(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158222
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】栽培容器
(51)【国際特許分類】
A01G 9/02 20180101AFI20241031BHJP
D21J 3/10 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A01G9/02 101U
D21J3/10
A01G9/02 101W
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073238
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三好 瑞江
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝男
【テーマコード(参考)】
2B327
4L055
【Fターム(参考)】
2B327NC02
2B327NC23
2B327NE05
2B327QA02
2B327RA02
2B327VA05
2B327VA20
4L055BF08
4L055GA05
(57)【要約】
【課題】栽培する際に鉢部から取り外した蓋部を、鉢部の受け皿として利用することが可能なパルプモールド製の栽培容器を提供する。
【解決手段】本発明は、パルプモールド製の栽培容器1であって、天面側開口部3oを有し培土Sを内部に収容可能な鉢部3と、前記天面側開口部3oを覆う蓋部2と、を備え、前記蓋部2は、前記蓋部2の天面側を底にすることで前記鉢部3の受け皿として機能するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプモールド製の栽培容器であって、
天面側開口部を有し培土を内部に収容可能な鉢部と、前記天面側開口部を覆う蓋部と、を備え、
前記蓋部は、前記蓋部の天面側を底にすることで前記鉢部の受け皿として機能するように構成されている、栽培容器。
【請求項2】
前記天面側開口部の周縁には、外側に折り返された折り返し部が形成されており、
前記蓋部を前記鉢部の受け皿として使用するときに、前記蓋部の内面と前記折り返し部が接触している、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項3】
前記天面側開口部の周縁には、外側に折り返された折り返し部が形成されており、
前記蓋部を前記鉢部の蓋として使用するときに、前記蓋部の内面と前記折り返し部が接触している、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項4】
前記蓋部が平面部を有する、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項5】
前記鉢部および前記蓋部はそれぞれ、ドーム形状を呈している、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項6】
前記栽培容器のパルプ原料が、バージンパルプを主成分とする、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項7】
前記栽培容器のパルプ原料が、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプである、請求項1に記載の栽培容器。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の栽培容器の製造方法であり、
パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、
パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げてモールド中間体を得る抄き上げ工程と、
前記モールド中間体を第1のプレス金型と第2のプレス金型とで挟んでホットプレスするホットプレス工程とを有する、栽培容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルプモールド製の栽培容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栽培を管理しやすい点や、苗を効率良く育てやすい点等から、栽培容器に培土等が予め収容された育苗ポット(以下、単に「育苗ポット」ともいう)が広く流通されており、プラスチック製の栽培容器が多く出回っている。
【0003】
一方、近年世界的にプラスチックゴミ問題が深刻化しており、地球環境の改善のため、栽培容器の素材をプラスチックから他の素材に替えることが望まれている。そして、栽培容器においても、プラスチックから紙材に替えることが提案されており、例えば、特許文献1には、パルプモールド製の栽培容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、栽培容器は、流通や運搬時において内部の培土がこぼれないよう鉢部の開口部を蓋部で密閉されることがあるが、栽培する際には、当該蓋部を取り除く必要があり、取り除いた後の不要な蓋部においては処理する手間が生じる。また、栽培する際には、鉢部の受け皿としてトレイ等を別途用意する必要があることが考えられる。特許文献1には、パルプモールド製の栽培容器の記載はあるが、これらの点について十分に考慮されているとは言えず、パルプモールド製の蓋付きの栽培容器の構造については、依然として改善する余地がある。
【0006】
