(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158241
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】湿度検出素子、湿度検出素子の製造方法、パワーモジュールおよび電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20241031BHJP
H01L 21/3205 20060101ALI20241031BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20241031BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20241031BHJP
H01L 23/58 20060101ALI20241031BHJP
G01N 27/22 20060101ALI20241031BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20241031BHJP
H01G 4/33 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01L27/04 F
H01L27/04 C
H01L21/88 Z
H01L21/90 S
H01L25/00 Z
H01L23/56 D
G01N27/22 A
H01G4/30 541
H01G4/30 547
H01G4/33
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073270
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】福永 圭吾
【テーマコード(参考)】
2G060
5E001
5E082
5F033
5F038
【Fターム(参考)】
2G060AA01
2G060AB02
2G060AE19
2G060AF10
2G060AG08
2G060AG11
2G060BA09
2G060BB10
2G060JA02
2G060KA04
5E001AB03
5E001AC09
5E082AB03
5E082BB10
5E082EE23
5E082EE37
5E082FF05
5E082FG03
5E082FG33
5E082FG38
5F033HH08
5F033HH09
5F033HH13
5F033HH17
5F033JJ01
5F033JJ08
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5F033JJ17
5F033KK08
5F033KK09
5F033KK13
5F033KK17
5F033PP15
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5F033QQ08
5F033QQ13
5F033QQ19
5F033RR06
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5F033RR22
5F033SS21
5F033UU04
5F033VV10
5F033WW00
5F033XX00
5F038AC05
5F038AC15
5F038AZ07
5F038EZ07
(57)【要約】
【課題】素子サイズを大きくせずに静電容量を大きくすることができ、検出感度を向上させた湿度検出素子を提供する。
【解決手段】本開示に係る湿度検出素子は、基板上に設けられた第1の電極と、第1の電極上に設けられた、湿度により誘電率が変化する感湿層と、感湿層上に設けられた第2の電極と、を有する積層構造を2つ以上積層して有し、各積層構造のそれぞれの第1の電極どうしおよびそれぞれの第2の電極どうしが互いに接続されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた、湿度により誘電率が変化する感湿層と、
前記感湿層上に設けられた第2の電極と、を有する積層構造を2つ以上積層して有し、
各積層構造のそれぞれの前記第1の電極どうしおよびそれぞれの前記第2の電極どうしが互いに接続されている、湿度検出素子。
【請求項2】
2つ以上の前記積層構造は、
少なくとも最上層の前記第2の電極が、一部に開口部を有し、前記開口部において前記感湿層が露出している、請求項1に記載の湿度検出素子。
【請求項3】
前記第1の電極、前記感湿層および前記第2の電極は、凹凸を有し、
それぞれの前記凹凸の位置が、平面視で一致する、請求項1または請求項2に記載の湿度検出素子。
【請求項4】
前記第1の電極および前記第2の電極は、
一方が前記感湿層の線膨張率より小さく、他方は前記感湿層の前記線膨張率より大きい材料で構成される、請求項1に記載の湿度検出素子。
【請求項5】
前記第1の電極および前記第2の電極は、厚さが異なる、請求項1に記載の湿度検出素子。
【請求項6】
(a)基板上に第1の電極を形成する工程と、
(b)前記第1の電極の上に湿度により誘電率が変化する感湿層を形成する工程と、
(c)前記感湿層の上に第2の電極を形成する工程と、
(d)前記第2の電極の上に前記感湿層と同じ材料の絶縁層を形成する工程と、
工程(d)の後に、工程(a)、工程(b)および工程(c)を少なくとも1回繰り返す工程と、を備える、湿度検出素子の製造方法。
【請求項7】
最上層の前記第2の電極を形成する前記工程(c)は、
前記第2の電極の一部に開口部が形成されるように前記第2の電極をパターニングする工程を含む、請求項6に記載の湿度検出素子の製造方法。
【請求項8】
最下層の前記第1の電極を形成する前記工程(a)は、
前記第1の電極が、凹凸を有するように前記第1の電極を選択的にエッチングして、前記第1の電極の一部の厚さを薄くする工程を含む、請求項6または請求項7に記載の湿度検出素子の製造方法。
【請求項9】
最下層の前記第1の電極を形成する前記工程(a)の前に、
前記基板が凹凸を有するように前記基板を選択的にエッチングして、前記基板の一部の厚さを薄くする工程を備える、請求項6または請求項7に記載の湿度検出素子の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の湿度検出素子を搭載した半導体素子と、
前記半導体素子を搭載する絶縁基板と、
前記絶縁基板を囲むように設けられ、前記絶縁基板と接合されたケースと、
前記ケース内に充填された封止樹脂と、を備え、
前記ケースは、
前記湿度検出素子で検出された前記半導体素子の湿度の情報を外部に出力する信号端子を有する、パワーモジュール。
【請求項11】
請求項10に記載のパワーモジュールを有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備えた電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は湿度検出素子に関し、特に湿度の検出感度を向上させた湿度検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の湿度検出素子として、例えば特許文献1には、櫛形電極とフローティング電極が備わっている少なくとも1つのキャパシタを有し、フローティング電極と櫛形電極との間に配置された感湿層を備える容量型湿度センサが開示されている。キャパシタンの静電容量は、C=ε0εrS/dで示されたパラメータに依存する。ここで、ε0は真空の誘電率、εrは感湿層の比誘電率、Sは電極面積、dは電極間の距離である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
