IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイシン精機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-駐車支援装置 図1
  • 特開-駐車支援装置 図2
  • 特開-駐車支援装置 図3
  • 特開-駐車支援装置 図4
  • 特開-駐車支援装置 図5
  • 特開-駐車支援装置 図6
  • 特開-駐車支援装置 図7
  • 特開-駐車支援装置 図8
  • 特開-駐車支援装置 図9
  • 特開-駐車支援装置 図10
  • 特開-駐車支援装置 図11
  • 特開-駐車支援装置 図12
  • 特開-駐車支援装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158183
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】駐車支援装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 99/00 20090101AFI20241031BHJP
   B60W 30/06 20060101ALI20241031BHJP
   B62D 6/00 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B60R99/00 340
B60W30/06
B62D6/00
B60R99/00 351
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073166
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(72)【発明者】
【氏名】岩村 昂紘
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大介
【テーマコード(参考)】
3D232
3D241
【Fターム(参考)】
3D232CC20
3D232DA77
3D232DA78
3D232DA88
3D232EC35
3D232GG02
3D241BA22
3D241CC01
3D241CC08
3D241CC17
3D241CE05
3D241DA13Z
3D241DA23Z
3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB20Z
(57)【要約】
【課題】障害物により走行不可能な走行軌道が生成されることなく、より適切な走行軌道を生成することを可能にした駐車支援装置を提供する。
【解決手段】駐車開始位置及び駐車目標位置を取得し、駐車開始位置から駐車目標位置までの走行軌道を生成する場合において、駐車開始位置にある被牽引車3に対して駐車目標位置側の側方にある障害物を、駐車を行う際に影響する障害物として検出し、駐車開始位置にある被牽引車3から障害物までの距離を取得し、駐車開始位置にある被牽引車3から障害物までの距離に基づいて被牽引車3の走行軌道が障害物と重複しない条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす範囲で経路長が短くなることを優先して前進区間の走行軌道を生成するように構成する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車と前記牽引車により牽引される対象となる被牽引車とが連結された状態において前記牽引車と前記被牽引車の駐車を支援する駐車支援装置であって、
駐車開始位置を取得する駐車開始位置取得部と、
駐車目標位置を取得する駐車目標位置取得部と、
前記駐車開始位置から前記駐車目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成部と、
前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対して前記駐車目標位置側の側方にある障害物を、駐車を行う際に影響する障害物として検出する障害物検出部と、
前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対する前記障害物の位置又は前記障害物までの距離を取得する障害物情報取得部と、を有し、
前記走行軌道は、前記駐車開始位置から前記駐車目標位置と離間する方向に旋回しつつ前進する前進区間と、前記前進区間の走行軌道上で切り返した後に前記駐車目標位置まで後退する後退区間と、を含み、
前記走行軌道生成部は、
前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対する前記障害物の位置又は前記障害物までの距離に基づいて前記被牽引車の走行軌道が前記障害物と重複しない条件を満たすか否かを判定し、
前記条件を満たす範囲で経路長が短くなるように前記前進区間の走行軌道を生成する駐車支援装置。
【請求項2】
前記被牽引車の回転中心から前記牽引車と前記被牽引車との連結点までの距離をトレーラホイールベースとして取得するトレーラホイールベース取得部と、
前記牽引車の後輪軸から前記連結点までの距離である連結距離を取得する連結距離取得部と、を有し、
前記走行軌道生成部は、
前記前進区間の前記牽引車の走行軌道の候補として旋回時の曲率が異なる複数の候補を生成し、
前記複数の候補毎に該候補を前記牽引車が走行する際の前記被牽引車の走行軌道を前記トレーラホイールベースと前記連結距離とに基づいて算出し、
算出された前記被牽引車の走行軌道が前記障害物と重複しない候補の内で経路長が最も短くなる候補を選択して、前記前進区間の走行軌道として生成する請求項1に記載の駐車支援装置。
【請求項3】
前記走行軌道生成部は、
前記障害物を考慮しない前記前進区間の走行軌道である基準軌道を取得し、
前記基準軌道が前記条件を満たす場合には、前記基準軌道を前記前進区間の走行軌道として生成し、
前記基準軌道が前記条件を満たさない場合に、前記前進区間の前記牽引車の走行軌道の候補として前記基準軌道よりも旋回時の曲率を小さくした前記複数の候補を生成する請求項2に記載の駐車支援装置。
【請求項4】
前記走行軌道は、前記前進区間と前記後退区間に加えて、前記駐車開始位置から直進方向に所定距離だけ後方に後退することで前記駐車開始位置を調整する初期後退区間を更に含み、
