(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158225
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】コンベア装置
(51)【国際特許分類】
B65G 23/44 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
B65G23/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073244
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【弁理士】
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】三橋 太喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】倉田 和夫
(57)【要約】
【課題】構造が複雑化することなく簡易な構造で、しかも張力の不平衡を招くことなく速やかに無端帯の弛みを解消できるコンベア装置を提供する。
【解決手段】ループ状の無端帯1の両端をそれぞれ駆動輪4と従動輪3に懸架して無端帯1の上半部1aを搬送部としたコンベア装置10であって、従動輪3を駆動輪4に対して接近ないし離間する方向へ移動可能に設置するとともに、移動可能とした従動輪3を、駆動輪4に対して離間する方向へ移動付勢するエアシリンダ52を設ける。従動輪3はエアシリンダ52の伸縮ロッド521に連結されて駆動輪4に対して接近ないし離間する方向へ移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループ状の無端帯の両端をそれぞれ駆動輪と従動輪に懸架させて前記無端帯の上半部を搬送部としたコンベア装置であって、前記駆動輪および前記従動輪の一方を他方に対して接近ないし離間する方向へ移動可能に設置するとともに、前記移動可能とした駆動輪および従動輪の一方を、他方に対して離間する方向へ移動付勢する付勢手段を設けたコンベア装置。
【請求項2】
前記移動可能とした駆動輪および従動輪の一方の、他方に接近する方向への移動を規制するストッパ手段を設けた請求項1に記載のコンベア装置。
【請求項3】
前記付勢手段はエアシリンダであり、前記従動輪を前記エアシリンダの伸縮ロッドに連結して、駆動輪に対して接近ないし離間する方向へ移動可能とした請求項1又は2に記載のコンベア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンベア装置に関し、特にダライ粉を搬送する等の用途に好適なコンベア装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋼材の表面を切削加工した際に生じるダライ粉を場外のダライバックへ搬送するのに使用されるダライコンベアは長尺の鉄板片の両側縁を互いに連結してリング状の無端帯とし、当該無端帯の両側に沿ってリング状に駆動チェーンを配設して当該駆動チェーンを駆動輪(スプロケット)と従動輪(スプロケット)間に懸架した構造となっている。その全長は時に30mに達する場合があり、駆動チェーンが伸びる等によって張力が不足すると無端帯が大きく弛んで、曲損やこれに起因する回転不良、破損等を生じる。そこで、鉄板片を適当数間引いて(コマづめ)張力を回復させる作業を行うが、これには多大な労力と費用および時間を要する。
【0003】
特許文献1は、無端帯の両端を一定間隔で配した駆動輪と従動輪間に懸架し、弛み防止手段としてエアシリンダを無端帯の下半部と交差する姿勢で配設して、エアシリンダのロッド先端に設けたテンション輪(スプロケット)を上記無端帯の下半部に側方から当接させたコンベア装置が提案されている。無端帯の張力が低下した場合には、適宜エアシリンダのロッドを収縮させて無端帯の下半部を側方へ引き出すことによって無端帯の張力を回復させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の構造で、無端帯の下半部を側方へ引き出すと、張力は回復するものの無端帯の下半部全体が側方へ大きく変位して(これは無端帯の全長が長くなるほど甚だしい)他の部材と干渉するおそれがあり、これを抑えるために例えばテンション輪の前後に複数のアイドル輪(スプロケット)を設ける必要があって(上記特許文献1参照)、構造が複雑化するという問題があった。また、無端帯の下半部の張力回復が、搬送部である無端帯の上半部に速やかに伝達されず、無端帯下半部と上半部で張力が不平衡になって駆動輪や従動輪に不要な負荷がかかるという問題もあった。
【0006】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、構造が複雑化することなく簡易な構造で、しかも張力の不平衡を招くことなく速やかに無端帯の弛みを解消できるコンベア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明では、ループ状の無端帯(1)の両端をそれぞれ駆動輪(4)と従動輪(3)に懸架して前記無端帯(1)の上半部(1a)を搬送部としたコンベア装置(10)であって、前記駆動輪(4)および前記従動輪(3)の一方を他方に対して接近ないし離間する方向へ移動可能に設置するとともに、前記移動可能とした駆動輪(4)および従動輪(3)の一方を、他方に対して離間する方向へ移動付勢する付勢手段(52)を設ける。
【0008】
本第1発明によれば、従動輪および駆動輪の一方を他方に対して離間する方向へ移動させるだけの簡易な構造で無端帯の張力を適正に維持することができる。また、従動輪あるいは駆動輪を移動させることで、無端帯の上半部と下半部の張力を速やかに平衡させることができるから、従動輪や駆動輪に不要な負荷がかかることもない。
【0009】
本第2発明では、前記移動可能とした駆動輪(4)および従動輪(3)の一方の、他方に接近する方向への移動を規制するストッパ手段(56,57)を設ける。
【0010】
