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特開2024-158190穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法
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  • 特開-穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法 図1
  • 特開-穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法 図2
  • 特開-穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法 図3
  • 特開-穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法 図4
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  • 特開-穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法 図12
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158190
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】穿孔装置、トランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 28/28 20060101AFI20241031BHJP
   B21D 43/05 20060101ALI20241031BHJP
   B30B 13/00 20060101ALI20241031BHJP
   B21D 37/08 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B21D28/28
B21D43/05 V
B30B13/00 M
B21D37/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073174
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山田 直人
(72)【発明者】
【氏名】林 哲生
【テーマコード(参考)】
4E048
4E050
4E090
【Fターム(参考)】
4E048KA02
4E048KA04
4E050DA07
4E090AA01
4E090AB01
4E090CC03
4E090EB01
4E090EC01
4E090FA02
4E090FA06
4E090GA03
4E090GA05
4E090HA03
4E090HA04
(57)【要約】
【課題】筒形ワークに対して従来より高精度で複数の貫通孔を穿孔することが可能な技術を提供する。
【解決手段】本開示の穿孔装置40は、複数のパンチ57を有し、その複数のパンチ57に筒形ワーク90を挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチ57が含まれている。そして、複数の貫通孔92Aが穿孔されていない筒形ワーク90に対して、複数のペアのパンチ57がタイミングをずらして2つずつ貫通孔92Aを穿孔していくように構成されている。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形ワークを包囲する複数のパンチにより前記筒形ワークに側方から複数の貫通孔を穿孔する穿孔装置において、
前記複数のパンチには、前記筒形ワークを挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチが含まれ、前記複数の貫通孔が穿孔されていない筒形ワークに対して、前記複数のペアのパンチがタイミングをずらして2つずつ前記貫通孔を穿孔していくように構成されている穿孔装置。
【請求項2】
各前記ペアになった前記パンチ同士が、同じタイミングで前記貫通孔を穿孔するように構成されている請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項3】
先に前記貫通孔を穿孔した前記ペアのパンチが前記筒形ワークを貫通した状態で後の前記ペアのパンチが前記貫通孔を穿孔するように構成されている請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項4】
前記複数のパンチには、前記ペアになっていない複数のパンチが含まれ、
前記複数のペアのパンチが前記筒形ワークを貫通した状態で、前記ペアになっていない複数のパンチが前記貫通孔を穿孔するように構成されている請求項1に記載の穿孔装置。
【請求項5】
前記ペアになっていない複数のパンチがタイミングをずらして1つずつ前記貫通孔を穿孔していくように構成されている請求項4に記載の穿孔装置。
【請求項6】
前記複数のペアのパンチが最後に前記貫通孔を穿孔するタイミングと、前記ペアになっていない複数のパンチが最初に前記貫通孔を穿孔するタイミングとが同じになるように構成されている請求項5に記載の穿孔装置。
【請求項7】
前記筒形ワークは、軸方向に第1筒部と、前記第1筒部より径の大きい第2筒部とを有し、前記第2筒部に前記複数のペアのパンチにて複数の貫通孔が穿孔され、前記第1筒部に前記ペアになっていない複数のパンチにて複数の貫通孔が穿孔されるように構成されている請求項4に記載の穿孔装置。
【請求項8】
前記筒形ワークを受容するワーク受容部を有し、前記複数のパンチを前記ワーク受容部に対して進退するようにスライド可能に支持する支持ベースと、
上下に直線移動すると共に前記複数のパンチに対応した複数のカム突部を前記支持ベースに向けて突出した状態にして備える昇降ベースと、
互いに対応する各前記カム突部と各前記パンチ又は各前記パンチと共に移動する部材に設けられて互いに摺接し、前記カム突部の上下の直線移動を前記パンチの前記筒形ワークに対する前進移動に変換する摺接部と、を備える請求項1から7の何れか1の請求項に記載の穿孔装置。
【請求項9】
前記ワーク受容部は、下端に開口を有し、
前記支持ベースの下方には、ワーク搬送空間が設けられ、
前記筒形ワークを、前記ワーク搬送空間内における前記ワーク受容部の同軸下方のワーク待機位置に水平方向から搬入する搬送装置と、
前記ワーク受容部の下方で上下に直線移動し、前記ワーク待機位置の前記筒形ワークを前記ワーク受容部に下方から押し込む昇降パイプと、
前記昇降パイプの上端部に設けられて前記筒形ワーク内に嵌合され、前記パンチが進退する打抜孔を有する筒形ダイと、
を備える請求項8に記載の穿孔装置。
【請求項10】
前記筒形ワークは、上側に向かって先細りの筒形をなし、
前記ワーク受容部は、上方に向かって狭くなっている請求項9に記載の穿孔装置。
【請求項11】
下台とその上方のラムとの間で横方向に一列に並ぶ複数の加工ステージのそれぞれにトランスファ装置によってワークを間欠的に搬送し、前記ラムの下面に備えた複数のパンチと、前記下台に備えた複数のダイとにより、前記ワークを下端閉塞、上端開放の筒形ワークに成形するトランスファプレス機であって、
下流端寄り位置の前記加工ステージに設けられ、前記筒形ワークの上下を反転させる反転装置と、
前記反転装置より下流側の前記加工ステージに設けられる請求項9に記載の穿孔装置と、を備え、
前記支持ベースは、前記下台から起立する支持部材によって支持され、
前記トランスファ装置は、前記穿孔装置の前記搬送装置を兼ね、
前記昇降パイプは、前記下台を上下に貫通する貫通孔に通されているトランスファプレス機。
【請求項12】
筒形ワークの周方向の複数位置に複数の貫通孔を穿孔して、貫通孔付き筒形ワークを製造する方法であって、
前記複数の貫通孔には、前記筒形ワークの中心軸を挟んで同一直線上に配置される複数のペアの貫通孔が含まれ、前記複数の貫通孔が穿孔されていない筒形ワークに対して、前記複数のペアの貫通孔がタイミングをずらして穿孔されていく貫通孔付き筒形ワークの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、筒形ワークに側方から複数の貫通孔を穿孔する穿孔装置及びそのような穿孔装置を有するトランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この従来の穿孔装置として、筒形ワークを包囲する複数のパンチを備えて、それら複数のパンチが筒形ワークに一度に複数の貫通孔を穿孔するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-71992号公報(段落[0004]及び図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の穿孔装置では、複数のパンチの長さのばらつきや複数のパンチへの動力伝達部品の形状のばらつきにより、実際の複数のパンチの穿孔タイミングがずれ、複数のパンチから受ける負荷による筒形ワークの変形のバランスが悪い状態で貫通孔が穿孔されて加工精度が低下することがある。これに対し、本開示では、筒形ワークに対して従来より高精度で複数の貫通孔を穿孔することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様は、筒形ワークを包囲する複数のパンチにより前記筒形ワークに側方から複数の貫通孔を穿孔する穿孔装置において、前記複数のパンチには、前記筒形ワークを挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチが含まれ、前記複数の貫通孔が穿孔されていない筒形ワークに対して、前記複数のペアのパンチがタイミングをずらして2つずつ前記貫通孔を穿孔していくように構成されている穿孔装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の第1の態様の穿孔装置では、筒形ワークを包囲する複数のパンチに、筒形ワークを挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチが含まれている。