(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158192
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05D 1/04 20060101AFI20241031BHJP
E06B 7/14 20060101ALI20241031BHJP
E06B 3/38 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E05D1/04 A
E06B7/14
E06B3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073179
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】391008582
【氏名又は名称】昭和フロント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100128392
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 秀一
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(72)【発明者】
【氏名】石井 勝己
【テーマコード(参考)】
2E014
2E036
【Fターム(参考)】
2E014AA03
2E014EB01
2E014EB05
2E036RA06
2E036RB01
2E036RC03
2E036TA05
(57)【要約】
【課題】障子の組み付け作業性を向上させるとともに、障子の円滑な開閉動作を維持する。
【解決手段】枠体2と、框体34を有し、枠体2の内側に配置される障子3と、枠体2と框体34との間に設けられるヒンジ機構4と、を備え、ヒンジ機構4を回動支点として障子3を開閉動作させる建具1であって、ヒンジ機構4は、框体34から延在する框側ヒンジ部41と、枠体2側にねじ42を介して固定され、框側ヒンジ部41を回動可能に支持するヒンジ部材43と、を備えて構成され、ヒンジ部材43は、長手方向において複数に分割される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上枠、下枠、及び左右の縦枠を含む複数の枠材で構成される枠体と、
上框、下框、及び左右の縦框を含む複数の框材で構成された框体と、
前記框体を有し、前記枠体の内側に配置される障子と、
前記枠体と前記框体との間に設けられるヒンジ機構と、を備え、
前記ヒンジ機構を回動支点として前記障子を開閉動作させる建具であって、
前記ヒンジ機構は、
前記框体の所定の框材から一体に延在する框側ヒンジ部と、
前記枠体の所定の枠材にねじを介して固定され、前記框側ヒンジ部を回動可能に支持するヒンジ部材と、を備えて構成され、
前記ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向において複数に分割されていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記ヒンジ部材は、
前記所定の枠材の長手方向において両端側に配置される一対の端側ヒンジ部材と、
前記所定の枠材の長手方向において中央側に配置される中央側ヒンジ部材と、に分割され、
前記端側ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向の寸法に拘わらず共通で使用可能な共通部品であり、
前記中央側ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向の寸法に応じて長さ調整される非共通部品であることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記端側ヒンジ部材の長手方向の両端部には、排水を促す切り欠きが形成されていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記所定の枠材の長手方向において前記端側ヒンジ部材と前記中央側ヒンジ部材との間に配置され、前記所定の框材側に固定されることで、前記所定の框材の長手方向において前記障子の移動を制限する振れ止め部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記端側ヒンジ部材及び前記中央側ヒンジ部材は、予め前記框側ヒンジ部に取り付けられ、前記障子を前記枠体に組み付ける際に前記ねじを介して前記枠体に固定され、
予め前記框側ヒンジ部に取り付けられた前記端側ヒンジ部材及び前記中央側ヒンジ部材は、前記所定の框材側に固定された前記振れ止め部材によって長手方向の移動が制限されることを特徴とする請求項4に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突き出し窓などの建具に関する。
