IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

2024-158252地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具
<>
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図1
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図2
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図3
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図4
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図5
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図6
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図7
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図8
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図9
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図10
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図11
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図12
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図13
  • -地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158252
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】地山を補強する連結機構付き鋼管の施工方法、および、連結用治具
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20241031BHJP
   F16B 7/20 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
E21D9/04 F
F16B7/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073296
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】593172131
【氏名又は名称】株式会社トーキンオール
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 秀秋
【テーマコード(参考)】
2D054
3J039
【Fターム(参考)】
2D054FA07
3J039AA03
3J039BB01
3J039FA04
3J039FA13
(57)【要約】
【課題】後続の鋼管を前進させて、先行の鋼管と連結することができ、しかも、鋼管を押すための治具等の取り付け、取り外し不要な構造を提供する。
【解決手段】1本目の鋼管が、地山に埋設され、地山の孔から外部に突出している状態で、2本目の鋼管のソケット部と鋼管本体との外周の段差をセントラライザにより押して、2本目の鋼管の先端のソケット部の内周面を、1本目の前記鋼管の後端の外周面に被せて連結する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管を用いてトンネル周壁部の地山を補強する施工方法であって、
接続されたロッドに打撃力を与えるドリフタと、前記ドリフタを前記ロッドの軸方向に移動可能に支持するガイドシェルと、前記ガイドシェル上の先端側に固定されたセントラライザと、前記ガイドシェル上に前記セントラライザから前記軸方向に間隔をあけて前記軸方向に移動可能に設置されたサブセントラライザと、前記ガイドシェルを前記軸方向に移動可能に支持する支持装置とを備えた削岩機を用い、前記セントラライザの上に1本目の前記鋼管を搭載し、前記鋼管内に挿入された前記ロッドの後端を前記ドリフタに接続し、前記ドリフタにより前記ロッドに打撃力を与えつつ前記ドリフタを前記ガイドシェル上で前進させることにより、前記ロッドの先端に取り付けられたビットにより前記地山を削孔しながら、形成した孔の中に1本目の前記鋼管を挿入する工程と、
前記1本目の前記鋼管の後端が前記地山の前記孔から外部に突出している状態で、前記ドリフタの前進を停止し、前記ガイドシェルを後退させるとともに前記ドリフタを前記ガイドシェル上で後進させる工程と、