静電容量を大きくして、検出感度をより向上させるためには、電極面積を大きくする、または電極の間の距離を小さくする必要がある。特許文献1が開示している容量型湿度センサにおいて、電極面積を大きくすると、容量型湿度センサのサイズが大きくなる問題が生じる。また、電極間の距離は、感湿層の厚みで決まる。感湿層の多くはスピンコーティングなどの手法により形成されるが、感湿層の厚みの下限値は、その誘電材料の粘度により決まるため、電極間の距離は、使用する誘電材料の厚みの下限値以下にすることが困難である。
【0005】
本開示は上記のような問題を解決するためになされたものであり、素子サイズを大きくせずに静電容量を大きくすることができ、検出感度を向上させた湿度検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る湿度検出素子は、基板上に設けられた第1の電極と、前記第1の電極上に設けられた、湿度により誘電率が変化する感湿層と、前記感湿層上に設けられた第2の電極と、を有する積層構造を2つ以上積層して有し、各積層構造のそれぞれの前記第1の電極どうしおよびそれぞれの前記第2の電極どうしが互いに接続されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る湿度検出素子によれば、湿度により誘電率が変化する感湿層が基板の厚み方向で第1の電極と第2の電極に挟まれた積層構造が形成されており、当該積層構造の上に同様の積層構造が繰り返して形成されており、各積層構造のそれぞれの第1の電極どうしおよびそれぞれの第2の電極どうしは互いに接続されているので、キャパシタが電気的に並列接続された構造となっている。このため、素子サイズを大きくすることなく、単体のキャパシタと比較して、より大きい静電容量が得られるので、湿度の検出感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子を示す平面図である。
【
図2】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図3】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図4】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程1を示す平面図である。
【
図5】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程1を示す断面図である。
【
図6】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程1を示す断面図である。
【
図7】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程2を示す平面図である。
【
図8】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程2を示すの断面図である。
【
図9】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程2を示すの断面図である。
【
図10】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す平面図である。
【
図11】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す断面図である。
【
図12】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す断面図である。
【
図13】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す平面図である。
【
図14】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す断面図である。
【
図15】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す断面図である。
【
図16】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程5を示す平面図である。
【
図17】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程5を示す断面図である。
【
図18】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程5を示す断面図である。
【
図19】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程6を示す平面図である。
【
図20】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程6を示す断面図である。
【
図21】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程6を示す断面図である。
【
図22】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程7を示す平面図である。
【
図23】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程7を示す断面図である。
【
図24】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程7を示す断面図である。
【
図25】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程8を示す平面図である。
【
図26】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程8を示す断面図である。
【
図27】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程8を示す断面図である。
【
図28】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程9を示す平面図である。
【
図29】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程9を示す断面図である。
【
図30】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程9を示す断面図である。
【
図31】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程10を示す平面図である。
【
図32】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程10を示す断面図である。
【
図33】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程10を示す断面図である。
【
図34】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程11を示す平面図である。
【
図35】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程11を示す断面図である。
【
図36】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程11を示す断面図である。
【
図37】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程12を示す平面図である。
【
