(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158228
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電気治療器
(51)【国際特許分類】
A61N 1/10 20060101AFI20241031BHJP
【FI】
A61N1/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073250
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】304062432
【氏名又は名称】株式会社 リブレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宗敬
(72)【発明者】
【氏名】馬場 徹
(72)【発明者】
【氏名】馬場 馨
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053EE04
4C053EE05
4C053EE12
4C053EE13
4C053EE14
4C053EE18
(57)【要約】
【課題】装着された導子5を移動することなく治療対象部位を効率良く変更して効果的な治療を行うことができる電気治療器を提供する。
【解決手段】入力電位を昇圧して高圧の出力電位を生成する高圧トランス3と、人体に接触して出力電位を人体に印加する複数の導子5と、複数の導子5に対してそれぞれ設けられ高圧トランス3と導子5を接続する切替手段4と、を具備し、切替手段4は、導子5に出力電位及び接地電位の何れかを選択的に印加できるよう切り替え可能に構成されている。これにより、その都度導子5を取り外して移動することなく、主たる治療対象部位及び治療モードを自動で変更して好適な治療電流を流すことができ、略全身に対して効果的な電気治療を効率良く行うことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力電位を昇圧して高圧の出力電位を生成する高圧トランスと、
人体に接触して前記出力電位を前記人体に印加する複数の導子と、
複数の前記導子に対してそれぞれ設けられ前記高圧トランスと前記導子を接続する切替手段と、を具備し、
前記切替手段は、前記導子に前記出力電位及び接地電位の何れかを選択的に印加できるよう切り替え可能に構成されていることを特徴とする電気治療器。
【請求項2】
前記出力電位は、1000V以下であることを特徴とする請求項1に記載の電気治療器。
【請求項3】
前記切替手段は、前記導子を前記出力電位及び前記接地電位から独立したフローティング電位とする選択的な切り替えが可能であることを特徴とする請求項1に記載の電気治療器。
【請求項4】
それぞれの前記導子に前記高圧トランスと切り替え可能に接続されて加熱電力を供給するヒータ用トランスを具備し、
前記導子は、前記ヒータ用トランスに接続され前記加熱電力が供給されることにより発熱して前記人体を加熱するヒータとして機能することを特徴とする請求項1に記載の電気治療器。
【請求項5】
前記導子は、線状ヒータのヒータ線から形成されており、
前記導子には、前記ヒータ線の前記人体に接する側の面に密着するシート状の補助電極が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電気治療器。
【請求項6】
前記補助電極は、絶縁シートを介して複数枚設けられていることを特徴とする請求項5に記載の電気治療器。
【請求項7】
前記導子は、線状ヒータのヒータ線から形成されており、
前記導子には、前記ヒータ線の前記人体に接する側の面及びその反対側の面に密着する一対のシート状の補助電極が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の電気治療器。
【請求項8】
睡眠時の治療動作を自動で制御する制御装置を具備し、
前記制御装置は、ノンレム睡眠時に前記人体を流れる電流がレム睡眠時に前記人体を流れる電流よりも弱くなるよう前記出力電位を制御すると共に前記切替手段による切り替えを制御することを特徴とする請求項1から請求項7の何れか1項に記載の電気治療器。
【請求項9】
睡眠時の治療動作を自動で制御する制御装置を具備し、
前記制御装置は、ノンレム睡眠時の前記人体への加熱がレム睡眠時の前記人体への加熱よりも弱くなるよう前記加熱電力を制御することを特徴とする請求項4から請求項7の何れか1項に記載の電気治療器。
【請求項10】
前記制御装置は、予め設定された時間に合わせて前記人体を流れる電流が所定の値になるよう前記出力電位を制御すると共に前記切替手段による切り替えを制御することを特徴とする請求項9に記載の電気治療器。
【請求項11】
前記制御装置は、予め設定された時間に合わせて前記人体への加熱が強くなるよう前記加熱電力を制御することを特徴とする請求項10に記載の電気治療器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気治療器に関し、特に、接続切り替え可能な複数の導子を有し、人体に電圧を印加する電位治療若しくは人体に電流を流す電流治療を行う電気治療器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人体に交流の高電圧を印加して治療を行う電気治療器が知られている。例えば、特許文献1には、交流電源に接続される電源回路と、電源回路の出力側に接続されて任意波形の交流電圧を生成するインバータと、インバータによって生成される交流電圧を出力電圧に昇圧するトランスと、を有し、トランスで昇圧された出力電圧を導子に伝えて人体に印加する電位治療器が開示されている。
【0003】
また、この種の電気治療器において、複数の導子が切り替え可能に接続されるものがある。例えば、特許文献2には、入力電圧を昇圧して高電圧を生じさせる複数の高圧トランスと、高圧トランスにより発生した高電圧が印加される頭部電極と、座部電極と、背部電極と、を備えた電位治療装置が開示されている。座部電極及び背部電極には、高圧トランスで発生した同位相の電圧が印加され、背部電極に対しては、発生した高電圧をON/OFFする切替スイッチが設けられており、切替スイッチを切り替えることにより、被治療者の人体電位が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-073372号公報
【特許文献2】特開2021-194462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術の電気治療器には、効果的な治療を効率良く行えるよう改善すべき点があった。
具体的には、従来技術の電気治療器では、人体の任意の治療対象部位に導子が当てられその導子を介して高電圧の電位が人体に供給され治療が行われる。そのため、治療対象部位を変更して治療を行うためには、その都度、導子の装着位置を変更して導子を移動させる必要があった。
