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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158213
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/115 20060101AFI20241031BHJP
   H01R 4/50 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01R13/115 C
H01R4/50 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073220
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000231073
【氏名又は名称】日本航空電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】金井 真夏
(57)【要約】
【課題】相手側コネクタ端子がコネクタ端子に対していずれの方向に相対移動した場合であっても、コネクタ端子と相手側コネクタ端子とを高い信頼性で電気的に接続することができるコネクタを提供する。
【解決手段】ボールガイド部16は、コネクタ端子12の接続面12Aに沿ってボール保持部材15を囲むように配置されたバネ部材17の複数の復帰バネを有し、ボール保持部材15は、相手側コネクタ端子の動きに応じて接続面12Aに沿って二次元的に移動し、相手側コネクタ端子収容部に挿入された相手側コネクタ端子は、端子バネにより接続面12Aに向けて押し付けられ、ボール保持部材15に保持されている複数のボール14の表面の突出する部分に接触し、複数のボール14を介してコネクタ端子12に電気的に接続される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相手側コネクタ端子の一部が挿入される相手側コネクタ端子収容部を有するコネクタであって、
前記相手側コネクタ端子収容部に挿入された前記相手側コネクタ端子に対向する平坦な接続面を有するコネクタ端子と、
前記接続面上に配置され且つ少なくとも表面が導電性を有する複数の球形状のボールと、
前記複数のボールのそれぞれの前記表面の一部が前記接続面に接触し且つ前記接続面とは反対側を向いた部分の前記表面が突出する状態で前記複数のボールを回転可能に保持するボール保持部材と、
前記コネクタ端子に固定され且つ前記ボール保持部材を前記接続面に沿って二次元的に移動可能に保持するボールガイド部と、
前記相手側コネクタ端子収容部に挿入された前記相手側コネクタ端子と前記コネクタ端子の前記接続面とを互いに近づける方向に押し付けるための端子バネと
を備え、
前記ボールガイド部は、前記接続面に沿って前記ボール保持部材を囲むように配置され且つ前記ボール保持部材を前記接続面上の初期位置に復帰させるための複数の復帰バネを有し、
前記ボール保持部材は、前記相手側コネクタ端子の前記相手側コネクタ端子収容部への挿入時および前記コネクタ端子との接続状態における前記相手側コネクタ端子の動きに応じて前記接続面に沿って二次元的に移動し、前記相手側コネクタ端子が前記相手側コネクタ端子収容部から抜去されると、前記複数の復帰バネにより前記初期位置に復帰し、
前記相手側コネクタ端子収容部に挿入された前記相手側コネクタ端子は、前記端子バネにより前記接続面に向けて押し付けられ、前記ボール保持部材に保持されている前記複数のボールの前記表面の突出する部分に接触し、前記複数のボールを介して前記コネクタ端子に電気的に接続されるコネクタ。
【請求項2】
前記複数の復帰バネは、前記ボール保持部材が前記初期位置に位置する場合に、前記接続面に沿って回転対称に配置されている請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ボールガイド部は、
前記コネクタ端子に固定され且つ前記ボール保持部材に保持されている前記複数のボールが露出する開口部を有する枠形状のカバー部材と、
前記複数の復帰バネが前記ボール保持部材に嵌め合わされると共に前記カバー部材により保持されるバネ部材とを有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記バネ部材は、前記ボール保持部材に嵌め合わされる嵌合部を有し、
前記カバー部材は、前記複数の復帰バネに対応して形成された複数の差し込み孔を有し、