図38】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程12を示す断面図である。
【
図39】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程12を示す断面図である。
【
図40】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程13を示す平面図である。
【
図41】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程13を示す断面図である。
【
図42】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程13を示す断面図である。
【
図43】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程14を示す平面図である。
【
図44】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程14を示す断面図である。
【
図45】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程14を示す断面図である。
【
図46】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程15を示す平面図である。
【
図47】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程15を示す断面図である。
【
図48】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程15を示す断面図である。
【
図49】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程16を示す平面図である。
【
図50】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程16を示す断面図である。
【
図51】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程16を示す断面図である。
【
図52】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程17を示す平面図である。
【
図53】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程17を示す断面図である。
【
図54】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程17を示す断面図である。
【
図55】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程18を示す平面図である。
【
図56】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程18を示す断面図である。
【
図57】本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子の製造方法の工程18を示す断面図である。
【
図58】本開示に係る実施の形態2の湿度検出素子を示す平面図である。
【
図59】本開示に係る実施の形態2の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図60】本開示に係る実施の形態2の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図61】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子を示す平面図である。
【
図62】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図63】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図64】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2を示す平面図である。
【
図65】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2を示す断面図である。
【
図66】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2を示す断面図である。
【
図67】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2の後の状態を示す平面図である。
【
図68】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2の後の状態を示す断面図である。
【
図69】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程2の後の状態を示す断面図である。
【
図70】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す平面図である。
【
図71】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す断面図である。
【
図72】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程3を示す断面図である。
【
図73】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す平面図である。
【
図74】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す断面図である。
【
図75】本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子の製造方法の工程4を示す断面図である。
【
図76】本開示に係る実施の形態4の湿度検出素子を示す平面図である。
【
図77】本開示に係る実施の形態4の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図78】本開示に係る実施の形態4の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図79】本開示に係る実施の形態5の湿度検出素子を示す平面図である。
【
図80】本開示に係る実施の形態5の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図81】本開示に係る実施の形態5の湿度検出素子を示す断面図である。
【
図82】本開示に係る実施の形態6のパワーモジュールの構成を示す断面図である。
【
図83】本開示に係る実施の形態7の電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<はじめに>
以下の説明において、図面は模式的に示されたものであり、異なる図面にそれぞれ示されている画像のサイズおよび位置の相互関係は、必ずしも正確に記載されたものではなく、適宜変更され得る。また、以下の説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称および機能も同様のものとする。よって、それらについての詳細な説明を省略する場合がある。
【0010】
また、以下の説明では、「上」、「下」、「側」、「おもて」および「裏」などの特定の位置および方向を意味する用語が用いられる場合があるが、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするため便宜上用いられているものであり、実際に実施される際の方向とは関係しない。
