13】手動操作キーで1軸ずつ動作させることを指示する画像。
図14】SLS機能のエラーを示す画像。
図15】SLS機能が正常であると確認したことを示す画像。
図16】SLS値を再設定する手順を示す画像。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、マスタロボットとスレーブロボットとを備える主従ロボットシステムに適用される動作速度監視機能の確認装置に具現化した一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
図1に示すように、主従ロボットシステム10は、マスタロボット20とスレーブロボット30とを備えている。IEC(International Electrotechnical Commission)規格であるIEC60664-1には、機器が使用される環境の汚損度が規定されている。汚損度1は、クリーンルームなど、きれいな空気中での状態である。汚損度2は、制御盤内での電気機器および家電、事務機の使用環境などである。汚損度3は、一般の工場内などの環境である。汚損度4は、屋外などの環境である。マスタロボット20は、人と協働し且つ汚損度2(所定汚損度)の環境で使用されることが想定された人協働ロボットである。スレーブロボット30は、汚損度3(所定汚損度よりも高い汚損度)の環境で使用されることが想定された産業用ロボットである。すなわち、マスタロボット20が使用される環境の汚損度は、スレーブロボット30が使用される環境の汚損度よりも低い。そして、マスタロボット20が汚損度2よりも高い汚損度の環境で使用されると、マスタロボット20内の基板が埃等により短絡してマスタロボット20の機能が故障するおそれがある。
【0026】
マスタロボット20(主ロボット)は、例えば6軸の垂直多関節型ロボットであり、基台(ベース)21とアーム22とを備えている。アーム22の隣り合うリンクは、回転軸(関節)を介して相対回転可能に連結されている。各軸(各関節)は、各軸に対応する各モータにより減速機等を介して駆動される。
【0027】
詳しくは、マスタロボット20は、基台21(リンク)上に、設置面に垂直な回転軸である第1軸(J1)を介してショルダ22aが水平方向に回転可能に連結されている。ショルダ22a(リンク)には、設置面に平行な回転軸である第2軸(J2)を介して上方に延びる下アーム22bの下端部が垂直方向に回転可能に連結されている。下アーム22b(リンク)の先端部には、設置面に平行な回転軸である第3軸(J3)を介して第1上アーム22cが垂直方向に回転可能に連結されている。
【0028】
第1上アーム22c(リンク)の先端部には、第3軸と直交する回転軸である第4軸(J4)を介して第2上アーム22dが捻り回転可能に連結されている。第2上アーム22d(リンク)の先端部には、設置面に平行な回転軸である第5軸(J5)を介して手首22eが垂直方向に回転可能に連結されている。手首22e(リンク)には、第5軸と直交する回転軸である第6軸(J6)を介してフランジ22fが捻り回転可能に連結されている。
【0029】
アーム22の先端、詳しくはフランジ22f(リンク)には、ハンド23が取り付けられている。ハンド23は、例えば一対の爪を備えており、一対の爪の間隔を拡大及び縮小する開閉動作を行う。
【0030】
基台21の内部には、後述する速度上限値等の各種パラメータを記憶する記憶部25、及びマスタロボット20及びハンド23の動作を制御する制御部26が設けられている。制御部26は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。
【0031】
マスタロボット20の各軸J1~J6(各関節)には、各軸J1~J6(各モータ)の回転角度(回転位置)を検出するエンコーダ(図示略)がそれぞれ設けられている。すなわち、エンコーダは、アーム22の制御点の位置及び方向(以下、「アーム22の姿勢」という)を検出する。制御点は、アーム22の先端(フランジ22f)の中央と、一対の爪の中間(TCP:Tool Center Position)とから選択可能である。
【0032】
マスタロボット20の各軸J1~J6には、ブレーキ(図示略)が設けられている。ブレーキは、各軸J1~J6を制動して、各軸J1~J6の回転角度が変更されることを規制する。なお、マスタロボット20は非常停止ボタン(図示略)を備えている。非常停止ボタンが押された場合に、マスタロボット20は非常停止ボタンが押されたことを示す非常停止信号を操作器40へ出力する。
