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  • 特開-防汚積層体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158205
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】防汚積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B05D 1/02 20060101AFI20241031BHJP
   B32B 38/16 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20241031BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 5/00 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20241031BHJP
   G02B 1/18 20150101ALI20241031BHJP
【FI】
B05D1/02 Z
B32B38/16
B32B37/02
B32B27/00 101
B05D3/02 Z
B05D5/00 H
B05D3/02 B
B05D3/00 D
B05D3/00 F
B05D7/24 303A
B05D7/24 302Y
B05D7/24 303E
B05D7/24 302L
G02B1/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073196
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000111591
【氏名又は名称】ハニー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(71)【出願人】
【識別番号】517132810
【氏名又は名称】地方独立行政法人大阪産業技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】小野 凌平
(72)【発明者】
【氏名】臼井 寛明
(72)【発明者】
【氏名】印部 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 優志
(72)【発明者】
【氏名】渡瀬 星児
【テーマコード(参考)】
2K009
4D075
4F100
【Fターム(参考)】
2K009BB01
2K009BB11
2K009CC26
2K009CC42
2K009DD02
2K009DD06
2K009EE05
4D075AA01
4D075AA81
4D075AA83
4D075AA84
4D075AA85
4D075AE05
4D075BB23X
4D075BB24X
4D075BB25Z
4D075BB26Z
4D075BB38Z
4D075BB57X
4D075BB65X
4D075BB79X
4D075BB92Y
4D075BB93Z
4D075BB95Z
4D075CA02
4D075CA34
4D075CA36
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB02
4D075CB03
4D075CB06
4D075DA04
4D075DA06
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4D075DB31
4D075DC24
4D075EA05
4D075EA06
4D075EB16
4D075EB43
4D075EB47
4D075EB56
4D075EC01
4D075EC07
4D075EC30
4D075EC37
4D075EC45
4D075EC51
4D075EC54
4F100AA17
4F100AA17A
4F100AH06
4F100AH06B
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK52
4F100AK52B
4F100AR00B
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA07
4F100EH46
4F100EH46B
4F100EH61
4F100EH61B
4F100EJ42
4F100EJ67
4F100EJ67B
4F100EJ86
4F100GB41
4F100JK15
4F100JK15B
4F100JL06
4F100JL06B
4F100JN01
4F100JN01A
(57)【要約】
【課題】本発明は、フッ素系溶剤を使わず環境負荷が小さく、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れた防汚積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】少なくとも基材層と防汚層とを有する防汚積層体の製造方法であって、該製造方法は、特定の防汚処理剤を特定の条件で塗布する防汚層形成工程を含み、防汚層の表面粗さRaを0.1~20nmに、該防汚積層体のヘイズを0.3~10%に調整することを特徴とする製造方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも基材層と防汚層とを有する防汚積層体の製造方法であって、