前記所定距離は、前記駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前記前進区間の走行軌道上に位置させる為に前記駐車開始位置を後方に移動させる必要がある最短の距離とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の駐車支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駐車支援を行う駐車支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より車両の駐車支援として駐車する際の走行軌道を算出して、算出した走行軌道に従って駐車が行われるように案内や車両制御を行うことが知られている。ここで、特に後退駐車を行う場合の走行軌道は、駐車スペースなどの駐車目標とする駐車目標位置に対して進入するのに適切な切り返し位置まで一旦前進し、切り返し位置で後退に切り替えて駐車目標位置まで後退する走行軌道となるが、被牽引車(トレーラ)を牽引した牽引車(トラクタ)に対して上記駐車支援を行う際には、牽引車の挙動だけではなく被牽引車の挙動についても考慮して上記走行軌道を設定する必要があった。
【0003】
例えば特開2022-107175号公報には駐車開始位置と駐車目標位置と障害物の位置から牽引車が被牽引車を牽引した状態で駐車を行う場合の牽引車と被牽引車の目標経路を生成した後に、生成された被牽引車の目標経路の最大曲率が被牽引車の旋回可能な最大曲率以下となっているかを判定し、被牽引車の旋回可能な最大曲率以下となっていない場合には切り返し位置を再設定して目標経路を修正する技術について提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-107175号公報(段落0059-0060)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図12は被牽引車を牽引する牽引車が旋回しながら前進する際の車両の軌跡を示した図であるが、図12に示すように牽引車と被牽引車が直線上或いはそれに近い状態から右(或いは左)に旋回した場合に被牽引車が旋回方向と逆方向にわずかに膨らむことが知られている。従って、上記切り返しを伴う駐車を行う場合において、図13に示すように駐車開始位置にある被牽引車101に対して駐車目標位置102側の側方に壁などの障害物103があると、切り返し位置までの前進区間において被牽引車101がそれらの障害物103と接触する虞が生じる。
【0006】
上記特許文献1は被牽引車の目標経路の曲率については考慮しているが、上記のような膨らみに伴う障害物との接触の可能性については何ら考慮されていなかった。その結果、障害物の位置又は障害物までの距離によっては障害物により走行不可能な目標経路が設定される虞があった。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、特に駐車開始位置にある被牽引車に対して駐車目標位置側の側方に存在する障害物を考慮して前進区間の走行軌道を算出することで、障害物により走行不可能な走行軌道が生成されることなく、より適切な走行軌道を生成することを可能にした駐車支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本発明に係る駐車支援装置は、牽引車と前記牽引車により牽引される対象となる被牽引車とが連結された状態において前記牽引車と前記被牽引車の駐車を支援する駐車支援装置であって、駐車開始位置を取得する駐車開始位置取得部と、駐車目標位置を取得する駐車目標位置取得部と、前記駐車開始位置から前記駐車目標位置までの走行軌道を生成する走行軌道生成部と、前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対して前記駐車目標位置側の側方にある障害物を、駐車を行う際に影響する障害物として検出する障害物検出部と、前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対する前記障害物の位置又は前記障害物までの距離を取得する障害物情報取得部と、を有し、前記走行軌道は、前記駐車開始位置から前記駐車目標位置と離間する方向に旋回しつつ前進する前進区間と、前記前進区間の走行軌道上で切り返した後に前記駐車目標位置まで後退する後退区間と、を含み、前記走行軌道生成部は、前記駐車開始位置にある前記被牽引車に対する前記障害物の位置又は前記障害物までの距離に基づいて前記被牽引車の走行軌道が前記障害物と重複しない条件を満たすか否かを判定し、前記条件を満たす範囲で経路長が短くなるように前記前進区間の走行軌道を生成する。
尚、“走行軌道が障害物と重複する”とは障害物が位置する範囲と走行軌道とが重なる場合に加えて、走行軌道に沿って車両が走行した場合に障害物が位置する範囲と車両とが重なる場合も走行軌道と障害物とが重複するとみなす。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する本発明に係る駐車支援装置によれば、駐車開始位置にある被牽引車に対して駐車目標位置側の側方に存在する障害物を考慮して前進区間の走行軌道を算出することで、障害物により走行不可能な走行軌道が生成されることなく、より適切な走行軌道を生成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る牽引車及び被牽引車を示した図である。
図2】牽引車の牽引装置付近を拡大して示した図である。
図3】ヒッチボールとカプラーとを接続した状態での牽引車と被牽引車の動きを示した図である。
図4】本実施形態に係る駐車支援装置の構成を示したブロック図である。
図5】本実施形態に係る駐車支援処理プログラムのフローチャートである。
図6】駐車を行う際に影響する障害物の例を示した図である。
図7】障害物を考慮せずに生成した基準軌道の例を示した図である。
図8】前進軌道に従って走行した場合の膨らみ量を示した図である。
図9】新たに生成される前進軌道の候補を示した図である。
図10】初期後退距離の算出方法について説明した図である。
図11】各軌道を組み合わせることにより生成される駐車開始位置から駐車目標位置までの推奨される走行軌道を示した図である。
図12】従来技術の問題点について説明した図である。
