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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158197
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】排気ガス管および排気ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073185
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 祐一
(72)【発明者】
【氏名】霜野 慎
(72)【発明者】
【氏名】青池 早紀
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和馬
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AB05
3G091AB15
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA17
3G091CA27
3G091FC04
3G091HA46
3G091HB01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成でデポジットの発生を抑制することのできる排気ガス管および排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】排気ガス浄化装置に使用される排気ガス管100は、外管101と、外管101の管壁に形成され、外管101の内部に還元剤を噴射するドージングモジュール112が接続されるドージング噴射装置接続部と、外管101の内部に配置され、ドージングモジュール112から噴射される還元剤が当たる位置に配置される衝突板102と、衝突板102を外管101から離間させるように支持する支持部103とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガスを還元剤と混合させてSCR触媒を通過させる排気ガス浄化装置に使用される排気ガス管であって、
外管と、
前記外管の管壁に形成され、前記外管の内部に還元剤を噴射する噴射装置が接続される噴射装置接続部と、
前記外管の内部に配置され、前記噴射装置から噴射される還元剤が当たる位置に配置される還元剤当て部と、
前記還元剤当て部を前記外管から離間させて支持する支持部とを備えることを特徴とする排気ガス管。
【請求項2】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記支持部は、前記還元剤当て部において還元剤が噴射される噴射領域よりも、排気ガス流れ方向の下流側に設けられることを特徴とする排気ガス管。
【請求項3】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記支持部は、前記還元剤当て部における排気ガス流れ方向の中央部に設けられることを特徴とする排気ガス管。
【請求項4】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記還元剤当て部は、当該排気ガス管の中心軸と直交する方向の断面における形状が円または円弧であることを特徴とする排気ガス管。
【請求項5】
請求項4に記載の排気ガス管であって、
前記還元剤当て部は、前記外管の断面形状と同心円状に配置されることを特徴とする排気ガス管。
【請求項6】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記還元剤当て部は、前記外管との隙間が排気ガス流れ方向の上流側で最も広く、下流側に向かうにつれて狭くなるような拡張部を有することを特徴とする排気ガス管。
【請求項7】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記外管は、前記還元剤当て部より上流側に曲がり部を有し、
前記還元剤当て部は、前記曲がり部に対して、曲げの外側に配置されていることを特徴とする排気ガス管。
【請求項8】
請求項1に記載の排気ガス管であって、
前記噴射装置接続部は、前記外管において管の内側に窪んだ凹部に設けられていることを特徴とする排気ガス管。
【請求項9】
排気ガスを還元剤と混合させてSCR触媒を通過させる排気ガス浄化装置であって、
排気ガスを通過させる排気ガス管と、
前記排気ガス管に直接接続され、前記排気ガス管内に尿素水を噴射供給する噴射装置とを備え、
前記排気ガス管は、請求項1ないし8の何れか1項に記載の排気ガス管であることを特徴とする排気ガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気ガス管、並びにそれを用いた排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化する技術として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが知られている。特許文献1には、排気ガス管の途中にSCR触媒と尿素水噴射部とを設け、排気ガス管内で排気ガスを尿素水と混合させてSCR触媒を通過させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-075213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
排気ガス管内に尿素水を噴射する際、排気ガス管の内壁に尿素水が衝突すると、尿素水が蒸発されずに尿素由来の固形物(デポジット)が生成して不具合が生じる虞がある。特に、低温環境化では排気ガス管自体が外気によって低温となり、尿素水が蒸発しづらくデポジットの発生リスクが高まる。発生したデポジットは、排気ガス管の壁面から脱落し、下流にあるSCR触媒に衝突して破損を招く虞もある。