【0006】
これに対して、特許文献2に開示された電位治療装置は、選択的または同時に同位相の高電圧を人体に印加できる複数の電極を有し、スイッチを切り替えることにより、人体に触れる電極面積を変えて、被治療者の人的電位を調整することができる。
【0007】
しかしながら、同文献に開示された従来技術では、スイッチのON/OFFによって高電位が印加される位置を切り替えることができるものの、接地電位の位置を自動的に調整することはできなかった。そのため、所望の治療対象部位に対して流れる電流を好適に変化させるためには、別途、接地電位の位置を調整するための接地電位導子等を使用し、利用者が接地電位導子等の接触位置を調整する必要があった。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、装着された導子を移動することなく治療対象部位を効率良く変更して効果的な治療を行うことができる電気治療器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気治療器は、入力電位を昇圧して高圧の出力電位を生成する高圧トランスと、人体に接触して前記出力電位を前記人体に印加する複数の導子と、複数の前記導子に対してそれぞれ設けられ前記高圧トランスと前記導子を接続する切替手段と、を具備し、前記切替手段は、前記導子に前記出力電位及び接地電位の何れかを選択的に印加できるよう切り替え可能に構成されていることを特徴とする電気治療器。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電気治療器は、入力電位を昇圧して高圧の出力電位を生成する高圧トランスと、人体に接触して前記出力電位を前記人体に印加する複数の導子と、複数の前記導子に対してそれぞれ設けられ前記高圧トランスと前記導子を接続する切替手段と、を具備し、前記切替手段は、前記導子に前記出力電位及び接地電位の何れかを選択的に印加できるよう切り替え可能に構成されている。このような構成により、その都度導子を取り外して移動することなく、高圧の出力電位が供給される位置及び接地電位が供給される位置を変更し、主たる治療対象部位及び治療モードを自動で変更することができる。これにより、利用者の体調等に応じて所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流すことができる。よって、略全身に対して効果的な治療を自動で効率良く行うことができる。
【0011】
また、本発明の電気治療器によれば、前記出力電位は、1000V以下であっても良い。これにより切替手段として小型で安価なスイッチ、リレー等を採用することができ、電気治療器の生産性を高めることができる。また、安全で効果的な治療を長時間継続して実行することができる。
【0012】
また、本発明の電気治療器によれば、前記切替手段は、前記導子を前記出力電位及び前記接地電位から独立したフローティング電位とする選択的な切り替えが可能であっても良い。これにより、フローティング電位に切り替えられた導子は、導子自体が略ないものとみなされる。よって、治療効果の選択肢が広がり治療状態に応じた好適な治療効果が得られる。
【0013】
また、本発明の電気治療器は、それぞれの前記導子に前記高圧トランスと切り替え可能に接続されて加熱電力を供給するヒータ用トランスを具備し、前記導子は、前記ヒータ用トランスに接続され前記加熱電力が供給されることにより発熱して前記人体を加熱するヒータとして機能しても良い。これにより、別途加熱ヒータを設けることなく、加熱電力が供給された導子を利用して治療対象部位を好適に加熱することができる。よって、治療対象部位の血液及びリンパ液の流れを促進し、治療の効果を高めることができる。
【0014】
また、本発明の電気治療器では、前記導子は、線状ヒータのヒータ線から形成されており、前記導子には、前記ヒータ線の前記人体に接する側の面に密着するシート状の補助電極が設けられても良い。このように、導子に線状ヒータのヒータ線が用いられることにより、人体の治療対象部位に好適に密着可能な導子が得られる。また、ヒータ線に密着するシート状の補助電極が設けられることにより、ヒータと人体の間の静電容量が大きくなり、容量結合インピーダンスが改善され、治療の効果が高められる。また、補助電極による熱伝導効果により、線状ヒータによる集中加熱を抑制して広い範囲を均一的に加熱することができ、スポット的な加熱による低温やけど等を防止することができる。
【0015】
また、本発明の電気治療器では、前記補助電極は、絶縁シートを介して複数枚設けられても良い。これにより、導子と身体との容量結合が向上し、好適な治療電流が流れて優れた治療効果が得られる。
【0016】
また、本発明の電気治療器では、前記導子は、線状ヒータのヒータ線から形成されており、前記導子には、前記ヒータ線の前記人体に接する側の面及びその反対側の面に密着する一対のシート状の補助電極が設けられていても良い。これにより、補助電極による静電容量の改善効果及び熱伝導効果が更に高められ、優れた治療効果が得られる。
【0017】
また、本発明の電気治療器は、睡眠時の治療動作を自動で制御する制御装置を具備し、前記制御装置は、ノンレム睡眠時に前記人体を流れる電流がレム睡眠時に前記人体を流れる電流よりも弱くなるよう前記出力電位を制御すると共に前記切替手段による切り替えを制御しても良い。これにより、眠りの深さに合わせた好適な治療が行われる。
【0018】
また、本発明の電気治療器は、睡眠時の治療動作を自動で制御する制御装置を具備し、前記制御装置は、ノンレム睡眠時の前記人体への加熱がレム睡眠時の前記人体への加熱よりも弱くなるよう前記加熱電力を制御しても良い。これにより、眠りの深さに合わせた好適な加熱によって好適な治療が行われる。
【0019】
また、本発明の電気治療器によれば、前記制御装置は、予め設定された時間に合わせて前記人体を流れる電流が所定の値になるよう前記出力電位を制御すると共に前記切替手段による切り替えを制御しても良い。これにより、例えば、予め設定された起床予定時間の30分前頃から人体を流れる電流が起床に適した中程度の電流となるよう、出力電位を制御し導子を選択的に切り換えることができる。よって、利用者は、快眠が得られる好適な治療を行いながら所望の起床時には快適に目覚めることができる。
【0020】
また、本発明の電気治療器によれば、前記制御装置は、予め設定された時間に合わせて前記人体への加熱が強くなるよう前記加熱電力を制御しても良い。これにより、例えば、起床時間に合わせた好適な加熱を行うことができ、利用者は快適に起床できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る導子の(A)使用例、(B)他の使用例、を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る導子の他の例を示す回路図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る導子セットの(A)使用例、(B)他の使用例、を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る導子による静電容量管理を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る導子の絶縁構成を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る接地電位固定電極を示す図である。
