(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158170
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】消火栓弁操作装置および消火栓
(51)【国際特許分類】
A62C 35/02 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A62C35/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073141
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000229405
【氏名又は名称】日本ドライケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】森田 克久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 亜良太
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189MB03
(57)【要約】
【課題】遠隔操作によって、消火栓弁の開閉をする消火栓において、消火栓弁の動作状態を正確に知ることができる消火栓弁操作装置を提供する。
【解決手段】筐体11と弁体とを備えて構成されている消火栓弁5と、消火栓弁5を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部7と、目盛り17と指示体18とを具備し、指示体18に対して目盛り17が相対的に動くことで、遠隔操作部7による消火栓弁5の開状態を示す開状態指示部9とを有する消火栓弁操作装置1である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、
前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と、
目盛りと指示体とを具備し、前記指示体に対して前記目盛りが相対的に動くことで、前記遠隔操作部による前記消火栓弁の開状態を示す開状態指示部と、
を有する消火栓弁操作装置。
【請求項2】
筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、
前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と、
目盛りと指示体とを具備し、前記指示体に対して前記目盛りが相対的に動くことで、前記遠隔操作部による前記消火栓弁の閉状態を示す閉状態指示部と、
を有する消火栓弁操作装置。
【請求項3】
前記遠隔操作部は、
前記消火栓弁の弁体を回動させるための消火栓弁側プーリーと、
前記消火栓弁側プーリーから離れて設けられている操作体側プーリーと、
前記操作体側プーリーの回動に応じて前記消火栓弁側プーリーを回動させるために、前記操作体側プーリーと前記消火栓弁側プーリーとをつないでいるワイヤーと、
を備えて構成される請求項1または請求項2に記載の消火栓弁操作装置。
【請求項4】
前記操作体側プーリーを回動させることで、前記消火栓弁を全閉状態から全開状態にするまでの前記消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、前記消火栓弁の弁体を回動させることができるように構成されている請求項3に記載の消火栓弁操作装置。
【請求項5】
前記目盛りは、前記消火栓弁側プーリーの、円形状の側面の外周近傍の部位に設けられており、
前記指示体は、前記消火栓弁の筐体に支持されている請求項3に記載の消火栓弁操作装置。
【請求項6】
前端が開口している枡状の後側部位と、透明もしくは半透明になっており前記後側部位の開口部を塞いでいる平板状の前側部位と具備している箱状体を備え、
前記消火栓弁の筐体には、前記箱状体の後側部位が設けられており、
前記消火栓弁側プーリーは、前記目盛りが前側を向くようにして、前記箱状体内に配置されており、
前記指示体の前端部は、前記消火栓弁側プーリーと前記箱状体の前側部位との間で、前記箱状体内に配置されている請求項5に記載の消火栓弁操作装置。
【請求項7】
筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、
前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と、
を有し、前記遠隔操作部は、
前記消火栓弁の弁体を回動させるための消火栓弁側プーリーと、
前記消火栓弁側プーリーから離れて設けられている操作体側プーリーと、
