(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158207
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】表示装置、表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10K 50/17 20230101AFI20241031BHJP
H10K 50/16 20230101ALI20241031BHJP
H10K 50/15 20230101ALI20241031BHJP
H10K 59/122 20230101ALI20241031BHJP
H10K 71/00 20230101ALI20241031BHJP
H10K 85/60 20230101ALI20241031BHJP
H10K 59/35 20230101ALI20241031BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241031BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241031BHJP
H10K 101/40 20230101ALN20241031BHJP
【FI】
H10K50/17
H10K50/16
H10K50/15
H10K59/122
H10K71/00
H10K85/60
H10K59/35
G09F9/30 349Z
G09F9/00 338
G09F9/30 365
H10K101:40
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073201
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 亜沙美
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC06
3K107CC14
3K107CC33
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3K107DD78
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3K107FF04
3K107FF14
3K107FF15
3K107GG28
5C094AA08
5C094AA22
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094CA24
5C094DA13
5C094EA04
5C094EA07
5C094FA01
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5C094JA01
5C094JA03
5C094JA08
5G435AA04
5G435AA16
5G435BB05
5G435CC09
5G435CC12
5G435KK05
(57)【要約】
【課題】消費電力を抑制しつつ、意図しない発光が生じることを抑制する
【解決手段】表示装置2は、画素電極46Gと、画素電極46Gの上に設けられ、サブ発光領域SPGとメイン発光領域MPGとを区画するバンク48Gと、画素電極46Gの上に設けられ、サブ発光領域SPGを構成するサブホール注入層80SGと、画素電極46Gの上に設けられ、メイン発光領域MPGを構成するメインホール注入層80MGと、サブホール注入層80SG及びメインホール注入層80MGの上に設けられるホール輸送層102と、ホール輸送層102の上に設けられる発光層106Gと、発光層106Gの上に設けられる電子輸送層112と、電子輸送層112の上に設けられる対向電極50と、を含み、メインホール注入層80MGに含まれるドーパントの濃度は、サブホール注入層80SGに含まれるドーパントの濃度より低い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画素電極と、
前記第1の画素電極の上に設けられ、第1のサブ発光領域と第1のメイン発光領域とを区画する第1のバンクと、
前記第1のサブ発光領域において前記第1の画素電極の上に設けられる第1のサブホール注入層と、
前記第1のメイン発光領域において前記第1の画素電極の上に設けられる第1のメインホール注入層と、
前記第1のサブホール注入層及び前記第1のメインホール注入層の上に設けられるホール輸送層と、
前記ホール輸送層の上に設けられる第1の発光層と、
前記第1の発光層の上に設けられる電子輸送層と、
