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  • 特開-車両用空調システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158167
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】車両用空調システム
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/22 20060101AFI20241031BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20241031BHJP
   B60H 1/00 20060101ALN20241031BHJP
【FI】
B60H1/22 611D
B60H1/22 611B
B60H1/32 626Z
B60H1/00 102V
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073134
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 大介
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211AA11
3L211BA01
3L211BA32
3L211DA53
3L211GA22
3L211GA49
3L211GA53
(57)【要約】
【課題】乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる車両用空調システムを提供する。
【解決手段】車両用空調システム10は、車室内11の複数の吹出口30から温度調整した空気を送風する空調装置20と、乗員を直接温める直接温熱デバイス50とを有する。直接温熱デバイス50によって乗員を温める場合には、空調装置20の加熱出力を抑制し、直接温熱デバイス50によって直接温められる乗員の身体部位から遠い吹出口30から送風する空気の熱量を増加させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の複数の吹出口から温度調整した空気を送風する空調装置と、乗員を直接温める直接温熱デバイスと、を有する車両用空調システムであって、
前記直接温熱デバイスによって前記乗員を温める場合には、前記空調装置の加熱出力を抑制し、前記直接温熱デバイスによって直接温められる前記乗員の身体部位から遠い前記吹出口から送風する空気の熱量を増加させる、
車両用空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内の複数の吹出口から温度調整された空気を送風する空調装置と、乗員を直接温める直接温熱デバイスとを有する車両用空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用空調装置は、車室内の複数の吹出口から温度調整された空気を送風する。それぞれの吹出口は、デフロスタ、インパネ上部、運転席および助手席の足元等に設けられる。一方、車両の電動化に伴い、乗員を直接温める直接温熱デバイスが採用されている。直接温熱デバイスには、シートヒータ、ステアリングヒータ、輻射ヒータ等が含まれる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-130247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した直接温熱デバイスは、乗員の身体を部分的に温める。換言すれば、直接温熱デバイスでは、乗員の身体を全体的に温めることができないため、乗員の快適性が損なわれる場合がある。このとき、空調装置の熱量(吹出温度または風量)を低下させた場合には、直接温熱デバイスによって温められる身体部分から遠い身体部位が温められない。一方、空調装置の熱量を増加させた場合には、余分な電力を消費することになる。
【0005】
そこで、本発明は、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる車両用空調システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用空調システムは、車室内の複数の吹出口から温度調整した空気を送風する空調装置と、乗員を直接温める直接温熱デバイスと、を有する車両用空調システムであって、直接温熱デバイスによって乗員を温める場合には、空調装置の加熱出力を抑制し、直接温熱デバイスによって直接温められる乗員の身体部位に遠い吹出口から送風する空気の熱量を増加させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の車両用空調システムによれば、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の一例である車両用空調システムを示す模式図である。
