(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158255
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】放射性廃棄物の処理システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/04 20060101AFI20241031BHJP
G21F 9/06 20060101ALI20241031BHJP
G21F 9/36 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G21F9/04 B
G21F9/06 501
G21F9/36 501G
G21F9/36 501H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073300
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗須 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】打道 直孝
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 毅幸
(72)【発明者】
【氏名】鵜飼 展行
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】前田 一人
(57)【要約】
【課題】放射性廃棄物の処理システムおよび方法において、放射性廃棄物から効率良く水分を除去して充填率の向上を図ると共に作業の安全性の向上を図る。
【解決手段】スラリー状の放射性廃棄物を貯留するスラリータンクの下方に配置されると共に上部の入口部に第1配管接続用カプラが設けられて放射性廃棄物を収容可能な処理容器と、スラリータンクと処理容器との間に設けられると共に配管接続用開口部が設けられる遮蔽部材とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリー状の放射性廃棄物を貯留するスラリータンクの下方に配置されると共に上部の入口部に第1配管接続用カプラが設けられて前記放射性廃棄物を収容可能な処理容器と、
前記スラリータンクと前記処理容器との間に設けられると共に配管接続用開口部が設けられる遮蔽部材と、
を備える放射性廃棄物の処理システム。
【請求項2】
前記スラリータンクにおける下部の出口部に第2配管接続用カプラが設けられ、前記第2配管接続用カプラは、前記配管接続用開口部を通して下降して前記第1配管接続用カプラに接続可能である、
請求項1に記載の放射性廃棄物の処理システム。
【請求項3】
前記第1配管接続用カプラは、前記配管接続用開口部を通して上昇して前記スラリータンクにおける下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラに接続可能である、
請求項1に記載の放射性廃棄物の処理システム。
【請求項4】
前記スラリータンクは、移送容器であり、所定の位置で内部に前記放射性廃棄物が充填された状態で前記処理容器の上方に配置される、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射性廃棄物の処理システム。
【請求項5】
前記移送容器は、内部を視認可能な視認用窓が設けられる、
請求項4に記載の放射性廃棄物の処理システム。
【請求項6】
スラリータンクに貯留されたスラリー状の放射性廃棄物を前記スラリータンクの下方に配置された移送容器に充填するステップと、
前記放射性廃棄物が充填された前記移送容器を移送して処理容器の上方に遮蔽部材を介して配置するステップと、
前記処理容器における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラと前記移送容器における下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラとを接続するステップと、
前記移送容器に充填された前記放射性廃棄物を前記処理容器に充填するステップと、
を有する放射性廃棄物の処理方法。
【請求項7】
放射性廃棄物を貯留するスラリータンクの下方に遮蔽部材を介して処理容器を配置するステップと、
前記処理容器における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラと前記スラリータンクにおける下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラとを接続するステップと、
前記スラリータンクに貯留された前記放射性廃棄物を前記処理容器に充填するステップと、
を有する放射性廃棄物の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射性廃棄物の処理システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