前記操作体側プーリーの回動に応じて前記消火栓弁側プーリーを回動させるために、前記操作体側プーリーと前記消火栓弁側プーリーとをつないでいるワイヤーとを備えて構成されており、
前記操作体側プーリーを回動させることで、前記消火栓弁を全閉状態から全開状態にするまでの前記消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、前記消火栓弁の弁体を回動させることができるように構成されている消火栓弁操作装置。
【請求項8】
前記消火栓弁操作装置を備えた請求項6に記載の消火栓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火栓弁操作装置および消火栓に係り、特に、遠隔操作によって消火栓弁を開閉するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消火栓弁を開閉するためのプーリーと、操作レバーによって回動するプーリーと、上記2つのプーリーをつないでいるワイヤーとを備えて構成されている消火栓弁操作装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。上記従来の消火栓操作装置では、操作レバーの操作で操作レバー側のプーリーを回動させると、消火栓弁側のプーリーが回動し、消火栓弁が開閉する。
【0003】
また、従来の消火栓操作装置では、消火栓弁側のプーリーによる消火栓弁の開閉状態が見えるようにするための目印が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の消火栓操作装置では、消火栓弁側のプーリーによる消火栓弁の開閉状態が見えるようにするための目印が設けられているので、消火栓弁のおおまかな開閉状態を把握することはできる。しかし、操作レバーの操作によって、消火栓弁が全閉状態になっていること、消火栓弁が全開状態になっていることを確認することは難しい。
【0006】
経年変化による上記ワイヤーを構成するワイヤーケーブルの僅かな延び等によって、操作レバー側のプーリーの回動に応じて、消火栓弁側のプーリーが的確に回動しない状態(たとえば回動角度不足)になることがある。そして、消火栓弁が全閉状態や全開状態にならないことがある。そこで、操作レバーの操作によって、消火栓弁が全閉状態になっていること、消火栓弁が全開状態になっていることを確認することが必要になる。
【0007】
本発明は、遠隔操作によって、消火栓弁の開閉をする消火栓において、消火栓弁の動作状態を正確に知ることができる消火栓弁操作装置および消火栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様に係る消火栓弁操作装置は、筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と、目盛りと指示体とを具備し、前記指示体に対して前記目盛りが相対的に動くことで、前記遠隔操作部による前記消火栓弁の開状態を示す開状態指示部とを有する消火栓弁操作装置である。
【0009】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置は、筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と、目盛りと指示体とを具備し、前記指示体に対して前記目盛りが相対的に動くことで、前記遠隔操作部による前記消火栓弁の閉状態を示す閉状態指示部を有する消火栓弁操作装置である。
【0010】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置では、前記遠隔操作部が、前記消火栓弁の弁体を回動させるための消火栓弁側プーリーと、前記消火栓弁側プーリーから離れて設けられている操作体側プーリーと、前記操作体側プーリーの回動に応じて前記消火栓弁側プーリーを回動させるために、前記操作体側プーリーと前記消火栓弁側プーリーとをつないでいるワイヤーとを備えて構成される。
【0011】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置は、前記操作体側プーリーを回動させることで、前記消火栓弁を全閉状態から全開状態にするまでの前記消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、前記消火栓弁の弁体を回動させることができるように構成されている。
【0012】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置では、前記目盛りが、前記消火栓弁側プーリーの、円形状の側面の外周近傍の部位に設けられており、前記指示体が、前記消火栓弁の筐体に支持されている。