本発明の目的は、栽培する際に鉢部から取り外した蓋部を、鉢部の受け皿として利用することが可能なパルプモールド製の栽培容器およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る栽培容器は、以下の<1>~<7>の構成を有する。
<1> パルプモールド製の栽培容器であって、天面側開口部を有し培土を内部に収容可能な鉢部と、前記天面側開口部を覆う蓋部と、を備え、前記蓋部は、前記蓋部の天面側を底にすることで前記鉢部の受け皿として機能するように構成されている、栽培容器。
<2> 前記天面側開口部の周縁には、外側に折り返された折り返し部が形成されており、前記蓋部を前記鉢部の受け皿として使用するときに、前記蓋部の内面と前記折り返し部が接触している、<1>に記載の栽培容器。
<3> 前記天面側開口部の周縁には、外側に折り返された折り返し部が形成されており、前記蓋部を前記鉢部の蓋として使用するときに、前記蓋部の内面と前記折り返し部が接触している、<1>または<2>に記載の栽培容器。
<4> 前記蓋部が平面部を有する、<1>~<3>のいずれかに記載の栽培容器。
<5> 前記鉢部および前記蓋部はそれぞれ、ドーム形状を呈している、<1>~<4>のいずれかに記載の栽培容器。
<6> 前記栽培容器のパルプ原料が、バージンパルプを主成分とする、<1>~<5>のいずれかに記載の栽培容器。
<7> 前記栽培容器のパルプ原料が、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプである、<1>~<6>のいずれかに記載の栽培容器。
【0008】
本発明に係る栽培容器の製造方法は、以下の<8>の構成を有する。
<8> <1>~<7>のいずれかに記載の栽培容器の製造方法であり、パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程と、パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げてモールド中間体を得る抄き上げ工程と、前記モールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と第2のプレス金型とで挟んでホットプレスするホットプレス工程とを有する、栽培容器の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る栽培容器によれば、流通・販売時には、蓋部で鉢部を密閉して収容された培土がこぼれることを防止することができ、栽培する際には、鉢部から取り外した蓋部を、鉢部の受け皿として使用することができるため、蓋部を無駄なく利用することができ、育苗ポットの受け皿を別途用意する手間を無くすことが可能となる。また、栽培容器がパルプモールド製なので、土に埋めると経時で分解し植え替えの必要がなく地球環境に配慮した栽培が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る、蓋部で鉢部の天面側開口部を覆った状態における栽培容器の斜視図である。
【
図2】
図1に示す栽培容器の平面図であり、(a)は天面側の平面図であり、(b)は側面側の平面図である。
【
図3】栽培容器に培土が収容された状態における、
図2(a)のIII-III方向断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係る、蓋部を鉢部の受け皿として使用した状態における栽培容器の斜視図である。
【
図5】
図4に示す栽培容器の平面図であり、(a)は天面側の平面図であり、(b)は側面側の平面図である。
【
図6】栽培容器に培土が収容された状態における、
図5(a)のVI-VI方向断面図である。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る、蓋部で鉢部の天面側開口部を覆った状態且つ培土が収容された状態における栽培容器の断面図であり、
図2(a)のIII-III方向断面図に対応する断面図である。
【
図8】本発明の第2実施形態に係る、蓋部を鉢部の受け皿として使用した状態における栽培容器の斜視図である。
【
図9】
図8に示す栽培容器の平面図であり、(a)は天面側の平面図であり、(b)は側面側の平面図である。
【
図10】栽培容器に培土が収容された状態における、
図9(a)のX-X方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から
図10を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。但し、本発明は本形態の態様に限定されるものではない。
【0012】
なお、本明細書および特許請求の範囲の記載において、栽培容器は、少なくとも蓋部と鉢部とで構成されるものであり、蓋部で鉢部の天面側開口部を覆った状態(以下「A状態」とも言う)と、蓋部を鉢部の受け皿として使用した状態(以下「B状態」とも言う)の少なくとも2種類の形態を有するものである。また、本明細書や特許請求の範囲の記載において、「栽培」とは、育苗や播種も含むものであり、植物を植えて育てること全般を指すものとして参照される。
【0013】
[第1実施形態]
[構造]
図1は本発明の第1実施形態に係る、蓋部2で鉢部3の天面側開口部3oを覆ったA状態における栽培容器1Aの斜視図であり、
図2は
図1に示す栽培容器1Aの平面図であり、
図2(a)は天面側の平面図であり、
図2(b)は側面側の平面図であり、
図3は栽培容器1Aに培土Sが充填された状態における、
図2(a)のIII-III方向断面図である。また、
図4は本実施形態に係る、蓋部2を鉢部3の受け皿として使用したB状態における栽培容器1Bの斜視図であり、
図5は
図4に示す栽培容器1Bの平面図であり、
図5(a)は天面側の平面図であり、
図5(b)は側面側の平面図であり、