図13】従来技術の問題点について説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る駐車支援装置について具体化した一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係る駐車支援装置1を搭載した牽引車(トラクタ)2と牽引車2によって牽引される被牽引車(トレーラ)3について以下説明する。図1は牽引車2及び被牽引車3を示した図である。
【0012】
ここで、牽引車2は、トラクタとも呼ばれ、被牽引車3を牽引して走行可能に構成されている。牽引車2は、例えば、内燃機関(エンジン等)を駆動源とする自動車(内燃機関自動車)であってもよいし、電動機(モータ等)を駆動源とする自動車(電気自動車、燃料電池自動車等)であってもよいし、それらの双方を駆動源とする自動車(ハイブリッド自動車)であってもよい。また、車種については問わず、後述の牽引装置4を備えていれば普通車であっても良いし、商業用の大型トラクタ(トレーラーヘッド)であっても良い。
【0013】
また、図1に示すように牽引車2のリヤバンパの例えば車幅方向の中央部の下部からは、被牽引車3を牽引するための牽引装置4(ヒッチ)が突出するように配置されている。図2は特に牽引装置4付近を拡大して示した図である。
【0014】
図2に示すように牽引装置4は牽引車2の例えばフレームに固定されている。牽引装置4は、一例として、垂直方向(車両上下方向)に立設された先端部が球状のヒッチボール5を備え、このヒッチボール5に、被牽引車3に固定された連結部材6の先端部に設けられたカプラー7が覆い被さることで、ヒッチボール5とカプラー7とが接続され、その結果、牽引車2と被牽引車3とが連結される。但し、ヒッチボール5やカプラー7の形状については図2に示す形状に限られることなく、牽引車2と被牽引車3とが連結可能な形状であればどのような形状であっても良い。
【0015】
そして、ヒッチボール5とカプラー7とが接続された状態では、牽引車2の動きに合わせてヒッチボール5は被牽引車3(連結部材6)側に前後左右の動きを伝えることになる。また、図3に示すようにヒッチボール5に対してカプラー7が接続された状態であってもヒッチボール5に対してカプラー7の角度は自由(但し上限あり)に変位可能となっており、牽引車2に対して被牽引車3が車幅方向に揺動(旋回)可能となっている。
【0016】
一方、図1に示すように牽引車2の後側のリヤハッチの壁部には、後方カメラ(撮像装置)9が設置されている。後方カメラ9は、例えば、CCDやCIS等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。後方カメラ9は、所定のフレームレートで動画データ(撮像画像データ)を出力することができる。後方カメラ9は、広角レンズまたは魚眼レンズを有し、光軸方向は斜め下方に向けて設定され、水平方向には例えば140°~220°の範囲を撮像することができる。
【0017】
また、上記後方カメラ9の撮像可能な範囲には、牽引車2の後端部にある牽引装置4及びヒッチボール5を少なくとも含む。後方カメラ9によって撮像された撮像画像データは、例えば牽引車2と被牽引車3の連結状態(例えば、接続角度(ヒッチ角)、連結の有無等)の検出に用いることができる。但し、牽引車2と被牽引車3の連結状態を検出する手段としては後方カメラ9の代わりに、牽引装置4に設置されたセンサを備えても良い。
【0018】
また、図1に示すように牽引車2の左右のサイドミラーには障害物センサ10が夫々設置されている。障害物センサ10は例えば超音波センサであり、音波送信部と音波受信部とから基本的に構成されている。そして、音波送信部から牽引車2の左右方向に対して超音波を放射するとともに障害物(具体的には駐車車両、ブロック塀等)によって反射された反射波を音波受信部で受信する。その結果、超音波の放射から反射波を受信するまでの時間に基づいて牽引車2や被牽引車3の周囲に位置する障害物を検出することが可能となる。そして、本実施形態では特に障害物センサ10の検出結果に基づいて、駐車を行う際に影響する障害物の存在有無と、存在する場合については被牽引車3から当該障害物までの距離の検出を行う。但し、上記障害物を検出する手段としては障害物センサ10の代わりに、光軸方向が側方に設定されたカメラを用いても良い。また、障害物センサ10は牽引車2でなく被牽引車3に設置しても良い。
【0019】
一方、被牽引車3はトレーラとも呼ばれ、上記の牽引車2に牽引されて走行する。従って、基本的には牽引車2と異なり駆動源としてのエンジンやモータは有していない。また、車輪の方向を変更する為の操舵装置(ステアリングシステム)についても備えていない。例えば、内部に居住空間を有するキャンピングトレーラー、車や船を載せて運ぶライトトレーラー等が該当する。被牽引車3は、本体部と、複数(本実施形態では2個)のトレーラ車輪と、連結部材6と、カプラー7とを備える。
【0020】
ここで、連結部材6は図1に示すように被牽引車3の本体部の車幅方向の中央部の下部に設けられており、本体部の前端部から前方(進行方向)へと突出するように配置されている。
【0021】
また、図2に示すようにカプラー7は、連結部材6の前端部に設けられており、ヒッチボール5を覆う球状の凹部が形成されている。そして、カプラー7がヒッチボール5を覆うことによって、前述したように被牽引車3は牽引車2に対して旋回可能に連結される(図3参照)。尚、連結部材6の長さや地表面からの高さ(即ち被牽引車3におけるカプラー7の位置)については被牽引車3の種類によって様々である。但し、本実施形態では少なくとも牽引車2が備えるヒッチボール5と連結可能な位置にカプラー7が位置するとする。
【0022】
続いて、牽引車2が備える駐車支援装置1について説明する。駐車支援装置1は上述した牽引車2が被牽引車3と連結された状態で所定の駐車スペースへと駐車を行う際に運転者が行う車両操作を支援する為の装置である。図4は本実施形態に係る駐車支援装置1の構成を示したブロック図である。
【0023】
図4に示すように、本実施形態に係る駐車支援装置1は、牽引車2の乗員からの操作を受け付ける操作部14と、牽引車2の乗員に対して駐車スペースへと駐車する為の走行軌道やその他の駐車支援に係る情報を表示する液晶ディスプレイ15と、駐車支援に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ16と、牽引車2や被牽引車3に関する各種のデータが記録された車両情報DB21と、入力された情報に基づいて各種の演算処理を行う駐車支援ECU23と、を有する。また、駐車支援装置1はCAN等の車載ネットワークを介して、牽引車2に対して設置された後方カメラ9及び障害物センサ10、牽引車2に対する各種制御を行う車両制御ECU24、車速センサ25、ステアリングセンサ26、シフト位置センサ27等の各種センサとも接続されている。
