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特開2024-158259一体型封止シート、発光型電子部品および発光型電子部品の製造方法
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  • 特開-一体型封止シート、発光型電子部品および発光型電子部品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158259
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】一体型封止シート、発光型電子部品および発光型電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/28 20060101AFI20241031BHJP
   H01L 33/54 20100101ALI20241031BHJP
【FI】
H05K3/28 G
H05K3/28 C
H01L33/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073310
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】小泉 昭紘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 一義
(72)【発明者】
【氏名】片桐 航
【テーマコード(参考)】
5E314
5F142
【Fターム(参考)】
5E314AA32
5E314AA41
5E314AA43
5E314BB01
5E314BB11
5E314CC01
5E314CC02
5E314EE01
5E314FF05
5E314FF21
5E314GG24
5E314GG26
5F142AA13
5F142BA32
5F142CB22
5F142CG04
5F142CG16
5F142CG26
5F142CG32
5F142CG42
5F142FA18
5F142FA42
(57)【要約】      (修正有)
【課題】発光素子を配置した基板の縁部分がディスプレイに白いラインとなって見える白化現象を低減する一体型封止シート、発光型電子部品および発光型電子部品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明は、基板20に複数の発光素子21、22、23が配置された素子付き基板における複数の発光素子が配置された面に圧着される一体型封止シート1であって、発光素子への圧着の際に発光素子に接する順から、黒色硬化性樹脂層10、透明硬化性樹脂層11の順に積層されており、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、100℃において1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であることが好ましく、5.0×10Pa以上、5.0×10Pa以下であることがより好ましい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板における前記複数の発光素子が配置された面に圧着される一体型封止シートであって、
前記発光素子への圧着の際に前記発光素子に接する順から、硬化性樹脂層、半透明層の順に積層されており、
前記半透明層の60℃における貯蔵弾性率が7×10Pa以上2×1010Pa以下であることを特徴とする一体型封止シート。
【請求項2】
前記半透明層は、樹脂製の支持体を有しており、
前記支持体の厚みが20μm以上225μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の一体型封止シート。
【請求項3】
前記半透明層は、コーティング層またはハードコート層の内の少なくとも1層を有することを特徴とする請求項1に記載の一体型封止シート。
【請求項4】
前記支持体に黒色の顔料または染料を含むことを特徴とする請求項2に記載の一体型封止シート。
【請求項5】
前記コーティング層またはハードコート層の内の少なくとも1層に黒色の顔料または染料を含むことを特徴とする請求項3に記載の一体型封止シート。
【請求項6】
前記半透明層の全光線透過率が40%以上90%以下であることを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の一体型封止シート。
【請求項7】
前記硬化性樹脂層は、120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が7×10Pa以上2×1010Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の一体型封止シート。
【請求項8】
前記硬化性樹脂層は、前記複数の発光素子に接する順に、黒色硬化性樹脂層、透明硬化性樹脂層を有することを特徴とする請求項1に記載の一体型封止シート。
【請求項9】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、
前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された状態の一体型封止用硬化シートと、
を備え、
前記一体型封止用硬化シートは、前記基板に近い側から、樹脂層、半透明層の順に積層されており、
前記樹脂層は、前記複数の発光素子間に充填されていることを特徴とする発光型電子部品。
【請求項10】
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板における前記複数の発光素子が配置された面に、請求項1または2に記載の一体型封止シートを、前記一体型封止シートの前記硬化性樹脂層が接するように配置し、
プレス圧着によって、前記硬化性樹脂層を前記複数の発光素子間に充填し、
加熱によって、前記硬化性樹脂層を硬化させる、発光型電子部品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一体型封止シート、発光型電子部品および発光型電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ミニLEDまたはマイクロLEDと称する極小の発光ダイオードを用いたディスプレイが注目を浴びている。かかる極小の発光ダイオードをディスプレイに使用する方法としては、大きく分けて2種類の方法が知られている。1つは、基板上に多数の発光ダイオードを配置して液晶のバックライトを構成して、当該バックライトの輝度を局所的に制御する方法である。もう1つは、R(赤)、G(緑)およびB(青)の各色の発光ダイオードを発光させて画素単位でディスプレイの看者の目に各色の光を送る方法である。
【0003】
ミニLEDまたはマイクロLEDのような発光ダイオードは、一般的に、基板上に配置される。複数の発光ダイオード(発光素子という)を基板上に配置する場合、隣り合う発光素子間の光拡散を防止する必要がある。複数の発光素子間を光拡散防止機能を有する樹脂で遮光する方法として、例えば、ドライフィルムを用いる方法が知られている(特許文献1を参照。)。ドライフィルムは、光拡散性の樹脂組成物を保護フィルム上に塗布・乾燥して得られるフィルムである。
【0004】
ドライフィルムを基板上の複数の発光素子の上から圧着すると、発光素子同士の隙間のみならず。発光素子の上面(発光面)にも、光拡散性の樹脂層が形成されてしまう。このような状況の下では、当該樹脂層は、ディスプレイの看者に届く光をも遮蔽してしまう可能性がある。これを防止するため、上記従来技術では、発光素子の発光面にプラズマ処理等のエッチングを施して、発光面上の樹脂層を除去して、その除去面に光透過性の封止材で覆う方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-22562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術は、エッチング処理に多大な時間を要するため、製造コストの増大を招く。また、発光素子の発光面上の樹脂層を完全に除去するのは難しく、その結果、ディスプレイの看者側に届くべき光の拡散を完全に防止することは難しい。加えて、エッチング処理の後に透明性の高い封止材のフィルムを積層するという工程も必要であるため、製造上のプロセスが多くなるという問題もある。
【0007】
本発明者らは、上記問題に鑑みて、本発明に先立ち、フィルム基材の一面に、透光性の高い硬化性樹脂の第1層、光拡散性に優れた硬化性樹脂の第2層を順に形成した一体型封止シートを開発した。当該第2層側が発光素子の発光面側に向くように、当該一体型封止シートを発光素子に圧着し、第2層が発光素子の隙間に配置されて、第1層が発光素子の発光面に配置されるようにして、これらの層を硬化することにより、発光素子間の光拡散を低減でき、かつ発光素子からの発光を遮らない構造を実現できるとの知見を得た。
【0008】
しかし、本発明に先立ち開発した技術にも、さらなる改良を要することがわかった。それは、一体型封止シートを発光素子上から圧着した基板を複数枚用意して、ディスプレイの裏側に配置した後に発光素子を発光すると、基板の縁が白いライン状に光る場合があり、そのような白化現象を低減することである。一体型封止シートを圧着した状態の基板は、回転刃に代表される切断ツールを用いて所定の大きさに切断される。本発明者らは、この切断により、一体型封止シートを構成しているフィルム基材の端面が荒れて、この荒れた端面が白化現象の要因になっていることを突きとめた。
【0009】
本発明は、以上の知見に基づき、発光素子を配置した基板の縁部分がディスプレイに白いラインとなって見える白化現象を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る一体型封止シートは、基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板における前記複数の発光素子が配置された面に圧着される一体型封止シートであって、
前記発光素子への圧着の際に前記発光素子に接する順から、硬化性樹脂層、半透明層の順に積層されており、
前記半透明層の60℃における貯蔵弾性率が7×10Pa以上2×1010Pa以下である。
(2)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記半透明層は、樹脂製の支持体を有しており、前記支持体の厚みが20μm以上225μm以下であっても良い。
(3)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記半透明層は、コーティング層またはハードコート層の内の少なくとも1層を有しても良い。
(4)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記支持体に黒色の顔料または染料を含んでも良い。
(5)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記コーティング層またはハードコート層の内の少なくとも1層に黒色の顔料または染料を含んでも良い。
(6)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記半透明層の全光線透過率が40%以上90%以下であっても良い。
(7)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記硬化性樹脂層は、120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が7×10Pa以上2×1010Pa以下であっても良い。
(8)別の実施形態に係る一体型封止シートにおいて、好ましくは、前記硬化性樹脂層は、前記複数の発光素子に接する順に、黒色硬化性樹脂層、透明硬化性樹脂層を有しても良い。
(9)上記目的を達成するための一実施形態に係る発光型電子部品は、
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板と、
前記素子付き基板の前記複数の発光素子が配置された面に圧着された状態の一体型封止用硬化シートと、