前記複数の復帰バネは、それぞれ、前記嵌合部に連結された第1端部と、前記カバー部材の対応する前記差し込み孔に挿入されることにより位置が規制される第2端部を有する請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記複数の復帰バネは、それぞれ、前記ボール保持部材の外周部に沿った渦巻形状を有する請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記バネ部材の重心は、前記複数のボールのそれぞれの中心により囲まれる領域の内側に位置している請求項3に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記複数のボールは、一直線上に並ばないように前記接続面上に配置された3つのボールからなる請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記複数の復帰バネの個数は、前記複数のボールの個数以上である請求項1に記載のコネクタ。
【請求項9】
前記ボール保持部材は、前記複数のボールがそれぞれ収容される複数の凹状のボール収容部が形成された板部材からなり、
前記複数のボール収容部は、それぞれ、収容される前記ボールの一部が前記接続面とは反対方向に突出する開口を有する請求項1に記載のコネクタ。
【請求項10】
前記コネクタ端子に取り付けられ且つ前記端子バネを前記接続面に対向するように保持するシェルを備え、
前記端子バネと前記接続面との間に前記相手側コネクタ端子収容部が形成されている請求項1に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コネクタに係り、特に、相手側コネクタ端子の一部が挿入される相手側コネクタ端子収容部を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、コネクタ端子に対して抜き差しされる相手側コネクタ端子の摺動抵抗を低減する目的で、金属球を接触子としてコネクタ端子と相手側コネクタ端子の間に移動可能に配置したコネクタが知られている。コネクタ端子は、金属球を介して相手側コネクタ端子に電気的に接続される。
【0003】
例えば、特許文献1には、図12に示されるように、樹脂材料からなるコネクタハウジング1内において、コネクタ端子2と相手側コネクタ端子3が電気的に接続されるコネクタが開示されている。コネクタハウジング1内には、接触子ホルダ4に保持された3つの金属球5と斜め巻きコイルスプリング6が配置されており、コネクタ端子2は、斜め巻きコイルスプリング6により3つの金属球5に押し付けられ、3つの金属球5を介して相手側コネクタ端子3に電気的に接続される。
【0004】
3つの金属球5は、図13に示されるように、接触子ホルダ4に形成された3つの接触子収容部7にそれぞれ圧縮コイルスプリング8と共に収容されており、コネクタハウジング1に相手側コネクタ端子3が挿入されると、3つの金属球5は、相手側コネクタ端子3の移動に従って、対応する圧縮コイルスプリング8を弾性圧縮しながら転がり移動する。これにより、相手側コネクタ端子3の挿入に伴う摺動抵抗が低減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-67499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図13に示されるように、接触子ホルダ4に形成された3つの接触子収容部7は、相手側コネクタ端子3の挿入方向Dに沿って、互いに平行に延びている。このため、3つの金属球5は、それぞれ、相手側コネクタ端子3の挿入方向Dに沿って転がり移動し得るものの、挿入方向Dに直交する方向には移動することができない。
【0007】
従って、コネクタハウジング1への相手側コネクタ端子3の挿入時、または、コネクタ端子2と相手側コネクタ端子3の接続状態において、相手側コネクタ端子3が、何らかの外力を受ける等により、コネクタ端子2に対して挿入方向Dとは異なる方向に相対移動する場合には、摺動抵抗を低減することができず、コネクタ端子2と相手側コネクタ端子3との電気的接続の信頼性が低下するおそれがある。
【0008】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、相手側コネクタ端子がコネクタ端子に対していずれの方向に相対移動した場合であっても、コネクタ端子と相手側コネクタ端子とを高い信頼性で電気的に接続することができるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るコネクタは、
相手側コネクタ端子の一部が挿入される相手側コネクタ端子収容部を有するコネクタであって、
相手側コネクタ端子収容部に挿入された相手側コネクタ端子に対向する平坦な接続面を有するコネクタ端子と、