【0024】
操作部14は、牽引車2のインストルメントパネルやハンドルに設けられ、例えば後述の駐車支援モードへの移行操作、牽引車2や被牽引車3に関する各種パラメータを入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)を有する。そして、駐車支援ECU23は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルを有しても良い。また、マイクと音声認識装置を有しても良い。
【0025】
液晶ディスプレイ15は、牽引車2のインストルメントパネルに設けられ、牽引車2が被牽引車3と連結された状態での駐車を支援する駐車支援モード移行時において駐車する為の走行軌道等を表示する。また、駐車操作を自動で行うのではなくユーザに行わせる場合については、走行軌道に沿って走行する為のステアリングの操作指示やブレーキ、アクセル、シフト位置の操作指示についても表示される。尚、液晶ディスプレイ15は、ナビゲーション装置に使用するものと兼用してもよい。
【0026】
また、スピーカ16は、駐車支援ECU23からの指示に基づいて同じく駐車支援モード移行時において駐車操作を案内する音声ガイダンス等を出力する。尚、スピーカ16は、ナビゲーション装置に使用するものと兼用してもよい。
【0027】
また、車両情報DB21は、牽引車2や被牽引車3に関する各種情報が格納される記憶手段である。例えば、牽引車2についてヒッチボール5の設置位置(地上面からの高さ、左右方向の位置、車両後端からの距離)、全長、車幅、ホイールベース、最小旋回半径等が記憶される。また、牽引車2の後輪軸から牽引車2と被牽引車3との連結点(ヒッチボール5の位置)までの距離についても記憶される。一方、被牽引車3についてはカプラー7の設置位置(地上面からの高さ、左右方向の位置、車両先端からの距離)、全長、車幅、最小旋回半径等が記憶される。被牽引車3の回転中心から牽引車2と被牽引車3との連結点(ヒッチボール5の位置)までの距離(トレーラホイールベースに相当)についても記憶される。尚、被牽引車3の回転中心は、被牽引車3が一軸(車輪が2つ)の場合には軸中心が回転中心となる。一方、被牽引車3が二軸(車輪が4つ)の場合には2つの軸の間に回転中心が存在する。これらの情報は予め乗員や車両メーカー側の人間が操作部14を用いて入力しても良いし、後方カメラ9や各種センサによって検出した値を自動で入力しても良い。尚、牽引する被牽引車3については必ずしも固定とは限らないので、牽引対象となる被牽引車3が変われば上記パラメータも変更する必要がある。車両情報DB21の記憶媒体としては例えばメモリーカードを使用することができる。更に、駐車支援ECU23内の記憶領域(例えば、RAMやフラッシュメモリ)に設けることとしても良い。
【0028】
一方、駐車支援ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)23は、駐車支援装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットであり、演算装置及び制御装置としてのCPU31、並びにCPU31が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM32、制御用のプログラムのほか、後述の駐車支援プログラム(図5参照)等が記録されたROM33、ROM33から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ34等の内部記憶装置を備えている。尚、駐車支援ECU23は、処理アルゴリズムとしての各種制御部を有する。例えば、駐車開始位置取得部は、駐車開始位置を取得する。駐車目標位置取得部は、駐車目標位置を取得する。走行軌道生成部は、駐車開始位置から駐車目標位置までの走行軌道を生成する。障害物検出部は、駐車開始位置にある被牽引車3に対して駐車目標位置側の側方にある障害物を、駐車を行う際に影響する障害物として検出する。障害物情報取得部は、駐車開始位置にある被牽引車3に対する障害物の位置又は障害物までの距離を取得する。
【0029】
また、車両制御ECU24は、牽引車2の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU24はステアリング、ブレーキ、アクセル、変速機等の車両の各駆動部と接続されており、本実施形態では例えば後述の駐車スペースへの駐車を支援する駐車支援モード移行時において、各駆動部を制御することにより牽引車2の自動運転支援を実施することが可能である。具体的には、駐車支援ECU23は、駐車支援モード実行時にCANを介して車両制御ECU24に対して駐車支援装置1で生成された自動運転支援に関する各種支援情報を送信する。そして、車両制御ECU24は受信した各種支援情報を用いて走行開始後の自動運転支援を実施する。支援情報としては例えば牽引車2や被牽引車3の走行が推奨される走行軌道、走行軌道に従って走行する際の車速やステアリング角を示す情報等がある。尚、自動運転支援ではステアリングの操作のみ自動で行っても良いし、駆動源、ブレーキ、変速機の制御も自動で行うようにしても良い。一方で牽引車2において上記自動運転支援の搭載は必須ではなく、牽引車2は手動運転のみ可能な車両としても良い。その場合には、駐車支援モードの移行時において上記自動運転支援に代わって推奨される走行軌道に沿って走行する為のステアリングの操作案内、ブレーキ、アクセル、シフト位置の操作案内を行う。
【0030】
また、車速センサ25は、牽引車2の車輪に取り付けられたアクティブ車輪速センサからなり、車輪の回転速度を検出して速度信号を出力する。また、ステアリングセンサ26は、ステアリング装置の内部に取り付けられており、ステアリングホイールを転舵した場合の舵角を検出して操舵角信号を出力する。更に、シフト位置センサ27は、シフトレバーに内蔵され、シフト位置が「P(パーキング)」、「N(ニュートラル)」、「R(リバース)」、「D(ドライブ)」、「2(2速)」、「L(ロー)」のいずれの位置となっているかを検出する。
【0031】
駐車支援ECU23は、上記各種センサからの出力信号に基づいて、現在の牽引車2の車速、走行距離、ステアリング角、シフト位置等を取得することが可能である。