図6は栽培容器1Bに培土Sが充填された状態における、
図5(a)のVI-VI方向断面図である。
【0014】
本実施形態に係る栽培容器1は、パルプモールド製のもの(以下、「パルプモールド成形体」とも言う)であって、
図1から
図6に示すように、天面側開口部3oを有し培土Sを内部に収容可能な鉢部3と、天面側開口部3oを覆う蓋部2と、を備え、蓋部2は、蓋部2の天面側を底にすることで鉢部3の受け皿として機能するように構成されている。
【0015】
この構成によれば、流通・販売時には、蓋部2で鉢部3を密閉して収容された培土Sがこぼれることを防止することができ、栽培する際には、鉢部3から取り外した蓋部2を、鉢部3の受け皿として使用することができるため、蓋部2を無駄なく利用することができ、育苗ポットの受け皿を別途用意する手間を無くすことが可能となる。また、栽培容器1がパルプモールド製なので、土に埋めると経時で分解し植え替えの必要がなく地球環境に配慮した栽培が可能となる。
【0016】
本実施形態に係る栽培容器1の鉢部3には、培土S、植物の苗や種等が収容可能であり、育苗ポットとして使用されうるものである。栽培容器1で栽培される植物としては、特に限定されず、トマト、キュウリ、オクラ、エンドウなどの農業用植物;アサガオ、パンジー、チューリップ、アジサイなどの園芸植物;サボテン、アロエなどの多肉植物;などが挙げられる。中でも、栽培容器がパルプモールド製である点を考慮すると、栽培容器と水の接触が少ないほうが衛生上好ましいため、水やりが少量で済む植物が好ましく、多肉植物が特に好ましい。
【0017】
培土Sとして、例えば、赤玉土、鹿沼土、日向土、山砂、川砂、桐生砂、田土、軽石、発泡スチロール、発泡ポリエチレン、パーライト、バーミキュライト、ロックウール、ゼオライト、木材チップ、竹チップ、発泡ガラス、ピートモス、腐葉土、パーク堆肥、モミガラ、薫炭、炭粉、フスマ、湿潤剤を採用することができる。必要に応じて、無機質肥料、有機質肥料、化学堆肥等を培土Sに加えてもよい。
【0018】
本実施形態では、
図3から
図6に示すように、鉢部3の底には、水はけを良くするため、また通気のために底穴3hが8つ形成されている。本発明では、底穴3hの数はこれに限られず、底穴3hの形状や大きさについても様々なものが採用されうる。
【0019】
本実施形態では、
図1から
図6に示すように、天面側開口部3oの周縁には、外側に折り返された折り返し部3fが形成されている。
【0020】
より具体的には、A状態の栽培容器1Aにおいて、
図1から
図3に示すように、蓋部2を鉢部3の蓋として使用するときに、A状態の蓋部2Aの内面と折り返し部3fが接触している。A状態において、蓋部2Aの内面と折り返し部3fは、周の一部が接触していてもよいが、全周にわたって接触していることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、流通や運搬時において鉢部3の内部にある培土Sが、蓋部2の内面と折り返し部3fとの間から外側にこぼれ出ることを抑制できる。
【0022】
また、本実施形態では、B状態の栽培容器1Bにおいて、
図4から
図6に示すように、蓋部2を鉢部3の受け皿として使用するときに、B状態の蓋部2Bの内面と折り返し部3fが接触している。これにより、蓋部2の内面と鉢部3の外面との間には空間Gが形成される。
【0023】
この構成によれば、鉢部3の内部にある培土Sに水を注ぐ際、底穴3hを通じて受け皿である蓋部2に注がれ貯まった水が空間Gにプールされるが、蓋部2の内面と折り返し部3fとの間から外側にこぼれ出ることを抑制できる。くわえて、プールされた水が空間Gから蒸発しにくいため、培土が乾燥した際に、プールされた水が培土に供給される効果が期待できる。さらに、空間Gが断熱層として機能し、培土の保温性が向上し、植物の発育が促進される効果も期待できる。
【0024】
さらに、本実施形態では、蓋部2が平面部を有する。
【0025】
この構成によれば、蓋部2を鉢部3の受け皿として使用するときに、蓋部2を安定して配置することが可能となる。蓋部2の平面部の寸法は、
図3の断面図の幅方向(左右方向)における寸法の全体に対して、たとえば20~40%であってもよい。後述の第2実施形態にも同様の寸法が適用されうる。
【0026】
より具体的には、A状態の栽培容器1Aにおいて、
図1から
図3に示すように、蓋部2Aの天面部が平面部を有し、鉢部3の底面部が平面部を有する。
【0027】
この構成によれば、複数の栽培容器1を縦に安定して積み重ねることが可能となる。
【0028】
また、本実施形態では、鉢部3および蓋部2はそれぞれ、ドーム形状を呈している。いいかえると、鉢部3および蓋部2はそれぞれ、曲面部を有している。
【0029】
この構成によれば、栽培容器1にデザインを施したり美粧性を付加したりすることが可能となる。当該ドーム形状の栽培容器1の蓋部2の曲率半径は、
図3の断面図の蓋部2の平面部から連続する曲面部について、たとえば30~50mmであってもよい。このとき、当該曲面部を2つに分け、当該平面部に近い方を曲率半径が大きく、当該平面部に遠い方を曲率半径が小さいものとしてもよい。また、鉢部3の曲率半径は、
図3の断面図の鉢部3の平面部から連続する曲面部について、たとえば20~35mmであってもよい。なお、鉢部3の曲面部の曲率半径は、蓋部2の曲面部の曲率半径よりも小さいことが好ましい。後述の第2実施形態にも同様の曲率半径が適用されうる。
【0030】
本実施形態に係る栽培容器は、パルプモールド製である。以下、本実施形態に係る栽培容器を「パルプモールド成形体」と称し、その原料や製法について説明する。すなわち、ここで言う「パルプモールド成形体」は、栽培容器を構成する蓋部や鉢部を含む。なお、本実施形態に係る栽培容器は、鉢部および蓋部に加えて他の構成をさらに備えていてもよく、当該他の構成はパルプモールド製でなくてもよい。