を備え、
前記一体型封止用硬化シートは、前記基板に近い側から、樹脂層、半透明層の順に積層されており、
前記樹脂層は、前記複数の発光素子間に充填されている。
(10)上記目的を達成するための一実施形態に係る発光型電子部品の製造方法は、
基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板における前記複数の発光素子が配置された面に、請求項1または2に記載の一体型封止シートを、前記一体型封止シートの前記硬化性樹脂層が接するように配置し、
プレス圧着によって、前記硬化性樹脂層を前記複数の発光素子間に充填し、
加熱によって、前記硬化性樹脂層を硬化させる方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発光素子を配置した基板の縁部分がディスプレイに白いラインとなって見える白化現象を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、一実施形態に係る一体型封止シートの厚さ方向に沿って切断したときの断面図を示す。
図2図2は、図1の一体型封止シートを、その黒色硬化性樹脂層が素子付き基板の発光素子の天面に接するように配置したときの図1と同視の断面図を示す。
図3図3は、図2の段階から進んで、図1の黒色硬化性樹脂層と透明硬化性樹脂層の一部とを発光素子間に埋め込む状態まで、一体型封止シートを素子付き基板に圧着させた状態の図1と同視の断面図を示す。
図4図4は、図3の段階からさらに進んで、ハードコート層上の保護シートを剥がして、硬化処理を施して製造した発光型電子部品の図1と同視の断面図を示す。
図5図5は、図4の発光型電子部品の端部を切り落とした状況の図1と同視の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている諸要素及びその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本明細書及び特許請求の範囲において、主成分とは、組成物全体の全固形分に対して、50質量%以上を占める成分を意味する。「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0014】
図1は、一実施形態に係る一体型封止シートの厚さ方向に沿って切断したときの断面図を示す。図2は、図1の一体型封止シートを、その黒色硬化性樹脂層が素子付き基板の発光素子の天面に接するように配置したときの図1と同視の断面図を示す。図3は、図2の段階から進んで、図1の黒色硬化性樹脂層と透明硬化性樹脂層の一部とを発光素子間に埋め込む状態まで、一体型封止シートを素子付き基板に圧着させた状態の図1と同視の断面図を示す。図4は、図3の段階からさらに進んで、ハードコート層上の保護シートを剥がして、硬化処理を施して製造した発光型電子部品の図1と同視の断面図を示す。
【0015】
1.一体型封止シート
図1および図2を用いて、本発明の一実施形態に係る一体型封止シート1について説明する。
【0016】
図1に示すように、一体型封止シート1は、基板に複数の発光素子が配置された素子付き基板における複数の発光素子が配置された面に圧着される多層のシートである。一体型封止シート1は、発光素子への圧着の際に発光素子に接する順から、硬化性樹脂層5、半透明層6の順に積層されている。すなわち、一体型封止シート1は、その厚さ方向に、硬化性樹脂層5と半透明層6とを積層した状態のシートである。一体型封止シート1を使用していない状態では、硬化性樹脂層5は未硬化の層である。半透明層6は、硬化層である。半透明層6の「半透明」は、完全なる透明と、完全なる不透明との間の透明度であることを意味し、ヘイズメータ測定器を用いてJIS K 7136に準拠して測定される全光線透過率が30%以上95%以下の性質を意味する。一体型封止シート1は、好ましくは、基本的に、黒色硬化性樹脂層10と、透明硬化性樹脂層11と、支持体12と、ハードコート層13との積層体である。黒色硬化性樹脂層10および透明硬化性樹脂層11は、硬化性樹脂層5を構成する。支持体12およびハードコート層13は、半透明層6を構成する。半透明層6は、支持体12の厚さ方向の少なくとも片面にコーティング層(不図示)をさらに備えても良い。コーティング層は、半透明層6の全光線透過率を適切な数値に調整するための層である。なお、半透明層6は、樹脂製の支持体12を含む限り、コーティング層およびハードコート層13を備えていなくても良い。
【0017】
一体型封止シート1は、さらに、取り扱いの便宜のため、黒色硬化性樹脂層10およびハードコート層13のいずれか一方もしくは両方の外表面に保護フィルムを備えていても良い。図1は、黒色硬化性樹脂層10およびハードコート層13の両方の外表面に保護フィルム14,15を備えている一体型封止シート1の一例を示す。より詳細には、一体型封止シート1は、保護フィルム15、黒色硬化性樹脂層10、透明硬化性樹脂層11、支持体12、ハードコート層13、保護フィルム14を順に積層した構造を有する。
【0018】
図2に示すように、一体型封止シート1は、基板20に複数の発光素子(LEDに代表される発光素子21、発光素子22および発光素子23)が配置された素子付き基板2の複数の発光素子21,22,23の間を埋めるために使用される。素子付き基板2の詳細については後述する。一体型封止シート1は、圧着時において、図2に示すように、黒色硬化性樹脂層10が素子付き基板2に接するようにして使用される。素子付き基板2への圧着が完了するまで、一体型封止シート1の黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11とは未硬化状態である。一体型封止シート1を素子付き基板2に圧着して発光型電子部品を得る具体的方法については後述する。
【0019】
(1)黒色硬化性樹脂層
黒色硬化性樹脂層10は、発光素子21,22,23間の光拡散を防止し、ディスプレイのコントラストを向上させるための層である。また、黒色硬化性樹脂層10は、熱圧着等に代表される圧着の工程において、素子付き基板2に配置された複数の発光素子21,22,23の間を十分に充填し、熱硬化に代表される硬化の工程での不充填空隙の膨張による外観不良や、後工程での外的要因による発光素子21,22,23へのダメージを防止するための層でもある。
【0020】
[Lab値]
黒色硬化性樹脂層10は、JIS Z8722に準拠し、光源D65、視野2°、透過法によって測定される硬化状態におけるLab値が、L:5~60、a:-3~7、b:-20~20であることが好ましく、L:10~50、a:-2~5、b:-15~15であることがより好ましい。硬化状態におけるLab値が好ましい範囲であることにより、発光素子21,22,23間の光拡散をより防止し、ディスプレイのコントラストをより向上させることができる。
【0021】
[全光線透過率]
黒色硬化性樹脂層10の硬化状態における全光線透過率は、透明硬化性樹脂層11の硬化状態における全光線透過率に比べて低い。具体的には、黒色硬化性樹脂層10は、その硬化状態における全光線透過率が0~50%となるように調製される。黒色硬化性樹脂層10は、その硬化状態における全光線透過率が0~40%となるように調製されることが好ましく、0~30%となるように調製されることがより好ましい。黒色硬化性樹脂層10の硬化状態における全光線透過率が50%、40%、30%といった上限値以下であることにより、発光素子21,22,23間の光拡散をより防止することができる。本明細書における全光線透過率は、JIS K 7136に準拠してヘイズメータにより測定することができる。硬化状態における全光線透過率は、主として、カーボンブラックの配合の有無、またはその配合量により変更できる。また、硬化状態における全光線透過率は、黒色硬化性樹脂層10の厚みや樹脂組成物の種類によっても変更できる。
【0022】
[貯蔵弾性率]
黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率は、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率より小さいことが好ましい。黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率は、100℃において1.0×10Pa以下であることが好ましく、1.0×10Pa以上1.0×10Pa以下であることがより好ましく、1.0×10Pa以上5.0×10Pa以下であることがさらにより好ましい。未硬化状態で、黒色硬化性樹脂層10の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板2への圧着時に充分な流動性が得られ、複数の発光素子21,22,23による素子付き基板2の凹凸に追従して、複数の発光素子21,22,23の間を充分に埋めることができる。未硬化状態で、黒色硬化性樹脂層10の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、熱圧着時の圧力偏重を防ぐことができ、均一な外観を保つことができる。また、範囲外への樹脂の流出を防止でき、圧着後の膜厚を確保できる。
【0023】
黒色硬化性樹脂層10の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、好ましくは、7×10Pa以上2×1010Pa以下である。黒色硬化性樹脂層10の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、基板20の縁を切断する際に、硬化後の黒色硬化性樹脂層10にクラックが入ることを防ぐことができる。また、黒色硬化性樹脂層10の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、基板20の縁を切断する際に、硬化後の黒色硬化性樹脂層10が変形して伸縮し、基板20の縁側の一体型封止シート1が波状に歪むことを防ぐことができる。
【0024】
[硬化性樹脂組成物]
黒色硬化性樹脂層10は、硬化性樹脂組成物を含む。硬化性樹脂組成物としては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂およびポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂と、硬化剤とを含む硬化性樹脂組成物を例示できる。上記硬化性樹脂組成物の中でも、低温での硬化性を実現でき、耐熱性と信頼性に優れるエポキシ樹脂組成物が好ましい。本明細書において、エポキシ樹脂組成物とは、エポキシ樹脂を主成分として含む組成物、あるいはエポキシ樹脂と硬化剤とを主成分として含む組成物である。
【0025】
黒色硬化性樹脂層10がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいても良い。その他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等の公知の硬化剤を例示できる。その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0026】
(エポキシ樹脂) 本願において、エポキシ樹脂とは、分子中にエポキシ基をもつ化合物である。本発明に用いるエポキシ樹脂としては、一分子中に2つ以上のエポキシ基を有するものが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性樹脂との反応で架橋構造を形成し、硬化物に高い耐熱性を発現させることができるからである。また、エポキシ基が2つ以上のエポキシ樹脂を用いた場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する硬化剤との架橋度が十分であり、硬化物に十分な耐熱性が得られる。
【0027】