前記ガイドシェルの前記セントラライザおよびサブセントラライザ上に、先端部に外周の半径が鋼管本体の半径より大きいソケット部を備えた2本目の鋼管を、前記ソケット部が、前記セントラライザよりも前記ガイドシェルの先端側に位置するように搭載する工程と、
前記ガイドシェルを前記軸方向に前進させることにより、前記セントラライザにより、2本目の前記鋼管のソケット部と前記鋼管本体との外周の段差を押して前進させ、2本目の前記鋼管の先端の前記ソケット部の内周面を、1本目の前記鋼管の後端の外周面に被せて連結する工程と
有することを特徴とする施工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の施工方法であって、前記セントラライザは、U字型の開口を備え、前記U字型の開口の底部の曲面は、所定の曲率半径を有し、前記底部の曲面が前記鋼管の側面に接触することにより前記鋼管を支持し、
前記底部の曲面の曲率半径は、前記2本目の鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記ソケット部以外の前記鋼管本体の外周の半径より大きいことを特徴とする施工方法。
【請求項3】
請求項2に記載の施工方法であって、前記セントラライザは、U字型の開口を備える本体と、前記本体に固定された押圧部材とを有し、
前記押圧部材は、前記本体のU字型の開口の底部の曲率半径を、前記2本目の鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい半径に狭める構造を有することを特徴とする施工方法。
【請求項4】
請求項1に記載の施工方法であって、前記2本目の鋼管のソケット部の内周面には、周方向に2以上の第1溝が設けられ、
前記1本目の鋼管の後端には、外周面には、周方向に2以上の第2溝が設けられ、前記第2溝内にはそれぞれ、一部が切り欠かれたC字型のリングが、前記鋼管の外周面から少なくとも一部が突出するように配置され、
前記連結する工程では、前記1本目の鋼管の前記リングが、前記2本目の鋼管のソケット部の第1溝に係合することを特徴とする施工方法。
【請求項5】
削岩機の支持装置に軸方向に移動可能に支持されるガイドシェルセットであって、接続されたロッドに打撃力を与えるドリフタと、前記ドリフタを前記軸方向に移動可能に支持するガイドシェルと、前記ガイドシェル上の先端側に固定されたセントラライザと、前記ガイドシェル上に前記セントラライザから前記軸方向に間隔をあけて前記軸方向に移動可能に設置されたサブセントラライザとを有し、
前記セントラライザおよび前記サブセントラライザは、それぞれU字型の開口を備え、前記U字型の開口内に鋼管が配置された場合、前記U字型の開口の底部の曲面が前記鋼管の側面に接触することにより前記鋼管を支持する構成であり、前記鋼管は、先端部に外周の半径が、鋼管本体の半径より大きいソケット部を備えた構成であり、
前記セントラライザの前記U字型の開口の底部の曲面は、所定の曲率半径を有し、前記曲率半径は、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きく、
前記セントラライザは、前記ガイドシェルが前記支持装置によって前記軸方向の前方に移動した場合、前記ソケット部が前記セントラライザよりも前記ガイドシェルの先端側に位置するように搭載された前記鋼管の、前記ソケット部と前記鋼管本体との外周の段差を押して前進させ、前記セントラライザに搭載されている前記鋼管を、先に地山に埋設されて後端が地山から突出している別の鋼管の後端に連結することを特徴とするガイドシェルセット。
【請求項6】
請求項5に記載のガイドシェルセットであって、前記セントラライザは、U字型の開口を備える本体と、前記本体に固定された押圧部材とを有し、
前記押圧部材は、前記本体のU字型の開口の底部の曲率半径を、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径に狭めることを特徴とするガイドシェルセット。
【請求項7】
請求項6に記載のガイドシェルセットであって、前記押圧部材は、前記本体の前面に固定された所定の板厚の板状部材であり、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径のU字型の開口を有することを特徴とするガイドシェルセット。
【請求項8】
削岩機の支持装置に軸方向に移動可能に支持されるガイドシェルに固定されるセントラライザであって、
U字型の開口を備え、
前記U字型の開口内に鋼管が配置された場合、前記U字型の開口の底部の曲面が前記鋼管の側面に接触することにより前記鋼管を支持し、前記鋼管は、先端部に外周の半径が、鋼管本体の半径より大きいソケット部を備えた構成であり、
前記セントラライザの前記U字型の開口の底部の曲面は、所定の曲率半径を有し、前記曲率半径は、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きく、