【0011】
<実施の形態1>
本開示に係る実施の形態1の湿度検出素子およびその製造方法について
図1~
図57を用いて説明する。まず、
図1~
図3を用いて、実施の形態1の湿度検出素子100について説明する。
【0012】
図1は、実施の形態1の湿度検出素子100の構成を示す平面図であり、
図2および
図3は、それぞれ
図1に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0013】
湿度検出素子100が形成さえる半導体基板1は、例えばn型のシリコン(Si)基板が用いられる。
図1に示されるように、半導体基板1に湿度検出素子100のみを形成することもできるが、例えば、絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体素子も併せて形成することもできる。
【0014】
図2および
図3に示されるように、半導体基板1の主面(第1の主面)には、半導体基板1の厚み方向に、電極2(第1の電極)、感湿層3および電極4(第2の電極)で構成される積層構造が形成されており、積層構造の上に間に感湿層3を介して同様の構成からなる積層構造が繰り返して形成されている。積層構造は、半導体基板1の主面に形成された絶縁膜の上に形成することもできる。その場合、絶縁膜の膜厚は500nmである。
【0015】
各積層構造の電極2どうし、感湿層3どうし、および電極4どうしは互いに接続されている。積層構造の各層の厚みは、例えば、電極2は500nm、感湿層3は100nm、電極4は500nmである。感湿層3は、湿度により誘電率が変化する材料であり、例えば、ポリイミドまたは酪酸酢酸セルロースなどの高分子有機材料を用いることができる。感湿層3を介して対向する電極2と電極4が検出用電極として機能し、感湿層3の湿度に応じた誘電率の変化を、電極2と電極4の間の静電容量の変化として検出することにより、湿度を測定することができる。
【0016】
電極2、感湿層3および電極4の各層の位置関係は、フォトリソグラフィー技術により形成されるレジストフォトマスクの位置精度を考慮して設計されることが望ましい。また、耐湿性に乏しい電極材料を用いる場合は、感湿層3の形成前に電極2上を耐湿性に優れた誘電材料、例えば、シリコン窒化膜で被覆することができる。
【0017】
以上の構造を備える湿度検出素子100の製造方法について、
図4~
図57を用いて説明する。
【0018】
図4は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程1を示す平面図であり、
図5および
図6は、それぞれ
図4に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0019】
図4~
図6に示すように、まず、例えば、n型のSi基板である半導体基板1を準備する。そして、半導体基板1の主面の全面に金属層2を形成する。金属層2の形成には、例えば、真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。金属層2の材料には、例えば、金、アルミニウムおよびアルミニウム合金を用いることができる。
【0020】
図7は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程2を示す平面図であり、
図8および
図9は、それぞれ
図7に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0021】
工程1の後、金属層2上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図7~
図9に示すように、金属層2上にレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は金属層2を残したい部分に形成される。
【0022】
図10は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程3を示す平面図であり、
図11および
図12は、それぞれ
図10に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0023】
工程2の後、レジストマスク5を用いてウェットエッチングを行うことにより、金属層2をエッチングして、
図10~
図12に示すように、半導体基板1上に電極2を形成する。エッチング方法は、ウェットエッチングに限らず、例えば、反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)またはイオンミリングなどのドライエッチングを用いることができる。
図10~
図12は、電極2を形成後、レジストマスク5を薬液で除去した状態を示している。
【0024】
図13は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程4を示す平面図であり、
図14および
図15は、それぞれ
図13に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0025】
工程3の後、
図13~
図15に示すように、電極2を埋め込むように、半導体基板1上に感湿層3を形成する。感湿層3は、例えば、湿度により誘電率が変化する感光性ポリイミドで構成され、スピンコーティング法などにより感光性ポリイミドを半導体基板1上に塗布して形成する。
【0026】
図16は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程5を示す平面図であり、
図17および
図18は、それぞれ
図16に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0027】
工程4の後、
図16~
図18に示すように、フォトリソグラフィー技術により感湿層3を所望の形状にパターニングする。
【0028】
図19は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程6を示す平面図であり、
図20および
図21は、それぞれ
図19に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0029】
工程5の後、電極2および感湿層3を含む半導体基板1の主面上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図19~
図21に示すように、半導体基板1の主面、電極2および感湿層3の上に、パターニングされたレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は、次の工程で形成される金属層4を残したい部分が開口部となるように形成される。
【0030】
図22は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程7を示す平面図であり、
図23および
図24は、それぞれ
図22に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0031】
工程6の後、
図22~
図24に示すように、レジストマスク5上を含む全面に金属層4を形成する。金属層4の形成には、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。金属層4の材料には、例えば、金、アルミニウムおよびアルミニウム合金を用いることができる。
【0032】