【0013】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置は、前端が開口している枡状の後側部位と、透明もしくは半透明になっており前記後側部位の開口部を塞いでいる平板状の前側部位と具備している箱状体を備え、前記消火栓弁の筐体には、前記箱状体の後側部位が設けられており、前記消火栓弁側プーリーは、前記目盛りが前側を向くようにして、前記箱状体内に配置されており、前記指示体の前端部は、前記消火栓弁側プーリーと前記箱状体の前側部位との間で、前記箱状体内に配置されている。
【0014】
また、本発明の態様に係る消火栓弁操作装置は、筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部と有し、前記遠隔操作部は、前記消火栓弁の弁体を回動させるための消火栓弁側プーリーと、前記消火栓弁側プーリーから離れて設けられている操作体側プーリーと、前記操作体側プーリーの回動に応じて前記消火栓弁側プーリーを回動させるために、前記操作体側プーリーと前記消火栓弁側プーリーとをつないでいるワイヤーとを備えて構成されており、前記操作体側プーリーを回動させることで、前記消火栓弁を全閉状態から全開状態にするまでの前記消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、前記消火栓弁の弁体を回動させることができるように構成されている消火栓弁操作装置である。
【0015】
本発明の態様に係る消火栓は、前記消火栓弁操作装置を備えた消火栓である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、遠隔操作によって、消火栓弁の開閉をする消火栓において、消火栓弁の動作状態を正確に知ることができる消火栓弁操作装置および消火栓を提供できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置と、この消火栓弁操作装置が設けられている消火栓との概要を示す図である。
【
図2】比較例に係る消火栓弁操作装置を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置で使用されるワイヤーの長さを調整する部位の概略構成を例示する断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置で使用されるプーリーへのワイヤーの設置態様を示す図であり、(b)は(a)におけるVIIB矢視図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置において、操作体側プーリーを回動させることで、消火栓弁を全閉状態から全開状態にするまでの消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、消火栓弁の弁体を回動させることができることを説明する図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置が設けられている消火栓の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態に係る消火栓弁操作装置1は、消火栓3(
図1、
図9参照)に設置されて使用されるものであり、
図1等で示すように、消火栓弁5と遠隔操作部7と開状態指示部9とを備えて構成される。なお、消火栓弁操作装置を消火栓の消火栓弁操作装置と呼んでもよい。消火栓弁としてたとえばボールバルブが採用される。消火栓3は、たとえばトンネル内でトンネルの側壁部に一定の間隔で設置される。
【0019】
ここで説明の便宜のために、水平な所定の一方向をX方向(左右方向)とし、水平な所定の他の一方向であってX方向に対して直交する方向をZ方向(前後方向)とし、X方向とZ方向とに対して直交する方向をY方向(上下方向)とする。
【0020】
消火栓弁5は、
図5で示すように、筐体(消火栓弁筐体;箱体)11と弁体(図示せず)とを備えて構成される。消火栓弁筐体11には水の流路が形成される。弁体はたとえば球状に形成される。また、弁体には貫通孔が設けられる。弁体は、水の流路を開閉するために消火栓弁筐体11内の流路の途中で消火栓弁筐体11に回動自在に設けられる。
図1で示すように、消火栓弁5は、消火栓3の筐体(消火栓筐体)13内に設置されている配管15の途中に設けられる。
【0021】