【
図8】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図9】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図10】本発明の他の実施形態に係るヒータ機能を有する導子を示す図である。
【
図11】本発明の他の実施形態に係るヒータ機能を有する導子を示す図である。
【
図12】本発明の他の実施形態に係る導子にフロート電極シートが設けられた例を示す図である。
【
図13】本発明の他の実施形態に係るフロート電極シートの(A)電極層が分散配置された例、(B)電極層にスリットが形成された例、を示す図である。
【
図14】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図15】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図16】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図17】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図18】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図19】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図20】本発明の他の実施形態に係る電気治療器の概略構成を示す回路図である。
【
図21】本発明の他の実施形態に係るインピーダンス回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る電気治療器1を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図1を参照して、電気治療器1は、交流の出力電位を人体に印加して電界を利用した電位治療を行う装置である。また、電気治療器1は、人体に治療電流を流して、新陳代謝を改善し、骨折、傷、炎症等の修復を促進し、体調を改善することをサポートする装置である。電気治療器1は、例えば手術後、病中病後等に用いられても良く、病院や自宅のベッド、椅子等に設置されて利用される。
【0023】
電気治療器1は、電源装置2と、電源装置2からの入力電位から高圧の出力電位を生成する高圧トランス3と、高圧トランス3で昇圧された出力電位を人体に印加する複数の導子5と、導子5を高圧トランス3に選択的に接続する切替手段としてのスイッチ4と、を有する。
【0024】
高圧トランス3は、交流の入力電位を昇圧して高圧の出力電位を生成する回路である。高圧トランス3の一次側には、短絡電流を制限する一次側電流制限抵抗10が設けられても良い。また、高圧トランス3の二次側には、短絡電流を制限する二次側電流制限抵抗11が設けられても良い。また、高圧トランス3の二次側には、高圧トランス3に並列接続された並列インピーダンス回路としての並列抵抗12が設けられても良い。
【0025】
高圧トランス3の一次側は、一次側電流制限抵抗10を介して、電源装置2に接続されている。電源装置2は、図示しない交流電源に接続されて、電気治療のための交流電力を高圧トランス3の一次側に供給する装置である。電源装置2は、高圧トランス3に送られる交流の少なくとも電圧を、例えば0~24Vに変更可能な装置であり、例えば図示しないインバータ等を備えていても良い。
【0026】
具体的には、電源装置2は、交流電源からの交流電圧をインバータで利用できる安定した直流電圧に変換する図示しない電源回路を備えていても良い。電源回路は、妨害電磁波対策のための図示しないフィルタ回路や、過負荷、過電圧若しくは低電圧等の異常時に電源回路の動作を停止させる図示しない過負荷保護回路等を備えても良い。
【0027】
電源装置2のインバータは、電源回路の出力側に接続され、電源回路から供給される直流電圧を所定の電圧の交流に変換して出力する。なお、インバータには、異常時に出力を停止するための図示しない過電流保護回路や保護ヒューズ等が設けられても良い。
【0028】
導子5は、高圧トランス3で昇圧された出力電位を人体に印加する回路部材である。それぞれの導子5は、人体の下に敷かれ若しくは人体の上に掛けられ、人体の異なる位置に装着される。
【0029】
本実施形態では、3つの導子5が設けられた例を示している。具体的には、電気治療器1には、導子5として、第1の導子5a、第2の導子5b及び第3の導子5cが設けられている。なお、導子5の数はこれに限定されず、電気治療器1には、2つまたは4つ以上の導子5が設けられても良い。
【0030】
導子5は、それぞれ出力電位回路13及びスイッチ4を介して、高圧トランス3の二次側の一端子側に接続されている。導子5の構成の詳細については後述する。
高圧トランス3の他端子側は、図示しない渡抵抗等を介して、接地されている。
【0031】
スイッチ4は、導子5に出力電位を印加するか、接地電位を印加するか、を選択的に切り替える切替手段である。スイッチ4は、複数設けられ、それぞれ対応する導子5に接続されている。具体的には、第1のスイッチ4aは第1の導子5aに、第2のスイッチ4bは第2の導子5bに、第3のスイッチ4cは第3の導子5cに、接続されている。
【0032】
スイッチ4は、高圧トランス3の二次側につながる接点と、接地電位回路14を介して接地点につながる接点と、を有し、それぞれの導子5に印加される電位を選択的に切り替える。スイッチ4としては、例えば、半導体スイッチ、リレー等を採用することができ、スイッチ4の接続は、c接点の他、a接点の組み合わせ等によって構成されても良い。
【0033】
高圧トランス3で昇圧された出力電位は、二次側電流制限抵抗11、スイッチ4、図示しない保護回路及び出力コネクタ等を介して、スイッチ4の切り換えにより出力電位回路13に接続されているそれぞれの導子5に伝わり、人体に印加される。
【0034】
また、スイッチ4の切り換えによって、接地電位回路14に接続されているそれぞれの導子5に対しては、接地電位回路14、接地抵抗15、スイッチ4等を介して、接地電位が印加される。
【0035】
このように複数の導子5と、複数の導子5に印加される電位を選択的に切り替えるスイッチ4と、が設けられた構成により、その都度導子5を取り外して移動することなく、高圧の出力電位が供給される位置及び接地電位が供給される位置を変更することができる。