原子力発電プラントにて、原子炉圧力容器の内部に配置された炉心燃料が溶融すると、原子炉格納容器の内部の構造物も溶融して固化し、放射性廃棄物としてのデブリとなる。そのため、デブリなどの放射性廃棄物を原子炉格納容器から回収して処理する必要がある。この場合、回収した放射性廃棄物は、スラリー状態のものも含む。スラリーを移送する技術として、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
原子炉圧力容器の内部にある放射性廃棄物は、水中にあることから、回収された放射性廃棄物は、スラリー状態のものも含む。放射性廃棄物は、容器に収容して移送や保管をすることから、放射性廃棄物からできるだけ水分を除去して充填率を高くする必要がある。また、スラリー状態にある放射性廃棄物は、放射性物質を含んでいることから、放射性廃棄物を安全に移送する必要がある。
【0005】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、放射性廃棄物から効率良く水分を除去して充填率の向上を図ると共に作業の安全性の向上を図る放射性廃棄物の処理システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本開示の放射性廃棄物の処理システムは、スラリー状の放射性廃棄物を貯留するスラリータンクの下方に配置されると共に上部の入口部に第1配管接続用カプラが設けられて前記放射性廃棄物を収容可能な処理容器と、前記スラリータンクと前記処理容器との間に設けられると共に配管接続用開口部が設けられる遮蔽部材と、を備える。
【0007】
また、本開示の放射性廃棄物の処理方法は、スラリータンクに貯留されたスラリー状の放射性廃棄物を前記スラリータンクの下方に配置された移送容器に充填するステップと、前記放射性廃棄物が充填された前記移送容器を移送して処理容器の上方に遮蔽部材を介して配置するステップと、前記処理容器における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラと前記移送容器における下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラとを接続するステップと、前記移送容器に充填された前記放射性廃棄物を前記処理容器に充填するステップと、を有する。
【0008】
また、本開示の放射性廃棄物の処理方法は、放射性廃棄物を貯留するスラリータンクの下方に遮蔽部材を介して処理容器を配置するステップと、前記処理容器における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラと前記スラリータンクにおける下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラとを接続するステップと、前記スラリータンクに貯留された前記放射性廃棄物を前記処理容器に充填するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示の放射性廃棄物の処理システムおよび方法によれば、放射性廃棄物から効率良く水分を除去して充填率の向上を図ることができると共に、作業の安全性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態の放射性廃棄物の処理システムを表す概略図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態の放射性廃棄物の処理方法を表すフローチャートである。
【
図3】
図3は、移送容器への放射性廃棄物の充填作業を表す概略図である。
【
図5】
図5は、配管接続作業の変形例を表す概略図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の放射性廃棄物の処理システムを表す概略図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態の放射性廃棄物の処理方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<放射性廃棄物の処理システム>
図1は、第1実施形態の放射性廃棄物の処理システムを表す概略図である。
【0013】
原子力発電プラントにて、原子炉容器の内部の炉心などが溶融すると、溶融した燃料などの溶融物が発生し、固化した溶融物(デブリ)は、放射性廃棄物として回収の対象となる。本実施形態の放射性廃棄物の処理システムおよび方法は、例えば、原子力発電プラントで発生した放射性廃棄物を回収して収容し、処理容器に充填するものである。なお、放射性廃棄物は、処理容器に収容された後、乾燥されて保管される。但し、放射性廃棄物は、デブリに限定されるものではなく、使用済燃料や廃炉により発生する構造物などであってもよい。
【0014】