エポキシ樹脂としては、分子中にエポキシ基を2つ有する2官能エポキシ樹脂、分子中にエポキシ基を3つ以上有する多官能エポキシ樹脂、重量平均分子量が10,000以上の高分子量エポキシ樹脂等が挙げられる。また、それらを水素添加されたエポキシ樹脂であってもよい。なお、本願において、高分子量エポキシ樹脂は、分子中のエポキシ基の数に関わらず、2官能エポキシ樹脂や多官能エポキシ基に分類せず、フェノキシ型エポキシ樹脂に分類する。エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ゲル・パーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算の分子量である。
【0028】
エポキシ樹脂の例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、又はそれらを高分子量化したフェノキシ型エポキシ樹脂、それらの水素添加したもの;フタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、p-ヒドロキシ安息香酸グリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル等のグリシジルエステル系エポキシ樹脂;エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、テトラフェニルグリシジルエーテルエタン、トリフェニルグリシジルエーテルエタン、ソルビトールのポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂;エポキシ化ポリブタジエン、エポキシ化大豆油等の線状脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられるが、これらに限定するものではない。また、キシレン構造含有ノボラックエポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、o-クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラックエポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂も用いることができる。
【0029】
また、エポキシ樹脂の例として臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、フッ素含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有エポキシ樹脂、ナフタレン骨格含有エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等を用いることができる。
【0030】
高分子量エポキシ樹脂としては、フェノキシ型エポキシ樹脂、エポキシ変性ポリブタジエン、グリシジルメタクリレートとメチルメタクリレートの共重合体、その他の樹脂をエポキシ変性した変性ポリマー等を用いることができる。これらのエポキシ樹脂は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
上記エポキシ樹脂の中でも、黒色硬化性樹脂層10に用いられるエポキシ樹脂としては、硬化後の架橋密度を高められる観点から、多官能エポキシ樹脂であることが好ましい。 多官能エポキシ樹脂の中でも、特に、ノボラック型のエポキシ樹脂は、適度に柔軟骨格を導入でき、柔軟性や軟化点の調整が可能なエポキシ樹脂のため、硬化物が脆性破壊を起こしづらくなり、エポキシ樹脂組成物の硬化物の長期使用に対する性能の安定性が向上し、架橋密度を高められ、耐熱性も向上するため、より好ましい。
【0032】
ノボラック型のエポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「YX7700」、日本化薬株式会社製の「NC7000L」「XD1000」「EOCN-1020」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ESN485」、DIC株式会社製の「N-690」「N-695」「HP-7200H」等が挙げられる。
【0033】
黒色硬化性樹脂層10における、多官能エポキシ樹脂の配合量は、黒色硬化性樹脂層10の総樹脂固形分100質量%に対して、10~99質量%であることが好ましく、40~95質量%であることがより好ましく、60~90質量%であることがさらに好ましい。上記下限値以上であると、架橋密度を高めて耐薬品性や耐熱性を付与できる。また、上記上限値以下であると、熱圧着時の貯蔵弾性率を調整でき、黒色硬化性樹脂層10の流動性を確保できる。
【0034】
黒色硬化性樹脂層10は、高分子量エポキシ樹脂を含まないか、または高分子量エポキシ樹脂を含む場合には、透明硬化性樹脂層11よりも少ない配合量で含むことが好ましい。これにより、熱圧着時の充分な流動性を確保しやすい。黒色硬化性樹脂層10における、高分子量エポキシ樹脂の配合量は、黒色硬化性樹脂層10の総樹脂固形分100質量%に対して、50質量%未満であることが好ましく、30質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
【0035】
熱圧着時の十分な流動性を確保する観点から、黒色硬化性樹脂層10には、軟化点または融点が、100℃以下のエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。ハンドリング性や硬化物の耐熱性の観点から、軟化点または融点が、40~95℃のエポキシ樹脂が含まれることがより好ましい。上記範囲内の軟化点または融点を有するエポキシ樹脂を含むことで、貯蔵弾性率の制御が可能になる。
【0036】
黒色硬化性樹脂層10におけるエポキシ樹脂全体の配合量は、黒色硬化性樹脂層10の総樹脂固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、20~99質量%であることがより好ましく、35~95質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の適当な流動性を確保できる。また、上記下限値以上であると、硬化後の耐熱性を向上できる。
【0037】
(エラストマー) 黒色硬化性樹脂層10は、エポキシ樹脂等の樹脂に加えて、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーを含むことにより、貯蔵弾性率の制御すなわち、流動性の制御が容易となる。
【0038】
エラストマーとしては、優れた耐熱性が得られることから、一般に「ゴム」と呼ばれる熱硬化性エラストマーが好ましい。熱硬化性エラストマーとしては、ブタジエンとアクリロニトリルのランダム共重合体であるアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。中でもエポキシ樹脂との相溶性が良好で、黒色硬化性樹脂層10の100℃付近での流動性の制御が可能であり、透明硬化性樹脂層11や素子付き基板2との密着性が良好であることから、NBRが好ましい。
【0039】
エラストマーの重量平均分子量は、100,000~1,000,000であることが好ましく、120,000~500,000であることがより好ましく、150,000~300,000であることがさらに好ましい。エラストマーの重量平均分子量が上記範囲であれば、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率を制御でき、熱圧着時の流動性を確保できる。エラストマーの重量平均分子量が上記上限値以下であれば、エポキシ樹脂との相溶性が向上して熱硬化時の流動をより効果的に制御できる。
【0040】
特に黒色硬化性樹脂層10がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含むことが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーあれば、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。また、エポキシ樹脂と反応し結合できるため、耐熱性と熱衝撃への信頼性が向上する。さらに、エポキシ樹脂と反応可能な官能基と樹脂骨格の極性の違いが分散性に良好に作用し、黒色硬化性樹脂層10にカーボンブラックを含有させる場合に良好な分散性が得られる。
【0041】
エポキシ基と反応可能な官能基としては、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、リン酸基等の酸基、及びこれらの酸無水物基、水酸基、アミノ基等が挙げられる。中でも低温での硬化が可能で、可使時間を確保できることから、酸基または酸無水物基が好ましく、カルボキシ基またはカルボン酸無水物基が特に好ましい。
【0042】
すなわち、黒色硬化性樹脂層10は、エポキシ樹脂組成物で構成される場合、酸基または酸無水物基を有する酸変性エラストマーを含有することが好ましく、カルボキシ基を有する酸変性エラストマーを含有することがより好ましい。カルボキシ基を有する変性NBRを含有することが特に好ましい。
【0043】
カルボキシ基を有する変性NBRとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸等を導入したカルボキシル化アクリロニトリルゴムが好ましい。カルボキシル化アクリロニトリルゴムの市販品としては、日本ゼオン株式会社製Nipol(登録商標)NX775、Nipol 1072CGJが挙げられる。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーは2種以上を併用してもよい。
【0044】
黒色硬化性樹脂層10のエラストマーの配合量は、透明硬化性樹脂層11のエラストマーの配合量より多いことが好ましい。これにより、黒色硬化性樹脂層10に多官能エポキシのような低分子量成分が多い配合において、熱圧着時の黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率を透明硬化性樹脂層11より低い適度な範囲に調整でき、かつ、熱硬化時の流動を抑制できる。その結果、黒色硬化性樹脂層10に熱圧着時の十分な流動性と熱硬化時の流れだしの抑制が可能になる。
【0045】
黒色硬化性樹脂層10のエラストマーの配合量は、黒色硬化性樹脂層10の総樹脂固形分100質量%に対して、0.01~90質量%であることが好ましく、1~80質量%であることがより好ましく、5~65質量%であることがさらに好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の適当な流動性を確保できる。また、上記下限値以上であると、カーボンブラックの分散性が良好になる。さらに、成膜性が向上し、エポキシ樹脂組成物を塗工して成膜する際の膜厚の分布を狭くできる。
【0046】
(硬化剤) 黒色硬化性樹脂層10がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいてもよい。その他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤等の公知の硬化剤が挙げられる。その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0047】
(硬化触媒)
黒色硬化性樹脂層10がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する硬化触媒を含んでもよい。硬化触媒としては、イミダゾール系、第三級アミン系、リン化合物系等が挙げられる。それらの中でも、エポキシ樹脂と相溶性がよく、黄変の原因になりづらいイミダゾール系が好ましい。イミダゾール系の硬化触媒の中でも、シアノエチル基を有するものがエポキシ樹脂に溶けやすいことから、特に好ましい。硬化触媒の配合量は、黒色硬化性樹脂層10の総樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらにより好ましい。上記範囲内であると、硬化を十分に進められ、一体型封止シート1の可使時間を確保できる。硬化触媒は2種以上を併用しても良い。
【0048】