【背景技術】
【0002】
枠体と障子との間にヒンジ機構を備え、該ヒンジ機構を回動支点として障子を開閉動作させる建具が知られている。例えば、特許文献1に記載される建具は、枠体の上枠と障子の上框との間にヒンジ機構を備え、該ヒンジ機構を回動支点として障子を屋外側に開放動作させる突き出し窓を構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この種の建具に設けられるヒンジ機構は、框体から延在する框側ヒンジ部と、枠体から延在し、框側ヒンジ部を回動自在に支持する枠側ヒンジ部と、框体又は枠体に取り付けられ、框側ヒンジ部の脱落を規制する脱落規制部材と、を備えて構成されており、障子を枠体に組み付ける際に、框側ヒンジ部を枠側ヒンジ部に係合させる必要があるので、障子の組み付け作業性において改善の余地があった。また、特許文献1に示されるように、上框に框側ヒンジ部を一体形成したり、上枠に枠側ヒンジ部を一体形成したものでは、複数の蝶番を介して枠体と障子を連結する場合に比べて、部品点数の削減、構造の簡略化、コストダウンなどが図れるという利点があるものの、框側ヒンジ部と枠側ヒンジ部とが係合した回動部分は清掃が難しいため、回動部分に入り込んだ塵埃などの異物によって障子の円滑な開閉が阻害される可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、上枠、下枠、及び左右の縦枠を含む複数の枠材で構成される枠体と、上框、下框、及び左右の縦框を含む複数の框材で構成された框体と、前記框体を有し、前記枠体の内側に配置される障子と、前記枠体と前記框体との間に設けられるヒンジ機構と、を備え、前記ヒンジ機構を回動支点として前記障子を開閉動作させる建具であって、前記ヒンジ機構は、前記框体の所定の框材から一体に延在する框側ヒンジ部と、前記枠体の所定の枠材にねじを介して固定され、前記框側ヒンジ部を回動可能に支持するヒンジ部材と、を備えて構成され、前記ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向において複数に分割されていることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の建具であって、前記ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向において両端側に配置される一対の端側ヒンジ部材と、前記所定の枠材の長手方向において中央側に配置される中央側ヒンジ部材と、に分割され、前記端側ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向の寸法に拘わらず共通で使用可能な共通部品であり、前記中央側ヒンジ部材は、前記所定の枠材の長手方向の寸法に応じて長さ調整される非共通部品であることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項2に記載の建具であって、前記端側ヒンジ部材の長手方向の両端部には、排水を促す切り欠きが形成されていることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1に記載の建具であって、前記所定の枠材の長手方向において前記端側ヒンジ部材と前記中央側ヒンジ部材との間に配置され、前記所定の框材側に固定されることで、前記所定の框材の長手方向において前記障子の移動を制限する振れ止め部材を備えることを特徴とする。
また、請求項5の発明は、請求項4に記載の建具であって、前記端側ヒンジ部材及び前記中央側ヒンジ部材は、予め前記框側ヒンジ部に取り付けられ、前記障子を前記枠体に組み付ける際に前記ねじを介して前記枠体に固定され、予め前記框側ヒンジ部に取り付けられた前記端側ヒンジ部材及び前記中央側ヒンジ部材は、前記所定の框材側に固定された前記振れ止め部材によって長手方向の移動が制限されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、ヒンジ部材は、予め框側ヒンジ部に取り付け(回動可能に係合し)、障子を枠体に組み付ける際にねじを介して枠体に固定できるので、障子を枠体に組み付ける際に、框側ヒンジ部を枠側ヒンジ部に係合させる従来の建具に比べ、障子の組み付け作業性を向上させることができる。また、ヒンジ部材は、所定の枠材の長手方向において複数に分割されているので、複数のヒンジ部材間に、框側ヒンジ部とヒンジ部材との回動部分に通じる空間を確保できる。そして、この空間は、框側ヒンジ部とヒンジ部材との回動部分に入り込んだ異物の排出を促すだけでなく、異物を排出するための清掃口として機能するので、回動部分に入り込んだ異物を適切に除去し、障子の円滑な開閉を維持できる。
