IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-水素供給装置 図1
  • 特開-水素供給装置 図2
  • 特開-水素供給装置 図3
  • 特開-水素供給装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158220
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】水素供給装置
(51)【国際特許分類】
   F17C 7/04 20060101AFI20241031BHJP
   C01B 3/00 20060101ALI20241031BHJP
   F02M 21/02 20060101ALI20241031BHJP
   F02M 21/06 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F17C7/04
C01B3/00 Z
F02M21/02 G
F02M21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073234
(22)【出願日】2023-04-27
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和5年2月23日に開催された「富士スピードウェイ公式テスト」にて発表
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 良太
(72)【発明者】
【氏名】川上 佳史
(72)【発明者】
【氏名】松尾 朋幸
(72)【発明者】
【氏名】中野 智洋
【テーマコード(参考)】
3E172
4G140
【Fターム(参考)】
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BD03
3E172DA90
3E172EB03
3E172EB10
3E172GA16
3E172GA17
3E172KA03
4G140AB01
(57)【要約】
【課題】動力装置に供給する水素ガスの温度を所定の温度範囲に保つ。
【解決手段】加熱器20と、気化器40と、加熱器20と気化器40の間に熱媒体を循環させる循環流路30と、循環ポンプ34と、制御部70と、を含み、制御部70は、気化器40から流出する水素ガスが供給される動力装置の出力と、気化器40から流出する熱媒体の温度と、が入力され、気化器40から流出する熱媒体の温度と水素エンジン15の出力に基づいて循環ポンプ34の駆動デューティ指令値を算出し、算出した駆動デューティ指令値に基づいて循環ポンプ34を駆動する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体を加熱する加熱器と、
加熱された前記熱媒体により液体水素を気化させて水素ガスとする気化器と、
前記加熱器と前記気化器の間に前記熱媒体を循環させる循環流路と、
前記循環流路に設けられて前記熱媒体を圧送する循環ポンプと、
前記循環ポンプの動作を調節する制御部と、を含む水素供給装置であって、
前記制御部は、
前記気化器から流出する前記水素ガスが供給される動力装置の出力と、前記気化器から流出する前記熱媒体の温度と、が入力され、
前記気化器から流出する前記熱媒体の温度と前記動力装置の出力に基づいて前記循環ポンプの駆動デューティ指令値を算出し、
算出した前記駆動デューティ指令値に基づいて前記循環ポンプを駆動すること、
を特徴とする水素供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水素供給装置であって、
前記制御部は、
前記気化器から流出する前記熱媒体の温度に基づいて前記循環ポンプのベース駆動デューティを計算し、
前記動力装置の出力に基づいて補正係数を算出し、
前記ベース駆動デューティに前記補正係数を掛け合わせて前記駆動デューティ指令値を算出すること、
を特徴とする水素供給装置。
【請求項3】
請求項2に記載の水素供給装置であって、
前記制御部は、
前記気化器から流出する前記熱媒体の温度が高くなるにつれ前記ベース駆動デューティが小さくなるように前記ベース駆動デューティを算出し、
前記動力装置の出力が大きくなるにつれて前記補正係数が大きくなるように前記補正係数を算出すること、