前記電子輸送層の上に設けられる対向電極と、
を含み、
前記第1のメインホール注入層に含まれるドーパントの濃度は、前記第1のサブホール注入層に含まれるドーパントの濃度より低い、
表示装置。
【請求項2】
前記第1のメインホール注入層に含まれるドーパントの総量は、前記第1のサブホール注入層に含まれるドーパントの総量より多い、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1のメインホール注入層の体積は、前記第1のサブホール注入層の体積より大きい、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第1のメイン発光領域の発光面積は、前記第1のサブ発光領域の発光面積より大きい、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1のメインホール注入層の平均膜厚は、前記第1のサブホール注入層の平均膜厚より厚い、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項6】
前記第1のメイン発光領域における発光開始電圧は、前記第1のサブ発光領域における発光開始電圧よりも高い、
請求項2に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1の画素電極と隣り合う第2の画素電極と、
前記第2の画素電極の上に設けられ、第2のサブ発光領域と第2のメイン発光領域とを区画する第2のバンクと、
前記第2のサブ発光領域において前記第2の画素電極の上に設けられる第2のサブホール注入層と、
前記第2のメイン発光領域において前記第2の画素電極の上に設けられる第2のメインホール注入層と、
前記ホール輸送層の上に設けられる第2の発光層と、
を含み、
前記ホール輸送層は、前記第2のサブホール注入層及び前記第2のメインホール注入層の上に設けられ、
前記電子輸送層は、前記第2の発光層の上に設けられ、
前記第2のメインホール注入層の端部は、前記第1のサブホール注入層の端部を覆うように設けられている、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の画素電極と隣り合う第3の画素電極と、
前記第3の画素電極の上に設けられ、第3のサブ発光領域と第3のメイン発光領域とを区画する第3のバンクと、
前記第3のサブ発光領域において前記第3の画素電極の上に設けられる第3のサブホール注入層と、
前記第3のメイン発光領域において前記第3の画素電極の上に設けられる第3のメインホール注入層と、
前記ホール輸送層上に設けられる第3の発光層と、
を含み、
前記ホール輸送層は、前記第3のサブホール注入層及び前記第3のメインホール注入層の上に設けられ、
前記電子輸送層は、前記第3の発光層の上に設けられ、
前記第1のメイン発光領域と、前記第3のサブ発光領域とが隣り合って配置されており、
前記第1のサブ発光領域と、前記第2のメイン発光領域とが隣り合って配置されている、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1のメイン発光領域及び前記第1のサブ発光領域は赤色画素又は緑色画素のいずれかの一部であり、
前記第2のメイン発光領域及び前記第2のサブ発光領域は青色画素の一部である、
請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記電子輸送層と前記対向電極との間に、更に電子注入層を有する、
請求項1に記載の表示装置。
【請求項11】
第1の画素電極と、当該第1の画素電極に隣り合う第2の画素電極とを設ける工程と、
前記第1の画素電極と前記第2の画素電極との間にバンクを設ける工程と、
前記第1の画素電極の上に、第1のサブホール注入層と、当該第1のサブホール注入層よりも体積の大きい第1のメインホール注入層と、を設ける工程と、
前記第2の画素電極の上に、第2のサブホール注入層と、当該第2のサブホール注入層よりも体積の大きい第2のメインホール注入層と、を設ける工程と、
を含み、
前記第2のメインホール注入層は、前記第1のサブホール注入層が設けられる後に設けられ、前記バンクの上において、前記第1のサブホール注入層の端部を覆っている、