また、請求項2の発明によれば、複数のヒンジ部材のうち、一対の端側ヒンジ部材は、枠材の長手方向の寸法に拘わらず共通で使用可能な共通部品とし、中央側ヒンジ部材は、枠材の長手方向の寸法に応じて長さ調整される非共通部品としたので、中央側ヒンジ部材の長さ調整によって様々な寸法の枠材に対応しつつ、端側ヒンジ部材の共通化によってコストダウンが図れる。
また、請求項3の発明によれば、端側ヒンジ部材の長手方向の両端部には、排水を促す切り欠きが形成されているので、建具の排水性を向上できる。
また、請求項4の発明によれば、所定の枠材の長手方向において端側ヒンジ部材と中央側ヒンジ部材との間に配置され、所定の框材側に固定されることで、所定の框材の長手方向において障子の移動を制限する振れ止め部材を備えるので、端側ヒンジ部材と中央側ヒンジ部材との間に、清掃口として機能する空間を確保しつつ、障子の振れ止めを行うことができる。
また、請求項5の発明によれば、障子を枠体に組み付ける際、端側ヒンジ部材及び中央側ヒンジ部材は、予め框側ヒンジ部に取り付けられ(回動可能に係合され)、かつ所定の框材側に固定された振れ止め部材によって長手方向の移動が制限されるので、障子の組み付け作業性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る建具を屋外側から見た正面図である。
【
図4】分割された複数のヒンジ部材及び振れ止め部材の配置を示す建具の要部断面図である。
【
図7】(a)は振れ止め部材の平面図、(b)は振れ止め部材のC-C断面図ある。
【
図8】上枠に対するヒンジ部材の固定作業時を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1~
図3において、1は建具であって、該建具1は、例えば、突き出し窓である。なお、本実施形態の突き出し窓は、単窓であるが、2連以上の連窓であってもよい。
【0009】
建具1は、建物の躯体の開口部に配置される枠体2と、枠体2に配置される障子3と、枠体2の上枠21と障子3の上框31との間に設けられるヒンジ機構4と、を備えており、ヒンジ機構4を回動支点として障子3を開閉動作可能に構成される。
【0010】
枠体2は、押出形材や曲げ物等からなる上枠21、下枠22、及び左右の縦枠23を連結して正面視四角形状に構成される。なお、本明細書では、上枠21、下枠22、及び左右の縦枠23を枠材と称する場合がある。
【0011】
障子3は、押出形材や曲げ物等からなる上框31、下框32、及び左右の縦框33を連結して構成される正面視四角形状の框体34と、框体34の内周側に配置されるガラス35と、下框32に設けられ、ガラス35の下辺を屋外側から押さえる下押縁36と、縦框33に設けられ、ガラス35の左右の縦辺を屋外側から押さえる縦押縁37と、を備える。なお、本明細書では、上框31、下框32、及び左右の縦框33を框材と称する場合がある。また、縦押縁37を備えず、縦框33にガラス35をシーリングを介して取り付けるようにしてもよい。
【0012】
図2~
図6に示すように、ヒンジ機構4は、上框31から一体に延在する框側ヒンジ部41と、枠体2側にねじ42を介して固定され、框側ヒンジ部41を回動可能に支持するヒンジ部材43と、を備えて構成される。ヒンジ部材43は、予め框側ヒンジ部41に取り付けられ、障子3を枠体2に組み付ける際にねじ42を介して枠体2に固定される。なお、ヒンジ部材43の框側ヒンジ部41に対する取り付け手順や、ヒンジ部材43の枠体2に対する取り付け手順については後述する。
【0013】
框側ヒンジ部41は、上框31の上端部屋外側に、上框31の長手方向に沿って一体形成される。框側ヒンジ部41の形状は、例えば、側断面視において下方に開口する半円形状であり、その下方には、ヒンジ部材43の回動支持部43aを収容する収容空間Sが形成される。
【0014】
ヒンジ部材43は、押出形材や曲げ物等からなり、上枠21の長手方向に沿う。本実施形態のヒンジ部材43は、回動支持部43aと、固定部43bと、第1係合部43cと、第2係合部43dと、倒れ止め部43hと、を一体に有する。
【0015】
回動支持部43aは、框側ヒンジ部41を回動可能に支持する。例えば、本実施形態の回動支持部43aは、側断面視において上方に突出する円形状の軸部43eを有し、該軸部43aに対して框側ヒンジ部41の内周面が上方から摺動可能に当接することで、框側ヒンジ部41を回動可能に支持する。
【0016】