【0036】
また、電気治療器1には、図示しない操作部、表示部、各種センサ類及び制御装置が設けられている。操作部は、利用者が操作指令を入力する装置であり、制御装置等に接続されている。表示部は、出力電位、出力電流、周波数、タイマ等の各種設定条件及び出力状況等を表示するものである。センサ類としては、利用者の体温を測定する温度センサ、導子5の温度を測定する導子温度センサ、室内の気温を測定する室温センサ等が設けられても良い。
【0037】
制御装置は、操作部の入力及び各種設定値等に基づき所定の演算を実行して電源装置2及び切替手段としてのスイッチ4等を制御する装置である。具体的には、制御装置は、導子5の切り換え制御、出力電位の波形制御、タイマ制御、表示制御、過負荷監視及び電圧監視等を行う。電源装置2は、制御装置からの指令を受け、所定の電圧及び周波数の波形を出力する。スイッチ4は、制御装置からの指令を受けて切り換えられ、これにより、それぞれの導子5は、出力電位が印加されるか、接地電位が印加されるか、が選択的に切り替えられる。
【0038】
このような構成により、利用者は、導子5の装着位置をその都度変更することなく、主たる治療対象部位及び治療モードを自動で変更することができる。出力電位が印加される導子5を自動で切り替えて、治療モードを、例えば全身モード、腰モード、肩モード、脚モード等に切り替えて治療を行うことができる。これにより、利用者の体調等に応じて所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流すことができる。なお、治療電流は、電気治療器1の電位治療器である場合の短絡電流の規格値である1mAを越える電流値でも良い。電気治療器1は、利用者の略全身に対して効果的な治療を自動で効率良く行うことができる。
【0039】
次に、電気治療器1を睡眠時に使用する例について詳細に説明する。
前述の図示しない制御装置は、睡眠時の治療動作を自動で制御することができる。具体的には、制御装置は、ノンレム睡眠時に人体を流れる電流がレム睡眠時に人体を流れる電流よりも弱くなるよう電源装置2の図示しないインバータ等を制御して利用者の治療対象部位に印加される出力電位の値を制御する。
【0040】
そして、制御装置は、利用者の睡眠状態に応じて切替手段としてのスイッチ4を切り替える制御動作を実行し、治療対象部位に出力電位を印加するか、接地電位を印加するか、を切り換えても良い。これにより、眠りの深さに合わせた好適な電気治療が行われる。
【0041】
また、制御装置は、予め設定された時間に合わせて人体を流れる電流が所定の値になるよう出力電位の値を制御すると共に、スイッチ4による導子5の切り替えを制御しても良い。これにより、例えば、予め設定された起床予定時間の30分前頃から人体を流れる電流が起床に適した中程度の電流となるよう、出力電位を制御し導子5を選択的に切り換えることができる。よって、利用者は、快眠が得られる好適な電気治療を行いながら所望の起床時には快適に目覚めることができる。
【0042】
ここで、導体に印加される出力電位は、例えば1000V以下、好ましくは、900V以下である。このように1000V以下の出力電位が印可される構成により、切替手段としてのスイッチ4として、小型で安価なリレー等を採用することができ、電気治療器1の生産性を高めることができる。また、1000V以下の出力電位により、安全で効果的な電気治療を長時間継続して行うことができる。特に、睡眠時に長時間行われる電気治療には、1000V以下の出力電位が好適である。
【0043】
次に
図2ないし
図7を参照して、導子5の構成及び使用例について更に詳細に説明する。
図2(A)は、導子5の使用例を示す図であり、
図2(B)は導子5の他の使用例を示す図である。
図2(A)及び(B)に示すように、高圧の出力電位と接地電位とを切り替え自在な導子5は、所望の治療対象部位に好適な治療電流を流すために種々の装着が可能である。
【0044】
例えば、床、布団、ベット等の上面に、利用者が横たわる敷布団若しくは利用者に掛けられる掛布団のように、3つの導子5が敷かれる若しくは掛けられても良い。
具体的には、一つの導子5、例えば第1の導子5a、が利用者の上半身側に、もう一つの導子5、例えば第3の導子5c、が利用者の下半身側に設けられる。そして、残りの一つの導子5、例えば第2の導子5bが、上半身側の第1の導子5a及び下半身側の第3の導子5cに挟まれるように利用者の胴体部近傍に設けられても良い。
【0045】
上半身側の第1の導子5a及び下半身側の第3の導子5cは、それぞれ上面視略コ字状に形成され、略コ字状の凹部分が対向するよう載置される。胴体部近傍の第2の導子5bは、対向する上半身側の第1の導子5a及び下半身側の第1の導子5aの凹部分に載置される。
【0046】
このような構成により、上半身側の第1の導子5aは、利用者の手、上頸部等の抹消部が載せられ若しくは抹消部に掛けられる抹消導子として機能し、下半身側の第3の導子5cは、脚部等の抹消部が載せられ若しくは抹消部に掛けられる抹消導子として機能する。胴体部近傍の第2の導子5bは、利用者の胸、腰等の体幹部が載せられ若しくは体幹部に掛けられる体幹導子として機能する。
【0047】
即ち、上半身の抹消部が載せられた若しくは抹消部に掛けられた第1の導子5aは、体幹部が載せられた若しくは体幹部に掛けられた第2の導子5bから、首、肩等の関節部を介して、手、上頸部等の抹消部に治療電流を流す抹消導子として利用することができる。
【0048】
また、下半身の抹消部が載せられた若しくは抹消部に掛けられた第3の導子5cは、体幹部が載せられた若しくは体幹部に掛けられた第2の導子5bから、骨盤部、膝等の関節部を介して、脚等の抹消部に治療電流を流す抹消導子として利用することができる。
これにより、所望の治療対象部位となる患部に対して、好適な治療電流を流すことができ、優れた治療効果が得られる。
【0049】
図3は、導子5の他の例を示す回路図である。
図3を参照して、電気治療器1には、4つの導子5から構成される4分割の導子セットが設けられても良い。具体的には、導子5として、第1の導子5a、第2の導子5b、第3の導子5c及び第4の導子5dが設けられても良い。このような構成により、局所的な患部を治療対象部位として好適な治療を行うことができる。
【0050】
例えば、4分割の導子セットが設けられる構成において、上半身側及び下半身側の両端部の導子5、例えば第1の導子5a及び第4の導子5d、を抹消導子として利用し、治療電流が利用者の体幹部から肩、脚、首等の関節部を抜けるよう使用されても良い。
【0051】
また、複数の導子5、例えば両端部の第1の導子5a及び第4の導子5dは、一つの切替手段、例えば第1のスイッチ4aに接続されても良い。これにより、一つのスイッチ4で、2つの導子5に対して同時に、出力電位と接地電位を切り換えることができる。
【0052】
図4(A)は、導子セットの使用例を示す図であり、
図4(B)は、導子セットの他の使用例を示す図である。