該製造方法は、下記の防汚層形成工程を含み、防汚層の表面粗さRaを0.1~20nmに、該防汚積層体のヘイズを0.3~10%に調整し、
防汚層形成工程;該基材層上に防汚処理剤を塗布、乾燥・加熱硬化して該防汚層を形成する工程、
基材層温度:0~120℃、
防汚処理剤の塗布方式:スプレーコート、
防汚処理剤の塗布条件
ノズル口径:0.1~10mm
霧化圧:150~700kPa
吐出量:0.5~20ml/min
噴霧距離:10~200mm
ヘッドスピード:50~500mm/sec
ピッチ:0.5~10mm
防汚層の予備乾燥・加熱硬化条件:10~100℃、30~90分、
防汚層の乾燥・加熱硬化条件:120~180℃、10~60分、
防汚層の層厚:50~1000nm、
該防汚処理剤は、加水分解縮合物オリゴマー(A)と、酸あるいは塩基触媒(J)と、溶剤(H)とを含有し、
該加水分解縮合物オリゴマー(A)は、アルコキシシラン系化合物(D)の加水分解縮合物オリゴマーであり、該溶剤(H1)に可溶であり、
該アルコキシシラン系化合物(D)は、テトラアルコキシシラン系化合物(E)およびフッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)を含有し、
該溶剤(H)は、実質的にフッ素を含有せず、
該防汚処理剤中の、該加水分解縮合物オリゴマー(A)の含有率は、1~50質量%であり、
該防汚処理剤中の、酸あるいは塩基触媒(J)の含有率は、0.05~7質量%である、
ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
質量比テトラアルコキシシラン系化合物(E)/フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)は、1/1~1000/1であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記溶剤(H)は、アルコール系溶剤および/またはグリコール系溶剤である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記防汚処理剤を2回以上塗布することによって、前記防汚層を形成する、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
基材層は、ヘイズが0~0.3%の、金属酸化物または樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、請求項1~3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
基材層は、ヘイズが0~0.3%の、金属酸化物または樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、請求項4に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境負荷が小さく、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れた防汚積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン等用のディスプレイには、汚れや光の反射を防止する為に、防汚層や防眩層が一般的に設けられている。
防眩層を形成する防眩処理は、ガラスをフッ酸などでエッチングして凹凸を形成することが多いが、フッ素系廃液が出るなど環境負荷が大きい。
防汚層は、防眩層や反射防止層の上に、フッ素系シランカップリング剤を含有して基材と密着させ且つ撥水性を付与した処理剤をスプレー処理等によって形成することが一般であるが、フッ素系シランカップリング剤は一般的な溶剤と相溶しにくいため、フッ素系溶剤で希釈して用いることが必要な為に、環境負荷が大きく、また非常に高価である(特許文献1~4)。
防眩処理にはスプレー塗布で凹凸形成するもあり、その上に反射防止層や防汚層が形成されることが多い(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3449070号公報
【特許文献2】特許5655215号公報
【特許文献3】特許3876961号公報
【特許文献4】WO2006-046643
【特許文献5】特開2018-097379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フッ酸やフッ素系溶剤を使わず環境負荷が小さく、製造適性に優れ、簡易な層構成でありながら、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れた防汚積層体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、種々検討の結果、特定の防汚処理剤を特定条件のスプレーコートすることによって防汚層を形成して、少なくとも基材層と防汚層とを有する防汚積層体を作製する製造方法が、上記の課題を達成することを見出した。