(黒色顔料又は黒色染料) 黒色硬化性樹脂層10は、黒色に着色されている。着色のために、黒色顔料又は黒色染料を含有することが好ましく、黒色顔料を含有することがより好ましく、カーボンブラックを含有することがさらに好ましい。黒色に着色されていることにより、素子付き基板2の複数の発光素子21,22,23の間の光拡散防止性が得られる。
【0049】
カーボンブラックの粒子径は10~500nmであるのが好ましく、10~300nmがより好ましく、10~100nmが特に好ましい。なお、粒子径は、平均粒子径のことを言い、動的光散乱法による測定装置により求めることができる。動的光散乱法による測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotracWave II UT151が挙げられる。
【0050】
カーボンブラックとしては、ガスブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック、ランプブラック等の公知のカーボンブラックの1種または2種以上を用いることができる。また、樹脂被覆カーボンブラックを使用してもよい。さらに、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブを使用してもよい。
【0051】
上記カーボンブラックの中でも、ガスブラックは、表面官能基の量が多く、分散性が高く、少量添加で十分な光拡散防止機能を発揮する点で好ましい。また、黒色硬化性樹脂層10にエポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含む場合、ガスブラックの表面官能基とエポキシ樹脂と反応可能な官能基を有する変性エラストマーの官能基との相互作用により、分散性がさらに高まり、良好な光拡散防止性と塗液安定性とを確保できる。
【0052】
カーボンブラックの配合量は、黒色硬化性樹脂層10の固形分全量基準で、0.1~15質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。カーボンブラックの配合量が上記下限値以上であると十分な遮光性が得られる。カーボンブラックの配合量が上記上限値を超えると、黒色硬化性樹脂層10のチキソ性が高まり、熱圧着時の流動性が低下して、素子付き基板2の複数の発光素子21,22,23の間を十分に充填できなくなる。
【0053】
(その他の成分) 黒色硬化性樹脂層10は、難燃性や耐熱性の向上、屈折率の調整のために、無機フィラーを含むことができる。黒色硬化性樹脂層10は、さらに必要に応じて、エポキシ樹脂とエラストマー以外の樹脂、増粘剤、消泡剤及び/またはレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤を用いることができる。
【0054】
(2)透明硬化性樹脂層
透明硬化性樹脂層11は、熱圧着工程において、素子付き基板2に配置された複数の発光素子21,22,23の間に黒色硬化性樹脂層10を十分に押し込むための層である。
【0055】
[全光線透過率] 透明硬化性樹脂層11は、その硬化状態での全光線透過率が30~99%となるように調製されることが好ましい。透明硬化性樹脂層11は、その硬化状態での全光線透過率が35~95%となるように調製されることがより好ましく、40~90%となるように調製されることがさらに好ましい。
【0056】
透明硬化性樹脂層11の硬化状態における全光線透過率が上記下限値以上であることにより、硬化状態における透明硬化性樹脂層11が発光素子21,22,23の上に残っても、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0057】
[貯蔵弾性率] 透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。100℃において、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。また、150℃において、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。
【0058】
透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、100℃から150℃において、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率より大きいことが好ましい。なお、100℃と150℃において、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率が黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率より大きい場合、通常100℃~150℃の全範囲において、透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率が黒色硬化性樹脂層10の未硬化状態における貯蔵弾性率より大きい。
【0059】
透明硬化性樹脂層11の未硬化状態における貯蔵弾性率は、100℃において1.0×10Pa以上、1.0×10Pa以下であることが好ましく、5.0×10Pa以上、5.0×10Pa以下であることがより好ましい。
【0060】
未硬化状態において、透明硬化性樹脂層11の100℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、素子付き基板2への圧着時に黒色硬化性樹脂層10の流動を妨げない充分な流動性が得られ、複数の発光素子21,22,23による素子付き基板2の凹凸に追従して、複数の発光素子21,22,23の間を充分に埋めることができる。
【0061】
未硬化状態において、透明硬化性樹脂層11の100℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、透明硬化性樹脂層11の流動性を抑制し、熱圧着後に発光素子21,22,23に合わせて透明硬化性樹脂層11の表面をより平滑にできる。この結果、外観を良好にでき、熱硬化時にハジキのような外観不良が発生しにくくなる。
【0062】
未硬化状態において、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率は、150℃において1.0×10Pa以上であることが好ましく、1.0×10~5.0×10Paであることが好ましく、1.0×10~5.0×10Paであることがより好ましい。未硬化状態において、透明硬化性樹脂層11の150℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、熱硬化時に硬化収縮によるクラックが発生しにくくなる。未硬化状態において、透明硬化性樹脂層11の150℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、透明硬化性樹脂層11の熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制される。さらに、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。
【0063】
未硬化状態において、100℃における透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率は、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率に対して10~1000倍が好ましく、30~500倍がより好ましい。未硬化状態において、150℃における透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率は、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率の5~10000倍が好ましく、10~1000倍がより好ましい。なお、100℃と150℃において、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率が黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率より大きい場合、通常100℃~150℃の全範囲において、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率は黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率より大きい。
【0064】
透明硬化性樹脂層11の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、好ましくは、7×10Pa以上2×1010Pa以下である。透明硬化性樹脂層11の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、基板20の縁を切断する際に、硬化後の透明硬化性樹脂層11にクラックが入ることを防ぐことができる。また、透明硬化性樹脂層11の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、基板20の縁を切断する際に、硬化後の透明硬化性樹脂層11が変形して伸縮し、基板20の縁側の一体型封止シート1が波状に歪むことを防ぐことができる。
【0065】
[硬化性樹脂組成物] 透明硬化性樹脂層11は、硬化性樹脂組成物で構成されている。硬化性樹脂組成物としては、黒色硬化性樹脂層10と同様に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、及びポリウレタン樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂と硬化剤を含む硬化性樹脂組成物が挙げられる。それらの中でも、低温での硬化性を実現でき、耐熱性、信頼性に優れることから、エポキシ樹脂組成物であることが好ましい。
【0066】
(エポキシ樹脂) 透明硬化性樹脂層11に用いられるエポキシ樹脂の例としては、黒色硬化性樹脂層10と同様の種類が挙げられる。透明硬化性樹脂層11に適度な圧着時粘度を付与できる観点から、透明硬化性樹脂層11は、重量平均分子量が10,000~100,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことが好ましい。他の樹脂成分との相溶性が良好で、乾燥後もドライフィルムに残る可能性のある沸点の高い溶剤を混合しなくても溶解できる観点から、重量平均分子量が10,000~35,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことがより好ましい。
【0067】
透明硬化性樹脂層11に用いられるエポキシ樹脂として重量平均分子量が10,000~100,000の高分子量エポキシ樹脂を含むことにより、加熱時に適度な粘度を有するため、透明硬化性樹脂層11の100℃~150℃の範囲の貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整できる。透明硬化性樹脂層11に用いられる高分子量エポキシ樹脂は、他のエポキシ樹脂との相溶性が良好であることから、フェノキシ型エポキシ樹脂が好ましい。
【0068】
フェノキシ型エポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の中でも比較的に分子量が大きく、加熱時に適度な粘度を有するため、透明硬化性樹脂層11の100℃~150℃の範囲の貯蔵弾性率を好ましい範囲に調整できる。また、フェノキシ型エポキシ樹脂は、ポリエステル等の他の熱可塑性樹脂と異なり、エポキシ樹脂としての硬化が可能なため、架橋密度を高めることができ、硬化物の耐熱性や長期使用に対する性能の信頼性を損なわない。熱圧着時に黒色硬化性樹脂層10を押し込む貯蔵弾性率を確保する観点から、透明硬化性樹脂層11に用いられるフェノキシ型エポキシ樹脂のガラス転移温度は、100℃以上であることが好ましい。
【0069】
フェノキシ型エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「1256」「YX7200」「YX8100」「YX7180」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「YP-50」「YP-50S」「YP-70」、DIC株式会社製の「N-690」、DIC株式会社製の「H-157」「EXA-192」等が挙げられる。