【0032】
続いて、前記構成を有する駐車支援装置1において駐車支援ECU23が実行する駐車支援処理プログラムについて図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る駐車支援処理プログラムのフローチャートである。ここで、駐車支援処理プログラムは牽引車2のACC電源(accessory power supply)がONされた後であって、牽引車2の運転者が操作部14を操作して駐車支援モードへの移行を選択した場合に実行され、牽引車2が被牽引車3を連結した状態で駐車を行う場合において運転者が行う駐車操作を支援するプログラムである。尚、以下の図5にフローチャートで示されるプログラムは、駐車支援装置1が備えているRAM32やROM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0033】
先ず、ステップ(以下、Sと略記する)1においてCPU31は、駐車開始位置及び駐車目標位置を取得する。基本的には現在の牽引車2及び被牽引車3の位置が駐車開始位置となるが、現在の位置から駐車目標位置への駐車が困難である場合には現在と異なる位置に駐車開始位置を設定し、駐車開始位置までの誘導を行うようにしても良い。一方、駐車目標位置については例えば液晶ディスプレイ15に表示された牽引車2の周辺の画像からユーザが駐車を希望する位置を指定し、指定された位置を駐車目標位置としても良いし、カメラやセンサで牽引車2の周囲にある駐車スペースを検出し、検出した駐車スペースを駐車目標位置としても良い。
【0034】
次に、S2においてCPU31は、障害物センサ10の検出結果を取得することにより牽引車2及び被牽引車3の周囲にある障害物の検出を行う。また、障害物を検出した場合には検出した障害物の位置や形状についても検出結果から特定する。尚、前述したように障害物センサ10は牽引車2の左右のドアミラーに夫々設置され(図1参照)、検出範囲について少なくとも牽引車2及び被牽引車3の左右側方を含むように設定されている。また、障害物の検出についてはカメラなどの撮像手段を用いてもよく、その場合には撮像画像に対する画像認識を行うことにより障害物の種類についても検出可能である。
【0035】
続いて、S3においてCPU31は、前記S2の障害物の検出の結果、特に駐車を行う際に影響する障害物が検出されたか否かを判定する。
【0036】
ここで、従来技術において説明したように牽引車2と被牽引車3が直線上或いはそれに近い状態から右(或いは左)に旋回した場合に被牽引車3が旋回方向と逆方向にわずかに膨らむことが知られている(図12参照)。従って、駐車開始位置にある被牽引車3に対して駐車目標位置側の側方に壁などの障害物があると、切り返し位置までの前進区間において被牽引車3がそれらの障害物と接触する虞が生じる(図13参照)。
【0037】
そこで、前記S3では図6に示すように駐車開始位置Sにある被牽引車3に対して駐車目標位置G側の側方にある障害物41を、駐車を行う際に影響する障害物と判定する。尚、障害物の形状や大きさについては車両の走行に影響を与えるものであれば良く、また本実施形態では障害物の種類については問わないこととする。壁以外にブロック塀、駐車車両、建築物などでもよい。但し、壁や他車両などの特定の種別の障害物に限定することも可能である。
【0038】
そして、前記S2の障害物の検出の結果、特に駐車を行う際に影響する障害物が検出されたと判定された場合(S3:YES)、即ち障害物を考慮して駐車を行う為の走行軌道を生成する必要がある場合についてはS4へと移行する。それに対して、駐車を行う際に影響する障害物が検出されなかったと判定された場合(S3:NO)、即ち障害物を考慮して駐車を行う為の走行軌道を生成する必要がない場合についてはS11へと移行する。
【0039】
S4においてCPU31は、駐車開始位置にある被牽引車3に対する前記S3で駐車を行う際に影響すると判定された障害物(以下、影響障害物という)の位置を特定する情報として、被牽引車3から影響障害物までの距離Lを取得する。尚、距離Lについては例えば障害物センサ10の検出結果を用いて算出することとする。或いは、影響障害物が地図情報に位置が記憶されるような障害物である場合には、地図情報と被牽引車3の現在位置から距離Lを取得することも可能である。
【0040】
次に、S5においてCPU31は、駐車開始位置における牽引車2及び被牽引車3の方位及び牽引車2と被牽引車3の接続角度(ヒッチ角)を取得する。上述したように基本的には現在の牽引車2及び被牽引車3の位置が駐車開始位置となるので、前記S5では現在の牽引車2及び被牽引車3の方位及び接続角度が取得される。尚、接続角度については例えば後方カメラ9の撮像画像から特定することが可能である。
【0041】
続いて、S6においてCPU31は、牽引車2及び被牽引車3に関する情報を車両情報DB21から取得する。尚、車両情報DB21には、牽引車2及び被牽引車3に関する各種情報が記憶されており、特に前記S6では牽引車2について“牽引車2の後輪軸から牽引車2と被牽引車3との連結点(ヒッチボール5の位置)までの距離(以下、連結距離という)”、被牽引車3について“被牽引車3の回転中心から牽引車2と被牽引車3との連結点(ヒッチボール5の位置)までの距離(以下、トレーラホイールベースという)”が少なくとも取得される。
【0042】
次に、S7においてCPU31は、牽引車2に関して駐車開始位置から前進する前進軌道を生成する。ここで、特に後退駐車を行う場合の走行軌道は、駐車スペースなどの駐車目標とする駐車目標位置に対して進入するのに適切な切り返し位置まで一旦前進する前進区間と、切り返し位置で後退に切り替えて駐車目標位置まで後退する後退区間とを有する。以下では前進区間における走行軌道を前進軌道といい、後退区間における走行軌道を後退軌道という。前記S7では、特に影響障害物については考慮せずに駐車目標位置へ駐車するのに最も推奨される前進軌道を生成する。
【0043】
以下、前記S7の前進軌道の生成方法について説明すると、先ずCPU31は車両情報DB21に格納された各種情報を用いて駐車目標位置へと後退駐車する為の推奨される後退軌道を先に算出し、その後退軌道の始点(後退を開始する位置)を切り返し位置として特定し、切り返し位置における牽引車2及び被牽引車3の方位を切り返し方位として取得する。尚、後退軌道は基本的に経路長が短くなることを優先し、且つ曲率の最大値や曲率の変化率が安全に走行可能となる閾値を超えないようにして算出する。また、被牽引車3の描く走行軌道の曲率を上昇させる為の逆切り動作やその後に曲率を減少させる為の切り増し動作についても行うようにしても良い。