前記セントラライザは、前記ガイドシェルが前記支持装置によって前記軸方向の前方に移動した場合、前記ソケット部が前記セントラライザよりも前記ガイドシェルの先端側に位置するように搭載された前記鋼管の、前記ソケット部と前記鋼管本体との外周の段差を押して前進させ、前記セントラライザに搭載されている前記鋼管を、先に地山に埋設されて後端が地山から突出している別の鋼管の後端に連結することを特徴とするセントラライザ。
【請求項9】
請求項8に記載のセントラライザであって、U字型の開口を備える本体と、前記本体に固定された押圧部材とを有し、
前記押圧部材は、前記本体のU字型の開口の底部の曲率半径を、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径に狭めることを特徴とするセントラライザ。
【請求項10】
請求項9に記載のセントラライザであって、前記押圧部材は、前記本体の前面に固定された所定の板厚の板状部材であり、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径のU字型の開口を有することを特徴とするセントラライザ。
【請求項11】
削岩機の支持装置に支持されるガイドシェルに固定されるセントラライザに固定される押圧部材であって、
前記セントラライザは、鋼管を支持するU字型の開口を備え、前記鋼管は、先端部に外周の半径が、鋼管本体の半径より大きいソケット部を備え、
前記押圧部材は、前記セントラライザの前記U字型の開口の底部の曲率半径を、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径に狭める構造を有することを特徴とする押圧部材。
【請求項12】
請求項11に記載の押圧部材であって、前記本体の前面に固定された所定の板厚の板状部材であり、前記鋼管の前記ソケット部の外周の半径より小さく、前記鋼管本体の外周の半径より大きい曲率半径のU字型の開口を有することを特徴とする押圧部材。
【請求項13】
請求項3に記載された施工方法に用いられる前記鋼管と前記押圧部材のセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事等において、地山の補強のために地山に打ち込まれる鋼管に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、掘削されたトンネルの周壁部の地山を補強するために、地山補強用鋼管(以下、鋼管という)が地山に埋設され、その埋設された鋼管内に固結材が注入される。鋼管には、全長にわたって固結材の吐出孔が設けられており、固結材が吐出孔から地山に浸透し、地山に定着することにより、地山の補強・安定化が図られている。
【0003】
鋼管を地山に打ち込む際には、特許文献1、2に記載されているように、削岩機が用いられる。削岩機には、ガイドシェルがあり、ガイドシェル上にはドリフタが取り付けられている。ドリフタには、先端にビットと呼ばれる削孔工具が取り付けられたロッドが接続され、ロッドは鋼管を貫通するように配置され、鋼管の先端からビットが突出さしている。ドリフタが、ロッドに打撃力と推進力を与えることにより、ビットによって地山が掘削されるのと同時に、ロッドの先端とドリフタの間に位置する鋼管が、掘削により形成された孔の中に埋設されていく。
【0004】
一般的に一本の鋼管の長さは、3m程度であるが、地山の補強に必要な長さは3mよりも長いため、鋼管を1本、打設するごとに、後端に新たな鋼管を連結して、再び打設するという作業を繰り返す。
【0005】
鋼管同士を連結する連結部の構造としては、ねじ接続が一般的に用いられている。先行の鋼管の後端には、雄ねじが、後続の鋼管の先端には雌ねじが設けられている。後続の鋼管を人力で回転させ、先端の雌ねじを、先行の鋼管の後端の雄ねじと螺合させ、連結する。
【0006】
一方、先行の鋼管と後続の鋼管を螺合により連結する作業者の負荷を軽減するとともに、連結に要する時間を低減し、迅速に連結を実現するために、特許文献2には、後続の鋼管を前進させるだけで連結可能な連結機構付き鋼管が開示されている。この連結機構は、先行の鋼管の後端の外周面の周方向に沿って溝が設けられ、溝内にC字型リングが装着されている。一方、後続の鋼管の先端の内周にも周方向に沿って溝が設けられている。先行の鋼管の後端に、後続の鋼管の先端を被せるように前進させると、先行の鋼管の後端のC字型リングが、後続鋼管の先端の内周の溝に係合し、先行の鋼管と後続鋼管が連結される。
【0007】
特許文献2の構造は、後続の鋼管に力を加えながら前進させる必要があるため、後続の鋼管の後端と、ドリフタとの間に、脱着可能な治具を配置し、治具をドリフタで押すことにより、後続の鋼管を前進させる構造を開示している。また、特許文献2には、ガイドシェル上で後続の鋼管の支持するセントラライザと、鋼管の先端の間に脱着可能な治具を配置し、ガイドシェルを前進させることによりセントラライザで鋼管の先端の段差を押して、後続の鋼管を前進させる構成も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2019-203362号公報