すなわち、本発明は、以下の点を特徴とする。
1.少なくとも基材層と防汚層とを有する防汚積層体の製造方法であって、
該製造方法は、下記の防汚層形成工程を含み、防汚層の表面粗さRaを0.1~20nmに、該防汚積層体のヘイズを0.3~10%に調整し、
防汚層形成工程;該基材層上に防汚処理剤を塗布、乾燥・加熱硬化して該防汚層を形成する工程、
基材層温度:0~120℃、
防汚処理剤の塗布方式:スプレーコート、
防汚処理剤の塗布条件
ノズル口径:0.1~10mm
霧化圧:150~700kPa
吐出量:0.5~20ml/min
噴霧距離:10~200mm
ヘッドスピード:50~500mm/sec
ピッチ:0.5~10mm
防汚層の予備乾燥・加熱硬化条件:10~100℃、30~90分、
防汚層の乾燥・加熱硬化条件:120~180℃、10~60分、
防汚層の層厚:50~1000nm、
該防汚処理剤は、加水分解縮合物オリゴマー(A)と、酸あるいは塩基触媒(J)と、溶剤(H)とを含有し、
該加水分解縮合物オリゴマー(A)は、アルコキシシラン系化合物(D)の加水分解縮合物オリゴマーであり、該溶剤(H1)に可溶であり、
該アルコキシシラン系化合物(D)は、テトラアルコキシシラン系化合物(E)およびフッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)を含有し、
該溶剤(H)は、実質的にフッ素を含有せず、
該防汚処理剤中の、該加水分解縮合物オリゴマー(A)の含有率は、1~50質量%であり、
該防汚処理剤中の、酸あるいは塩基触媒(J)の含有率は、0.05~7質量%である、
ことを特徴とする製造方法。
2.質量比テトラアルコキシシラン系化合物(E)/フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)は、1/1~1000/1であることを特徴とする、上記1に記載の製造方法。
3.前記溶剤(H)は、アルコール系溶剤および/またはグリコール系溶剤である、上記1または2に記載の製造方法。
4.前記防汚処理剤を2回以上塗布することによって、前記防汚層を形成する、上記1~3の何れかに記載の製造方法。
5.基材層は、ヘイズが0~0.3%の、金属酸化物または樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、上記1~3の何れかに記載の製造方法。
6.基材層は、ヘイズが0~0.3%の、金属酸化物または樹脂フィルムからなる層であることを特徴とする、上記4に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法は、簡易な層構成でありながら、製造適性に優れ、透明性、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れた防汚積層体を、フッ素系溶剤やフッ酸を使わず環境負荷が小さく、製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の防汚積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.防汚積層体の製造方法
本発明の製造方法は、少なくとも基材層と防汚層とを有する防汚積層体の製造方法であり、防汚層形成工程を含む製造方法である。
本発明の製造方法によって、防汚層の層厚が50~1000nmに、防汚層の表面粗さRaが0.1~20nmに、防汚積層体のヘイズが0.3~10%に調整された防汚積層体を得ることができる。
防汚層形成工程は、基材層上に防汚処理剤を塗布、乾燥・加熱硬化して防汚層を形成する工程である。
【0009】
本発明の製造方法において、防汚層の形成は、防汚処理剤を1回のみ塗布する単層塗布で行われてもよく、防汚処理剤を2回以上塗布する多重塗布で行われてもよい。
防汚層を多重塗布で形成することによって、防汚積層体の防眩性が向上する。
多重塗布の各塗布によって形成される膜厚に特に制限は無く、2回以上の多重塗布によって、最終的に上記の厚さになればよい。
【0010】
多重塗布の場合、同一の防汚処理剤を多重塗布することが好ましい。
また、多重塗布の各塗布間に乾燥工程や加熱硬化工程が有ってもよく、無くてもよい。
各塗布は、同一ノズルで行うことが好ましい。
多重塗布を、同一防汚処理剤、同一ノズルで、機械設定条件のみを変更して行い、各塗布間の乾燥を行わないことで、液交換、ノズル交換、乾燥による原材料や時間のロスが削減され、生産性が向上する。
【0011】
1-2.防汚層を単層塗布で形成する場合
防汚処理剤が単層塗布される場合の基材層の温度は、0~120℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。上記範囲よりもヘイズが低下し易くなり、上記範囲よりも高いと接触角が低下し易くなる。
【0012】
防汚処理剤の塗布方式は、スプレーコート、スピンコート、ロールコートが好ましく、スプレーコートが表面粗さRaを調製し易いという点で、より好ましい。
塗布条件の調節で表面粗さRaを調節することによって防眩性を高めることができるため、基材層へのフッ酸を用いたエッチングを行う必要が無い。