【0033】
マスタロボット20は、マスタロボット20の動作速度が速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させてマスタロボット20を停止させる動作速度監視機能を有している。動作速度監視機能は、各軸J1~J6(複数の軸)の回転速度(動作速度)がそれぞれの軸に設定された速度上限値を超えた場合に、エラーを発生させてマスタロボット20を停止させる機能である。各軸J1~J6の回転速度は、各軸J1~J6の回転角度を検出するエンコーダの検出値に基づいて算出することができる。例えば、各軸に設けられた各モータが故障したり、各モータを駆動する回路が短絡等したりすることにより、マスタロボット20の動作速度が速度上限値を超える状況が発生し得る。
【0034】
動作速度監視機能は、マスタロボット20の動作速度が第1速度上限値を超えた場合に、第1エラーを発生させてマスタロボット20を停止させる第1動作速度監視機能と、第1動作速度監視機能よりも信頼性が低く、且つマスタロボット20の動作速度が第2速度上限値を超えた場合に、第2エラーを発生させてマスタロボット20を停止させる第2動作速度監視機能とを含んでいる。マスタロボット20は、安全に関わる電気制御システムである安全関連部と、それ以外の部分である非安全関連部とを含んでいる。安全関連部は、安全を示す安全信号を認識している間だけ、非安全関連部からの動作命令を受け付けてマスタロボット20を動作させる。第1動作速度監視機能は安全関連部により実行され、第2動作速度監視機能は非安全関連部により実行される。このため、第2動作速度監視機能の信頼性は、第1動作速度監視機能の信頼性よりも低い。
【0035】
第1速度上限値の初期値は、第2速度上限値の初期値よりも高く設定されている。具体的には、各軸J1~J6の第1速度上限値の初期値は、各軸J1~J6の第2速度上限値の初期値よりもそれぞれ高く設定されている。そして、第2速度上限値は、第1速度上限値よりも自動的に低く設定される。このため、第1速度上限値を下げた場合は、下げられた第1速度上限値よりも低くなるように第2速度上限値が自動的に設定される。そして、マスタロボット20の動作速度は、通常は第2速度上限値よりも低くなるように制御される。
【0036】
第1エラーと第2エラーとは、互いに番号の異なるエラーである。第1エラーは、第1動作速度監視機能により出力されたことを示す固有の番号である。第2エラーは、第2動作速度監視機能により出力されたことを示す固有の番号である。
【0037】
制御部26は、アーム22に作用する外力に従って、アーム22の姿勢を制御する。詳しくは、制御部26は、アーム22に作用する重力及び摩擦力のみを補償するトルクを各軸に対応するモータにより発生させ、アーム22を外力に従って動作させる柔軟制御を行う。そして、制御部26は、アーム22に作用する外力がなくなった時のアーム22の姿勢を保持する。すなわち、マスタロボット20は、ユーザが加えた外力によりアーム22の姿勢を変更して保持可能である。本実施形態では、ユーザは、ダイレクトティーチによりアーム22を直接掴んで移動させることができ、そしてアーム22の姿勢を保持することができる(ダイレクトティーチモード)。制御部26は、マスタロボット20の各軸J1~J6のエンコーダの検出結果を、スレーブロボット30の制御部36へ送信する。
【0038】
マスタロボット20には、ケーブル29によってスレーブロボット30が接続されている。スレーブロボット30(従ロボット)は、例えばマスタロボット20と同型(例えば6軸の垂直多関節型)でマスタロボット20よりも大型のロボットである。スレーブロボット30は、安全柵G内に設置されている。スレーブロボット30は、マスタロボット20よりも大型であること、マスタロボット20と形状が若干異なることを除いて、マスタロボット20と同様の構成を備えている。スレーブロボット30は、基台(ベース)31とアーム32とを備えている。アーム32の先端には、ハンド(図示略)が取り付けられる。スレーブロボット30の各軸(対応軸)は、マスタロボット20の各軸J1~J6に対応している。
【0039】
基台31の内部には、スレーブロボット30及びハンドの動作を制御する制御部36が設けられている。制御部36は、CPU、ROM、RAM、駆動回路、及び入出力インターフェース等を備えるコンピュータとして構成されている。制御部26と制御部36とはケーブル29を介して通信可能であり、互いに情報を送受信する。