【0031】
[パルプ原料]
パルプモールド成形体のパルプ原料としては、木材パルプ、非木材パルプ、古紙が例示され、木材パルプ、非木材パルプが好ましく、木材パルプおよび非木材パルプの混合パルプであることがより好ましい。ここで、パルプ原料は、パルプモールド成形体を構成するパルプである。
【0032】
木材パルプとしては、一般に製紙用途で使用されている木材パルプが挙げられ、その調製法の違いにより、クラフトパルプ(KP)、サルファイトパルプ(SP)、ソーダパルプ(AP)等の化学パルプ;セミケミカルパルプ(SCP)、ケミグランドウッドパルプ(CGP)等の半化学パルプ;砕木パルプ(GP)、サーモメカニカルパルプ(TMP、BCTMP)、リファイナーグランドウッドパルプ(RGP)等の機械パルプ;等に分類される。
【0033】
木材パルプとしては、原料により、針葉樹パルプおよび広葉樹パルプが例示される。針葉樹パルプとしては、モミ属、マツ属等から得られるパルプが例示される。また、広葉樹パルプとしては、アカシア属、ユーカリ属、ヤマナラシ属(たとえば、ポプラ)等から得られるパルプが例示される。
【0034】
これらの中でも、木材パルプとしては、針葉樹クラフトパルプ(NKP)、広葉樹クラフトパルプ(LKP)がより好ましい。
【0035】
本実施形態において、広葉樹パルプとしては、得られるパルプモールド成形体の平滑性の観点から、アカシア属およびユーカリ属の木材パルプが好ましい。広葉樹パルプは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
本実施形態において、針葉樹パルプとしては、マツ属の針葉樹パルプが好ましく、ラジアータパインがより好ましい。パルプ原料として、針葉樹パルプを含有することにより、より強度に優れたパルプモールド成形体が得られる。針葉樹パルプは、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0037】
パルプ原料が木材パルプと非木材パルプとの混合パルプである場合、パルプ原料中の木材パルプの含有量は、パルプモール成形体の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0038】
非木材パルプは、植物の皮、茎、葉、葉鞘から採取した繊維である。具体的には、コットンリンター、木綿、リネン、大麻、ラミー、わら、エスパルト、マニラ麻、ザイザル麻、黄麻、亜麻、ケナフ、竹、バガス、がんぴ、みつまた、こうぞ、桑から得られるパルプが挙げられる。
【0039】
非木材パルプは、パルプモールド成形体の耐油性を向上させる観点から、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかを含むことが好ましく、バガスおよび竹から選択される少なくともいずれかであることがより好ましく、バガスであることがさらに好ましい。
【0040】
パルプ原料が木材パルプと非木材パルプとの混合パルプである場合、パルプ原料中の非木材パルプの含有量は、パルプモールド成形体の表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上、よりさらに好ましくは45質量%以上であり、そして、好ましくは95質量%以下、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下、よりさらに好ましくは80質量%以下、よりさらに好ましくは55質量%以下である。
【0041】
本実施形態において、パルプ原料はバージンパルプを主成分とすることが好ましい。バージンパルプを主成分とすることにより、より表面平滑性に優れるパルプモールド成形体が得られる。なお、「バージンパルプを主成分とする」とは、パルプ原料中のバージンパルプの含有量が、好ましくは80質量%以上、より好ましくは85質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、よりさらに好ましくは95質量%以上であり、そして、100質量%以下であり、よりさらに好ましくは100質量%であることをいう。
【0042】
バージンパルプとしては、特に限定されないが、たとえば、晒しパルプ、半晒しパルプが好ましい。
【0043】
なお、未晒しパルプは、リグニンの残留量が多く、白色度が低く、装飾性に劣る傾向にある。したがって、パルプ原料中の未晒しパルプの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
【0044】
一方、強度、汚れの目立ちにくさ、自然な風合いなどが求められる用途においては、未晒しパルプを使用することが好ましい。この際、パルプ原料中の未晒しパルプの含有量は、好ましくは20質量%超、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である(上限100質量%)。この場合において、晒しパルプおよび半晒しパルプの少なくとも一方を未晒しパルプと併用してもよい。
【0045】
また、パルプ原料として、マーセルパルプ、架橋パルプを含有すると、パルプモールド成形体の強度が低下したり、密度が低下する傾向がある。したがって、パルプ原料中のマーセルパルプおよび架橋パルプの含有量は、それぞれ、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
【0046】