【0005】
従来は、排気ガス管内に尿素水の噴霧の微粒化促進を図る装置(ミキサー)を配置し、ミキサーによって尿素水の蒸発を促進させてデポジットの形成を抑制していた。しかしながら、このような従来技術は、ミキサーの搭載による尿素SCRシステムの複雑化や、ミキサーの搭載に係る設計的な制約を招くといった問題がある。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でデポジットの発生を抑制することのできる排気ガス管および排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示の第1の態様である排気ガス管は、排気ガスを還元剤と混合させてSCR触媒を通過させる排気ガス浄化装置に使用される排気ガス管であって、外管と、前記外管の管壁に形成され、前記外管の内部に還元剤を噴射する噴射装置が接続される噴射装置接続部と、前記外管の内部に配置され、前記噴射装置から噴射される還元剤が当たる位置に配置される還元剤当て部と、前記還元剤当て部を前記外管から離間させて支持する支持部とを備えることを特徴としている。
【0008】
上記の構成によれば、還元剤当て部が外管内部で高温の排気ガスに曝されていることにより、その温度が高温に維持されやすく、噴射される還元剤を還元剤当て部に当てることにより、還元剤の蒸発が促進され、排気ガス管内部でのデポジットの生成を抑制できる。
【0009】
また、上記排気ガス管では、前記支持部は、前記還元剤当て部において還元剤が噴射される噴射領域よりも、排気ガス流れ方向の下流側に設けられる構成とすることができる。
【0010】
上記の構成によれば、噴射領域を支持部の上流側とすることで、噴射領域が支持部によって温度低下した排気ガスの影響を受けにくい。これにより、噴射領域における尿素水の蒸発が阻害されない。
【0011】
また、上記排気ガス管では、前記支持部は、前記還元剤当て部における排気ガス流れ方向の中央部に設けられる構成とすることができる。
【0012】
上記の構成によれば、還元剤当て部が支持部による片持ち支持とならず、ガス流れ方向の重量バランスが取れるため、外管に対する還元剤当て部の取付強度が向上する。
【0013】
また、上記排気ガス管では、前記還元剤当て部は、当該排気ガス管の中心軸と直交する方向の断面における形状が円または円弧である構成とすることができる。
【0014】
また、上記排気ガス管では、前記還元剤当て部は、前記外管の断面形状と同心円状に配置される構成とすることができる。
【0015】
上記の構成によれば、還元剤当て部における還元剤の衝突面において噴射装置からの距離を全体的に大きく取ることができ、噴射される還元剤の液滴が還元剤当て部に衝突するまでに微細化されやすい。これにより、還元剤の蒸発がさらに促進されてデポジットの生成がより効果的に抑制される。
【0016】
また、上記排気ガス管では、前記還元剤当て部は、前記外管との隙間が排気ガス流れ方向の上流側で最も広く、下流側に向かうにつれて狭くなるような拡張部を有する構成とすることができる。
【0017】
上記の構成によれば、還元剤当て部の上流側に拡張部を設けることで、還元剤当て部と外管との隙間により多くの排気ガスを誘導することができ、排気ガスから還元剤当て部への熱伝達が促進される。これにより、還元剤の蒸発がさらに促進されてデポジットの生成がより効果的に抑制される。
【0018】
また、上記排気ガス管では、前記外管は、前記還元剤当て部より上流側に曲がり部を有し、前記還元剤当て部は、前記曲がり部に対して、曲げの外側に配置されている構成とすることができる。
【0019】
上記の構成によれば、還元剤当て部を曲がり部の下流側、かつ、曲げの外側に配置することで、還元剤当て部周辺における排気ガスの流量を増やすことができ、排気ガスから還元剤当て部への熱伝達が促進される。これにより、還元剤の蒸発がさらに促進されてデポジットの生成がより効果的に抑制される。
【0020】
また、上記排気ガス管では、前記噴射装置接続部は、前記外管において管の内側に窪んだ凹部に設けられている構成とすることができる。
【0021】
上記の構成によれば、噴射装置の周囲に外気の層(凹部内に入り込む空気層)を持たせ、排気ガスの影響を受けて噴射装置の温度が上昇することを抑制できる。これにより、噴射装置における熱による不具合を防止できる。
【0022】
また、上記の課題を解決するために、本開示の第2の態様である排気ガス浄化装置は、排気ガスを還元剤と混合させてSCR触媒を通過させる排気ガス浄化装置であって、排気ガスを通過させる排気ガス管と、前記排気ガス管に直接接続され、前記排気ガス管内に尿素水を噴射供給する噴射装置とを備え、前記排気ガス管は、上記記載の排気ガス管であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0023】
本開示の排気ガス管および排気ガス浄化装置は、噴射される還元剤を外管内部の還元剤当て部に当てることにより、還元剤の蒸発が促進され、排気ガス管内部でのデポジットの生成を抑制できるといった効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】排気ガス浄化装置の基本構成を示す概略図である。
図2】第1実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸を含む断面図である。
図3】第1実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールとの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸と直交する方向の断面図である。
図4】第2実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸を含む断面図である。
