(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158163
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】吸収性物品及び体液検知方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/42 20060101AFI20241031BHJP
A61F 5/44 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A61F13/42 F
A61F5/44 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073125
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183462
【氏名又は名称】日本製紙クレシア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】522494282
【氏名又は名称】Lasiina株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒須 一博
(72)【発明者】
【氏名】細田 涼太
(72)【発明者】
【氏名】野正 竜太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
4C098
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BB13
3B200BB14
3B200DF01
3B200DF04
3B200EA01
4C098AA09
4C098CC08
4C098CD09
(57)【要約】
【課題】排尿のタイミングと排尿量とを精度よく検出することができ、かつ、排尿の検知における電気的な安全性を確保するとともに有害物の発生を低減、抑制することができる。
【解決手段】軽失禁パッド2は、液透過性の肌側面シート21と、液不透過性のバックシート23と、肌側面シート21とバックシート23との間に配置された吸収体22と、を有し、バックシート23上に、バックシート23の幅方向における中央線を挟んで、幅方向において相互に離間して、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性の肌側面シートと、液不透過性のバックシートと、前記肌側面シートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有し、
前記バックシート上に、前記バックシートの幅方向における中央線を挟んで、前記幅方向において相互に離間して、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備える、
ことを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記一方の側に備えられている前記糸部材のうちの少なくとも1本と前記他方の側に備えられている前記糸部材のうちの少なくとも1本との間隔が20mm以上かつ50mm以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記一方の側に備えられている前記糸部材及び前記他方の側に備えられている前記糸部材へと供給する電流が1mA以下である、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記糸部材が、ナイロン繊維の表面に導電性を備える金属をめっきした繊維を複数束ねて1本として作成されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項5】
液透過性の肌側面シートと、液不透過性のバックシートと、前記肌側面シートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品における体液検知方法であり、
前記バックシート上に、前記バックシートの幅方向における中央線を挟んで、前記幅方向において相互に離間させて、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置するとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置し、
前記一方の側の前記糸部材と前記他方の側の前記糸部材との間における通電の程度の時系列での変化に基づいて体液を検知する、
ことを特徴とする体液検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿等の体液を検知する仕組みを備える吸収性物品、及び吸収性物品における体液検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排尿を検知するセンサーを備える吸収性物品の従来の技術として、導電性インクによる排尿センサーを設けることのできるセンサー付き着用物品であって、排尿センサーは、樹脂フィルムにより形成される印刷基材と、印刷基材の表面に塗布された導電性インクによる、センサー素子を形成する複数の印刷電極と、これら複数の印刷電極を接続する導線部と、導線部が接続される端子部とを含んで構成されているセンサー付き着用物品が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載のセンサー付き着用物品では、印刷基材は、通気領域として機能する通気開口部を有している。特許文献1に記載のセンサー付き着用物品では、また、排尿センサーは、尿とりパッドの裏面シートの表面に印刷電極を密着させており、また、粘着剤が塗布された被覆シートにより覆われて、尿とりパッドの裏面シートに貼付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のセンサー付き着用物品を含む従来の技術では、排尿量が比較的多い場合に排尿を検知することを前提とするものが多いため、排尿センサーが大型になる傾向があり、軽度の尿もれに対応する軽失禁用の仕組みとしては不向きである、という問題がある。また、電気的安全性や有害物の発生については検討されていない、という問題がある。