【0040】
スレーブロボット30の各軸(各関節)には、各軸の回転角度を検出するエンコーダ(図示略)がそれぞれ設けられている。すなわち、エンコーダは、アーム32の制御点の位置及び方向(以下、「アーム32の姿勢」という)を検出する。制御点は、アーム32の先端の中央と、例えば一対の爪の中間(TCP:Tool Center Position)とから選択可能である。
【0041】
スレーブロボット30の各軸には、ブレーキ(図示略)が設けられている。ブレーキは、各軸を制動して、各軸の角度が変更されることを規制する。
【0042】
制御部36は、スレーブロボット30の各軸(各関節)の角度を、マスタロボット20の対応する各軸(各関節)の角度に一致させるように、スレーブロボット30の各軸に対応するモータを制御する。すなわち、制御部36は、ユーザがマスタロボット20に外力を加えてマスタロボット20の姿勢を変更する操作を行うことにより、スレーブロボット30の姿勢をマスタロボット20の姿勢に一致させるように制御する。これにより、マスタロボット20は、ユーザが加えた外力により姿勢が変更され、マスタロボット20の姿勢に一致するようにスレーブロボット30の姿勢を制御する主従ロボット動作機能(主従ロボット動作モード)を実行可能である。
【0043】
詳しくは、制御部36は、マスタロボット20の各軸のエンコーダ、及びスレーブロボット30の各軸のエンコーダの検出結果に基づいて、スレーブロボット30の各軸に対応するモータをフィードバック制御する。すなわち、スレーブロボット30の各軸は、マスタロボット20の各軸に倣った動きを追従して行う。制御部36は、スレーブロボット30の各軸のエンコーダの検出結果を、マスタロボット20の制御部26へ送信する。なお、マスタロボット20の制御部26及びスレーブロボット30の制御部36により、制御部が構成されている。
【0044】
主従ロボット動作モードが実行されることにより、マスタロボット20の各軸の角度θ1~θ6に、スレーブロボット30の各軸の角度θ1~θ6が一致させられる。
【0045】
マスタロボット20には、操作器40が接続されている。操作器40(人協働ロボットの動作速度監視機能の確認装置)は、ティーチングペンダント、タブレット端末、スマートフォン、ノートPC、PC等である。例えば操作器40は、ユーザによるタッチ操作を受け付けるとともに情報を表示するタッチパネルにより構成された表示部41を備えている。操作器40は、主従ロボットシステム10を制御する制御プログラムがインストールされ、制御プログラムを実行することでユーザによる主従ロボットシステム10の制御を可能とする。例えば、操作器40は、ユーザの手動操作により、制御部26を介してマスタロボット20を動作させる(手動動作モード)。あるいは、操作器40は、ティーチングされた動作プログラムを実行することにより、制御部26を介してマスタロボット20を自動動作させる。
【0046】
操作器40は、表示部41により表示されたイネーブルボタン42及びフォワードボタン43(2つの被操作部)を備えている。操作器40は、ユーザによりイネーブルボタン42及びフォワードボタン43が押されている(操作されている)間のみマスタロボット20を手動動作させることを許可し、イネーブルボタン42及びフォワードボタン43の少なくとも一方が押されていない状態になった時にマスタロボット20を停止させる。なお、イネーブルボタン42及びフォワードボタン43の少なくとも一方が、操作器40に設けられた物理的なスイッチであってもよい。例えば、イネーブルボタン42に代えて、操作器40の背面にイネーブルスイッチ(図示略)が設けられていてもよい。
【0047】
また、操作器40は、制御プログラムを実行することでユーザによる主従ロボットシステム10の設定及び確認を可能とする。制御プログラム(人協働ロボットの動作速度監視機能の確認プログラム)は、主従ロボット動作機能の有効及び無効の設定機能、SLS値(Safely-Limited Speed、第1速度上限値)の設定機能、非常停止機能の確認機能、及びSLS機能(第1動作速度監視機能)の確認機能等を含んでいる。
【0048】