そして、複数の貫通孔が穿孔されていない筒形ワークに対して、複数のペアのパンチがタイミングをずらして2つずつ貫通孔を穿孔していく。これにより、複数のパンチの長さ等のばらつきに起因する筒形ワークの穿孔時の変形状態への影響は、ペアになったパンチ同士の間に抑えられる。そして、ペアになったパンチ同士の穿孔タイミングがずれても、ペアになったパンチ同士は筒形ワークを挟んで同一直線上に配置されているので、穿孔時の筒形ワークの変形のバランスの悪化が抑えられる。即ち、本開示の技術によれば、筒形ワークが従来よりバランスが良い変形状態で複数の貫通孔が穿孔されることになり、従来より高精度で複数の貫通孔を穿孔することができる。また、複数の貫通孔が2つずつ穿孔されていくので、複数のパンチの穿孔タイミングを、単に1つずつずらしただけのものに比べて加工時間の短縮が図られる。また、本開示のトランスファプレス機及び貫通孔付き筒形ワークの製造方法においても、第1の態様の穿孔装置と同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の第1実施形態に係るトランスファプレス機の正面図
図2】筒形ワークの斜視図
図3】穿孔装置の斜視図
図4】穿孔装置の破断斜視図
図5】穿孔装置の側断面図
図6】穿孔装置の側断面図
図7】昇降パイプ、筒形ダイ、筒形ワーク及び上側ベースの破断斜視図
図8】昇降パイプの(A)斜視図,(B)破断斜視図
図9】スライダが第1スライド位置に配置された状態の穿孔装置の側断面図
図10】スライダが第2スライド位置に配置された状態の穿孔装置の側断面図
図11】複数のカム突部の側面図
図12】パンチ及びワークの一部を拡大した断面図
【発明を実施するための形態】
【0008】
[第1実施形態]
図1図12を参照して、本開示の一実施形態に係るトランスファプレス機10について説明する。図1に示すように、トランスファプレス機10は、下台12の上に複数の支持ブロック31を横方向に一列に並べて備える。また、連続して並ぶ一部複数の支持ブロック31には上下に貫通する貫通孔が備えられ、それら貫通孔内に複数のダイ30が備えられている。また、複数のダイ30の上方では、それらダイ30に対応する複数のパンチ20がラム11に支持されている。そして、上下で対向するパンチ20とダイ30とにより、絞り成形又はしごき成形を行うための複数の加工ステージST1が形成されて、トランスファプレス機10の横方向における中間部分に等ピッチで並んでいる。
【0009】
以下、トランスファプレス機10全体の横方向と同様に、各部位の説明においても、支持ブロック31が並ぶ水平方向を「横方向H1」といい、その横方向H1と直交する水平方向を「前後方向H2」ということとする。また、図1に示されている側を「前側」といい、その反対側を「後側」ということとする。さらには、複数のパンチ20及び複数のダイ30が並ぶ間隔を「特定ピッチ」ということとする。
【0010】
複数の支持ブロック31の全体の上面はワーク搬送面19になっていて、そのワーク搬送面19上には、ワークを特定ピッチで間欠的に搬送する搬送装置であるトランスファ装置14が備えられている。トランスファ装置14は、横方向H1に延びかつ前後方向H2で対向する1対のレール15を有する(図1には、前側のレール15のみが示されている)。1対のレール15は、互いの対向方向(前後方向H2)で接近及び離間するように、共通の図示しないスライド支持ベースに支持されている。また、そのスライド支持ベースは横方向H1に往復移動可能に支持されている。即ち、1対のレール15は、対向状態を維持して横方向H1に往復移動可能に支持されている。また、1対のレール15の対向面には、複数のフィンガ16が横方向H1に特定ピッチをあけて配置されている。
【0011】
トランスファ装置14の駆動源は、ラム11の駆動源と共通している。具体的には、トランスファプレス機10の上部には、ラム11を昇降させるための図示しないメインカムシャフトが横方向H1に延びた状態にして備えられ、トランスファプレス機10の下部には、ダイ30からワークを上方に押し上げるための図示しないノックアウトピン等を昇降させるためのサブカムシャフト89(図3参照)が横方向H1に延びた状態にして備えられている。また、トランスファプレス機10を前方から見た場合の左側部には、上下方向に延びかつ上下の端部を、メインカムシャフト及びサブカムシャフト89の各左端部にギヤ連結された図示しないサイドシャフトが備えられている。さらには、メインカムシャフトの右端部には、駆動源である図示しないメインモータの回転出力部が連結されている。そして、サイドシャフトには、スライド支持ベースを特定ピッチで横方向H1に往復移動させるためのカムが備えられている。また、1対のレール15の接近及び離間は、図示しないエアシリンダにて行われるようになっている。
【0012】
そして、各対のフィンガ16が図1の左側に移動することを「後退」といい、その反対側に移動することを「前進」といい、特定ピッチの左側端部を「後端位置」といい、特定ピッチの右側端部を「前端位置」ということとすると、1対のレール15は、後端位置において離間状態から互いに接近して接近状態になり、その接近状態で前端位置に移動し、そこで互いに離間して離間状態になり、その離間状態で後端位置に移動するというサイクル動作を繰り返す。
【0013】
ラム11と下台12の間のうち前方から見て複数の加工ステージST1より左側の領域には、ワーク供給装置13が設けられている。ワーク供給装置13は、前後方向H2でトランスファ装置14を跨いだ構造の架台13Kを備える。その架台13Kには、ワーク搬送面19の上方の浮いた部分に、打抜ダイと成形ダイとからなる図示しない複合ダイが支持されている。また、ラム11には、複合ダイに対応する複合パンチ21が支持されている。複合パンチ21は、筒状の打抜パンチ21Aの内側に成形パンチ21Bを有する。そして、ワーク供給装置13に後方から送給される図示しない板材から打抜パンチ21Aと打抜ダイとによって円板状のブランク材が打ち抜かれ、それが成形パンチ21Bと成形ダイとによって下端有底、上端開放の筒形のワークに成形されて、ワーク搬送面19まで押し下げられる。
【0014】
以下、複数対のフィンガ16を区別する場合には、図1の左側から右側に向かって、第1、第2、第3・・・のフィンガ16ということとする。すると、1対の第1のフィンガ16は、上記ワーク供給装置13がワークをワーク搬送面19まで押し下げるときに後端位置に配置されていて、離間状態から接近状態になることでワークを挟持する。そして、そのワークは、ラム11が昇降する度に、順次、第2,第3・・のフィンガ16に受け渡されるようにして特定ピッチずつ図1における右側(以下適宜、「下流側」という)に搬送され、複数の加工ステージST1で絞り成形又はしごき成形される。
【0015】
より具体的には、ワーク供給装置13の複合ダイと、そこから最も近い先頭の加工ステージST1のダイ30との間は、例えば、特定ピッチの2つ分の距離だけ離れていて、それらの間の中央位置が、加工を行わずにワークが一時的に搬入出される所謂ダミーステージST2になっている。そして、第1のフィンガ16は、ワークを後端位置で受け取り、前進してダミーステージST2に搬入する。また、ダミーステージST2の支持ブロック31には、ワーク搬送面19に開口する図示しないワーク吸引孔が形成され、そこにオンオフバルブを介して吸引ポンプが接続されている。そして、ワークが第1のフィンガ16に挟持された状態でダミーステージST2に搬入されてワーク吸引孔の真上に配置され、オンオフバルブが開状態になって負圧によりワークがワーク搬送面19上に固定される。その後、第2のフィンガ16が後退してダミーステージST2に移動してワークを挟持する。すると、オンオフバルブが閉状態になってワークがワーク搬送面19上で移動可能になり、第2のフィンガ16が前進して先頭の加工ステージST1にワークが搬入される。
【0016】
先頭の加工ステージST1では、ワークはパンチ20によりワーク搬送面19下のダイ30に押し込まれることで第2のフィンガ16から離脱する。その後、サブカムシャフト89から動力を受けた図示しないノックアウトピンによりワークがダイ30からワーク搬送面19上に押し上げられ、そのとき後端位置に配置されている第3のフィンガ16に挟持される。以下、同様にしてワークは複数の加工ステージST1に順次搬送されて絞り成形又はしごき成形され、筒形ワーク90(図2参照)に成形される。
【0017】
ラム11と下台12の間のうち前方から見て複数の加工ステージST1より右側の領域には、穿孔装置40が備えられている。そして、穿孔装置40により、複数の加工ステージST1を通過した筒形ワーク90に側方から複数の貫通孔91A,92A(図2参照)が穿孔される。また、下流側端部の加工ステージST1と穿孔装置40との間には、例えば第1と第2の反転用ダミーステージST3が設けられている。そして、複数の加工ステージST1を通過した筒形ワーク90は、第1と第2の反転用ダミーステージST3で、次述するように上下を反転させられ、開口90K(図2参照)が下方を向いた状態で穿孔装置40に供給される。
【0018】