接続面上に配置され且つ少なくとも表面が導電性を有する複数の球形状のボールと、
複数のボールのそれぞれの表面の一部が接続面に接触し且つ接続面とは反対側を向いた部分の表面が突出する状態で複数のボールを回転可能に保持するボール保持部材と、
コネクタ端子に固定され且つボール保持部材を接続面に沿って二次元的に移動可能に保持するボールガイド部と、
相手側コネクタ端子収容部に挿入された相手側コネクタ端子とコネクタ端子の接続面とを互いに近づける方向に押し付けるための端子バネと
を備え、
ボールガイド部は、接続面に沿ってボール保持部材を囲むように配置され且つボール保持部材を接続面上の初期位置に復帰させるための複数の復帰バネを有し、
ボール保持部材は、相手側コネクタ端子の相手側コネクタ端子収容部への挿入時およびコネクタ端子との接続状態における相手側コネクタ端子の動きに応じて接続面に沿って二次元的に移動し、相手側コネクタ端子が相手側コネクタ端子収容部から抜去されると、複数の復帰バネにより初期位置に復帰し、
相手側コネクタ端子収容部に挿入された相手側コネクタ端子は、端子バネにより接続面に向けて押し付けられ、ボール保持部材に保持されている複数のボールの表面の突出する部分に接触し、複数のボールを介してコネクタ端子に電気的に接続されるものである。
【0010】
複数の復帰バネは、ボール保持部材が初期位置に位置する場合に、接続面に沿って回転対称に配置されていることが好ましい。
ボールガイド部は、コネクタ端子に固定され且つボール保持部材に保持されている複数のボールが露出する開口部を有する枠形状のカバー部材と、複数の復帰バネがボール保持部材に嵌め合わされると共にカバー部材により保持されるバネ部材とを有するように構成することができる。
【0011】
バネ部材は、ボール保持部材に嵌め合わされる嵌合部を有し、カバー部材は、複数の復帰バネに対応して形成された複数の差し込み孔を有し、複数の復帰バネは、それぞれ、嵌合部に連結された第1端部と、カバー部材の対応する差し込み孔に挿入されることにより位置が規制される第2端部を有することが好ましい。
この場合、複数の復帰バネは、それぞれ、ボール保持部材の外周部に沿った渦巻形状を有することが好ましい。
【0012】
バネ部材の重心は、複数のボールのそれぞれの中心により囲まれる領域の内側に位置していることが好ましい。
複数のボールは、一直線上に並ばないように接続面上に配置された3つのボールからなるように構成することができる。
また、複数の復帰バネの個数は、複数のボールの個数以上であることが好ましい。
【0013】
ボール保持部材は、複数のボールがそれぞれ収容される複数の凹状のボール収容部が形成された板部材からなり、複数のボール収容部は、それぞれ、収容されるボールの一部が接続面とは反対方向に突出する開口を有することが好ましい。
コネクタ端子に取り付けられ且つ端子バネを接続面に対向するように保持するシェルを備え、端子バネと接続面との間に相手側コネクタ端子収容部が形成されるように構成することが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、少なくとも表面が導電性を有する複数のボールのそれぞれの表面の一部がコネクタ端子の平坦な接続面に接触し且つ接続面とは反対側を向いた部分の表面が突出する状態で複数のボールを回転可能に保持するボール保持部材と、ボール保持部材を接続面に沿って二次元的に移動可能に保持し且つ接続面に沿ってボール保持部材を囲むように配置された複数の復帰バネを有するボールガイド部と、相手側コネクタ端子とコネクタ端子の接続面とを互いに近づける方向に押し付けるための端子バネとを有し、相手側コネクタ端子は複数のボールを介してコネクタ端子に電気的に接続されるので、相手側コネクタ端子がコネクタ端子に対していずれの方向に相対移動した場合であっても、コネクタ端子と相手側コネクタ端子とを高い信頼性で電気的に接続することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態に係るコネクタと相手側コネクタ端子とを示す斜視図である。
図2】実施の形態に係るコネクタのコネクタ端子に搭載されたボール組立体を示す斜視図である。
図3】実施の形態におけるボール組立体の組立図である。
図4】実施の形態におけるボール保持部材を示す斜視図である。
図5】実施の形態におけるボールガイド部のバネ部材を示す斜視図である。
図6】実施の形態におけるボールとボール保持部材とバネ部材を示す断面図である。
図7】実施の形態におけるボールガイド部のカバー部材を示す斜視図である。
図8】実施の形態におけるボール組立体を示す平面図である。