遠隔操作部7は、消火栓弁5を遠隔操作によって開閉する。すなわち、遠隔操作部7は、消火栓弁5の弁体を、遠隔操作によって、消火栓弁5に水が流れない閉状態から消火栓弁5に水が流れる開状態にする。また、遠隔操作部7は、消火栓弁5の弁体を、遠隔操作によって、消火栓弁5に水が流れる開状態から水が流れない閉状態にする。遠隔操作部7も、
図1で示すように、たとえば、消火栓筐体13内に設けられる。
【0022】
開状態指示部9は、
図4、
図5で示すように、目盛り(開側目盛り)17と指示体18とを具備する。消火栓弁5の弁体の動きに応じ、指示体18に対して目盛り17が相対的に動く。すなわち、指示体18が目盛り17のマーク(目盛りを構成する線や点)19を指し示す。これにより、遠隔操作部7による消火栓弁5の開状態を示す。
【0023】
また、消火栓弁操作装置1には、閉状態指示部21が設けられる。閉状態指示部21も、目盛り(閉側目盛り)23と指示体18とを具備する。消火栓弁5の弁体の動きに応じ、指示体18に対して目盛り23が相対的に動く。すなわち、指示体18が目盛り23のマーク(目盛りを構成する線や点)25を指し示す。これにより、遠隔操作部7による消火栓弁5の閉状態を示す。
【0024】
なお、目盛り23は、目盛り17と同様に構成されている。また、開状態指示部9と閉状態指示部21とを併せて開閉状態指示部27としてもよい。
【0025】
目盛り17、23は、消火栓弁5の弁体の動き(たとえば回動角度)を示すためにしるされている線または点の集りである。本実施形態では線の集まりで構成される。複数本の目盛線19、25は、一定の小さな間隔をあけてならぶ。目盛り17、23は、消火栓弁5が全開状態となる近傍の部位のみ、消火栓弁5が全閉状態となる近傍の部位のみに設けられる。
【0026】
目盛り17を設けたことで、消火栓弁5が完全な開状態(全開状態)になっている近傍のみでの、消火栓弁5の弁体の微妙な回動角度が読める。目盛り23を設けたことで、消火栓弁5が完全な閉状態(全閉状態)になっている近傍のみでの、消火栓弁5の弁体の微妙な回動角度が読める。
【0027】
たとえば、消火栓弁5が完全な閉状態になっている消火栓弁5の弁体の回動角度を「0°」とし、消火栓弁5が完全な開状態になっている消火栓弁5の弁体の回動角度を「90°」とする。目盛り17、23の目幅は、たとえば1°もしくは0.5°になっている。目盛り17、23を設けたことで、たとえば、0°~5°の範囲でのみ消火栓弁5の弁体の回動角度を読むことができる。また、目盛り17、25を設けたことで、たとえば、85°~90°の範囲のみでの消火栓弁5の弁体の回動角度を読むことができる。一方、5°~85°の範囲には、目盛りが設けられていない。
【0028】
ところで、上記0°~5°の範囲を、適宜変更してもよい。すなわち、0°~2°としてもよいし、0°~3°としてもよいし、0°~7°としてもよいし、0°~10°としてもよいし、さらには、-2°~5°としてもよいし、-5°~10°としてもよい。
【0029】
同様にして、上記85°~90°の範囲を、適宜変更してもよい。すなわち、88°~90°としてもよいし、87°~90°としてもよいし、83°~90°としてもよいし、80°~90°としてもよいし、さらには、85°~92°としてもよいし、80°~95°としてもよい。また、目盛り17、23の目幅を適宜変更してもよい。
【0030】
遠隔操作部7は、消火栓弁側プーリー29と操作体側プーリー31とワイヤー33(33A、33B)とを備えて構成される。消火栓弁側プーリー29は、消火栓弁5の弁体を直接的回動させるためのプーリーである。すなわち、消火栓弁側プーリー29は、消火栓弁5の弁体に一体的に設けられており、消火栓弁側プーリー29が回動することで消火栓弁5の弁体も、消火栓弁側プーリー29の回動角度と等しい角度だけ回動する。なお、消火栓弁筐体11は、消火栓筐体13と一体化している。
【0031】
操作体側プーリー31は、消火栓弁5の弁体を間接的に回動させるためのプーリーであり、消火栓弁側プーリー29から離れて設けられる。操作体側プーリー31は、消火栓筐体13に対して回動する。
【0032】
ワイヤー33(33A、33B)は、操作体側プーリー31の回動に応じて消火栓弁側プーリー29を回動させるために、操作体側プーリー31と消火栓弁側プーリー29とをつなぐ。
【0033】
図6等で示すように、ワイヤー33は、細長い紐状のワイヤーケーブル35と、細長い筒状に形成されており内部をワイヤーケーブル35が貫通しているワイヤーチューブ37とを備えて構成される。また、ワイヤー33として、第1のワイヤー33Aと第2のワイヤー33Bとの2本のワイヤーが設けられる。
【0034】