古紙パルプは、インキの残留量が多く、分散性に劣る傾向がある。また、古紙の繊維は毛羽立ち、変形している傾向にある。また、古紙パルプは白色度が低く、インキがパルプ繊維上に残留したまま細長く黒く見える未脱墨繊維が存在し、黒ひげが発生する傾向にある。また、灰色に見えるビニール等や、黒色斑点スポットが残留しているためにチリが見られる。その結果として、得られるパルプモールド成形体の外観や、表面平滑性が低下する傾向にあることから、パルプ原料中の古紙パルプの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、よりさらに好ましくは含有しないこと(0質量%)である。
【0047】
本実施形態において、パルプ原料のカナダ標準ろ水度は、パルプ原料の生産性、およびパルプモールド成形体を製造時の抄紙性の観点から、好ましくは100mL以上、より好ましくは150mL以上、さらに好ましくは200mL以上であり、そして、表面平滑性の観点から、好ましくは600mL以下、より好ましくは520mL以下、さらに好ましくは450mL以下、よりさらに好ましくは400mL以下、よりさらに好ましくは300mL以下である。
【0048】
カナダ標準ろ水度が上記範囲内となるように、叩解の程度を調整すればよい。
【0049】
カナダ標準ろ水度は、JIS P 8121-2:2012に準拠して測定される。
【0050】
[その他の成分]
パルプモールド成形体は、上述したパルプを主原料として形成されている。パルプモールド成形体は、パルプ100%から形成されていてもよいが、パルプに加えて、各種内添助剤等の他の成分を配合してなるものでもよい。
【0051】
他の成分としては、タルク、カオリン等の無機物、ガラス繊維やカーボン繊維等の無機繊維、ポリオレフィン等の合成樹脂の粉末または繊維、カルボキシメチルセルロース等の多糖類、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、耐油剤、歩留剤、濾水向上剤、嵩高剤、硫酸バンド、pH調整剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、顔料等の着色剤等が例示される。他の成分として、サイズ剤を含有することが好ましい。
【0052】
サイズ剤としては、ロジン系サイズ剤(たとえば、酸性ロジン系サイズ剤、中性ロジン系サイズ剤)、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、スチレン-(メタ)アクリレート共重合体などのスチレン含有ポリマーが挙げられ、アルキルケテンダイマーが好ましい。
【0053】
湿潤紙力増強剤としては、内添用の湿潤紙力増強剤として、ポリアミドアミン・エピクロロヒドリン樹脂、エポキシ化ポリアミドポリアミン、ジアルデヒドでんぷん、尿素ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、ポリアクリルアミド、メチロール化ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン等が例示される。
【0054】
また、撥水剤としては、ワックスエマルジョン、金属石けん(ナトリウム、カリウム、亜鉛、リチウム、マグネシウム等のアルカリ塩)、脂肪酸クロム錯塩(ミリスチン錯塩、ステアリン酸クロミッククロライド錯塩等)、ジルコニウム撥水剤、シリコーンエマルジョン等が例示される。
【0055】
本実施形態に係る栽培容器のパルプモールド成形体は、非木材パルプを含有する場合、パルプ原料のみで耐油性を向上させることが可能であることから、湿潤紙力増強剤および撥水剤の添加量を減少しても、または添加しなくても、十分な耐油性を得ることが可能である。なお、より高い耐油性および耐水性を得ることを目的として、湿潤紙力増強剤または撥水剤を添加する態様を排除するものではない。
【0056】
[密度]
パルプモールド成形体の密度は、表面平滑性および耐油性をより向上させる観点から、密度が好ましくは0.45g/cm3以上、より好ましくは0.50g/cm3以上、さらに好ましくは0.60g/cm3以上であり、そして、好ましくは1.0g/cm3以下、より好ましくは0.95g/cm3以下である。
【0057】
パルプモールド成形体の密度は、JIS P 8118:2014に準じて測定することができる。なお、JIS P 8118:2014は紙や板紙に用いる方法であり、本実施形態においては、サンプルの大きさが規定通りに取れないことがあり、その際にはサンプルサイズを適宜調整して測定に用いる。坪量はJIS P 8124:2011に準じて測定するが、サンプルサイズの調整も前記同様である。測定には成形体の平面部分を用いる。
【0058】
パルプモールド成形体は、後述する抄き上げ工程を複数回行ったり、ホットプレス工程において、複数のモールド中間体をホットプレスすることにより、複数層の構成としてもよいが、表面平滑性および耐油性により優れる観点から、1層構成とすることが好ましい。
【0059】
[二次加工パルプモールド成形体]
パルプモールド成形体を表面加工して、二次加工パルプモールド成形体としてもよい。なお、本実施形態において、二次加工パルプモールド成形体とは、パルプモールド成形体に、表面加工を施したものである。なお、本実施形態のパルプモールド成形体は、表面平滑性に優れるため、表面加工を容易に施すことができるという利点をも有する。
【0060】
二次加工の方法としてはとくに限定されず、パルプモールドの表面加工が可能な方法であればとくに限定されないが、二次加工パルプモールド成形体は、直刷法、ラミネート法、転写法、および蒸着法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることが好ましく、直刷法、ラミネート法、および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがより好ましく、ラミネート法および転写法の少なくとも1つの表面加工法により表面加工されたものであることがさらに好ましい。