図9】実施の形態におけるカバー部材の差し込み孔に挿入された復帰バネの第2端部を示す斜視図である。
図10】実施の形態におけるシェルを示す斜視図である。
図11図8の要部拡大図である。
図12】従来のコネクタを示す断面図である。
図13】従来のコネクタの接触子ホルダおよび3つの金属球を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に、実施の形態に係るコネクタ11と、コネクタ11に挿入される相手側コネクタ端子21を示す。コネクタ11は、相手側コネクタ端子21に電気的に接続されるコネクタ端子12を有しており、コネクタ端子12に、破線で表されるシェル13が取り付けられている。
【0017】
相手側コネクタ端子21は、平板形状を有するプラグコンタクトから形成されている。コネクタ端子12も、相手側コネクタ端子21と同様に、平板形状を有するソケットコンタクトから形成されており、平坦な接続面12Aを有している。
【0018】
ここで、便宜上、コネクタ端子12の平坦な接続面12AがXY面に沿って延び、コネクタ11に対して相手側コネクタ端子21が挿入される方向を+Y方向、コネクタ端子12の接続面12Aに垂直な方向をZ方向と呼ぶものとする。
【0019】
図2に示されるように、コネクタ端子12の接続面12A上に、コネクタ端子12と相手側コネクタ端子21とを電気的に接続するためのボール組立体BAが搭載されている。ボール組立体BAは、コネクタ端子12と相手側コネクタ端子21との電気的接続を中継する3つのボール14と、3つのボール14を回転可能に保持するボール保持部材15と、ボール保持部材15を接続面12Aに沿って移動可能に保持するボールガイド部16を有している。
【0020】
図3に、ボール組立体BAの組立図を示す。コネクタ端子12の接続面12Aの+Z方向側に3つのボール14が配置され、3つのボール14の+Z方向側にボール保持部材15が配置され、ボール保持部材15の+Z方向側にボールガイド部16を構成するバネ部材17およびカバー部材18が順次配置されている。
【0021】
3つのボール14は、すべてのボール14がXY平面上で一直線上に並ばないように配置される。すなわち、本実施の形態の一例においては、3つのボール14は、それらの中心を結んだ形状がXY平面上で三角形となるように配置される。さらに、3つのボール14は、互いに同一の直径の球形状を有しており、それぞれ、例えば導電性を有する金属から形成されている。これらのボール14は、少なくとも表面が導電性を有していればよく、例えば、不導体からなる球状部材の表面に導電性を有する金属層が形成されたものを用いることもできる。
【0022】
図4に示されるように、ボール保持部材15は、金属等により作製された板部材からなり、XY面に沿って延びる円板形状の基部15Aと、それぞれ基部15Aの表面から+Z方向に突出する3つの凸部15Bを有している。3つの凸部15Bは、円板形状の基部15Aの中心を中心とする正三角形の3つの頂点の位置に配置されており、それぞれ、+Z方向に向かって先細りとなる円錐面15Cを有し、凸部15Bの+Z方向端部には、円形の開口15Dが形成されている。
このようなボール保持部材15は、例えば、平板状の金属板にせん断加工および絞り加工を施すことにより作製され、3つの凸部15Bの-Z方向側に形成された3つの凹部に3つのボール14を収容することができる。
【0023】
図5に示されるように、バネ部材17は、金属等からなる板状部材であり、XY面に沿って延びる正三角形状の基部17Aと、それぞれ基部17Aに連結された3つの円弧状の枠部17Bと、3つの枠部17Bからそれぞれ延びる3つの復帰バネ17Cを有している。バネ部材17は、例えば、平板状の金属板にせん断加工を施すことにより作製される。
【0024】
3つの円弧状の枠部17Bは、正三角形状の基部17Aの3つの頂点の位置に配置されており、それぞれ、基部17Aの円弧状の縁部と併せて円形の開口部17Dを形成している。3つの枠部17Bにより形成された3つの開口部17Dに、ボール保持部材15の3つの凸部15Bがそれぞれ挿入されることにより、バネ部材17はボール保持部材15に嵌め合わされるように構成されており、基部17Aと3つの枠部17Bにより、ボール保持部材15に対する嵌合部17Eが形成されている。
【0025】
3つの復帰バネ17Cは、互いに同一の形状を有する帯状部材から形成されており、基部17Aと3つの枠部17Bの外側を回る渦巻形状を有し、XY面内において弾性変形可能に形成されている。それぞれの復帰バネ17Cは、嵌合部17Eの対応する枠部17Bに連結された第1端部T1と、自由端となる第2端部T2を有しており、第2端部T2に、+Z方向に向けて屈曲された屈曲部17Fが形成されている。