スプレーコートによる防汚処理剤の塗布条件としては、ノズル口径、霧化圧、吐出量、噴霧距離、ヘッドスピード、ピッチ等が挙げられる。
【0013】
ノズル口径は、0.1~10mmが好ましく、0.1~2.0mmがより好ましい。上記範囲よりも小さいと吐出安定性が低下し、上記範囲よりも大きいと吐出安定性が低下する。
【0014】
霧化圧は、150~700kPaが好ましく、400~600kPaがより好ましい。上記範囲よりも低いとぎらつきが発生し易くなり、上記範囲よりも高いと吐出安定性が低下する。
【0015】
吐出量は、0.5~20ml/minが好ましく、0.5~5ml/minがより好ましい。上記範囲よりも少ないと吐出安定性が低下し、上記範囲よりも多いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0016】
噴霧距離は、10~200mmが好ましく、40~120mmがより好ましい。上記範囲よりも近いと塗装ムラが発生し易くなり、上記範囲よりも遠いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0017】
ヘッドスピードは、50~500mm/secが好ましく、100~400mm/secがより好ましい。上記範囲よりも遅いと生産性が低下し、上記範囲よりも速いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0018】
ピッチは、0.5~10mmが好ましく、1.0~5.0mmがより好ましい。上記範囲よりも小さいと生産性が低下し、上記範囲よりも大きいと塗装ムラが発生し易くなる。
【0019】
塗布された防汚層は、低温で予備乾燥・加熱硬化され、次いで高温で本乾燥・加熱硬化される。
予備乾燥・加熱硬化条件は、10~100℃で30~90分が好ましく、15~50℃で30~60分がより好ましい。上記範囲よりも低温だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも高温だと耐久性が低下し易くなる。また、上記範囲よりも短時間だと耐久性が低下しし易くなり、上記範囲よりも長時間だと硬度が低下し易くなる。
本乾燥・加熱硬化条件は、100~200℃で10~60分が好ましく、120~180℃で20~40分がより好ましい。上記範囲よりも低温だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも高温だと接触角が低下し易くなる。また、上記範囲よりも短時間だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも長時間だと接触角が低下し易くなる。
【0020】
1-2.防汚層を多重塗布で形成する場合
防汚処理剤が多重塗布される場合の基材層の温度は、0~120℃が好ましく、20~100℃がより好ましい。上記範囲よりもヘイズが低下し易くなり、上記範囲よりも高いと接触角が低下し易くなる。
【0021】
防汚処理剤が多重塗布される場合の塗布方式は、スプレーコート、スピンコート、ロールコートが好ましく、スプレーコートが表面粗さRaを調製し易いという点で、より好ましい。
スプレーコートによる防汚処理剤の多重塗布条件としては、ノズル口径、霧化圧、吐出量、噴霧距離、ヘッドスピード、ピッチ等が挙げられる。
【0022】
ノズル口径は、0.1~10mmが好ましく、0.1~2.0mmがより好ましい。上記範囲よりも小さいと吐出安定性が低下し、上記範囲よりも大きいと吐出安定性が低下する。
【0023】
霧化圧は、150~700kPaが好ましく、400~600kPaがより好ましい。上記範囲よりも低いとぎらつきが発生し易くなり、上記範囲よりも高いと吐出安定性が低下する。
【0024】
吐出量は、0.5~20ml/minが好ましく、0.5~5ml/minがより好ましい。上記範囲よりも少ないと吐出安定性が低下し、上記範囲よりも多いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0025】
噴霧距離は、10~200mmが好ましく、40~120mmがより好ましい。上記範囲よりも近いと塗装ムラが発生し易くなり、上記範囲よりも遠いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0026】
ヘッドスピードは、50~500mm/secが好ましく、100~400mm/secがより好ましい。上記範囲よりも遅いと生産性が低下し、上記範囲よりも速いと塗装ムラが発生し易くなる。
【0027】
ピッチは、0.5~10mmが好ましく、1.0~5.0mmがより好ましい。上記範囲よりも小さいと生産性が低下し、上記範囲よりも大きいと塗装ムラが発生し易くなる。
【0028】
塗布された防汚層は、低温で予備乾燥・加熱硬化され、次いで高温で本乾燥・加熱硬化される。
予備乾燥・加熱硬化条件は、10~100℃で30~90分が好ましく、15~50℃で30~60分がより好ましい。上記範囲よりも低温だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも高温だと耐久性が低下し易くなる。また、上記範囲よりも短時間だと耐久性が低下しし易くなり、上記範囲よりも長時間だと硬度が低下し易くなる。