図2に示すように、操作器40は、判定部45、手順通知部46、及び結果通知部47を備えている。操作器40は、制御プログラムを実行することにより、判定部45、手順通知部46、及び結果通知部47の機能を実現する。判定部45は、マスタロボット20が所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する。手順通知部は、判定部45により汚損使用が実行されたと判定された場合に、SLS機能(動作速度監視機能)が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を表示部41により表示させる。結果通知部47は、確認手順が実行された結果に基づいて、SLS機能が正常であるか否かを示す画像を表示部41により表示させる。
【0049】
図3に示すように、主従ロボット動作機能を有効に設定する画像において、ユーザが有効にする操作を行うことにより、操作器40は主従ロボット動作機能を有効にする。そして、図4に示すように、操作器40は、主従ロボット動作機能を有効にしたことを示す画像を表示部41により表示させる。
【0050】
図5は、SLS機能を確認する手順を示すフローチャートである。この一連の処理は、S12及びSS21の処理を除いて操作器40により実行される。この一連の処理は、主従ロボット動作モードが実行されている状態、すなわち主従ロボット動作機能が有効にされている状態で開始される。
【0051】
まず、主従ロボット動作機能を無効にする操作があったか否か判定する(S10)。具体的には、図6に示すように、主従ロボット動作機能を無効する画像において、ユーザが無効にする操作を行ったか否か判定する。すなわち、主従ロボット動作モードが実行されたことにより、マスタロボット20が汚損度2(所定汚損度)よりも高い汚損度3の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する。そして、主従ロボット動作機能の実行が終了した場合に、汚損使用が実行されたと判定する。そして、図6の画像において、ユーザが「OK」ボタンにタッチした場合に、無効にする操作を行ったと判定する。この判定において、主従ロボット動作機能を無効にする操作がないと判定した場合(S10:NO)、S10の判定を繰り返す。
【0052】
一方、S10の判定において、主従ロボット動作機能を無効にする操作があったと判定した場合(S10:YES)、非常停止機能を確認させる画像を表示する(S11)。具体的には、図7に示すように、主従ロボット動作機能を無効にする前に、非常停止機能を確認することを指示する画像を表示部41により表示させる。図7の画像において、ユーザが「OK」ボタンにタッチした場合に、図8に示すように、非常停止機能を確認する手順を示す画像を表示部41により表示させる。
【0053】
続いて、ユーザは、非常停止機能を確認する操作を実行する(S12)。具体的には、ユーザは、マスタロボット20の上記非常停止ボタンを押した後に、図8の画像において「OK」ボタンにタッチする。
【0054】
続いて、非常停止機能は正常であるか否か判定する(S13)。具体的には、非常停止ボタンが押されたことを示す非常停止信号が出力されている場合に非常停止機能は正常であると判定し、非常停止信号が出力されていない場合に非常停止機能は正常でないと判定する。この判定において、非常停止機能は正常でないと判定した場合(S13:NO)、非常停止機能のエラーを示す画像を表示部41により表示させる(S14)。具体的には、図9に示すように、非常停止機能の確認に失敗したこと、及び非常停止機能のエラーに対応するエラー番号「XXXXX」を表示させる。なお、この場合に、もう一度S11の処理から実行し、再度、非常停止機能は正常でないと判定した場合に(S13:NO)、非常停止機能のエラーであることを確定してもよい。その後、この一連の処理を終了する(END)。また、この場合に、操作器40は、エラーの発生及びエラー内容を示すデータをエラーログ(エラー履歴)として記憶する。
【0055】
一方、S13の判定において、非常停止機能は正常であると判定した場合(S13:YES)、図10に示すように非常停止機能が正常であると確認したことを示す画像を表示部41により表示させる(S15)。
【0056】