【0044】
その後、CPU31は、駐車開始位置から前記S5で取得された牽引車2の方位へと移動を開始し、牽引車2及び被牽引車3が上記特定された切り返し位置に同じく特定された切り返し方位で到達する為の牽引車2の前進軌道を算出し、算出された前進軌道を駐車目標位置へ駐車するのに最も推奨される前進軌道として生成する。例えば前記S7で生成される牽引車2の前進軌道42は、図7に示すように駐車開始位置Sから駐車目標位置Gと離間する方向に旋回しつつ前進する軌道となる。より具体的には、前進軌道42は駐車開始位置Sからステアリングを右方向に徐々に旋回させながら(即ち曲率が徐々に大きく変化させながら)進む第1のクロソイド曲線と、ステアリングを徐々に直進方向に戻しながら(即ち曲率が徐々に小さく変化させながら)進む第2のクロソイド曲線との組み合わせからなる。但し、前進軌道42は上記特定された切り返し位置に同じく特定された切り返し方位で到達できる経路であれば図7に示す形状に限られない。尚、前記S7で生成された前進軌道については以下、基準軌道ともいう。
【0045】
その後、S8においてCPU31は、牽引車2が前記S7で生成された前進軌道に従って移動する際に被牽引車3の描く走行軌道を予測し、予測された走行軌道を被牽引車3の前進軌道として取得する。尚、被牽引車3の走行軌道の予測は前記S6で取得されたトレーラホイールベース及び連結距離と、前記S5で取得された駐車開始位置の被牽引車3の方位及び接続角度に基づいて行う。図7には牽引車2が前進軌道42に従って移動する際に予測される被牽引車3の前進軌道43の一例についても示す。
【0046】
次に、S9においてCPU31は前記S8で予測された前進軌道に従って被牽引車3が走行した場合の膨らみ量Xを算出する。ここで、膨らみ量Xは図8に示すように前記S7で生成された前進軌道を走行する牽引車2が旋回した場合に被牽引車3がその旋回方向と逆方向にわずかに膨らむ際の量を定義したものであり、図8に示すように車幅方向に沿って駐車開始位置を基準に外側に膨らんだ距離とする。また、膨らみ量Xについては前進軌道の曲率の大きさと連結距離とトレーラホイールベースとに依存する。即ち、前進軌道の曲率が大きいほど膨らみ量Xは大きくなり、連結距離が長いほど膨らみ量Xは大きくなり、トレーラホイールベースが短いほど膨らみ量Xは大きくなる。
【0047】
続いて、S10においてCPU31は、前記S8で予測された被牽引車3の前進軌道が影響障害物と重複するか否かを判定する。尚、前記S10において“被牽引車3の前進軌道が影響障害物と重複する”とは影響障害物が位置する範囲と被牽引車3の前進軌道とが重なる場合に加えて、前進軌道に沿って被牽引車3が走行した場合に影響障害物が位置する範囲と被牽引車3とが重なる場合、即ち膨らみ量Xが影響障害物までの距離Lよりも大きくなる場合に“被牽引車3の前進軌道が影響障害物と重複する”とみなす。
【0048】
そして、前記S8で予測された被牽引車3の前進軌道が影響障害物と重複すると判定された場合(S10:YES)、即ち前記S7で生成された前進軌道(基準軌道)に従って牽引車2が走行した場合に被牽引車3が影響障害物と接触する虞があると判定された場合には、S12へと移行する。それに対して、前記S8で予測された被牽引車3の前進軌道が影響障害物と重複しないと判定された場合(S10:NO)、即ち前記S7で生成された前進軌道(基準軌道)に従って牽引車2が走行したとしても被牽引車3が影響障害物と接触する虞がないと判定された場合には、S11へと移行する。
【0049】
S11においてCPU31は、前記S7で生成された前進軌道(S3:NOと判定された場合についてはS7の処理を追加で実行する)と、前進軌道上(具体的には終点)にある切り返し位置から後退する後退軌道の組み合わせを、駐車開始位置から駐車目標位置までの推奨される走行軌道として出力する。尚、切り返し位置から後退する後退軌道の算出については前記S7で既に説明したので説明は省略する。尚、走行軌道に基づく案内や制御は牽引車2の走行軌道に基づいて行われるので、前記S11では牽引車2の走行軌道のみを出力するようにしても良い。
【0050】
一方、S12においてCPU31は、前記S7で生成された前進軌道(基準軌道)に代わる牽引車2の前進軌道の候補として、旋回時の曲率の異なる複数の候補(以下、前進軌道候補という)を新たに生成する。基本的には旋回時の曲率を小さくする程、膨らみ量Xが小さくなるので、基準軌道よりも旋回時の曲率を小さくした軌道を前進軌道候補として生成する。更に複数の前進軌道候補を生成する場合については段階的に曲率を小さくした複数の候補を生成するのが望ましい。例えば第1の前進軌道候補は基準軌道よりも20%曲率を小さくし、第2の前進軌道候補については基準軌道よりも40%曲率を小さくする。
【0051】
一方で図9に示すように駐車開始位置Sにおける牽引車2の車両の進行方向をx軸方向、水平且つ進行方向に垂直な方向をy軸方向とすると、前記S12で生成される前進軌道候補の終点は基準軌道と比較してx軸方向に大きく変位する。尚、図9に示す例では前進軌道候補を2本のみ生成しているが、1本のみ或いは3本以上生成しても良い。
【0052】
また、基準軌道に比べて旋回時の曲率を小さくする場合において、基準軌道に比べて軌道全体の曲率を小さくするのではなく、特に影響障害物との距離が近い範囲(即ち走行開始直後)での旋回の曲率のみを小さくした軌道としても良い。また、影響障害物との距離が離れた範囲(即ち切り返し位置に近づいた状態)については基準軌道よりも逆に曲率を大きくすることも可能である。
【0053】
その後、S13においてCPU31は、牽引車2が前記S12で生成された前進軌道候補毎に、前進軌道候補に従って移動する際に被牽引車3の描く走行軌道を予測し、予測された走行軌道を被牽引車3の前進軌道候補として取得する。尚、被牽引車3の走行軌道の予測方法は前記S8と同様であるので説明は省略する。
【0054】
次に、S14においてCPU31は、前記S13で予測された前進軌道候補毎に、前進軌道候補に従って被牽引車3が走行した場合の膨らみ量Xを算出する。尚、膨らみ量Xの算出方法は前記S9と同様であるので説明は省略する。
【0055】