本乾燥・加熱硬化条件は、100~200℃で10~60分が好ましく、120~180℃で20~40分がより好ましい。上記範囲よりも低温だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも高温だと接触角が低下し易くなる。また、上記範囲よりも短時間だと硬度が低下し易くなり、上記範囲よりも長時間だと接触角が低下し易くなる。
【0029】
2.防汚積層体
本発明の製造方法によって作製される防汚積層体は、少なくとも、基材層と、防汚層とを有する積層体であり、簡易な層構成でありながら、透明性、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れる。
本発明の防汚積層体が優れた透明性を有するために、防汚積層体のヘイズは0.1~10%が好ましく、0.3~5.0%がより好ましい。
【0030】
2-1.基材層
基材層は、本発明の防汚処理剤の被塗装物である。
基材層は、金属酸化物または樹脂からなることが好ましく、防汚積層体が透明性を有するためには、透明性の高い金属酸化物または樹脂からなることがより好ましく、ソーダガラス等の透明な金属酸化物が更に好ましい。
【0031】
基材層に含有される金属酸化物としては、セラミック、ガラス等が挙げられる。
ガラスを用いた基材の例として、ガラス板やガラスクロス等を用いることもできる。
基材層に含有される樹脂の具体例としては、PMMA、PC、PET等が挙げられる。これらの中でも、PMMAが好ましい。
【0032】
基材層の厚さは、特に制限は無いが、0.1~5.0mmが好ましい。
基材層の表面は、防眩処理(AG処理)されていてもよく、防眩処理によって、表面粗さRaが0.5~20nmであることが好ましい。
防汚積層体のヘイズを0.1~10%にする為には、基材層のヘイズは、0.1~10%であることが好ましい。
【0033】
2-2.防汚層
本発明における防汚層は、本発明の防汚処理剤から形成される層であり、加水分解縮合物オリゴマー(A)の硬化物からなることが好ましい。
【0034】
防汚層の厚さは50~1000nmが好ましく、70~800nmがより好ましい。上記範囲よりも薄いと防汚層を設けた効果が出難くなり、上記範囲よりも厚いとクラックが生じやすい。
防汚層の表面粗さRaは、0.1~20nmが好ましく、0.5~1.5nmがより好ましい。上記範囲よりも小さいとRaを得ることは困難であり、上記範囲よりも大きいとヘイズが増加しやすい。
【0035】
また、防汚層は、防汚処理剤を2回以上塗布することによって形成された多重塗布層であることが好ましい。防汚層が多重塗布層であることによって、防眩性が向上する。
防汚層は、同一の防汚処理剤が多重塗布された層であることが好ましい。また、塗布工程と塗布工程との間に乾燥工程や加熱硬化工程が有ってもよく、無くてもよい。
防汚層の1回の塗布によって形成される膜厚に特に制限は無く、2回以上の多重塗布によって、最終的に上記の厚さになればよい。
【0036】
3.防汚処理剤
本発明の防汚処理剤は、本発明の防汚積層体中で基材層上に防汚層を形成する為の処理剤である。
本発明の防汚処理剤は、加水分解縮合物オリゴマー(A)と実質的にフッ素を含有しない溶剤(H)とを含有する。さらに、加水分解縮合反応を促進する為に、酸あるいは塩基触媒(J1)を含有してもよい。
また、防汚処理剤は、必要に応じて、防汚積層体中の特性に悪影響を与えない範囲で、湿潤剤、粘性材料(増粘剤)、表面調整材料、着色材料(顔料、染料)、帯電防止材料、導電性付与剤、抗菌抗ウイルス材料、中空又は鎖状、多孔質中実シリカ粒子などのフィラー、金属微粒子などを含有してもよい。
防汚処理剤は、保存安定性に優れることが好ましく、例えば、40℃で3ヶ月間静置状態で保管した場合に、外観変化が無く、分子量の増大が0~100%であることが好ましく、0~50%であることがより好ましい。
【0037】
3-1.加水分解縮合物オリゴマー(A)
この加水分解縮合物オリゴマー(A)は、アルコキシシラン系化合物(D)の加水分解縮合物オリゴマーであり、溶剤(H)に可溶である。
防汚処理剤中の加水分解縮合物オリゴマー(A)の含有率は、1~80質量%が好ましく、2~40質量%がより好ましい。
【0038】
3-2.アルコキシシラン系化合物(D)
アルコキシシラン系化合物(D)は、テトラアルコキシシラン系化合物(E)およびフッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)を含有する。
フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)は、他の樹脂や溶剤等の有機成分と相溶しにくいが、テトラアルコキシシラン系化合物(E)と加水分解縮合物オリゴマー化することによって、他の樹脂や溶剤等の有機成分と相溶することが容易になる。
【0039】
質量比テトラアルコキシシラン系化合物(E)/フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)は、1/1~1000/1が好ましく、4/1~50/1がより好ましい。上記範囲よりも小さいと硬度が劣り易く、上記範囲よりも大きいと水接触角が劣り易い。