【0070】
透明硬化性樹脂層11における高分子量エポキシ樹脂の配合量は、透明硬化性樹脂層11の総樹脂固形分100質量%に対して、30~80質量%であることが好ましく、40~70質量%であることがより好ましく、45~60質量%であることがさらにより好ましい。透明硬化性樹脂層11におけるフェノキシ型エポキシ樹脂の好ましい配合量も同様である。
【0071】
上記範囲内の配合量にすると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の透明硬化性樹脂層11を押し込む貯蔵弾性率を確保できる。また、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、靭性が向上し、熱圧着時にヒビ様欠点が発生しづらくなる。また、上記上限値以下であると、硬化状態における透明硬化性樹脂層11の架橋密度を高め、耐熱性や耐薬品性を向上できる。
【0072】
さらに、透明硬化性樹脂層11に用いられるエポキシ樹脂として、多官能エポキシ樹脂が含まれることが好ましい。多官能エポキシ樹脂は、架橋密度を高められることで、エポキシ樹脂組成物の硬化物の長期使用に対する性能の安定性がさらに向上し、耐熱性も向上する。また、フェノキシ型エポキシ樹脂よりも100℃~150℃の範囲の粘度が低いため、フェノキシ型エポキシ樹脂と組み合わせることで、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率を調整できる。
【0073】
多官能エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、三菱ケミカル株式会社製の「YX7700」「157S70」「1032S60」、日本化薬株式会社製の「NC7000L」「XD1000」「EOCN-1020」、日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の「ESN485」、DIC株式会社製の「N-690」、「N-695」「HP-7200H」等が挙げられる。
【0074】
透明硬化性樹脂層11における多官能エポキシ樹脂の配合量は、透明硬化性樹脂層11の総樹脂固形分100質量%に対して、90質量%以下であることが好ましく、10~80質量%であることがより好ましく、25~60質量%であることがさらにより好ましい。上記範囲内であれば、透明硬化性樹脂層11の熱圧着時の貯蔵弾性率を制御でき、かつ、硬化状態において耐熱性や耐薬品性を付与できる。
【0075】
熱圧着時の十分な流動性を確保する観点から、透明硬化性樹脂層11には、軟化点または融点が120℃以下のエポキシ樹脂が含まれることが好ましい。ハンドリング性や硬化物の耐熱性の観点から、軟化点または融点が50~105℃のエポキシ樹脂が含まれることがより好ましい。上記範囲内の軟化点または融点を有するエポキシ樹脂を含むことにより、貯蔵弾性率の制御が可能になる。
【0076】
透明硬化性樹脂層11におけるエポキシ樹脂全体の配合量は、透明硬化性樹脂層11の総樹脂固形分100質量%に対して、10~100質量%であることが好ましく、30~99質量%であることがより好ましく、50~95質量%であることがさらにより好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能であり、熱圧着時の黒色硬化性樹脂層10を押し込む貯蔵弾性率を確保できる。また、上記範囲内であると、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、上記下限値以上であると、硬化状態において耐熱性が向上する。
【0077】
(エラストマー) 透明硬化性樹脂層11は、エポキシ樹脂等の樹脂に加えて、エラストマーを含むことが好ましい。エラストマーを含むことにより、貯蔵弾性率の制御が容易となる。エラストマーとしては、黒色硬化性樹脂層10と同様の種類が挙げられる。その中でもエポキシ樹脂との相溶性が良好で、透明硬化性樹脂層10の150℃付近での貯蔵弾性率を高められ、黒色硬化性樹脂層10との密着性が良好であることから、NBRが好ましい。エラストマーの好ましい重量平均分子量も、黒色硬化性樹脂層10と同様である。
【0078】
特に、透明硬化性樹脂層11がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーを含むことが好ましい。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーあれば、エポキシ樹脂の硬化剤としても作用する。また、エポキシ樹脂と反応し結合できるため、耐熱性と熱衝撃への信頼性が向上する。さらに、エポキシ樹脂と反応可能な官能基と樹脂骨格の極性の違いが分散性に良好に作用し、透明硬化性樹脂層11にカーボンブラックを含有させる場合に良好な分散性が得られる。
【0079】
エポキシ基と反応可能な官能基としては、黒色硬化性樹脂層10と同様の種類が挙げられる。その中でも低温での硬化が可能で、可使時間を確保できることから、酸基または酸無水物基が好ましく、カルボキシ基またはカルボン酸無水物基が特に好ましい。
【0080】
透明硬化性樹脂層11は、エポキシ樹脂組成物で構成される場合、カルボキシ基を有する変性NBRを含有することが特に好ましい。カルボキシ基を有する変性NBRとしては、黒色硬化性樹脂層10と同様の種類が挙げられる。エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマーは2種以上を併用しても良い。
【0081】
透明硬化性樹脂層11のエラストマーの配合量は、透明硬化性樹脂層11の総樹脂固形分100質量%に対して、0~50質量%であることが好ましく、1~70質量%であることがより好ましく、5~50質量%であることがさらにより好ましい。上記範囲内であると、貯蔵弾性率の制御が可能である。また、上記上限値以下であると、熱圧着時の黒色硬化性樹脂層10を押し込む貯蔵弾性率を確保できる。また、熱硬化時の流動を抑制でき、ハジキのような硬化後の外観不良が抑制され、さらには、後工程でエッチング処理を行う場合にも支障が生じにくい。また、上記下限値以上であると、カーボンブラックの分散性が良好になる。さらに、成膜性が向上し、エポキシ樹脂組成物を塗工して成膜する際の膜厚の分布を狭くできる。
【0082】
(硬化剤) 透明硬化性樹脂層11がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ基と反応可能な官能基を有する変性エラストマー以外のその他のエポキシ樹脂用の硬化剤を含んでいても良い。その他の硬化剤としては、黒色硬化性樹脂層10と同様の硬化剤が挙げられる。その他の硬化剤は2種以上を併用してもよい。
【0083】
(硬化触媒) 透明硬化性樹脂層11がエポキシ樹脂組成物で構成される場合、エポキシ樹脂の硬化反応を促進する硬化触媒を含んでも良い。硬化触媒としては、黒色硬化性樹脂層10と同様の硬化触媒が挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0084】
硬化触媒の配合量は、透明硬化性樹脂層11の総樹脂固形分100質量部に対して、0.01~5質量部であることが好ましく、0.05~4質量部であることがより好ましく、0.1~3質量部であることがさらにより好ましい。上記範囲内であると、硬化を十分に進められ、一体型封止シート1の可使時間を確保できる。硬化触媒は2種以上を併用してもよい。
【0085】
(その他の成分) 透明硬化性樹脂層11は、発光ムラや色ムラを抑制するために黒色顔料又は黒色染料を含有しても良い。
【0086】
全光線透過率を高くする観点から、透明硬化性樹脂層11がカーボンブラックを含む場合、その配合量は、総樹脂固形分100質量部に対して、5質量部未満であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることがさらにより好ましい。透明硬化性樹脂層11は、さらに必要に応じて、エポキシ樹脂とエラストマー以外の樹脂、増粘剤、消泡剤及び/またはレベリング剤、カップリング剤等の密着性付与剤、難燃剤を含んでも良い。
【0087】
(3)支持体 支持体12は、発光素子21,22,23を外部からの物理的衝撃や湿度、水分等から保護するための層である。また支持体12は、硬化性樹脂層5、コーティング層、ハードコート層13などの層を形成するための支持体となる。
【0088】
[全光線透過率] 支持体12は、全光線透過率が30~99%となるように調製されることが好ましく、全光線透過率が35~95%となるように調製されることがより好ましく、40~95%となるように調製されることがさらにより好ましい。支持体12の全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0089】
[貯蔵弾性率]
支持体12の60℃における貯蔵弾性率は、7×10Pa以上2×1010Pa以下であるのが好ましく、1×10Pa以上1×1010Pa以下であるのがより好ましく、2×10Pa以上6×10Pa以下であるのがさらにより好ましい。支持体12の60℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、発光素子21,22,23を配置した基板20の縁部分がディスプレイに白いラインとなって見える白化現象を低減することができる。支持体12の60℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、発光型電子部品30を切断した際の割れを低減できる。
【0090】
[樹脂] 支持体12は熱可塑性樹脂で構成されていても熱硬化性樹脂で構成されていても良い。支持体12を構成する樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン2,6-ナフタレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート共重合体樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、フェノキシ樹脂、シンジオタクティックポリスチレン樹脂、ポリイミド樹脂などが挙げられ、耐熱性、耐候性、入手のしやすさ、コスト面等から、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレン2,6-ナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリカーボネート共重合体樹脂、及びポリアミド樹脂から選択される少なくとも一種の樹脂を含むことが好ましい。これらの樹脂を含むことにより、圧着時の変形を防ぐことができる。支持体12は、発光ムラや色ムラを抑制するために黒色顔料又は黒色染料を含有しても良い。
【0091】
[膜厚] 支持体12の厚みは、10~250μmであることが好ましく、20~225μmであることがより好ましく、25~150μmであることがさらにより好ましい。支持体12の厚みが好ましい下限値以上であることにより、一体型封止シート1を基板20に熱圧着する際のシワの発生を抑制でき、また、ハンドリング性が向上する。支持体12の厚みが好ましい上限値以下であることにより、視認性が向上し、コストを抑えることができる。
【0092】
(4)ハードコート層[硬度] ハードコート層13は、発光型電子部品を傷つきから保護するための層である。ハードコート層13の表面の鉛筆硬度はH以上であることが好ましく、2H以上であることがより好ましく、3H以上であることがさらにより好ましい。
【0093】
[表面粗さ] ハードコート層13の表面の算術表面粗さ(Ra)は0.1~1μmであることが好ましく、0.2~1μmであることがより好ましく、0.3~1μmであることがさらにより好ましい。ハードコート層13のRaが好ましい下限値以上であることにより、ハードコート層13の表面の反射率を低減することができる。ハードコート層13のRaが好ましい上限値以下であることにより、製造が容易となる。