【特許文献2】特開2022-100190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献2のように、治具を用いて、後続の鋼管の後端または先端部の段差を押す構造は、後続の鋼管を先行の鋼管に連結する時のみ治具を取り付ける必要がある。そのため、後続の鋼管を追加するたびに、人手によって治具を鋼管の上に取り付け、鋼管の連結が完了した後は、治具を取外す必要があり、手間がかかる。また、鋼管の連結作業は、ドリフタと鋼管が搭載されたガイドシェルが、地山の打設箇所まで上昇した状態で行うため、治具の取り付け取り外しの際には、作業者の安全を確保しながら、治具の落下を防止する必要もある。
【0010】
本発明の目的は、後続の鋼管を前進させて、先行の鋼管と連結することができ、しかも、鋼管を押すための治具等の取り付け、取り外し不要な構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明によれば、鋼管を用いてトンネル周壁部の地山を補強する施工方法が提供される。この施工方法は、接続されたロッドに打撃力を与えるドリフタと、ドリフタをロッドの軸方向に移動可能に支持するガイドシェルと、ガイドシェルの先端側に固定されたセントラライザと軸方向に間隔をあけて配置されたサブセントラライザと、ガイドシェルを支持する支持装置と、支持装置を昇降可能に支持するブームとを備えた削岩機を用いる。本施工方法は、以下の工程を順に行う。まず、セントラライザの上に1本目の鋼管を搭載し、鋼管内に挿入されたロッドの後端をドリフタに接続し、ドリフタによりロッドに打撃力を与えつつドリフタをガイドシェル上で前進させることにより、ロッドの先端に取り付けられたビットにより地山を削孔しながら、形成した孔の中に1本目の鋼管を挿入する。つぎに、1本目の前記鋼管の後端が地山の孔から外部に突出している状態で、ドリフタの前進を停止し、ガイドシェルを後退させるとともに、ドリフタをガイドシェル上で後進させ、かつ、ブームによりガイドシェルを降下させる。つぎに、ガイドシェルのセントラライザおよびサブセントラライザ上に、先端部に外周の半径が鋼管本体の半径より大きいソケット部を備えた2本目の鋼管を、ソケット部が、セントラライザよりもガイドシェルの先端側に位置するように搭載する。ブームを上昇させ、さらに、支持装置上のガイドシェルを軸方向に前進させることにより、セントラライザにより、2本目の鋼管のソケット部と鋼管本体との外周の段差を押してさせ、2本目の鋼管の先端のソケット部の内周面を、1本目の前記鋼管の後端の外周面に被せて連結する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、鋼管をトンネル周壁部の地山に埋設して地山を補強する施工方法において、後続の鋼管を前進させて、先行の鋼管と連結することができ、しかも、鋼管を押すための治具等の取り付け、取り外し不要な施工方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の削岩機200の全体構成を示す側面図。
図2】実施形態の削岩機200のガイドシェル301上のセントラライザ304と鋼管100の配置を示すブロック図。
図3】実施形態で用いる鋼管100の正面図。
図4】実施形態のセントラライザ304を(a)前面から見た図、(b)側面図。
図5】実施形態のセントラライザ304を斜めから撮影した写真。
図6】実施形態のセントラライザ304を(a)前面から撮影した写真、(b)斜めから撮影した写真。
図7図3の鋼管100の左側面図。
図8図3の鋼管100の右側面図。
図9】実施形態で用いる鋼管100の軸方向の断面図。
図10】実施形態で用いる鋼管100の(a)ソケット部10の軸方向の断面図、(b)差し込み部30の軸方向の断面図。
図11】実施形態で用いる鋼管100を2本連結した場合の連結部の軸方向の断面図。
図12】実施形態において鋼管100を位置合わせして連結する状態を示す軸方向の断面図。
図13】実施形態において2本の鋼管100を連結した連結部の軸方向の拡大断面図。
図14】実施形態の鋼管100を地山に打ち込む工法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について説明する。
【0015】
まず、本実施形態の削岩機200について図面を用いて説明する。図1は、削岩機の全体構成を示す側面図であり、図2は、ガイドシェル301上のセントラライザ304と鋼管100の配置を示す図である。
【0016】
削岩機200は、油圧機構を備えた本体540と、本体540により一端が支持されたブーム510と、ブーム510の先端に支持された支持装置400と、支持装置400の上に搭載されたガイドシェルセット300とを備えて構成される。また、削岩機200は、本体540により一端が支持された第2ブーム550と、第2ブーム550の先端に支持されたチャージングケージ551も備えられている。