表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機エレクトロルミネッセンス材料(有機EL材料)を表示部の発光素子(有機EL素子)に用いた有機EL表示装置(Organic Electroluminescence Display)が知られている。有機EL表示装置の発光素子においては、陽極(アノード)から正孔(ホール)を注入する際に注入された正孔の一部が意図しない方向にリークし、光の混色が生じてしまう場合がある。特許文献1では、電荷注入・輸送層を切断又は高抵抗化することでこの問題点を解消しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、赤色発光、緑色発光、及び青色発光を行う表示装置においては、赤色発光及び緑色発光に比較して青色発光の駆動電圧が高い。そのため、青色発光を行った際に、正孔のリークにより意図せず赤色発光及び緑色発光が行われる場合がある。その結果、光の混色が生じてしまう。このような意図しない発光を抑制するため赤色発光及び緑色発光の駆動電圧を高くするとよいが、消費電力が大きくなってしまう。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、消費電力を抑制しつつ、意図しない発光が生じることを抑制する表示装置及び表示装置の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の表示装置の一態様は、第1の画素電極と、前記第1の画素電極の上に設けられ、第1のサブ発光領域と第1のメイン発光領域とを区画する第1のバンクと、前記第1の画素電極の上に設けられ、前記第1のサブ発光領域を構成する第1のサブホール注入層と、前記第1の画素電極の上に設けられ、前記第1のメイン発光領域を構成する第1のメインホール注入層と、前記第1のサブホール注入層及び前記第1のメインホール注入層の上に設けられるホール輸送層と、前記ホール輸送層の上に設けられる第1の発光層と、前記第1の発光層の上に設けられる電子輸送層と、前記電子輸送層の上に設けられる対向電極と、を含み、前記第1のメインホール注入層に含まれるドーパントの濃度は、前記第1のサブホール注入層に含まれるドーパントの濃度より低い、表示装置。
【0007】
本発明の表示装置の製造方法の一態様は、第1の画素電極と、当該第1の画素電極に隣り合う第2の画素電極とを設ける工程と、前記第1の画素電極と前記第2の画素電極との間にバンクを設ける工程と、前記第1の画素電極の上に、第1のサブホール注入層と、当該第1のサブホール注入層よりも体積の大きい第1のメインホール注入層と、を設ける工程と、前記第2の画素電極の上に、第2のサブホール注入層と、当該第2のサブホール注入層よりも体積の大きい第2のメインホール注入層と、を設ける工程と、を含み、前記第2のメインホール注入層は、前記第1のサブホール注入層が設けられる後に設けられ、前記バンクの上において、前記第1のサブホール注入層の端部を覆っている、表示装置の製造方法。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。
【
図2】本実施形態に係る表示装置の表示パネルの一例を示す模式的な平面図である。
【
図3】発光部及びその周辺を拡大して模式的に示す模式断面図である。
【
図4】
図2及び
図5に示すIV-IV切断線で切り取った切断面を示す断面図である。
【
図5】本実施形態の発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【
図6】第1の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【
図7】第2の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【
図8】第3の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)について、図面を参照しつつ説明する。なお、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
さらに、本明細書において、ある構成物と他の構成物との位置関係を規定する際、「上に」「下に」とは、ある構成物の直上又は直下に位置する場合のみでなく、特に断りの無い限りは、間にさらに他の構成物を介在する場合を含むものとする。
【0011】
[全体構成の概要]
図1は、本実施形態に係る表示装置の構成を示す模式図である。本実施形態に係る表示装置2は、基材上に薄膜トランジスタ(TFT)や有機発光ダイオード(OLED)などの積層構造が形成されて構成される有機EL表示装置である。表示装置2は、画像を表示する画素アレイ部4と、画素アレイ部4を駆動する駆動部とを有している。