続いて、S15においてCPU31は、前記S13で予測された被牽引車3の前進軌道候補の内、影響障害物と重複せず、且つ最も経路長が短い前進軌道候補を選択する。具体的には、前記S14で算出された膨らみ量Xが影響障害物までの距離Lよりも小さくなる前進軌道候補については“被牽引車3の前進軌道候補が影響障害物と重複しない”とみなす。また、経路長については被牽引車3の前進軌道候補ではなく対応する牽引車2の前進軌道候補の長さを用いて比較しても良い。尚、前記S13で予測された被牽引車3の前進軌道候補がいずれも影響障害物と重複する場合についてはS12へと戻り、更に旋回時の曲率を小さくした新たな候補を生成するのが望ましい。
【0056】
その後、S16においてCPU31は、前記S12で生成された前進軌道候補の内、前記S15で選択された被牽引車3の前進軌道候補と対応する牽引車2の前進軌道候補(以下、選択候補という)と前記S7で生成された前進軌道(基準軌道)とを比較し、図9に示すように駐車開始位置Sにおける牽引車2の車両の進行方向をx軸方向とした場合のx軸方向の長さの差分(終点間の距離にも相当)を初期後退距離Dとして算出する。例えば、図9に示す例において選択候補が前進軌道候補51である場合には初期後退距離DはD1となり、選択候補が前進軌道候補52である場合には初期後退距離DはD2となる。
【0057】
ここで、前記S16で算出される初期後退距離Dは、駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進軌道上に位置させる為に駐車開始位置を後方に移動させる必要がある最短の距離である。以下、その理由について説明すると、前述したように前記S12で生成される前進軌道候補の終点は基準軌道と比較してx軸方向の位置が大きく変位していることから、図10に示すように選択候補が前進軌道候補51である場合において、仮に前進軌道候補51の移動開始位置を駐車開始位置から初期後退距離Dだけ後方にすれば基準軌道42と前進軌道候補51のx軸方向の終点は一致することとなる。また、前進軌道候補51の移動開始位置を駐車開始位置から初期後退距離Dだけ後方にすれば、後退軌道の生成が可能な位置に切り返し位置を設定することができる。
【0058】
続いて、S17においてCPU31は、前記S1で取得された駐車開始位置から直進方向に初期後退距離Dだけ後方に後退する初期後退軌道を生成する。更に選択軌道の終点で切り返しを行った後に駐車目標位置まで後退する後退軌道についても生成する。尚、後退軌道については前記S7で生成される基準軌道に対する後退軌道と同様に算出可能であるので説明は省略する。
【0059】
その後、S18においてCPU31は、前記S17で生成された初期後退軌道と、同じく前記S17で生成された後退軌道と、選択候補(前記S15で選択された被牽引車3の前進軌道候補と対応する牽引車2の前進軌道候補)と、の組み合わせを駐車開始位置から駐車目標位置までの推奨される走行軌道として出力する。その結果、図11に示すように最終的に出力される走行軌道は、前記S1で取得された駐車開始位置から直進方向に初期後退距離Dだけ後方に後退して駐車開始位置を調整する初期後退軌道55と、調整後の駐車開始位置を走行開始位置として前進する選択候補の軌道である修正前進軌道56と、修正前進軌道56上(具体的には終点)で切り返した後に駐車目標位置まで後退する後退軌道57と、を順に走行する軌道となる。尚、修正前進軌道56は被牽引車3の走行軌道が影響障害物と重複しない条件を満たす走行軌道であるので、前記S18では影響障害物により走行不可能な走行軌道が生成されることがない。また、影響障害物と重複しない条件を満たす範囲でできる限り経路長が短くなることを優先した走行軌道を生成することが可能となる。尚、走行軌道に基づく案内や制御は牽引車2の走行軌道に基づいて行われるので、前記S18では牽引車2の走行軌道のみを出力するようにしても良い。
【0060】
尚、本実施形態では初期後退軌道55の長さである初期後退距離Dは選択候補と基準軌道のx方向の長さの差分としているが、初期後退距離Dは選択候補と基準軌道のx方向の長さの差分より大きくても良い。即ち余裕をもって多めに後退させる軌道としても良い。その場合には、修正前進軌道56において前進開始後に旋回するタイミングを遅らせれば同じく修正前進軌道56上に駐車目標位置へと後退可能な切り返し位置を位置させることが可能となる。但し、できる限り経路長が短くすることを優先するのであれば、初期後退距離Dは選択候補と基準軌道のx方向の長さの差分(即ち、駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進軌道上に位置させる為に駐車開始位置を後方に移動させる必要がある最短の距離)とするのが望ましい。
【0061】
また、駐車支援装置1は、その後に前記S18で出力された走行軌道に基づいて各駆動部を制御することにより牽引車2の駐車支援を実施することが可能である。具体的には、駐車支援装置1は、CANを介して車両制御ECU24に対して前記S18で生成された走行軌道などの自動運転支援に関する各種支援情報を送信する。そして、車両制御ECU24は受信した各種支援情報を用いて自動運転支援を実施する。具体的には、前記S18で生成された走行軌道に沿って駐車開始位置から駐車目標位置まで牽引車2が移動するようにステアリング、駆動源、ブレーキ、変速機の制御を行う。尚、上記自動運転支援ではステアリングの操作のみ自動で行い、アクセル、ブレーキ、シフト位置の操作については手動で行わせるようにしても良い。一方で牽引車2において上記自動運転支援の搭載は必須ではなく、牽引車2は手動運転のみ可能な車両としても良い。その場合には、上記自動運転支援に代わって前記S18で生成された走行軌道に沿って走行する為のステアリングの操作案内、ブレーキ、アクセル、シフト位置の操作案内を行う。
【0062】
また、駐車支援モードへの移行中については生成された走行軌道に従って駐車操作ができているか否かを運転者に確認させる為に、液晶ディスプレイ15に走行軌道と車両の現在位置を比較可能な状態で表示するのが望ましい。更に、牽引車2や被牽引車3に設置されたカメラで撮像した周囲の画像に基づいて上方から見下ろした俯瞰画像を生成し、駐車支援モードへの移行中については俯瞰画像を液晶ディスプレイ15に表示するようにしても良い。