図4(A)及び(B)に示すように、複数の導子5、例えば第1の導子5a、第2の導子5b、第3の導子5c及び第4の導子5dを有する導子セットは、各導子5が曲折自在に連結されていても良い。これにより、利用者の体形、治療時の姿勢等に合わせて導子セットを曲折変形させることができ、好適な治療を行うことができる。
【0053】
例えば、利用者は、ベッド等に横たわって治療を行う他にも、背もたれ付きの椅子に腰かけて治療を行うことや、リクライニングチェア等の上に寝そべって好みの姿勢で治療を行うことも可能である。
【0054】
図5は、3つの導子5、例えば第1の導子5a、第2の導子5b及び第3の導子5c上に利用者が寝転んで治療を行う場合における導子5の上下の静電容量の管理状況を示す図である。
図5を参照して、電気治療器1は、導子5から大地への漏れ電流を極力減らすよう構成されている。
【0055】
具体的には、人体と導子5との間のインピーダンスとなる両者間の静電容量C1a、C1b、C1cは、概ね200pF以上に維持されている。導子5と大地との間の静電容量C2a、C2b、C2cは、人体と導子5との間の静電容量C1a、C1b、C1cの概ね1/3以下、例えば70pF以下に維持されている。これにより、導子5からの漏れ電流を抑制し、所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流すことができる。
【0056】
図6は、導子5の絶縁構成を示す図である。
図5及び
図6を参照して、導子5の導子電極16の人体側には、絶縁体17が設けられている。絶縁体17は、例えばポリ塩化ビニル等の合成樹脂から形成されるシート状の部材であり、その厚さは、例えば約3mm以下である。これにより、導子電極16の上面から導子5に接触する人体までの距離を約3mm以下とし、静電容量C1a、C1b、C1cを200pF以上に維持することができる。
【0057】
また、導子5の導子電極16の大地側には、絶縁体18が設けられている。絶縁体18は、例えば発泡ポリプロピレン等の合成樹脂から形成されるシート状の部材であり、その厚さは、例えば約10mm以上、好ましくは約25mm以上、誘電率は、2以下である。これにより、導子電極16の下面から導子5に接触する大地までの距離を約25mm以上とし、静電容量C2a、C2b、C2cを70pF以下とすることができる。
【0058】
なお、電気治療器1の導子5は、大地側が大地に接続されず、即ちフロート状態として、使用されても良い。その場合、フロート状態の導子5は、接地電位回路14(
図1参照)に接続された他の導子5を、大地に代わる接地電極として利用できる。このような使用方法では、接地電極として大地が直接的に接続されていないため、治療中の利用者に外部の人が触れても電撃ショックが発生しないという利点がある。
【0059】
また、図示を省略するが、導子5の導子電極16は、略シート状の導電性材料から形成されても良いし、電線等の導電性材料から形成されても良い。導子電極16が電線状の材料から形成される場合、導電性の電線状の材料は、絶縁性の材料で被覆された被覆電線等でも良い。また、導子5は、一般的な敷布団、掛布団、電気毛布等のように、フレキシブルなクッション、毛布その他織物等で覆われた形態であっても良い。
【0060】
図7は、絶縁体18の外側に接地電位固定電極19が設けられた例を示す図である。
図5及び
図7を参照して、導子5の大地側に設けられた絶縁体18の外面、即ち大地側、には、接地電位固定電極19が設けられても良い。
【0061】
接地電位固定電極19は、導電性の材料から形成されるシート状の部材であり、絶縁体18の外面を覆う。このような接地電位固定電極19が設けられることにより、導子5の導子電極16と大地との間の静電容量C2a、C2b、C2cが安定化する。よって、接地環境の影響を受け難い安定した治療効果が得られる。
【0062】
次に、
図8から
図17を参照して、電気治療器1の実施形態を変形した例について詳細に説明する。なお、
図8から
図17では、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図8は、本発明の他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図8を参照して、切替手段としてのスイッチ4は、選択的に切り替え可能なフロート接点20を有する3点切り替え構成であっても良い。
【0064】
具体的には、導子5は、スイッチ4の切り替えによって、出力電位でもなく接地電位でもない、フロート接点20を介する独立したフローティング電位に切り替え可能である。即ちスイッチ4は、導子5の電位が出力電位、接地電位及びフローティング電位の何れかになるよう導子5の接続を選択的に切り替えることができる。
【0065】
このようなスイッチ4によってフローティング電位に切り替えられた導子5は、それ自体が略ないものとみなされる。よって、治療効果の選択肢が広がり治療状態に応じた好適な治療効果が得られる。
【0066】
図9は、本発明の他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図9を参照して、電気治療器1は、加熱ヒータとして利用される導子5と、それぞれの導子5に高圧トランス3と切り替え可能に接続されて加熱電力を供給する複数のヒータ用トランス21と、を具備しても良い。例えば、第1のヒータ用トランス21a、第2のヒータ用トランス21b及び第3のヒータ用トランス21cの3つのヒータ用トランス21が設けられても良い。なお、ヒータ機能を有する導子5の詳細については後述する。
【0067】
それぞれのヒータ用トランス21の出力回路には、導子5に対して供給される加熱電力をON/OFFするヒータ用スイッチ22が設けられている。例えば、第1のヒータ用トランス21aの出力回路を第1の導子5aに接続する第1のヒータ用スイッチ22aと、第2のヒータ用トランス21bの出力回路を第2の導子5bに接続する第2のヒータ用スイッチ22bと、第3のヒータ用トランス21cの出力回路を第3の導子5c及び第4の導子5dに接続する第3のヒータ用スイッチ22cと、が設けられても良い。
また、前述のとおり、高圧トランス3の二次側には、それぞれの導子5に高圧トランス3が選択的に接続されるよう切り替えるスイッチ4が設けられている。
【0068】
スイッチ4及びヒータ用スイッチ22の切り替え制御によって、それぞれの導子5に対して高圧トランス3で昇圧された出力電位を印加するか、ヒータ用トランス21で昇圧された加熱電力を供給するかを切り換えることができる。
【0069】
ヒータ用スイッチ22の切り替えによってヒータ用トランス21に接続された導子5は、ヒータ用スイッチ22を介して、ヒータ用トランス21から加熱電力が供給されることにより発熱する。これにより導子5は、人体を加熱するヒータとして機能する。
【0070】
このような構成により、別途加熱ヒータ等を設けることなく、加熱電力が供給された導子5を利用して治療対象部位を好適に加熱することができる。よって、治療対象部位の血液及びリンパ液の流れを促進し、電気治療の効果を高めることができる。