【0012】
画素アレイ部4には、OLED6及び画素回路8をそれぞれ有する画素がマトリクス状に配置される。画素回路8は複数のTFT10,12やキャパシタ14で構成される。
【0013】
上記駆動部は、走査線駆動回路20、映像線駆動回路22、駆動電源回路24及び制御装置26を含み、画素回路8を駆動し、OLED6の発光を制御する。
【0014】
走査線駆動回路20は、画素の水平方向の並び(画素行)毎に設けられた走査信号線28に接続されている。走査線駆動回路20は、制御装置26から入力されるタイミング信号に応じて走査信号線28を順番に選択し、選択した走査信号線28に、スイッチングTFT10をオンする電圧を印加する。
【0015】
映像線駆動回路22は、画素の垂直方向の並び(画素列)毎に設けられた映像信号線30に接続されている。映像線駆動回路22は、制御装置26から映像信号を入力され、走査線駆動回路20による走査信号線28の選択に合わせて、選択された画素行の映像信号に応じた電圧を各映像信号線30に出力する。当該電圧は、選択された画素行にてスイッチングTFT10を介してキャパシタ14に書き込まれる。駆動TFT12は、書き込まれた電圧に応じた電流をOLED6に供給する。これにより、選択された走査信号線28に対応する画素のOLED6が発光する。
【0016】
駆動電源回路24は、画素列毎に設けられた駆動電源線32に接続され、駆動電源線32及び選択された画素行の駆動TFT12を介してOLED6に電流を供給する。なお、駆動電源線32は、
図1では画素列毎に設けられているが、画素行毎に設けられていても良く、さらにその両方に設けられていても良い。
【0017】
ここで、OLED6は、後述の画素電極46及び共通電極50を含む。OLED6の画素電極46は、駆動TFT12に接続される。一方、各OLED6の共通電極50は、全画素のOLED6に共通の電極で構成される。画素電極46を陽極(アノード)として構成する場合は、高電位が入力され、共通電極50は陰極(カソード)となって低電位が入力される。画素電極46を陰極(カソード)として構成する場合は低電位が入力され、共通電極50は陽極(アノード)となって高電位が入力される。
【0018】
図2は、本実施形態に係る表示装置の表示パネルの一例を示す模式的な平面図である。表示パネル40の表示領域60に、
図1に示した画素アレイ部4が設けられる。また前述のように、画素アレイ部4にはホール注入層80及びOLED6(発光部100)が配列される。共通電極50は、各画素に共通に形成されて表示領域60全体を覆う。表示領域60の周囲には額縁領域62が設けられ、前述した走査線駆動回路20、映像線駆動回路22、駆動電源回路24及び制御装置26等が設けられる。
【0019】
矩形である表示パネル40の額縁領域62の一辺には、端子領域64が設けられる。端子領域64には表示領域60へ繋がる配線が配置される。さらに、端子領域64には、駆動部を構成するドライバIC70が搭載されたり、フレキシブルプリント基板(FPC)72が接続されたりする。FPC72は、制御装置26やその他の回路20,22,24等に接続されたり、その上にICを搭載されたりする。
【0020】
[表示領域における積層構造の概要]
図3は、発光部及びその周辺を拡大して模式的に示す模式断面図である。なお、
図3における各層の厚さについては、実際の厚さを反映するものではない。また、発光部100及びその周辺には図示しない他の層が更に設けられていても構わない。
【0021】
図3に示すように、本実施形態においては、発光部100と、ホール注入層80と、発光部100及びホール注入層80を挟む画素電極46及び共通電極50とによって、発光素子が構成される。発光部100に含まれる発光層106は、有機材料によって形成されており、画素電極46と共通電極50との間を流れる電流によって発光する。
図3に示す例においては、画素電極46は、TFT基板42の上に設けられるパッシベーション膜44の上に設けられている。
【0022】
発光部100は、画素電極46と共通電極50とに挟まれて配置されている。発光部100は、画素電極46側から順に、ホール輸送層102、電子ブロック層104、発光層106、ホールブロック層108、電子輸送層110、電子注入層112が順に積層されて成る。ホール輸送層102は、画素電極46に接して設けられるホール注入層80上に形成されている。なお、本実施形態においては、発光部100とホール注入層80とを分けて説明するが、ホール注入層80は発光部100の一部であってもよい。