【0005】
このため、比較的少量の排尿であってもタイミングよくかつ精度よく検出することができる、サイズが比較的小さい軽失禁パッドが求められている。また、電気的安全性の担保や有害物の発生の低減、抑制も重要である。
【0006】
そこで本発明は、1つの側面では、排尿のタイミングと排尿量とを精度よく検出することができ、かつ、排尿の検知における電気的な安全性を確保するとともに有害物の発生を低減、抑制することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る吸収性物品は、液透過性の肌側面シートと、液不透過性のバックシートと、前記肌側面シートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有し、前記バックシート上に、前記バックシートの幅方向における中央線を挟んで、前記幅方向において相互に離間して、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備える、ようにしてもよい。
【0008】
本発明に係る吸収性物品は、前記一方の側に備えられている前記糸部材のうちの少なくとも1本と前記他方の側に備えられている前記糸部材のうちの少なくとも1本との間隔が20mm以上かつ50mm以下である、ようにしてもよい。
【0009】
本発明に係る吸収性物品は、前記一方の側に備えられている前記糸部材及び前記他方の側に備えられている前記糸部材へと供給する電流が1mA以下である、ようにしてもよい。
【0010】
本発明に係る吸収性物品は、前記糸部材が、ナイロン繊維の表面に導電性を備える金属をめっきした繊維を複数束ねて1本として作成されたものである、ようにしてもよい。
【0011】
また、本発明に係る体液検知方法は、液透過性の肌側面シートと、液不透過性のバックシートと、前記肌側面シートと前記バックシートとの間に配置された吸収体と、を有する吸収性物品における体液検知方法であり、前記バックシート上に、前記バックシートの幅方向における中央線を挟んで、前記幅方向において相互に離間させて、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置するとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置し、前記一方の側の前記糸部材と前記他方の側の前記糸部材との間における通電の程度の時系列での変化に基づいて体液を検知する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、1つの側面では、排尿のタイミングと排尿量とを精度よく検出することができ、かつ、排尿の検知における電気的な安全性を確保するとともに有害物の発生を低減、抑制することができることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態における体液の検知機構の全体構成の概略を模式的に示す図である。
【
図2】
図1の体液の検知機構の軽失禁パッドであって本発明の実施の形態に係る軽失禁パッドの、
図1(A)中のI-I矢視断面図である。
【
図3】実施の形態に係る軽失禁パッドのバックシートの表面における導電部の形成態様を模式的に示す平面図である。
【
図4】実施の形態に係る軽失禁パッドの導電部(導電糸)どうしの間隔を説明する平面図である。
【
図5】
図1の体液の検知機構のコネクタの構成を示す一部分解斜視図である。
【
図6】実施の形態に係る軽失禁パッドの長手方向における端部に
図5のコネクタが取り付けられた状態を模式的に示す平面図である。
【
図7】検証試験1及び検証試験2の結果を示す図である。
【
図8】検証試験3及び検証試験4の結果を示す図である。
【
図9】検証試験5及び検証試験6の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照しながら説明する。下記の実施の形態では、本発明に係る吸収性物品(具体的には、軽失禁パッド2)が
図1に示す体液の検知機構1へと組み込まれているとともに本発明に係る体液検知方法が
図1に示す体液の検知機構1の吸収性物品(具体的には、軽失禁パッド2)における体液の検知に適用されている場合を例に挙げて説明する。なお、各図は、各構成部材の寸法の相互の大小関係や形状を規定するものではない。
【0015】
実施の形態の説明では、次のように定義する。軽失禁パッド2の着用とは、体液の吸収前後を問わず、軽失禁パッド2を身体(具体的には、下半身、下腹部)に装着した状態をいう。軽失禁パッド2は、衣服の内部で身体に装着するものであるが、少なくとも一部が外部に露出するように身体に装着してもよい。長手方向とは、軽失禁パッド2を着用したときに着用者の股間部を介して身体の前後に亘る方向であり、各図中のX軸方向である。幅方向とは、長手方向に対して直交する方向であり、各図中のY軸方向である。厚み方向とは、長手方向及び幅方向に対して直交する方向であって、各構成部材が積層される方向であり、各図中のZ軸方向である。平面とは、各図中のX軸及びY軸に沿うX-Y面である。長手側面とは、長手方向に沿う側面であり、各図中のX軸及びZ軸に沿うX-Z面である。長手断面とは、長手方向に沿う断面であり、各図中のX軸及びZ軸に沿うX-Z断面である。幅側面とは、幅方向に沿う側面であり、各図中のY軸及びZ軸に沿うY-Z面である。肌側とは、軽失禁パッド2を着用したときに着用者の肌に当接する表面や肌を臨む表面の側であり、各図中のZ軸の矢印の向きの側である。非肌側とは、軽失禁パッド2を着用したときに着用者の衣服に接触する表面や衣服を臨む表面の側であり、各図中のZ軸の矢印の向きと反対の側である。体液とは、尿、血液、軟便中の水分などの体内から体外へと排出された液体をいう。
