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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158256
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 27/02 20060101AFI20241031BHJP
   F16K 31/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073303
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100100365
【弁理士】
【氏名又は名称】増子 尚道
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 秀
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 威
【テーマコード(参考)】
3H051
3H062
【Fターム(参考)】
3H051AA01
3H051CC17
3H062AA02
3H062BB33
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062FF38
(57)【要約】
【課題】キャン天面の形状や高さを変えることなくキャンの剛性(耐圧強度)を向上させ、高圧冷媒に対応できるようにする。
【解決手段】弁室13とオリフィス16を内部に有すると共に弁室に連通する第1流路14及び第2流路15を有する弁本体12と、オリフィスに対して進退動し流体の流量を変更する弁体17と、弁室に連通すると共に弁体を駆動する電動機21のロータ27を収容する有底無蓋のキャン19と、キャン内部においてロータの上部に配置されロータを回転可能に支持する軸受部材29を備えた電動弁で、軸受部材は、キャンの天板部19dの内面に接触し且つ当該内面に接合された複数の接合部を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室とオリフィスを内部に有するとともに、前記弁室に連通する第1流路および第2流路に接続された、弁本体と、
前記オリフィスに対して進退動し、前記オリフィスを通過する流体の流量を変更する、弁体と、
前記弁室に連通するとともに、前記弁体を駆動する電動機のロータを収容する、有底無蓋のキャンと、
前記キャンの内部において前記ロータの上部に配置され、前記ロータを回転可能に支持する、軸受部材と、
を備えた電動弁であって、
前記軸受部材は、前記キャンの天板部の内面に接触し且つ当該内面に接合された複数の接合部を有する
ことを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記軸受部材は、
前記ロータを回転可能に支持する支持軸部材が嵌挿される軸受本体部と、
当該軸受本体部から周囲に張り出すフランジ部と、
当該フランジ部の上面から前記キャンの天板部に向けて起立するリブと、
を有し、
前記フランジ部は、前記キャンの内周面に当接し、
前記リブに前記接合部が形成されている
請求項1に記載の電動弁。
【請求項3】
前記接合部は、回転対称位置に形成される
請求項1または2に記載の電動弁。
【請求項4】
前記フランジ部には、軸方向に貫通する開口部が形成されている
請求項2に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁に係り、特に、電動機のロータを収容するキャン(密閉容器)の補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ステッピングモータ等の電動機を使用して弁の開度を調整し冷媒の流量を制御する電動弁が空気調和機や冷蔵・冷凍装置などの冷媒回路を備えた冷凍サイクル装置に従来から使用されている。
【0003】
図7はこのような電動弁の一例を示すものである。同図に示すように当該電動弁41は、弁室13とオリフィス16を内部に有するとともに弁室13に連通する第1流路管14と第2流路管15が接続された弁本体12と、オリフィス16に対して進退動(上下動)して流体の流量を変更する弁体17と、弁本体12の上部に密閉空間を形成するキャン19と、弁体17を駆動する電動機21と、電動機21の回転を減速する減速機構31と、減速機構31により減速された回転を直線運動に変換して弁体17に伝達する伝達機構32とを備えている。電動機21は、ロータ27とステータ22を有する。ロータ27は、キャン19に収容され、支持軸部材28および軸受部材(上側軸受部材)42により回転可能に支持されている。ステータ22は、樹脂モールドカバー26によって覆われ、キャン19の外側(外周)に配置される。