図1に示すように、放射性廃棄物の処理システム10は、処理容器11と、移送容器(スラリータンク)12と、遮蔽部材13とを備える。第1実施形態では、移送容器12をスラリー状の放射性廃棄物を貯留するスラリータンクに適用して説明する。
【0015】
処理容器11は、容器本体21と、蓋22とを有する。容器本体21は、円筒形状をなし、上部が開放されて底部が閉塞される。容器本体21は、内部に放射性廃棄物を収容可能な空間部23が設けられる。蓋22は、円板形状をなし、容器本体21の上開口部を開閉可能である。蓋22は、容器本体21の上部に対してボルトにより着脱自在である。但し、処理容器11は、この形状に限定されるものではない。
【0016】
処理容器11は、蓋22の中央部に板厚方向に貫通する入口部24が設けられる。また、処理容器11は、蓋22の上部で入口部24の外側に第1配管接続用カプラ(ソケット)25が装着される。第1配管接続用カプラ25は、図示しないが、内部にバルブが設けられ、ばねの付勢力によりバルブが通路を閉止する方向に付勢支持される。そして、第1配管接続用カプラ25は、別のカプラ(プラグ部)が接続されると、バルブがばねの付勢力に抗して移動して通路を開放する。
【0017】
移送容器12は、スラリー状の放射性廃棄物100を貯留する。スラリー状の放射性廃棄物100は、固形物としてのスラッジ101と、水分102とが混在するものである。移送容器12は、処理容器11の上方に配置される。移送容器12は、上部に上開口部31が設けられ、下部の下開口部に排出配管32が連結される。そして、排出配管32は、中間部に開閉弁33が設けられ、下端部に第2配管接続用カプラ34が装着される。第2配管接続用カプラ34は、図示しないが、内部にバルブが設けられ、ばねの付勢力によりバルブが通路を閉止する方向に付勢支持される。そして、第2配管接続用カプラ34は、別のカプラが接続されると、バルブがばねの付勢力に抗して移動して通路を開放する。また、移送容器12は、内部を視認可能な視認用窓35が設けられる。視認用窓35は、例えば、透過部材により形成される。
【0018】
遮蔽部材13は、処理容器11と移送容器12との間に配置される。遮蔽部材は、処理容器11と移送容器12との間で、水平方向に沿って配置される。遮蔽部材13は、中性子遮蔽機能を有する所定厚さのコンクリ―により形成されるが、炭素鋼やステンレス鋼などにより形成してもよく、ホウ素やホウ素化合物を含有した樹脂などを用いてもよい。遮蔽部材13は、板厚方向に貫通する配管接続用開口部41が設けられる。
【0019】
処理容器11は、床面51上に配置される。遮蔽部材13は、床面51に支持部材(図示略)を介して支持される。また、遮蔽部材13は、上部に支持部材52により移送容器12を支持する支持部53が設けられる。移送容器12は、支持部53に対して上方に移動可能であり、図示しないクレーンなどの搬送装置により移送される。
【0020】
遮蔽部材13に対して、下方の床面51に処理容器11が配置され、上方の支持部53に移送容器12が支持される。この状態で、処理容器11の第1配管接続用カプラ25と、移送容器12の第2配管接続用カプラ34とは、配管接続用開口部41を通して上下に対向する。そして、第1配管接続用カプラ25に対して第2配管接続用カプラ34が下降するか、または、第2配管接続用カプラ34に対して第1配管接続用カプラ25が上昇することで、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ34が接続可能である。
【0021】
<放射性廃棄物の処理方法>
図2は、第1実施形態の放射性廃棄物の処理方法を表すフローチャート、
図3は、移送容器への放射性廃棄物の充填作業を表す概略図、
図4は、配管接続作業を表す概略図、
図5は、配管接続作業の変形例を表す概略図である。
【0022】
第1実施形態の放射性廃棄物の処理方法は、上述した放射性廃棄物の処理システム10を用いた放射性廃棄物の処理方法であって、スラリー状の放射性廃棄物100を移送容器12を介して処理容器11に収容した後、乾燥して保管するものである。また、第1実施形態の放射性廃棄物の処理方法は、図示しないマニピュレータを操作することで、作業者が遠隔操作により各種の処理を行うものである。
【0023】
図2に示すように、ステップS11にて、移送容器12を所定の位置に配置する。すなわち、
図3に示すように、スラリータンク61は、上部支持台56に支持される。スラリータンク61は、スラッジ101と水分102とから構成されるスラリー状の放射性廃棄物を貯留する。スラリータンク61は、下部の出口部に排出配管62が連結され、排出配管62に開閉弁63が設けられる。移送容器12は、下部支持台57に支持されることで、スラリータンク61の下方に配置される。このとき、移送容器12は、開閉弁33と第2配管接続用カプラ34が閉止している。また、スラリータンク61は、内部を視認可能な視認用窓65が設けられる。視認用窓65は、例えば、透過部材により形成される。
【0024】
図2および