を特徴とする水素供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体水素を気化して水素ガスを供給する水素供給装置の水素ガスの温度制御に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、回転電機の冷却液を冷却する熱交換器に流入する冷却液の流量を回転電機の回転数に応じて変化させて回転電機を所定の温度範囲に保つ技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-145095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、ガソリンに代わって水素ガスを直接燃焼させる水素エンジンを搭載した水素エンジン車両が用いられている。これらの水素エンジン車両では、液体水素を気化させた水素ガスを水素エンジンに供給する方法が用いられている。水素エンジンに供給される水素ガスの温度が高すぎると水素エンジンの出力が低下してしまい、水素ガスの温度が低すぎると極低温の水素ガスにより水素配管が損傷する場合がある。このため、水素エンジンに供給する水素ガスは所定の温度範囲とすることが求められている。
【0005】
そこで、本開示の水素供給装置は、動力装置に供給する水素ガスの温度を所定の温度範囲に保つことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の水素供給装置は、熱媒体を加熱する加熱器と、加熱された前記熱媒体により液体水素を気化させて水素ガスとする気化器と、前記加熱器と前記気化器の間に前記熱媒体を循環させる循環流路と、前記循環流路に設けられて前記熱媒体を圧送する循環ポンプと、前記循環ポンプの動作を調節する制御部と、を含む水素供給装置であって、前記制御部は、前記気化器から流出する前記水素ガスが供給される動力装置の出力と、前記気化器から流出する前記熱媒体の温度と、が入力され、前記気化器から流出する前記熱媒体の温度と前記動力装置の出力に基づいて前記循環ポンプの駆動デューティ指令値を算出し、算出した前記駆動デューティ指令値に基づいて前記循環ポンプを駆動すること、を特徴とする。
【0007】
これにより、動力装置の出力が変化した場合でも、動力装置に供給する水素ガスの温度を所定の温度範囲に保つことができる。
【0008】
本開示の水素供給装置において、前記制御部は、前記気化器から流出する前記熱媒体の温度に基づいて前記循環ポンプのベース駆動デューティを計算し、前記動力装置の出力に基づいて補正係数を算出し、前記ベース駆動デューティに前記補正係数を掛け合わせて前記駆動デューティ指令値を算出してもよい。
【0009】
これにより、動力装置の出力に応じた駆動デューティ指令値を算出することができる。
【0010】
本開示の水素供給装置において、前記制御部は、前記気化器から流出する前記熱媒体の温度が高くなるにつれ前記ベース駆動デューティが小さくなるように前記ベース駆動デューティを算出し、前記動力装置の出力が大きくなるにつれて前記補正係数が大きくなるように前記補正係数を算出してもよい。
【0011】
これにより、気化器から流出する水素ガスの温度の変化に先行して循環ポンプの流量を増減させるので、動力装置の出力が変化した場合でも、動力装置に供給する水素ガスの温度を所定の温度範囲に保つことができる。
【発明の効果】
【0012】
本開示の水素供給装置は、動力装置に供給する水素ガスの温度を所定の温度範囲に保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態の水素供給装置と、その水素供給装置が搭載された水素エンジン車両の構成を示す系統図である。
図2図1に示す制御部のメモリに格納されたベース駆動デューティ算出用マップである。
図3図1に示す制御部のメモリに格納された補正係数算出用マップである。
図4図1に示す水素供給装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態の水素供給装置100について説明する。以下の説明では、水素供給装置100は、水素エンジン車両200に搭載される動力装置である水素エンジン15に水素ガスを供給するものとして説明する。
【0015】
図1に示すように、水素供給装置100は、熱媒体を加熱して気化器40に供給する加熱回路10と、気化器40で気化した水素ガスを水素エンジン15に供給する水素回路50と、制御部70とを備えている。最初に加熱回路10について説明する。加熱回路10は、加熱器20と、気化器40と、循環流路30と、循環ポンプ34と、で構成される。
【0016】