図5】第3実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸を含む断面図である。
図6】第4実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸を含む断面図である。
図7】第5実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸を含む断面図である。
図8】第5実施形態の排気ガス管におけるドージングモジュールとの接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管の中心軸と直交する方向の断面図である。
図9】支持部の変形例を示す斜視図である。
図10】噴射装置接続部の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
〔第1実施形態〕
本開示の排気ガス浄化装置の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、排気ガス浄化装置10の基本構成を示す概略図である。尚、本開示における排気ガス浄化装置10は、排気ガスを還元剤と混合させてSCR触媒を通過させることで排気ガス中の窒素酸化物を低減させる装置であるが、ここでは、還元剤として一般的な尿素水を使用する場合を例示する。但し、使用する還元剤は、尿素水に限定されるものではなく、他の液体の還元剤であってもよい。
【0026】
排気ガス浄化装置10は、大略的に、排気ガス管100、尿素水供給部110およびSCR触媒120を備えて構成されている。尿素水供給部110は、排気ガス管100内に尿素水を噴射供給するように、排気ガス管100に接続されている。SCR触媒120は、排気ガス管100において、尿素水供給部110よりもガス流れ方向の下流側に配置されており、尿素水の混合された排気ガス中の窒素酸化物を浄化する。尚、以下の説明における上流側/下流側とは、ガス流れ方向の上流側/下流側を指す。
【0027】
尿素水供給部110は、尿素水タンク111、ドージングモジュール(噴射装置)112、供給管113およびポンプ114を備えている。尿素水タンク111は、排気ガス管100に供給するための尿素水を貯蔵する。ドージングモジュール112は、排気ガス管100に直接接続されており、排気ガス管100内に尿素水を噴射する。このため、排気ガス管100の管壁(詳細には、後述する外管101の管壁)には、ドージングモジュール112を接続するための噴射装置接続部(例えば、図10に示す噴射装置接続部101c)が形成されている。供給管113およびポンプ114は、尿素水タンク111からドージングモジュール112への尿素水の供給を行う。
【0028】
排気ガス浄化装置10は、尿素由来のデポジットの発生を抑制し得る排気ガス管100の構成に特徴を有する。以下、この特徴点について詳細に説明する。
【0029】
図2は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112の接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸を含む断面(図3のA-A断面)図である。図3は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112との接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸と直交する方向の断面(図2のB-B断面)図である。
【0030】
図2および図3に示すように、排気ガス管100は、外管101と、その内部に配置される衝突板(還元剤当て部)102および支持部103とを有している。衝突板102は、支持部103を介して外管101内で外管101とは離間するように支持されている。
【0031】
衝突板102は、ドージングモジュール112よりも概ね下流側に配置される。排気ガス浄化装置10におけるドージングモジュール112および衝突板102の配置は、ドージングモジュール112から噴射される尿素水の全て(もしくはほぼ全て)を衝突板102に当てる(衝突板102で受ける)ことができるように設計される。すなわち、衝突板102は、ドージングモジュール112における尿素水の噴射方向の延長上であって、ドージングモジュール112から噴射される尿素水が当たる位置に配置されている。
【0032】
外管101は、その外面側で外気に接しているため、低温環境化等では比較的低温となっていることもあり、外管101の内壁に尿素水が衝突すると、尿素水が蒸発されずにデポジットが生成する虞がある。これに対し、衝突板102は、外管101の内部に配置され、かつ、その全体が高温の排気ガスに曝されていることにより、その温度は尿素水を蒸発させるのに十分な高温に維持される。したがって、本実施形態では、ドージングモジュール112から噴射される尿素水を衝突板102に当てることにより、尿素水の蒸発が促進され、排気ガス管100内部でのデポジットの生成を抑制できる。
【0033】
衝突板102は、図3に示すように、排気ガス管100の中心軸と直交する方向の断面において円弧形状とされ、衝突板102の円弧は外管101と同心円状に配置されることが好ましい。言い換えれば、衝突板102の円弧の中心が、外管101の中心と一致することが好ましい。衝突板102の断面を円弧形状とし、かつ、衝突板102を外管101と同心円状に配置することで、衝突板102における尿素数の衝突面においてドージングモジュール112からの距離を全体的に大きく取ることができる。これにより、ドージングモジュール112から噴射される尿素水の液滴が、衝突板102に衝突するまでに微細化され、尿素水の蒸発がさらに促進されてデポジットの生成がより効果的に抑制される。
【0034】