【0094】
[全光線透過率] ハードコート層13は、全光線透過率が30~99%となるように調製されることが好ましく、50~99%となるように調製されることがより好ましく、60~99%となるように調製されることがさらにより好ましい。ハードコート層13の全光線透過率が下限値以上であることにより、視認者側への光の到達が妨げられない。
【0095】
[樹脂]
ハードコート層13は、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれの樹脂で構成されていても良く、好ましくは熱硬化性樹脂で構成されている。ハードコート層13を構成する熱硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられ、これらの一種以上を含むことができる。ハードコート層13は、黒色の顔料または染料を含んでも良い。
【0096】
[微粒子] ハードコート層13は、微粒子を含むことが好ましい。微粒子としては、無機微粒子および有機微粒子の一方又は両方を使用できる。無機微粒子としては、シリカ微粒子、チタン微粒子が挙げられる。有機微粒子としてはポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA樹脂)、ウレタン樹脂が挙げられる。それらの中でも、シリカ微粒子が好ましい。微粒子を含むことにより、ハードコート層13の表面粗さを調整したり、表面硬度を向上させたりすることができる。
【0097】
[膜厚] ハードコート層13の厚みは、1~20μmであることが好ましく、2~10μmであることがより好ましく、3~8μmであることがさらにより好ましい。ハードコート層13の厚みが好ましい下限値以上であることにより、十分な硬度を確保できる。ハードコート層13の厚みが好ましい上限値以下であることにより、カール等の不具合を生じさせない。
【0098】
(5)半透明層の特性
半透明層6は、支持体12のみ、支持体12+ハードコート層13、支持体12+コーティング層、または支持体12+ハードコート層13+コーティング層である。なお、ハードコート層13およびコーティング層の少なくとも1つの層に、黒色の顔料または染料を含んでも良い。
【0099】
[貯蔵弾性率]
半透明層6の60℃における貯蔵弾性率は、7×10Pa以上2×1010Pa以下であるのが好ましく、1×10Pa以上1×1010Pa以下であるのがより好ましく、2×10Pa以上6×10Pa以下であるのがさらにより好ましい。半透明層6の60℃における貯蔵弾性率が好ましい下限値以上であることにより、発光素子21,22,23を配置した基板20の縁部分がディスプレイに白いラインとなって見える白化現象を低減することができる。半透明層6の60℃における貯蔵弾性率が好ましい上限値以下であることにより、発光型電子部品30を切断した際の割れを低減できる。
【0100】
[全光線透過率]
半透明層6の全光線透過率は、好ましくは30%以上95%以下、より好ましくは40%以上90%以下である。半透明層6の全光線透過率が上記各下限値以上であることにより、視認者側への光の到達がより妨げられない。
【0101】
(6)ハードコート層の光学特性[反射率] ハードコート層13側の光沢計(JIS-Z-8741)により測定した反射率は1~50%であることが好ましく、3~30%であることがより好ましく、5~25%であることがさらにより好ましい。ハードコート層13側の反射率が下限値以上であれば製造が容易である。ハードコート層13の反射率が好ましい上限値以下であることにより、ディスプレイの視認性が向上する。
【0102】
(7)保護フィルム 保護フィルム14,15は、一体型封止シート1を保護する役割を有するものであり、一体型封止シート1を形成する際には、硬化性樹脂組成物の塗液が塗布されるフィルムとしても使用できる。
【0103】
保護フィルム14,15としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の熱可塑性樹脂からなるフィルム、または、表面処理した紙等を用いることができる。
【0104】
これらの中でも、耐熱性、機械的強度、取扱性等の観点から、ポリエステルフィルムを好適に使用することができる。保護フィルム14,15の厚さは、特に制限されるものではなく、概ね10~150μmの範囲で用途に応じて適宜選択される。保護フィルム14,15の樹脂層を設ける面には、離型処理が施されていても良い。
【0105】
2.一体型封止シートの製造方法 一体型封止シート1を得るためには、まず、保護フィルム15に黒色硬化性樹脂層10用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものと、支持体12に予めハードコート層13を形成したもののハードコート層13と反対側の面に、透明硬化性樹脂層11用の硬化性樹脂組成物の塗液を塗布乾燥したものを用意する。
【0106】
その後、これらを、透明硬化性樹脂層11と黒色硬化性樹脂層10が接するようにして重ね、ラミネートすることにより、保護フィルム15に、黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11と支持体12とハードコート層13が順次積層した積層体が得られる。ハードコート層13の外表面に必要に応じて保護フィルム14を積層しても良い。
【0107】
支持体12にハードコート層13を形成したものは、支持体12の表面に、ハードコート層12用のコート剤を塗布し、これを硬化することにより得られる。コート剤の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターが挙げられる。コート剤の硬化方法としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化等が挙げられる。
【0108】
黒色硬化性樹脂層10の硬化性樹脂組成物の塗液および/または透明硬化性樹脂層11の硬化性樹脂組成物の塗液は、塗布を支障なく行える粘度となる量の有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、特に制限はないが、例えば、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤などを挙げることができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテートなどのエステル類;エタノール、プロパノール、2-メトキシプロパノール、n-ブタノール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等の他、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、テトラクロロエチレン、テレビン油等が挙げられる。なお、カーボンブラックを塗液に配合する際は、カーボンブラック粉末を加えてもよいし、カーボンブラックを予め分散させた液(カーボンブラック分散液)を加えてもよい。
【0109】
上記硬化性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、ダイコーター、グラビアコーター、ロールコーター、カーテンフローコーター、スピンコーター、バーコーター、リバースコーター、キスコーター、ファウンテンコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター、ナイフコーター、ブレードコーター、キャストコーター、スクリーンコーター等の各種コーターが挙げられる。乾燥温度は、60~160℃が好ましく、80~130℃が好ましく、90~120℃がさらにより好ましい。
【0110】
ラミネート時の温度は、20~120℃が好ましく、30~100℃がより好ましく、40~80℃がさらにより好ましい。ラミネート時における温度を好ましい下限値以上とすることにより、黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11との間に未硬化でもハンドリング可能な密着力を確保できる。また、ラミネート時における温度を好ましい上限値以下とすることにより、気泡の挟み込みや皴の発生を防止できる。ラミネートは、例えば、ロールラミネーター、プレス機、真空プレス機等を用いて行うことができる。
【0111】
3.素子付き基板 素子付き基板2は、図2に示すように、基板20上に複数の発光素子21,22,23が配置されたものである。図2等では、模式的に、3つの発光素子(発光素子21、発光素子22および発光素子23)が配置された部分を示している。
【0112】
基板20の材質に限定はないが、公知のプリント基板を好適に使用できる。公知のプリント基板としては、ガラスエポキシ基板、フッ素樹脂基板、セラミックス基板等が挙げられる。
【0113】
発光素子21,22,23は、典型的には、発光ダイオードである。本発明は、発光素子21,22,23が極小の場合に特に好適に適用できる。例えば、高さが1000nm~200μm、1辺が0.001~0.5mmの発光ダイオードを使用することができる。ミニLEDやマイクロLEDを得るための素子付き基板20としては、発光素子21,22,23として、R、G、Bの3色の発光ダイオードを、あるいは発光素子21,22,23として、青色発光ダイオードを用いることができる。
【0114】
4.発光型電子部品およびその製造方法 一実施形態に係る発光型電子部品30は、基板20に複数の発光素子21,22,23が配置された素子付き基板2と、素子付き基板2の複数の発光素子21,22,23が配置された面に圧着された状態の一体型封止用硬化シート50と、を備える。一体型封止用硬化シート50は、基板20に近い側から、樹脂層45(黒色樹脂層40,透明樹脂層41)、半透明層6(支持体12,ハードコート層13)の順に積層されている。樹脂層45は、複数の発光素子21,22,23間に充填されている。
【0115】
一実施形態に係る発光型電子部品の製造方法は、基板20に複数の発光素子21,22,23が配置された素子付き基板2における複数の発光素子21,22,23が配置された面に、前述の一体型封止シート1を、一体型封止シート1の硬化性樹脂層(一例では、黒色硬化性樹脂層10)が接するように配置し、プレス圧着によって、硬化性樹脂層を複数の発光素子21,22,23間に充填し、加熱によって、硬化性樹脂層を硬化させる方法である。以下、図2図4を参照しつつ、一実施形態に係る発光型電子部品の製造方法(単に、「一実施形態に係る製造方法」ともいう。)について説明する。
【0116】
一実施形態の製造方法では、まず、図2に示すように、素子付き基板2の発光素子21,22,23が配置された面に、保護フィルム15を剥離して黒色硬化性樹脂層10が露出した一体型封止シート1を、その黒色硬化性樹脂層10が接するように配置する。
【0117】
圧着前において、黒色硬化性樹脂層10の厚さは、発光素子21,22,23の高さに対して10~95%であることが好ましい。上記下限値については、15%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらにより好ましい。また、上記上限値については、85%以下であることがより好ましく、75%以下であることがさらにより好ましい。
【0118】
黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して10%以上であると、発光素子21,22,23間の光拡散を防止する機能が充分となる。また、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率が比較的低く、同層10が流動性に富むものであると、発光素子21,22,23間に樹脂が十分に充填できる。黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して15%未満であると、透明硬化性樹脂層11の流動性が比較的低い場合には、表面にヒビ様欠点が発生することがある。黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して30%以上であると、光拡散防止機能を有する黒色硬化性樹脂層10を発光素子21,22,23間に適当に充填できる。