【0017】
本体540には、自走を可能にする車輪530と、施工時に本体540を地面に固定する固定装置520と、操作装置(不図示)と、制御装置(不図示)等が備えられている。本体540は、操作装置が操作者から受けた操作にしたがって、制御装置の制御下で、ブーム510、支持装置400およびガイドシェルセット300に油圧による駆動力を与え、所定の動作をさせることができる。
【0018】
ガイドシェルセット300は、ガイドシェル301と、ガイドシェル301上に搭載されたドリフタ302と、ガイドシェル301上に固定されたセントラライザ304と、ガイドシェル301上に移動可能に搭載されたサブセントラライザ305とを備えて構成される。
【0019】
ドリフタ302には、ロッド303の一端が接続される。ドリフタ302は、ロッド303に打撃力を与える。
【0020】
ガイドシェル301は、ドリフタ302をロッド303の軸方向(L方向)に移動可能に支持している。
【0021】
セントラライザ304は、ガイドシェル301の先端側に固定され、サブセントラライザ305は軸方向(L方向)に沿ってセントラライザ304から間隔をあけてガイドシェル301上に配置されている。サブセントラライザ305は、ガイドシェル301の軸方向に移動可能である。
【0022】
また、支持装置400は、ガイドシェル301を軸方向(L方向)に移動可能に支持している。
【0023】
セントラライザ304およびサブセントラライザ305は、それぞれU字型の開口を備え、U字型の開口内に鋼管100が配置され、鋼管100を支持する。U字型の開口内に鋼管100が配置された場合、U字型の開口の底部の曲面が、鋼管100の側面に接触することにより鋼管100を支持する。
【0024】
図3に示すように、鋼管100は、その先端部に、外周の半径が、鋼管本体20の半径より大きいソケット部10を備えている。鋼管100の詳しい構造については後述する。
【0025】
セントラライザ304のU字型の開口の底部の曲面は、所定の曲率半径を有しており、この曲率半径は、鋼管100のソケット部10の外周の半径より小さく、鋼管本体20の外周の半径より大きくなるように設計されている。
【0026】
ここでは、図4図6に示すように、セントラライザ304は、U字型の開口を備えるセントラライザ本体314と、セントラライザ本体314に固定された押圧部材320とを有する構成としている。押圧部材320は、図4に示すように、セントラライザ本体314のU字型の開口の底部の曲率半径r1を、曲率半径r2に狭めるように構成されている。曲率半径r2は、鋼管100のソケット部10の外周の半径より小さく、鋼管本体20の外周の半径より大きい値である。
【0027】
押圧部材320は、具体的には、所定の板厚の板状部材であり、セントラライザ本体314の前面にボルト321により強固に固定されている。板状部材には、鋼管100のソケット部10の外周の半径より小さく、鋼管本体20の外周の半径より大きい曲率半径のU字型の開口が形成されている。押圧部材320を構成する板状部材の材質としては、強度が、鋼管100以上のものが好ましく、一例としては、機械構造用炭素鋼S45C(JIS規格)を用いることができる。
【0028】
なお、セントラライザ本体314の前面に押圧部材320を固定する方法は、ボルト321に限られるものではなく、ボルト以外の固定具を用いる方法や、溶接等により固定具を用いずに固定する方法を用いてもよい。
【0029】
なお、ここでは、押圧部材320をセントラライザ本体314の前面に固定しているが、押圧部材320をガイドシェル301上に立設させる構造としてもよい。
【0030】
このように、U字型の開口の底部の曲率半径が設計されたセントラライザ304を用いることにより、鋼管100をソケット部10がセントラライザ304よりもガイドシェル301の先端側に位置するように搭載し、ガイドシェル301を、軸方向(L方向)に前進させた場合、セントラライザ304は、鋼管100のソケット部10と鋼管本体20との外周の段差101を押して前進させる。これにより、セントラライザ304に搭載されている鋼管100(図2の鋼管100-2)を、先に地山に埋設されて後端が地山の切羽から突出している別の鋼管100(図2の鋼管100-1)の後端に連結することができる。
【0031】
本実施形態の押圧部材320は、セントラライザ本体314に固定されており、脱着する必要がないため、セントラライザ本体314からの脱落する恐れがなく、また、作業者が連結時に押圧部材320に対して何かの作業をする必要もない。
【0032】
<連結機構付き鋼管>
つぎに、本実施形態で用いる鋼管100について図面を用いて以下に説明する。
【0033】
図3は、リングを用いた連結機構付き鋼管100の正面図であり、図7および図8は、左側面図および右側面図であり、図9および図10(a)、(b)は、軸方向に沿った断面図である。図11図12および図13は、2本の鋼管100を連結した連結部の拡大図である。