【0016】
(体液の検知機構)
図1は、本発明に係る吸収性物品の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る軽失禁パッド2を含む体液の検知機構1の全体構成の概略を模式的に示す図である。
【0017】
なお、本発明の適用対象は軽失禁パッドに限定されるものではなく、本発明は種々の吸収性物品に適用され得る。本発明が適用され得る吸収性物品としては、ベビー用又は成人用を問わず吸収性を備える種々の物品が挙げられ、例えば、軽失禁パッドのほかに、尿吸収パッド、パンツ型紙おむつ、テープ止め紙おむつなどが挙げられる。アウターとしての例えば紙おむつとインナーとしての軽失禁パッドとが組み合わされてもよい。
【0018】
実施の形態における体液の検知機構1は、体液(具体的には例えば、軽度の尿もれに伴う比較的少量の排尿)を検知して前記体液の検知に関係するデータを外部端末へと送信するための仕組みであり、軽失禁パッド2と、コネクタ3と、発信機9と、を有する。コネクタ3と発信機9とはコネクタハーネス10を介して電気的に接続される。
【0019】
(軽失禁パッド)
図2は、軽失禁パッド2の、
図1(A)中のI-I矢視断面図である。
図2では分かり易さを考慮して一部の構成部材を厚み方向において相互に離間させて図示しているが、各構成部材は厚み方向において基本的には相互に密接する。ただし、構成部材どうしの間に部分的に隙間を有するようにしてもよい。
【0020】
実施の形態に係る軽失禁パッド2は、液透過性の肌側面シート21と、液不透過性のバックシート23と、肌側面シート21とバックシート23との間に配置された吸収体22と、を有し、バックシート23上に、バックシート23の幅方向における中央線を挟んで、幅方向において相互に離間して、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備える、ようにしている。
【0021】
また、実施の形態に係る体液検知方法は、液透過性の肌側面シート21と、液不透過性のバックシート23と、肌側面シート21とバックシート23との間に配置された吸収体22と、を有する軽失禁パッド2における体液検知方法であり、バックシート23上に、バックシート23の幅方向における中央線を挟んで、幅方向において相互に離間させて、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置するとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を配置し、一方の側の糸部材と他方の側の糸部材との間における通電の程度の時系列での変化に基づいて体液を検知する、ようにしている。
【0022】
軽失禁パッド2は、当該軽失禁パッド2を着用したときに相対的に着用者の肌側に位置して軽失禁パッド2の肌側の面を構成する液透過性の肌側面シート21と、肌側面シート21に対向して配置されて当該軽失禁パッド2を着用したときに相対的に着用者の肌側と反対側に位置して軽失禁パッド2の非肌側の面を構成する液不透過性のバックシート23と、肌側面シート21とバックシート23との間に配設される吸収体22と、を有する。軽失禁パッド2は肌側面シート21とバックシート23との間に吸収体22が挟まれている構造となり、体液は肌側面シート21を通して吸収体22に吸収及び保持される。
【0023】
肌側面シート21は、吸収体22へと向けて体液を速やかに通過させる液透過性のシート状部材であり、吸収体22を挟んで、バックシート23に対向して配置される。肌側面シート21は、液透過性を有するものであれば、特定の構成や構造には限定されない。肌側面シート21の平面視の形状は、特定の形状に限定されるものではなく、漏れがないように体液を吸収体22へと誘導するために必要とされる、吸収体22の肌側の面の一部又は全部を覆う形状であればよい。
【0024】
肌側面シート21用の基材は、液透過性を実現し得るものであれば、特定の材質には限定されない。肌側面シート21用の基材として、例えば、ポリエチレン(PE)とポリプロピレン(PP)との複合繊維、又は、ポリエチレン(PE)とポリエステルとの複合繊維が用いられて公知の方法で加工することによって得られる不織布が挙げられる。前記における公知の方法として、例えば、エアスルー法、サーマルボンド法、スパンレース法、及びスパンボンド法などが挙げられる。
【0025】
吸収体22は、肌側面シート21とバックシート23との間に配設され、体液を吸収及び保持する。吸収体22は、特定の構成や構造には限定されないものの、例えば、フラッフパルプと高吸収性ポリマーとを混合して形成されてよい。吸収体22の平面視の形状は、特定の形状には限定されないものの、例えば、長方形状、砂時計状、I字状、長方形の4角が円弧状の角丸四角形状、楕円形状、滴形状などが挙げられる。
【0026】
バックシート23は、吸収体22が保持する体液が衣類を濡らしたり皮膚表面に付着したりしないようにするための部材であり、通気性又は非通気性の液不透過性のシート状部材である。バックシート23は、液不透過性を有するものであれば、特定の構成や構造には限定されない。バックシート23は、平面視において肌側面シート21と概ね同様の形状及び大きさに形成され、吸収体22を挟んで、肌側面シート21に対向して配置される。
【0027】
バックシート23用の基材は、液不透過性を実現し得るものであれば、特定の材質には限定されない。バックシート23用の基材として、例えば、ポリエチレン(PE)などの合成樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0028】
