(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158188
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】多接点コイルばねを備えたオス端子
(51)【国際特許分類】
H01R 13/24 20060101AFI20241031BHJP
F16B 21/16 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01R13/24
F16B21/16 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073172
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(72)【発明者】
【氏名】大野 紘明
(72)【発明者】
【氏名】毛利 行潤
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 徹
(72)【発明者】
【氏名】田中 泰弘
【テーマコード(参考)】
3J037
【Fターム(参考)】
3J037AA08
3J037BB03
(57)【要約】
【課題】メス端子への挿入力を低減することのできる、多接点コイルばねを備えたオス端子を提供すること。
【解決手段】オス端子1は、円柱状の挿入部12を有する端子本体10と、端子本体10に取り付けられる環状の多接点コイルばね11とを備えている。メス端子2に挿入される挿入部12の外周面上には、当該挿入部12の中心軸に対して傾斜する傾斜面に沿って、多接点コイルばね11を収納するばね収納環状溝13が形成されている。ばね収納環状溝13に取り付けられた多接点コイルばね11は、挿入部12の外周面よりも径外方向に出ている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の挿入部を有する端子本体と、
前記端子本体に取り付けられる環状の多接点コイルばねと、を備えており、
前記挿入部の外周面上に、当該挿入部の中心軸に対して傾斜する傾斜面に沿って、前記多接点コイルばねを収納するばね収納環状溝が形成されており、
前記ばね収納環状溝に取り付けられた前記多接点コイルばねが、前記挿入部の外周面よりも径外方向に出ている、多接点コイルばねを備えたオス端子。
【請求項2】
前記挿入部が、基端部と、当該基端部の先端に嵌合された先端部とを備えており、
前記基端部が、前記ばね収納環状溝の環状底面及び基端側環状内側面を構成する、前記傾斜面に沿って形成された段部を有し、
前記先端部の前記基端部側の端面が、前記ばね収納環状溝の先端側環状内側面を構成する、前記傾斜面に沿って形成された傾斜端面である、請求項1に記載の多接点コイルばねを備えたオス端子。
【請求項3】
前記端子本体が、前記挿入部と一体的に形成されたフランジを備えており、
前記フランジが、前記挿入部の外周面よりも前記中心軸に対して直角な径外方向に延出されている、請求項2に記載の多接点コイルばねを備えたオス端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多接点コイルばねを備えたオス端子に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、多接点コイルばねを用いたオスメス端子の電気的接続構造を開示している。当該接続構造では、円筒状のメス端子に円柱状のオス端子が挿入される。メス端子の内周面上にはその中心軸に垂直な面に沿って環状の溝が形成されており、当該溝に環状の多接点コイルばねが収納されている。オス端子をメス端子に挿入すると、オス端子の先端によってコイルばねが径外方向に変形されて、オス端子のさらなる挿入が許容されるようになっている。
【0003】
この接続構造では、オス端子の外周面上にも対応する環状の溝が形成されており、メス端子に嵌められたコイルばねとオス端子の溝の位置が一致する挿入位置でコイルばねの変形が復元して、オス端子がメス端子にラッチされる。この接続状態では、オス端子、多接点コイルばね、及び、メス端子へと導通経路が形成される。上述した挿抜可能なラッチタイプではなく、コイルばねや溝断面の形状を工夫して挿入は可能であるが抜き取り不可のロックタイプの接続構造もある。オス端子の外周面上に溝を形成しない、ラッチ機能のない挿抜可能なホールドタイプの接続構造もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-122318号公報
