(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158173
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】二酸化炭素の回収装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/053 20060101AFI20241031BHJP
B01D 53/62 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B01D53/053 ZAB
B01D53/62
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073147
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】後藤 佑太
【テーマコード(参考)】
4D002
4D012
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC04
4D002AC10
4D002CA07
4D002DA41
4D002DA45
4D002DA46
4D002DA70
4D002EA02
4D002EA04
4D002EA07
4D002FA01
4D002GA01
4D002GA02
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4D002GB01
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4D002GB20
4D012BA01
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4D012CE01
4D012CE02
4D012CE03
4D012CF02
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG02
4D012CJ03
(57)【要約】
【課題】高濃度の二酸化炭素の回収率を高くできる回収装置を提供する。
【解決手段】回収装置は、二酸化炭素を含むガスから圧力スイング吸着により二酸化炭素を分離する第1の分離装置と、第1の分離装置の下流に接続された第2の分離装置と、を備える二酸化炭素の回収装置であって、第1の分離装置は、吸着塔と、ガスを加圧して得られた第1加圧ガスを吸着塔に供給する第1の加圧装置と、吸着塔の中の吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む脱離ガスを吸引する真空ポンプと、脱離ガスの一部を洗浄用ガスとして吸着塔に導入する導入管と、を含む。第2の分離装置は、濃縮部と、脱離ガスを加圧して得られた第2加圧ガスを濃縮部に供給する第2の加圧装置と、を含み、濃縮部は第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮し、第2加圧ガスの圧力は第1加圧ガスの圧力よりも高い。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含むガスから圧力スイング吸着により二酸化炭素を分離する第1の分離装置と、
前記第1の分離装置の下流に接続された第2の分離装置と、を備える二酸化炭素の回収装置であって、
前記第1の分離装置は、
吸着塔と、
前記ガスを加圧して得られた第1加圧ガスを前記吸着塔に供給する第1の加圧装置と、
前記吸着塔の中の吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む脱離ガスを吸引する真空ポンプと、
前記脱離ガスの一部を洗浄用ガスとして前記吸着塔に導入する導入管と、を含み、
前記第2の分離装置は、
濃縮部と、
前記脱離ガスを加圧して得られた第2加圧ガスを前記濃縮部に供給する第2の加圧装置と、を含み、
前記濃縮部は、前記第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮し、
前記第2加圧ガスの圧力は、前記第1加圧ガスの圧力よりも高い回収装置。
【請求項2】
前記真空ポンプと前記濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、
前記調整機構は、前記第2の加圧装置の吸い込み側と吐出側とを迂回するバイパス管と、
前記バイパス管に配置された調節弁と、を含む請求項1記載の回収装置。
【請求項3】
前記真空ポンプと前記濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、
前記調整機構は、前記真空ポンプと前記濃縮部との間に配置された第1のガスタンクと、