バックシート23の肌側の面に接着層(図示省略)が形成される。接着層は、例えば、バックシート23の肌側の面に、ゴム系のホットメルト接着剤を霧状に塗布するスプレー塗布やスパイラル線状に塗布するスパイラル塗布によって形成される接着剤層であってよい。
【0029】
バックシート23の肌側の面に、一対の導電部材24a,24bを有する導電部24が配設される。一対の導電部材24a,24bは、相互に接触したり交差したりしない態様で、したがって相互に非導通の態様で、設けられる(
図3参照)。なお、
図3では、バックシート23に対する吸収体22及び圧着域25の位置を2点鎖線で仮想的に表示している。
【0030】
一対の導電部材24a,24bのそれぞれは、吸収体22の非肌側の面及びバックシート23(尚、接着層を含む)の肌側の面と接触している。
【0031】
一対の導電部材24a,24bは、図に示す例では、バックシート23の幅方向における中央線を挟んで幅方向において相互に離間して、吸収体22の長手方向の全長に亘って、各々が長手方向に沿って相互に平行に、平面視において一対の直線状に設けられる。
【0032】
一対の導電部材24a,24bは、各々が、少なくとも1本の、導電性を備える糸部材(「導電糸」と称する)によって構成される。導電性を備える糸部材(即ち、導電糸)としては、具体的には例えば、ナイロン繊維の表面に銀などの導電性を備える金属をめっきした繊維を複数束ねて1本として作成される糸が挙げられる。実施の形態に係る軽失禁パッド2は、一対の導電部材24a,24bの各々が1本の導電糸によって構成されるようにしているが、一対の導電部材24a,24bのうちの少なくとも一方が、複数本(例えば、2~5本程度)の導電糸によって構成されるようにしてもよい。
【0033】
ここで、吸収体22やバックシート23は導電性が低い。したがって、吸収体22やバックシート23が乾燥した状態であれば、一対の導電部材24a,24bの間は非導通の状態であり、電流が流れにくい。これに対し、平面視において一対の導電部材24a,24bに跨るように、或いは、導電部材24a,24bどうしを少なくとも一部において繋げるように、体液が吸収体22やバックシート23へと浸入/浸透すると、一対の導電部材24a,24bにおける電流の流れ易さ(言い換えると、一対の導電部材24a,24bの間における通電の程度)に変化が発生する。すなわち、体液が浸入/浸透して吸収体22やバックシート23が湿潤状態になると、これら吸収体22やバックシート23(尚、接着層を含む)と接触している一対の導電部材24a,24bの間が導通状態となり、体液が浸入/浸透していない場合と比べて、一対の導電部材24a,24bに電流が流れ易くなる。
【0034】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、特定の値には限定されないものの、下限値は、10mm程度であり、好ましくは20mm程度であり、さらに好ましくは30mm程度であり、また、上限値は、60mm程度であり、好ましくは50mm程度であり、さらに好ましくは40mm程度である。したがって、一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、例えば、10mm程度以上かつ60mm程度以下であり、好ましくは10mm程度以上かつ50mm程度以下であり、また好ましくは20mm程度以上かつ60mm程度以下であり、さらに好ましくは20mm程度以上かつ50mm程度以下であり、またさらに好ましくは20mm程度以上かつ40mm程度以下であり、またさらに好ましくは30mm程度以上かつ50mm程度以下であり、もっとも好ましくは30mm程度以上かつ40mm程度以下である。
【0035】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、これら導電部材24a,24bが各々1本の導電糸によって構成される場合には、これら2本の導電糸どうしの間隔である(
図4(A)参照)。
【0036】
また、一対の導電部材24a,24bのうちの少なくとも一方が複数本の導電糸によって構成されるようにしてもよく、この場合は、一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、一方の導電部材24aを構成する導電糸のうちの少なくとも1本と他方の導電部材24bを構成する導電糸のうちの少なくとも1本との間隔である。
【0037】
例えば、一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、一方の導電部材24aを構成する導電糸と他方の導電部材24bを構成する導電糸とのうち最も近い関係にある導電糸どうしの間隔である(
図4(B)、(C)参照)。
【0038】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、また、一方の導電部材24aを構成する導電糸のうち他方の導電部材24bに最も近い導電糸と、他方の導電部材24bを構成する導電糸のうちの少なくとも1本との間隔である(
図4(D)、(E)参照)。
【0039】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、また、一方の導電部材24aを構成する導電糸と他方の導電部材24bを構成する導電糸とのうち最も近い関係にないとともに最も遠い関係にない導電糸どうしの間隔である(
図4(F)参照)。
【0040】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wは、また、一方の導電部材24aを構成する導電糸と他方の導電部材24bを構成する導電糸とのうち最も遠い関係にある導電糸どうしの間隔である(
図4(G)参照)。
【0041】