図3に示すように、ステップS12にて、移送容器12へスラリー状の放射性廃棄物100を充填する。すなわち、開閉弁63を開放し、スラリータンク61に貯留された放射性廃棄物100を排出配管62から排出する。放射性廃棄物100は、上開口部31から移送容器12に充填される。放射性廃棄物100が移送容器12に所定量だけ充填されると、開閉弁63を閉止する。
【0025】
ステップS13にて、放射性廃棄物100が充填された移送容器12を所定の位置まで移送して配置する。すなわち、
図1に示すように、移送容器12を移送し、遮蔽部材13の上方の支持部53に配置する。そして、ステップS14にて、移送容器12と移送容器12の下方に配置された処理容器11と配管接続する。すなわち、遮蔽部材13に対して、下方に配置される処理容器11の第1配管接続用カプラ25と、上方に配置される移送容器12の第2配管接続用カプラ34とを接続する。
【0026】
この場合、
図4に示すように、排出配管32を軸方向(上下方向)に伸縮可能とし、処理容器11の第1配管接続用カプラ25に対して、移送容器12の第2配管接続用カプラ34を下降する。そして、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ34を接続する。この場合、排出配管32を蛇腹状に構成すればよく、作業者がマニピュレータを用いて第2配管接続用カプラ34を第1配管接続用カプラ25に接続する。
【0027】
また、
図5に示すように、床面51上に昇降装置54を設置し、昇降装置54上に処理容器11を配置する。そして、昇降装置54により処理容器11を上昇させることで、移送容器12の第2配管接続用カプラ34に対して、処理容器11の第1配管接続用カプラ25を上昇する。そして、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ34を接続する。
【0028】
図2および
図4、
図5に示すように、ステップS15にて、処理容器11に対して放射性廃棄物100の充填を開始する。処理容器11と移送容器12は、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ34が接続することで、流路が開放されて内部が連通している。そのため、開閉弁33を開放することで、移送容器12の放射性廃棄物100が排出配管32を通って処理容器11の空間部23に充填される。
【0029】
このとき、移送容器12の放射性廃棄物100は、比重分離によりスラッジ101が沈降し、水分102が浮上している。移送容器12の放射性廃棄物100を処理容器11に充填する場合、できるだけ水分102が少ない状態で、スラッジ101だけを処理容器11に収容する必要がある。作業者は、視認用窓35から移送容器12の内部を監視し、スラッジ101のほとんどが処理容器11に充填されると、開閉弁33を閉止する。
【0030】
移送容器12から処理容器11への放射性廃棄物100(スラッジ101)の移送が完了すると、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ34との接続を解除する。そして、ステップS16にて、放射性廃棄物100の乾燥作業を行う。放射性廃棄物100の乾燥作業は、例えば、処理容器11の内部に乾燥用ガスを供給することで行う。但し、放射性廃棄物100の乾燥作業は、この方法に限定されるものではなく、例えば、処理容器11の外部をヒータにより加熱したり、処理容器11の内部を真空ポンプにより減圧したりすることで行ってもよい。放射性廃棄物100の乾燥作業が終了すると、ステップS17にて、放射性廃棄物100を処理容器11により保管する。
【0031】
[第2実施形態]
<放射性廃棄物の処理システム>
図6は、第2実施形態の放射性廃棄物の処理システムを表す概略図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0032】
図6に示すように、放射性廃棄物の処理システム10Aは、処理容器11と、スラリータンク61と、遮蔽部材13とを備える。処理容器11と遮蔽部材13は、第1実施形態と同様である。第2実施形態では、移送容器12(
図1参照)をなくし、スラリータンク61に貯留された放射性廃棄物100を処理容器11に直接充填する。
【0033】
処理容器11は、容器本体21と、蓋22とを有する。処理容器11は、蓋22の入口部24の外側に第1配管接続用カプラ25が装着される。
【0034】
スラリータンク61は、スラリー状の放射性廃棄物100を貯留する。スラリー状の放射性廃棄物100は、固形物としてのスラッジ101と、水分102とが混在するものである。スラリータンク61は、処理容器11の上方に配置される。スラリータンク61は、下部の下開口部に排出配管62が連結される。そして、排出配管62は、中間部に開閉弁63が設けられ、下端部に第2配管接続用カプラ64が装着される。また、スラリータンク61は、内部を視認可能な視認用窓65が設けられる。視認用窓65は、例えば、透過部材により形成される。