【特許文献2】特開2013-101970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記構造では、オス端子のメス端子への挿入時にオス端子の先端でコイルばねを径外方向に変形させる際の挿入力が大きくなるという問題があった。コイルばねが径外方向に一旦変形されてその内径が拡張されれば挿入力は下がるが、オス端子を挿入してその先端でコイルばねを径外方向に変形させるまでに大きな力が必要である。また、上記特許文献2には、類似の接続構造を開示している。メス端子の内周面上に多接点コイルばねを螺旋状に取り付ける螺旋状の溝が形成された接続構造が開示されている。しかし、このような接続構造では、多接点コイルばねをメス端子の内周面上に螺旋状に取り付けるのが難しく、かつ、多接点コイルばねが外れやすい。
【0006】
本発明の目的は、メス端子への挿入力を低減することのできる、多接点コイルばねを備えたオス端子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の多接点コイルばねを備えたオス端子は、円柱状の挿入部を有する端子本体と、前記端子本体に取り付けられる環状の多接点コイルばねと、を備えており、前記挿入部の外周面上に、当該挿入部の中心軸に対して傾斜する傾斜面に沿って、前記多接点コイルばねを収納するばね収納環状溝が形成されており、前記ばね収納環状溝に取り付けられた前記多接点コイルばねが、前記挿入部の外周面よりも径外方向に出ている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メス端子への挿入力を低減することのできる、多接点コイルばねを備えたオス端子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態に係るオス端子と当該オス端子が挿入されるメス端子とにより構成される電気的接続構造を示す斜視図(非接続状態)である。
【
図3】上記接続構造におけるオス端子のメス端子への挿入ストロークとのオス端子の挿入力との関係を示すグラフである。
【
図4】比較例の接続構造におけるオス端子のメス端子への挿入ストロークとのオス端子の挿入力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて実施形態に係るオス端子1について詳細に説明する。なお、図面の寸法比率は実際の比率と異なる場合がある。
【0011】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態に係るオス端子1がメス端子2に挿入されると、オス端子1の多接点コイルばね11(以下、単に「コイルばね11」と呼ぶ)を介してオス端子1とメス端子2との間の電気的接続が確立される。本実施形態のオス端子1のメス端子2への接続形態は、ラッチやロックは行われない、コイルばね11の弾性復元力で接続状態が維持される、挿抜可能なホールドタイプである。
【0012】
オス端子1は、端子本体10と、当該端子本体10に取り付けられたコイルばね11とを備えている。端子本体10は、導電性材料によって形成されており、メス端子2に挿入される円柱状の挿入部12を備えている。追って詳しく説明するが、挿入部12は、基端部14と、当該基端部14の先端に嵌合された先端部15で構成されている。挿入部12には、コイルばね11を収納する、傾斜されたばね収納環状溝13が形成されている。
【0013】
ばね収納環状溝13の詳しい説明の前にばね収納環状溝13に収納されるコイルばね11について説明する。本実施形態の環状のコイルばね11は、外力が作用していない自然状態では正円状の形態をしている。自然状態で正円状のコイルばね11は、傾斜するばね収納環状溝13内に収納されると変形して楕円状の形態で保持される。自然状態で正円状のコイルばね11の平面図において、各巻回要素は素線の正円状の巻回基準軸(螺旋の中心軸)に対してそれぞれ傾斜している。即ち、本実施形態のコイルばね11は、いわゆる「ラジアルタイプの斜め巻きコイルばね」である。ラジアルタイプの斜め巻きコイルばねは、正円状形態の径方向に圧縮されやすい。なお、斜め巻きコイルばねには、径方向に垂直な軸方向に圧縮されやすいアキシャルタイプもあるが、本実施形態のコイルばね11はラジアルタイプの斜め巻きコイルばねである。