固定部43bは、上枠21側に形成される被固定部21aに沿い、ねじ42を介して被固定部21aに固定される。被固定部21aは、屋内側を向く傾斜面であり、この傾斜面に重なる状態でヒンジ部材43の固定部43bが上枠21にねじ止めされる。これにより、ねじ42を介したヒンジ部材43の固定作業を屋内側から容易に行うことができる。なお、本実施形態のねじ42は、被固定部21aを貫通し、被固定部21aの裏側に配置される板ナット部材42bに螺合される。
【0017】
第1係合部43cは、上枠21に形成される第1被係合部21bに係合し、ヒンジ部材43の上框31側への移動、及びヒンジ部材43の屋内側への移動を規制する。例えば、本実施形態の第1被係合部21bは、上枠21から屋外側に突出する突出片であり、その先端部には、上方に突出する突起21cが形成されている。一方、本実施形態の第1係合部43cは、ヒンジ部材43から上方に延在する上方延在部43fと、上方延在部43fの上端部から屋内側に延在する屋内側延在部43gと、を有する側断面視逆L字形状であり、屋内側延在部43gが第1被係合部21bの突起21cに上方から係合することで、ヒンジ部材43の上框31側への移動を規制し、また、上方延在部43fが第1被係合部21bの先端部に係合することで、ヒンジ部材43の屋内側への移動を規制する。
【0018】
また、本実施形態の第1係合部43cは、回動支持部43aよりも屋内側で、かつ固定部43bよりも屋外側に形成されている。このような第1係合部43cによれば、障子3から荷重を受けると、ヒンジ部材43の回動支点となり、固定部43bを上枠21側の被固定部21aに押し付ける方向に回動させることができる。このような第1係合部43cによれば、ヒンジ部材43の上枠21への取り付けが容易になるだけでなく、取り付け後におけるヒンジ部材43の不要な移動を規制できる。なお、上枠21側の突起21cは、第1係合部43cを回動支点としてヒンジ部材43が回動する際に回動軸として機能し、ヒンジ部材43の回動を円滑にする。
【0019】
第2係合部43dは、上枠21側に形成される第2被係合部21dに係合し、ヒンジ部材43の屋外側への移動を規制する。例えば、本実施形態の第2被係合部21dは、被固定部21aの屋内側端部に形成される角部であり、実施形態の第2係合部43dは、固定部43bの屋内側端部から上方に折れ曲がり、第2被係合部21dに屋内側から係合する折曲片である。このような第2係合部43dによれば、上枠21側の第2被係合部21dとの係合により、ヒンジ部材43が上枠21に対して位置決めされるので、ヒンジ部材43の上枠21への取り付けがさらに容易になるだけでなく、取り付け後におけるヒンジ部材43の不要な移動を規制できる。例えば、取り付け後において、ねじ42が緩んだとしても、前述した被固定部21aに対する固定部43bの押し付けと、第2被係合部21dに対する第2係合部43dの係合により、ヒンジ部材43の不要な移動を規制し、ヒンジ部材43の不要な移動に基づく障子3の脱落を防止できる。
【0020】
倒れ止め部43hは、ヒンジ部材43の下面部から下方に突出する突起であり、障子3が下框32側を支点として屋外側に倒れようとしたとき、上框31に形成される係合片31bに係合して障子3の屋外側への倒れを規制する。このような倒れ止め部43hによれば、火災が発生した場合に、熱によるヒンジ機構4の変形などに起因し、障子3が屋外側に倒れることを防止できる。
【0021】
図4に示すように、ヒンジ部材43は、上枠21の長手方向において複数に分割されている。これにより、分割された複数のヒンジ部材43の間に、框側ヒンジ部41とヒンジ部材43との回動部分(摺動部分)に通じる空間K(
図8参照)を確保できるので、空間Kによって回動部分に入り込んだ異物の排出を促したり、回動部分の清掃口として空間Kを機能させることが可能になる。なお、空間Kを清掃口として框側ヒンジ部41とヒンジ部材43との回動部分を清掃する場合は、障子3を開放した状態で、空間Kから回動部分に水を流し込む。これにより、回動部分に入り込んだ異物を回動部分の他方側から水流で排出させることが可能になる。
【0022】
ヒンジ部材43は、上枠21の長手方向において両端側に配置される一対の端側ヒンジ部材43Aと、上枠21の長手方向において中央側に配置される中央側ヒンジ部材43Bと、に分割される。そして、端側ヒンジ部材43Aは、上枠21の長手方向の寸法に拘わらず共通で使用可能な共通部品とし、中央側ヒンジ部材43Bは、上枠21の長手方向の寸法に応じて長さ調整される非共通部品としてある。これにより、中央側ヒンジ部材43Bの長さ調整によって様々な寸法の建具1に対応しつつ、端側ヒンジ部材43Aの共通化によってコストダウンが図れる。また、端側ヒンジ部材43Aの長手方向の両端部には、排水を促す切り欠き43iが形成されており、建具1の排水性を向上させることができる。
【0023】