前述の複数のフィンガ16のうち第1と第2の反転用ダミーステージST3の間を往復移動するフィンガ16(以下、「反転用フィンガ16」という)は、横方向H1の移動中に180度回転するようになっている。具体的には、1対の反転用フィンガ16の下方では、横方向H1に延びる1対のラック16Aが支持ブロック31に固定され、それら1対のラック16Aに噛合する1対の歯車16B(図1には、一方のラック16A及び歯車16Bのみが示されている)が1対のレール15に回転可能に支持されている。そして、1対の反転用フィンガ16は、1対の歯車16Bに前後方向H2にスライド可能に支持されて互いに接近する方向に付勢されている。これにより、1対のレール15の横方向H1の移動に伴って1対の歯車16Bと共に1対の反転用フィンガ16が回転し、第1の反転用ダミーステージST3に位置しているときと、第2の反転用ダミーステージST3に位置しているときで、姿勢が180度変化する。
【0019】
また、第1と第2の反転用ダミーステージST3には、前述のダミーステージST2と同様に図示しない第1と第2のワーク吸引孔が設けられて、それぞれにオンオフバルブを介して吸引ポンプが接続されている。そして、反転用フィンガ16より上流側のフィンガ16(以下、反転用フィンガ16と区別する場合には「一般フィンガ16」という)によって、筒形ワーク90が開口90Kを上方に向けた状態にして第1の反転用ダミーステージST3に搬入されると、第1の吸引孔用のオンオフバルブが開状態になって筒形ワーク90をワーク搬送面19上に固定する。その後、反転用フィンガ16が後退して第1の反転用ダミーステージST3に移動し、筒形ワーク90を挟持する。その後、第1の吸引孔用のオンオフバルブが閉状態になって筒形ワーク90がワーク搬送面19上で移動可能になり、反転用フィンガ16は、回転しながら前進して第2の反転用ダミーステージST3に、筒形ワーク90を開口90Kが下方に向いた状態にして搬入する。すると、第2の吸引孔用のオンオフバルブが開状態になって筒形ワーク90をワーク搬送面19上に固定する。その後、反転用フィンガ16より下流側の一般フィンガ16が第2の反転用ダミーステージST3の筒形ワーク90を挟持すると、第2の吸引孔用のオンオフバルブが閉状態になって筒形ワーク90がワーク搬送面19上で移動可能になり、一般フィンガ16によって、第2の反転用ダミーステージST3の隣りの穿孔装置40に筒形ワーク90を搬入する。このように本実施形態では、トランスファ装置14の一部と吸引孔等によって筒形ワーク90を反転させる反転装置18が構成されている。
【0020】
図2には、筒形ワーク90が、開口90Kを下に向けた状態で示されている。同図に示すように筒形ワーク90は、開口90Kを有する開口端から、その反対側の閉塞端に向かうに従って先細りとなる円筒形をなしている。具体的には、筒形ワーク90の軸方向における開口端寄り位置にはテーパー部94が備えられると共に、テーパー部94より開口端から離れた位置には軸方向と直交する段差部95が備えられている。そして、これらテーパー部94及び段差部95により、筒形ワーク90は、閉塞端側から順番に並ぶ第1~第3の筒部91,92,93に区画され、第3筒部93の径に比べて第2筒部92の径が僅かに小さく、それらの径の差より大きな差で、第2筒部92の径に比べて閉塞端側の第1筒部91の径が小さくなっている。そして、穿孔装置40により、第1筒部91の閉塞端側の端部付近における周方向の複数位置に複数の貫通孔91Aが穿孔されると共に、第2筒部92の閉塞端側の端部付近における周方向の複数位置に複数の貫通孔92Aが穿孔される。より具体的には、複数の貫通孔91Aは、第1筒部91を周方向で3等分する位置で第1筒部91を径方向に貫通し、複数の貫通孔92Aは、第2筒部92を周方向で6等分する位置で第2筒部92を径方向に貫通している。また、筒形ワーク90を上方から透視すると、各貫通孔91Aは、隣り合う1対の貫通孔92Aの中央に位置するように配置されている。
【0021】
図4に示すように、穿孔装置40は、ワーク搬送面19から起立してトランスファ装置14(図1参照)を前後方向H2で挟んで対向する1対の支持部材41と、それら支持部材41に下方から支持されている上側ベース42とを備えている。これにより、上側ベース42は、トランスファ装置14によって筒形ワーク90が搬送されるワーク搬送空間40Vの上方に配置されている。具体的には、1対の支持部材41は、ブロック形状をなし、前側の支持部材41は、第2の反転用ダミーステージST3(図1参照)の隣りの支持ブロック31の上面前端部から起立し、他方の支持部材41は、支持ブロック31の後面の段差部31Dを上方から押さえる固定プレート31Pとから起立している。
【0022】
図4に示すように、上側ベース42には、1対の支持部材41に下方から支持されるベース本体43と、ベース本体43に支持されるコア部44及びコア押え45とが含まれている。図3に示すように、ベース本体43は、例えば前後方向H2に長い長方形の厚板の前後の両端部が、段付き状に幅狭になるようにカットされた形状をなしている。また、それら幅狭の両端部は、図4に示すように下面側を抉られ、前述の1対の支持部材41に下方から支持されている。
【0023】
図5に示すように、ベース本体43の中央部には、上下に貫通するコア収容孔43Aが設けられている。そのコア収容孔43Aの上部は、段付き状に拡径されている。また、図3に示すように、ベース本体43には、コア収容孔43Aを中心にして放射状に延びる複数の第1溝48と複数の第2溝49とが形成されている。それら複数の第1溝48は、コア収容孔43Aの周囲を例えば3等分するように配置され、複数の第2溝49は、コア収容孔43Aの周囲を例えば6等分するように配置されている。また、複数の第1溝48は、それぞれ隣り合う1対の第2溝49の中央となる位置に配置されている。
【0024】
これら第1溝48及び第2溝49は、何れも断面四角形の角溝であって、それらの内部は以下の構造になっている。即ち、図5及び図6に示すように、第1溝48及び第2溝49は、コア収容孔43Aから離れた側の端部に、上方を向いた段差面47Dを備え、段差面47Dより下側が上側より短くなっている。また、各第1溝48及び第2溝49のうち段差面47Dより下側はスライダ収容部47Aになっていて、スライダ収容部47Aの底面には、ガイド孔43Gが開口している。ガイド孔43Gは、断面四角形をなして上下方向に延び、スライダ収容部47Aの長手方向で対向する1対の内面と、それと直交する方向で対向する1対の内面とを備える。また、ガイド孔43Gにおけるコア収容孔43A側の内面上部は、コア収容孔43A側に傾斜している。さらには、ガイド孔43Gの上面開口は、スライダ収容部47Aの底面の幅方向及び長手方向の略中央に配置されている。
【0025】
スライダ収容部47Aの底面には、ガイド孔43Gに重なる貫通孔を有した板状の摺動メタル47Mが敷設され、その摺動メタル47Mの上にスライダ50が収容されている。スライダ50は、スライダ収容部47Aより全長が短く、スライダ収容部47Aと幅が略同一な角柱状をなしている。また、スライダ収容部47Aの上面は段差面47Dと面一の平坦面になっている。
【0026】
スライダ50の長手方向の中間部には、上下に貫通するカム孔51が備えられている。カム孔51は、断面四角形をなし、スライダ50の長手方向で対向する1対の内面である1対のカム面を有する。コア収容孔43A側のカム面は、下側の略半分が上下方向と平行な垂直面51Aをなす一方、上側の略半分がコア収容孔43A側に傾いた第1の傾斜面51Bをなし、それとは逆に、コア収容孔43Aから離れた側のカム面は、上側の略半分が上下方向と平行な垂直面51Aをなす一方、下側の略半分がコア収容孔43A側に傾いた第2の傾斜面51Cになっている。また、第1及び第2の傾斜面51B,51Cは、互いに平行でありかつ、第1の傾斜面51Bの下端位置は、第2の傾斜面51Cの上端位置とより僅かに下方に位置している。
【0027】
スライダ50のうちコア収容孔43A側の端部には、係合溝52が形成されている。係合溝52は、スライダ50の長手方向に延びかつスライダ50の下面と端面とに開口している。また、係合溝52のうちコア収容孔43A側の半分は、残り半分に比べて、幅狭でかつ浅くなっている。そして、後述するパンチ57の基端部が係合溝52に係合して、スライダ50からコア収容孔43Aに向かって延びた状態になる。
【0028】
各第1溝48及び第2溝49のうち段差面47Dより上側はブロック収容部47Bになっていて、そこにはガイドブロック53が収容されている。ガイドブロック53は、ブロック収容部47Bと幅が略同一で、スライダ50より長くなっている。そして、ガイドブロック53の一端部が段差面47Dに重ねられてボルトBで固定されている。また、ガイドブロック53の他端部には、後に詳説するコア押え45のフランジ45Fが上方から重ねられている。
【0029】
ガイドブロック53のうちコア収容孔43A寄り位置には、ガイド孔53Gが形成されている。ガイド孔53Gは断面四角形をなし、ガイド孔53Gの4つの内面のうちコア収容孔43A側の内面以外は、前述したガイド孔43Gの開口の真上に位置している。
【0030】
ガイドブロック53のうちガイド孔53Gよりコア収容孔43Aから離れた側には、上下に貫通する螺子孔が形成され、そこにはボールプランジャ53Pが装着されている。そして、スライダ50が第1スライド位置に配置されたときに、スライダ50の上面に形成されている凹部50Pにボールプランジャ53Pのボールが係合する。
【0031】