【0023】
共通電極50は、表示領域60において全体に広がる一様な膜(いわゆるベタ膜)として形成される。共通電極50は、例えばMgAg等の金属薄膜で形成される。トップエミッション構造を採用した表示装置2に金属薄膜を用いる場合は、光が透過する程度に膜厚を小さくする必要がある。一方、表示装置2がボトムエミッション構造を採用した場合、共通電極50は反射電極として形成される必要がある。ここではトップエミッション構造としているため、共通電極50を、MgAgを発光層106からの出射光が透過する程度の薄膜として形成する。例示した発光部100の形成順序に従うと、画素電極46が陽極(アノード)となり、共通電極50が陰極(カソード)となる。
【0024】
また、表示装置2の表示パネル40は、各画素を区画する隔壁であるバンク48(又はリブとも言う)を含む。バンク48は、互いに隣り合う画素電極46を隔てる絶縁層である。バンク48は、例えば、感光性樹脂(感光性アクリル等)で形成される。また、バンク48の端部は、なだらかなテーパー形状となるのが好ましい。また、詳細については後述するが、本実施形態においては、バンク48は、1つの画素中におけるメイン発光領域とサブ発光領域とを区画するようにも設けられている。
【0025】
なお、TFT基板42が有するTFTが、nチャネルを有する駆動TFTであるとすると、画素電極46は、TFTのソース電極に接続される。画素電極46は、例えば、ITOやIZO等の透明金属酸化物で形成されてもよい。また、画素電極46は、AgやAl等の金属を薄膜で形成することで設けられてもよい。また、TFT基板42には、基材、アンダーコート層、TFT、導電層、ゲート電極、ソース・ドレイン電極及び平坦化膜等が含まれるとよい。但し、これらは従来の構成に準ずるものであることから、詳細な説明については省略する。
【0026】
表示パネル40は、発光部100を封止する封止層、封止層の上に設けられる保護層を更に有してもよい。封止層は、封止により外部からの水分浸入を防止する機能を有する層であるとよい。
【0027】
[光の混色を抑制する構成]
図4は、
図2及び
図5に示すIV-IV切断線で切り取った切断面を示す断面図である。
図5は、本実施形態の発光領域の配列を模式的に示す平面図である。なお、
図4においては、発光部100に含まれる層の一部を省略して図示している。
【0028】
ここで、一般的に、青色画素における発光開始電圧である駆動電圧は、緑色画素及び赤色画素における発光開始電圧である駆動電圧よりも高い。そのため、青色画素を発光させた際に、ホール注入層における正孔(ホール)が隣り合う緑色画素又は赤色画素にリークすることで、意図せず緑色画素や赤色画素における発光が生じてしまう場合がある。その結果、光の混色が生じてしまう場合がある。
【0029】
そこで、本実施形態においては、青色画素を発光させた際に、隣り合う画素が意図せず発光することを抑制するために、各画素においてメイン発光領域とサブ発光領域とを設けると共に、メイン発光領域における駆動電圧をサブ発光領域における駆動電圧よりも高くする構成を採用した。本実施形態において、メイン発光領域はサブ発光領域よりも発光面積が大きい領域である。発光面積とは、平面視における発光領域の面積である。
【0030】
図4、
図5においては、青色画素PB、緑色画素PG(及び赤色画素PR)、青色画素PBがこの順で並んで配置される例を示している。本実施形態においては、各画素に対応するように発光層106が設けられている。具体的には、緑色画素PGに対応するように緑色発光層106Gが設けられており、青色画素PBに対応するように青色発光層106Bが設けられている。
【0031】
本実施形態においては、各画素において、ホール注入層がサブホール注入層とメインホール注入層とを含む。具体的には、
図4に示すように、緑色画素PGにおいて、サブホール注入層80SGと、メインホール注入層80MGとを含み、青色画素PBにおいて、サブホール注入層80SBと、メインホール注入層80MBとを含む。
【0032】
各画素において、メインホール注入層とサブホール注入層は共通の画素電極46に接している。本実施形態においては、平面視においてサブホール注入層80SGと画素電極46Gが接する領域を、サブ発光領域SPGとする。また、平面視においてメインホール注入層80MGと画素電極46Gが接する領域を、メイン発光領域MPGとする。同様に、平面視においてサブホール注入層80SBと画素電極46Bが接する領域を、サブ発光領域SPBとする。また、平面視においてメインホール注入層80MBと画素電極46Bが接する領域を、メイン発光領域MPBとする。