【0014】
コイルばね11を収納する傾斜されたばね収納環状溝13は、円柱状の挿入部12の外周面上に形成されている。ばね収納環状溝13は、挿入部12の中心軸に対して傾斜する傾斜面に沿って形成されている。即ち、挿入部12の中心軸はこの傾斜面と直交しない。円柱をその中心軸に対して傾斜する切断面で切断したとき切断面が楕円となるように、ばね収納環状溝13も楕円状に形成される。
【0015】
ばね収納環状溝13はコイルばね11を保持するための溝であり、その幅は一定である。ばね収納環状溝13の環状底面13aは、挿入部12の中心軸に平行な曲面である。ばね収納環状溝13の基端側環状内側面13bは、上述した傾斜面に平行な傾斜平面である、ばね収納環状溝13の先端側環状内側面13cも、上述した傾斜面に平行な傾斜平面であり、基端側環状内側面13bと対向している。
【0016】
ばね収納環状溝13の幅は、コイルばね11の螺旋の外径にほぼ等しいか僅かに大きい。ばね収納環状溝13の深さは、コイルばね11の螺旋の外径よりも小さくされており、コイルばね11は挿入部12の外周面よりも径外方向に出ている。この挿入部12の外周面よりも出ている部分が導電性材料によって形成されたメス端子2の挿入穴20の内周面と接触して、電気的接続が形成される。
【0017】
上述したばね収納環状溝13は、本実施形態では、上述した挿入部12を構成する基端部14と当該基端部14に嵌合された筒状の先端部15とで形成されている。基端部14の軸方向の中間部には、上述した基端側環状内側面13b及び環状底面13aによって段部が形成されている。環状底面13aは、そのまま基端部14の先端にまで達している。即ち、基端部14は、上述した段部よりも基端側に外径の大きな大径部分を有し、段部よりも先端側に外径の小さな小径部分を有している。
【0018】
先端部15は、樹脂製であり、その外径は基端部14の大径部の外径と同じである。先端部15の基端部14側の端面は、上述した先端側環状内側面13cとなる傾斜端面である。先端部15を基端部14の先端に嵌合させるために、基端部14の先端近傍には、その中心軸に垂直な平面に沿って環状の係合溝14aが形成されると共に、先端部15の内周面上には、その中心軸に垂直な平面に沿って環状の係合突起15aが形成されている。
【0019】
基端部14の先端面の周縁には、先端部15を嵌合させやすくするためにテーパー面が形成されている。先端部15の先端面の周縁にも、オス端子1の挿入部12をメス端子2の挿入穴20に挿入させやすくするためにテーパー面が形成されている。挿入穴20の基端側の内周縁にも、挿入部12を挿入穴20に挿入させやすくするためにテーパー面が形成されている。挿入穴20の内径は挿入部12の外径よりもやや大きく、ばね収納環状溝13に収納された状態の外径(軸方向から見た外径)よりも小さい。
【0020】
オス端子1の組立時には、基端部14の先端からコイルばね11を取り付けた後に、基端部14の先端に先端部15を嵌合させる。嵌合時には、係合溝14aに係合突起15aが係合する。係合溝14aと係合突起15aとの係合では、基端部14に対する先端部15の回転位置は規制されない。しかし、基端部14の基端側環状内側面13bと先端部15の先端側環状内側面13cとでコイルばね11を挟止するように、先端部15の回転位置は自ずと正しい位置に収まる。基端部14の上述した傾斜段部と先端部15の上述した傾斜端面とによってばね収納環状溝13が形成され、コイルばね11は傾斜しているばね収納環状溝13に合わせて楕円状形態に変形される。
【0021】
自然状態のコイルばね11の円状形態の内径は、基端部14の先端の小径部の外径にほぼ等しくかやや小さく、ばね収納環状溝13に楕円形態で収納されたコイルばね11は、多数点で基端部14と接触する。
【0022】