第1溝48及び第2溝49の内部の構造は、上述した点で共通し、以下の点で相違する。即ち、第2溝49のスライダ収容部47Aは、第1溝48のスライダ収容部47Aよりベース本体43における下方に位置し、それらの位置の差分だけ、第2溝49のブロック収容部47Bの方が、第1溝48のブロック収容部47Bより深くなっている。そして、図6に示すように、第2溝49では、ガイド孔53Gの全体がブロック収容部47Bに収まり、ガイド孔53Gの上面の一部がコア押え45のフランジ45Fに覆われる一方、図5に示すように、第1溝48では、ガイド孔53Gは上下方向の一部のみがブロック収容部47Bに収まり、ガイドブロック53の端部に備えた段差面53Dがコア押え45のフランジ45Fに覆われている。
【0032】
図5に示すように、コア部44は、上端部にフランジ44Fを備え、コア収容孔43Aに上方から嵌合されて、フランジ44Fがコア収容孔43Aの上部の段差面に当接している。そして、コア押え45のフランジ45Fが、コア部44とコア収容孔43Aの開口縁とを上方から覆い、ベース本体43とコア部44とに螺子止めされることで、ベース本体43、コア部44及びコア押え45が一体になっている。
【0033】
図7に示すように、コア部44には、筒形ワーク90を下方から受容可能なワーク受容部46が設けられている。ワーク受容部46は、下方に向かって開口し、上方に向かって縮径された凹部になっている。具体的には、コア部44の下面中央からは下面突部44Aが垂下されて、ベース本体43の下面より下方に突出している(図4参照)。そして、ワーク受容部46は、下面突部44Aの下端からコア部44の上面寄り位置に亘って形成されている。また、ワーク受容部46には、上下方向の途中位置に段差面46Dが形成されると共に、それより下方にテーパー面46Eが形成されて上方に向かって縮径している。また、下面突部44Aの下端部のうち横方向H1で対向する2箇所には、トランスファ装置14によって搬送されてくる筒形ワーク90との干渉を避けるための1対の切欠部46Gが形成されている(図7には、横方向H1の左側の切欠部46Gのみが示されている)。
【0034】
コア部44には、ワーク受容部46の上端部から放射状に延びる複数の第1パンチ孔54(図5参照)と、ワーク受容部46のうち段差面46Dとテーパー面46Eとの間の中間部から放射状に延びる複数の第2パンチ孔55(図6参照)とが備えられている。そして、図5に示すように、複数の第1パンチ孔54は、複数の第1溝48内の複数のスライダ50と一直線に並び、図6に示すように、複数の第2パンチ孔55は、複数の第2溝49内の複数のスライダ50と一直線に並んでいる。また、図5及び図6に示すように、第1パンチ孔54及び第2パンチ孔55は、コア部44の外側面からワーク受容部46寄りの第1位置まで均一内径をなして延びる第1ガイド部56Aと、第1位置から更にワーク受容部46寄りの第2位置に向かって縮径する縮径部56Bと、第2位置からワーク受容部46の内面まで均一内径をなして延びる第2ガイド部56Cとを備える。そして、複数の第1パンチ孔54及び第2パンチ孔55のそれぞれにパンチ57が支持されている。
【0035】
図6に示すように、各パンチ57は、丸棒状の支持シャフト部57Aと、支持シャフト部57Aの基端部から側方に張り出すフランジ57Fと、支持シャフト部57Aの先端面の中央から延長されかつ支持シャフト部57Aより外径が小さいパンチ本体57Bとを有する。そして、支持シャフト部57Aが、第1ガイド部56Aに嵌合すると共に、パンチ本体57Bが、第2ガイド部56Cに嵌合している。また、フランジ57Fを含むパンチ57の基端部は、スライダ50の係合溝52に下方から受容されて、パンチ57がスライダ50と一体にスライドするように係合している。そして、スライダ50が前述する第1スライド位置に配置されているときには、パンチ本体57Bは、先端部が第2ガイド部56C内に位置してワーク受容部46内には突出せず、スライダ50が第2スライド位置に配置されたときに、パンチ本体57Bはワーク受容部46内に突出する。
【0036】
図5に示すように、コア部44の上面の中央には、上面凹部44Bが形成されている。そして、複数(例えば、3つ)のピン孔46Lが、複数の第1パンチ孔54を避けた位置で、上面凹部44Bの底面とワーク受容部46内の段差面46Dとの間を貫通している。また、コア押え45には、上端が閉塞され、下端が開口した支持スリーブ45Cが備えられ、その支持スリーブ45Cの下端部がコア部44の上面凹部44Bに嵌合している。なお、前述したフランジ45Fは、支持スリーブ45Cの下端寄り位置から側方に張り出している。
【0037】
支持スリーブ45Cの内部には、ピン支持部材58が昇降可能に収容されている。ピン支持部材58は、支持スリーブ45C内に丁度嵌合する本体部58Aの中央からシャフト58Bが起立した構造をなしている。そして、本体部58Aに、複数のノックアウトピン58Pが固定されて本体部58Aから下方に延び、複数のピン孔46Lに挿入されている。また、シャフト58Bは、支持スリーブ45Cの天井壁の中央に形成された貫通孔を通して支持スリーブ45Cより上方に突出している。さらには、シャフト58Bの外側には円筒状の弾性体である弾性スリーブ59Aが嵌合され、その弾性スリーブ59Aの外側には、圧縮コイルバネ59Bが嵌合されている。そして、ピン支持部材58は、圧縮コイルバネ59Bの弾発力によりピン支持部材58が下端位置に付勢され、弾性スリーブ59Aの上端が支持スリーブ45Cの天井壁より下方に位置している。そして、ピン支持部材58が下端位置に配置されると、複数のノックアウトピン58Pの下端部がワーク受容部46の段差面46Dより下方に突出し、複数のノックアウトピン58Pの下端部が、段差面46Dの上方に退避する位置まで押されると、その直前に弾性スリーブ59Aが支持スリーブ45Cの天井壁に当接して圧縮変形する。
【0038】
図7に示すように、ワーク受容部46の同軸下方には、昇降パイプ80が備えられ、その昇降パイプ80の上端部に筒形ダイ70が設けられている。そして、筒形ダイ70が、支持ブロック31を上下に貫通する貫通孔31Hからワーク搬送面19上に出現して、1対のフィンガ16に挟持されている筒形ワーク90に突入し、さらに上昇して筒形ワーク90をワーク受容部46に押し込む。
【0039】
その筒形ダイ70は、筒形ワーク90と同様に軸方向の途中位置に段差部70Dを備え、段差部70Dより上側の第1筒部71と下側の第2筒部72とを有している。また、第1筒部71は、筒形ワーク90の第1筒部91の内側に丁度嵌合する大きさをなす一方、第2筒部72は、筒形ワーク90の第2筒部92の内側に丁度嵌合する大きさをなしている。さらには、第1筒部71の上端は、開口していて、第1筒部71の上端部の周方向の複数位置には、上側ベース42(詳細には、コア部44)の複数の第1パンチ孔54に対応する複数の第1打抜孔71Aが径方向に貫通するように形成されている。また、段差部70Dには、その周方向の複数箇所を上下に貫通する逃がし孔70Eが形成されている。そして、第2筒部72の上端部の周方向の複数位置には、上側ベース42の複数の第2パンチ孔55に対応する複数の第2打抜孔72Aが、第2筒部72の外面と逃がし孔70Eの内面との間を、第2筒部72の径方向に貫通するように形成されている。そして、筒形ダイ70の段差部70Dとワーク受容部46の段差面46Dとの間に筒形ワーク90の段差部95が上下方向から挟まれた位置(以下、「押込完了位置」という)で、対応する各第1打抜孔71Aと各第1パンチ孔54とが同軸上に並ぶと共に、対応する各第2打抜孔72Aと各第2パンチ孔55とが同軸上に並ぶようになっている。
【0040】
なお、第2筒部72の軸方向の途中位置には、位置決め孔72Zが形成され、上側ベース42には、筒形ダイ70が押込完了位置に配置されたときに位置決め孔72Zと同軸上に並ぶように位置決め孔42Zが形成されている。そして、上側ベース42の位置決め孔42Zに側方から挿入した位置決めピンを筒形ダイ70の位置決め孔72Zに挿入することで、筒形ダイ70が上記押込完了位置に位置決めすることができるようになっている。これにより、上側ベース42と筒形ダイ70との相互の位置調整を容易に行うことができる。
【0041】
筒形ダイ70は、以下の構造により、昇降パイプ80の上端部に可動状態に支持されている。図8に示すように、昇降パイプ80には、パイプ部材81と、そのパイプ部材81の上端部に固定されたベーススリーブ82及びガイドスリーブ83とが備えられている。
【0042】
ベーススリーブ82は、パイプ部材81より太くなっていて、ベーススリーブ82の内側を上下に貫通する中心孔82Aには、上下方向の2箇所に段差面が備えられている。そして、上下方向の中間部より上側と下側とが段付き状に拡径され、下側の拡径部分の内側にパイプ部材81が嵌合した状態で固定されている。また、中心孔82Aのうち上側の拡径部分の内側には、例えば、円筒状の弾性体である弾性スリーブ84が嵌合されて、ベーススリーブ82から上方に突出している。なお、中心孔82Aの中間部の内面と弾性スリーブ84の内面とパイプ部材81の内面とが略面一になっている。
【0043】
ガイドスリーブ83は、フランジ83Fを下端部に備え、そのフランジ83Fがベーススリーブ82の上端から側方に張り出すフランジ82Fに重ねられて固定されている。ガイドスリーブ83の内側を上下に貫通する中心孔83Aは、ベーススリーブ82の中心孔82Aより大径の丸孔の内周面の2箇所に平坦面を備えた形状をなしている。また、中心孔82Aの内面の上端からは内側に環状突部83Eが張り出し、その環状突部83Eの内側は丸孔83Jになっている。そして、その丸孔83Jに摺動スリーブ83Sが嵌合され、摺動スリーブ83Sの下端から側方に張り出すフランジ83Tが環状突部83Eに下方から重なっている。なお、フランジ83Tは、ガイドスリーブ83の中心孔83Aと同じ平断面形状を有している。
【0044】