本第2発明によれば、付勢手段が機能しなくなった場合にも無端帯の張力を維持することができる。
【0011】
本第3発明では、前記付勢手段はエアシリンダ(52)であり、前記従動輪(3)を前記エアシリンダ(52)の伸縮ロッド(521)に連結して、駆動輪(4)に対して接近ないし離間する方向へ移動可能とする。
【0012】
本第3発明によれば、エアシリンダによって付勢手段を簡易に実現することができる。
【0013】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明のコンベア装置によれば、簡易な構造によって、かつ張力の不平衡を招くことなく速やかに無端帯の弛みを解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【発明を実施するための形態】
【0016】
なお、以下に説明する実施形態はあくまで一例であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で当業者が行う種々の設計的改良も本発明の範囲に含まれる。
【0017】
図1にはコンベア装置10の全体側面図を示す。コンベア装置はダライ粉を搬送するもので、リング状の無端帯1は、実際には長尺の鉄板片の両側縁を互いに連結してリング状としたもので、無端帯1の両側に沿ってリング状に駆動チェーン2が配設されている。そして、駆動チェーン2が、フロア下のピーリング作業場に位置する従動輪(スプロケット)3と地上のダライバックに位置する駆動輪(スプロケット)4との間に懸架されている。駆動輪4はその回転軸が図略のモータに連結されて、無体帯1の搬送部であるその上半部1aを
図1の矢印方向へ移動させるように回転駆動される。
【0018】
一方、従動輪3は以下に説明する構造でテンション装置5上に設けられている。テンション装置5の詳細構造を
図2ないし
図4に示す。
図2はテンション装置5の部分断面側面図、
図3はその平面図、
図4はその正面図である。
【0019】
図2,
図3において、テンション装置5は平面視で長方矩形の主架台51を備えており、主架台51の上面中央に付勢手段としてのエアシリンダ52が設けられている。エアシリンダ52の伸縮ロッド521は後方(
図2、
図3の左方)へ突出しており、当該伸縮ロッド521の先端には移動架台53が連結されている。なお、エアシリンダ52に圧縮空気を供給する際に使用されるエアフィルタ、レギュレータ、ルブリケータおよびソレノイドバルブ等は主架台51内に収容されている(図示略)。
【0020】
移動架台53は、水平に伸びる平行梁531を有しており、平行梁531の先端に保持フレーム54が固定支持されている。保持フレーム54は長方矩形をなし、その端板541間に回転軸55が支持されていて、回転軸55の左右端部にそれぞれ従動輪3が固定されている。そして、これら従動輪3に、無端帯1の両側に沿って配設された駆動チェーン2がそれぞれ懸架される。
【0021】
平行梁531の後端は連結梁532によって連結されており、連結梁532の中央に上記エアシリンダ52の伸縮ロッド521の先端が結合されている。平行梁531の各前後の二位置からは下方へ脚部58(
図2)が突設されており、これら脚部58は下端部が、主架台51上に長手方向へ平行に設けたガイドレール59にそれぞれ摺動可能に嵌装されている。これにより、エアシリンダ52のロッド521の伸縮に応じて平行梁531とその先端に支持された保持フレーム54および従動輪3が、駆動輪4に対して接近ないし離間する方向へ移動させられる。
【0022】
連結梁532には両端部の下面にブラケット533が突設されて、これらブラケット533にそれぞれストッパ手段を構成するストッパ片56が設けられている。その詳細を
図5に示す。ストッパ片56はブラケット片533の回転軸534回りに回転可能に設けられており、ストッパ片56の矩形本体のコーナ部に突出形成された係止爪561が下方を向いた図示の姿勢で、それ以上の矢印方向への回転が規制されている。
【0023】
ブラケット533の下方の主架台51上面には、鋸歯を上面に形成したラック57が設置されており、ブラケット57(すなわち平行梁531および従動輪3)の移動位置に応じてストッパ片56の係止爪561がラック57の鋸歯の一つと噛み合って、従動輪3が駆動輪4に対して接近する方向(
図5の右方)へ移動するのを規制している。
【0024】
このような構造のコンベア装置10において、エアシリンダ52に所定圧の圧縮空気を供給するとその伸縮ロッド521が伸長し、これに伴って従動輪3が駆動輪4から離間する方向へ移動させられて所定の張力を無端帯1に付与し、圧縮空気圧と張力が釣り合った位置で伸縮ロッド521の伸長は停止する。そして、この位置で係止爪56がラック57の鋸歯の一つに係合して(
図5の鎖線)、圧縮空気圧が何らかの原因で低下しても、従動輪3が駆動輪4に対して接近方向へ移動して無端帯1の張力が低下するのは防止される。
【0025】
駆動チェーン2が伸びる等によって無端帯1の張力が低下した場合には、これに伴って圧縮空気圧によってエアシリンダ52の伸縮ロッド521が伸長し、従動輪3が駆動輪4から離間する方向へ移動させられて、無端帯1の張力が増大させられ適正な状態が回復される。
【0026】
このようにして、本実施形態によれば、従動輪3を駆動輪4から離間する方向へ移動させるだけの簡易な構造で無端帯1の張力を適正に維持することができる。また、従動輪3を移動させることで、無端帯1の上半部1aと下半部1b(
図1)の張力を速やかに平衡させることができるから、従動輪3や駆動輪4に不要な負荷がかかることもない。コンベアの点検・補修等の場合には、エアシリンダ52への圧縮空気の供給を停止し、伸縮ロッド521を少し伸長させて係止爪56とラック57の鋸歯との係合を解消させる。
【0027】
なお、上記実施形態では従動輪を移動可能としたが、駆動輪を移動可能としても良い。
【符号の説明】
【0028】
1…無端帯、1a…上半部、1b…下半部、3…従動輪、4…駆動輪、5…テンション装置、10…コンベア装置、52…エアシリンダ、521…伸縮ロッド、56…ストッパ片、57…ラック。