【0040】
3-3.テトラアルコキシシラン系化合物(E)
テトラアルコキシシラン系化合物(E)は、アルコキシ基を4つ有するシラン化合物である。
アルコキシ基は加水分解反応および脱水縮合反応を進行させて架橋構造を形成する。
【0041】
テトラアルコキシシラン系化合物(E)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシランまたはそれらのオリゴマー等が挙げられる。これらの中でも、テトラエトキシシランまたはそのオリゴマーが好ましい。
本発明においては、テトラアルコキシシラン系化合物(E)として、上記化合物を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
3-4.フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)
フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)は、有機成分と反応し得る官能基と、フッ素基とアルコキシ基とを有するシラン化合物である。また、有機成分と反応し得る官能基は、屈折率を調節する効果を有する。
【0043】
フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)の具体例としては、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、ジメトキシ(メチル)(3,3,3-トリフルオロプロピル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロヘキシル)シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-n-オクチル)シラン、トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-n-オクチル)シラン、トリエトキシ[5,5,6,6,7,7,7-ヘプタフルオロ-4,4-ビス(トリフルオロメチル)ヘプチル]シラン、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン、トリエトキシ-1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシルシラン等が挙げられる。これらの中でも、トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-n-オクチル)シランが好ましい。
本発明においては、フッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)として、上記化合物を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
3-5.酸あるいは塩基触媒(J)
酸あるいは塩基触媒(J)は、アルコキシシラン系化合物(D)、加水分解縮合物オリゴマー(A)の加水分解反応および脱水縮合反応を促進する成分である。
防汚処理剤中の酸あるいは塩基触媒(J)の含有率は、0.05~10質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。上記範囲よりも少ないと促進効果が不十分になり易く、上記範囲よりも多いと、均一な反応進行が困難になり易い。
【0045】
酸触媒の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、10-カンファ-スルホン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリクロル酢酸、乳酸等が挙げられる。
また塩基触媒の具体例としては、トリエチレンアミン、ジメチルアミノエタノール、アンモニア水等が挙げられる。
これらの中でも、硝酸が好ましい。
本発明においては、酸あるいは塩基触媒(J)として、上記化合物を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0046】
3-6.溶剤(H)
溶剤(H1)は、加水分解縮合物オリゴマー(A)を溶解し得るものであれば特に制限は無いが、アルコール系溶剤および/またはグリコール系溶剤を含有することが好ましい。また、非フッ素系の溶剤であることが好ましい。
【0047】
溶剤(H)は、ア加水分解縮合物オリゴマー(A)に対する溶剤としてだけでなく、塗布時、特にスプレー塗布時に凹凸形状を有する塗膜を形成させるために重要な役割を担う。
【0048】
防汚処理剤は、基材層に塗布される際に伴われる溶剤(H)の蒸発によって、凹凸形状を形成する。
したがって、溶剤(H)の蒸発が速い場合には、成膜状態が悪くなり、凹凸の大きい塗膜が形成される。
逆に、溶剤(H)の蒸発が遅い場合には、成膜状態は良いが、凹凸が小さくなりすぎて、十分な防眩性が発現しなくなる。
また、本硬化の際に、残留していた溶剤(H)が蒸発することによって、防汚層が大きく収縮してクラックが生じることがある。
【0049】