図1等で示すように、第1のワイヤー33Aは、ワイヤーケーブル35の長手方向の一方の端部(第1の端部)41が消火栓弁側プーリー29のワイヤーケーブル巻き掛け部39の一方の部位(第1の部位)43に固定される。また、第1のワイヤー33Aは、ワイヤーケーブル35の長手方向の他方の端部(第2の端部)45が操作体側プーリー31のワイヤーケーブル巻き掛け部47の一方の部位(第1の部位)49に固定される。
【0035】
第2のワイヤー33Bは、ワイヤーケーブル35の長手方向の一方の端部(第1の端部)51が消火栓弁側プーリー29のワイヤーケーブル巻き掛け部39の他方の部位(第2の部位)53に固定される。また、第2のワイヤー33Bは、ワイヤーケーブル35の長手方向の他方の端部(第2の端部)55が操作体側プーリー31のワイヤーケーブル巻き掛け部47の他方の部位(第2の部位)57に固定される。
【0036】
これにより、操作体側プーリー31を時計回りで回動させると、第1のワイヤー33Aのワイヤーケーブル35で消火栓弁側プーリー29が引っ張られ、消火栓弁側プーリー29が時計回りで回動する。逆に、操作体側プーリー31を反時計回りで回動させると、第2のワイヤー33Bのワイヤーケーブル35で消火栓弁側プーリー29が引っ張られ、消火栓弁側プーリー29が反時計回りで回動する。
【0037】
なお、操作体側プーリー31には、操作レバー59(
図1参照)が一体的に設けられており、オペレータが操作レバー59を適宜操作することで、操作体側プーリー31が適宜回動する。操作レバー59は、回動位置P1と回動位置P2との間で回動する。操作レバー59の回動角度と操作体側プーリー31の回動角度とは互いが等しい。たとえば、操作レバー59が90°回動すれば、操作体側プーリー31も90°回動する。
【0038】
また、消火栓弁操作装置1では、操作体側プーリー31を回動させることで、消火栓弁5を全閉状態から全開状態にするまでの消火栓弁の弁体の回動角度量よりも大きい回動角度、消火栓弁5の弁体を回動させることができるように構成されている。すなわち、操作体側プーリー31の最大の回動角度量を「θ1」とし、操作体側プーリー31の有効径を「d1」とする。また、消火栓弁5を全閉状態から全開状態にするまでの消火栓弁5の弁体の回動角度量を「θ2」とし、消火栓弁側プーリー29の有効径を「d2」とする。消火栓弁操作装置1では、「d1×θ1」の値が、「d2×θ2」の値よりも大きくなっている(たとえば僅かに大きくなっている)。
【0039】
図8を用いてさらに説明する。消火栓弁5の弁体(消火栓弁側プーリー29)は、仕様では角度α(上記角度θ2に相当する角度;90°)回動する。すなわち、消火栓弁側プーリー29は、P10で示す回動位置(回動角度位置)と、P11で示す回動位置との間で回動する。P10で示す回動位置で、消火栓弁5が全閉状態になり、また、P11で示す回動位置で、消火栓弁5が全開状態になる。
【0040】
しかし、たとえば、消火栓弁5の個体差により、消火栓弁5の弁体が、P12で示す回動位置(角度Δα1内にある回動位置)にあるときに、消火栓弁5が全閉状態になることがある。また、消火栓弁5の個体差により、消火栓弁5の弁体が、P13で示す回動位置(角度Δα2内にある回動位置)にあるときに、消火栓弁5が全開状態になることがある。
【0041】
さらに、ワイヤーケーブル35の経年変化等による伸びのために、操作レバー59(操作体側プーリー31)を角度αだけ回動しても、消火栓弁5の弁体(消火栓弁側プーリー29)が、角度αよりも小さい角度だけしか回動しないことがある。そして、消火栓弁5の弁体が全開状態、全閉状態にならないことがある。
【0042】
そこで、操作体側プーリー31の有効径と消火栓弁側プーリー29の有効径とが互いに等しい構成では、操作レバー59(操作体側プーリー31)の回動角度範囲βを、角度α+角度Δα1+角度Δα2にしている。
【0043】
なお、操作体側プーリー31の有効径が、消火栓弁側プーリー29の有効径よりも大きくなっている構成では、操作レバー59(操作体側プーリー31)の回動角度範囲βを、角度αと等しくする。
【0044】
操作体側プーリー31の有効径は、たとえば、ワイヤーケーブル35の、操作体側プーリー31に巻き掛けられている円弧状の部位の中心線と操作体側プーリー31の中心との間の距離である半径もしくは上記円弧状の部位の中心線の直径で表される。消火栓弁側プーリー29の有効径も、操作体側プーリー31の有効径と同様に表される。
【0045】
また、消火栓弁操作装置1では、目盛り17、23が、消火栓弁側プーリー29の、円形状の側面の外周近傍の部位に、たとえば二次元的態様で設けられる。たとえば、目盛り17、23は、印刷により、もしくは、目盛りが記されている薄いテープを貼ったことにより、もしくは、消火栓弁側プーリー29の円形状の側面に僅かな凹部や凸部により設けられる。また、指示体18が、消火栓弁5の筐体11に一体的に支持される。