続いて、主従ロボット動作機能を無効にする(S16)。具体的には、主従ロボット動作モードを終了する。これにより、主従ロボットシステム10は、主従ロボット動作モード以外の動作モードを実行可能となる。ただし、ここでは、手動動作モード以外の動作モードの実行を禁止し、手動動作モードのみを実行可能とする。SLS機能を確認させる画像を表示する(S17)。具体的には、図11に示すように、主従ロボット動作機能を無効にすると同時に、SLS機能を確認することを指示する画像を表示部41により表示させる。第2速度上限値をSLS値よりも自動的に低く設定することを禁止する(S18)。これにより、SLS値を下げたとしても、下げられたSLS値よりも低くなるように第2速度上限値が自動的に設定されることが禁止される。また、第2速度上限値は工場出荷時の値に設定される。
【0057】
図11の画像において、ユーザが「OK」ボタンにタッチした場合に、図12に示すように、SLS値を設定する手順を示す画像を表示部41により表示させる(S19)。図12の画像は、例えばSLS値を工場出荷時の10%の大きさに設定させるように指示する内容を含んでいる。工場出荷時の10%の大きさは、SLS値を設定可能な最低値である。図12の画像は、各軸J1~J6の工場出荷時のSLS値ω1~ω6[deg/s]、及び各軸J1~J6の設定するSLS値ω1a~ω6a[deg/s](設定可能な最低値)を含んでいる。
【0058】
続いて、手動動作モードで動作させる画像を表示する(S20)。具体的には、図13に示すように、手動操作キー(図示略)で1軸ずつ動作させることを指示する画像を表示部41により表示させる。なお、各軸J1~J6を動作させる速度は、設定可能な最低値に設定されたSLS値を超える速度に、操作器40が自動的に設定してもよいし、ユーザにより設定させてもよい。
【0059】
続いて、ユーザは手動動作モードで単軸を動作させる(S21)。具体的には、ユーザは、手動操作キーを操作して各軸J1~J6のうちの1つの軸を動作させる。このとき、操作器40は、ユーザがイネーブルボタン42及びフォワードボタン43が押している間のみマスタロボット20を手動動作させることを許可し、イネーブルボタン42及びフォワードボタン43の少なくとも一方が押されていない状態になった時にマスタロボット20を停止させる。
【0060】
続いて、SLS値超過のエラーが発生したか否か判定する(S22)。具体的には、マスタロボット20のSLS機能(第1動作速度監視機能)により、上記第1エラーが発生させられてマスタロボット20が停止させられたか否か判定する。この判定は、各軸J1~J6にそれぞれ設定された判定動作角度(所定角度)だけ各軸J1~J6が回転するまでに行う。判定動作角度は、例えば第1エラーが発生した時の各軸J1~J6の実際の回転角度の3倍(略3倍)に設定されている。なお、ユーザは、マニュアルの記載等により、この判定動作角度を把握しており、判定が終了しない場合は判定動作角度まで各軸J1~J6を回転させる。この判定において、SLS値超過のエラーが発生していないと判定した場合(S22:NO)、SLS機能のエラーを示す画像を表示部41により表示させる(S23)。例えば、ユーザによりn軸が手動操作された場合、図14に示すように、n軸のSLS機能の確認に失敗したこと、及びn軸のSLS機能のエラーに対応するエラー番号「YYYYn」を表示させる。その後、この一連の処理を終了する(END)。また、この場合に、操作器40は、エラーの発生及びエラー内容を示すデータをエラーログ(エラー履歴)として記憶する。
【0061】
一方、S22の判定において、SLS値超過のエラーが発生したと判定した場合(S22:YES)、図15に示すようにn軸のSLS機能が正常であると確認したことを示す画像を表示部41により表示させる(S24)。
【0062】
続いて、全軸のSLS機能の確認が終了したか否か判定する(S25)。具体的には、SLS値超過のエラーが発生しなかった軸がなく(S23の処理が実行されず)、全軸においてSLS値超過のエラーが発生した場合に、全軸のSLS機能の確認が終了したと判定する。この判定において、全軸のSLS機能の確認が終了していないと判定した場合(S25:NO)、S21の処理から再度実行する。S21の処理では、ユーザは、手動操作キーを操作して各軸J1~J6のうちの未だ動作させていない1つの軸を動作させる。すなわち、操作器40は、マスタロボット20の軸J1~J6(複数の軸)を1つずつ駆動させてSLS機能(動作速度監視機能)が正常である否か確認させるように、確認手順を示す画像を表示部41により表示させる。
【0063】