なお、一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸は、バックシート23の幅方向における中央線(
図4中の矢印Cで示す位置において長手方向に沿う直線)を挟んで、前記中央線に関して対称であるように配置されてもよく(同図(A)(C)(F)(G))、或いは、前記中央線に関して非対称であるように配置されてもよい(同図(B)(D)(E))。
【0042】
一対の導電部材24a,24bの各々を構成する導電糸どうしの間隔Wを上記の範囲とすることにより、排尿のタイミングと排尿量とを特に精度よく検出することが可能となる。
【0043】
バックシート23の肌側の面に、一対の導電部材24a,24bが配置されたうえで、当該面に形成されている接着層(図示省略)により、吸収体22が接合固定され、さらに、肌側面シート21が取り付けられる。これにより、肌側面シート21とバックシート23との間に吸収体22が保持されて軽失禁パッド2が形成される。なお、肌側面シート21とバックシート23とは、これらの幅方向における両方の側部それぞれに配設されて立体ギャザーを形成するシートを介在させて接合されるようにしてもよい。
【0044】
軽失禁パッド2の長手方向における両端部各々の、肌側面シート21、導電部24、及びバックシート23(接着層を含む)が積層している部分それぞれに圧着域25が形成される。圧着域25は、体液の漏れ防止のために、ローレットパタンで熱エンボス加工することにより、シール部として形成される。圧着域25は、例えば、0.1mm程度の厚みに形成される。ただし、軽失禁パッド2の端部に圧着域25が形成されることはこの発明において必須の構成ではなく、圧着域25が形成されないようにしてもよい。
【0045】
一対の導電部材24a,24bは、バックシート23の長手方向における両端部分それぞれにおいて、特に圧着域25が形成される部分において、各々が相互に近づくように、長手方向に対して傾斜して配置されている。ただし、一対の導電部材24a,24bの各々が両端部分において相互に近づくように傾斜することは必須の構成ではなく、例えばコネクタ3の態様によっては、一対の導電部材24a,24bは、バックシート23の長手方向の全長に亘って一定幅で相互に平行に設けられてよい。
【0046】
(コネクタ)
図5は、実施の形態における体液の検知機構1のコネクタ3の構成を示す一部分解斜視図である。なお、本発明に係る吸収性物品と組み合わせて用いられるコネクタは、実施の形態におけるコネクタ3に限定されるものではなく、一対の導電部材24a,24bのそれぞれと、後述するコンタクト部4の一対のコンタクト部材4a,4bに相当する一対の部材のそれぞれと、が1対1で相互に電気的に接続しうる仕組みであれば、どのような仕組みであってもかまわない。
【0047】
コネクタ3は、軽失禁パッド2の長手方向における端部(図に示す例では具体的には、圧着域25)へと着脱自在に取り付けられて、コネクタハーネス10を介して、軽失禁パッド2の導電部24と発信機9とを電気的に接続させるための仕組みである。コネクタ3は、軽失禁パッド2の長手方向における両端部それぞれに形成される圧着域25のうち、着用者の身体(具体的には、下半身、下腹部)に装着された状態で、着用者の前側/腹側に位置する圧着域25へと取り付けられるようにしてもよく、或いは、着用者の後側/背側に位置する圧着域25へと取り付けられるようにしてもよい。
【0048】
コネクタ3は、長手方向における軽失禁パッド2の圧着域25へと取り付けられる側(「先端側」と称する)が開閉自在であるように相互に回動可能に連結されるボトムパーツ31及びトップパーツ32と、これらボトムパーツ31とトップパーツ32との間に介在するヒンジピン33及びトーションばね34と、ボトムパーツ31に備え付けられるコンタクト部4と、を有する。
【0049】
コンタクト部4は、一対のコンタクト部材4a,4bを有する。各コンタクト部材4a,4bは、導電性を備える金属製パーツとして形成され、軽失禁パッド2の導電部24と電気的に接続する接触部41と、接触部41とコネクタハーネス10とを電気的に接続する結節部42と、を有する。
【0050】
各コンタクト部材4a,4bは、それぞれ、導電性を備える1枚の薄い金属板/金属片が用いられて突起43を含む部材として形成される。接触部41に、複数の突起43が形成される。複数の突起43は、接触部41を構成する金属板/金属片の複数箇所を切曲げて前記金属板/金属片の板面に対して切り曲げた部分を垂直に若しくは概ね垂直に突出させる切起し加工によって形成される。各突起43の形態は特定の形状や大きさには限定されないものの、例えば、図に示す例のように、突起43は、接触部41を構成する金属板/金属片から切り起こされて形成され、幅側面視において直角三角形状に形成されてよい。
【0051】
結節部42は、接触部41と連接して形成され、コネクタハーネス10の導体の外周面に接触して前記導体と電気的に接続する。結節部42により、接触部41とコネクタハーネス10の導体とが電気的に接続する。
【0052】
ボトムパーツ31は、非導電性を備えるパーツとして形成され、コンタクト部4を保持する。ボトムパーツ31の材質は、非導電性を実現し得るものであれば、特定の種類には限定されない。ボトムパーツ31の材質として、例えば、非導電性の、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0053】
ボトムパーツ31は、肌側の面に、コンタクト部4の一対のコンタクト部材4a,4bのそれぞれが別々に嵌まる一対の凹部311を有する。これら一対の凹部311は、これら一対の凹部311どうしの間の仕切り314によって区切られて区画される。
【0054】
コンタクト部4の一対のコンタクト部材4a,4bは、ボトムパーツ31の一対の凹部311に別々に嵌まることにより、相互の非接触状態が確保された状態で、延いては相互の非導通状態が確保された状態で、ボトムパーツ31に保持される。