前記第1のガスタンクと前記濃縮部との間に配置され前記第1のガスタンクから前記管に流れる前記脱離ガスの流量を調節する調節弁と、を含む請求項1記載の回収装置。
【請求項4】
前記真空ポンプと前記濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、
前記調整機構は、前記真空ポンプと前記濃縮部との間に配置された第2のガスタンクを含む請求項1記載の回収装置。
【請求項5】
前記調整機構は、前記第2の加圧装置の吸い込み側に配置された圧力計を含み、
前記圧力計が検知した圧力に基づいて前記調節弁の開度を調節する制御装置をさらに備える請求項2記載の回収装置。
【請求項6】
前記調整機構は、前記第1のガスタンクの下流側に配置された流量計を含み、
前記流量計が検知した流量に基づいて前記調節弁の開度を調節する制御装置をさらに備える請求項3記載の回収装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は圧力スイング吸着を利用した二酸化炭素の回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
吸着剤に対する二酸化炭素の親和性を圧力により変化させる圧力スイング吸着を利用した二酸化炭素の回収装置において、特許文献1に開示された先行技術は、大気圧付近で吸着操作し真空ポンプで減圧して脱離再生するVPSA方式の分離装置の下流に、VPSA方式の別の分離装置が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
VPSA方式の分離装置は、吸着塔の中の吸着剤から脱離したガスの一部を洗浄用ガスとして吸着塔へ導入し、吸着塔内の二酸化炭素濃度を高めることによって高濃度の二酸化炭素を回収する。そのため吸着塔へ導入する洗浄用ガスの量が多くなると、回収できる二酸化炭素の濃度は高くなるが、回収できるガスの量は少なくなる(回収率は低くなる)。一方、洗浄用ガスの量を少なくすると、回収率は高くなるが二酸化炭素の濃度は低下する。高濃度の二酸化炭素の回収と高い回収率とを両立するには、洗浄用ガスの量や吸着塔の圧力の細かな制御が必要である。
【0005】
先行技術は、上流の分離装置および下流の分離装置に送風機が接続されているため、下流の吸着塔の圧力は、上流の吸着塔の圧力と同程度、又は、上流の吸着塔の圧力に比べて低くなる。先行技術では高濃度の二酸化炭素の回収と高い回収率との両立が十分ではなかった。
【0006】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、高濃度の二酸化炭素の回収率を高くできる回収装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するための第1の態様は、二酸化炭素を含むガスから圧力スイング吸着により二酸化炭素を分離する第1の分離装置と、第1の分離装置の下流に接続された第2の分離装置と、を備える二酸化炭素の回収装置であって、第1の分離装置は、吸着塔と、ガスを加圧して得られた第1加圧ガスを吸着塔に供給する第1の加圧装置と、吸着塔の中の吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む脱離ガスを吸引する真空ポンプと、脱離ガスの一部を洗浄用ガスとして吸着塔に導入する導入管と、を含む。第2の分離装置は、濃縮部と、脱離ガスを加圧して得られた第2加圧ガスを濃縮部に供給する第2の加圧装置と、を含み、濃縮部は第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮し、第2加圧ガスの圧力は第1加圧ガスの圧力よりも高い。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、真空ポンプと濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、調整機構は、第2の加圧装置の吸い込み側と吐出側とを迂回するバイパス管と、バイパス管に配置された調節弁と、を含む。
【0009】
第3の態様は、第1又は第2の態様において、真空ポンプと濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、調整機構は、真空ポンプと濃縮部との間に配置された第1のガスタンクと、第1のガスタンクと濃縮部との間に配置され第1のガスタンクから管に流れる脱離ガスの流量を調節する調節弁と、を含む。
【0010】
第4の態様は、第1から第3の態様のいずれかにおいて、真空ポンプと濃縮部とを接続する管に配置された調整機構を備え、調整機構は、真空ポンプと濃縮部との間に配置された第2のガスタンクを含む。
【0011】