【0004】
また、キャン19はその下端部を、リング状のベースプレート18を介して弁本体上部の段部12cに溶接して固定される。またキャン19の内部空間は、弁室13に連通しており、キャン19内には冷媒が流入する。
【0005】
また、このような電動弁を開示する文献として、下記特許文献がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-6577号公報
【特許文献2】特開2007-211814号公報
【特許文献3】特開2008-101633号公報
【特許文献4】特開2012-197849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、近年、環境負荷を軽減する観点からCO2冷媒の使用が促進されている。
【0008】
ところが、CO2冷媒は、従来のフロン系冷媒と比較して作動圧力が高く、CO2のような高圧冷媒を使用するには、キャンに高い強度(剛性)が要求される。このため従来では、図8に示すように、キャン54の下端部(溶接部)54bの肉厚を大きくするとともに、天面54aを変形し辛い球形することで強度要求に応えていた。なお、下端部54bを肉厚にするのは、弾性変形時に下端部(溶接部)が支点となり応力集中が生じることからこの部分を補強するためである。
【0009】
しかしながら、天面54aを球形にすると、キャン54の高さが高く(軸線A方向の長さが長く)なり、電動弁51が大型化(高背化)する難がある。また、キャン54の天面54aが上方に突出するため、前記図7に示す従来のステータ22を使用することが出来ず、専用の(形状が異なる樹脂モールドカバー53を備えた)ステータ52を用意しなければならなくなることから製造コストが増大する。
【0010】
したがって、本発明の目的は、キャン天面の形状や高さを変えることなくキャンの剛性(耐圧強度)を向上させ、高圧冷媒に対応できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するため、本発明に係る電動弁は、弁室とオリフィスを内部に有するとともに弁室に連通する第1流路および第2流路に接続された弁本体と、オリフィスに対して進退動しオリフィスを通過する流体の流量を変更する弁体と、弁室に連通するとともに弁体を駆動する電動機のロータを収容するキャンと、キャンの内部においてロータの上部に配置されロータを回転可能に支持する軸受部材とを備えた電動弁であって、軸受部材は、キャンの天板部の内面に接触し且つ当該内面に接合された複数の接合部を有する。
【0012】
また上記軸受部材は、典型的には、ロータを回転可能に支持する支持軸部材が嵌挿される軸受本体部と、軸受本体部から周囲に張り出すフランジ部と、フランジ部の上面からキャンの天板部に向けて起立するリブとを有し、フランジ部がキャンの内周面に当接し、リブに上記接合部が形成されている。
【0013】
本発明の電動弁では、キャン内部の上部(天井部)に備えられる軸受部材を利用してキャンを補強する。具体的には、キャンの天板部の内面に接触するように軸受部材を構成し、当該内面に接触した軸受部材の複数箇所をキャンの天板部内面に接合することで、キャンの変形を抑制し、キャンの耐圧強度を向上させる。
【0014】
ここで、キャンの「天板部」とは、無底有蓋の(即ち底面が開放され天面が閉塞された)キャンの天面を塞いでいる部分であるが、より詳しく述べれば、次のとおりである。
【0015】
キャンは、ロータとステータとの間に介在される部分を含み一定の径を有する円筒部と、天面を閉塞するために次第に径が小さくなるようにした縮径部とを有する。なお、縮径部は、内外面が湾曲した曲板部を含み、曲率の異なる複数の曲板部を含むこともある。また縮径部は、曲板部のほかにも、内外面が平面となった(平板状の)平板部を含む場合もある。
【0016】