それぞれの復帰バネ17Cは、渦巻形状を有することで、バネ部材17の設置スペースを小さく抑えながらも、バネ長をより長く確保することができ、バネ係数を容易に調整することが可能となる。
【0026】
ボール組立体BAにおいては、図6に示されるように、ボール保持部材15は、それぞれの凸部15Bの-Z方向側に形成された凹状のボール収容部15Eにボール14が収容された状態で、基部15Aの-Z方向側の面がコネクタ端子12の接続面12Aに接触するように配置される。
【0027】
ボール保持部材15の凸部15Bの+Z方向端部に形成されている円形の開口15Dは、コネクタ端子12の接続面12Aから+Z方向に向かってボール14の半径よりも高く且つボール14の直径より低い位置にあり、且つ、ボール14の直径より小さい径を有しており、ボール収容部15Eに収容されたボール14は、ボール収容部15Eから外部に抜け出ることなく、ボール収容部15E内において回転することができるように構成されている。
【0028】
ボール保持部材15の凸部15Bがこのような開口15Dを有するため、図6に示されるように、コネクタ端子12の接続面12Aと凸部15Bにより囲まれたボール収容部15E内に収容されたボール14の-Z方向端部は、接続面12Aに接触し、ボール14の+Z方向端部は、開口15Dから+Z方向に突出した状態となる。
【0029】
バネ部材17は、ボール保持部材15の上に配置され、3つの枠部17Bにより形成された3つの開口部17Dが、ボール保持部材15の3つの凸部15Bの円錐面15Cにそれぞれ接触することで、バネ部材17の嵌合部17Eがボール保持部材15に嵌め合わされている。そして、バネ部材17の嵌合部17Eとボール保持部材15と3つのボール14は、一体となって、コネクタ端子12の接続面12Aに沿って二次元的に移動し得るように構成されている。
【0030】
図7に示されるように、カバー部材18は、金属等の板状部材から形成されており、XY面に沿って延びる枠形状のカバー本体18Aと、カバー本体18AのX方向の両端部に連結された一対の固定部18Bと、一対の固定部18Bに連結された一対の相手側コネクタ端子ガイド部18Cを有している。
【0031】
カバー本体18Aは、中央に円形の開口部18Dが形成されたリング形状を有している。カバー本体18Aの円形の外周部は、XY面に沿って延びており、開口部18Dに隣接するカバー本体18Aの内周部は、外周部よりも+Z方向側に位置する高さにおいてXY面に沿って延びている。すなわち、カバー本体18Aは、全体的に外周部から内周部に向かって+Z方向に膨らむ形状を有している。ただし、カバー本体18AのZ方向の厚さは、ボール14の直径より小さい寸法を有している。
【0032】
リング形状のカバー本体18Aには、Z方向に延びるカバー本体18Aの中心軸を中心として120度間隔の回転位置にそれぞれカバー本体18AをZ方向に貫通する差し込み孔18Eが形成されている。
【0033】
一対の固定部18Bは、カバー部材18をコネクタ端子12の接続面12Aに固定するためのものであり、カバー本体18Aの+X方向端部および-X方向端部からそれぞれXY面に沿ってX方向に延びている。
【0034】
一対の固定部18Bに連結された一対の相手側コネクタ端子ガイド部18Cは、図1に示されるように、コネクタ11に相手側コネクタ端子21が挿入される際に、相手側コネクタ端子21を案内するものである。それぞれの相手側コネクタ端子ガイド部18Cは、対応する固定部18Bから+Y方向および-Y方向に延び且つZ方向に湾曲する一対の腕部18Fにより形成されている。
【0035】
図8に示されるように、カバー部材18は、嵌合部17Eによりボール保持部材15に嵌め合わされたバネ部材17に被せられるように、コネクタ端子12の接続面12A上に配置される。なお、図8において、カバー部材18により覆われる部分が見えるように、カバー部材18は、破線により表されている。
バネ部材17の3つの復帰バネ17Cは、コネクタ端子12の接続面12A上においてボール保持部材15の外周部に沿った渦巻形状を有し且つカバー部材18のカバー本体18Aの-Z方向側に位置し、ボール保持部材15に保持されている3つのボール14の+Z方向端部は、カバー部材18の開口部18Dを通して露出されている。さらに、カバー本体18AのZ方向の厚さは、ボール14の直径より小さい寸法を有しているので、3つのボール14の+Z方向端部は、それぞれ、カバー部材18から+Z方向に突出した状態にある。
【0036】
また、図9に示されるように、バネ部材17のそれぞれの復帰バネ17Cの第2端部T2に形成されている屈曲部17Fが、カバー部材18のカバー本体18Aの対応する差し込み孔18Eに挿入されている。これにより、3つの復帰バネ17Cの第2端部T2の位置がそれぞれ規制されている。