【0119】
黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して95%以下であれば、熱圧着時の黒色硬化性樹脂層10の外部への漏れ出しを防止でき、発光素子21,22,23からの光が視認者側に到達することを妨げにくい。黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して85%を超えると、プレス後に流動した黒色硬化性樹脂層10の膜厚のブレにより黒色の濃淡が見られることがある。黒色硬化性樹脂層10の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して75%以下であれば、光拡散防止機能を有する黒色硬化性樹脂層10を、発光素子21,22,23間に適当に充填できる。
【0120】
透明硬化性樹脂層11の圧着前の厚さは、発光素子21,22,23の高さに対して10~500%であることが好ましい。上記下限値については、20%以上であることがより好ましく、30%以上であることがさらにより好ましい。また、上記上限値については、200%以下であることがより好ましく、150%以下であることがさらにより好ましい。
【0121】
透明硬化性樹脂層11の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して10%以上であると、発光素子21,22,23上を覆う封止層として機能しやすい。また、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率が比較的高く、同層11の流動性が抑制されているものである場合、熱硬化の際に、透明硬化性樹脂層11が黒色硬化性樹脂層10と共に流動することを抑制でき、表面に外観不良が発生しにくい。透明硬化性樹脂層11の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して20%未満であると、透明硬化性樹脂層11の流動を許容できる範囲が不十分で表面にヒビ様欠点が発生することがある。透明硬化性樹脂層11の厚さが発光素子21,22,23の高さに対して30%以上であると、透明硬化性樹脂層11は、発光素子21,22,23上を覆う封止層として機能しやすい。また、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率が比較的高く、同層11の流動性が抑制されているものである場合、透明硬化性樹脂層11は、黒色硬化性樹脂層10を十分に押し込むことができる。
【0122】
黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11の圧着前の合計厚さは、発光素子21,22,23の高さに対して110~550%であることが好ましい。黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11との合計厚さが発光素子21,22,23の高さに対して上記下限値以上であれば、発光素子21,22,23の間に充分に一体型封止シート1を埋め込むことができる。黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11の合計厚さが発光素子21,22,23の高さに対して上記上限値以下であれば、圧着時に厚みムラを生じにくく、表面に外観不良が発生しにくい。
【0123】
透明硬化性樹脂層11と黒色硬化性樹脂層10の圧着前の合計厚さに対する黒色硬化性樹脂層10の圧着前の厚さの割合は、10~90%であることが好ましく、15~70%であることが好ましい。透明硬化性樹脂層11と黒色硬化性樹脂層10の合計厚さに対する黒色硬化性樹脂層10の圧着前の厚さの割合が上記下限値以上であれば、黒色度を高め、ディスプレイのコントラストを十分向上させることができる。当該厚さの割合が上記上限値以下であれば、圧着時に発光素子21,22,23上に黒色硬化性樹脂層10が残りにくく、輝度を十分向上させることができる。
【0124】
図2の状態で熱圧着して、一体型封止シート1の黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11の一部を、図3に示すように発光素子21,22,23間に埋め込む。このとき、黒色硬化性樹脂層10の貯蔵弾性率が比較的低く、同層11の流動性が確保されているものであると、黒色硬化性樹脂層10は、発光素子21,22,23による凹凸に追従して、発光素子21,22,23間に充填されやすく、また、発光素子21,22,23上に残りにくいので好ましい。
【0125】
熱圧着における温度は、80~120℃が好ましく、90~110℃がより好ましい。熱圧着における温度を80℃以上とすることにより、一体型封止シート1の流動性を確保しやすい。また、熱圧着における温度を120℃以下とすることにより、発光素子21,22,23にダメージを与えにくい。熱圧着における温度を90~110℃にすることにより、より精密に流動性を制御でき、ムラやヒビ様欠点の発生を抑制できる。
【0126】
熱圧着における圧力は、0.05~1.0MPaが好ましく、0.1~0.5MPaがより好ましい。熱圧着における圧力を好ましい下限値以上とすることにより、発光素子21,22,23上に黒色硬化性樹脂層10が残らず、発光素子21,22,23からの光が視認者側に到達することを妨げない。好ましい上限値以下とすることにより、発光素子21,22,23にダメージを与えにくい。熱圧着は、真空状態で成形が可能な真空プレス機を用いて行うことが好ましい。これにより、得られる発光型電子部品30に空気が混入することによる不良を回避しやすい。
【0127】
圧着後、図4に示すように、保護フィルム14を剥離してから熱硬化させ、一体型封止シート1の黒色硬化性樹脂層10を黒色樹脂層40(黒色硬化性樹脂層10の硬化層)とし、透明硬化性樹脂層11を透明樹脂層41(透明硬化性樹脂層11の硬化層)とする。これにより、発光型電子部品30が得られる。
【0128】
硬化温度は、好ましくは100~160℃であり、より好ましくは110~150℃である。硬化温度を100℃以上とすることにより、一体型封止シート1を確実に硬化することができる。硬化温度を110℃以上とすることにより、一体型封止シート1の硬化時間を短縮できる。また、硬化温度を上記上限温度以下とすることにより、発光素子21,22,23にダメージを与えにくい。
【0129】
硬化時間は、硬化温度にもよるが、30~360分間が好ましく、45~180分間がより好ましい。硬化温度において、透明硬化性樹脂層11の貯蔵弾性率が比較的高く、同層11の流動性が抑制されているものであると、硬化後の外観不良が抑制されるので好ましい。
【0130】
以上のように、図2から図4に示す工程を経て、基板20に複数の発光素子21,22,23が配された素子付き基板2の発光素子21,22,23が配置された面に、一体型封止用硬化シート50が圧着された発光型電子部品30が得られる。得られた発光型電子部品30において、黒色硬化性樹脂層10と透明硬化性樹脂層11は硬化している。黒色樹脂層40と透明樹脂層41の一部は、複数の発光素子21,22,23間に充填されている。
【0131】
5.発光型電子部品の基板の切断
図5は、図4の発光型電子部品の端部を切り落とした状況の図1と同視の断面図を示す。
【0132】
発光型電子部品30をディスプレイの裏側に配置される際、複数の発光型電子部品30をそれぞれ所定の大きさに切断する。所定の大きさに切断された複数の発光型電子部品30は、端面を合わせて、ディスプレイの裏側に配置される。本発明に至る前には、発光素子を発光させると、端面に由来する白いラインがディスプレイ側から見えるという白化現象の問題があった。しかし、一体型封止シート1の支持体12を特定の貯蔵弾性率の範囲にある層とすることにより、白いラインがディスプレイ側から見えなくなった。半透明層6の端面6aは、切断によって、従来よりも荒れた面にならず、比較的平滑な面となることがわかった。従来問題となっていた、いわゆる白化現象は、発光素子21,22,23の発光面よりもディスプレイ側にある半透明層6の端面6aにて光が拡散しにくくなったことにより解決したものと考えられる。
【実施例0133】
以下、本発明について実施例を示して具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0134】
<原料> 各実施例および各比較例で使用した原材料は以下の通りである。[エポキシ樹脂] ・EOCN-1020-55(日本化薬社製,o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,固形,軟化点55℃,エポキシ当量194g/eq.) ・YX7200B35(三菱ケミカル社製,フェノキシ型エポキシ樹脂,不揮発成分35wt%,MEK溶液,エポキシ当量8781g/eq.,重量平均分子量35000) ・HP7200H(DIC社製,シクロペンタジエンノボラック型多官能エポキシ樹脂,固形,軟化点82℃,エポキシ当量227g/eq.)[エラストマー] ・NX775(日本ゼオン社製,カルボキシ変性ニトリルゴム,重量平均分子量208000)[硬化剤] ・2PZ-CN(四国化成工業社製,イミダゾール型硬化剤,1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール)[カーボンブラック] ・Special Black#4(ORION ENGINEERED CARBONS社製,ガスブラック)[アクリル樹脂材料] ・8KX-078(大成ファインケミカル社製,不揮発成分40wt%) ・MX-500L(綜研化学社製,架橋アクリル粒子,平均粒径5μm)[光ラジカル発生剤] ・Irgacure TPO H(BASF社製,光ラジカル発生剤) ・Omnirad 127(GM Resins B.V.社製,光ラジカル発生剤)[溶剤] ・MEK(純正化学社製,メチルエチルケトン) ・PGM(純正化学社製,プロピレングリコールモノメチルエーテル)[支持体]PET ・PETフィルム1(信越ポリマー株式会社製,厚さ75μm) ・PETフィルム2(信越ポリマー株式会社製,厚さ188μm) ・PETフィルム3(信越ポリマー株式会社製,厚さ250μm) ・PCフィルム4(信越ポリマー株式会社製,厚さ75μm,PC樹脂100質量部に対してSpecial Black#4を0.075質量部含有) ・PCフィルム5(信越ポリマー株式会社製,厚さ75μm)ガラス ・G-Leaf(日本電気硝子株式会社製,厚さ75μm)[保護フィルム] ・1-E(ニッパ社製,離型フィルム,厚さ50μm) <各層の構成材料> 下記に各層の構成材料について、不揮発成分量に対する質量部比率を記載する。[ハードコート層の材料] ・ハードコート層1 アクリット8KX-078(100質量部) MX-500L(15質量部) Irgacure TPO H(1質量部) Omnirad 127(1質量部) ・ハードコート層2 アクリット8KX-078(100質量部) MX-500L(15質量部) Irgacure TPO H(1質量部) Omnirad 127(1質量部) Special Black#4(1質量部)[コーティング層の材料] ・コーティング層1 EOCN-1020-55(70質量部) NX775(30質量部) Special Black#4(0.5質量部)[透明硬化性樹脂層Aの材料] ・透明硬化性樹脂層A1 EOCN 1020-55(30質量部) YH7200B35(50質量部) NX775(20質量部) 2PZ-CN(1質量部) ・透明硬化性樹脂層A2 EOCN 1020-55(50質量部) YH7200B35(30質量部) NX775(20質量部) 2PZ-CN(1質量部) ・透明硬化性樹脂層A3 HP7200H(85質量部) NX775(15質量部)[黒色硬化性樹脂層Bの材料] ・黒色硬化性樹脂層B1 HP7200H(70質量部) NX775(30質量部) Special Black#4(0.5質量部) 2PZ-CN(1質量部)
【0135】