図2】車室内の吹出口の配置を示す模式図である。
図3】吹出口制御の流れを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態の一例について詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0010】
[車両用空調システム]
図1および図2を用いて、実施形態の一例である車両用空調システム10について説明する。
【0011】
図1に示すように、車両用空調システム10は、車室内11(図2参照)の複数の吹出口30から温度調整された空気を送風する空調装置20と、乗員を直接温める直接温熱デバイス50と、空調装置20の各機器および直接温熱デバイス50を制御する空調ECU(Electronic Control Unit)60とを有する。車両用空調システム10によれば、詳細は後述するが、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる。
【0012】
本実施形態の車両は、走行用のバッテリの電力のみによってモータ(図示なし)を駆動して走行するBEV(Battery Electric Vehicle)である。ただし、本発明の車両は、車両用空調システムの熱源を電気によって確保して入れば、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)等であってもよい。
【0013】
空調装置20は、空気を冷却または加熱して複数の吹出口30から車室内11に送風する。空調装置20は、車両の外部の空気を吸い込み、後述するデフロスタ吹出口31およびインパネ吹出口32から空気を送風する第1空気通路21と、車室内11の空気を吸い込み、後述する足元吹出口33および後部座席吹出口34から空気を送風する第2空気通路22とを有する。
【0014】
第1空気通路21の吸込口には、吸い込み量を調整する第1開閉ドア45が設けられる。第2空気通路22の吸込口には、吸い込み量を調整する第2開閉ドア46が設けられる。
【0015】
第1空気通路21および第2空気通路22には、上流側から下流側に向かって、空気流を発生させる送風機23と、冷凍サイクル(図示なし)に接続されると共に第1空気通路21および第2空気通路22を通過する空気を冷却するエバポレータ24と、加熱回路(図示なし)に接続されると共に第1空気通路21および第2空気通路22を通過する空気の一部を加熱するヒータコア25とが設けられる。ヒータコア25は、第1空気通路21および第2空気通路22のそれぞれの一部を塞ぐように配置される。
【0016】
第1空気通路21のヒータコア25の上流側には、第1空気通路21の幅方向にスライド可能なスライドドア48が設けられる。スライドドア48がヒータコア25の上流側を塞ぐ量を調整することによってヒータコア25を通過する空気量を調整する。例えば、スライドドア48によってヒータコア25を通過する空気量を多くすることによって、デフロスタ吹出口31およびインパネ吹出口32から送風する空気の吹出温度を増加させることができる。
【0017】
第2空気通路22のヒータコア25の上流側には、第2空気通路22の幅方向にスライド可能なスライドドア49が設けられる。スライドドア49がヒータコア25の上流側を塞ぐ量を調整することによってヒータコア25を通過する空気量を調整する。例えば、スライドドア49によってヒータコア25を通過する空気量を多くすることによって、足元吹出口33および後部座席吹出口34から送風する空気の吹出温度を上昇させることができる。
【0018】
また、第1空気通路21および第2空気通路22のヒータコア25下流側には、第1空気通路21と第2空気通路22との連通を開閉する開閉ドア47が設けられる。
【0019】
図1および図2に示すように、複数の吹出口30には、それぞれ後述するデフロスタ吹出口31と、インパネ吹出口32と、足元吹出口33と、後部座席吹出口34とが含まれる。
【0020】
デフロスタ吹出口31は、フロントガラス(図示なし)の内面側の下方に配置される。デフロスタ吹出口31は、複数(例えば4つ)形成され、第1空気通路21から分岐される。デフロスタ吹出口31の風量は、第1空気通路21との分岐部に設けられる開閉ドア41によって調整される。デフロスタ吹出口31の一つには、デフロスタ吹出口31から吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ71が設けられ、吹出温度センサ71を用いて送風する空気の吹出温度等を制御してもよい。
【0021】