【0063】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る駐車支援装置1及び駐車支援装置1で実行されるコンピュータプログラムによれば、駐車開始位置及び駐車目標位置を取得し(S1)、駐車開始位置から駐車目標位置までの走行軌道を生成する場合において、駐車開始位置にある被牽引車3に対して駐車目標位置側の側方にある障害物を、駐車を行う際に影響する障害物として検出し(S2)、駐車開始位置にある被牽引車3に対する障害物の位置又は障害物までの距離を取得し(S4)、駐車開始位置にある被牽引車3に対する障害物の位置又は障害物までの距離に基づいて被牽引車3の走行軌道が障害物と重複しない条件を満たすか否かを判定し、条件を満たす範囲で経路長が短くなるように前進区間の走行軌道を生成する(S12~S18)ので、障害物により走行不可能な走行軌道が生成されることなく、より適切な走行軌道を生成することが可能となる。
また、被牽引車の回転中心から牽引車と被牽引車との連結点までの距離であるトレーラホイールベースと、牽引車2の後輪軸から牽引車2と被牽引車3との連結点までの距離である連結距離と、を取得し(S6)、前進区間の牽引車2の走行軌道の候補として旋回時の曲率が異なる複数の候補を生成し(S12)、複数の候補毎に該候補を牽引車2が走行する際の被牽引車3の走行軌道をトレーラホイールベースと連結距離とに基づいて算出し(S13)、算出された被牽引車3の走行軌道が障害物と重複しない候補の内で経路長が最も短くなる候補を選択して、前進区間の走行軌道として生成する(S15)ので、障害物と重複することがない前進区間の走行軌道を生成することが可能となる。
また、障害物を考慮しない前進区間の走行軌道である基準軌道を取得し(S7)、基準軌道が障害物と重複しない条件を満たす場合には、基準軌道を前進区間の走行軌道として生成する一方、基準軌道が障害物と重複しない条件を満たさない場合に、前進区間の牽引車2の走行軌道の候補として基準軌道よりも旋回時の曲率を小さくした複数の候補を生成するので、障害物と重複する虞のない状況では障害物を考慮せずに推奨される走行軌道を生成することが可能となる一方、障害物と重複する虞のある状況では走行軌道の曲率を調整して障害物を重複しない走行軌道を生成することが可能となる。
また、走行軌道は、前進区間と後退区間に加えて、駐車開始位置から直進方向に所定距離だけ後方に後退することで駐車開始位置を調整する初期後退区間を更に含み、所定距離は、駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進区間の走行軌道上に位置させる為に駐車開始位置を後方に移動させる必要がある最短の距離とするので、駐車開始位置を調整することで走行軌道の曲率を変更したとしても駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進区間の走行軌道上に位置させることが可能となる。
【0064】
尚、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば本実施形態では前進軌道の曲率を小さく変更したとしても駐車開始位置から直進方向に所定距離だけ後方に後退する初期後退区間を追加することで駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進軌道上に位置させることとしているが、初期後退区間を追加せずに駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進軌道上に位置させることも可能である。例えば、前進軌道の曲率を小さく変更する範囲を影響障害物の近くにいる範囲に限定し、影響障害物から離れた範囲については逆に曲率を大きくすることで駐車目標位置に後退可能な切り返し位置を前進軌道上に位置させることも可能である。
【0065】
また、本実施形態では、障害物センサ10により障害物の位置を検出することとしているが、側方を光軸方向に設定したカメラで撮像した撮像画像に対して画像認識処理を行うことにより、障害物の位置を検出するようにしても良い。更に、障害物の位置や形状を記憶したデータベース(例えば地図情報)を備え、牽引車2の位置とデータベースを参照することによって障害物の位置を算出しても良い。
【0066】
また、本実施形態では前記S4において駐車開始位置にある被牽引車3に対する障害物の位置を特定する情報として、被牽引車3から障害物までの距離Lを取得し、距離Lを用いてS10の判定処理を行っているが、被牽引車3から障害物への距離Lに加えて被牽引車3から障害物の方位について特定し、方位も用いてS10の判定処理を行っても良い。或いは、それらの距離Lと方位から障害物の具体的な位置座標(被牽引車3に対する相対座標)についても特定するようにしても良い。そして、距離Lの代わりに具体的な位置座標を用いてS10の判定処理を行うようにしても良い。尚、障害物を検出する手段としてカメラなどを用いれば距離Lと方位からではなく障害物の具体的な位置座標を直接特定することも可能である。
【0067】
また、前記S12で生成される前進軌道候補は基準軌道に比べて曲率を小さくするのではなく、旋回のタイミングを変えることで影響障害物との重複を回避できるのであれば、旋回のタイミングを変えた候補を生成しても良い。
【0068】
また、本実施形態では、基準軌道に比べて曲率を小さくすることで前進軌道候補を生成しているが、曲率の代わりに走行時の舵角(ステアリング角)を調整することも可能である。尚、牽引車2の走行軌道が描く曲率と走行軌道に沿って走行する牽引車2の舵角は基本的に連動するので曲率の代わりに舵角を調整したとしても問題なく実施可能である。
【0069】
また、本実施形態では、駐車支援処理プログラム(図5)の処理を駐車支援装置1の駐車支援ECU23が実行する構成としているが、実行主体は適宜変更することが可能である。例えば、液晶ディスプレイ15の制御部、車両制御ECU、ナビゲーション装置の制御部、その他の車載器が実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0070】
1…駐車支援装置、2…牽引車、3…被牽引車、4…牽引装置、5…ヒッチボール、6…連結部材、7…カプラー、9…後方カメラ、15…液晶ディスプレイ、31…CPU、32…RAM、33…ROM、41…障害物、42…基準軌道(障害物を考慮しない場合の推奨される前進軌道)、51,52…前進軌道候補、55…初期後退軌道、56…修正前進軌道、57…後退軌道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13