【0046】
消火栓弁操作装置1は、
図4、
図5で示すように、前端が開口している枡状の後側部位63と、透明もしくは半透明になっており後側部位63の開口部65を塞いでいる平板状の前側部位67と具備している箱状体61を備えて構成される。前側部位67は、アクリル樹脂等の合成樹脂で構成される。
【0047】
消火栓弁5の筐体11には、箱状体61の後側部位63が一体的に設けられている。消火栓弁側プーリー29は、目盛り17、23が前側を向くようにして、箱状体61内に配置されている。指示体18の前端部(目盛りを指し示す部位)69は、消火栓弁側プーリー29と箱状体61の前側部位67との間で、箱状体61内に配置されている。
【0048】
指示体18の前端部69は平板状に形成されており、厚さ方向が前後方向になっている。指示体18の前端部69の平面状の後側の面71と、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73とは、
図5では、Z方向で所定の距離だけ離れているが、ごく僅かしか離れていない構成であってもよい。
【0049】
ごく僅かしか離れていない構成とすることで、指示体18の前端部69や目盛り17、23を、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73に対してやや斜めの方向から見たときの読み取り誤差を小さくすることができる。
【0050】
また、指示体18の少なくとも前端部(所定の厚さを備えた先端部)69を透明もしくは半透明にして、後側の面71と前側の面75とにたとえば線分で形成されているマークを設けてもよい。そして、後側の面71のマークと前側の面75のマークとが互いに重なる角度で、指示体18の前端部69と目盛り17、23とを見てもよい。これにより、指示体18の前端部69や目盛り17、23を、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73に対して斜めの方向から見ることを回避することができる。
【0051】
また、同様にして、指示体18の前端部69を透明もしくは半透明にしてたとえば線分で形成されているマークを設け、箱状体61の前側部位67にもたとえば線分で形成されているマークを設けてもよい。そして、指示体18のマークと前側部位67のマークとが互いに重なる角度で、指示体18の前端部69と目盛り17、23とを見るようにしてもよい。これにより、指示体18の前端部69や目盛り17、23を、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73に対して斜めの方向から見ることを回避することができる。
【0052】
さらに、指示体18の所定の厚さの前端部69の先端を尖らせておいて先端線77を形成してもよい。先端線77は、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73に対して直交する方向(Z方向)に延びている。そして、先端線77を用いて、目盛り17、23を、消火栓弁側プーリー29の目盛り17、23が設けられている平面73に対して斜めの方向から見ることを回避するようにしてもよい。
【0053】
消火栓弁操作装置1についてさらに詳しく説明する。
図1で示すように、消火栓3は、床79上の所定の位置に設置される。床79の下には主配管81が通る。主配管81からは枝管83が分岐しており、消火栓筐体13内に設置されている配管15は、枝管83によって主配管81に接続される。消火栓弁5は、配管15の途中に設けられている。配管15の先端(枝管83とは反対側の端)には、消火用ホース85が接続されている。消火用ホース85は、常態では消火栓筐体13内に配置される。
【0054】
箱状体61は、消火栓筐体13内に設置されており、消火栓弁側プーリー29を内部に収容する。円板状の消火栓弁側プーリー29の中心軸は、Z方向に延伸する。箱状体61の矩形な平板状の後側部位63の矩形な平板状部、前側部位67は、厚さ方向がZ方向になっている。箱状体61は、消火栓弁5の筐体11の前側で消火栓弁筐体11に一体的に設けられる。これにより、箱状体61は消火栓筐体13と一体化する。
【0055】
操作体側プーリー31も、箱状体61と同様な箱状体87内に配置されている。ただし、箱状体87の前側部位が、不透明になっている場合がある。箱状体87は、消火栓筐体13に一体的に設けられる。
【0056】