筒形ダイ70における第2筒部72の下端部からは、ガイドスリーブ83の中心孔83Aと同じ平断面形状のフランジ70Fが張り出している。そして、第2筒部72が摺動スリーブ83Sの内側を貫通しかつフランジ70Fがガイドスリーブ83内に嵌合されている。また、前述の弾性スリーブ84の上端は、筒形ダイ70の下面における開口縁に突き合わされている。さらには、ガイドスリーブ83内では、弾性スリーブ84の外側に圧縮コイルバネ85が嵌合され、その圧縮コイルバネ85がベーススリーブ82の上面と筒形ダイ70の下面との間で突っ張り状態になっている。これらにより、筒形ダイ70は、中心軸周りの回転を規制された状態で昇降パイプ80の上部に上下方向に移動可能に支持されかつ、可動範囲の上端位置に付勢されている。
【0045】
昇降パイプ80の上端部の外周面には、周方向の2箇所に1対の平坦面80Aが形成されている。それら1対の平坦面80Aは、ガイドスリーブ83の上端からベーススリーブ82の上下方向の途中位置に亘って形成され、前後方向H2で対向するように配置されている。一方、支持ブロック31の貫通孔31Hは、上下方向の途中位置より上側が断面四角形の角孔部をなす一方、上下方向の途中位置より下側が断面円形に丸孔部になっている。そして、昇降パイプ80のうちベーススリーブ82の上下方向の途中位置より上側部分が貫通孔31Hの角孔部に嵌合されて、1対の平坦面80Aが角孔部の1対の内面に重ねられて昇降パイプ80の回転が規制されると共に、貫通孔31Hの丸孔部にベーススリーブ82が嵌合されることで、昇降パイプ80がワーク受容部46に対して芯出しされている。
【0046】
昇降パイプ80は、前述のサブカムシャフト89から動力を受けてラム11及びトランスファ装置14に同期して昇降する。具体的には、図3に示すように、昇降パイプ80は、サブカムシャフト89より前方に位置し、昇降パイプ80に含まれる前述のパイプ部材81は、サブカムシャフト89と同じ高さかそれより下側まで延びている。そして、下台12(図3では、省略されている。図1参照)の下面にブラケット12Aを介して固定されたガイドスリーブ12Bにより、パイプ部材81の長手方向の途中部分が上下方向にスライド可能に支持されている。
【0047】
パイプ部材81の下端寄り位置には、中継レバー88が連結されている。その中継レバー88は、サブカムシャフト89に対して斜め後ろ上方を回動支点88Aにして回動するように、下台12に固定されたレバー支持台12Cに支持されている。また、中継レバー88のうち回動支点88Aから前方に延びた部分の先端部には、中継レバー88が、サブカムシャフト89と平行な回転軸を中心に回動可能に連結されている。そして、その中継レバー88にパイプ部材81がクランプされて、前述の通り、中継レバー88がパイプ部材81に連結されている。
【0048】
中継レバー88のうち昇降パイプ80との連結部分と回動支点88Aとの間には、図示しないローラーが取り付けられ、そのローラーがサブカムシャフト89のカム89Aに上方から当接している。さらには、中継レバー88のうち回動支点88Aから後方に延びる部分の先端部と、レバー支持台12Cから後方に延びるブラケット12Dとの間には、例えば、図示しない引っ張りコイルバネ12Eが架け渡されていて、その弾発力によってローラーがカム89Aに押しつけられている。
【0049】
これらにより、昇降パイプ80は、上述の通り、サブカムシャフト89から動力を受けて、ラム11及びトランスファ装置14に同期して昇降する。そして、筒形ワーク90がトランスファ装置14の1対のフィンガ16に挟持された状態でワーク受容部46の真下となるワーク待機位置に搬入されると、昇降パイプ80が上昇してその上端の筒形ダイ70が筒形ワーク90の内側に嵌合する。そして、筒形ワーク90が、その内側に嵌合した筒形ダイ70により上方に押されて1対のフィンガ16から離脱してワーク受容部46に押し込まれる。このとき、ワーク受容部46の段差面46Dから突出している複数のノックアウトピン58Pが、筒形ワーク90の段差部95によって押し上げられ、筒形ダイ70の段差部70Dとワーク受容部46の段差面46Dとの間に筒形ワーク90の段差部95が挟まれ、筒形ダイ70が押込完了位置に位置決めされる。そして、後述するように穿孔装置40のパンチ57が駆動されて筒形ワーク90に貫通孔91A,92Aが穿孔され、そのときに発生する打ち抜き片が、昇降パイプ80を通ってトランスファプレス機10の下方に排出される。
【0050】
なお、パイプ部材81に、下端寄り位置から斜め下方に分岐して延びる分岐路を設けて、その分岐路に吸引ポンプを接続することで、筒形ダイ70内を負圧状態にして打ち抜き片がスムーズに昇降パイプ80内を下方に流下するようにしてもよい。
【0051】
ラム11のうち上側ベース42の上方となる位置には、図3に示した昇降ベース60がラム11に取り付けられている。昇降ベース60は、ラム11に固定される本体部60Hと、本体部60Hの下面から突出する複数のカム突部61とを有する。
【0052】
本体部60Hは、角筒形のセンタースリーブ60Kの下端から側方にフランジ60Fが張り出した構造をなしている。そして、図9に示すように上側ベース42の支持スリーブ45Cの真上にセンタースリーブ60Kが配置され、図10に示すように、ラム11が降下したときに支持スリーブ45Cがセンタースリーブ60Kの内側に受容される。
【0053】
図3に示すように、複数のカム突部61は、上側ベース42が有する前述の複数のスライダ50に対応し、フランジ60Fの下面のうち複数のガイドブロック53のガイド孔53Gの真上となる位置から鉛直下方に延びかつ、図9に示すように下部がセンタースリーブ60Kから離れる側にクランク状に屈曲した形状をなしている。
【0054】
詳細には、各カム突部61は、ガイド孔53Gと同じ断面形状をなして本体部60Hから垂下する板材の下端部と下端寄り位置とを、センタースリーブ60K側とその反対側とから台形状に切除して上述のクランク状に屈曲した形状に形成されている。そして、図9に示すように、カム突部61は、センタースリーブ60K側に、斜め下方を向く第1の傾斜面61Bを備える一方、センタースリーブ60Kとは反対側に、斜め上方を向く第2の傾斜面61Cを備える。それら第1及び第2の傾斜面61B,61Cは、上下方向で同じ位置に配置されて平行になっている。また、カム突部61のうち第1及び第2の傾斜面61B,61Cの上側及び下側には、上下方向に対して平行な垂直面61Aになっている。
【0055】
ラム11の昇降動作に伴うカム突部61の上下方向の移動は、以下のようにスライダ50の水平方向へのスライド移動に変換される。図9に示すように、カム突部61が離れているときは、スライダ50は、可動範囲のうちワーク受容部46から最も離れた前述の第1スライド位置に配置されて、前述のボールプランジャ53Pと凹部50Pとの係合により、その第1スライド位置に保持されている。その状態で、カム突部61が降下し、ガイドブロック53のガイド孔53Gを通って各スライダ50のカム孔51に進入する。そして、カム突部61の第2の傾斜面61Cの下端が、スライダ50の第2の傾斜面51Cの上端より下方に位置しかつカム突部61の下端がガイド孔43Gに突入したところで、カム突部61の第1の傾斜面61Bがスライダ50の第1の傾斜面51Bに当接する。そこからカム突部61が更に降下すると、第1の傾斜面51B,61B同士の摺接によりスライダ50がパンチ57と共にワーク受容部46側に前進し、パンチ57が筒形ダイ70と共働して筒形ワーク90の一部を打ち抜く。また、カム突部61が更に降下し、図10に示すように、カム突部61のうち第1の傾斜面61Bより上の垂直面61Aが、スライダ50のうち第1の傾斜面51Bより下側の垂直面51Aに重なったところでカム突部61が下死点に到達し、スライダ50は第2スライド位置に到達する。このとき、パンチ57の先端面は、筒形ダイ70の内面に到達して、筒形ワーク90から離脱した打ち抜き片が昇降パイプ80内に排出される。
【0056】
一方、カム突部61が上昇すると、カム突部61の第2の傾斜面61Cがスライダ50の第2の傾斜面51Cと摺接して今度はスライダ50がワーク受容部46から離れる側に後退する。そして、カム突部61の第2の傾斜面61Cがスライダ50の第2の傾斜面51Cを通過し、カム突部61のうち第2の傾斜面61Cより下側の垂直面61Aが、スライダ50における第2の傾斜面51Cの上側の垂直面51Aに重なると、スライダ50は、第1スライド位置に戻り、ボールプランジャ53Pと凹部50Pとが係合する。そして、カム突部61がスライダ50の上方に離れる。
【0057】
以上のように、第1及び第2の傾斜面51B,51C,61B,61Cがスライダ50とカム突部61との間の摺接部となって、支持ベース42が有する複数のスライダ50と共に複数のパンチ57がスライドして、筒形ワーク90に複数の貫通孔91A,92Aが穿孔される。
【0058】
本実施形態の穿孔装置40は、複数の貫通孔91A,92Aを以下の通りずれたタイミングで穿孔するように構成されている。即ち、穿孔装置40は、複数の貫通孔91A,92Aが穿孔されていない未加工の筒形ワーク90に対し、先ずは、筒形ワーク90の第2筒部92(図2参照)に配置される3ペア計6つの貫通孔92A(以下、「第2グループの貫通孔92A」という)を、ペア毎にタイミングをずらして2つずつ3回に分けて穿孔すると共に、最後のペアの貫通孔92Aを穿孔するタイミングと同じタイミングで、筒形ワーク90の第1筒部91に配置される3つの貫通孔91A(以下、「第1グループの貫通孔91A」という)のうち1つ目の貫通孔91Aを穿孔し、次いで、2つ目、3つ目の貫通孔91Aをタイミングをずらして順次穿孔するように構成されている。以下、図11を参照してより具体的な構成について説明する。
【0059】