インパネ吹出口32は、インストルメントパネル15の上部に配置される。インパネ吹出口32は、複数(例えば4つ)形成され、第1空気通路21から分岐される。インパネ吹出口32の風量は、それぞれのインパネ吹出口32の下流側に設けられた開閉ドア42によって調整される。また、インパネ吹出口32の風量は、第1空気通路21との分岐部に設けられた開閉ドア39によっても調整される。インパネ吹出口32の一つには、インパネ吹出口32から吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ72が設けられ、吹出温度センサ72を用いて送風する空気の吹出温度等を制御してもよい。
【0022】
足元吹出口33は、運転席側の足元と、助手席側の足元とにそれぞれ配置される。足元吹出口33は、第2空気通路22から分岐される。足元吹出口33の風量は、第2空気通路22との分岐部に設けられる開閉ドア43によって調整される。足元吹出口33の一つには、足元吹出口33から吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ73が設けられ、吹出温度センサ73を用いて送風する空気の吹出温度等を制御してもよい。
【0023】
後部座席吹出口34は、運転席の下方と、助手席の下方とにそれぞれ配置される。後部座席吹出口34は、第2空気通路22から分岐される。後部座席吹出口34の風量は、通路の途中部に設けられる開閉ドア44によって調整される。後部座席吹出口34の一つには、後部座席吹出口34から吹き出される空気の温度を検出する吹出温度センサ74が設けられ、吹出温度センサ74を用いて送風する空気の吹出温度等を制御してもよい。
【0024】
再度、図1に示すように、直接温熱デバイス50は、ヒータによって乗員を直接温める。直接温熱デバイス50は、それぞれ後述するシートヒータ51と、ステアリングヒータ52と、輻射ヒータ53とを含む。直接温熱デバイス50は、アームレストヒータ、ドアトリムヒータ、カーペットヒータを含んでもよい。
【0025】
シートヒータ51は、運転席または助手席に設けられる。シートヒータ51は、例えば電気ヒータによって運転席または助手席を温め、運転席または助手席に着座した乗員を直接温める。
【0026】
ステアリングヒータ52は、ステアリングハンドル14に設けられる。ステアリングヒータ52は、例えば電気ヒータによってステアリングハンドル14を温め、ステアリングハンドル14を把持する乗員の手を直接温める。
【0027】
輻射ヒータ53は、車室内11のインストルメントパネル15の表面に設けられる。輻射ヒータ53は、例えば電気ヒータを輻射熱の熱源として乗員の膝を直接温める。
【0028】
空調ECU60は、演算処理部であるCPU(Central Processing Unit)と、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の記憶部を有し、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。
【0029】
空調ECU60には、上述した吹出温度センサ71、72、73、74と、車両の外気温度を検出する外気温度センサ75と、車室内11の温度を検出する車内温度センサ76とが接続されている。また、空調ECU60は、上述したシートヒータ51と、ステアリングヒータ52と、輻射ヒータ53とに接続される。
【0030】
また、空調ECU60は、乗員が設定温度を設定可能な操作部65に接続される。また、空調ECU60は、車室内11が設定温度となるように、車室内11の温度、外気温等から目標吹出温度を設定し、吹出温度が目標吹出温度となるように、冷凍サイクルの機器、ヒータ回路の機器、各ドア、各シャッタの開度を調整する。
【0031】
さらに、空調ECU60は、それぞれ詳細は後述する、第1吹出口制御部61と、第2吹出口制御部62と、第3吹出口制御部63とを有する。第1吹出口制御部61、第2吹出口制御部62および第3吹出口制御部63は、CPUがRОMまたはRAMに格納されたプログラムを実行することにより実現される。
【0032】
第1吹出口制御部61は、シートヒータ51のみを作動している場合には、操作部65によって設定された設定温度よりも第1所定温度(例えば1℃)低い設定温度で空調装置20を制御する。つまり、シートヒータ51によって十分に温められた乗員に対して空調装置20の加熱出力を抑制する。これにより、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる。なお、以下では、第1所定温度、第2所定温度、第3所定温度の順に設定温度との差が大きいものとする。
【0033】
第2吹出口制御部62は、シートヒータ51およびステアリングヒータ52のみを作動している場合には、操作部65によって設定された設定温度よりも第2所定温度(例えば2℃)低い設定温度で空調装置20を制御する。同時に、足元吹出口33から送風する空気の熱量を増加させる。具体的には、スライドドア49を調整して第2空気通路22においてヒータコア25を通過する空気を増加させて足元吹出口33の目標吹出温度を増加させてもよく、足元吹出口33の風量を増加させてもよい。
【0034】