【0034】
図3に示すように、鋼管100は、鋼管本体20と、鋼管本体20の一端に設けられたソケット部10と、他端に設けられた差し込み部30とを備えて構成される。図11のように、ソケット部10と、差し込み部30は、同形状の第2の鋼管100(100-2)と連結するために設けられている。
【0035】
ソケット部10および差し込み部30は、図7および図8に示すように、鋼管本体20と同軸の円筒であり、ソケット部10の外径は、鋼管本体20の外径よりも大きく、ソケット部10の内径は、差し込み部30の外径以上である。
【0036】
このように、鋼管本体20よりも外径の大きなソケット部10を設けたことにより、差し込み部30の外径を鋼管本体20の外径とほぼ同等にした場合であっても、差し込み部30をソケット部10に挿入して連結することができる。
【0037】
ソケット部10の内周面には、図9および図10に示すように、周方向に2以上の第1溝11が設けられている。
【0038】
一方、差し込み部30の外周面には、周方向に2以上の第2溝31が設けられている。第2溝31内にはそれぞれ、C字型のリング32が、差し込み部の外周面33から少なくも一部が突出するように配置されている(図3図9および図10参照)。C字型のリング32は、一部が切り欠かれているため、ばね部材として作用する。リング32の材質は、差し込み部30およびソケット部10の材質よりも硬いものであることが望ましい。
【0039】
したがって、図12に示すように、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、同形状の第2の鋼管100-2のソケット部10を、軸を合わせながらかぶせて軸方向に押した場合、差し込み部30の2本のリング32は、第2の鋼管100-2の内周面によって第2溝31の内側に押し込まれ、第2の鋼管100-2のソケット部10の第1溝11がリング32の位置に到達すると、リング32が差し込み部30の外周面33から突出し、第1溝11に係合する。
【0040】
これにより、図11のように、第1の鋼管100-1の差し込み部30と、第2の鋼管100-2のソケット部10とを軸合わせして押し込む動作により容易に2本の鋼管100-1、100-2を連結することができる。
【0041】
また、ソケット部10の端部16の内周面に図4のように傾斜面12を設け、ソケット部10の端部16における内径を広げておくことにより、連結時の軸合わせに傾斜面12の高低差分の誤差があっても、ソケット部10を差し込み部30に被せることができ、位置合わせの許容度を広げることができる。
【0042】
また、鋼管100は、ソケット部10を設け、ソケット部10の外径は、鋼管本体20の外径よりも大きいため、差し込み部30の外径を鋼管本体20の外径と同等程度にすることが可能である。
【0043】
また、図9に示したように、ソケット部10は、鋼管本体20とは別部材により構成されている。ソケット部10の鋼管本体20側の端部の内周面には、雌ねじを設けている。一方、鋼管本体20のソケット部10側の端部の外周面には、雄ねじを設けている。ソケット部10の雌ねじと鋼管本体20の雄ねじを螺合させることにより、ソケット部10は、鋼管本体20に固定されている。なお、ソケット部10の鋼管本体20への固定方法は、ねじによる固定に限られるものではなく、溶接等の他の固定方法を用いることも可能である。
【0044】
このように、ソケット部10を鋼管本体20とは別部材にすることにより、鋼管本体20よりも外径の大きいソケット部10の製造を容易にすることができる。
【0045】
リング32と第1溝11と第2溝31の形状について、図13を用いてさらに詳細に説明する。
【0046】
リング32は、軸方向の断面形状がくさび形であり、鋼管本体20に近い側の端面34が、差し込み部30の端部36に近い側の端面35よりも厚い。
【0047】
また、端面34は、差し込み部30の中心軸に対して垂直な面である。しかも、リング32の端面34側の端部の上面は、力がリング32に加わっていない状態で、第2溝31から外周面33上に突出するように構成されている。
【0048】
ソケット部10の第1溝11は、ソケット部10の端部16に近い側の底面13が、鋼管本体20に近い側の底面14よりも深くなるように形成されている。
【0049】
また、ソケット部10の第1溝11のソケット部10の端部16に近い側の側面15は、ソケット部10の中心軸に対して垂直な面である。
【0050】
これにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、同形状の第2の鋼管のソケット部10を被せて連結して、第1の鋼管100ー1を第2の鋼管100-2を引っ張る方向に移動させた場合、第2の鋼管100-2のソケット部10の第1溝11の先端側の側面15が、くさび形のリング32の鋼管本体20に近い側の端面34と接触する。これにより、第2の鋼管100-2は、第1溝11の側面15とくさび型のリング32の端面34とが係合する。第1の鋼管100-1が第2の鋼管100ー2を引っ張る方向に移動すると、側面15がリング32の端面34に引っかかることにより、第1の鋼管100ー1の移動に伴い第2の鋼管100-2も移動する。