図25は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程8を示す平面図であり、
図26および
図27は、それぞれ
図25に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0033】
工程7の後、レジストマスク5を薬液により除去して、レジストマスク5の上の金属層4をリフトオフ法により除去することで、
図25~
図27に示すように、残った金属層4が電極4となる。
【0034】
図28は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程9を示す平面図であり、
図29および
図30は、それぞれ
図28に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0035】
工程8の後、
図28~
図29に示すように、電極2、感湿層3および電極4を含む半導体基板1の主面上に、電極2、感湿層3および電極4を埋め込むように、絶縁層3を形成する。絶縁層3は、例えば、感湿層3と同じ感光性ポリイミドで構成することができ、酸化シリコン(SiO
2)または窒化シリコン(SiN)を用いることもできる。
図28~
図29は、絶縁層3を感湿層3と同じ感光性ポリイミドで構成する場合を示している。絶縁層3の形成方法として、スピンコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0036】
図31は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程10を示す平面図であり、
図32および
図33は、それぞれ
図31に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0037】
工程9の後、
図31~
図33に示すように、フォトリソグラフィー技術により、絶縁層3を所望の形状にパターニングする。この場合、絶縁層3と感湿層3とが互いに接続される部分を有するようにパターニングする。
【0038】
図34は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程11を示す平面図であり、
図35および
図36は、それぞれ
図34に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0039】
工程10の後、電極2、感湿層3および電極4を含む半導体基板1の主面上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図34~
図36に示すように、半導体基板1の主面、電極2、感湿層3および電極4の上に、パターニングされたレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は、次の工程で形成される金属層2を残したい部分が開口部となるように形成される。
【0040】
図37は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程12を示す平面図であり、
図38および
図39は、それぞれ
図34に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0041】
工程12の後、
図37~
図39に示すように、レジストマスク5上を含む全面に金属層2を形成する。金属層2の形成には、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。金属層2の材料には、工程1と同様に、例えば、金、アルミニウムおよびアルミニウム合金を用いることが望ましい。
【0042】
図40は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程13を示す平面図であり、
図41および
図42は、それぞれ
図40に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0043】
工程12の後、レジストマスク5を薬液により除去して、レジストマスク5の上の金属層2をリフトオフ法により除去することで、
図40~
図42に示すように、残った金属層2が電極2となる。この場合、工程13で形成した電極2と工程3で形成した電極2とが互いに接続される部分を有するように工程11のレジストマスク5を形成しておく。
【0044】
図43は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程14を示す平面図であり、
図44および
図45は、それぞれ
図43に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0045】
工程13の後、
図43~
図45に示すように、電極2、感湿層3および電極4を含む半導体基板1の主面上に、電極2、感湿層3および電極4を埋め込むように、絶縁層3を形成する。絶縁層3は、工程5と同様に、例えば、感湿層3と同じ感光性ポリイミドで構成することが望ましい。絶縁層3の形成方法として、スピンコーティング法などの塗布方法を用いることができる。
【0046】
図46は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程15を示す平面図であり、
図47および
図48は、それぞれ
図46に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0047】
工程14の後、
図46~
図48に示すように、フォトリソグラフィー技術により、絶縁層3を所望の形状にパターニングする。この場合、工程15で形成した絶縁層3と工程10で形成した絶縁層3とが互いに接続される部分を有するようにパターニングする。
【0048】
図49は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程16を示す平面図であり、
図50および
図51は、それぞれ
図49に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0049】
工程15の後、電極2、絶縁層3および電極4を含む半導体基板1の主面上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図49~
図51に示すように、半導体基板1の主面、電極2、絶縁層3および電極4の上に、パターニングされたレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は、次の工程で形成される金属層4を残したい部分が開口部となるように形成される。
【0050】
図52は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程17を示す平面図であり、
図53および
図54は、それぞれ
図52に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0051】
工程16の後、
図52~
図54に示すように、レジストマスク5上を含む全面に金属層4を形成する。金属層4の形成には、工程7と同様に、例えば真空蒸着法またはスパッタリング法を用いることができる。金属層4の材料には、工程7と同様に、例えば、金、アルミニウムおよびアルミニウム合金を用いることが望ましい。
【0052】
図55は、実施の形態1の湿度検出素子100の製造方法の工程18を示す平面図であり、
図56および
図57は、それぞれ
図55に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0053】
工程17の後、レジストマスク5を薬液により除去して、レジストマスク5の上の金属層4をリフトオフ法により除去することで、