図4に示すように、端側ヒンジ部材43Aと中央側ヒンジ部材43Bとの間には、樹脂製の振れ止め部材5が配置されている。振れ止め部材5は、上框31にねじ51を介して固定され、上框31の長手方向において端側ヒンジ部材43A又は中央側ヒンジ部材43Bの端面と当接することで、上框31の長手方向において障子3の移動を制限する。このような振れ止め部材5によれば、端側ヒンジ部材43Aと中央側ヒンジ部材43Bとの間に、清掃口として機能する空間Kを確保しつつ、障子3の振れ止めを行うことができる。また、振れ止め部材5は、上框31の長手方向において障子3の移動量を制限するだけでなく、端側ヒンジ部材43Aや中央側ヒンジ部材43Bよりも軟質な樹脂製であるため、端側ヒンジ部材43A又は中央側ヒンジ部材43Bの端面と当接した際の衝撃も緩和することができる。
【0024】
図6及び
図7に示すように、振れ止め部材5は、ねじ51を介して上框31に固定される固定部5aと、固定部5aから延在し、端側ヒンジ部材43A又は中央側ヒンジ部材43Bの端面と当接可能な第1延在部5b及び第2延在部5cと、を一体に有する。なお、振れ止め部材5の形状は、端側ヒンジ部材43A又は中央側ヒンジ部材43Bの端面と当接可能な形状であれば、適宜変更することができる。また、振れ止め部材5は、樹脂製に限定されるものではない。
【0025】
つぎに、上枠21に対する障子3(框体34)の取り付け手順について説明する。
【0026】
障子3を上枠21に取り付ける際には、上框31の框側ヒンジ部41に、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを取り付ける。例えば、ヒンジ部材43の回動支持部43aが上框31の脱落規制部31aに干渉しないように、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを上框31に対して所定角度以上傾斜させた状態で、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bの回動支持部43aを框側ヒンジ部41の収容空間Sに屋内側から挿入し、その後、回動支持部43aを回動支点として端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを下方に回動させる。これにより、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、回動可能な係合状態で框側ヒンジ部41に取り付けられる。なお、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、回動支持部43aを長手方向から収容空間Sにスライド状に挿入するようにして框側ヒンジ部41に取り付けてもよい。
【0027】
また、上框31にねじ51を介して振れ止め部材5を固定する。振れ止め部材5の固定は、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを框側ヒンジ部41に取り付けた後でもよいし、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを框側ヒンジ部41に取り付ける前でもよい。これにより、予め框側ヒンジ部41に取り付けられた端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、上框31に固定された振れ止め部材5によって長手方向の移動が制限され、障子3の組み付け作業が容易になる。
【0028】
つぎに、障子3側に取り付けられた端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bをねじ42を介して上枠21に固定する。具体的に説明すると、障子3を後傾させた状態で端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bを屋外側から上枠21に近付けつつ、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bの第1係合部43cを上枠21の第1被係合部21bに係合させる。端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bの第1係合部43cが上枠21の第1被係合部21bに係合したら、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bの回動支持部43aに障子3の下向き荷重を作用させる。これにより、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、第1係合部43cを回動支点として回動し、固定部43bが上枠21側の被固定部21aに押し付けられるとともに、第2係合部43dが上枠21の第2被係合部21dに係合することで、上枠21に対する取り付け位置が位置決めされる。その後、