なお、スライドドア49を調整して第2空気通路22においてヒータコア25を通過する空気を増加させた場合には、後部座席吹出口34から送風する空気の熱量が必要以上に増加しないように開閉ドア44によって調整する。
【0035】
これにより、シートヒータ51およびステアリングヒータ52によって十分に温められた乗員に対して空調装置20の加熱出力を抑制し、シートヒータ51およびステアリングヒータ52によって温められた乗員の上半身から遠い乗員の足元を温めることができる。その結果、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる。
【0036】
第3吹出口制御部63は、シートヒータ51、ステアリングヒータ52および輻射ヒータ53のみを作動している場合には、操作部65によって設定された設定温度よりも第3所定温度(例えば3℃)低い設定温度で空調装置20を制御する。同時に、足元吹出口33およびインパネ吹出口32から送風する空気の熱量を増加させる。具体的には、スライドドア48、49を調整して第1空気通路21および第2空気通路22においてヒータコア25を通過する空気を増加させて足元吹出口33およびインパネ吹出口32から送風する空気の目標吹出温度を増加させてもよく、足元吹出口33およびインパネ吹出口32の風量を増加させてもよい。
【0037】
なお、スライドドア48を調整して第1空気通路21においてヒータコア25を通過する空気を増加させた場合には、デフロスタ吹出口31から送風する空気の熱量が必要以上に増加しないように開閉ドア41によって調整する。また、スライドドア49を調整して第2空気通路22においてヒータコア25を通過する空気を増加させた場合には、後部座席吹出口34から送風する空気の熱量が必要以上に増加しないように開閉ドア44によって調整する。
【0038】
これにより、シートヒータ51、ステアリングヒータ52および輻射ヒータ53によって十分に温められた乗員に対して空調装置20の加熱出力を抑制し、シートヒータ51、ステアリングヒータ52および輻射ヒータ53によって温められた乗員の足元および上半身を温める。その結果、乗員の快適性を維持しつつ消費電力を抑制させることができる。
【0039】
[車両用空調システム]
図3を用いて、吹出口制御の流れについて説明する。
【0040】
図3に示すように、吹出口制御は、以下の手順に従って上述した空調ECU60の各機能に基づいて、それぞれの吹出口30の目標吹出口温度を設定する。ステップS11において、シートヒータ51のみを作動しているかを確認する。シートヒータ51のみを作動している場合には、ステップS12へ移行する。シートヒータ51のみを作動している場合以外には、ステップS13へ移行する。
【0041】
ステップS12において、操作部65によって設定された設定温度よりも第1所定温度だけ低い設定温度で空調装置20を制御する。
【0042】
ステップS13において、シートヒータ51およびステアリングヒータ52のみを作動しているかを確認する。シートヒータ51およびステアリングヒータ52のみを作動している場合には、ステップS14へ移行する。シートヒータ51およびステアリングヒータ52のみを作動している場合以外には、ステップS15へ移行する。
【0043】
ステップS14において、操作部65によって設定された設定温度よりも第2所定温度だけ低い設定温度で空調装置20を制御する。同時に、足元吹出口33から送風される空気の熱量を増加させる。
【0044】
ステップS15において、シートヒータ51、ステアリングヒータ52および輻射ヒータ53のみを作動しているかを確認する。シートヒータ51、ステアリングヒータ52および輻射ヒータ53のみを作動している場合には、ステップS16へ移行する。
【0045】
ステップS16において、操作部65によって設定された設定温度よりも第3所定温度だけ低い設定温度で空調装置20を制御する。同時に、足元吹出口33およびインパネ吹出口32から送風される空気の熱量を増加させる。
【0046】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
10 車両用空調システム、11 車室内、14 ステアリングハンドル、15 インストルメントパネル、20 空調装置、21 第1空気通路、22 第2空気通路、23 送風機、24 エバポレータ、25 ヒータコア、30 吹出口、31 デフロスタ吹出口、32 インパネ吹出口、33 足元吹出口、34 後部座席吹出口、39 開閉ドア、41 開閉ドア、42 開閉ドア、43 開閉ドア、47 開閉ドア、48 スライドドア、49 スライドドア、50 直接温熱デバイス、51 シートヒータ、52 ステアリングヒータ、53 輻射ヒータ、60 空調ECU、61 第1吹出口制御部、62 第2吹出口制御部、63 第3吹出口制御部、65 操作部、71 吹出温度センサ、71 吹出温度センサ、72 吹出温度センサ、73 吹出温度センサ、74 吹出温度センサ、75 外気温度センサ、76 車内温度センサ
図1
図2
図3