図55~
図57に示すように、残った金属層4が電極4となる。この場合、工程8で形成した電極4と工程17で形成した電極4とが互いに接続される部分を有するように工程16のレジストマスク5を形成しておく。
【0054】
以上説明した工程1~工程18を経て、
図1~
図3に示した実施の形態1の湿度検出素子100が完成する。
【0055】
湿度検出素子100は、誘電体である感湿層3が、半導体基板1の厚み方向で、電極2と電極4とに挟まれた積層構造が形成されており、当該積層構造の上に同様の積層構造が繰り返して形成されている。各積層構造の電極2どうし、および電極4どうしは、互いに電気的にも接続されている。すなわち、複数のキャパシタが電気的に並列接続された構成となっている。このような構成を採ることで、素子サイズを大きくすることなく、単体のキャパシタと比較して、ほぼ2倍の静電容量が得られるので、湿度の検出感度を向上させることができる。
【0056】
なお、実施の形態1では、電極2、感湿層3、電極4で構成される積層構造を、半導体基板1の厚み方向に2つ形成した例を示したが、これに限定されるものではなく、3つ以上形成することもできる。
【0057】
<実施の形態2>
本開示に係る実施の形態2の湿度検出素子について
図58~
図60を用いて説明する。
図58は、実施の形態2の湿度検出素子101の構成を示す平面図であり、
図59および
図60は、それぞれ
図58に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0058】
実施の形態2の湿度検出素子101は、実施の形態1の湿度検出素子100と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なっている。すなわち、実施の形態2の湿度検出素子101は、
図58に示すように、最上層の電極4の一部が開口された開口部OPとなっており、感湿層3が露出している。
【0059】
このため、感湿層3が電極2により被覆されていない領域が増加して感湿層3に水分が吸湿されやすくなるので、実施の形態1の湿度検出素子100の効果に加え、湿度変化への応答性が向上する。
【0060】
また、
図58~
図60に示した構成に限定されず、最上層の電極4に加えて、下層の電極4の一部が開口された構造とすることもでき、何れかの電極2の一部が開口された構造とすることもできる。
【0061】
<実施の形態3>
本開示に係る実施の形態3の湿度検出素子について
図61~
図75を用いて説明する。
図61は、実施の形態3の湿度検出素子102の構成を示す平面図であり、
図62および
図63は、それぞれ
図61に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0062】
実施の形態3の湿度検出素子102は、実施の形態1の湿度検出素子100と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なっている。すなわち、実施の形態3の湿度検出素子102は、
図62および
図63に示すように、電極2、感湿層3および電極4が凹凸を有した形状となっている。
【0063】
このため、実施の形態1の湿度検出素子100よりも電極面積を大きくすることができるので、静電容量を大きくすることができ、実施の形態1の湿度検出素子100の効果に加え、湿度の検出感度がより向上する。
【0064】
湿度検出素子102を得るには、最下層の電極2に凹凸を形成する。以下、
図64~
図75を用いて最下層の電極2の形成方法を説明する。
【0065】
図4~
図6を用いて説明した湿度検出素子100の製造方法の工程1を経て、半導体基板1の主面の全面に金属層2を形成する。
【0066】
図64~
図66は、湿度検出素子101の製造方法の工程2を示す図であり、
図64は平面図であり、
図65および
図66は、それぞれ
図64に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0067】
工程1の後、金属層2上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図64~
図66に示すように、金属層2上にレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は金属層2をエッチングしたい部分が開口部OPとなるように形成される。
図64の例では、レジストマスク5の中央部に間を開けて、平面視形状が細長い矩形の2つの開口部OPが形成されている。
【0068】
工程2の後、イオンミリングで開口部OPの下の金属層2を厚さ方向にエッチングし、金属層2の厚みを薄くする。
【0069】
図67~
図69は、金属層2の厚みを薄くした後、レジストマスク5を薬液で除去した状態を示す図であり、
図67は平面図であり、
図68および
図69は、それぞれ
図67に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0070】
図68および
図69に示すように、金属層2の中央部に間を開けて、金属層2の厚みが薄くなった部分が形成されている。
【0071】
図70は、実施の形態3の湿度検出素子101の製造方法の工程3を示す平面図であり、
図71および
図72は、それぞれ
図70に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0072】
工程2の後、金属層2上にスピンコーティング法などの塗布方法で、フォトレジストなどの感光性樹脂を塗布する。フォトリソグラフィー技術により、フォトマスクのパターンをフォトレジストに転写し、
図70~
図72に示すように、金属層2上にレジストマスク5を形成する。レジストマスク5は金属層2を残したい部分に形成される。
【0073】
図73は、実施の形態3の湿度検出素子101の製造方法の工程4を示す平面図であり、
図74および
図75は、それぞれ
図73に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0074】
工程3の後、レジストマスク5を用いてウェットエッチングを行うことにより、金属層2をエッチングして、
図73~
図75に示すように、半導体基板1上に電極2を形成する。エッチング方法は、ウェットエッチングに限らず、例えば、RIEまたはイオンミリングなどのドライエッチングを用いることができる。
図73~
図75は、電極2を形成後、レジストマスク5を薬液で除去した状態を示している。
【0075】
以後に形成する感湿層3および電極4は、電極2に形成した凹凸に沿って形成される。そのため、電極2、感湿層3および電極4の平面視での凹凸の位置は一致している。なお、感湿層3および電極4の製造工程は、湿度検出素子101の製造方法の工程4~工程18と同じである。
【0076】
なお、素子面積を変えずに電極面積を大きくするには、
図61~
図63に示した構成に限定されず、半導体基板1に凹凸を設ける、または、半導体基板1の主面に絶縁膜を形成し、その絶縁膜に凹凸を設けた構成とすることができる。どちらの場合も、工程1の前に半導体基板1に凹凸を設ける工程、または、半導体基板1の上に凹凸を有する絶縁膜を形成する工程を行う。
【0077】
<実施の形態4>
本開示に係る実施の形態4の湿度検出素子について
図76~
図77を用いて説明する。
図76は、実施の形態4の湿度検出素子103の構成を示す平面図であり、
図77および
図78は、それぞれ
図76に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0078】