【0071】
また、複数の導子5、例えば第3の導子5cと第4の導子5dの2つの導子5は、高圧トランス3の出力電位が同時に印加される共有導子として構成されても良い。即ち、共通のスイッチ4、例えば第3のスイッチ4c、の切り替えにより、第3の導子5cと第4の導子5dの2つの導子5に対して同時に出力電位が供給されるよう構成されている。
【0072】
また、一つのヒータ用トランス21に対して、複数の導子5が接続され、複数のヒータ用スイッチ22を介して選択的に接続されるよう構成されても良い。例えば、第3のヒータ用トランス21cには、第3の導子5cと第4の導子5dの2つの導子5が接続され、第3の導子5cと第4の導子5dは、例えば第4のヒータ用スイッチ22dを介して選択的に接続されるよう構成されても良い。
【0073】
即ち、第3のヒータ用スイッチ22cによるON/OFFの切り替えと、第4のヒータ用スイッチ22dの切り替えにより、共有導子である第3の導子5c及び第4の導子5dの何れか一方に第3のヒータ用トランス21cが接続され加熱電力が供給されるよう構成されても良い。
【0074】
図10は、ヒータ機能を有する導子5を示す図である。
図10を参照して、ヒータ用トランス21(
図9参照)に接続されるヒータ機能を有する導子5は、例えば、高圧トランス3(
図9参照)に接続され電気治療を行う導子電極16と、ヒータ用トランス21に接続され人体を加熱するヒータ23と、から構成されても良い。即ち導子5は、導子電極16とヒータ23を有する導子ユニットとして構成されている。
【0075】
具体的には、導子5は、高圧トランス3に接続される電位端子25と、ヒータ用トランス21に接続されるヒータ端子26と、を有する。導子電極16は、一端が電位端子25につながり、高圧トランス3で昇圧された出力電位が印可されて電位治療等を行う。
【0076】
ヒータ23は、例えば、一端がヒータ端子26につながり、他端が導子電極16と共に電位端子25につながる、ヒータ線24から形成された線状ヒータである。ヒータ23にはヒータ用トランス21から供給される加熱電力が供給され、これによりヒータ23は発熱する。
【0077】
なお、
図10では、ヒータ23の他端が電位端子25に接続され、ヒータ23の他端の配線が導子電極16の配線と共有される例を示しているが、ヒータ23の配線と導子電極16の配線とは分けて設けられても良い。具体的には、導子5には、導子電極16のみにつながる1本の配線及び電位端子25と、ヒータ23のみにつながる2本の配線及び一対のヒータ端子26と、の合計3本の配線及び端子が設けられても良い。
【0078】
ヒータ23は、導子5の人体に接する側の面の反対側の面に設けられている。即ち、利用者が導子5の上に寝そべって治療を行う場合において、ヒータ23は、導子電極16の下方となる位置に設けられている。これにより、ヒータ23を構成する電熱線、即ちヒータ線24、によって、人体側の表面の凹凸が大きくなることを抑制することができ、導子5のフィッティング感が良好になる。
【0079】
なお、ヒータ23として面状ヒータが用いられても良い。ヒータ23として面状ヒータが採用されることにより、ヒータ23が人体に対して略面状に押圧されることとなるので、導子5と人体とフィッティング感が良好となり、また、均一的な加熱が行われ加熱性能が向上する。
【0080】
また、ヒータ23の外側、即ち利用者が導子5の上に寝そべって治療を行う場合においてヒータ23の下方となる位置には、絶縁体18が設けられている。ここで設けられる絶縁体18は、ヒータ23を断熱する断熱材としての機能を兼ねている。導子5が人体に接触して人体を温めるのは、ヒータ23の絶縁体18が設けられる側の反対側である。よって、導子5の人体に接する面の反対側に厚い絶縁体18が設けられることにより、ヒータ23の外側が効率的に断熱され、人体側を効率的に温めることができる。
【0081】
また、導子5の人体側に設けられる絶縁体17(
図6参照)は、上述の外側に設けられた絶縁体18よりも薄く、且つ熱伝導率が高い絶縁材料から形成されている。これにより、絶縁体17の熱伝導性能が向上し、ヒータ23から人体への熱伝導が良好になって、高効率な加熱が行われる。
【0082】
図11は、ヒータ機能を有する導子5を示す図である。
図11を参照して、導子5は、線状ヒータのヒータ線24から形成されても良い。即ち、人体を加熱する線状ヒータのヒータ線24は、電気治療を行うための導子電極16として利用される。このような線状ヒータのヒータ線24が用いられることにより、人体の治療対象部位に好適に密着可能な導子5が得られる。
【0083】
このような構成により、電位治療用の導子電極16と、加熱用の線状ヒータ若しくは面状ヒータ等とを、それぞれ別に設けることなく、1本のヒータ線24から形成された導子電極16を有する導子5で、電位治療と温熱治療の双方を行うことができる。よって、電気治療器1は、部品数が削減され生産性が向上する。
【0084】
図12は、導子5に補助電極としてのフロート電極シート27、28が設けられた例を示す図である。
図12を参照して、線状ヒータのヒータ線24から形成された導子電極16を有する導子5には、ヒータ線24の人体に接する側の面に密着する補助電極としてフロート電極シート27が設けられても良い。
【0085】
フロート電極シート27は、例えばアルミニウム箔等の導電性の材料が導電性塗料、合成樹脂フィルム等でラミネートされた導電性シート、導電性テープ等のシート状の部材である。フロート電極シート27には、数kΩの抵抗があっても良い。
【0086】
このように、ヒータ線24に密着するフロート電極シート27が設けられることにより、ヒータ23と人体の間の静電容量C1は、例えば160pF程度と、大きくなり、容量結合インピーダンスが改善され、治療の効果が高められる。
【0087】
また、フロート電極シート27による熱伝導効果により、ヒータ線24による線状の集中加熱を抑制して、治療対象部位の広い範囲を均一的に加熱することができる。よって、スポット的な加熱による低温やけど等を防止することができる。
【0088】
また、導子5には、ヒータ23を挟むように一対の補助電極が設けられても良い。具体的には、ヒータ線24の人体に接する側の面に密着する第1の補助電極としてのフロート電極シート27と、反対側の面に密着する第2の補助電極としてのフロート電極シート28と、が設けられても良い。これにより、フロート電極シート27、28による静電容量C1の改善効果及び熱伝導効果が更に高められ、優れた治療効果が得られる。
【0089】
また、図示を省略するが、フロート電極シート27、28は、絶縁シートを介してそれぞれ複数枚設けられても良い。これにより、導子5と身体との容量結合が向上し、好適な治療電流が流れて優れた治療効果が得られる。
【0090】
図13(A)は、フロート電極シート27、28の電極層29が分散配置された例を示す図であり、