加熱器20は、内部に冷却水流路21と熱媒体流路31とを備えている。冷却水流路21は、水素エンジン15の内部流路17を通流した温度の高い冷却水が通流する。熱媒体流路31は、気化器40のケーシング41の内部を通流した低温の熱媒体が通流する。加熱器20は、冷却水流路21を通流する温度の高い冷却水と低温の熱媒体との間で熱交換を行わせて熱媒体を加熱する。ここで、熱媒体は、液体であり、例えば、ロングライフクーラント(LLC)であってもよい。
【0017】
冷却水流路21は、冷却水供給管22と、冷却水戻り管23によって内部流路17に接続されている。内部流路17と、冷却水流路21と、冷却水供給管22と、冷却水戻り管23とは、水素エンジン15と加熱器20との間で冷却水を循環させる冷却水循環流路25を形成する。冷却水循環流路25は、水素エンジン15で温度の上昇した冷却水を加熱器20の冷却水流路21に循環させる。
【0018】
気化器40は、ケーシング41と、ケーシング41の内部に収容された水素チューブ45で構成される。ケーシング41の内部には、加熱器20で加熱された温度の高い熱媒体が通流する。水素チューブ45の内部には低温の液体水素又は水素ガスが通流する。ケーシング41の内部を通流する熱媒体は水素チューブ45の外面を流れ、内部の液体水素を加熱、気化して水素ガスとする。
【0019】
循環流路30は、加熱器20の熱媒体流路31と、熱媒体供給管32と、気化器40のケーシング41と、熱媒体戻り管33とで構成されている。熱媒体供給管32は、熱媒体流路31の出口と気化器40の熱媒体入口42とを接続する。熱媒体戻り管33は、気化器40の熱媒体出口43と熱媒体流路31の入口とを接続する。また、熱媒体供給管32には、循環流路30に熱媒体を圧送する循環ポンプ34が設けられている。また、熱媒体戻り管33の熱媒体出口43の近傍には、気化器出口熱媒体温度TLを検出する熱媒体温度センサ38が設けられている。
【0020】
循環ポンプ34で加圧された熱媒体は、熱媒体供給管32を通って熱媒体入口42からケーシング41の内部に流入する。熱媒体は、ケーシング41の内部で水素チューブ45の外面を流れ、水素チューブ45の中を流れる低温の液体水素と熱交換して温度が低下する。温度の低下した熱媒体は、気化器40の熱媒体出口43から熱媒体戻り管33に流出する。熱媒体は、熱媒体戻り管33から加熱器20の熱媒体流路31に流入する。そして、熱媒体流路31で冷却水流路21を流れる温度の高い冷却水と熱交換して温度の上昇した熱媒体は熱媒体供給管32から循環ポンプ34に還流する。
【0021】
次に、水素回路50について説明する。水素回路50は、液体水素タンク51と、液体水素ポンプ入口管52と、液体水素ポンプ53と、液体水素入口管54と、水素チューブ45と、水素ガス出口管56と、減圧弁57と、水素ガス供給管59とで構成されている。
【0022】
液体水素タンク51は内部に低温の液体水素を貯留するタンクである。液体水素ポンプ入口管52は液体水素タンク51と液体水素ポンプ53の吸込口とを接続する。液体水素入口管54は、液体水素ポンプ53の吐出口と水素チューブ45の入口とを接続する。水素ガス出口管56は、水素チューブ45の出口と減圧弁57とを接続する。水素ガス出口管56には、気化器出口水素ガス温度THを検出する水素ガス温度センサ58が取り付けられている。水素ガス供給管59は、減圧弁57と水素エンジン15のインジェクタ16とを接続する。
【0023】
液体水素タンク51に貯留された極低温の液体水素は液体水素ポンプ53によって加圧され、液体水素ポンプ入口管52から水素チューブ45の中に流入する。水素チューブ45の中を流れる液体水素は、水素チューブ45の外面を通流する温度の高い熱媒体との間で熱交換し、気化して水素ガスとなる。水素チューブ45の中を流れる水素ガスは、水素チューブ45の外面を通流する温度の高い熱媒体との間で熱交換し、所定の温度の水素ガスとなって水素チューブ45の出口から水素ガス出口管56に流出する。水素ガスは減圧弁57で水素エンジン15への供給圧力に減圧された後、水素ガス供給管59を通って水素エンジン15のインジェクタ16に供給される。水素ガスは水素エンジン15の内部で燃焼して駆動力を発生するとともに、内部流路17を通流する冷却水の温度を上昇させる。
【0024】