蒸発が遅い溶剤を用いる場合には、沸点の低い溶剤を多く配合するか、スプレーの吐出量、塗装速度、霧化圧などを低くすることが効果的である。
また、蒸発を速める為には、基材を100℃程度に予熱して用いてもよい。
【0050】
アルコール系の溶剤の具体例としては、メタノール(炭素数1、沸点65℃)、エタノール(炭素数2、沸点78℃)、ノルマルプロパノール(炭素数3、沸点97℃)、イソプロピルアルコール(炭素数3、沸点82℃)、ターシャリーブタノール(炭素数4、沸点82℃)、ノルマルブタノール(炭素数4、沸点118℃)、イソブタノール(炭素数4、沸点108℃)、第二ブタノール(炭素数4、沸点100℃)、1-ペンタノール(炭素数5、沸点138℃)、2-メチル-1-ブタノール(炭素数5、沸点128℃)、3-メチル-1-ブタノール(炭素数5、沸点131℃)、2-ペンタノール(炭素数5、沸点119℃)、1-エチル-1-プロパノール(炭素数5、沸点116℃)、2-メチル-2-ブタノール(炭素数5、沸点102℃)等が挙げられる。これらの中でも、エタノールが好ましい。
【0051】
グリコール系の溶剤の具体例としては、アルキレングリコール類、アルキレングリコールエーテル類がある。具体的なアルキレングリコール類としては、エチレングリコール(炭素数2、沸点197℃)、プロピレングリコール(炭素数3、沸点189℃)、ブチレングリコール(炭素数4、沸点207℃)、へキシレングリコール(炭素数6、沸点197℃)、オクチレングリコール(炭素数8、沸点175℃)等が挙げられる。
【0052】
アルキレングリコールエーテル類の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル(炭素数3、沸点124℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(炭素数4、沸点135℃)、エチレングリコールジエチルエーテル(炭素数6、沸点121℃)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(炭素数5、沸点141℃)、エチレングリコールモノブチルエーテル(炭素数6、沸点171℃)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(炭素数4、沸点120℃)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(炭素数5、沸点132℃)、プロピレングリコールモノノルマルプロピルエーテル(炭素数6、沸点149℃)、プロピレングリコールモノノルマルブチルエーテル(炭素数7、沸点171℃)が挙げられる。これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
本発明においては、溶剤(H)として、上記化合物を1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
3-7.防汚処理剤の製造方法
本発明の防汚処理剤は、例えば、下記の方法で調製することができる。
1)シラン化合物溶液の調製
アルコキシシラン系化合物(D)とフッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)とを溶剤(H)に溶解させて、シラン化合物溶液を得る。
2)触媒溶液の調製
また、酸あるいは塩基触媒(J)を、溶剤(H)に滴下して混合し、触媒溶液を得る。
3)防汚処理剤の調製
そして、上記で得たシラン化合物溶液に、上記で得た触媒溶液を、滴下しながら攪拌混合して、加水分解縮合物オリゴマー(A)を生成する。混合液の液温は、加水分解縮合反応を抑制するために10~60℃の間に調整することが好ましい。
滴下終了後、20~40℃の恒温条件で静置保管して、加水分解縮合反応を所望の反応率まで進行させる。
得られた反応液を、所望の塗布方法や塗布条件に応じた濃度や粘度になるように溶剤(H)で希釈して、防汚処理剤を得る。防汚処理剤は、例えば、櫛目0.5~2μmのフィルターで濾過してもよい。
【実施例0054】
<原材料>
・テトラアルコキシシラン系化合物1:多摩化学工業株式会社製シリケート40。エチルポリシリケートとテトラエトキシシランの混合物。エチルポリシリケート60~70質量%。
・フッ素含有シランカップリング剤系化合物1:トリエトキシ(1H,1H,2H,2H-ペルフルオロ-n-オクチル)シラン。
・フッ素含有シランカップリング剤系化合物2:トリメトキシ(1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル)シラン。
・90%乳酸水溶液:富士フイルム和光純薬(株)社製90質量%L-乳酸水溶液。
・PGM1:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・含フッ素コーティング材1:カツラヤマテクノロジー社製NB06-04。フッ素系樹脂及びフッ素系溶剤含有。
・脱脂ガラス1:アルカリ性洗剤で脱脂したソーダガラス板。50mm×100mm×2m厚。市販のソーダガラス板をガラス用洗剤液(セミクリーンLGL、横浜樹脂工業(株))を用いて洗浄した後に水洗を3回行い、エアブローにて表面の水滴を除去し、50℃の乾燥機で5分以上乾燥させて得た。