【0061】
なお、これらの方法に限定されず、予め印刷されたシール等を貼付してもよい。
【0062】
(直刷法)
直刷法は、色、柄、模様等の付与や、防水性、防湿性等の付与を目的として、直接パルプモールド成形体の表面にインクや樹脂を付与するものであり、含浸、印刷等により、パルプモールド成形体を表面加工する方法が挙げられる。
【0063】
印刷としては、ゴム版や樹脂版による凸版印刷、シルクスクリーン印刷、タンポ印刷、静電印刷、熱転写印刷などのいずれの印刷手段であってもよい。印刷により、得られたパルプモールド成形体の表面に、図柄や文字等を設けることができる。
【0064】
また、パルプモールド成形体への刷毛、スプレーなどによって直刷してもよい。これらの中でも、均一に樹脂等を付与する観点から、スプレー塗布が好ましい。スプレー塗布はエアスプレー、エアレススプレー、静電スプレー等のいずれにより行ってもよい。
【0065】
パルプモールド成形体の表面に防水・防湿性を付与する場合には、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂等の樹脂を固形分に含む水系エマルジョン塗料、またはこれらの樹脂の水溶液塗料若しくは有機溶剤系塗料等を塗工すればよい。
【0066】
(ラミネート法)
ラミネート加工は、樹脂フィルムで被覆することにより行われることが好ましく、使用される樹脂フィルムとしては、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル等のポリビニル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル等の熱可塑性樹脂フィルム、変性ポリエチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等の生分解性樹脂フィルムが挙げられる。製造コスト、成形性等を考慮すると、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、環境に配慮した廃棄性の点からは、生分解性樹脂フィルムが好ましい。ラミネート加工は、これらの樹脂フィルムの2種以上を積層させて形成してもよい。
【0067】
樹脂フィルムの厚みはとくに限定されないが、10μm以上300μm以下であることが好ましい。
【0068】
上記の樹脂フィルムをラミネート加工することにより、耐水性、耐油性、ガスバリア性等の機能を向上または付与することができる。
【0069】
また、ラミネート加工する樹脂フィルムに、予め絵柄を印刷してもよく、着色性のある顔料、微細粒子(パール顔料、ホログラム等)、夜光染料・夜光顔料等を添加しておいてもよい。このような樹脂フィルムを使用することにより、パルプモールド成形体の表面に、光沢性や意匠性を付与することができる。
【0070】
ラミネート加工は、パルプモールド成形体に対して押出ラミネーション、熱ラミネーション、ドライラミネーション、またはウェットラミネーション等の公知の方法で行えばよい。
【0071】
これらの中でも、熱ラミネーションが好ましく、真空ラミネーション、真空プレスが好ましく、真空ラミネーションがより好ましい。
【0072】
真空ラミネーションは、基材側(パルプモールド側)からの吸引により、その上部に置かれたシートを変形させてラミネートを行ってもよく、また、予め真空にされた上下チャンバーを樹脂フィルムで2分割しておき、樹脂フィルム加熱装置を備えた上部チャンバーを圧空とすることにより、下部チャンバーに置かれた基材(パルプモールド成形体)にラミネートする方法でもよい。
【0073】
また、真空プレスは、シリコンラバー等を基材(パルプモールド成形体)側からの真空吸引、場合により上部より圧空力を加えて基材形状に変形させ、シリコンゴム等と基材との間に挟まれた樹脂フィルムがシリコンゴムの圧力により基材にラミネートされる。
【0074】
また、樹脂フィルムを、パルプモールド成形体の形状に合わせて、金型により予備成形し、パルプモールド成形体とラミネートしてもよい。
【0075】
ラミネート加工は、従来公知の方法で行えばよく、真空ラミネーション装置としては、TOM成形機(布施真空株式会社製)などが例示される。
【0076】
また、ラミネーションの際の温度、圧力などの条件は、ラミネートする樹脂フィルムの素材および厚み、基材の形状、接着剤の有無等により適宜選択すればよいが、たとえば、ヒーターの加熱温度は80~200℃で、貼合を行う。
【0077】
ラミネートの際に、樹脂フィルムとパルプモールド成形体との間に、接着剤を付与してもよく、また、付与しなくてもよい。接着剤としては、ポリウレタン系接着剤、ポリアクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリ酢酸ビニル系接着剤、セルロース系接着剤、その他のラミネート用接着剤をしようすることができる。接着剤を付与する場合には、接着剤に着色性を有する顔料、パール顔料、微細粒子(ホログラム等)、夜光顔料、夜光染料等を添加してもよい。
【0078】
(転写法)
転写法としては、ホットスタンプ転写法、インモールド転写法、水圧転写法などの種々の転写法が例示され、乾式転写法、湿式転写法のいずれでもよい。またインモールド転写法において、予備成形工程を加えてもよい。
【0079】