【0055】
ボトムパーツ31のうち、長手方向における、コネクタ3としての先端側を「先端部312」と称し、コネクタ3としての先端側と反対側を「基端部313」と称する。
【0056】
トップパーツ32は、非導電性を備えるパーツとして形成され、ヒンジピン33を介してボトムパーツ31に対して回動可能に連結される。トップパーツ32の材質は、非導電性を実現し得るものであれば、特定の種類には限定されない。トップパーツ32の材質として、例えば、ボトムパーツ31と同様に、非導電性の、ABS樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0057】
トップパーツ32は、平面視においてボトムパーツ31と概ね同様の形状及び大きさに形成され、ボトムパーツ31の先端部312と平面視において重なる押圧部321と、ボトムパーツ31の基端部313と平面視において重なる操作部322と、を有する。トップパーツ32の押圧部321と操作部322とは、屈曲部を介して、長手側面視においてく字形に屈曲して連接する。
【0058】
トップパーツ32の非肌側の面の、ボトムパーツ31の先端部312とトップパーツ32の押圧部321とが閉じた状態でコンタクト部材4a,4bの複数の突起43が形成されている位置と平面視において重なる位置のそれぞれに、突起43のうちの少なくとも先端部分が入り込むための穴323が形成されている。
【0059】
ヒンジピン33は、軸心が幅方向に沿って配設され、当該ヒンジピン33の軸心を回動中心としてトップパーツ32がボトムパーツ31に対して周方向に回動可能であるように、これらボトムパーツ31とトップパーツ32とを連結する。
【0060】
トーションばね34は、コイル巻きの部分にヒンジピン33を貫通させて、ボトムパーツ31とトップパーツ32との間に介在して設けられる。トーションばね34は、ヒンジピン33を介して、ボトムパーツ31とトップパーツ32との先端側が閉じるように、すなわちトップパーツ32の押圧部321がボトムパーツ31の先端部312へと押し付けられるように、トップパーツ32の操作部322をボトムパーツ31の基端部313から引き離す向きに付勢する。
【0061】
上記の構成により、コネクタ3のトップパーツ32の操作部322とボトムパーツ31の基端部313とが指で摘ままれて操作部322が基端部313へと向けて押圧されると、トップパーツ32がヒンジピン33を介してボトムパーツ31に対して回動し、トップパーツ32の押圧部321とボトムパーツ31の先端部312とが相互に離間してコネクタ3の先端側が開く。その状態でトップパーツ32の押圧部321とボトムパーツ31の先端部312との間に軽失禁パッド2の長手方向における端部(図に示す例では具体的には、圧着域25)を位置させたうえで、操作部322の押圧が解除されると、操作部322がトーションばね34の付勢力によって基端部313から引き離され、ヒンジピン33を介してコネクタ3の先端側が閉じてトップパーツ32の押圧部321がボトムパーツ31の先端部312へと押し付けられる。なお、図に示す例ではボトムパーツ31が非肌側でトップパーツ32が肌側になるようにしてコネクタ3が軽失禁パッド2へと取り付けられるようにしているが、ボトムパーツ31が肌側でトップパーツ32が非肌側になるようにしてコネクタ3が軽失禁パッド2へと取り付けられるようにしてもよい。
【0062】
コネクタ3が軽失禁パッド2へと取り付けられる際に、ボトムパーツ31の仕切り314のうちの少なくとも一部を平面視においてバックシート23上の一対の導電部材24a,24bどうしの間(特に、圧着域25における一対の導電部材24a,24bどうしの間隙24s)に位置させるように調整するための位置合わせとして、トップパーツ32の肌側の面に形成される中央リブ324が用いられる。トップパーツ32の中央リブ324の位置とボトムパーツ31の仕切り314の位置とは、平面視において相互に重なる。なお、軽失禁パッド2の肌側面シート21やバックシート23の表面に、一対の導電部材24a,24bどうしの間(特に、圧着域25における一対の導電部材24a,24bどうしの間隙24s)の位置を示す目印(言い換えると、中央リブ324の位置を合わせる目印)が設けられるようにしてもよい。
【0063】
コネクタ3の先端側が閉じてトップパーツ32の押圧部321がボトムパーツ31の先端部312へと押し付けられることにより、軽失禁パッド2の圧着域25が押圧部321と先端部312に備え付けられている一対のコンタクト部材4a,4bとによって挟持され、圧着域25へとコンタクト部材4a,4bの突起43が突き刺さる。突起43が圧着域25部分の内層の導電部材24a,24bへと到達し接触することにより(
図6も参照)、コンタクト部4が圧着域25に係止してコネクタ3が軽失禁パッド2へと着脱自在に取り付けられ、加えて、コンタクト部材4a,4bと導電部材24a,24bとが電気的に接続してコンタクト部4と導電部24とが導通状態となる。
【0064】
コネクタ3が軽失禁パッド2へと取り付けられている状態で、トップパーツ32の中央リブ324が、また、ボトムパーツ31の仕切り314のうちの少なくとも一部が、平面視においてバックシート23上の一対の導電部材24a,24bどうしの間(特に、圧着域25における一対の導電部材24a,24bどうしの間隙24s)に位置し、これにより、コンタクト部4の一対のコンタクト部材4a,4bは、各々が、軽失禁パッド2の一対の導電部材24a,24bのうちの一方のみと電気的に接続する。すなわち、一対のコンタクト部材4a,4bのうちの一方のコンタクト部材4aは一対の導電部材24a,24bのうちの一方の導電部材24aのみと電気的に接続し、また、他方のコンタクト部材4bは他方の導電部材24bのみと電気的に接続する。