【0033】
各画素において、メイン発光領域とサブ発光領域とはバンク48によって区画されている。例えば、
図4に示すように、緑色画素PGにおいては、メイン発光領域MPGとサブ発光領域SPGとはバンク48Gにより区画されている。
【0034】
図4に示すように、メインホール注入層80MGは端部E11と端部E12を含み、サブホール注入層80SGは端部E13と端部E14を含む。また、メインホール注入層80MBは端部E23とE24を含み、サブホール注入層80SBは端部E21と端部E22を含む。
図4に示すように、メインホール注入層80MGの端部E11がサブホール注入層80SBの端部E21と接触しており、メインホール注入層80MGの端部E12がサブホール注入層80SGの端部E13に接触している。また、サブホール注入層80SGの端部E14がメインホール注入層80MBの端部E24と接触している。また、サブホール注入層80SBの端部E22がメインホール注入層80MBの端部E23と接している。
【0035】
[光の混色を抑制する構成:青色画素におけるサブ発光領域の発光時の混色の抑制]
本実施形態においては、緑色画素PGにおけるメイン発光領域MPGの駆動電圧を比較的高くすることで、リークが生じたとしても意図しない発光が行われるのを抑制する構成を採用した。具体的には、メインホール注入層80MGに含まれるドーパントの濃度をサブホール注入層80SGに含まれるドーパントの濃度よりも低くした。ホール注入層80において、ドーパントは電荷分離により正孔の発生を促進させる役割を担う。そのため、ドーパントの濃度を比較的高くしたサブ発光領域SPGにおける駆動電圧は比較的低くなり、ドーパントの濃度を比較的低くしたメイン発光領域MPGにおける駆動電圧は比較的高くなる。なお、ドーパントを構成するドープ材料としては、酸化モリブデン(MoO3)、酸化レニウム(Re207)、フッ素化テトラシアノキノジメタン(F4-TCNQ)などが一例として挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。
【0036】
各画素において、メインホール注入層のドーパントの濃度は、サブホール注入層のドーパントの濃度の10分の1以下であるとよい。例えば、サブホール注入層におけるドーパント濃度は、20~30%であるとよい。メインホール注入層におけるドーパントの濃度は、2~3%であるとよい。また、サブホール注入層におけるドーパント濃度は20%以下であってもよいし、メインホール注入層におけるドーパントの濃度は2%以下であってもよい。
【0037】
また、各画素において、メインホール注入層のドーパントの総量は、サブホール注入層のドーパントの総量よりも多いとよい。そのため、メインホール注入層の体積はサブホール注入層の体積よりも大きいとよい。例えば、メインホール注入層のドーパントの濃度がサブホール注入層のドーパントの濃度の10分の1である場合、メインホール注入層の体積はサブホール注入層の体積の10倍より大きいとよい。また、メインホール注入層の平均膜厚は、サブホール注入層の平均膜厚より厚くてもよい。
【0038】
本実施形態においては、各画素において、サブ発光領域の駆動電圧以上であって、メイン発光領域の駆動電圧未満の電圧が印加される状態において、サブ発光領域のみが発光する。その状態から電圧を上げていき、メイン発光領域の駆動電圧以上の電圧が印加される状態になった場合、サブ発光領域における発光は停止し、メイン発光領域の発光が行われることとなる。これは、高電圧帯においてドーパントの総量の多いメイン発光領域において支配的に電流が流れることとなるためである。
【0039】
以上説明したように、本実施形態においては、メイン発光領域MPGにおける駆動電圧を比較的高くしたことにより、青色画素PBを発光させた際に、サブホール注入層80SBの端部E21を通じてメインホール注入層80MGの端部E11へ正孔がリークしたとしても、緑色画素PGにおけるサブ発光領域SPGが意図せず発光してしまうことを抑制できる。その結果、光の混色が発生してしまうことを抑制できる。また、サブ発光領域において低電圧駆動が可能であることより、発光領域の全体を高電圧化する構成と比較して消費電力を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施形態においては、各画素がメイン発光領域とサブ発光領域とを含み、メイン発光領域におけるメインホール注入層のドーパント濃度は、サブ発光領域におけるサブホール注入層のドーパント濃度よりも低い例を説明したが、これに限られず、少なくとも赤色画素PR又は緑色画素PGがこのような構成を採用しているとよい。例えば、青色画素PBにおいては、メイン発光領域とサブ発光領域が含まれておらず、1種の発光領域のみを含むものであってもよい。