実施の形態4の湿度検出素子103は、実施の形態1の湿度検出素子100と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なっている。すなわち、実施の形態4の湿度検出素子103は、
図77および
図78に示すように、電極2と電極4は、熱膨張率(線膨張率)が異なる材料で構成されている。
【0079】
例えば、電極2を金で構成し、電極4をアルミニウムで構成する、または、電極2をアルミニウムで構成し、電極4をクロムで構成することができる。この組み合わせにより、電極2、感湿層3、電極4の順に熱膨張率を小さくできる。
【0080】
また、電極2をアルミニウムで構成し、電極4を金で構成する、または、電極2をクロムで構成し、電極4をアルミニウムで構成することができる。この組み合わせにより、電極2、感湿層3、電極4の順に熱膨張率を大きくできる。
【0081】
このように、電極2および電極4を熱膨張率が異なる材料で構成することで、湿度検出素子103に熱が加わった場合に、各層にかかる応力を緩和することができ、実施の形態1の湿度検出素子100の効果に加え、湿度検出素子103の故障率を下げる効果がある。
【0082】
<実施の形態5>
本開示に係る実施の形態5の湿度検出素子について
図79~
図81を用いて説明する。
図79は、実施の形態5の湿度検出素子104の構成を示す平面図であり、
図80および
図81は、それぞれ
図79に示すA-B線およびC-D線での矢示方向断面図である。
【0083】
実施の形態5の湿度検出素子104は、実施の形態1の湿度検出素子100と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なっている。すなわち、実施の形態5の湿度検出素子104は、
図80および
図81に示すように、電極2と電極4の厚さが異なった構成を有している。
【0084】
例えば、電極2厚さを300nmとし、電極4の厚さを500nmとすることで、湿度検出素子104に熱が加わった場合に、厚さが厚い電極4の変形を小さくすることができ、感湿膜3にかかる応力を緩和することができるので、実施の形態1の湿度検出素子100の効果に加え、湿度検出素子103の故障率を下げる効果がある。
【0085】
同様の効果は、電極2の厚さを厚くし、電極4の厚さはそれよりも薄くすることによっても得られる。
【0086】
<実施の形態6>
本開示に係る実施の形態6のパワーモジュールについて
図82を用いて説明する。
図82に示されるように、実施の形態6のパワーモジュール200は、ケース6に固定され、モジュールの底部を構成する絶縁基板7の上面の導体層8上に、例えば、実施の形態1の湿度検出素子100を備えたトランジスタ素子9およびダイオード素子10が実装されている。トランジスタ素子9は、例えばGBTである。
【0087】
トランジスタ素子9およびダイオード素子10は、それぞれの裏面電極がハンダ等の接合材14を介して導体層8に接合されている。トランジスタ素子9およびダイオード素子10の基板の材料は、シリコンまたは炭化珪素(SiC)である。
【0088】
ケース6の側面には、ドレイン端子、エミッタ端子などの主電流が流れる外部端子12がインサート成形され、外部端子12の端部はケース6の側壁上部から突出している。外部端子12とは反対側の側面には、制御信号等が流れる信号端子13がインサート成形され、信号端子13の端部はケース6の側壁上部から突出している。
【0089】
絶縁基板7は、セラミックなどの絶縁性の基板の上面および下面に導体層8が設けられており、開口部であるケース6の下部に、例えば接着剤15によって固定されている。
【0090】
外部端子12のうちドレイン端子は、図示されないリードと接続され、リードは図示されない部分で導体層8と電気的に接続される。
【0091】
外部端子12のうちエミッタ端子は、リード20と接続され、リード20はダイオード素子10の表面電極16とハンダ等の接合材14を介して電気的に接続される。ダイオード素子10の表面電極16とトランジスタ素子9の表面電極16とは、接合材14を介してプレート電極11により電気的に接続される。
【0092】
信号端子13は、トランジスタ素子9の制御電極17とワイヤ18を介して電気的に接続される。
【0093】
ケース7内には封止樹脂19が充填され、プレート電極11、トランジスタ素子9、ダイオード素子10、リード20およびその周辺部は、封止樹脂19で覆われている。
【0094】
このように、実施の形態6のパワーモジュール200は、湿度検出素子100を備えたトランジスタ素子9が実装されているため、トランジスタ素子9の周辺の湿度が一定の湿度に到達したことを湿度検出素子100が検出した場合、パワーモジュール200を搭載した設備にアラームを発出してパワーモジュール200の動作を停止するような機能を設けておくことで、パワーモジュール200の不具合の発生を防止することができる。
【0095】
なお、
図2を例に採れば、湿度検出素子100の半導体基板1上に延在する電極2および電極4にそれぞれ出力線を接続し、それぞれ信号端子13にワイヤを介して電気的に接続しておくことで、電極2と電極4の間の静電容量の変化を外部に出力することができる。
【0096】
また、
図82の例では、トランジスタ素子9が実施の形態1の湿度検出素子100を備えた構成を示したが、これに限定されず、実施の形態2~5の湿度検出素子101~104の何れを搭載することもできる。
【0097】
また、
図82の例ではトランジスタ素子9に湿度検出素子が搭載された構成を示したが、ダイオード素子10に湿度検出素子を搭載することもでき、トランジスタ素子9およびダイオード素子10の両方に湿度検出素子を搭載することもできる。
【0098】
<実施の形態7>
実施の形態7は、上述した実施の形態6のパワーモジュール200を電力変換装置に適用したものである。以下、実施の形態7として、三相のインバータに実施の形態6のパワーモジュール200を適用した場合について説明する。なお、電力変換装置は、三相のインバータに限定されるものではない。
【0099】
図83は、実施の形態7に係る電力変換装置を適用した電力変換システムの構成を示すブロック図である。
図83に示す電力変換システムは、電源1000、電力変換装置2000、負荷3000で構成される。電源1000は、直流電源であり、電力変換装置2000に直流電力を供給する。電源1000は、特に限定されないが、例えば、直流系統、太陽電池または蓄電池で構成することができ、また、交流系統に接続された整流回路またはAC/DCコンバータで構成してもよい。また、電源1000を、直流系統から出力される直流電力を所定の直流電力に変換するDC/DCコンバータによって構成してもよい。
【0100】
電力変換装置2000は、電源1000と負荷3000の間に接続された三相のインバータであり、電源1000から供給された直流電力を交流電力に変換し、負荷3000に交流電力を供給する。電力変換装置2000は、
図83に示すように、直流電力を交流電力に変換して出力する主変換回路201と、主変換回路201を制御する制御信号を主変換回路201に出力する制御回路202とを備えている。
【0101】
負荷3000は、電力変換装置2000から供給された交流電力によって駆動される三相の電動機である。なお、負荷3000は、特に限定されないが、各種電気機器に搭載された電動機であり、例えば、ハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道車両、エレベーター、または、空調機器向けの電動機として用いられる。
【0102】