【0051】
このとき、リング32が2本配置されているため、2つの端面34で力を分散して第2の鋼管100-2に伝達でき、連結部の引張強度を高めている。
【0052】
また、ソケット部10の第1溝11は、ソケット部10の端部16に近い側の底面13が、1段深く掘り下げされている。これにより、垂直な側面15の面積を広く確保することができ、リング32の端面34との接触面積を広くし、係合を確実にしている。
【0053】
さらに、差し込み部30の第2溝31の底面は、差し込み部30の端部36に近い領域37が傾斜している。これにより、第2溝31の差し込み部30の端部36に近い側を鋼管本体20に近い側の底面よりも浅くしている。
【0054】
このように底面が傾斜した領域37を設けたことにより、第1の鋼管100-1が第2の鋼管100-2を引っ張る方向に移動した場合、くさび形のリング32の端面34に、第1溝11の側面15が係合し、くさび側のリング32を傾斜した領域37に押し付ける方向の力を加える。この際、傾斜した領域37に沿ってくさび形のリング32は移動し、上方(外周面33から突出する方向)に持ち上げられるため、くさび形のリング32の端面34が、第2溝31からさらに上方に突出し、第1溝11の側面15との接触面積が大きくなる。よって、第1の鋼管100-1と第2の鋼管100-2との接合を強めることができる。
【0055】
また、図13に示すように、ソケット部10の内周面には、第2の鋼管100-1の差し込み部30を差し込んだ場合、差し込み部30の端部36が突き当たる段差部17が設けられている。ソケット部10の内周面の段差部17と第1溝11との間の領域18a、2つの第1溝11の間の領域18b、および、第1溝11と端部16との間であって第1溝11に隣接する領域18cは、差し込まれた差し込み部30のそれぞれ対応する領域38a,38b,38cとのクリアランス(隙間)が0.5mm以下に設計されている。
【0056】
このように、領域18と領域38とのクリアランスを0.5mm以下にすることにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30に、第2の鋼管100-2のソケット部10をかぶせる際に、軸が完全に一致しておらず、曲がった状態でソケット部10が差し込み部30に被せられた場合でも、領域18と領域38が接触することにより、軸を一致させるガイドとして作用する。これにより、第1の鋼管100-1の差し込み部30と、第2の鋼管100-2のソケット部10の領域18と領域38のクリアランスが0.5mm以下ではない場合と比較して、容易に連結することができる。
【0057】
上述してきたように、本実施形態で用いる連結機構付き鋼管100(100-1,100-2)は、2本の鋼管100の端部を容易に連結でき、かつ、連結強度が大きいため、鋼管の先端近傍に削岩機のビットを装着して削孔を進める工法に好適である。
【0058】
<施工方法>
トンネル周壁部の地山75に鋼管100を打ち込み、地山を補強する施工方法について図1図2および図14等を用いて説明する。図14は、1本目の鋼管100-1が地山75に打ち込まれ、2本目の鋼管100-2がガイドシェル301に搭載されている状態を示している。
【0059】
まず、1本目の鋼管100-1に先端近傍に、削岩用のビットを装着する。鋼管100-1を地山75の打設箇所近傍(ここでは切羽75a)に設置された削岩機200のガイドシェル301のセントラライザ304とサブセントラライザ305に搭載する。後方にドリフタ80(ビットの駆動源)が搭載されている。ドリフタ302のシャンクスリーブ83に、ロッド303-1の後端を接続する。ロッド303-1の先端を鋼管100に挿入し、1本目の鋼管100-1に固定されたビットに接続する。ロッド303-1は、鋼管100-1と同程度の長さのものを用いる。
【0060】
ドリフタ302によりロッド303-1に、打撃力を与えながら、ドリフタ302をガイドシェル301に沿って前方に推し進める。これにより、地山75を削孔すると同時に1本目の鋼管100-1を削孔された孔の内部に挿入していくことができる。
【0061】
1本目の鋼管100-1がほぼ地山75に打ち込まれ、鋼管100-1の後端の差し込み部30が地山75の切羽75aよりも手前に突出している状態(図9)になったならば、ロッド303-1をドリフタ302のシャンクスリーブ83から外し、ガイドシェル301に沿ってドリフタ302を後方に移動させる。
【0062】