一方、高圧冷媒によるキャン天面の変形は、円筒部と縮径部との境界部(円筒部の上端に続いて上方且つ内方へ広がる縮径部のリング状の外縁部分)、別の表現をすれば、キャン天面の外縁部となるリング状の隅角部を支点として天面が上方に膨らむように変形する。したがって本発明では、当該境界部(隅角部)より内側で且つ上側の部分を「天板部」と称して、この天板部に軸受部材を接合することによりキャン(天板部)の変形を抑え、キャンの耐圧強度を向上させる。
【0017】
なお、上記「内側」および「内方」とは、キャンの中心軸線に近い側を意味する。また本願では、電動弁(弁本体)およびキャンの軸線方向を「上下方向」とし、当該上下方向の一方(弁本体からキャンに向かう方向)を「上」、当該上下方向の他方(キャンから弁本体に向かう方向)を「下」とする。またこの「上」および「下」の概念に基いて、「上方」や「下方」、「上部」や「下部」、「上側」や「下側」等の上下に関連する用語を本願では使用している。なお、本発明の電動弁は様々な向きで使用することが可能であるから、必ずしも「下」が重力の方向で「上」が重力とは逆の方向であるとは限らない。
【0018】
軸受部材とキャン天板部内面の接合は、溶接によること、特に、温度変化や圧力変動による繰り返しの弾性変形によっても接合を維持できる接合強度が得られることから電気抵抗溶接によることが好ましい。ただし、当該接合は、溶接のみに限定されるものではなく、溶接以外の方法(例えばろう付け)によることも可能である。
【0019】
また、本発明における上記接合部は、回転対称位置に形成されることが好ましい。キャン内部が高圧になったときにキャン天板部(各接合部)に均一に荷重がかかるようにするためである。
【0020】
さらに、上記フランジ部には、軸方向に貫通する開口部が形成されていることが好ましい。軸受部材の上側と下側とで差圧が生じることがないようにするためである。
【0021】
本発明の利点を述べれば、次のとおりである。
【0022】
従来の形状(例えば前記図7に示した形状)を維持しながら、キャンの強度(剛性)を向上させることが出来る。したがって、電動弁の大型化(キャンの長大化)を招くことなく高圧冷媒に対応することが可能となる。また、フロン系冷媒のような従来の冷媒を使用する電動弁とCO2冷媒等の高圧冷媒に対応した電動弁とでステータを共通化することができ、高圧冷媒に対応するためのコスト上昇を抑えることが出来る。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、キャンの天板部の形状や高さを変えることなくキャンの耐圧強度を向上させ、高圧冷媒に対応することが可能となる。
【0024】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面に基いて述べる以下の本発明の実施の形態の説明により明らかにする。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内で種々の変更を行うことができることは当業者に明らかである。また各図中、同一の符号は、同一又は相当部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る電動弁(閉弁状態)を示す縦断面図である。
図2図2は、前記実施形態に係る電動弁(開弁状態)を示す縦断面図である。
図3図3は、前記実施形態に係る電動弁に備える軸受部材を示す平面図である。
図4図4は、前記実施形態に係る電動弁に備える軸受部材を示す縦断面図(図3のB-B断面)である。
図5図5は、前記実施形態に係る電動弁に備える別の軸受部材を示す平面図である。
図6図6は、前記実施形態に係る電動弁に備える別の軸受部材を示す縦断面図(図5のC-C断面)である。
図7図7は、従来の電動弁の一例を示す縦断面図である。
図8図8は、従来の電動弁の別の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
図1から図6に示すように、本発明の一実施形態に係る電動弁11は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムのような冷凍サイクル装置において冷媒の流量を調整するために使用できるもので、弁室13とオリフィス(弁座を上端に備えた弁口)16を内部に有する弁本体12と、オリフィス16に対して進退動(上下動)可能に備えられた弁体17と、弁体17を駆動する電動機21と、電動機21の回転を減速する減速機構31と、減速機構31によって減速された回転を直線運動に変換して弁体17に伝達する伝達機構32と、弁本体12の上部に密閉空間を形成するキャン(密閉容器)19を備えている。