転写法の中では、ホットスタンプ転写法(以下、単に「ホットスタンプ法」ともいう)が好ましい。ホットスタンプ法は、「箔」と呼ばれる金属を蒸着したり、顔料を塗布したフィルムを使用し、箔表面に設けた熱接着層を介して基材に熱転写する方法である。ホットスタンプ法に使用される箔は、離型性を有するベースフィルム(たとえば、二軸延伸ポリエステルフィルム)、剥離層(保護層)、絵柄層・蒸着層、熱接着層の順に積層されており、必要に応じて、ベースフィルムと保護層との間に離形層が設けられる。ホットスタンプ法としては、(i)アップダウン方式、(ii)ロール転写方式が挙げられ、熱圧の存在する部分の絵柄層・蒸着層が、基材(パルプモールド成形体)に転移するという原理は同じである。アップダウン方式では、ヒーターが内蔵された型板を、ベースフィルム側から基材に押し付け、熱接着層を介して、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。同様に、ロール転写方式では、加熱したローラをベースフィルム側から押し付けることで、絵柄層・蒸着層を基材に転写する。また、ベースフィルム側に研削加工、艶差処理、凹凸加工等を施すことにより、転写時に、絵柄層、蒸着層に賦形(凹凸を付す)を行うことも可能である。
【0080】
(蒸着)
蒸着は、従来公知の蒸着法を採用すればよく、物理蒸着でも化学蒸着でもよく、とくに限定されないが、パルプモールド成形体に金属光沢を付与する目的で蒸着することが好ましく、物理蒸着である真空蒸着がより好ましい。
【0081】
蒸着材料は、アルミニウム、クロム、亜鉛、金、銀、プラチナ、ニッケルなどの金属類、SiO2、TiO2、ZrO2、MgF2などの酸化物やフッ化物を使用することが好ましい。
【0082】
蒸着層の厚みは、とくに限定されないが、0.1μm以上であることが好ましい。
【0083】
[パルプモールド成形体の製造方法]
パルプモールド成形体の製造方法はとくに限定されないが、以下の工程1~工程3をこの順で有する製造方法により製造することが好ましい。当該製造方法で得られたパルプモールド成形体は、表面平滑性に優れるため、加飾可能であり、美粧性に優れ、表面加工を容易に施すことが可能である。よって、インテリアやギフトとしても使用できる。加飾方法としては、特に限定されず、上述した二次加工を行ってもよいし、水彩絵具等で描画してもよい。当該製造方法で得られたパルプモールド成形体の栽培容器は、土に埋めるだけでなく、上述したようにインテリア等の鑑賞用途も想定しているものである。特に鑑賞用途の栽培容器においては、二次加工や描画等による加飾が行えることが好ましいため、本実施形態の製造方法により栽培容器を製造することが好ましい。
【0084】
工程1:パルプ懸濁液を準備するパルプ懸濁液準備工程
工程2:パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げてモールド中間体を得る抄き上げ工程
工程3:前記モールド中間体を第1のプレス金型と第2のプレス金型とで挟んでホットプレスするホットプレス工程。
【0085】
工程1では、パルプ原料および必要に応じてその他の成分を水に加えて、パルプ懸濁液(パルプスラリー)を調製する。該懸濁液の濃度(スラリー濃度)は、表面平滑性、寸法安定性、および生産性の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、そして、好ましくは7質量%以下、より好ましくは5質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。
【0086】
工程2は、パルプ懸濁液から抄型を介してパルプを抄き上げる抄き上げ工程である。
【0087】
パルプ懸濁液中に真空引き通水性構造の金網張り金型などの成形金型を浸漬し、パルプ懸濁液を成形金型に吸引して水を排出させると同時にパルプ繊維を型に積層吸着させて型に対称な立体的な湿紙を形成し、次いで、成形金型をパルプ懸濁液から引き上げ、含水した立体的な湿紙の吸引脱水または加圧脱水を行う。
【0088】
この際、成形金型面にパルプを積層吸着した成形金型は、真空吸引を続けながら、パルプ吸着面と対向させて、真空吸引をきかせた取り型(離型装置)を接近させ、パルプモールド中間体を圧縮真空吸引して脱水した後、成形金型の真空圧をゼロにして、取り型にパルプモールド中間体を吸着させた状態で取り方を引き戻して離型する。
【0089】
工程3は、前記抄き上げ工程後に得られたモールド中間体を加熱しながら第1のプレス金型と前記第1のプレス金型とは反対方向に位置する第2のプレス金型とによりホットプレスするホットプレス工程である。
【0090】
工程3は、工程2で得られた脱水後のパルプモールド中間体を、たとえば、多孔質金型からなるホットプレス用の第1のプレス金型に移し変える。前記第1のプレス金型に移し変えられたパルプモールド中間体は、第1のプレス金型と、第1のプレス金型とは反対方向に位置し、第1のプレス金型に係合するホットプレス用の第2のプレス金型とによって挟まれ、加熱、加圧されて、所定のパルプモールド成形体が得られる。
【0091】
なお、ホットプレス用の第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つに内部に電熱ヒーターを内蔵させ、それにより前記第1のプレス金型および第2のプレス金型の少なくとも1つを加熱することが好ましい。また、第1のプレス金型および第2のプレス金型を含む金型全体を熱風を導入した炉内に収容することによって、型の内部にも熱風が通過するようにしてもよい。
【0092】
工程3(ホットプレス工程)において、第1のプレス金型および第2のプレス金型によるプレス時の圧力は、表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を得る観点から、好ましくは0.1MPa・s以上、より好ましくは0.3MPa以上、さらに好ましくは0.4MPa・s以上、よりさらに好ましくは0.6MPa以上であり、そして、消費電力および装置負荷の観点から、好ましくは3.0MPa・s以下、より好ましくは2.0MPa以下、さらに好ましくは1.5MPa・s以下である。