以下、電力変換装置2000の詳細を説明する。主変換回路201は、図示されないトランジスタ素子とダイオード素子を備えており、トランジスタ素子がスイッチングすることによって、電源1000から供給される直流電力を交流電力に変換し、負荷3000に供給する。主変換回路201の具体的な回路構成は種々のものがあるが、本実施の形態に係る主変換回路201は2レベルの三相フルブリッジ回路であり、6つのトランジスタ素子とそれぞれのトランジスタ素子に逆並列された6つのダイオード素子で構成することができる。主変換回路201のパワーモジュールには、上述した実施の形態6のパワーモジュール200をインバータの3相分のトランジスタ素子9およびダイオード素子10が収納された6in1の構成に適用したものとする。
【0103】
6つのトランジスタ素子は2つのトランジスタ素子ごとに直列接続され上下アームを構成し、各上下アームはフルブリッジ回路の各相(U相、V相、W相)を構成する。そして、各上下アームの出力端子、すなわち主変換回路201の3つの出力端子は、負荷3000に接続される。
【0104】
また、主変換回路201は、各トランジスタ素子を駆動する駆動回路(図示せず)を備えているが、駆動回路はパワーモジュール200内に内蔵されていてもよいし、パワーモジュール200とは別に駆動回路を備える構成であってもよい。駆動回路は、主変換回路201のトランジスタ素子を駆動する駆動信号を生成し、主変換回路201のトランジスタ素子の制御電極に供給する。
【0105】
具体的には、後述する制御回路202からの制御信号に従い、トランジスタ素子をオン状態にする駆動信号とトランジスタ素子をオフ状態にする駆動信号とを各トランジスタ素子の制御電極に出力する。トランジスタ素子をオン状態に維持する場合、駆動信号はトランジスタ素子の閾値電圧以上の電圧信号(オン信号)であり、トランジスタ素子をオフ状態に維持する場合、駆動信号はトランジスタ素子の閾値電圧未満の電圧信号(オフ信号)となる。
【0106】
制御回路202は、負荷3000に所望の電力が供給されるよう主変換回路201のトランジスタ素子を制御する。具体的には、負荷3000に供給すべき電力に基づいて主変換回路201の各トランジスタ素子がオン状態となるべき時間(オン時間)を算出する。例えば、出力すべき電圧に応じてトランジスタ素子のオン時間を変調するパルス幅変調(PWM)制御によって主変換回路201を制御することができる。そして、各時点においてオン状態となるべきトランジスタ素子にはオン信号を、オフ状態となるべきトランジスタ素子にはオフ信号が出力されるよう、主変換回路201が備える駆動回路に制御指令(制御信号)を出力する。駆動回路は、この制御信号に従い、各トランジスタ素子の制御電極にオン信号またはオフ信号を駆動信号として出力する。
【0107】
本実施の形態に係る電力変換装置2000では、主変換回路201に含まれるパワーモジュール200として、実施の形態6に係るパワーモジュール200が適用される。そのため、本実施の形態に係る電力変換装置2000は、トランジスタ素子の周辺の湿度が一定の湿度に到達したことを湿度検出素子100が検出した場合、電力変換装置2000を有した電力変換システムにアラームを発出してパワーモジュール200の動作を停止するような機能を設けておくことで、パワーモジュール200の不具合の発生を防止することができ、ひいては電力変換システムの不具合の発生を防止することができる。
【0108】
本実施の形態では、2レベルの三相インバータに本開示を適用する例を説明したが、本開示は、これに限られるものではなく、種々の電力変換装置に適用することができる。本実施の形態では、2レベルの電力変換装置としたが3レベルまたはマルチレベルの電力変換装置であっても構わない。電力変換装置が単相負荷に電力を供給する場合には単相のインバータに本開示を適用しても構わない。また、電力変換装置が直流負荷等に電力を供給する場合にはDC/DCコンバータまたはAC/DCコンバータに本開示を適用することも可能である。
【0109】
また、本実施の形態の電力変換装置は、上述した負荷が電動機の場合に限定されるものではなく、例えば、放電加工機またはレーザー加工機、または誘導加熱調理器もしくは非接触器給電システムの電源装置として用いることもでき、さらには太陽光発電システムおよび蓄電システム等のパワーコンディショナーとして用いることも可能である。
【0110】
なお、本開示は、その開示の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。
【0111】
以上説明した本開示を付記としてまとめて記載する。
【0112】
(付記1)
基板上に設けられた第1の電極と、
前記第1の電極上に設けられた、湿度により誘電率が変化する感湿層と、
前記感湿層上に設けられた第2の電極と、を有する積層構造を2つ以上積層して有し、
各積層構造のそれぞれの前記第1の電極どうしおよびそれぞれの前記第2の電極どうしが互いに接続されている、湿度検出素子。
【0113】
(付記2)
2つ以上の前記積層構造は、
少なくとも最上層の前記第2の電極が、一部に開口部を有し、前記開口部において前記感湿層が露出している、付記1に記載の湿度検出素子。
【0114】
(付記3)
前記第1の電極、前記感湿層および前記第2の電極は、凹凸を有し、
それぞれの前記凹凸の位置が、平面視で一致する、付記1または付記2に記載の湿度検出素子。
【0115】
(付記4)
前記第1の電極および前記第2の電極は、
一方が前記感湿層の線膨張率より小さく、他方は前記感湿層の前記線膨張率より大きい材料で構成される、付記1から付記3の何れか1つに記載の湿度検出素子。
【0116】
(付記5)
前記第1の電極および前記第2の電極は、厚さが異なる、付記1から付記4の何れか1つに記載の湿度検出素子。
【0117】
(付記6)
(a)基板上に第1の電極を形成する工程と、
(b)前記第1の電極の上に湿度により誘電率が変化する感湿層を形成する工程と、
(c)前記感湿層の上に第2の電極を形成する工程と、
(d)前記第2の電極の上に前記感湿層と同じ材料の絶縁層を形成する工程と、
工程(d)の後に、工程(a)、工程(b)および工程(c)を少なくとも1回繰り返す工程と、を備える、湿度検出素子の製造方法。
【0118】
(付記7)
最上層の前記第2の電極を形成する前記工程(c)は、
前記第2の電極の一部に開口部が形成されるように前記第2の電極をパターニングする工程を含む、付記6に記載の湿度検出素子の製造方法。
【0119】
(付記8)
最下層の前記第1の電極を形成する前記工程(a)は、
前記第1の電極が、凹凸を有するように前記第1の電極を選択的にエッチングして、前記第1の電極の一部の厚さを薄くする工程を含む、付記6または付記7に記載の湿度検出素子の製造方法。
【0120】
(付記9)
最下層の前記第1の電極を形成する前記工程(a)の前に、
前記基板が凹凸を有するように前記基板を選択的にエッチングして、前記基板の一部の厚さを薄くする工程を備える、付記6または付記7に記載の湿度検出素子の製造方法。
【0121】
(付記10)
付記1から付記5の何れか1つに記載の湿度検出素子を搭載した半導体素子と、
前記半導体素子を搭載する絶縁基板と、
前記絶縁基板を囲むように設けられ、前記絶縁基板と接合されたケースと、
前記ケース内に充填された封止樹脂と、を備え、
前記ケースは、
前記湿度検出素子で検出された前記半導体素子の湿度の情報を外部に出力する信号端子を有する、パワーモジュール。
【0122】
(付記11)
付記10に記載のパワーモジュールを有し、入力される電力を変換して出力する主変換回路と、
前記主変換回路を制御する制御信号を前記主変換回路に出力する制御回路と、を備えた電力変換装置。
【符号の説明】
【0123】
1 半導体基板、2,4 電極、3 感湿層、6 ケース、7 絶縁基板、8 導体層、9 トランジスタ素子、10 ダイオード素子、13 信号端子、19 封止樹脂。