【0035】
遮蔽部材13は、処理容器11とスラリータンク61との間に配置される。遮蔽部材は、処理容器11とスラリータンク61との間で、水平方向に沿って配置される。遮蔽部材13は、板厚方向に貫通する配管接続用開口部41が設けられる。
【0036】
遮蔽部材13に対して、下方の床面51に処理容器11が配置され、上方の支持部53にスラリータンク61が支持される。この状態で、処理容器11の第1配管接続用カプラ25と、スラリータンク61の第2配管接続用カプラ64とは、配管接続用開口部41を通して上下に対向する。そして、第1配管接続用カプラ25に対して第2配管接続用カプラ64が下降するか、または、第2配管接続用カプラ64に対して第1配管接続用カプラ25が上昇することで、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ64が接続可能である。
【0037】
<放射性廃棄物の処理方法>
図7は、第2実施形態の放射性廃棄物の処理方法を表すフローチャートである。
【0038】
第2実施形態の放射性廃棄物の処理方法は、上述した放射性廃棄物の処理システム10Aを用いた放射性廃棄物の処理方法であって、スラリー状の放射性廃棄物100を処理容器11に収容した後、乾燥して保管するものである。また、第2実施形態の放射性廃棄物の処理方法は、図示しないマニピュレータを操作することで、作業者が遠隔操作により各種の処理を行うものである。
【0039】
図6および
図7に示すように、ステップS21にて、処理容器11を所定の位置に配置する。すなわち、スラリータンク61は、遮蔽部材13の上方で、支持部53に支持される。スラリータンク61は、スラッジ101と水分102とから構成されるスラリー状の放射性廃棄物を貯留する。スラリータンク61は、排出配管62に開閉弁63と第2配管接続用カプラ64が設けられる。このとき、スラリータンク61は、開閉弁63と第2配管接続用カプラ64が閉止している。処理容器11は、遮蔽部材13の下方で、床面51上に配置される。スラリータンク61は、内部を視認可能な視認用窓65が設けられる。
【0040】
ステップS22にて、スラリータンク61とスラリータンク61の下方に配置されている処理容器11と配管接続する。すなわち、遮蔽部材13に対して、下方に配置される処理容器11の第1配管接続用カプラ25と、上方に配置されるスラリータンク61の第2配管接続用カプラ64とを接続する。この場合、第1実施形態と同様に、排出配管62を軸方向(上下方向)に伸縮可能とし、スラリータンク61の第2配管接続用カプラ64を下降することで、処理容器11の第1配管接続用カプラ25に接続する。または、昇降装置により処理容器11を上昇させることで、処理容器11の第1配管接続用カプラ25をスラリータンク61の第2配管接続用カプラ64に接続する。
【0041】
ステップS23にて、処理容器11に対して放射性廃棄物100の充填を開始する。処理容器11とスラリータンク61は、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ64を接続することで、流路が開放されて内部が連通している。そのため、開閉弁63を開放することで、一定時間だけ静置されたスラリータンク61の放射性廃棄物100が排出配管62を通って処理容器11の空間部23に充填される。
【0042】
このとき、スラリータンク61の放射性廃棄物100は、比重分離によりスラッジ101が沈降し、水分102が浮上している。スラリータンク61の放射性廃棄物100を処理容器11に充填する場合、できるだけ水分102が少ない状態で、スラッジ101だけを処理容器11に収容する必要がある。作業者は、視認用窓65からスラリータンク61の内部を監視し、スラッジ101のほとんどが処理容器11に充填されると、開閉弁63を閉止する。
【0043】
スラリータンク61から処理容器11への放射性廃棄物100(スラッジ101)の移送が完了すると、第1配管接続用カプラ25と第2配管接続用カプラ64との接続を解除する。そして、ステップS24にて、放射性廃棄物100の乾燥作業を行う。放射性廃棄物100の乾燥作業は、例えば、処理容器11の内部に乾燥用ガスを供給することで行う。但し、放射性廃棄物100の乾燥作業は、この方法に限定されるものではなく、例えば、処理容器11の外部をヒータにより加熱したり、処理容器11の内部を真空ポンプにより減圧したりすることで行ってもよい。放射性廃棄物100の乾燥作業が終了すると、ステップS25にて、放射性廃棄物100を処理容器11により保管する。
【0044】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る放射性廃棄物の処理システムは、スラリー状の放射性廃棄物100を貯留する移送容器12またはスラリータンク61の下方に配置されると共に上部の入口部に第1配管接続用カプラ25が設けられて放射性廃棄物100を収容可能な処理容器11と、移送容器12またはスラリータンク61と処理容器11との間に設けられると共に配管接続用開口部41が設けられる遮蔽部材13とを備える。