【0037】
このため、例えば、接続面12Aが水平面となるようにコネクタ端子12が配置され、且つ、バネ部材17とボール保持部材15と3つのボール14に重力以外の外力が作用しない場合には、図8に示されるように、バネ部材17の3つの復帰バネ17Cは、接続面12Aに沿って回転対称に配置され、ボール保持部材15は、コネクタ端子12の接続面12Aに対して、円板形状の基部15Aの中心がカバー部材18の円形の開口部18Dの中心とほぼ一致する初期位置P1に位置することとなる。
【0038】
なお、図9に示されるように、カバー部材18のカバー本体18Aの差し込み孔18Eは、復帰バネ17Cの第2端部T2の屈曲部17Fよりも大きく形成されており、屈曲部17Fは、余裕を持って差し込み孔18Eに差し込まれるように構成されている。
【0039】
シェル13は、図10に示されるように、屈曲された金属板等の板状部材からなり、-Z方向側に位置し且つXY面に沿って延びる底板部13Aと、+Z方向側に位置し且つXY面に沿って延びる上板部13Bと、-Y方向側に位置し且つXZ面に沿って延びる前板部13Cと、+Y方向側に位置し且つXZ面に沿って延びる後板部13Dとを有している。
前板部13Cおよび後板部13Dには、それぞれ、相手側コネクタ端子21が挿入される開口部13Eおよび13Fが形成され、上板部13Bの-Y方向端部には、-Z方向および+Y方向に向かって屈曲されて延びる端子バネ13Gが形成されている。
【0040】
底板部13Aに対する上板部13BのZ方向の高さは、コネクタ端子12のZ方向の厚さと相手側コネクタ端子21のZ方向の厚さとボール14の直径の和よりも大きい寸法を有している。
コネクタ端子12が、シェル13の底板部13Aに接してシェル13の内部に位置するように、シェル13はコネクタ端子12に取り付けられ、端子バネ13Gとコネクタ端子12の接続面12Aとの間に、相手側コネクタ端子21が挿入される相手側コネクタ端子収容部13Hが形成される。
【0041】
コネクタ11の組み立て時には、まず、図6に示されるように、ボール保持部材15の3つのボール収容部15Eにそれぞれボール14を収容しつつ、ボール保持部材15がコネクタ端子12の接続面12Aの上に配置される。このとき、ボール保持部材15の基部15Aが、コネクタ端子12の接続面12Aに接触した状態となる。
【0042】
次に、バネ部材17の3つの開口部17Dがそれぞれボール保持部材15の対応する凸部15Bの円錐面15Cに接触するように、バネ部材17がボール保持部材15の上に配置され、バネ部材17の嵌合部17Eがボール保持部材15に嵌め合わされる。
さらに、図8に示されるように、ボール保持部材15およびバネ部材17の上にカバー部材18が被せられ、図9に示されるように、バネ部材17の3つの復帰バネ17Cの屈曲部17Fがそれぞれカバー部材18のカバー本体18Aの対応する差し込み孔18Eに挿入される。
【0043】
この状態で、カバー部材18の一対の固定部18Bの複数個所を、例えば、レーザ溶接等により、コネクタ端子12の接続面12Aに溶着することで、カバー部材18がコネクタ端子12に固定される。このとき、バネ部材17の嵌合部17Eとボール保持部材15と3つのボール14は、一体となって、カバー部材18の内側でコネクタ端子12の接続面12Aに沿って移動可能となり、ボール保持部材15に保持されている3つのボール14の+Z方向端部は、それぞれ、カバー部材18の開口部18Dを通して露出される。
【0044】
このようにしてコネクタ端子12の接続面12A上にボール組立体BAが搭載されると、コネクタ端子12の-Z方向側の面がシェル13の底板部13Aに接するように、コネクタ端子12にシェル13が取り付けられ、これにより、コネクタ11の組み立てが完了する。
なお、図9に示されるように、カバー部材18の差し込み孔18Eは、復帰バネ17Cの屈曲部17Fよりも大きく形成されているため、余裕を持って屈曲部17Fを差し込み孔18Eに差し込むことができ、コネクタ11の組み立て作業が容易となっている。
【0045】
次に、コネクタ11の作用について説明する。
相手側コネクタ端子21をコネクタ11のコネクタ端子12に電気的に接続する際には、図1に示される相手側コネクタ端子21が-Y方向から+Y方向に移動され、相手側コネクタ端子21が、コネクタ11のシェル13内に挿入される。
【0046】