また、端子本体10の基端側には、挿入部12と一体的に形成されたフランジ16も形成されている。フランジ16は、挿入部12の外周面よりも中心軸に対して直角な径外方向に延出されている。オス端子1をメス端子2に挿入する際やオス端子1をメス端子2から抜き抜く際には、オス端子1又はメス端子2に軸方向の挿抜力を作用させることになる。このようなフランジ16を形成することで、オス端子1に軸方向の挿抜力を作用させやすくなる。例えば、オス端子1が円筒状のハウジング(図示せず)にインサート成形され、ハウジングを介してメス端子2に対して挿抜される場合がある。このような場合、フランジ16がハウジングと一体となるようにオス端子1がハウジングにインサート成形されれば、オス端子1とハウジングとの間にメス端子2が挿入されるスペースを形成しつつ、オス端子1に軸方向の挿抜力を作用させやすくなる。
【0023】
上述した構成のオス端子1の挿入部12をメス端子2の挿入穴20に挿入すると、まず、傾斜されたコイルばね11の挿入先行側が挿入穴20の開口縁と当接する。オス端子1をさらに押し込むと、コイルばね11の挿入先行側が径内方に圧縮されて挿入部12はさらに挿入穴20の内部に挿入される。
【0024】
このとき、上述した特許文献1のようにコイルばね11が傾斜されていないと、コイルばね11の挿入先行側だけでなく、その全周で挿入穴20の開口縁と当接する。そして、オス端子1をさらに押し込むには、コイルばね1を全周にわたって同時に径内方に圧縮させなくてはならないので、大きな挿入力が必要になる。しかし、本実施形態では、コイルばね11の挿入先行側のみを径内方に圧縮させればよいので、オス端子1の初期挿入力は低減され、オス端子1を容易に挿入できる。なお、本実施形態では、挿入穴20の開口縁にはテーパー面が形成されているので、この初期挿入力はさらに低減される。
【0025】
挿入部12の挿入穴20へのさらなる挿入によって、コイルばね11は、その挿入先行側から挿入後端側へと徐々に径内方に圧縮される。即ち、コイルばね11を径内方に圧縮する際の反力による挿入力の増加を、オス端子1の挿入ストロークに合わせて分散させることができる。この挿入ストロークと挿入力の関係を
図3及び
図4に示す。
図3が、本実施形態の挿入ストロークと挿入力の関係を模式的に示している。一方、
図4は、コイルばね11が傾斜されていない場合の挿入ストロークと挿入力の関係を模式的に示している。
【0026】
図3の
図4との比較から分かるように、本実施形態の場合、初期挿入力自体を低く抑えることができる。そして、初期挿入力のピーク後も多少の挿入力は必要となるが挿入力の最大値は低く抑えることができる。これは、挿入が容易であることを意味する。一方、コイルばね11が傾斜されていない場合、初期挿入力が高く、コイルばね11の破損や脱落の点では不利である。例えば、オスメス端子が非常に小さいような場合、環状のコイルばね11自体の外径も小さくなるし、コイルばね11の素線径も小さくなる。このようなオスメス端子では、コイルばね11の破損や脱落は起こりやすい。なお、オス端子1がメス端子2に完全に挿入されれば、コイルばね11の全周にわたって弾性復元力が発現するので、メス端子2に対するオス端子1の保持力は、
図3の場合と
図4の場合とでほぼ差が生じない。
【0027】
オス端子1がメス端子2に完全に挿入されると、コイルばね11は、上述したようにオス端子1の基端部14と多数点で接触すると同時にメス端子2の挿入穴20の内周面とも多数点で接触する。そして、この接触状態は、径方向に圧縮されているコイルばね11の弾性復元力によって確実に維持され、その経時的変化も少ない。また、接続状態のオス端子1及びメス端子2に振動が作用する場合であっても、コイルばね11を介したオス端子1及びメス端子2の導通は安定して確保される。多接点で導通が確保されるため、その分大きな電流にも対応できる。
【0028】
上記実施形態では、特許文献1のようにメス端子2の挿入穴20の内周面上にコイルばねを設けるのではなく、オス端子1の円柱状の挿入部12の外周面上に環状のコイルばね11を設けた。このため、コイルばね11を視認しやすく、異常接続をより防止できる。例えば、挿入穴20の内周面上にコイルばねを設けると視認できないため、コイルばねが外れていたり変形していたりしても気づきにくい。また、コイルばね11を挿入部12の外周面上に取り付ける方が、コイルばねを挿入穴20の内周面上に取り付けるよりも作業性がよく、生産性が向上する。
【0029】