【0027】
弁本体12は、弁室13を形成する本体部12aと、本体部12aの上端部から上方に延びて電動機21(キャン19)の接続を可能とする円筒状の接続部12bとを有する。オリフィス16は本体部12aの底部上面に形成し、オリフィス16を介して弁室13に連通するように本体部12aの底面に第1流路管14を接続する。また、本体部12aの側面には、弁室13と連通するように第2流路管15を接続してある。なお、本実施形態では、第1流路管14を冷媒の流入路として使用し、第2流路管15を冷媒の流出路として使用するが、これとは逆に、第2流路管15を流入路として使用し、第1流路管14を流出路として使用することも可能である。
【0028】
上記接続部12bは本体部12aより外径が小さい。このため、弁本体12の外周面における本体部12aと接続部12bの境界部に段部12cが形成される。この段部12cに、リング状のベースプレート18を介してキャン19の下端を接合(溶接)し、キャン19と弁本体12を一体化する。なお、当該接合部であるキャン19の下端部は、耐圧強度を高めるために肉厚を大きくした肉厚部19eとしてある。
【0029】
キャン19は、導電性を有する金属板(例えばステンレス鋼板)をプレス成形することにより形成した無底有蓋の(底面が開放され天面が閉塞された)円筒状部材で、内径が一定となった円筒部19aと、天面を閉塞するために次第に内径が小さくなるようにした縮径部19bとを有する。縮径部19bは、円筒部19aの上端から上方且つ内方へ広がるリング状の部分である隅角部19cと、隅角部19cの内側に広がってキャン19の天面を完全に閉塞する円盤状の(鍋底天井を形成するようなドーム状の)天板部19d(キャン天井部19d)とを有する。なお、円筒部19aと天板部19dを繋ぐ部分である隅角部19cは、キャン19の高さを低く抑えるために天板部19dに比べ曲率が大きい(曲率半径が小さい)。
【0030】
天板部19dは、キャン天面の中心部に、すなわち、キャン19の中心軸線Aを中心として平面から見て真円状に広がる部分であるが、この範囲(天板部19dの大きさ)をキャン19(円筒部19a)の内径をrとして(図1参照)数値的に表現すれば、本実施形態ではキャン19の中心軸線Aを中心として0.95rの範囲内にある部分を「天板部」とする。そして、この範囲(天板部19d)の内面に上側軸受部材29(後に詳しく述べる)を接合する。
【0031】
弁体17を駆動する電動機21は、本実施形態ではステッピングモータにより構成する。このステッピングモータ21は、キャン19の外側(外周)に設置したステータ22と、キャン19の内側(内周)に回転可能に設置したロータ27とからなる。
【0032】
ステータ22は、ヨーク23と、ボビン24に巻線を巻装したコイル25と、ヨーク23とコイル25を覆う樹脂モールドカバー26とを有する。
【0033】
一方、ロータ27は、中心軸線Aに沿ってキャン19の中心部を上下方向に延びる丸棒状の支持軸部材28に回転可能に支持されている。支持軸部材28は、ロータ27の回転を出力する出力軸33(後述する)の上部に下端部が相対回転自在に嵌め込まれ、上側軸受部材29により上端部が支持されている。なお、この上側軸受部材29は、本発明に言う軸受部材に相当するものである。
【0034】
上側軸受部材29(図3及び図4も参照)は、支持軸部材28の上端部が嵌挿され固定される円筒状の軸受本体部29aと、軸受本体部29aの下端部から水平に外方へ広がる円板状のフランジ部29bと、フランジ部29bの上面から垂直上方に立ち上がり且つ軸受本体部29aの外周面から放射状に四方に延びる4本のリブ29cとを有し、導電性を有する金属材料(例えばステンレス鋼)からなる。また、リブ29cの間のフランジ部29bには軸方向に貫通する開口部29eが設けられ、上側軸受部材29の上下側で差圧が生じないようにされている。
【0035】