このとき、相手側コネクタ端子21は、図7に示されるカバー部材18の一対の相手側コネクタ端子ガイド部18Cにより、コネクタ端子12の接続面12Aと平行になるように案内されながら、シェル13内に挿入され、相手側コネクタ端子21の+Y方向側の先端部は、図10に示されるシェル13の端子バネ13Gを+Z方向に向けて弾性圧縮しながら、端子バネ13Gとコネクタ端子12の接続面12Aとの間に形成されている相手側コネクタ端子収容部13Hに挿入され、端子バネ13Gによりコネクタ端子12の接続面12Aに向けて-Z方向に押し付けられる。
【0047】
このため、相手側コネクタ端子21の-Z方向側の表面は、ボール保持部材15に保持されている3つのボール14の、カバー部材18から+Z方向に突出している+Z方向端部に所定の接触圧で接触し、3つのボール14の-Z方向端部は、コネクタ端子12の接続面12Aに所定の接触圧で接触することとなる。
その結果、相手側コネクタ端子21とコネクタ端子12は、3つのボール14を介して互いに電気的に接続される。
【0048】
3つのボール14は、それぞれ、相手側コネクタ端子21の-Z方向側の表面とコネクタ端子12の接続面12Aに所定の接触圧で接触するので、相手側コネクタ端子収容部13Hへの相手側コネクタ端子21の挿入動作に伴って、回転しながら+Y方向へと移動しようとする。
【0049】
ここで、バネ部材17のそれぞれの復帰バネ17Cの第2端部T2に形成されている屈曲部17Fがカバー部材18の対応する差し込み孔18Eに挿入されることにより、3つの復帰バネ17Cの第2端部T2の位置がそれぞれ規制されている。このため、相手側コネクタ端子21の挿入前には、図8に示されるように、初期位置P1に位置していたボール保持部材15は、3つの復帰バネ17Cをそれぞれ弾性変形させながら、3つのボール14と共に、コネクタ端子12の接続面12Aに沿って+Y方向に移動する。
【0050】
このようにして、相手側コネクタ端子21とコネクタ端子12との間に配置された3つのボール14が回転しつつ+Y方向へ移動することで、相手側コネクタ端子収容部13Hへの相手側コネクタ端子21の挿入に伴う摺動抵抗を低減することができる。
同様に、コネクタ端子12と接続状態にある相手側コネクタ端子21を相手側コネクタ端子収容部13Hから引き抜く際にも、摺動抵抗を低減することが可能となる。
【0051】
さらに、ボール保持部材15は、コネクタ端子12の接続面12A上を、Y方向だけでなく、XY面内に沿って二次元的に移動可能に保持されているので、相手側コネクタ端子収容部13Hに相手側コネクタ端子21を挿入する際、あるいは、相手側コネクタ端子収容部13Hから相手側コネクタ端子21を引き抜く際に、相手側コネクタ端子21がコネクタ端子12に対してY方向とは異なる方向に相対移動した場合には、3つのボール14も相手側コネクタ端子21と同じ方向に移動して、摺動抵抗を低減することができる。
【0052】
ここで、バネ部材17の3つの復帰バネ17Cは、ボール保持部材15が初期位置P1に位置する場合に、コネクタ端子12の接続面12Aに沿って回転対称に配置されているので、ボール保持部材15がXY面内におけるいずれの方向に移動しようとしても、3つの復帰バネ17Cからボール保持部材15に均等の弾性力が作用することとなり、ボール保持部材15は、移動方向に関わりなく円滑に移動することができる。
このため、相手側コネクタ端子21がコネクタ端子12に対していずれの方向に相対移動した場合であっても、効果的に摺動抵抗を低減することが可能となる。
【0053】
また、相手側コネクタ端子21は、相手側コネクタ端子収容部13Hへの挿抜時だけでなく、コネクタ端子12と接続状態にある場合においても、コネクタ11に振動等の外力が作用することで、コネクタ端子12に対して相対移動するおそれがある。このような場合でも、コネクタ端子12に対する相手側コネクタ端子21の移動方向に関わらずに、ボール保持部材15は、3つのボール14と共に相手側コネクタ端子21と同じ方向に移動することができる。従って、摺動抵抗が低減され、コネクタ端子12と相手側コネクタ端子21とを高い信頼性で電気的に接続することが可能となる。
【0054】
なお、バネ部材17の3つの復帰バネ17Cは、ボール保持部材15が初期位置P1に位置する場合に、必ずしも、コネクタ端子12の接続面12Aに沿って回転対称に配置されている必要はなく、3つの復帰バネ17Cがボール保持部材15を囲むように配置されていれば、3つの復帰バネ17Cによりボール保持部材15にほぼ均等の弾性力が作用するので、ボール保持部材15は円滑に移動し、摺動抵抗を低減することができる。
ただし、図8に示されるように、3つの復帰バネ17Cが回転対称に配置されている方が、ボール保持部材15の移動方向に関わりなく、ボール保持部材15にXY面内において均等の弾性力を作用することができるので好ましい。
【0055】