<評価>[全光線透過率] 全光線透過率は、日本電色工業社製ヘイズメータ測定器(NDH5000)を用いて、JIS K 7136に準拠して測定した。[貯蔵弾性率] 各半透明層の60℃における貯蔵弾性率は、粘弾性測定装置(TA Instruments社製RSA-G2)を用い、測定周波数1Hz、昇温速度5℃/minの条件下でJIS K7244に従って測定した。透明硬化性樹脂層および黒色硬化性樹脂層(総称して硬化性樹脂層という。)の60℃における貯蔵弾性率は、1-E(ニッパ社製,離型フィルム,厚さ50μm)に乾燥後の膜厚が30μmになるように塗布し、120℃×1時間の熱処理を行い、熱処理後の硬化性樹脂層を1-Eから剥がし、上記粘弾性測定装置を用いて上記と同様の条件でJIS K7244に従って測定した。[輝度] 輝度計CA-410[製品名](コニカミノルタ社製)、φ10mmプローブCA-P410H[製品名](コニカミノルタ社製)を用いて、一体型封止シートが熱圧着されていない素子付き基板の輝度Acd/mと、一体型封止シートを熱圧着した後の素子付き基板の輝度Bcd/mをそれぞれ測定し、B/Aで計算した結果から2段階評価した。
〇:B/Aが0.5以上
△:B/Aが0.5未満
[鉛筆硬度] 一体型封止用硬化シート表面の鉛筆硬度は、鉛筆硬度試験機(JIS-K5600-5-4)により求めた。[切断面白化]
5枚の素子付き基板の外周部を切断機K-210[製品名](ホーザン社製)を用いて切断して白化の生じた割合に応じて、以下の3段階のレベルで評価した。「◎」および「〇」を合格とした。
◎:5枚中、白化が生じたのが0/5枚であった。
〇:5枚中、白化が生じたのが1/5枚であった。
×:5枚中、白化が生じたのが2/5枚以上であった。
[切断時割れ]
5枚の素子付き基板の外周部を切断して支持体に割れの生じた割合に応じて、以下の3段階のレベルで評価した。「◎」および「〇」を合格とした。
◎:5枚中、支持体に割れが生じたのが0/5枚であった。
〇:5枚中、支持体に割れが生じたのが1/5枚であった。
×:5枚中、支持体に割れが生じたのが2/5枚以上であった。
【0136】
<実施例1>[フィルムの調製] ハードコート層1の各材料をMEK溶剤と混合し、固形分濃度30wt%のハードコート層用塗液1を調製した。得られたハードコート層用塗液1を上記PETフィルム1の片面に塗布し、100℃で4分間乾燥した後、2000mJ/cmの紫外線を照射することより硬化させてハードコート層1を厚さ4μmで形成した。次に、コーティング層1の各材料をMEK溶剤と混合し、固形分濃度20wt%のコーティング層用塗液1を調製した。得られたコーティング層用塗液1を上記PETフィルム1のハードコート層1と反対側の面に塗布し、100℃で4分間乾燥してコーティング層1を厚さ5μmで形成した。その後、60℃で72時間養生した。こうして、ハードコート層およびコーティング層付きの半透明層1を得た。
【0137】
[透明硬化性樹脂層の形成] 透明硬化性樹脂層A1の各材料をMEK/PGM=80/20の溶剤に混合し、固形分濃度35wt%の透明硬化性樹脂層用塗液1を調製した。次に、透明硬化性樹脂層用塗液1を半透明層1のコーティング層1側にバーコーターを用いて乾燥膜厚が30μmとなるように塗布し、120℃で4分間乾燥し、透明硬化性樹脂層A1が半透明層1に支持された積層シート1を得た。透明硬化性樹脂層A1の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、2.0×10Paであった。以後の各実施例および各比較例における透明硬化性樹脂層A1の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率も同じである。
【0138】
[黒色硬化性樹脂層の形成] 黒色硬化性樹脂層B1の各材料をMEK溶剤に混合し、固形分濃度45質量%の黒色硬化性樹脂層用塗液を調製した。次に、保護フィルムの離型処理面に、バーコーターを用いて乾燥膜厚が50μmとなるように黒色硬化性樹脂層用塗液を塗布し、100℃で4分間乾燥し、黒色硬化性樹脂層B1が保護フィルムに支持された積層シート2を得た。黒色硬化性樹脂層B1の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、9.5×10Paであった。以後の各実施例および各比較例における黒色硬化性樹脂層B1の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率も同じである。
【0139】
[一体型封止シートの調製] 積層シート1と積層シート2を、透明硬化性樹脂層A1と黒色硬化性樹脂層B1とが接するように重ね、60℃のロールラミネーターでラミネートし、保護フィルム、黒色硬化性樹脂層B1、透明硬化性樹脂層A1、コーティング層1、PETフィルム1、ハードコート層1が順次積層された一体型封止シートを作製した。
【0140】
[発光型電子部品の製造] 得られた一体型封止シートを、基板上に発光素子(高さ70μm、縦100μm、横200μm)を実装した素子付き基板上に、保護フィルムを剥離した黒色硬化性樹脂層1が接するように配置した。この状態で、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用い温度80~110℃、圧力0.3MPaにてラミネートした。ついで、熱風循環式乾燥炉にて120℃で1時間の条件で硬化性樹脂層を硬化させ、発光型電子部品を得た。
【0141】
<実施例2> コーティング層1の厚さを7.5μmとした以外を半透明層1と同一とする半透明層2を形成し、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0142】
<実施例3> コーティング層1の厚さを10μmとした以外を半透明層1と同一とする半透明層3を形成し、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0143】
<実施例4> ハードコート層2の各材料をMEK溶剤と混合し、固形分濃度30wt%のハードコート層用塗液2を調製した。得られたハードコート層用塗液2を上記PETフィルム1の片面に塗布し、100℃で4分間乾燥した後、2000mJ/cmの紫外線を照射することにより硬化させ、厚さ4μmのハードコート層2を形成した。こうして、ハードコート層付きの半透明層4を得た。その後、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0144】
<実施例5> 支持体をPETフィルム2とした以外を半透明層1と同一とする半透明層5を形成し、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0145】
<実施例6> 支持体をPETフィルム3とした以外を半透明層1と同一とする半透明層6を形成し、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0146】
<実施例7> ハードコート層1の各材料をMEK溶剤と混合し、固形分濃度30wt%のハードコート層用塗液1を調製した。得られたハードコート層用塗液1を上記PCフィルム4の片面に塗布し、100℃で4分間乾燥した後、2000mJ/cmの紫外線を照射することより硬化させてハードコート層1を厚さ4μmで形成した。こうして、ハードコート層付きの半透明層7を得た。その後、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0147】
<実施例8>[一体型封止シートの調製] 実施例1と同一条件にて半透明層1を得た。次に、透明硬化性樹脂層A2の各材料をMEK/PGM=80/20の溶剤に混合し、固形分濃度35質量%の透明硬化性樹脂層用塗液2を調製した。次に、透明硬化性樹脂層用塗液2を半透明層1のコーティング層1側にバーコーターを用いて乾燥膜厚が80μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、透明硬化性樹脂層A2が半透明層1に支持された一体型封止シートを作製した。透明硬化性樹脂層A2の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、1.0×10Paであった。以後の比較例における透明硬化性樹脂層A2の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率も同じである。
【0148】
[発光型電子部品の製造] 得られた一体型封止シートを、基板上に発光素子(高さ70μm、縦100μm、横200μm)を実装した素子付き基板上に、透明硬化性樹脂層A2が接するように配置した。この状態で、真空ラミネーターMVLP-500(名機製作所製)を用い温度80~110℃、圧力0.3MPaにてラミネートした。ついで、熱風循環式乾燥炉にて120℃で1時間の条件で透明硬化性樹脂層A2を硬化させ、発光型電子部品を得た。
【0149】
<実施例9> 実施例1と同一条件にて半透明層1を得た。次に、透明硬化性樹脂層A3の各材料をMEK/PGM=80/20の溶剤に混合し、35質量%の透明硬化性樹脂層用塗液3を調製した。次に、透明硬化性樹脂層用塗液3を半透明層1のコーティング層1側にバーコーターを用いて乾燥膜厚が80μmとなるように塗布し、120℃で5分間乾燥し、透明硬化性樹脂層A3が半透明層1に支持された一体型封止シートを作製した。その後、実施例8と同様に発光型電子部品を得た。透明硬化性樹脂層A3の120℃×1時間の熱処理後の60℃における貯蔵弾性率は、2.0×10Paであった。
【0150】
<比較例1> 支持体をPCフィルム5とした以外を半透明層1と同一とする半透明層8を形成し、半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0151】
<比較例2> 比較例1と同一条件にて半透明層8を得た。半透明層形成以後の製造条件を実施例8と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0152】
<比較例3> コーティング層1の各材料をMEK溶剤と混合し、固形分濃度20wt%のコーティング層用塗液1を調製した。得られたコーティング層用塗液1を上記ガラスの薄板の片面に塗布し、120℃で5分間乾燥してコーティング層1を厚さ5μmで形成した。こうして、コーティング層付きの半透明層9を得た。半透明層形成以後の製造条件を実施例1と同一条件として一体型封止シートを作製し、発光型電子部品を得た。
【0153】
<半透明層の構成および各種特性> 表1は、各実施例および各比較例にて作製した半透明層の構成を示す。
【0154】
【表1】
【0155】
表2は、各実施例および各比較例にて作製した半透明層の各種特性を示す。表2中の貯蔵弾性率は、60℃の貯蔵弾性率を意味する。
【0156】
【表2】
【0157】
表3は、各実施例および各比較例の構成および評価結果を示す。
【0158】
【表3】
【0159】
表2および表3に示すように、半透明層1~7(60℃の貯蔵弾性率:2.3×10Pa~4.1×10Pa)を備えた実施例1~9では、切断面の白化および切断時の割れはほとんど認められず合格水準であり、かつ輝度も合格水準であった。一方、半透明層8(60℃の貯蔵弾性率:5.0×10Pa)を備えた比較例1,2では、切断面の白化が認められ、合格水準とはならなかった。また、半透明層9(60℃の貯蔵弾性率:7.0×1010Pa)を備えた比較例3では、切断面の白化は認められなかったが、切断時の割れが認められ、合格水準とはならなかった。
【産業上の利用可能性】
【0160】
本発明に係る一体型封止シートは、例えば、発光素子を複数配置した基板の上から封止するシートとして利用可能である。
【符号の説明】
【0161】
1・・・一体型封止シート、2・・・素子付き基板、5・・・硬化性樹脂層、6・・・半透明層、6a・・・端面、10・・・黒色硬化性樹脂層、11・・・透明硬化性樹脂層、12・・・支持体、13・・・ハードコート層、14,15・・・保護フィルム、20・・・基板、21,22,23・・・発光素子、30・・・発光型電子部品、40・・・黒色樹脂層、41・・・透明樹脂層、45・・・樹脂層、50・・・一体型封止用硬化シート。

図1
図2
図3
図4
図5