ここで、フランジ部29bは、キャン19(円筒部19a)の内径と略同一の外径を有し、フランジ部29bの外周面がキャン19の円筒部19aの上部内周面に当接する。また各リブ29cは、それらの上面外側端部に、上方に突出した半球状の断面形状を有する突起部29dを有し、これらの突起部29dがキャン天板部19dの内面に当接する。そしてこれらの突起部29dをキャン天板部19dの内面に接合してある。なお、この接合は、突起部29dをキャン天板部19dの内面に押し付けながら両母材(キャン天板部19d及び上側軸受部材29の突起部29d)の接触部に電流を流す抵抗溶接より行う。さらに当該抵抗溶接は、溶接電流としてパルス電流を供給するパルス溶接によるものとする。深い溶け込みにより強固な接合強度を得るためである。
【0036】
このように本実施形態では、上側軸受部材29の突起部29dを天板部19dに強固に接合することで、キャン内部が高圧になっても天井部19dが変形し難い構造となり、キャンの強度を向上させることが出来る。また、フランジ部29bの外周面が円筒部19aの上部内周面に当接した状態で、突起部29dと天板部19dを接合することで、支持軸部材28の軸ブレや傾きを抑える機能が向上する。つまり、ロータ27の水平方向の位置ずれやロータ27とキャン内壁の接触を抑制することが出来る。
【0037】
ロータ27の内側には、前記減速機構31として、高い減速率を有し小型化に有利な不思議遊星歯車機構を備える。ロータ27の回転は、当該減速機構31により減速され、ロータ27の下面中心部に備えた出力軸33に伝達されて当該出力軸33から出力される。
【0038】
ロータ27の下部には筒状の下側軸受部材34を配置し、この下側軸受部材34によって出力軸33を回転可能に支持する。下側軸受部材34は、前記弁本体12の接続部12b内に嵌挿され固定されている。
【0039】
下側軸受部材34の上面中心部には嵌挿穴34aを形成し、この嵌挿穴34aに前記出力軸33を回転可能に挿入してある。一方、下側軸受部材34の中心部下部には雌ねじ部34bを形成し、この雌ねじ部34bにねじ駆動部材35の外周面に形成した雄ねじ部35aを螺合させてある。これら下側軸受部材34(雌ねじ部34b)とねじ駆動部材35(雄ねじ部35a)は、送りねじ機構を形成し、減速機構31を介してステッピングモータ21から供給される回転運動を上下方向への直線運動に変換して弁体17に伝達する前記伝達機構32を構成するものである。
【0040】
ここで、ロータ27と出力軸33は上下方向の一定位置で上下動せずに回転運動しており、出力軸33の下端部に設けたスリット状の嵌合溝33aにねじ駆動部材35の上端部に設けた平ドライバ形状の板状部35bを挿入してロータ27(出力軸33)の回転運動をねじ駆動部材35側に伝達する。ねじ駆動部材35に設けた板状部35bが出力軸33の嵌合溝33a内で上下方向に摺動することにより、ロータ27が回転すれば出力軸33は上下方向に移動しないにも拘らず、ねじ駆動部材35は前記ねじ送り機構32によって上下方向に直線運動する。
【0041】
このねじ駆動部材35の直線運動は、ボール36aおよびボール受座36bからなるボール状継手36を介して弁体17に伝達される。弁体17は、オリフィス(弁座)16に差し込まれるように接離する(当接及び離間する)ニードル状(逆円錐状)の先端部を下端に有する円柱状部材で、上端部に外方へ水平に張り出すフランジ部17aを有する。また、弁体17の上面には嵌合穴17bを形成し、この嵌合穴17bに前記ボール受座36bを嵌め込んである。
【0042】
さらに弁室13内には、段付き円筒状の弁体ガイド部材37を備える。この弁体ガイド部材37は、下端部に形成した径(内径及び外径)が小さいガイド部37aと、上端部から外方に水平に広がるリング状のフランジ部37cと、中間部(ガイド部37aとフランジ部37cとの間)に形成した径(内径及び外径)が大きな大径部37bとからなる。ガイド部37aは、弁体17を上下摺動可能に支持する。大径部37bは、その外径が弁本体12の本体部12a(弁室13)の内径に略等しく、入れ子状に弁室13に嵌め込まれて弁室13の内周面に密着するように固定される。フランジ部37cは、弁本体12の接続部12bの内周面下端に形成した段差部12dに載せるように配置され、当該段差部12dと前記下側軸受部材34との間に挟持され、これにより弁体ガイド部材37の上下方向の位置ずれが阻止される。また、弁体ガイド部材37の内周面において大径部37bとガイド部37aとの間には、段部37dが形成されている。
【0043】