水素エンジン15は、エンジン制御部60によって制御される。エンジン制御部60は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU61と、制御プログラムや制御データが格納されるメモリ62とを含むコンピュータである。エンジン制御部60は、インジェクタ16の開度を調整して水素エンジン15の出力を調整する。エンジン制御部60は、水素エンジン車両200に取り付けられたスタートスイッチ18が接続されている。エンジン制御部60は、スタートスイッチ18がONになると水素エンジン15を始動させ、スタートスイッチ18がOFFとなると水素エンジン15を停止する。また、エンジン制御部60は、後で説明する制御部70と通信して情報の授受を行う。エンジン制御部60は、水素エンジン15の出力とスタートスイッチ18のオン/オフ信号を制御部70に出力する。
【0025】
制御部70は、内部に情報処理を行うプロセッサであるCPU71と、制御プログラムや制御データを格納するメモリ72とを備えるコンピュータである。循環ポンプ34と、液体水素ポンプ53とは制御部70に接続されて制御部70の指令によって動作する。また、熱媒体温度センサ38は制御部70に接続され熱媒体温度センサ38が検出した気化器出口熱媒体温度TLは制御部70に入力される。また、制御部70は、エンジン制御部60と情報の授受を行う。制御部70は、エンジン制御部60から水素エンジン15の出力とスタートスイッチ18のオン/オフ信号とを受信する。
【0026】
制御部70はメモリ62の中に図2に示すベース駆動デューティ算出用マップ75と、図3に示す補正係数算出用マップ76とを格納している。ベース駆動デューティ算出用マップ75は、気化器出口熱媒体温度TLに対するベース駆動デューティDを規定したマップである。ベース駆動デューティDは、気化器出口熱媒体温度TLがTL1まではD2である。気化器出口熱媒体温度TLがTL1とTL2(TL2>TL1)の間では、ベース駆動デューティDは、気化器出口熱媒体温度TLが高くなるにつれD2からD1まで低下する。そして、ベース駆動デューティDは、気化器出口熱媒体温度TLがTL2を超えるとD1一定となる。尚、ベース駆動デューティDは循環ポンプ34の最低駆動デューティと100%の間で設定されるので、D2の最大値は100%で、D1の最小値は循環ポンプ34の最低駆動デューティ、例えば、10%である。
【0027】
また、補正係数算出用マップ76は、水素エンジン15の出力に対する循環ポンプ34のベース駆動デューティDを補正する補正係数Cを規定したマップである。補正係数Cは、水素エンジン15の出力がW1よりも小さい場合には、最小値のC1である。そして、補正係数Cは水素エンジン15の出力がW1からW2まで大きくなるとC1からC2まで大きくなる。そして、水素エンジン15の出力がW2を超えると、補正係数CはC2一定となる。尚、本実施形態の水素供給装置100では、補正係数Cは、1.0以上、例えば、1.0~2.0の間で設定される。この場合、C1の最小値は1.0であり、C2の最大値は2.0となる。
【0028】
制御部70は、ベース駆動デューティ算出用マップ75を用いて算出したベース駆動デューティDと、補正係数算出用マップ76を用いて算出した補正係数Cにより、駆動デューティ指令値DSを下記の式1で算出する。
駆動デューティ指令値DS=ベース駆動デューティD×補正係数C ・・・ (式1)
駆動デューティ指令値DSは、循環ポンプ34の流量制御を行う場合の指令値である。制御部70は、気化器出口熱媒体温度TLが低くなるとベース駆動デューティDを高くして循環流路30を通流する熱媒体の流量を大きくする。これにより、気化器40での熱媒体と水素との交換熱量が大きくなり、気化器出口水素ガス温度THが上昇する。
【0029】
また、制御部70は、気化器出口熱媒体温度TLが高くなるとベース駆動デューティDを小さくして循環流路30を通流する熱媒体の流量を少なくする。これにより、気化器40での熱媒体と水素との交換熱量が少なくなり、気化器出口水素ガス温度THが低下する。
【0030】
また、水素エンジン15の出力が大きくなると水素ガスの流量が大きくなり、気化器出口水素ガス温度THが低下してくる。一方、水素エンジン15の出力が小さくなると気化器出口水素ガス温度THが上昇してくる。この場合、駆動デューティ指令値DS=ベース駆動デューティDとしていると制御応答の遅れから水素エンジン15の出力の増加/減少により気化器出口水素ガス温度THが大きく低下/上昇する場合がある。そこで、実施形態の水素供給装置100では、補正係数算出用マップ76と式1を用いて水素エンジン15の出力に応じて駆動デューティ指令値DSを変化させる先行制御を行う。これにより、気化器出口水素ガス温度THの大きな変動を抑制する。つまり、水素エンジン15の出力が大きくなると出力増加による気化器出口水素ガス温度THの低下を見込んだ分だけ駆動デューティ指令値DSが大きくなるように補正係数Cを大きくする。また、水素エンジン15の出力が小さくなると出力低下による気化器出口水素ガス温度THの上昇を見込んだ分だけ駆動デューティ指令値DSが小さくなるように補正係数Cを小さくする。これにより、簡便な方法で水素エンジン15の出力の変動があった場合でも、気化器出口水素ガス温度THを所定の温度範囲に保つことができる。