図13(B)は、電極層29にスリット30が形成された例を示す図である。
図13(A)に示すように、フロート電極シート27、28は、ラミネート加工されたシート材の部材であり、例えば厚さ約0.1mm程度のアルミニウム箔等からなる複数の電極層29が分散配置されるよう形成されても良い。なお、電極層29の形状は、例えば略四角形状等であり、その大きさは、例えば一辺約100mmで良い。
【0091】
このように電極層29が分散配置されることにより、ヒータ線24(
図12参照)による集中加熱が防止され、過熱制御用サーモスタット等の動作が保証される。よって、電位治療の効果を高める安全な温熱治療を行うことができる。
【0092】
また、
図13(B)に示すように、アルミニウム箔等からなる電極層29には、電極層29を複数に分散させるスリット30が形成されても良い。このような構成によっても、フロート電極シート27、28は、好適な柔軟性が得られ、治療対象部位を平均的な温度で安全に温めることができる。
【0093】
次に、ヒータ機能を有する導子5を備えた電気治療器1の使用例について説明する。
図9ないし
図13を参照して、ヒータ機能を有する導子5を備えた電気治療器1は、導子5の位置やヒータ23の位置を変更することなく、また、別途電気ヒータ等を使用することなく、所望の治療対象部位に対して、優れた効果の電気治療を行うことができる。
【0094】
即ち、電気治療器1は、制御装置によって治療モードを自動で変更して、導子5の発熱位置及び発熱量を変化させ、治療対象部位の体温を電気治療に適した温度に調整して、血液、リンパ液の流れを促進する。そして、電気治療器1は、それぞれの導子5に印加される電位を制御装置によって自動で調整して、治療対象部位を好適に治療することができる。
【0095】
例えば、電気治療器1は、肩、腰及び脚等、略全身を加熱する全身発熱モード、肩と脚等に近い導子5のみを発熱させる抹消発熱モード、胸等に近い導子5のみを発熱させる体幹発熱モード等、各種の治療モードを実行できるよう構成されても良い。
【0096】
また、電気治療器1は、全身発熱モード、抹消発熱モード、体幹発熱モード等の各種の治療モードにおいて、各導子5の発熱量を切り替える複数の温度モードが設定され、治療の経過によって、温度モードが自動で切り替えられるよう制御されても良い。
【0097】
温度モードは、例えば、約1.5~5Wの低温モード、約5~10Wの中温モード、約10~15Wの高温モード等である。例えば、高温モードで約5分間、中温モードで約10分間、低温モードで約15分間の治療が行われた後、約30分間の休止でヒータ23の加熱が休止され、これを繰り返す長時間の治療が行われても良い。約30分間の休止でヒータ23による加熱が休止されることにより、蓄熱による過剰な高温化によるやけどや、血流障害による低温やけど等を防止することができる。
【0098】
また、電気治療器1の制御装置は、ノンレム睡眠時の人体への加熱がレム睡眠時の人体への加熱よりも弱くなるよう、ヒータ23に供給される加熱電力を制御しても良い。これにより、眠りの深さに合わせた好適な加熱によって好適な治療が行われる。
【0099】
また、制御装置は、予め設定された時間に合わせて人体への加熱が強くなるようヒータ23に供給される加熱電力を制御しても良い。これにより、例えば、起床時間に合わせた好適な加熱を行うことができ、利用者は快適に起床することができる。
【0100】
詳しくは、スタート直後、即ち睡眠治療の開始直後、の約20分間は、例えば脚と肩のみを中程度に温める、ぬるま湯モード(抹消発熱モードの中温モード)による治療が行われても良い。このような治療モードにより、睡眠開始時に体幹の腰部等を温めずに抹消血管を拡張して利用者を心地よい睡眠に導くことができる。
【0101】
治療開始から約20分後以降は、例えば約20~40分間の低温モード及び約60分間の休止を繰り返す治療モードが実行されても良い。即ち、レム睡眠時には、低温モードが実行され、ノンレム睡眠時には、休止になる。これにより、睡眠を妨げることのない好適な治療が行われる。
【0102】
その後、起床予定時間の約80分前からは、朝風呂モードが実行されても良い。朝風呂モードでは、約60分間の低温モードの後、約20分間の中温モードが実行される。これにより、起床直前に身体を温めて利用者を快適な目覚めに導くことができる。
【0103】
また、制御装置による治療モードの制御は、図示しない温度センサによって計測される利用者の体温、図示しない室温センサによって計測される室温、その他の図示しないセンサ類によって計測される温度、湿度、照度、血圧、心拍数、振動数その他各種計測結果に基づいて行われても良い。
【0104】
次に、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1について詳細に説明する。
図14は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図14を参照して、電気治療器1の接地電位回路14には、直流バイアス回路31が設けられても良い。
【0105】
直流バイアス回路31は、例えば並列接続されたダイオード32及びコンデンサ33を有する。これにより、接地電位に直流成分を残し、導子5に印加される出力電位を正極若しくは負極にシフトすることができる。また、直流バイアス回路31によって直流電位を重畳できるので、電気治療器1は、直流電気治療器としての効果も得られる。
【0106】
詳しくは、直流電位は導子5や大地とのストレイキャパシタの影響を受けない。直流バイアスが加わることにより、交流の出力電位は、直流が印加される側の極性の電位が確保される。そのため、直流バイアス回路31は、少なくとも直流が印可される側の半波において、人体との間の電位差がストレイキャパシタによる減衰の影響で低下することを防止できる。このため、出力電位が減衰しない分だけ人体に治療電流を流し易くなる。結果的に人体との電位の結合性が高くなる。
【0107】
また、直流バイアス回路31には、直流バイアス回路31を開閉するスイッチ34が設けられている。そのため、スイッチ34の切り替えによって、直流成分の重畳による位相シフトを任意に切り替えることができる。
【0108】
図15は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図15を参照して、切り替え自在に直流成分を重畳させる回路として、高圧トランス3の二次側に半波整流回路35が設けられても良い。
【0109】
具体的には、半波整流回路35は、並列接続されるダイオード36及びスイッチ37を有し、二次側電流制限抵抗11に対して直列に接続されても良い。また、ダイオード36及びスイッチ37と並列に、例えば30MΩの放電抵抗38が設けられても良い。
【0110】
このような構成の半波整流回路35が設けられることによっても、スイッチ37の切り替えにより任意に、出力電位を正極若しくは負極の半波に整流することができ、装着された導子5を移動することなく所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流し効果的な治療を行うことができる。