衝突板102に対して、設けられる支持部103の数や形状は特に限定されるものではない。但し、支持部103は、外管101と衝突板102との間で熱の移動経路となりうるため、支持部103を介しての衝突板102から外管101への熱の逃げはできる限り抑制されることが好ましい。このため、支持部103の数は1つとし、衝突板102は外管101に対して1点支持とされることが好ましい。また、支持部103は、熱の移動経路となる断面積を小さくするため、柱状の形状とされることが好ましい。これにより、衝突板102から外管101への熱の逃げによる、衝突板102の温度低下を防止できる。
【0035】
尚、支持部103の数を1つとして、衝突板102を外管101に対して1点支持する構造には、排気ガス管100の信頼性を高める作用もある。衝突板102は、尿素水の噴射を受けて温度変化が生じ、この温度変化によって熱伸縮が生じることがある。例えば、衝突板102が外管101に対して2つの支持部103によって2点支持される場合、これら2つの支持部103間で衝突板102の熱伸縮が生じると、衝突板102に過剰な応力が生じて衝突板102に板割れ等の不具合が生じる虞がある。これに対し、衝突板102が1点支持される場合は、衝突板102の熱伸縮による過剰な応力の発生は無く、排気ガス管100の信頼性が向上する。
【0036】
また、支持部103は、衝突板102に対してガス流れ方向の中央部に設けられることが好ましい。この場合、衝突板102が支持部103による片持ち支持とならず、ガス流れ方向の重量バランスが取れるため、衝突板102の取付強度が向上する。
【0037】
衝突板102においてドージングモジュール112からの尿素水が噴射される領域(以下、噴射領域)Rは、支持部103の上流側であることが好ましい。衝突板102において、支持部103との接続箇所付近は他の箇所に比べて低温になりやすい。また、支持部103自体が、周辺の排気ガスの温度低下を招くこともある。このため、衝突板102における噴射領域Rを支持部103の上流側とすることで、噴射領域Rが低温となりにくく、また、支持部103によって温度低下した排気ガスの影響を受けにくい。これにより、噴射領域Rにおける尿素水の蒸発が阻害されない。
【0038】
〔第2実施形態〕
本開示の排気ガス浄化装置の第2実施形態について説明する。尚、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については同じ部材番号を付して説明する。図4は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112の接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸を含む断面図である。
【0039】
図4に示すように、本実施形態の外管101は、衝突板102の上流側に曲がり部101aを有する曲げ管とされている。すなわち、衝突板102は、曲がり部101aの下流側に配置される。外管101の曲がり部101aにおける曲げ角αは0°<α≦180°であり、好ましくは30°<α≦180°である。尚、α=180°はU字型パイプを想定した場合の曲げ角である。すなわち、曲がり部101aでは、外管101はR(アール)を有するように緩やかに曲げられていてもよい。また、衝突板102は、曲がり部101aに対して、曲げの外側に配置されている。
【0040】
曲がり部101aにおける排気ガス流れ方向の下流側では、曲げの内側に比べ、外側において排気ガスの流量が多くなる。このため、衝突板102を曲がり部101aの下流側、かつ、曲げの外側に配置することで、衝突板102周辺における排気ガスの流量を増やすことができる。その結果、衝突板102と外管101との隙間に排気ガスが流れやすくなり、排気ガスから衝突板102への熱伝達が促進される。これにより、衝突板102がより高温に維持されやすく、尿素水の蒸発が促進されて、排気ガス管100内部でのデポジットの生成が効果的に抑制できる。
【0041】
〔第3実施形態〕
本開示の排気ガス浄化装置の第3実施形態について説明する。尚、第3実施形態においても、第1実施形態と同様の構成については同じ部材番号を付して説明する。図5は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112の接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸を含む断面図である。
【0042】
図5に示すように、本実施形態の衝突板102は、その上流側に拡張部102aを有しており。拡張部102aでは、衝突板102と外管101との隙間が拡張されている。すなわち、拡張部102aでは、衝突板102と外管101との間における円周方向の距離Lが他の箇所に比べて大きくされている。より具体的には、拡張部102aにおける衝突板は、102と外管101との隙間が上流側で最も広く、下流側に向かうにつれて徐々に狭くなるような傾斜状に形成されている。
【0043】
このように、衝突板102の上流側に拡張部102aを設けることで、衝突板102と外管101との隙間により多くの排気ガスを誘導することができる。その結果、衝突板102と外管101との隙間に排気ガスが流れやすくなり、排気ガスから衝突板102への熱伝達が促進される。これにより、衝突板102がより高温に維持されやすく、尿素水の蒸発が促進されて、排気ガス管100内部でのデポジットの生成が効果的に抑制できる。
【0044】
〔第4実施形態〕
本開示の排気ガス浄化装置の第4実施形態について説明する。尚、第4実施形態においても、第1実施形態と同様の構成については同じ部材番号を付して説明する。図6は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112の接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸を含む断面図である。