図11には、全てのスライダ50の第1の傾斜面51B(図5図6参照)を上下方向で同じ位置に配置した場合における、複数のカム突部61の第1の傾斜面61Bの上下方向の位置の相違が示されている。また、図11においてはカム突部61を区別するために末尾にU1~U3,V1~V3の符号が付されている。以下の説明で、カム突部61を区別する場合にのみ末尾に上記符号を付すこととする。
【0060】
図11において末尾に符号U1~U3が付された3つのカム突部61U1,61U2,61U3は、上述した第1グループの複数の貫通孔91Aを穿孔するための3つのパンチ57を駆動するためのカム突部61である。一方、末尾に符号V1~V3が付されたカム突部61V1,61V2,61V3は、上述した第2グループの複数の貫通孔92Aを穿孔するための3ペア計6つのパンチ57を駆動するためのカム突部61で、各ペアを構成する1対のカム突部61同士は、同じ構成になっているので、各ペアの一方のカム突部61V1,61V2,61V3が図11に示されている。
【0061】
同図に示されているように、第2グループのカム突部61V1~V3のうち第1のペアのカム突部61V1の第1の傾斜面61Bは、第2のペアのカム突部61V2の第1の傾斜面61Bより高低差L2だけ下方に位置し、その第2のペアのカム突部61V2の第1の傾斜面61Bは、第3のペアのカム突部61V3の第1の傾斜面61Bより高低差L2だけ下方に位置している。
【0062】
また、第1グループのカム突部61U1~U3のうち第1のカム突部61U1の第1の傾斜面61Bは、第2グループの第3のペアのカム突部61V3の第1の傾斜面61Bと同じ高さに位置している。そして、第1のカム突部61U1の第1の傾斜面61Bは、第2のカム突部61U2の第1の傾斜面61Bより高低差L3だけ下方に位置し、第2のカム突部61U2の第1の傾斜面61Bは、第3のカム突部61U3の第1の傾斜面61Bより高低差L3だけ下方に位置している。
【0063】
ここで、カム突部61の第1の傾斜面61Bとスライダ50の第1の傾斜面51Bとの当接した状態でカム突部61が図11に示した第1の傾斜面61Bの全高L1だけ降下すると、パンチ57はスライダ50と共に図12に示したストロークS1だけ前進する。そして、筒形ワーク90の壁厚tは、ストロークS1に対し、例えば1/6程度の大きさをなし、前述の高低差L2は、第1の傾斜面61Bの全高L1に対して例えば1/3程度の大きさをなし、さらには、前述の高低差L3は、高低差L2の例えば1/2程度の大きさをなしている。
【0064】
上述した構成により、ラム11と共に昇降ベース60が降下したときには、上述の如く、未加工の筒形ワーク90の第2筒部92に対して、第2グループの3ペア計6つの貫通孔92Aが2つずつ3回に分けて穿孔されると共に、最後のペアの貫通孔92Aを穿孔されるタイミングと同じタイミングで、筒形ワーク90の第1筒部91に第1グループの1つ目の貫通孔91Aが穿孔され、次いで、2つ目、3つ目の貫通孔91Aがタイミングをずらして順次穿孔される。そして、その後、ラム11と共に昇降ベース60が上昇して、パンチ57が筒形ワーク90から離れる。
【0065】
全てのパンチ57が筒形ワーク90から離れると、昇降パイプ80が降下する。このとき、弾性スリーブ59A及び圧縮コイルバネ59Bの弾発力を受けているノックアウトピン58Pが筒形ワーク90を押し下げ、筒形ワーク90が筒形ダイ70と共にワーク受容部46から下方に離脱する。
【0066】
また、昇降パイプ80は、降下するときに、例えば、図9に示すように、ガイドスリーブ83の上面がワーク搬送面19より下方に退避したところで、一次停止するか減速する。そして、そのとき1対のフィンガ16が後退してきて筒形ワーク90を把持する。また、それら1対のフィンガ16の対向面における下縁部には、例えば、水平方向に延びる突条形状のワーク抜取部16Tが備えられている。そして、筒形ワーク90の下端部がフィンガ16のワーク抜取部16Tに上方から当接した状態で昇降パイプ80が降下して筒形ワーク90から筒形ダイ70が引き抜かれる。その後、1対のフィンガ16が前進して筒形ワーク90が穿孔装置40より下流側に搬送される。
【0067】
本実施形態のトランスファプレス機10の構成及び動作に関する説明は以上である。このトランスファプレス機10によれば、以下の作用効果を奏する。即ち、本実施形態の穿孔装置40では、上述したように搬送装置であるトランスファ装置14によってワーク受容部46の同軸下方のワーク待機位置に筒形ワーク90が搬入されると、筒形ダイ70が上昇して筒形ワーク90の内側に嵌合してから、筒形ワーク90が筒形ダイ70と共に上方に移動してトランスファ装置14から離脱していく。そして、ワーク受容部46の内面に筒形ワーク90が当接することで筒形ダイ70が筒形ワーク90に押し込まれ、筒形ワーク90が筒形ダイ70に正しくセットされる。即ち、本実施形態の穿孔装置40では、筒形ワークが搬送装置から離脱しながら下方の筒形ダイに嵌合される従来型の穿孔装置とは違い、筒形ワーク90が筒形ダイ70に嵌合してからトランスファ装置14から離脱していくので、筒形ワーク90を筒形ダイ70に対して安定して正しくセットすることができる。これにより筒形ワーク90に対して高精度で複数の貫通孔91A,92Aを穿孔することができる。
【0068】
また、筒形ダイ70は、圧縮コイルバネ85に下方から支持され、昇降パイプ80の本体部分(昇降パイプ80のうち筒形ダイ70以外の部分)に対して下方への移動を許容されているので、仮に、筒形ワーク90が筒形ダイ70に対して傾いた状態でワーク受容部46に押し込まれたとしても、筒形ワーク90がワーク受容部46の内面及び筒形ダイ70から受ける負荷を抑えた状態で筒形ワーク90の姿勢が修正される。このことによっても、筒形ワーク90が筒形ダイ70に対して安定して正しくセットされる。
【0069】
さらには、本実施形態の筒形ワーク90のように上側に向かって先細りの筒形をなしている場合は、筒形ワーク90を押し下げてワーク受容部内の筒形ダイにセットする従来型の穿孔装置では、筒形ワーク90は、その上部より大きな下部側からワーク受容部に挿入されることになる。このため、筒形ダイとワーク受容部の内面との間に広い空間が形成されることになり、パンチの支持が不安定になる。これに対し、本実施形態の穿孔装置40では、ワーク受容部46は筒形ワーク90を下方から受け入れ、上方に向かって狭くなっているので、筒形ダイ70とワーク受容部46の内面とを従来型の穿孔装置より近づけることができ、支持ベース42によるパンチ57の支持が安定し、高精度で複数の貫通孔91A,92Aを穿孔することができる。
【0070】
さらには、ワーク受容部46から筒形ワーク90を離脱させるために、複数のノックアウトピン58Pにて筒形ワーク90の軸方向の途中に備えた段差部95の複数位置を押圧するので、筒形ワーク90を安定した姿勢でワーク受容部46から離脱させることができる。
【0071】
また、本実施形態の穿孔装置40では、パンチ57に動力を伝達する構成要素(スライダ50、カム突部61)が上下方向に並ぶので、上下方向と交差する方向で、穿孔装置40をコンパクトにすることができる。さらには、複数のパンチ57に対応して複数のカム突部61が設けられているので、複数のパンチ57の上下方向における位置が異なる場合や、複数のパンチ57を動作させるタイミングを異ならせたい場合に、カム突部61の形状を異ならせるだけで容易に対応することができる。
【0072】
そして、本実施形態の穿孔装置40は、複数のパンチ57を動作させるタイミングに以下の特徴を有する。即ち、本実施形態の穿孔装置40では、筒形ワーク90を包囲する複数のパンチ57に、筒形ワーク90を挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチ57が含まれている。そして、複数の貫通孔91A,92Aが穿孔されていない筒形ワーク90に対して、複数のペアのパンチ57がタイミングをずらして2つずつ貫通孔92Aを穿孔していくように構成されている。これにより、複数のパンチ57の長さ等のばらつきに起因する筒形ワーク90の穿孔時の変形状態への影響は、ペアになったパンチ57同士の間で抑えられる。そして、ペアになったパンチ57同士の穿孔タイミングがずれても、ペアになったパンチ57同士は筒形ワーク90を挟んで同一直線上に配置されているので、穿孔時の筒形ワーク90の変形のバランスの悪化が抑えられる。即ち、本実施形態によれば、筒形ワーク90が従来よりバランスが良い変形状態で複数の貫通孔92Aが穿孔されることになり、従来より高精度でペアになっている複数の貫通孔92Aを穿孔することができる。また、複数の貫通孔92Aが2つずつ穿孔されていくので、複数のパンチ57の穿孔タイミングを、単に1つずつずらしただけのものに比べて加工時間の短縮が図られる。
【0073】
また、複数のペアのパンチ57が筒形ワーク90を貫通して筒形ワーク90が安定している状態でペアになっていない複数のパンチ57が貫通孔91Aを穿孔するので、ペアになっていない残りの貫通孔91Aを高い加工精度で穿孔することができる。しかも、ペアになっているパンチ57は、ペアになっていない複数のパンチ57によって複数の貫通孔91Aを穿孔する第1筒部91より径が大きな第2筒部92に複数の貫通孔92Aを穿孔するので、ペアになっていない複数のパンチ57が貫通孔91Aを穿孔する際の筒形ワーク90の支持が一層安定し、ペアになっていない残りの貫通孔91Aをより高い加工精度で穿孔することができる。
【0074】
また、本実施形態のトランスファプレス機10は、上記した穿孔装置40を備えているので、従来より高精度で筒形ワーク90に複数の貫通孔91A,92Aを穿孔することができる。また、トランスファプレス機10を利用した貫通孔付き筒形ワーク90の製造方法によれば、加工精度が高い筒形ワーク90の製造が可能になる。