第5の態様は、第2の態様において、調整機構は、第2の加圧装置の吸い込み側に配置された圧力計を含み、圧力計が検知した圧力に基づいて調節弁の開度を調節する制御装置をさらに備える。
【0012】
第6の態様は、第3の態様において、調整機構は、第1のガスタンクの下流側に配置された流量計を含み、流量計が検知した流量に基づいて調節弁の開度を調節する制御装置をさらに備える。
【発明の効果】
【0013】
回収装置によれば、二酸化炭素を含むガスを第1の加圧装置が加圧して得た第1加圧ガスが吸着塔に供給され、吸着塔の中の吸着剤は二酸化炭素を吸着する。吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む脱離ガスが真空ポンプに吸引され、脱離ガスの一部が、洗浄用ガスとして吸着塔に導入される。洗浄用ガスの量を少なくすることにより、二酸化炭素に富んだ多量の脱離ガスを第2の分離装置へ供給できる。脱離ガスを第2の加圧装置が加圧して得た第2加圧ガスが濃縮部に供給され、第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮部が濃縮する。第2加圧ガスの圧力は第1加圧ガスの圧力よりも高いため、回収するガス中の二酸化炭素の濃度を高められる。従って高濃度の二酸化炭素の回収率を高くできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施の形態における回収装置の配管系統図である。
【
図2】第2実施の形態における回収装置の配管系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は第1実施の形態における回収装置10の配管系統図である。回収装置10は、圧力スイング吸着を利用して、ガスに含まれる二酸化炭素を回収する装置である。ガスは、例えば発電所、工場、廃棄物処理施設、天然ガス田、油田などから出る排ガスが例示される。回収装置10は、第1の分離装置11と、第1の分離装置11の下流に管13で接続された第2の分離装置12と、を備えている。
【0016】
第1の分離装置11は、吸着塔14,15,16と、第1の加圧装置17と、真空ポンプ18と、を備えたVPSA方式の分離装置である。第1の加圧装置17は二酸化炭素を含むガスを加圧して給気管19に送る。第1の加圧装置17によって加圧されたガス(第1加圧ガス)は給気管19を通って吸着塔14,15,16へ送られる。第1の加圧装置17は吸着塔14,15,16を適切な圧力に設定するための装置であり、圧縮機やブロワーが例示される。
【0017】
吸着塔14,15,16の中には二酸化炭素を吸着する吸着剤が収容されている。吸着剤は、活性炭、ゼオライト、メソポーラスシリカ、金属-有機構造体(MOF)、多孔性配位高分子(PCP)が例示される。吸着塔14,15,16に入った第1加圧ガスに含まれる二酸化炭素は吸着剤に吸着され、オフガス(第1加圧ガスに比べて二酸化炭素分圧が低いガス)は排気管20から排出される(吸着操作)。
【0018】
回収管21に接続された真空ポンプ18によって吸着塔14,15,16が減圧されると吸着剤から二酸化炭素が脱離し、二酸化炭素が濃縮された吸着塔14,15,16の中のガス(第1脱離ガス)は回収管21から第1のガスタンク22へ入る(脱離操作)。第1のガスタンク22に接続された導入管23から、第1脱離ガスの一部が洗浄用ガスとして吸着塔14,15,16へ導入され、吸着塔14,15,16内の不要な成分を排気管20から排出する(洗浄操作)。これにより吸着塔14,15,16内の二酸化炭素濃度が高められる。
【0019】
調節弁24,25,26は吸着塔14,15,16毎に給気管19に配置され、調節弁27,28,29は吸着塔14,15,16毎に排気管20に配置されている。調節弁30,31,32は吸着塔14,15,16毎に回収管21に配置され、調節弁33,34,35は吸着塔14,15,16毎に導入管23に配置されている。従って吸着操作、脱離操作、洗浄操作を吸着塔14,15,16が順に行うように調節弁を開閉することにより、二酸化炭素に富む第1脱離ガスを回収管21から連続的に回収できる。調節弁24-35は制御装置58からの電気信号を受け取って作動する。
【0020】
第2の分離装置12は、二酸化炭素を濃縮する濃縮部36と、第1の分離装置11で得られた第1脱離ガスを加圧して濃縮部36へ供給する第2の加圧装置39と、を備えている。本実施形態では第2の分離装置12は、濃縮部36が、吸着塔37,38を含むPSA方式の分離装置である。
【0021】
管13に接続された第2の加圧装置39は、第1脱離ガスを加圧して吸着塔37,38を適切な圧力に設定するための装置であり、圧縮機やブロワーが例示される。吸着塔37,38には二酸化炭素を吸着する吸着剤が収容されている。
【0022】