図8に示すように、ねじ42を介して端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bの固定部43bを上枠21の被固定部21aに固定すると、障子3が上枠21に取り付けられるとともに、ヒンジ機構4を回動支点とする障子3の開閉操作が可能となる。
【0029】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、上枠21、下枠22、及び左右の縦枠23を含む複数の枠材で構成される枠体2と、上框31、下框32、及び左右の縦框33を含む複数の框材で構成された框体34と、框体34を有し、枠体2の内側に配置される障子3と、枠体2と框体34との間に設けられるヒンジ機構4と、を備え、ヒンジ機構4を回動支点として障子3を開閉動作させる建具1であって、ヒンジ機構4は、上框31から一体に延在する框側ヒンジ部41と、上枠31にねじ42を介して固定され、框側ヒンジ部41を回動可能に支持するヒンジ部材43と、を備えて構成されるので、ヒンジ部材43は、予め框側ヒンジ部41に取り付け、障子3を枠体2に組み付ける際にねじ42を介して枠体2に固定できる。これにより、障子3を枠体2に組み付ける際に、框側ヒンジ部を枠側ヒンジ部に係合させる従来の建具に比べ、障子3の組み付け作業性を向上させることができる。
【0030】
また、ヒンジ部材43は、上枠21の長手方向において複数に分割されているので、複数のヒンジ部材43間に、框側ヒンジ部41とヒンジ部材43との回動部分に通じる空間Kを確保できる。この空間Kは、框側ヒンジ部41とヒンジ部材43との回動部分に入り込んだ異物の排出を促すだけでなく、異物を排出するための清掃口として機能するので、回動部分に入り込んだ異物を適切に除去し、障子3の円滑な開閉を維持できる。
【0031】
また、ヒンジ部材43は、上枠21の長手方向において両端側に配置される一対の端側ヒンジ部材43Aと、上枠21の長手方向において中央側に配置される中央側ヒンジ部材43Bと、に分割され、端側ヒンジ部材43Aは、上枠21の長手方向の寸法に拘わらず共通で使用可能な共通部品とし、中央側ヒンジ部材43Bは、上枠21の長手方向の寸法に応じて長さ調整される非共通部品としたので、中央側ヒンジ部材43Bの長さ調整によって様々な寸法の枠材に対応しつつ、端側ヒンジ部材43Aの共通化によってコストダウンが図れる。
【0032】
また、端側ヒンジ部材43Aの長手方向の両端部には、排水を促す切り欠き43iが形成されているので、建具1の排水性を向上できる。
【0033】
また、建具1は、上枠21の長手方向において端側ヒンジ部材43Aと中央側ヒンジ部材43Bとの間に配置され、上框31に固定されることで、上框31の長手方向において障子3の移動を制限する振れ止め部材5を備えるので、端側ヒンジ部材43Aと中央側ヒンジ部材43Bとの間に、清掃口として機能する空間Kを確保しつつ、障子3の振れ止めを行うことができる。
【0034】
また、端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、予め框側ヒンジ部41に取り付けられ、障子3を枠体2に組み付ける際にねじ42を介して上枠21に固定され、予め框側ヒンジ部41に取り付けられた端側ヒンジ部材43A及び中央側ヒンジ部材43Bは、上框31に固定された振れ止め部材5によって長手方向の移動が制限されるので、障子3の組み付け作業中に、端側ヒンジ部材43Aや中央側ヒンジ部材43Bが移動又は脱落して作業性を低下させることを防止できる。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、前記実施形態では、建具を、上端側を支点として障子を開閉させる突き出し窓として説明したが、本発明の建具は、突き出し窓に限定されず、下端側を回動支点と障子を開閉させる外倒し窓や、左右いずれかの側部を回動支点として障子を開閉させる外開き窓にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 建具
2 枠体
21 上枠
21a 被固定部
21b 第1被係合部
21c 突起
21d 第2被係合部
21h 第2脱落規制部
22 下枠
23 縦枠
3 障子
31 上框
31a 脱落規制部
31b 係合片
32 下框
33 縦框
34 框体
35 ガラス
36 下押縁
37 縦押縁
4 ヒンジ機構
41 框側ヒンジ部
42 ねじ
42b 板ナット部材
43 ヒンジ部材
43a 回動支持部
43b 固定部
43c 第1係合部
43d 第2係合部
43e 軸部
43f 上方延在部
43g 屋内側延在部
43h 倒れ止め部
43i 切り欠き
5 振れ止め部材
5a 固定部
5b 第1延在部
5c 第2延在部
51 ねじ
S 収容空間
K 空間