ブーム510により、ガイドシェル301を降下させ、内部にロッド303-2が挿入されている2本目の鋼管100-2をガイドシェル301に搭載する。このとき、鋼管100-2のソケット部10が、セントラライザ304よりもガイドシェル301の先端側に位置するように搭載する。特に、図5のように、ソケット部10と鋼管本体20の段差101がセントラライザ304(押圧部材320)に接触するように搭載することが好ましい。
【0063】
ロッド303-2の後端をシャンクスリーブ83に接続する。ドリフタ302を前進させ、ロッド303-2の先端を鋼管100-2の先端から前方に突出させる。
【0064】
ブーム510により、ガイドシェル301を上昇させ、1本目の鋼管100-1の後端近傍まで移動させる。1本目の鋼管100-1のロッド303-1の後端と、2本目の鋼管100ー2のロッド303-2の先端とを軸合わせし、ロッドスリーブを用いて仮止めする。これにより、1本目の鋼管100-1と2本目の鋼管100-2もほぼ軸合わせされた状態となる。
【0065】
支持装置400上のガイドシェル301を軸方向(L方向)に前進させることにより、セントラライザ304により、2本目の鋼管100-2のソケット部10と鋼管本体20との外周の段差101を押して、2本目の鋼管100-2を前進させる。このとき、図4に示すように、セントラライザ304(押圧部材320)の前面のU字型の開口の内周に沿った部分が、段差101に接触し、段差101を押す。
【0066】
これにより、2本目の鋼管100-2のソケット部10の先端の開口が、1本目の鋼管100-1の差し込み部30の後端を被せられ(図2参照)、さらに、支持装置400上のガイドシェル301を軸方向(L方向)に前進させることにより、圧力をかけて、2本目の鋼管100-2のソケット部10を1本目の鋼管100-1の差し込み部30に図11のように被せることができる。
【0067】
これにより、1本目の鋼管100-1の2本のC字型のリング32が、図13のように2本目の鋼管100-2のソケット部10の2本の第1溝11に係合し、2本目の鋼管100-1の先端を、1本目の鋼管100-1の後端に連結することができる。
【0068】
このように、第2の鋼管100-2の段差101を、セントラライザ304で押して、前進させて押し込む動作により、容易に2本の鋼管100-1、100-2を連結することができる。
【0069】
1本目の鋼管100-1と、2本目の鋼管100-2の連結と同時に、ロッド303-1とロッド303-2もロッドスリーブを介して連結されている。よって、再びドリフタ302でロッド303-1,303-2に打撃力を与えながら、ドリフタ302をガイドシェル301に沿って推し進めることにより、地山75を削孔すると同時に2本目の鋼管100-2を削孔された孔の内部に打ち込んでいくことができる。
【0070】
このとき、2本目の鋼管100-2は、1本目の鋼管100-1に引っ張られて削孔された孔の中を進んでいくため、連結部には、2本の鋼管100を引き離す方向の力が加わるが、鋼管100-1、100-2の引張に対する連結強度は、大きいため、外れない。
【0071】
この動作を繰り返すことにより、必要な本数の鋼管100を順次地山に打ち込むことができる。
【0072】
また、上述の工法では、鋼管100-1の先端近傍に削岩機のビットを装着して、ビットが削孔しながら、鋼管100-1を引っ張っていく工法について説明したが、これに限られない。鋼管の後端を削岩機で推しながら削孔を進める工法において、鋼管100-1と鋼管100-2との連結時に、セントラライザ304により、鋼管100-2の段差101を押す本実施形態の施工方法を用いることももちろん可能である。
【0073】
本実施形態では、セントラライザ304により、鋼管100-2の段差101を押す施工方法であるため、以下のような効果を得られる。
(a)作業者が、鋼管100を押す治具を取り付けたり、あるいは取り外すことが不要になり、作業者の手間を省略できる。これにより、鋼管の打設作業の自動化が可能になる。
(b)治具が不要になったことで、治具を落下させる恐れがなく、作業者の安全を確保できる。
【符号の説明】
【0074】
10 ソケット部
12 傾斜面
13 底面
14 底面
15 側面
16 端部
17 段差部
18 領域
18a 領域
18b 領域
18c 領域
20 鋼管本体
30 差し込み部
32 リング
33 外周面
34 端面
35 端面
36 端部
37 領域
38 領域
38a 領域
75 地山
75a 切羽
80 ドリフタ
83 シャンクスリーブ
r1 曲率半径
r2 曲率半径
100 鋼管
100-1 鋼管
100-2 鋼管
101 段差
200 削岩機
300 ガイドシェルセット
301 ガイドシェル
301 セントラライザ
302 ドリフタ
303 ロッド
304 セントラライザ
305 サブセントラライザ
314 セントラライザ本体
320 押圧部材
321 ボルト
400 支持装置
510 ブーム
520 固定装置
530 車輪
540 本体
551 チャージングケージ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14