【0045】
図6に示すように、本実施形態での外管101は、ドージングモジュール112の接続箇所において、管の内側に窪んだ凹部101bを有している。すなわち、ドージングモジュール112を接続するための噴射装置接続部は、凹部101bに設けられている。
【0046】
外管101に接続されるドージングモジュール112は、排気ガスの影響を受けて高温になると、熱による故障等の不具合も懸念される。これに対し、ドージングモジュール112の周囲に凹部101bを形成することで、ドージングモジュール112の周囲に外気の層(凹部101b内に入り込む空気層)を持たせ、ドージングモジュール112の温度が上昇することを抑制できる。これにより、ドージングモジュール112における熱による不具合を防止できる。
【0047】
〔第5実施形態〕
本開示の排気ガス浄化装置の第5実施形態について説明する。尚、第5実施形態においても、第1実施形態と同様の構成については同じ部材番号を付して説明する。図7は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112の接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸を含む断面(図8のC-C断面)図である。図8は、排気ガス管100におけるドージングモジュール112との接続箇所付近を示す図であり、排気ガス管100の中心軸と直交する方向の断面(図7のD-D断面)図である。
【0048】
図7および図8に示すように、排気ガス管100は、外管101と、その内部に配置される内管(還元剤当て部)104とを有している。内管104は、支持部103を介して外管101内で外管101とは離間するように支持されている。また、内管104は外管101と同心円状に配置されることが好ましい。
【0049】
本実施形態では、ドージングモジュール112は、外管101を貫通して内管104に接続されている。ドージングモジュール112は、内管104に内周面に向けて尿素水を噴射する。内管104の配置は、ドージングモジュール112から噴射される尿素水の全て(もしくはほぼ全て)が内管104に衝突することが想定されるように設計される。すなわち、内管104は、ドージングモジュール112から噴射される尿素水が当たる位置に配置されている。
【0050】
内管104は、第1ないし第4実施形態における衝突板102と同様に、外管101の内部に配置され、かつ、その全体が高温の排気ガスに曝されていることにより、その温度は尿素水を蒸発させるのに十分な高温に維持される。したがって、本実施形態では、ドージングモジュール112から噴射される尿素水を内管104に当てる(内管104で受ける)ことにより、尿素水の蒸発が促進され、排気ガス管100内部でのデポジットの生成を抑制できる。
【0051】
支持部103は、外管101と内管104との間で熱の移動経路となりうるため、本実施形態でも、支持部103を介しての内管104から外管101への熱の逃げはできる限り抑制されることが好ましい。このため、支持部103の数は1つとし、内管104は外管101に対して1点支持とされることが好ましい。
【0052】
さらに、支持部103の形成箇所は、排気ガス管100の中心軸に対して噴射領域Rとは反対側とされることが好ましい。内管104における噴射領域Rは、ドージングモジュール112の接続側とは反対側であるため、言い換えれば、支持部103の形成箇所は、排気ガス管100の中心軸に対してドージングモジュール112の接続側と同一側とされることが好ましい。これにより、特に高温に維持されることが好ましい噴射領域Rにおいて、支持部を介した熱の逃げによる内管104の温度低下を防止できる。
【0053】
但し、内管104に対して、設けられる支持部103の数や形状は特に限定されるものではない。支持部103の変形例として、例えば図9に示すように、内管104の外周面に軸方向に沿って形成されたリブ状の支持部103を放射状に複数設け、このようなリブ状の支持部103を用いて内管104を外管101の内部に支持してもよい。無論、このようなリブ状の支持部103は、衝突板102に対しても適用可能である。
【0054】
〔第6実施形態〕
上述した説明では、ドージングモジュール112の一部が外管101の内部に差し込まれるように接続されているが、ドージングモジュール112における排気ガスの熱影響を避けるためには、図10に示すような構成とされていてもよい。図10の構成では、外管101の管壁から半径方向外側に突出するように噴射装置接続部101cを設け、噴射装置接続部101cにドージングモジュール112の先端のみを接続している。このような構成では、ドージングモジュール112自体が排気ガスに曝されることがなく、ドージングモジュール112における排気ガスの熱影響を回避できる。
【0055】
尚、図10に示す構成は、ドージングモジュール112を内管104に対して接続させる第5実施形態では適用できない。このため、第5実施形態の排気ガス管100では、ドージングモジュール112の接続箇所に凹部101bを設ける第4実施形態の構成を適用することが好ましい。
【0056】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0057】
10 排気ガス浄化装置
100 排気ガス管
101 外管
101a 曲がり部
101b 凹部
101c 噴射装置接続部
102 衝突板(還元剤当て部)
102a 拡張部
103 支持部
104 内管(還元剤当て部)
110 尿素水供給部
111 尿素水タンク
112 ドージングモジュール(噴射装置)
113 供給管
114 ポンプ
120 SCR触媒
R 噴射領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10