【0075】
[第2実施形態]
本実施形態は、図示はしないが、トランスファ装置14の構造が第1実施形態と異なる。即ち、本実施形態のトランスファ装置14においては、1対のレール15はスライド支持ベースに固定されている。一方、複数のフィンガ16は、前後方向H2にスライド移動可能に1対のレール15に支持されると共に、図示しない弾性部材により1対のレール15から離れる側に付勢されている。換言すれば、前後方向H2で対向する1対のフィンガ16が互いに接近する側に付勢されている。そして、ワーク供給装置13により1対の第1のフィンガ16同士の間にワークが押し込まれるようになっている。
【0076】
また、ワーク供給装置13の隣りのダミーステージST2には、支持ブロック31を上下に貫通する貫通孔に、横方向H1で対向する図示しない1対の補助フィンガが備えられている。さらには、補助フィンガは、サブカムシャフト89から動力を受けてワーク搬送面19上に出没するようになっている。そして、ワークが第1のフィンガ16に前後方向H2から挟持された状態でダミーステージST2に搬入されると、補助フィンガがワーク搬送面19上に出現してそのワークを横方向H1から挟持する。その後、第2のフィンガ16が後退してダミーステージST2に移動し、補助フィンガに横方向H1から挟持されているワークを前後方向H2から挟持すると、補助フィンガはワーク搬送面19下に退避する。そして、第2のフィンガ16が前進して先頭の加工ステージST1にワークが搬入される。
【0077】
また、第1と第2の反転用ダミーステージST3にも、前述のダミーステージST2と同様に1対の補助フィンガが備えられてワーク搬送面19上に出没するようになっている。そして、反転用フィンガ16より上流側の一般フィンガ16によって、筒形ワーク90が開口90Kを上方に向けた状態にして第1の反転用ダミーステージST3に搬入されると、第1の反転用ダミーステージST3の補助フィンガがワーク搬送面19上に出現して横方向H1から筒形ワーク90を挟持して受け取る。その後、反転用フィンガ16が後退して第1の反転用ダミーステージST3に移動し、補助フィンガに挟持されている筒形ワーク90を前後方向H2から挟持して受け取る。その後、第1の反転用ダミーステージST3の補助フィンガはワーク搬送面19下に退避し、反転用フィンガ16は、回転しながら前進して第2の反転用ダミーステージST3に、筒形ワーク90を開口90Kが下方に向いた状態にして搬入する。すると、第2の反転用ダミーステージST3の補助フィンガがワーク搬送面19上に出現して、筒形ワーク90を横方向H1から挟持して受け取る。その後、反転用フィンガ16より下流側の一般フィンガ16が第2の反転用ダミーステージST3の補助フィンガから筒形ワーク90を受け取って、第2の反転用ダミーステージST3の隣りの穿孔装置40に筒形ワーク90を搬入する。このように本実施形態では、トランスファ装置14の一部と補助フィンガ等によって前述の反転装置18が構成されている。
【0078】
[他の実施形態]
(1)前記実施形態の穿孔装置40では、ペアではないパンチ57が最初に貫通孔91Aを穿孔するタイミングは、複数のペアのパンチ57が最後に貫通孔92Aを穿孔するタイミングと同じであったが、それより後又はそれより前であってもよい。即ち、少なくとも複数ペアのパンチ57が貫通孔92Aを穿孔した後であれば、その後のパンチ57は、どのようなタイミングで筒形ワーク90に貫通孔を穿孔してもよい。また、ペアではない複数のパンチ57は、タイミングをずらして貫通孔91Aを穿孔していたが、同じタイミングで貫通孔91Aを穿孔する構成としてもよい。
【0079】
(2)また、前記実施形態の穿孔装置40では、複数のペアのパンチ57は、ペア毎には穿孔タイミングが異なる一方、各ペアを構成する2つのパンチ57の間では、穿孔タイミングが同じであったが、各ペアを構成する2つのパンチ57の間でも、穿孔タイミングが異なるようにしてもよい。
【0080】
(3)前記実施形態の穿孔装置40が有する複数のパンチ57は、筒形ワーク90を挟んで同軸上に並んでペアになっているものと、ペアになっていないものとが含まれていたが、複数のパンチ57の全てがペアになっていてもよい。また、複数のパンチ57の全てがペアになっている場合には、それら全てのペアのパンチ57により、2つずつ複数回に亘って複数の貫通孔を穿孔する構成としてもよいし、全てのペアのうち一部複数のペアのパンチ57によって、筒形ワーク90に最初に2つずつ複数回に亘って複数の貫通孔を穿孔してから、残りの複数のパンチ57が、ペアとは無関係に1つずつ順次に貫通孔を穿孔したり、全て同時に貫通孔を穿孔する構成としてもよい。
【0081】
(4)上記実施形態の筒形ワーク90は、軸方向の途中で段付き状に外径が変わる形状になっていたが、全体がテーパー状になっていてもよい。また、筒形ワーク90の全体が、均一径になっていてもよい。さらには、筒形ワーク90の断面形状は、円形に限らず、例えば楕円形や多角形状(四角形、六角形)であってもよい。
【0082】
(5)穿孔装置40に筒形ワーク90を搬送する搬送装置は、例えば、筒形ワーク90を把持するハンドを先端に備えた汎用ロボットであってもよい。
【0083】
(6)上記実施形態のトランスファプレス機10では、ラム11とトランスファ装置14と穿孔装置40とは、共通の駆動源で駆動されていたが、それぞれ別々の駆動源にて駆動されるようにしてもよい。
【0084】
(7)上記実施形態の穿孔装置40は、トランスファプレス機10の一部であったが、トランスファプレス機10とは別の工作機械の一部であってもよく、単独で動作する構成としてもよい。
【0085】
(8)穿孔装置40は、トランスファプレス機10の一部であるか否かに拘わらず、複数のパンチ57を駆動するための動力を昇降ベース60以外の経路から得るようにしてもよい。具体的には、穿孔装置40に、複数のパンチ57に接続された可動ロッドを有する複数の油圧シリンダを設けて、それら複数の油圧シリンダを複数のオンオフバルブを介して油圧ポンプに接続した構成とし、複数のオンオフバルブのオンオフ制御によって複数のパンチ57が所定のタイミングで複数の貫通孔91A,92Aを穿孔するようにしてもよい。
【0086】
また、上述した複数の油圧シリンダに代えて、モータと、そのモータの回転出力を直線移動の出力に変換するボールねじ機構、ラックアンドピニオン機構又はスライダ・クランク機構等とを有する複数の駆動源ユニットを、複数のパンチ57に接続して備えた構成としてもよい。
【0087】
さらには、ワーク受容部46の中心軸を中心に回転するカム盤に複数のカム溝を形成し、それらカム溝に複数のスライダ50から突出するカムフォロアピンをそれぞれ係合させた構造にして、カム盤をモータや油圧シリンダ等で回転させると、カム溝同士の形状の相違に応じて複数のパンチ57が所定のタイミングで複数の貫通孔91A,92Aを穿孔するようにしてもよい。
【0088】
(9)前記実施形態では、筒形ダイ70は昇降パイプ80の上端部に可動状態に支持されていたが、昇降パイプ80の本体部分と筒形ダイ70とが一体になっていてもよい。
【0089】
(10)前記実施形態の穿孔装置40は、ワーク受容部46に下方から筒形ワーク90を受容していたが、ワーク受容部46に上方から筒形ワーク90が受容されるようにしてもよいし、ワーク受容部46に軸方向を水平又は水平方向に対して傾斜させて、側方又は斜め側方から筒形ワーク90がワーク受容部46に受容されるようにしてよい。
【0090】
(11)前記穿孔装置40では、筒形ワーク90を包囲する複数のパンチ57によって複数の貫通孔91A,92Aを穿孔していたが、例えば、筒形ワーク90を挟んで対向する1対のパンチ57と、それらパンチ57から筒形ワーク90を中心にして所定の角度だけ回転させた位置に1つのパンチ57とを設けると共に、それらパンチ57を筒形ワーク90を中心に旋回させるか、筒形ワーク90を回転させる回転駆動部を備えて、複数の貫通孔91A,92Aを前記実施形態と同様にタイミングをずらして穿孔するようにしてもよい。
【0091】
(12)前記実施形態では、第1及び第2の傾斜面51B,51Cが、パンチ57と共に移動するスライダ50に設けられているが、例えば、パンチ57の端部に断面四角形の筒部を設け、その筒部に第1及び第2の傾斜面を有するカム孔を設けてもよい。
【0092】
<付記>
以下、上記実施形態から抽出される特徴群について、必要に応じて効果等を示しつつ説明する。なお、以下では、理解の容易のため、上記実施形態において対応する構成を括弧書き等で適宜示すが、これら特徴群は、この括弧書き等で示した具体的構成に限定されるものではない。
【0093】
[特徴1]
筒形ワーク(90)を包囲する複数のパンチ(57)により前記筒形ワーク(90)に側方から複数の貫通孔(91A.92A)を穿孔する穿孔装置(40)において、前記複数のパンチ(57)には、前記筒形ワーク(90)を挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチ(57)が含まれ、前記複数の貫通孔(91A,92A)が穿孔されていない筒形ワーク(90)に対して、前記複数のペアのパンチ(57)がタイミングをずらして2つずつ前記貫通孔(92A)を穿孔していくように構成されている穿孔装置(40)。
【0094】