一方、S25の判定において、全軸のSLS機能の確認が終了したと判定した場合(S25:YES)、図16に示すように、SLS値を再設定する手順を示す画像を表示部41により表示させる(S26)。図16の画像は、SLS値を再設定させるように指示する内容を含んでいる。図16の画像は、各軸J1~J6の工場出荷時のSLS値ω1~ω6[deg/s]を含んでいる。ユーザがSLS値を再設定した場合は、操作器40は第2速度上限値をSLS値よりも自動的に低く設定することの禁止を解除する。また、手動動作モード以外の動作モードの実行の禁止を解除する。その後、この一連の処理を終了する(END)。また、操作器40は、非常停止機能が正常であると確認されたこと及びSLS機能が正常であると確認されたことを示すデータを操作ログ(操作履歴)として記憶する。
【0064】
なお、S10の処理が判定部45としての処理に相当し、S17,S19,S20の処理が手順通知部46としての処理に相当し、S22~S24の処理が結果通知部47としての処理に相当する。
【0065】
以上詳述した本実施形態は、以下の利点を有する。
【0066】
・表示部41は画像を表示する。判定部45は、マスタロボット20が汚損度2(所定汚損度)よりも高い汚損度3の環境で使用される汚損使用が実行されたか否か判定する。手順通知部46は、判定部45により汚損使用が実行されたと判定された場合に、SLS機能(動作速度監視機能)が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像(図11~13)を表示部41により表示させる。このため、ユーザは、表示部41により表示された確認手順を示す画像に従って、確認手順を実行することができる。結果通知部47は、確認手順が実行された結果に基づいて、SLS機能が正常であるか否かを示す画像(図14,15)を表示部41により表示させる。このため、ユーザは、表示部41により表示されたSLS機能が正常であるか否かを示す画像により、SLS機能が正常であるか否か確認することができる。したがって、協働ロボットが想定した環境よりも汚損度が高い環境で使用された場合に、SLS機能が正常であるか否か確認することができる。
【0067】
・判定部45は、主従ロボット動作機能が有効から無効にされた(主従ロボット動作機能の実行が終了した)場合に、汚損使用が実行されたと判定する。したがって、マスタロボット20が使用された環境等をユーザにより入力させなくても、主従ロボット動作機能が実行されてマスタロボット20が汚損度2よりも高い汚損度3の環境で使用された場合に、SLS機能が正常であるか否か確認することができる。
【0068】
・手順通知部46は、SLS機能(第1動作速度監視機能)が正常であるか否か確認する確認手順を示す画像を表示部41により表示させる際に、第2速度上限値がSLS値(第1速度上限値)よりも自動的に低く設定されることを禁止する。このため、SLS値を第2速度上限値よりも低く設定することが可能となり、SLS機能が正常であるか否か確認する確認手順を実行することで、SLS機能が正常であるか否か確認することができる。なお、マスタロボット20の動作速度が第2速度上限値を超えた時点で第2動作速度監視機能が働いてマスタロボット20が停止され、SLS機能が正常であるか否か確認することができないことを、上記構成によれば避けることができる。
【0069】
・複数の軸を同時に駆動してSLS機能(動作速度監視機能)が正常であるか否か確認すると、SLS機能が正常である軸の動作速度がSLS値(速度上限値)を超えなければマスタロボット20が動作し続け、SLS機能の故障時にマスタロボット20が停止しない機会が増えるおそれがある。この点、手順通知部46は、マスタロボット20の複数の軸を1つずつ駆動させてSLS機能が正常である否か確認させるように、確認手順を示す画像(図13)を表示部41により表示させる。このため、駆動されている1つの軸のSLS機能が故障している場合のみマスタロボット20が停止せず、マスタロボット20が停止しない機会が増えることを抑制することができる。
【0070】
・手順通知部46は、SLS値を工場出荷時の10%(設定可能な最低値)に設定させるように、確認手順を示す画像(図12)を表示部41により表示させる。こうした構成によれば、マスタロボット20の動作速度が低い状態でSLS値を超えさせることができるため、SLS機能が正常か否かを安全な状態で確認することができる。
【0071】