【0041】
また、本実施形態においては、サブ発光領域とメイン発光領域とで共通の発光層106を設ける例を説明したが、これに限らず、サブ発光領域とメイン発光領域とで発光層106を塗り分けても構わない。
【0042】
[光の混色を抑制する構成:青色画素におけるメイン発光領域の発光時の混色の抑制]
さらに、本実施形態においては、青色画素PBにおけるメイン発光領域MPBを発光させた際に、メインホール注入層80MBからサブホール注入層80SGにリークが生じることによりサブ発光領域SPGが意図せず発光することを抑制する構成を採用した。
【0043】
具体的には、メインホール注入層80MBの端部E24が、サブホール注入層80SGの端部E14を覆うように形成される構成を採用した。ここで、表示装置2において、ホール注入層80で生じる正孔は、発光層106側に向けて移動する。そのため、ホール注入層80の端部のうち互いに接触する部分において、正孔は下層側の端部から上層側の端部に移動する。本実施形態においては、端部E24が端部E14を覆う構成を採用するため、正孔は、端部E14側から端部E24側へ移動しやすく、端部E24側から端部E14へは移動しにくい。そのため、メイン発光領域MPBを発光させた際、メインホール注入層80MBの端部E24からサブホール注入層SGの端部E14へのリークは生じにくく、意図せずサブ発光領域SPGが発光してしまうことを抑制できる。なお、本実施形態においては、サブ発光領域SPGを発光させた場合、リークが生じたとしても、駆動電圧が高いことよりメイン発光領域MPBが意図せず発光する可能性は低い。
【0044】
[製造方法]
次に、本実施形態に係る表示装置2の製造方法について説明する。
【0045】
まず、TFT基板42の上にパッシベーション膜44を形成し、さらにパッシベーション膜44の上に複数の画素電極46を形成する。次に、互いに隣り合う画素電極46を隔てると共に、それら画素電極46を跨るようにバンク48を設ける。
図4においては、緑色画素PGにおける画素電極46Gと、青色画素PBにおける画素電極46Bとを隔てるようにバンク48GBが設けられる例を示している。また、青色画素PBにおける画素電極46Bと、緑色画素PGにおける画素電極46Gとを隔てるようにバンク48BGが設けられる例を示している。
【0046】
また、各画素においてメイン発光領域とサブ発光領域とを区画するバンク48を設ける。
図4においては、緑色画素PGにおいて、メイン発光領域MPGとサブ発光領域SPGとを区画するバンク48Gが画素電極46G上に設けられる例を示している。また、青色画素PBにおいて、メイン発光領域MPBとサブ発光領域SPBとを区画するバンク48Bが画素電極46B上に設けられる例を示している。
【0047】
次に、バンク48及び画素電極46上にホール注入層80を設ける。本実施形態においては、まずサブホール注入層を設け、その後、サブホール注入層の端部を覆うようにメイン注入層を設けている。
【0048】
具体的には、まず、サブホール注入層80SGを、バンク48BG及びバンク48Gを跨るように画素電極46G上に設ける。また、サブホール注入層80SBを、バンク48GB及びバンク48Bを跨るように画素電極46上に設ける。
【0049】
さらに、サブホール注入層80SGの端部E13と、サブホール注入層80SBの端部E21を覆うように、メインホール注入層80MGを設ける。また、サブホール注入層80SGの端部E14と、サブホール注入層SBの端部E22を覆うように、メインホール注入層80MBを設ける。以降、詳細な説明は省略するが、発光部100に含まれる各層を積層するとよい。
【0050】
[第1の変形例]
次に、
図6を参照して、発光領域の配列の変形例を説明する。
図6は、第1の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
図6においては、第1の方向D1及び第2の方向D2に並んで複数の発光領域が配置される様子を示している。また、
図6に示す矩形の破線は1つの画素を示している。すなわち、1つの画素には、メイン発光領域とサブ発光領域とが含まれている。後述の
図7及び
図8においても同様とする。
【0051】