【0065】
(発信機)
発信機9は、軽失禁パッド2における体液を検知するとともに前記体液の検知に関係するデータを外部端末へと送信するための機序であり、電源、計測部、及び通信部(いずれも図示省略)を有する。発信機9は、軽失禁パッド2の着用者の衣服に装着されて使用される。
【0066】
電源は、例えば電池によって構成され、コネクタ3及びコネクタハーネス10を介して軽失禁パッド2の一対の導電部材24a,24bのそれぞれに正極または負極が電気的に接続される。
【0067】
計測部は、一対の導電部材24a,24bにおける電流の流れ易さ(言い換えると、一対の導電部材24a,24bの間における通電の程度)を計測する。計測部は、例えば、テスターが用いられて構成されてもよく、また、テスターと同等の機能を備える機序として構成されてもよい。
【0068】
計測部は、例えば、一対の導電部材24a,24bのうち一方を正極とするとともに他方を負極として微弱な電流を供給(別言すると、通電)し、これら一対の導電部材24a,24bにおける電流の流れ易さを所定の時間間隔で計測して、前記電流の流れ易さを表す指標を出力する。計測部は、電流の流れ易さを表す指標として、例えば、電流値、電圧値、インピーダンスを出力する。
【0069】
計測部は、一対の導電部材24a,24bにおける電流の流れ易さを表す指標の時系列での変化に基づいて、体液(具体的には例えば、軽度の尿もれに伴う比較的少量の排尿)を検知する。具体的には、時系列で観測される一対の導電部材24a,24b(具体的には、導電糸どうしの間)における電流の流れ易さを表す指標に基づいて、当該一対の導電部材24a,24bにおける電流が流れ易くなったとき、電流が流れ易くなったのは吸収体22やバックシート23(尚、接着層を含む)が湿潤状態になって当該一対の導電部材24a,24bの間が導通状態となったためであり、湿潤状態になったのは体液が浸入/浸透したためであるので、計測部は体液(具体的には例えば、軽度の尿もれに伴う比較的少量の排尿)を検知することができる。
【0070】
通信部は、計測部から出力される電流の流れ易さを表す指標を、軽失禁パッド2における体液の検知に関係するデータとして、外部端末へと送信する。外部端末は、例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末などの携帯情報端末でもよく、パーソナルコンピューターなどの固定端末でもよく、或いは、サーバでもよい。通信部と外部端末とは、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、インターネット、無線通信網などを介して相互に通信可能に接続される。
【0071】
(吸収性物品及び体液検知方法の特性)
本発明に係る吸収性物品及び体液検知方法の特性を確認するために実施した検証試験の結果を下記に整理する。
【0072】
本検証試験では、本発明に係る吸収性物品の具体的な構成態様の一例としての、実施の形態に係る軽失禁パッド2に相当するパッドによる電流値の応答(別言すると、変動)が検証された。
【0073】
本検証試験では、一対の導電部材24a,24bの各々を構成する、導電性を備える糸部材(即ち、導電糸)として、ミツフジ株式会社製のAGpossの100d/34fが用いられた。AGpossは、銀めっき導電性繊維であり、ナイロン繊維の表面に銀をめっきした糸である。AGpossの100d/34fの導電性は500Ω/m以下である。
【0074】
一対の導電部材24a,24bの各々を1本の導電糸により構成し、一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間隔(
図4(A)における間隔W)の違いによる電流値の応答(変動)の精度を確認するため、導電糸どうしの間隔を5mmから50mmまでの範囲で変化させた。具体的には、導電糸どうしの間隔が、検証試験1は5mm、検証試験2は10mm、検証試験3は20mm、検証試験4及び検証試験5は30mm、検証試験6は40mm、検証試験7は50mmとした。
【0075】
本検証試験では、0.9%(w/w%)の生理食塩水を数回に分けて所定量ずつ軽失禁パッド2へと注水し、注水時点を含む時系列の電流値を計測した。なお、1回あたりの注水の所定量は、軽度の尿もれに伴う比較的少量の排尿の量として想定される量が考慮されて、40~100mLの範囲に設定された。
【0076】
本検証試験では、一対の導電部材24a,24bのうち一方を正極とするとともに他方を負極として0.6mAの電流を供給(別言すると、通電)し、注水に伴って一対の導電部材24a,24bの間に流れる電流を時系列で計測した。
【0077】
検証試験1乃至7ごとの、注水に伴って一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間に流れる電流の時系列の値として、
図7乃至
図10に示す結果が得られた。
【0078】
図7乃至
図10に示す結果から、注水に伴い、電流値が急峻に増加した後に低下することが確認された。このことから、導電部材24a,24bへと供給する(通電させる)電流が0.6mA程度の微弱な電流であっても、導電部材24a,24bとして導電糸を用いることにより、軽度の尿もれに伴う比較的少量の排尿の量として想定される40~100mL程度の注水に対して電流値が的確に応答(変動)することが確認された。
【0079】
なお、注水の積算量がパッドの吸収体の許容吸収量よりも小さければ、注水された生理食塩水は吸収体に吸収及び保持されるため、一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間は湿潤状態から次第に乾燥した状態になる。このため、一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間で電流が流れ易い状態から次第に流れにくい状態となり、時系列で計測される電流値は、増加した後に低下することとなる。