第2の加圧装置39によって加圧された第1脱離ガス(第2加圧ガス)は、給気管40,41を通って吸着塔37へ送られ、給気管40,42を通って吸着塔38へ送られる。吸着塔37,38に入った第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素は吸着剤に吸着され、オフガスは排気管47,48,49から排出される。第1の加圧装置17及び第2の加圧装置39は、第2加圧ガスの圧力が、第1加圧ガスの圧力よりも高くなるように設定されている。
【0023】
給気管41,42にはそれぞれ三方弁(3ポート弁)43,44が配置されている。三方弁43の2つのポートは給気管41に接続されており、残りの1つのポートは回収管45に接続されている。三方弁43は、制御装置58からの電気信号により、給気管40から給気管41を通って吸着塔37へ第2加圧ガスを流す流路と、吸着塔37から回収管45へガスを流す流路と、に切り替わる。
【0024】
三方弁44の2つのポートは給気管42に接続されており、残りの1つのポートは回収管45に接続されている。三方弁44は、制御装置58からの電気信号により、給気管40から給気管42を通って吸着塔38へ第2加圧ガスを流す流路と、吸着塔38から回収管45へガスを流す流路と、に切り替わる。三方弁43,44を互いに接続する回収管45の中間の位置に回収管46が接続されている。
【0025】
排気管47と排気管48との間に可変絞り弁50が接続されている。排気管47,48,49及び可変絞り弁50は、給気管41又は給気管42の流量と排気管49の流量との比が、例えば10:2から10:4の範囲になるように設定されている。可変絞り弁50はニードル弁形であり、開度を変えることにより排気管47と排気管48との間の流量を無段階に調整できる。可変絞り弁50は、通常は開度が一定に設定されている。
【0026】
第2の分離装置12の操作方法の一例を説明する。三方弁43,44に流路を設定し、第2の加圧装置39を作動して吸着塔38を第2加圧ガスで加圧した後、三方弁43,44に異なる流路を設定し、第2加圧ガスを吸着塔37へ送ると、第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素は吸着剤に吸着され、オフガス(第2加圧ガスに比べて二酸化炭素分圧が低いガス)は排気管47,49から排出される(吸着操作)。オフガスの一部は、可変絞り弁50を通って吸着塔38に入る。
【0027】
一方、吸着塔38の圧力は大気圧付近まで低下する。これにより吸着塔38の吸着剤から二酸化炭素は脱離する(脱離操作)。吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む第2脱離ガスは、給気管42、回収管45を通って回収管46から回収される。吸着塔37から可変絞り弁50を経て吸着塔38に入ったオフガスは、吸着塔38の二酸化炭素分圧を相対的に下げ、吸着剤から二酸化炭素の脱離を進め、吸着塔38の中の第2脱離ガスを回収管46へ押し出し、吸着塔38を浄化する(パージ操作)。
【0028】
制御装置58によって三方弁43,44の流路の設定を繰り返し切り替えると、吸着塔37の吸着操作と吸着塔38の脱離操作およびパージ操作と、吸着塔37の脱離操作およびパージ操作と吸着塔38の吸着操作と、が交互に行われる。これにより濃縮された二酸化炭素を含む第2脱離ガスを回収管46から連続的に回収できる。
【0029】
回収装置10には、回収管46を流れる第2脱離ガスの流量や二酸化炭素の濃度を検知するセンサ(図示せず)が設けられている。制御装置58はセンサの検知結果に基づき、第2脱離ガスの流量や二酸化炭素の濃度が目標値に近づくように、加圧装置17,39等の各種装置や調節弁等を制御する。
【0030】
回収装置10によれば、第1の分離装置11の吸着剤から脱離した二酸化炭素を含む第1脱離ガスが真空ポンプ18に吸引され、第1脱離ガスの一部が、洗浄用ガスとして導入管23から吸着塔14,15,16に導入される。洗浄用ガスの量を適度に少なくすることにより、二酸化炭素に富んだ多量の第1脱離ガスを第2の分離装置12へ供給できる。第2の加圧装置39は第1脱離ガスを加圧し、第1脱離ガスが加圧された第2加圧ガスが濃縮部36に供給され、第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮部36が濃縮する。第2加圧ガスの圧力は第1加圧ガスの圧力よりも高いため、濃縮部36による処理を経た第2脱離ガス中の二酸化炭素の濃度を高められる。従って高濃度の二酸化炭素の回収率を高くできる。
【0031】