特徴1の穿孔装置では、筒形ワークを包囲する複数のパンチに、筒形ワークを挟んで同一直線上に配置される複数のペアのパンチが含まれている。そして、複数の貫通孔が穿孔されていない筒形ワークに対して、複数のペアのパンチがタイミングをずらして2つずつ貫通孔を穿孔していくように構成されている。これにより、複数のパンチの長さ等のばらつきに起因する筒形ワークの穿孔時の変形状態への影響は、ペアになったパンチ同士の間に抑えられる。そして、ペアになったパンチ同士の穿孔タイミングがずれても、ペアになったパンチ同士は筒形ワークを挟んで同一直線上に配置されているので、穿孔時の筒形ワークの変形のバランスの悪化が抑えられる。即ち、特徴1によれば、筒形ワークが従来よりバランスが良い変形状態で複数の貫通孔が穿孔されることになり、従来より高精度で複数の貫通孔を穿孔することができる。
【0095】
[特徴2]
各前記ペアになった前記パンチ(57)同士が、同じタイミングで前記貫通孔(92A)を穿孔するように構成されている特徴1に記載の穿孔装置(40)。
【0096】
特徴2の構成によれば、複数の貫通孔が2つずつ同時に穿孔されていくので、複数のパンチの穿孔タイミングを単に1つずつずらしただけのものに比べて加工時間の短縮が図られる。
【0097】
[特徴3]
先に前記貫通孔(92A)を穿孔した前記ペアのパンチ(57)が前記筒形ワーク(90)を貫通した状態で後の前記ペアのパンチ(57)が前記貫通孔(92A)を穿孔するように構成されている特徴1又は2に記載の穿孔装置(40)。
【0098】
特徴3によれば、穿孔された貫通孔の数が増えるに従って筒形ワークが安定し、加工精度が高くなっていく。
【0099】
[特徴4]
前記複数のパンチ(57)には、前記ペアになっていない複数のパンチ(57)が含まれ、前記複数のペアのパンチ(57)が前記筒形ワーク(90)を貫通した状態で、前記ペアになっていない複数のパンチ(57)が前記貫通孔(91A)を穿孔するように構成されている特徴1から3の何れか1の特徴に記載の穿孔装置(40)。
【0100】
特徴4によれば、複数のペアのパンチが筒形ワークを貫通して筒形ワークが安定している状態でペアになっていない複数のパンチが貫通孔を穿孔するので、ペアになっていない残りの貫通孔も高い加工精度で穿孔することができる。
【0101】
[特徴5]
前記ペアになっていない複数のパンチ(57)がタイミングをずらして1つずつ前記貫通孔(91A)を穿孔していくように構成されている特徴4に記載の穿孔装置(40)。
【0102】
特徴5のように、ペアになっていない複数のパンチは、タイミングをずらして1つずつ貫通孔を穿孔してもよいし、同時に貫通孔を穿孔してもよい。
【0103】
[特徴6]
前記複数のペアのパンチ(57)が最後に前記貫通孔(92A)を穿孔するタイミングと、前記ペアになっていない複数のパンチ(57)が最初に前記貫通孔(91A)を穿孔するタイミングとが同じになるように構成されている特徴5に記載の穿孔装置(40)。
【0104】
特徴6によれば、筒形ワークに対する加工時間の短縮が図られる。
【0105】
[特徴7]
前記筒形ワーク(90)は、軸方向に第1筒部(91)と、前記第1筒部(91)より径の大きい第2筒部(92)とを有し、前記第2筒部(92)に前記複数のペアのパンチ(57)にて複数の貫通孔(92A)が穿孔され、前記第1筒部(91)に前記ペアになっていない複数のパンチ(57)にて複数の貫通孔(91A)が穿孔されるように構成されている特徴4に記載の穿孔装置(40)。
【0106】
特徴7によれば、ペアになっているパンチによる筒形ワークの支持が一層安定し、ペアになっていない複数のパンチによる貫通孔の加工精度が高くなる。
【0107】
[特徴8]
前記筒形ワーク(90)を受容するワーク受容部(46)を有し、前記複数のパンチ(57)を前記ワーク受容部(46)に対して進退するようにスライド可能に支持する支持ベース(42)と、上下に直線移動すると共に前記複数のパンチ(57)に対応した複数のカム突部(61)を前記支持ベース(42)に向けて突出した状態にして備える昇降ベース(60)と、互いに対応する各前記カム突部(61)と各前記パンチ(57)又は各前記パンチ(57)と共に移動する部材(50)に設けられて互いに摺接し、前記カム突部(61)の上下の直線移動を前記パンチ(57)の前記筒形ワーク(90)に対する前進移動に変換する摺接部(51B,61B)と、を備える特徴1から7の何れか1の特徴に記載の穿孔装置(40)。
【0108】
特徴8の構成によれば、穿孔装置のうちパンチに動力を伝達する構成要素が上下方向に並ぶので、上下方向と交差する方向で、穿孔装置をコンパクトにすることができる。また、複数のパンチに対応して複数のカム突部が設けられているので、複数のタイミングの上下方向における位置が異なる場合や、複数のパンチを動作させるタイミングを異ならせたい場合に、カム突部の形状を異ならせるだけで容易に対応することができる。
【0109】
[特徴9]
前記ワーク受容部(46)は、下端に開口を有し、前記支持ベース(42)の下方には、ワーク搬送空間(40V)が設けられ、前記筒形ワーク(90)を、前記ワーク搬送空間(40V)内における前記ワーク受容部(46)の同軸下方のワーク待機位置に水平方向から搬入する搬送装置(14)と、前記ワーク受容部(46)の下方で上下に直線移動し、前記ワーク待機位置の前記筒形ワーク(90)を前記ワーク受容部(46)に下方から押し込む昇降パイプ(80)と、前記昇降パイプ(80)の上端部に設けられて前記筒形ワーク(90)内に嵌合され、前記パンチ(57)が進退する打抜孔を有する筒形ダイ(70)と、を備える特徴8に記載の穿孔装置。
【0110】
特徴9の穿孔装置では、搬送装置によって筒形ワークがワーク受容部の同軸下方のワーク待機位置に搬入されると、筒形ダイが上昇して筒形ワークの内側に嵌合してから、筒形ワークが筒形ダイと共に上方に移動して搬送装置から離脱していく。そして、ワーク受容部の内面に筒形ワークが当接することで筒形ダイが筒形ワークに押し込まれ、筒形ワークが筒形ダイに正しくセットされる。即ち、特徴9の穿孔装置では、筒形ワークが搬送装置から離脱しながら下方の筒形ダイに嵌合される従来型の穿孔装置とは違い、筒形ワークが筒形ダイに嵌合してから搬送装置から離脱していくので、筒形ワークを筒形ダイに対して安定して正しくセットすることができる。これにより、高精度で複数の貫通孔を穿孔することができる。
【0111】
[特徴10]
前記筒形ワーク(90)は、上側に向かって先細りの筒形をなし、前記ワーク受容部(46)は、上方に向かって狭くなっている特徴9に記載の穿孔装置(40)。
【0112】
特徴10の筒形ワークのように、上側に向かって先細りの筒形をなしている場合は、筒形ワークを押し下げてワーク受容部内の筒形ダイにセットする従来型の穿孔装置では、筒形ワークは、その上部より大きな下部側からワーク受容部に挿入されることになる。このため、筒形ダイとワーク受容部の内面との間に広い空間が形成されることになり、パンチの支持が不安定になる。これに対し、特徴10の穿孔装置では、ワーク受容部は筒形ワークを下方から受け入れ、上方に向かって狭くなっているので、筒形ダイとワーク受容部の内面とを従来型の穿孔装置より近づけることができ、支持ベースによるパンチの支持が安定し、高精度で複数の貫通孔を穿孔することができる。
【0113】
[特徴11]
下台(12)とその上方のラム(11)との間で横方向に一列に並ぶ複数の加工ステージ(ST1)のそれぞれにトランスファ装置(14)によってワークを間欠的に搬送し、前記ラム(11)の下面に備えた複数のパンチ(20)と、前記下台(12)に備えた複数のダイ(30)とにより、前記ワークを下端閉塞、上端開放の筒形ワーク(90)に成形するトランスファプレス機(10)であって、下流端寄り位置の前記加工ステージ(ST1)に設けられ、前記筒形ワーク(90)の上下を反転させる反転装置(18)と、前記反転装置(18)より下流側の前記加工ステージ(ST1)に設けられる特徴9又は10に記載の穿孔装置(40)と、を備え、前記支持ベース(42)は、前記下台(12)から起立する支持部材(41)によって支持され、前記トランスファ装置(14)は、前記穿孔装置(40)の前記搬送装置(14)を兼ね、前記昇降パイプ(80)は、前記下台(12)を上下に貫通する貫通孔(31H)に通されているトランスファプレス機(10)。
【0114】
特徴11のトランスファプレス機は、特徴9に記載の穿孔装置を有し、特徴1の構成を備えるので、前述した特徴1と同様に、従来より高精度で複数の貫通孔を穿孔することができる。
【0115】
[特徴12]
筒形ワーク(90)の周方向の複数位置に複数の貫通孔(91A,92A)を穿孔して、貫通孔付き筒形ワーク(90)を製造する方法であって、前記複数の貫通孔(91A,92A)には、前記筒形ワーク(90)の中心軸を挟んで同一直線上に配置される複数のペアの貫通孔(92A)が含まれ、前記複数の貫通孔(91A,92A)が穿孔されていない筒形ワーク(90)に対して、前記複数のペアの貫通孔(92A)がタイミングをずらして穿孔されていく貫通孔付き筒形ワーク(90)の製造方法。
【0116】
特徴12の貫通孔付き筒形ワークの製造方法によれば、特徴1の穿孔装置と同様の作用効果を奏する。
【0117】
なお、本明細書及び図面には、特許請求の範囲に含まれる技術の具体例が開示されているが、特許請求の範囲に記載の技術は、これら具体例に限定されるものではなく、具体例を様々に変形、変更したものも含み、また、具体例から一部を単独で取り出したものも含む。
【符号の説明】
【0118】
10 トランスファプレス機
11 ラム
12 下台
14 トランスファ装置(搬送装置)
18 反転装置
20 パンチ
30 ダイ
40 穿孔装置
40V ワーク搬送空間
41 支持部材
42 支持ベース
46 ワーク受容部
50 スライダ
51B,51C,61B,61C 傾斜面(摺接部)
57 パンチ
60 昇降ベース
61 カム突部
70 筒形ダイ
80 昇降パイプ
90 筒形ワーク
91A,92A 貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12