第1の変形例においては、上述した本実施形態と同様に、各画素がメイン発光領域とサブ発光領域とを含み、メイン発光領域におけるメインホール注入層のドーパント濃度は、サブ発光領域におけるサブホール注入層のドーパント濃度よりも低い。すなわち、メイン発光領域における駆動電圧が比較的高くなっている。また、表示装置の全体構成や発光部100等の積層構造についても、
図1~
図4を参照して説明した本実施形態の構成と同様であるとよい。
【0052】
図6に示す例においては、各画素において、サブ発光領域とメイン発光領域が、第1の方向D1に並んで設けられている。また、緑色画素、青色画素、赤色画素が、第1の方向D1にこの順で並んで設けられている。このような配列のため、各画素のメイン発光領域は、第1の方向D1で隣り合う画素のサブ発光領域と隣り合っており、各画素のサブ発光領域は、第1の方向D1で隣り合う画素のメイン発光領域と隣り合っている。
【0053】
また、
図6に示す例においては、各画素のメイン発光領域は、第2の方向D2で隣り合う画素のサブ発光領域と隣り合っており、各画素のサブ発光領域は、第2の方向D2で隣り合う画素のメイン発光領域と隣り合っている。
【0054】
以上のように、第1の変形例においては、各画素のメイン発光領域が、第1の方向D1及び第2の方向D2において隣り合う画素のサブ発光領域と隣り合っている。そのため、隣り合う画素におけるサブ発光領域が発光した際に、正孔のリークが生じたとしても、意図せずメイン発光領域が発光してしまうことを抑制できる。その結果、光の混色が生じてしまうことを抑制できる。
【0055】
[第2の変形例]
図7は、第2の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【0056】
第2の変形例においては、各画素において、サブ発光領域とメイン発光領域が、第2の方向D2に並んで設けられている。第2の変形例においては、同じ色の画素においては、サブ発光領域とメイン発光領域との相対位置を同様とした。具体的には、例えば、青色画素において、サブ発光領域SPB1とメイン発光領域MPB1との相対位置は、サブ発光領域SPB2とメイン発光領域MPB2との相対位置と同様である。
【0057】
また、第1の方向D1に隣り合う画素の少なくとも一部において、サブ発光領域とメイン発光領域とは第2の方向において反対側に設けられている。例えば、メイン発光領域MPR1は、サブ発光領域SPG1と第1の方向で隣り合っており、サブ発光領域SPR1は、メイン発光領域MPG1と第1の方向で隣り合っている。このような配列を採用するため、隣り合う画素におけるサブ発光領域が発光した際に、正孔のリークが生じたとしても、意図せずメイン発光領域が発光してしまうことを抑制できる。その結果、光の混色が生じてしまうことを抑制できる。
【0058】
[第3の変形例]
図8は、第3の変形例における発光領域の配列を模式的に示す平面図である。
【0059】
図7を参照して説明した第2の変形例においては、同じ色の画素においては、サブ発光領域とメイン発光領域との相対位置を同様とする例を示したが、第3の変形例においては、同じ色の画素であって第1の方向で最も近い画素におけるサブ発光領域とメイン発光領域との位置を逆とした。具体的には、メイン発光領域MPB1とメイン発光領域MPB2とは第2の方向D2において互いに反対側に位置しており、サブ発光領域SPB1とサブ発光領域SPB2とは第2の方向D2において互いに反対側に位置している。このような配列を採用することで、互いに隣り合うメイン発光領域及びサブ発光領域を多くすることができる。これにより、隣り合う画素におけるサブ発光領域が発光した際に、正孔のリークが生じたとしても、意図せずメイン発光領域が発光してしまうことを抑制できる。その結果、光の混色が生じてしまうことを抑制できる。
【符号の説明】
【0060】
2 表示装置、4 画素アレイ部、6 OLED、8 画素回路、10 スイッチングTFT、12 駆動TFT、14 キャパシタ、20 走査線駆動回路、22 映像線駆動回路、24 駆動電源回路、26 制御装置、28 走査信号線、30 映像信号線、32 駆動電源線、40 表示パネル、42 TFT基板、44 パッシベーション膜、46 下部電極、48 バンク、50 上部電極、52 封止層、60 表示領域、62 額縁領域、64 端子領域、70 ドライバIC、72 FPC、80 ホール注入層、100 発光部、102 ホール輸送層、104 電子ブロック層、106 発光層、108 ホールブロック層、110 電子輸送層、112 電子注入層。