また、特許文献2のようにメス端子2の挿入穴20の内周面上にコイルばねを螺旋状に取り付けることも考えられる。しかし、この場合は、環状ではなく直線状のコイルばねを、その弾性復元力に抗して挿入穴20の内周面上に形成された螺旋状の溝内に収めなければならず、生産性が悪い。また、環状ではなく直線状のコイルばねを取り付けているため、その弾性復元力によってコイルばねが外れやすい。さらに、本実施形態のように、オス端子1の円柱状の挿入部12の外周面上に直線状のコイルばねを、その弾性復元力に抗して螺旋状に保持させておくのは難しい。また、螺旋状のコイルばねはオス端子1の挿入ストロークの方向に複数の環状のコイルばね11が並べられたものと大差はなく、挿入力の低減効果は本実施形態に及ばないと思われる。
【0030】
また、上記実施形態では、挿入部12を基端部14及び先端部15の二部材で形成し、この二部材でコイルばね11を挟止する構造とした。しかし、コイルばね11の取り付けに問題が生じないのであれば、挿入部12を一部材で形成してその外周面上に傾斜するばね収納環状溝13を形成してもよい。この場合、コイルばね11のばね収納環状溝13への取付時には、その弾性変形範囲内で拡径されながら挿入部12の先端から取り付けられる。取付時に塑性変形させなければ取り付けられない場合は、本実施形態のように挿入部12を二部材で形成する構成が非常に有用である。
【0031】
また、オスメス端子が非常に小さいような場合、環状のコイルばね11自体の外径も小さくなるし、コイルばね11の素線径も小さくなる。このような場合、コイルばね11の弾性変形範囲は狭くなる。さらに、小さなコイルばね11を弾性変形範囲内で拡径させつつ傾斜しているばね収納環状溝13に収納させなければならず、コイルばね11の取り付けは難しくなる。このような場合も、本実施形態のように挿入部12を二部材で形成することは非常に有用である。
【0032】
本実施形態に係るオス端子1は、円柱状の挿入部12を有する端子本体10と、端子本体10に取り付けられる環状の多接点コイルばね11と、を備えている。挿入部12の外周面上に、当該挿入部12の中心軸に対して傾斜する傾斜面に沿って、多接点コイルばね11を収納するばね収納環状溝13が形成されている。ばね収納環状溝13に取り付けられた多接点コイルばね11は、挿入部12の外周面よりも径外方向に出ている。
【0033】
多接点コイルばね11がばね収納環状溝13内に傾斜した状態で収納されるため、オス端子1をメス端子2に接続させる際には、多接点コイルばね11を弾性変形させる際の反力による挿入力の増加を挿入ストロークに合わせて分散させることができる。この結果、挿入力を低減することができる。また、多接点コイルばね11は挿入部12の外周面上のばね収納環状溝13に収納されるので、その状態を確認しやすい。さらに、環状の多接点コイルばね11を挿入部12の外周面上のばね収納環状溝13に収納させるのは、メス端子2の挿入穴20の内周面上に取り付けるよりも作業性がよく、オス端子1の生産性がよい。
【0034】
また、本実施形態に係るオス端子1では、挿入部12が、基端部14と、当該基端部14の先端に嵌合された先端部15とを備えている。基端部14は、ばね収納環状溝13の環状底面13a及び基端側環状内側面13bを構成する、上述した傾斜面に沿って形成された段部を有している。一方、先端部15の基端部14側の端面が、ばね収納環状溝13の先端側環状内側面13cを構成する、上述した傾斜面に沿って形成された傾斜端面である。このように挿入部12を基端部14及び先端部15の二部材で構成することで、多接点コイルばね11を傾斜するばね収納環状溝13に塑性変形させることなく確実に収納させることができる。この利点は、オス端子1のサイズが小さい場合に非常に有用である。
【0035】
さらに、本実施形態に係るオス端子1では、端子本体10が、挿入部12と一体的に形成されたフランジ16を備えている。フランジ16は、挿入部12の外周面よりも中心軸に対して直角な径外方向に延出されている。フランジ16を介して端子本体10に軸方向の挿抜力を作用させ易くなる。この利点も、オス端子1のサイズが小さい場合に非常に有用である。
【0036】
以上、本実施形態を説明したが、本実施形態はこれらに限定されるものではなく、本実施形態の要旨の範囲内で種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 オス端子
10 端子本体
11 多接点コイルばね
12 挿入部
13 ばね収納環状溝
13a 環状底面(基端部14の段部)
13b 基端側環状内側面(基端部14の段部)
13c 先端側環状内側面(先端部15の傾斜端面)
14 基端部
15 先端部