【0093】
工程3(ホットプレス工程)において、ホットプレス時の温度は、表面平滑性に優れるパルプモールド成形体を得る観点から、好ましくは130℃以上、より好ましくは150℃以上、さらに好ましくは170℃以上であり、そして、消費電力、装置負荷、および変色抑制の観点から、好ましくは280℃以下、より好ましくは250℃以下、さらに好ましくは230℃以下である。
【0094】
本実施形態によれば、蓋部2を鉢部3の受け皿として使用する際、培土Sから底穴3hを介して皿に水が浸透し、培土Sの上部が乾燥してくると、皿の下側から上側に水が伝わり、皿に水が溜まり過ぎないと考えられ、好ましい。
【0095】
本実施形態に係る、蓋部2を鉢部3の受け皿として使用したB状態の栽培容器1Bでは、
図6の断面図において、栽培容器1Bの高さをL1Bとすると、高さL1Bは蓋部2の高さL2と等しい。
【0096】
本実施形態では、鉢部3の周縁は折り返されているが、本発明では、鉢部3の周縁を折り返さずに、外側へ折り曲げるような形態も許容されうる。
【0097】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態では、第1実施形態と異なり、鉢部の周縁を折り返さずに、外側へ折り曲げている。第2実施形態では、蓋部2で鉢部3’の天面側開口部3oを覆ったA状態の外観は、第1実施形態の
図1、
図2(a)、および
図2(b)に示すものと同様である。
【0098】
図7は本発明の第2実施形態に係る、蓋部2で鉢部3’の天面側開口部3oを覆ったA状態且つ培土が収容された状態における栽培容器1’Aの断面図であり、
図2(a)のIII-III方向断面図に対応する断面図である。また、
図8は本実施形態に係る、蓋部2を鉢部3’の受け皿として使用したB状態における栽培容器1’Bの斜視図であり、
図9は
図8に示す栽培容器1’Bの平面図であり、
図8(a)は天面側の平面図であり、
図8(b)は側面側の平面図であり、
図10は栽培容器1’Bに培土Sが収容された状態における、
図9(a)のX-X方向断面図である。本実施形態に係る栽培容器1’を構成する各要素のうち、同様の機能を有するものについては、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。また、本実施形態の原料や製法については第1実施形態と同様でありその説明を省略する。
【0099】
本実施形態に係る栽培容器1’も、第1実施形態と同様に、パルプモールド製のものであって、天面側開口部3oを有し培土Sを内部に収容可能な鉢部3’と、天面側開口部3oを覆う蓋部2と、を備え、蓋部2は、蓋部2の天面側を底にすることで鉢部3’の受け皿として機能するように構成されている。
【0100】
本実施形態では、
図7から
図10に示すように、天面側開口部3oの周縁には、径方向外側に突出した折り曲げ部3mが形成されている。本実施形態では、A状態の栽培容器1’Aにおいて、
図7に示すように、蓋部2を鉢部3’の蓋として使用するときに、A状態の蓋部2Aの内面と折り曲げ部3mが接触している一方、B状態の栽培容器1’Bにおいて、
図8から
図10に示すように、蓋部2を鉢部3’の受け皿として使用するときに、B状態の蓋部2Bの内面と折り曲げ部3mとの間に僅かな隙間が形成されている。蓋部2の内面と鉢部3’の外面との間には空間G’が形成される。
【0101】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、流通・販売時には、収容された培土がこぼれることを防止することができ、栽培する際には、蓋部2を無駄なく利用することができ、育苗ポットの受け皿を別途用意する手間を無くすことが可能となり、また、土に埋める場合には、経時で分解し、植え替えの必要がなく、地球環境に配慮した栽培が可能となる。
【0102】
また、本実施形態によれば、蓋部2を外して底として使用した際、万が一水をあげすぎて空間G’に水がプールされたとしても、蓋部2と折り曲げ部3mとの間に僅かな隙間があるため、水が蒸発してカビが生えにくくなる。また、折り返し部の代わりに折り曲げ部を設けることで、第1実施形態よりも鉢部周縁のパルプ量が削減され、分解速度を早くすることができる効果も期待できる。
【0103】
[その他]
本発明は、上述した各実施形態や、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【0104】
例えば、上記実施形態に係る栽培容器1(または1’)では、鉢部3(または3’)の周縁に折り返し部3f(または折り曲げ部3m)が設けられているが、本発明では、本発明の効果を奏する限りにおいて、鉢部3(または3’)の周縁に折り返し部3f(または折り曲げ部3m)を設けずに、蓋部2の周縁に折り返し部(または折り曲げ部)を設けても良いし、蓋部2および鉢部3(または3’)の両方の周縁に折り返し部(または折り曲げ部)を設けても良い。また、折り返し部や折り曲げ部を全く設けない形態も、本発明の効果を奏する限りにおいて許容されうる。
【0105】
加えて、上記実施形態に係る栽培容器1(または1’)では、蓋部2や鉢部3(または3’)はドーム形状であるが、本発明ではこの限りではなく、本発明の効果を奏する限りにおいて、例えば、鉢部3(または3’)が逆切頭円錐台形状であったり、蓋部2が薄型の皿形状であったり様々な形状が採用可能である。
【符号の説明】
【0106】
1、1’ 栽培容器
1A、1’A A状態の栽培容器
1B、1’B B状態の栽培容器
2 蓋部
2A A状態の蓋部
2B B状態の蓋部
2p 周縁面
3、3’ 鉢部
3f 折り返し部
3m 折り曲げ部
3h 底穴
3o 天面側開口部
G、G’ 空間
S 培土