【0055】
[実施例1]
(防汚処理剤の調製)
下記を混合して、シラン化合物/エタノール溶液を得た。
テトラアルコキシシラン系化合物1 7.7質量部
フッ素含有シランカップリング剤系化合物1 0.3質量部
エタノール 30質量部
次に、下記を混合して、硝酸溶液を得た。
10%硝酸水溶液 1.0質量部
水 3.0質量部
エタノール 30質量部
そして、上記で得たシラン化合物/エタノール溶液に、上記で得た硝酸溶液を滴下しながら、40℃で、1.5時間攪拌混合した。
次いで、下記をさらに添加し、攪拌混合して、防汚処理剤を得た。
PGM1 28.0質量部
【0056】
(防汚層の形成)
20℃の脱脂ガラス1の片面に、株式会社アピロス製精密塗装機を用いて、上記で得た防汚処理剤を下記条件でスプレーコートし、予備乾燥20℃60分を行った後に、150℃で30分乾燥して、200nm厚の防汚層を形成した。
ノズル口径:0.4mm
霧化圧:600kPa
吐出量:0.5ml/min
噴霧距離:100mm
ヘッドスピード:200mm/sec
ピッチ:3mm
【0057】
[実施例2~5、比較例1~5]
表1、表2の記載に従って、実施例1と同様に操作して、防汚処理剤を調製し、防汚層を形成して、防汚積層体を作製した。
【0058】
[実施例6]
(防汚処理剤の調製)
表1の記載に従って実施例1と同様に操作して、防汚処理剤を調製した。
【0059】
(防汚層の形成1)
20℃の脱脂ガラス1の片面に、株式会社アピロス製精密塗装機を用いて、上記で得た防汚処理剤を下記条件でスプレーコートし、加熱・乾燥処理は行わなかった。
ノズル口径:0.4mm
霧化圧:600kPa
吐出量:0.5ml/min
噴霧距離:100mm
ヘッドスピード:200mm/sec
ピッチ:3mm
【0060】
(防汚層の形成2)
上記でスプレーコートして形成した層の上に、続けて同防汚処理剤を下記条件でスプレーコートし、予備乾燥20℃60分を行った後に、150℃で30分加熱して焼付し、合わせて550nm厚の防汚層を形成した。
ノズル口径:0.4mm
霧化圧:600kPa
吐出量:1.0ml/min
噴霧距離:40mm
ヘッドスピード:200mm/sec
ピッチ:3mm
【0061】
<評価項目>
[防汚積層体の外観]
作製した防汚積層体の外観を、目視によって、異常の有無を観察した。表中の記号の意味は下記の通り。
〇:異常無し
×:異常有り
【0062】
[表面硬度]
作製した防汚積層体の、防汚層側の表面の硬度を、JIS K5600 塗料一般試験方法の「4.4 引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠して測定した。6H以上を合格とした。
【0063】
[防汚積層体のヘイズ]
作製した防汚積層体のヘイズ値を、ヘーズメーターNDH7000(日本電色工業株式会社製)を用いて、JIS K7136:2000に準拠して測定した。10%以下を合格とした。
【0064】
[表面粗さRa]
作製した防汚積層体の防汚層側面の表面粗さRaを、レーザー顕微鏡LEXT OLS4100(オリンパス株式会社社製)を用いて測定した。20nm以下を合格とした。
【0065】
[接触角]
作製した防汚積層体の防汚層側の表面の、水に対する接触角を、PCA-11(協和界面科学株式会社製)を用いて、JIS R3257に準拠して測定した。
そして、防汚層に下記の摩耗処理を行った後に、同様に水に対する接触角を測定した。
100度以上を合格とした。
摩耗材:スチールウール#0000
荷重:10gf
荷重面積:2.25cm
移動幅:40mm
速さ:100mm/sec
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
<結果まとめ>
全実施例の防汚積層体は、優れた表面硬度、低ヘイズ、高接触角のバランスを示した。
例えば、実施例6は、実施例1と比較して、ヘイズが上昇し、防眩性が向上した。
これに対して、比較例の積層体は、表面硬度、低ヘイズ、高接触角の何れかが劣った結果を示した。
例えば、防汚処理剤反応液にテトラアルコキシシラン系化合物(E)を含有していない比較例1は、低すぎる表面硬度を示した。
防汚処理剤反応液にフッ素含有シランカップリング剤系化合物(G)を含有していない比較例2は、小さすぎる接触角を示した。
塗布条件が適していない比較例3は、吐出量が少な過ぎた為に、小さすぎるヘイズおよびRaを示した。
防汚処理剤反応液にフッ素系溶剤を含有し、防汚層が薄すぎる比較例4は、小さすぎるヘイズおよびRaを示した。
防汚処理剤反応液の酸あるいは塩基触媒(J)の含有量が少な過ぎる比較例5は、小さすぎる接触角と表面硬度を示した。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の製造方法は、防汚性、防眩性、低反射性、耐傷性、耐摩耗性のバランスに優れた防汚積層体を、フッ素系溶剤やフッ酸を使わずに、環境負荷を小さく、短時間で製造することができ、性能面および環境面の両面において産業上極めて有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 防汚積層体
2 基材層
3 防汚層
図1