PSA方式の第2の分離装置12は、VPSA方式の第1の分離装置11に比べて吸着塔37,38に充填される吸着剤の量を少なくできるため、吸着塔37,38の体積を吸着塔14,15,16の体積よりも小さくできる。従って第1の分離装置11に比べて第2の分離装置12を小型化できる。第1加圧ガスの圧力は第2加圧ガスの圧力よりも低いため、第1加圧ガスを作る第1の加圧装置17等を含む第1の分離装置11の電力原単位を、第2の分離装置12の電力原単位に比べて小さくできる。従って回収装置10の小型化と電力原単位の低減とを実現できる。
【0032】
第2の分離装置12は、第2脱離ガスの一部を洗浄用ガスとして吸着塔37,38へ導入する機構がないため、第2脱離ガスの一部が洗浄用ガスとして消費されない分だけ、二酸化炭素の回収率を高くできる。
【0033】
第1の分離装置11と第2の分離装置12とを接続する管13に調整機構51が配置されている。調整機構51は、第1の分離装置11の処理能力と第2の分離装置12の処理能力とを緩衝する機構である。調整機構51により、第2の分離装置12が必要とするときに十分量の第1脱離ガスを第2の分離装置12に供給できる。
【0034】
調整機構51は、第2の加圧装置39の吸い込み側と吐出側とを迂回するバイパス管52と、バイパス管52に配置された調節弁53と、が例示される。別の調整機構51は、回収管21と導入管23との間に配置された第1のガスタンク22と、第1のガスタンク22の下流の管13に配置された調節弁55と、が例示される。別の調整機構51は、真空ポンプ18と第2の加圧装置39との間の管13に配置された第2のガスタンク57が例示される。
【0035】
本実施形態では調整機構51は、第1のガスタンク22の下流にバイパス管52が配置され、第1のガスタンク22とバイパス管52との間に第2のガスタンク57が配置されているが、これに限られるものではない。第2のガスタンク57とバイパス管52とを省いて、第1のガスタンク22及び調節弁55を配置したり、第1のガスタンク22及び調節弁55とバイパス管52とを省いて第2のガスタンク57を配置したり、第1のガスタンク22及び調節弁55と第2のガスタンク57とを省いて、バイパス管52及び調節弁53を配置したりすることは当然可能である。
【0036】
第1のガスタンク22は、第1の分離装置11が二酸化炭素を濃縮した第1脱離ガスを蓄え、調節弁55は、第1のガスタンク22に蓄えられた第1脱離ガスを管13へ流す流量を設定する。調節弁55の開度は、第2の分離装置12が必要とする第1脱離ガスの流量に設定される。第1の分離装置11の処理能力を第2の分離装置12の処理能力よりも大きくしておけば、第1のガスタンク22及び調節弁55によって第1の分離装置11の処理能力と第2の分離装置12の処理能力とを緩衝できる。
【0037】
調節弁55の下流の管13に流量計56が配置されている。制御装置58は流量計56が検知した流量に基づき、調節弁55の開度を調整する。制御装置58は、流量計56が検知した流量が、第2の分離装置12が必要とする流量よりも少ないときは、調節弁55の開度を大きくする。制御装置58は、流量計56が検知した流量が、第2の分離装置12が必要とする流量(閾値)よりも多いときは、調節弁55の開度を小さくする。これにより第1の分離装置11の処理能力と第2の分離装置12の処理能力とが均衡しているときも、第1の分離装置11の処理能力と第2の分離装置12の処理能力とを緩衝できる。
【0038】
第2のガスタンク57は、第1の分離装置11が二酸化炭素を濃縮した第1脱離ガスを蓄える。第2のガスタンク57の下流の管13の太さにより、第2のガスタンク57に蓄えられた第1脱離ガスを第2の加圧装置39へ流す流量が設定される。第2のガスタンク57が第2の加圧装置39へ流す流量は、第2の分離装置12が必要とする第1脱離ガスの流量に設定される。第1の分離装置11の処理能力を第2の分離装置12の処理能力よりも大きくしておけば、第2のガスタンク57によって第1の分離装置11の処理能力と第2の分離装置12の処理能力とを緩衝できる。
【0039】
第2の加圧装置39の吸い込み側と吐出側とを迂回するバイパス管52に配置された調節弁53が開いていると、圧力の高い側から低い側へバイパス管52を通って第1脱離ガスが移動する。第2の加圧装置39の吸い込み側の圧力が吐出側の圧力よりも低いときは、バイパス管52を通って吐出側から吸い込み側へ第1脱離ガスが移動し、吸い込み側の圧力を高くすることができる。吸込み側の圧力は導入管23の圧力とほぼ等しいため、吸い込み側の圧力が低いときは、吸着操作のときの吸着塔14,15,16の圧力が低くなり、吸着剤に吸着される二酸化炭素の量が少なくなり、第1脱離ガス中の二酸化炭素濃度が低下するおそれがある。バイパス管52が配置されていると、第1の分離装置11の吸着塔14,15,16の圧力を確保できるため、第1脱離ガス中の二酸化炭素濃度を確保できる。
【0040】