【0031】
次に図4を参照して水素供給装置100の動作について説明する。スタートスイッチ18がオンになると、水素エンジン15と水素供給装置100が始動する。水素供給装置100の制御部70は、図4のステップS101で熱媒体温度センサ38によって気化器出口熱媒体温度TLを取得する。制御部70は、図4のステップS102に進んで、メモリ72に格納しているベース駆動デューティ算出用マップ75を参照して気化器出口熱媒体温度TLに対応するベース駆動デューティDを算出する。
【0032】
図4のステップS103で制御部70は、エンジン制御部60から水素エンジン15の出力を受信する。そして、制御部70は、図4のステップS104で図3に示す補正係数算出用マップ76を参照して水素エンジン15の出力に対応する補正係数Cを算出する。
【0033】
次に、制御部70は、図4のステップS105に進んで先に述べた式1により駆動デューティ指令値DSを算出する。
【0034】
次に、制御部70は、図4のステップS106に進んで、算出した駆動デューティ指令値DSにより循環ポンプ34の駆動制御を行う。
【0035】
次に、制御部70は、図4のステップS106を実行したら図4のステップS107に進む。制御部70は、ステップS107でエンジン制御部60からスタートスイッチ18のオフ信号を受信しているか判断する。制御部70は、図4のステップS107でNOと判断した場合には、図4のステップS101に戻ってステップS101からステップS107の動作を繰り返して実行する。一方、制御部70は、図4のステップS107でYESと判断した場合には処理を終了する。
【0036】
このように、制御部70は、気化器出口熱媒体温度TLが低くなるとベース駆動デューティDを高くして循環流路30を通流する熱媒体の流量を大きくする。すると、気化器40での熱媒体と水素との交換熱量が大きくなり、気化器出口水素ガス温度THが上昇する。また、制御部70は、気化器出口熱媒体温度TLが高くなるとベース駆動デューティDを小さくして循環流路30を通流する熱媒体の流量を少なくする。すると、気化器40での熱媒体と水素との交換熱量が少なくなり、気化器出口水素ガス温度THが低下する。これにより、水素供給装置100は、気化器出口水素ガス温度THを所定の範囲内に保ち、水素ガスの温度が高くなることによる水素エンジン15の出力の低下や、水素ガスの温度が低くなることによる水素配管の損傷を抑制することができる。
【0037】
また、制御部70は、水素エンジン15の出力増加による気化器出口水素ガス温度THの低下を見込んだ分だけ駆動デューティ指令値DSが大きくなるように補正係数Cを大きし、水素エンジン15の出力低下による気化器出口水素ガス温度THの上昇を見込んだ分だけ駆動デューティ指令値DSが小さくなるように補正係数Cを小さくする。これにより、簡便な方法で水素エンジン15の出力の変動があった場合でも、気化器出口水素ガス温度THを所定の温度範囲に保つことができる。
【0038】
以上の説明では、水素供給装置100は水素エンジン車両200の水素エンジン15に水素ガスを供給するものとして説明したがこれに限定されない。例えば、車両に搭載された動力装置である燃料電池に水素ガスを供給するものでもよい。
【符号の説明】
【0039】
10 加熱回路、15 水素エンジン、16 インジェクタ、17 内部流路、18 スタートスイッチ、20 加熱器、21 冷却水流路、22 冷却水供給管、23 冷却水戻り管、25 冷却水循環流路、30 循環流路、31 熱媒体流路、32 熱媒体供給管、33 熱媒体戻り管、34 循環ポンプ、38 熱媒体温度センサ、40 気化器、41 ケーシング、42 熱媒体入口、43 熱媒体出口、45 水素チューブ、50 水素回路、51 液体水素タンク、52 液体水素ポンプ入口管、53 液体水素ポンプ、54 液体水素入口管、56 水素ガス出口管、57 減圧弁、58 水素ガス温度センサ、59 水素ガス供給管、60 エンジン制御部、61、71 CPU、62、72 メモリ、70 制御部、75 ベース駆動デューティ算出用マップ、76 補正係数算出用マップ、100 水素供給装置、200 水素エンジン車両。
図1
図2
図3
図4