【0111】
図16は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図16に示すように、切り替え自在に直流成分を重畳させる回路として、高圧トランス3の二次側にダイオード40、抵抗41及びスイッチ42が並列に接続されたバイアス回路39が設けられても良い。
【0112】
このような構成によっても、導子5に印加される出力電位に直流バイアスを加えることができ、装着された導子5を移動することなく所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流す効果的な治療を行うことができる。
【0113】
図17は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図17に示すように、切り替え自在に直流成分を重畳させる回路として、それぞれの導子5につながる出力電位回路13には、半波整流回路43が設けられても良い。
【0114】
具体的には、半波整流回路43は、それぞれのスイッチ4と導子5とを接続する出力電位回路13に設けられ、並列接続されたダイオード44及びスイッチ45を有する。また、ダイオード44及びスイッチ45と並列に放電抵抗46が設けられても良い。
【0115】
このような構成によっても、出力電位を正極若しくは負極の半波に任意に整流すると共に、接地電位には直流バイアスを加えることができ、装着された導子5を移動することなく所望の治療対象部位に対して効果的な治療を行うことができる。
【0116】
図18は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図18を参照して、切り替え自在に直流成分を重畳させる回路として、それぞれの導子5につながる出力電位回路13には、正負切り替え自在な半波整流回路47が設けられても良い。
【0117】
半波整流回路47は、スイッチ4と導子5を接続する出力電位回路13に設けられ、並列に接続される正負逆方向となる一対のダイオード48と、一対のダイオード48にそれぞれ直列に接続される一対のスイッチ49と、を有する。なお、半波整流回路47には、一対のダイオード48に対して並列に放電抵抗50、図示しないコンデンサ等が設けられても良い。
【0118】
このような構成によっても、スイッチ49の切り替えにより任意に、出力電位を正極若しくは負極の半波に整流することができると共に、接地電位には直流バイアスを加えることができる。よって、装着された導子5を移動することなく所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流し効果的な治療を行うことができる。
【0119】
図19は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図である。
図19を参照して、スイッチ4と導子5を接続するそれぞれの出力電位回路13には、インピーダンス回路51が設けられても良い。
【0120】
インピーダンス回路51としては、図示を省略するが、抵抗及びコンデンサ等が並列若しくは直列に接続された回路等、種々の回路を採用し得る。また、インピーダンス回路51は、抵抗のみから構成されても良いし、コンデンサを介して接地されても良い。なお、インピーダンス回路51には、スイッチ52が開閉自在に並列接続されている。
【0121】
このようなインピーダンス回路51が設けられることにより、導子5に高圧トランス3の出力電位が選択的に印加される状態において、出力電位から高周波成分のみを供給したり、その逆に低周波成分のみを供給したりできる。また、導子5に接地電位回路14が選択的に接続される状態において、高周波成分のみを利用者の身体から局所的に抜いたり、その逆に低周波成分のみを選択的に抜いたりすることができる。
【0122】
図20は、本発明の更に他の実施形態に係る電気治療器1の概略構成を示す回路図であり、接地電位回路14にそれぞれインピーダンス回路53が設けられた例を示している。また、
図21は、インピーダンス回路53の概略構成を示す回路図である。
図20及び
図21を参照して、接地電位回路14には、種々のインピーダンスを選択切り替え自在なインピーダンス回路53が設けられても良い。
【0123】
インピーダンス回路53としては、抵抗54~61、コイル62、コンデンサ63~65、ダイオード66、67及びスイッチ類68~76等が並列若しくは直列に接続された種々の回路を採用し得る。スイッチ類78~76の切り替えは、設定された治療プログラム及び各種センサ等によって検出される各種治療情報等に基づいて、制御装置によって自動制御される。
【0124】
このようなインピーダンス回路53が設けられることにより、それぞれの接地電位回路14に対して、選択されたインピーダンスを挿入し、例えば高周波、低周波、直流バイアス等を調整し、大地に流れる電流の周波数、極性等を好適に制御することができる。よって、その都度導子5を取り外して移動し出力電位の設定を変更することなく、所望の治療対象部位に対して好適な治療電流を流すことができ、効果的な電気治療を自動で効率良く行うことができる。
【0125】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0126】
1 電気治療器
2 電源装置
3 高圧トランス
4 スイッチ
4a 第1のスイッチ
4b 第2のスイッチ
4c 第3のスイッチ
4d 第4のスイッチ
5 導子
5a 第1の導子
5b 第2の導子
5c 第3の導子
5d 第4の導子
10 一次側電流制限抵抗
11 二次側電流制限抵抗
12 並列抵抗
13 出力電位回路
14 接地電位回路
15 接地抵抗
16 導子電極
17 絶縁体
18 絶縁体
19 接地電位固定電極
20 フロート接点
21 ヒータ用トランス
21a 第1のヒータ用トランス
21b 第2のヒータ用トランス
21c 第3のヒータ用トランス
22 ヒータ用スイッチ
22a 第1のヒータ用スイッチ
22b 第2のヒータ用スイッチ
22c 第3のヒータ用スイッチ
23 ヒータ
24 ヒータ線
25 電位端子
26 ヒータ端子
27 フロート電極シート
28 フロート電極シート
29 電極層
30 スリット
31 直流バイアス回路
32 ダイオード
33 コンデンサ
34 スイッチ
35 半波整流回路
36 ダイオード
37 スイッチ
38 放電抵抗
39 バイアス回路
40 ダイオード
41 抵抗
42 スイッチ
43 半波整流回路
44 ダイオード
45 スイッチ
46 放電抵抗
47 半波整流回路
48 ダイオード
49 スイッチ
50 放電抵抗
51 インピーダンス回路
52 スイッチ
53 インピーダンス回路
54~61 抵抗
62 コイル
63~65 コンデンサ
66、67 ダイオード
68~76 スイッチ類