【0080】
図7乃至
図10に示す結果から、また、1回あたりの注水の量の多寡により、時系列で観測される電流値の増加の態様(例えば、増加の大きさ)や電流値が増加した後の低下の態様(例えば、低下に要する時間)に違いがあることが確認された。このことから、1回あたりの注水の量と電流値の変動の態様との間の関係を分析することにより、時系列で観測される電流値の変動の態様に基づいて、体液の量(例えば、排尿量)を計算/推計することが可能であることが確認された。なお、1個のパッドについての注水の積算量(即ち、計算/推計された体液の量の積算値)がさらに考慮されるようにしてもよい。
【0081】
ここで、一対の導電部材24a,24bに対して大きな電流量を供給すると、着用者が感電するリスクがある。しかしながら、1mA程度以下(例えば、本検証試験のように0.6mA程度)の電流であれば、着用者が感電するおそれはほぼないと考えられる。なお、一対の導電部材24a,24bのうち一方を正極とするとともに他方を負極として1mAの電流を供給(別言すると、通電)した場合、各部材や人体の電気抵抗などにより、実際には、1mAよりも小さい電流量になると考えられる。
【0082】
また、塩化物を含む液体(ここでは、体液)を電解すると消毒剤、殺菌剤である次亜塩素酸が生成され、一部はさらに酸化されて二酸化塩素、亜塩素酸(ClO2
-)、塩素酸(ClO3
-)、過塩素酸(ClO4
-)へと変換する。すなわち、一対の導電部材24a,24bに対する電流の供給により、有害物(特に、塩素種)が発生するリスクがある。したがって、一対の導電部材24a,24bに対して供給される電流は小さいほうが好ましい。すなわち、1mA程度以下(例えば、本検証試験のように0.6mA程度)の電流の供給によって排尿のタイミングと排尿量とを精度よく検出することができることは、有害物(特に、塩素種)の発生量を低減させる点から好ましい。
【0083】
図7乃至
図10に示す結果から、また、一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間隔(
図4(A)における間隔W)が、20mmから50mmまでの範囲のときは注水に対する電流値の応答(変動)が明確に観測され、20mm未満のときは注水の積算量が大きくなると電流値の応答(変動)が観測されなくなることが確認された。なお、生理食塩水の注水によって導電糸どうしの間に電解質(具体的には、ナトリウムイオンや塩化物イオン)が存在する状態となると電流が流れ、その後、導電糸どうしの間から電解質が無くなると電流が流れなくなる、と考えられる。そして、導電糸どうしの間隔が5mmや10mmのように狭い場合は、注水の積算量が大きい状態で導電糸どうしの間の湿潤エリアが真水に近い状態で満たされ、後から加えた生理食塩水の電解質が導電糸どうしの間の狭いエリアに拡散してこないために電流が流れない、と考えられ、一方、導電糸どうしの間隔が20mm以上の場合は後から加えた生理食塩水の電解質が導電糸どうしの間の比較的幅広いエリアに拡散し易い、と考えられる。
【0084】
(作用効果)
実施の形態に係る軽失禁パッド2及び体液検知方法によれば、バックシート23上に、バックシート23の幅方向における中央線を挟んで、幅方向において相互に離間して、一方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるとともに他方の側に少なくとも1本の導電性を備える糸部材を備えるようにしているので、排尿のタイミングと排尿量とを精度よく検出することが可能となり、かつ、排尿の検知における電気的な安全性を確保するとともに有害物の発生を低減、抑制することが可能となる。
【0085】
実施の形態に係る軽失禁パッド2及び体液検知方法によれば、また、一対の導電部材24a,24bとしての導電糸どうしの間隔(
図4(A)における間隔W)が20mm以上かつ50mm以下であるようにした場合には、排尿のタイミングと排尿量とを特に精度よく検出することが可能となる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成態様は上記の実施の形態に限定されるものではなく、上記の実施の形態に、本発明の要旨を逸脱しない範囲の変形や変更などが加えられた形態も本発明に含まれる。
【0087】
例えば、上記の実施の形態では本発明に係る吸収性物品の具体的な構成態様の一例としての軽失禁パッド2が
図1に示す体液の検知機構1へと組み込まれるようにしているが、本発明に係る吸収性物品が組み込まれる仕組みは
図1に示す体液の検知機構1に限定されるものではなく、本発明に係る吸収性物品は、例えば、液体の吸収性・保持性を備えて人や動物に着用される物品における液体を検知する種々の仕組みに組み込まれてよい。すなわち、例えば、本発明に係る吸収性物品は上記の実施の形態における軽失禁パッド2に限定されるものではなく、また、本発明に係る吸収性物品がコネクタハーネス10を介して電気的に接続する機序も上記の実施の形態における発信機9には限定されない。
【符号の説明】
【0088】
1 体液の検知機構
2 軽失禁パッド
21 肌側面シート
22 吸収体
23 バックシート
24 導電部
24a 導電部材(一対のうちの一方)
24b 導電部材(一対のうちの他方)
24s 圧着域における一対の導電部材どうしの間隙
25 圧着域
3 コネクタ
31 ボトムパーツ
311 凹部
312 先端部
313 基端部
314 仕切り
32 トップパーツ
321 押圧部
322 操作部
323 穴
324 中央リブ
33 ヒンジピン
34 トーションばね
4 コンタクト部
4a コンタクト部材(一対のうちの一方)
4b コンタクト部材(一対のうちの他方)
41 接触部
42 結節部
43 突起
9 発信機
10 コネクタハーネス