なお、コネクタ端子12と相手側コネクタ端子21の接続状態が解除されて、相手側コネクタ端子21が相手側コネクタ端子収容部13Hから引き抜かれると、3つの復帰バネ17Cの作用により、ボール保持部材15は、コネクタ端子12の接続面12Aに沿って、図8に示される初期位置P1まで復帰する。
【0056】
また、図11に示されるように、実施の形態に係るコネクタ11において、バネ部材17は、バネ部材17の重心Gが、ボール保持部材15に保持されている3つのボール14のそれぞれの中心14Aにより囲まれる三角形状の領域Rの内側に位置するように構成されている。これにより、相手側コネクタ端子21がコネクタ端子12に対して相対移動する際に、3つのボール14が回転して、ボール保持部材15およびバネ部材17の基部17Aと共にコネクタ端子12の接続面12A上を円滑に移動することができ、摺動抵抗が効果的に低減され、コネクタ端子12と相手側コネクタ端子21との電気的接続の信頼性が向上する。
【0057】
なお、バネ部材17の重心Gは、必ずしも、ボール保持部材15に保持されている3つのボール14のそれぞれの中心14Aにより囲まれる領域Rの内側に位置する必要はなく、領域Rの外側に位置していてもよい。ただし、バネ部材17の重心Gが領域Rの外側に位置すると、3つのボール14に不均等な力が作用しやすくなり、3つのボール14を円滑に回転させることが難しくなるおそれがあるため、バネ部材17の重心Gは、領域Rの内側に位置することが好ましい。ここで、「領域Rの内側」は、領域Rの境界線上も含むものとする。
【0058】
また、上記の実施の形態では、ボール保持部材15に3つのボール14が保持されているが、ボール14の個数は3つに限るものではなく、2つ、あるいは、4つ以上のボール14が保持されていてもよい。
ボール保持部材15にこのような複数のボール14が保持される場合においても、バネ部材17の重心Gは、複数のボール14のそれぞれの中心14Aにより囲まれる領域Rの内側に位置することが好ましい。なお、ボール14の個数が2つの場合には、2つのボール14のそれぞれの中心14Aを結ぶ直線上を「領域R」とみなされるものとし、バネ部材17の重心Gは、この直線上に位置することが好ましい。
【0059】
さらに、上記の実施の形態では、ボール保持部材15に3つのボール14が保持されるのに対して、バネ部材17が3つの復帰バネ17Cを有しており、復帰バネ17Cの個数とボール14の個数が互いに等しいが、これに限るものではない。ただし、復帰バネ17Cの個数が、ボール14の個数以上であれば、複数の復帰バネ17Cからボール保持部材15を介して複数のボール14に作用する弾性力がより均等になりやすく、移動方向に関わりなく複数のボール14を安定して回転させることができるので好ましい。
【0060】
なお、上記の実施の形態では、シェル13の端子バネ13Gが、相手側コネクタ端子収容部13Hに挿入された相手側コネクタ端子21に接触し、相手側コネクタ端子21をコネクタ端子12の接続面12Aに向けて押し付けているが、これに限るものではない。
シェル13は、相手側コネクタ端子収容部13Hに挿入された相手側コネクタ端子21とコネクタ端子12の接続面12Aとを互いに近づける方向に押し付ける端子バネを保持していればよい。例えば、端子バネにより、コネクタ端子12を相手側コネクタ端子21に向けて押し付けることにより、複数のボール14が、相手側コネクタ端子21の-Z方向側の表面とコネクタ端子12の接続面12Aに所定の接触圧で接触するように構成することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1 コネクタハウジング、2 コネクタ端子、3 相手側コネクタ端子、4 接触子ホルダ、5 金属球、6 斜め巻きコイルスプリング、7 接触子収容部、8 圧縮コイルスプリング、11 コネクタ、12 コネクタ端子、12A 接続面、13 シェル、13A 底板部、13B 上板部、13C 前板部、13D 後板部、13E,13F 開口部、13G 端子バネ、13H 相手側コネクタ端子収容部、14 ボール、15 ボール保持部材、15A 基部、15B 凸部、15C 円錐面、15D 開口、15E ボール収容部、16 ボールガイド部、17 バネ部材、17A 基部、17B 枠部、17C 復帰バネ、17D 開口部、17E 嵌合部、17F 屈曲部、18 カバー部材、18A カバー本体、18B 固定部、18C 相手側コネクタ端子ガイド部、18D 開口部、18E 差し込み孔、18F 腕部、21 相手側コネクタ端子、BA ボール組立体、T1 第1端部、T2 第2端部、P1 初期位置。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13