また、上記大径部37bの内側、より詳しくは、弁体17の外周面と大径部37bの内周面との間の隙間には圧縮コイルばね38を備える。この圧縮コイルばね38は、弁体17のフランジ部17aと弁体ガイド部材37の前記段部37dとの間に圧縮状態で設置されることにより弁体17を上方(開弁方向)に付勢するもので、開弁操作時に電動機21の駆動力に加えて当該圧縮コイルばね38の付勢力を弁体17に付与することによってより確実に開弁動作を行わせる。
【0044】
なお、本実施形態では、弁本体12(本体部12a及び接続部12b)、キャン19、オリフィス16、弁体17、ボール状継手36、支持軸部材28、上側軸受部材29および下側軸受部材34の中心軸線A、ならびに、ロータ27、出力軸33およびねじ駆動部材35の中心軸線(回転軸)Aは、互いに一致している。
【0045】
また、図5および図6は、上側軸受部材の別の構成例を示すものである。この上側軸受部材39は、前記上側軸受部材29と同様の軸受本体部39aとフランジ部39bを有するが、放射状に四方に延びる前記リブ29cに代え、中心軸線Aを中心として真円状に延びるリング状のリブ39cを備えたものである。リング状のリブ39cは、フランジ部39bの上面から垂直上方に起立し、上端部がキャン天板部19dの内面に当接する。この上側軸受部材39を使用する場合には、リブ39cの複数箇所を前記上側軸受部材29と同様に溶接によりキャン天板部19dの内面に接合すれば良い。なお、図5には4箇所の接合箇所39dを示しているが、接合箇所39dは例えば3箇所、あるいは5箇所以上としても良い。なお、複数の接合箇所39dは、回転対称位置であることが望ましい。
【0046】
本実施形態に係る電動弁11の動作について説明する。
【0047】
図1に示す閉弁状態からロータ27が一方向に回転するようにステータ22(コイル25)に電流が供給されると、ロータ27の回転が減速機構31により減速された後、送りねじ機構32によって直線運動に変換され、ねじ駆動部材35が上方へ引き上げられる。これに伴い、圧縮コイルばね38の付勢力によってボール状継手36を介してねじ駆動部材35の下面に押し付けられている弁体17が上方に引き上げられて弁体17がオリフィス(弁座)16から離れ、第1流路管14を通って流入した冷媒が弁室13を通って第2流路管15から流出する開弁状態となる(図2の矢印F参照)。なお、この開弁状態における冷媒の通過量(冷媒流量)は、ロータ27の回転量(オリフィス16と弁体17との間の距離)によって調整することが出来る。
【0048】
一方、当該開弁状態から上記一方向とは逆方向にロータ27が回転するようにステータ22(コイル25)に電流が供給されると、ロータ27の回転が送りねじ機構32によって直線運動に変換され、ねじ駆動部材35が下方へ移動する。この下降動作に伴い、弁体17は下方へ移動し、弁体17がオリフィス16に当接すると第1流路管14と第2流路管15と間の流路が遮断され、閉弁状態(図1参照)となる。
【符号の説明】
【0049】
A 中心軸線
11,41,51 電動弁
12 弁本体
12a 弁本体の本体部
12b 弁本体の接続部
12c 弁本体外周面の段部
12d 弁本体内周面の段差部
13 弁室
14 第1流路管(流入路)
15 第2流路管(流出路)
16 オリフィス(弁座を備えた弁口)
17 弁体
17a 弁体のフランジ部
17b 嵌合穴
18 ベースプレート
19,54 キャン
19a キャンの円筒部
19b キャンの縮径部
19c キャンの隅角部
19d キャンの天板部
19e,54b キャンの下端部(肉厚部)
19f キャンの天面
21 電動機(ステッピングモータ)
22,52 ステータ
23 ヨーク
24 ボビン
25 コイル
26,53 樹脂モールドカバー
27 ロータ
28 支持軸部材
29,39,42 上側軸受部材
29a,39a 軸受本体部
29b,39b 上側軸受部材のフランジ部
29c,39c リブ
29d 突起部
29e,39e 開口部
31 減速機構(不思議遊星歯車機構)
32 伝達機構(送りねじ機構)
33 出力軸
33a 嵌合溝
34 下側軸受部材
34a 嵌挿穴
34b 雌ねじ部
35 ねじ駆動部材
35a 雄ねじ部
35b 板状部
36 ボール状継手
36a ボール
36b ボール受座
37 弁体ガイド部材
37a ガイド部
37b 大径部
37c 弁体ガイド部材のフランジ部
37d 弁体ガイド部材内周面の段部
38 圧縮コイルばね
39d 接合箇所
54a キャンの天面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8