【0045】
第1の態様に係る放射性廃棄物の処理システムによれば、スラリータンク61に貯留されたスラリー状の放射性廃棄物100を下方に配置される処理容器11に下降させて充填することから、比重分離により水分が減少した放射性廃棄物100を処理容器11に収容することができ、放射性廃棄物100から効率良く水分を除去して充填率の向上を図ることができる。また、移送容器12またはスラリータンク61と処理容器11との間に遮蔽部材13が設けられることで、放射性廃棄物100の移送作業の安全性の向上を図ることができる。
【0046】
第2の態様に係る放射性廃棄物の処理システムは、第1の態様に係る放射性廃棄物の処理システムであって、さらに、移送容器12またはスラリータンク61における下部の出口部に第2配管接続用カプラ34,64が設けられ、第2配管接続用カプラ34,64は、配管接続用開口部41を通して下降して第1配管接続用カプラ25に接続可能である。これにより、移送容器12またはスラリータンク61と処理容器11とを容易に配管接続することができる。
【0047】
第3の態様に係る放射性廃棄物の処理システムは、第1の態様に係る放射性廃棄物の処理システムであって、さらに、第1配管接続用カプラ25は、配管接続用開口部41を通して上昇して移送容器12またはスラリータンク61における下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラ34,64に接続可能である。これにより、移送容器12またはスラリータンク61と処理容器11とを容易に配管接続することができる。
【0048】
第4の態様に係る放射性廃棄物の処理システムは、第1の態様から第3の態様のいずれか一つに係る放射性廃棄物の処理システムであって、さらに、スラリータンクは、移送容器12であり、所定の位置で内部に放射性廃棄物100が充填された状態で処理容器11の上方に配置される。これにより、スラリータンク61に対して処理容器11の配置位置を適宜設定することができる。
【0049】
第5の態様に係る放射性廃棄物の処理システムは、第4の態様に係る放射性廃棄物の処理システムであって、さらに、移送容器12は、内部を視認可能な視認用窓35が設けられる。これにより、処理容器11に対する放射性廃棄物100の充填状態を視認することができ、放射性廃棄物100における沈降物(主に、スラッジ101)だけを処理容器11に充てんすることができる。
【0050】
第6の態様に係る放射性廃棄物の処理方法は、スラリータンク61に貯留されたスラリー状の放射性廃棄物100をスラリータンク61の下方に配置された移送容器12に充填するステップと、放射性廃棄物100が充填された移送容器12を移送して処理容器11の上方に遮蔽部材13を介して配置するステップと、処理容器11における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラ25と移送容器12における下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラ34とを接続するステップと、移送容器12に充填された放射性廃棄物100を処理容器11に充填するステップとを有する。これにより、比重分離により水分が減少した放射性廃棄物100を処理容器11に効率良く収容して充填率の向上を図ることができると共に、遮蔽部材13により放射性廃棄物100の移送作業の安全性の向上を図ることができる。
【0051】
第7の態様に係る放射性廃棄物の処理方法は、放射性廃棄物100を貯留するスラリータンク61の下方に遮蔽部材13を介して処理容器11を配置するステップと、処理容器11における上部の入口部に設けられた第1配管接続用カプラ25とスラリータンク61における下部の出口部に設けられた第2配管接続用カプラ64とを接続するステップと、スラリータンク61に貯留された放射性廃棄物100を処理容器11に充填するステップとを有する。これにより、比重分離により水分が減少した放射性廃棄物100を処理容器11に効率良く収容して充填率の向上を図ることができると共に、遮蔽部材13により放射性廃棄物100の移送作業の安全性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0052】
10,10A 放射性廃棄物の処理システム
11 処理容器
12 移送容器(スラリータンク)
13 遮蔽部材
21 容器本体
22 蓋
23 空間部
24 入口部
25 第1配管接続用カプラ
31 上開口部
32 排出配管
33 開閉弁
34 第2配管接続用カプラ
35 視認用窓
41 配管接続用開口部
54 昇降装置
61 スラリータンク
62 排出配管
63 開閉弁
64 第2配管接続用カプラ
100 放射性廃棄物
101 スラッジ
102 水分