次に、ワイヤー33Aの箱状体(消火栓弁側プーリー29の箱状体)61への設置形態について
図6を参照しつつ説明する。箱状体61の側板部89には貫通孔91が設けられている。ボルト状部材93のネジ部が貫通孔91を貫通している。ボルト状部材93にも貫通孔95が設けられている。これにより、ボルト状部材93は筒状になっている。
【0057】
箱状体61の側板部89よりも上側にはナット97が設けられる。ナット97は、ボルト状部材93のネジ部に螺合する。箱状体61の側板部89よりも下側にもナット97が設けられる。ナット99も、ボルト状部材93のネジ部に螺合する。さらに、ナット97とナット99とで側板部89を付勢力をもって挟み込む。これにより、箱状体61とボルト状部材93とナット97とナット99とが消火栓筐体13と一体化する。
【0058】
ボルト状部材93の貫通孔95をワイヤー33Aのワイヤーケーブル35が通り抜けて延伸する。ワイヤー33Aのワイヤーチューブ37の端(
図6では上端)が、ボルト状部材93の端(
図6では下端)に当接する。
【0059】
ワイヤー33Aの箱状体(操作体側プーリー31の箱状体)87への設置は、ワイヤー33Aの箱状体(消火栓弁側プーリー29の箱状体)61への設置と同様にされる。
【0060】
図6で示すナット97とナット99を緩めて、ボルト状部材93を下側に移動し、この移動した状態で、ナット97とナット99を締めて、ナット97とナット99とにより側板部89を付勢力をもって挟み込む。これにより、箱状体(消火栓弁側プーリー29の箱状体)61と箱状体(操作体側プーリー31の箱状体)87との間で延伸しているワイヤーチューブ37の長さが延びたことと同様な効果が得られる。そして、ワイヤーケーブル35が経年変化等で若干伸びたときにおけるアソビを無くすことができる。ワイヤー33Bの箱状体61、87への設置も、ワイヤー33Aの場合と同様になっている。
【0061】
次に、消火栓弁側プーリー29へのワイヤー33Aのワイヤーケーブル35の設置形態について
図7を参照しつつ説明する。ワイヤー33Aのワイヤーケーブル35の第1の端部41には球状の被設置部101が設けられる。消火栓弁側プーリー29の外周部であって、円板状の消火栓弁側プーリー29の厚さ方向の中央部には、円環状の溝103が設けられており、溝103にワイヤーケーブル35が巻き掛けられる。
【0062】
また、消火栓弁側プーリー29の第1の部位43には、消火栓弁側プーリー29の外周の一部に形成されている切り欠きで形成された設置部105が設けられる。そして、ワイヤーケーブル35の被設置部101が消火栓弁側プーリー29の設置部105に嵌まり込むことで、ワイヤーケーブル35の被設置部101(第1の端部41)が消火栓弁側プーリー29の設置部105(第1の部位43)に設置される。
【0063】
消火栓弁側プーリー29へのワイヤー33Bのワイヤーケーブル35の設置も、消火栓弁側プーリー29へのワイヤー33Aのワイヤーケーブル35の設置と同様にしてされる。なお、消火栓弁側プーリー29の第2の部位53を構成する切り欠きは、消火栓弁側プーリー29の第1の部位43を構成する切り欠きとつながっている。すなわち、消火栓弁側プーリー29の第2の部位53を構成する切り欠きは、消火栓弁側プーリー29の第1の部位43を構成する切り欠きの近くにある。また、消火栓弁側プーリー29の第2の部位53を構成する切り欠きと、消火栓弁側プーリー29の第1の部位43を構成する切り欠きとは、1つの切り欠き109で形成される。さらに、操作体側プーリー31へのワイヤー33の設置も、消火栓弁側プーリー29へのワイヤー33の設置と同様になされる。
【0064】
次に、消火栓3での放水動作について説明する。初期状態では、消火栓弁5を閉じており、配管15内では水が流れておらず、消火用ホース85は折り畳まれて消火栓筐体13内に収容されている。
【0065】
上記初期状態から消火活動をする場合は、消火栓筐体13の全面の扉107を開く。これにより、消火栓弁操作装置1と消火用ホース85とが消火栓3の前側から見える。
【0066】
続いて、消火用ホース85を消火栓筐体13から引き出し、操作レバー59を適宜操作して、消火栓弁5を全開状態にし、放水を開始する。消火活動終了後は、操作レバー59を適宜操作して、消火栓弁5を全閉状態にし、放水を終了する。
【0067】
消火栓弁操作装置1には、目盛り17と指示体18とを具備し、指示体18に対して目盛り17が相対的に動くことで遠隔操作部による消火栓弁5の開状態等を示す開状態指示部9が設けられている。これにより、消火栓弁5の弁体の回動角度を細かい分解能で視認することができ、消火栓弁5の動作状態を正確に知ることができる。そして、各プーリー29、31をつないでいるワイヤー33(ワイヤーケーブル35)が経年変化で延びたとき等においても、消火栓弁5が全開の状態になっているか、消火栓弁5が全閉の状態になっているかを確認できる。