第2の加圧装置39の吸い込み側の管13に圧力計54が配置されている。制御装置58は圧力計54が検知した圧力に基づき、調節弁53を開閉する。制御装置58は、圧力計54が検知した圧力が、吸着操作のときの吸着塔14,15,16の圧力の目標値以上のときは調節弁53を閉じ、吸着操作のときの吸着塔14,15,16の圧力の目標値よりも低いときは調節弁53を開く。これにより第2の加圧装置39の吸い込み側の圧力および導入管23の圧力を上げることができるため、第1の分離装置11の吸着塔14,15,16の圧力を確保し、第1脱離ガス中の二酸化炭素濃度を確保できる。
【0041】
図2を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施形態では第2の分離装置12の濃縮部36が、吸着剤(固体吸収材)が充填された吸着塔37,38を備える場合について説明した。これに対し第2実施形態では、濃縮部62が二酸化炭素の分離膜を備える場合について説明する。第2実施形態は、第1実施形態で説明した部分と同一の部分に同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0042】
図2は第2実施の形態における回収装置60の配管系統図である。回収装置60は、第1の分離装置11と、管13で第1の分離装置11の下流に接続された第2の分離装置61と、を備えている。第1の分離装置11と第2の分離装置61との間に調整機構51が配置されている。第2の分離装置61は、第1の分離装置11で得られた第1脱離ガスを加圧して濃縮部62へ供給する第2の加圧装置39と、二酸化炭素を濃縮する濃縮部62と、を備えている。
【0043】
濃縮部62は、二酸化炭素の選択透過性を有する分離膜を含む。分離膜は、分子サイズや膜材料への親和性の違いに基づくガス移動速度の違いを利用して二酸化炭素を分離する。供給側のガスの圧力を透過側のガスの圧力よりも高くする。分離膜は、分子ふるい膜、デンドリマー膜、アミン基含有膜など、公知のものから適宜選択して用いることができる。分離膜の形状に制限はなく、板状、筒状、中空糸状など任意の形状を選択できる。
【0044】
回収装置60は、第2の加圧装置39が第1脱離ガスを加圧し、第1脱離ガスが加圧された第2加圧ガスが濃縮部62に供給され、濃縮部62は、第2加圧ガスに含まれる二酸化炭素を濃縮する。第2加圧ガスの圧力は第1加圧ガスの圧力よりも高いため、濃縮部62による処理を経た第2脱離ガス中の二酸化炭素の濃度を高められる。従って高濃度の二酸化炭素の回収率を高くできる。
【0045】
分離膜を含む濃縮部62は、第1実施の形態におけるPSA方式の濃縮部36に比べ、電力原単位を低減できる。従って電力原単位の小さい回収装置60を実現できる。
【0046】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0047】
例えば回収装置10の配管系統は一例であり、適宜設定できる。実施形態では第1の分離装置11が3つの吸着塔14,15,16を備え、第2の分離装置12が2つの吸着塔37,38を備える場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。第1の分離装置11及び第2の分離装置12の吸着塔は1つ以上の数に適宜設定される。
【0048】
第1実施形態ではVPSA方式の第1の分離装置11の下流にPSA方式の第2の分離装置12を設ける場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。VPSA方式の第1の分離装置11の下流にVPSA方式の第2の分離装置を設けることは当然可能である。
【0049】
実施形態では第2の分離装置12が、可変絞り弁50を用いて排気管47と排気管48との間をつなぐ場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。可変絞り弁50に代えて、排気管47と排気管48との間を複数のオリフィスで並列につなぎ、開閉弁をオリフィス毎に設けても良い。この場合も開閉弁を制御して排気管47と排気管48との間の流量を調節できる。排気管47と排気管48との間の流量を調節しなくても済むように、開度が一定のオリフィスを用いて排気管47と排気管48との間をつなぐことは当然可能である。また、三方弁43,44に代えて、三方弁の機能を実現するための複数のバルブを配置することは当然可能である。
【符号の説明】
【0050】
10,60 回収装置
11 第1の分離装置
12,61 第2の分離装置
13 管
14,15,16 吸着塔
17 第1の加圧装置
18 真空ポンプ
23 導入管
36,62 濃縮部
39 第2の加圧装置
22 第1のガスタンク
51 調整機構
52 バイパス管
53 調節弁
54 圧力計
55 調節弁
56 流量計
57 第2のガスタンク
58 制御装置