・操作器40は、マスタロボット20を動作させるためにユーザが同時に操作する必要があるイネーブルボタン42及びフォワードボタン43(2つの被操作部)を備えている。そして、手順通知部46は、確認手順を示す画像(図11~13)を表示部41により表示させる際に、イネーブルボタン42及びフォワードボタン43の少なくとも一方が操作されていない状態になった場合に、マスタロボット20を停止させる。こうした構成によれば、SLS機能が故障していて確認手順の実行中にマスタロボット20が停止しなかった場合であっても、ユーザがイネーブルボタン42及びフォワードボタン43の少なくとも一方から手を離すことにより、マスタロボット20を直ちに停止させることができる。
【0072】
なお、上記実施形態を、以下のように変更して実施することもできる。上記実施形態と同一の部分については、同一の符号を付すことにより説明を省略する。
【0073】
・イネーブルボタン42を省略して、ユーザがフォワードボタン43を操作するだけでマスタロボット20を動作させることができるようにしてもよい。
【0074】
図5のS20,S21の処理に代えて、操作器40は、各軸J1~J6を動作させる速度を、設定可能な最低値に設定されたSLS値を超える速度に自動的に設定し、1軸ずつ自動的に動作させてもよい。
【0075】
・手順通知部46は、SLS値を工場出荷時の20%等、設定可能な最低値以外の値に設定させるように、確認手順を示す画像を表示部41により表示させてもよい。そして、操作器40は、SLS値を超える動作速度に、マスタロボット20の動作速度を自動的に設定する又はユーザにより設定させればよい。
【0076】
・操作器40において、第2速度上限値を第1速度上限値よりも自動的に低く設定する機能を省略することもできる。
【0077】
・判定部45は、上記汚損使用が実行されたか否かを、マスタロボット20が使用された環境をユーザにより入力させて入力結果に基づいて判定したり、マスタロボット20が使用された環境の汚損度をユーザにより入力させて入力結果に基づいて判定したりする等、任意の方法により判定することができる。すなわち、汚損使用は、主従ロボット動作モードに限らず、マスタロボット20が所定汚損度よりも高い汚損度の環境で使用された他の使用であってもよい。そして、汚損使用が実行されたと判定部45により判定された場合に、操作器40は図5のS11以降の処理を実行してもよい。
【0078】
・マスタロボット20が使用される環境の汚損度として想定された所定汚損度は、汚損度2に限らず、例えば汚損度1であってもよい。また、所定汚損度は、IEC規格により定められた汚損度に限らず、他の規格で定められた汚損度であってもよいし、ユーザが独自に定めた汚損度であってもよい。
【0079】
・操作器40は、マスタロボット20の動作速度が第2速度上限値を超えた場合に、第2エラーを発生させてマスタロボット20を停止させる第2動作速度監視機能(動作速度監視機能)が正常であるか否か確認することもできる。その場合、操作器40は、図5のフローチャートにおいて、SLS機能を第2動作速度監視機能に代え、SLS値(第1速度上限値)を第2速度上限値に代えて、同様の処理を実行すればよい。なお、S18の処理は省略可能である。また、マスタロボット20はSLS機能(第1動作速度監視機能)及び第2動作速度監視機能の一方のみを備え、操作器40はその動作速度監視機能が正常であるか否か確認する確認装置であってもよい。
【0080】
・マスタロボット20又はスレーブロボット30に設けられて、マスタロボット20及びスレーブロボット30を制御する1つの制御部により、制御部26及び制御部36の機能を実現することもできる。
【0081】
・マスタロボット20とスレーブロボット30とは、同形状で大きさのみ異なるロボットであってもよい。また、マスタロボット20とスレーブロボット30とは、形状及び大きさが同一のロボットであってもよい。
【0082】
・マスタロボット20(人協働ロボット)の動作速度監視機能の確認プログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体(記録媒体)に記憶されていてもよい。
【0083】
なお、上記実施形態及びその変更例を、組み合わせ可能な範囲で組み合わせて実施することもできる。
【符号の説明】
【0084】
10…主従ロボットシステム、20…マスタロボット(主ロボット)、30…スレーブロボット(従ロボット)、40…操作器(動作速度監視機能の確認装置)、41…表示部、45…判定部、46…手順通知部、47…結果通知部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16