【0068】
また、消火栓弁5の全開の状態、全閉の状態を確認できることで、操作レバー59の操作で消火栓弁5を動作させても、放水時に放水量が不足したり、放水の停止時に漏水状態になることを防げる。さらに、各プーリー29、31をつないでいるワイヤー33を構成するワイヤーケーブル35の伸び量が限界に達すると、ワイヤーケーブル35が破断し、もしくは、ワイヤー33の調整が限界に達し消火栓弁5を全開状態、全閉状態にすることができなくなる。しかし、開閉状態指示部27が設けられていることで、消火栓3の点検時にワイヤー33の交換の目安がわかり、上述したワイヤーケーブル35での破断等の不具合の発生を防止できる。
【0069】
また、目盛り17が、消火栓弁5が全閉状態となる近傍のみの部位、消火栓弁5が全開状態となる近傍のみの部位に設けられている。これにより、全閉状態と全開状態との間の中途な状態で消火栓弁5が開いたり閉じたりしている中途状態では目盛りが非存在になっている。これにより、消火栓弁5の全閉状態、消火栓弁の全開状態を集中して見ることができる。
【0070】
これに対して、比較例に係る消火栓弁操作装置301は、
図2、
図3で示すように、先端が円弧状になっている指示体303を用いて、消火栓弁の弁体の開閉状態を示すようになる。これでは、消火栓弁の弁体も正確な回動状態がわからず、消火栓弁が全開状態になっていることや消火栓弁が全閉状態になっていることを確認するのが困難になる。
【0071】
また、消火栓弁操作装置1では、遠隔操作部7が、消火栓弁側プーリー29と、操作体側プーリー31と、操作体側プーリー31の回動に応じて消火栓弁側プーリー29を回動させるためのワイヤー33とを備えて構成される。
【0072】
これにより、遠隔操作部7の構成が簡素になっている。また、消火栓弁側プーリー29と操作体側プーリー31とワイヤー33でつないでいるので、消火栓弁側プーリー29と操作体側プーリー31との間に配置されているワイヤー33の設置の自由度が高まる。また、ワイヤー33のワイヤーケーブル35が経年変化で延びてしまったとき、ワイヤー33のワイヤーチューブ37に相当する箇所の長さを調整することで、ワイヤー33の調整を容易にすることができる。
【0073】
また、消火栓弁操作装置1では、消火栓弁5の弁体を0°から90°の角度範範囲を超えて回動させることができるので、消火栓弁5を全閉状態もしくは全開状態に確実にすることができる。
【0074】
また、消火栓弁操作装置1では、目盛り17、23が、消火栓弁側プーリー29の、円形状の側面の外周近傍の部位に、二次元的態様で設けられている。これにより、消火栓弁側プーリー29からの出っ張りを極力無くすことができ、指示体18が指し示す目盛り17、23の目盛線19、25が見やすくなる。
【0075】
また、消火栓弁操作装置1では、消火栓弁側プーリー29が、目盛り17、23が前側を向くようにして箱状体61内に配置されている。また、消火栓弁操作装置1では、指示体18の前端部(目盛りを指し示す矢印状の部位)69が、消火栓弁側プーリー29と箱状体61との間で、箱状体61内に配置されている。これにより、消火栓弁側プーリー29や指示体18が汚れることを防止しつつ、消火栓弁5の弁体の回動角度等を確実に見ることができる。
【0076】
ところで、上述した消火栓弁操作装置1を、次に示す消火栓弁操作装置として把握してもよい。すなわち、筐体と弁体とを備えて構成されている消火栓弁と、前記消火栓弁を遠隔操作によって開閉する遠隔操作部とを有し、前記遠隔操作部は、前記消火栓弁の弁体を回動させるための消火栓弁側プーリーと、前記消火栓弁側プーリーから離れて設けられている操作体側プーリーと、前記操作体側プーリーの回動に応じて前記消火栓弁側プーリーを回動させるために、前記操作体側プーリーと前記消火栓弁側プーリーとをつないでいるワイヤーとを備えて構成されており、前記消火栓弁の弁体の回動角度範囲よりも、前記操作体側プーリーの回動角度範囲が広くなっている消火栓弁操作装置として把握してもよい。
【0077】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0078】
1 消火栓弁操作装置
5 消火栓弁
7 遠隔操作部
9 開状態指示部
11 筐体(消火栓弁筐体)
17 目盛り
18 指示体
21 閉状態指示部
29 消火栓弁側プーリー
31 操作体側プーリー
33 ワイヤー
63 後側部位
65 開口部
67 前側部位
61 箱状体