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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158261
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】リクライニング装置およびシート
(51)【国際特許分類】
   A47C 1/025 20060101AFI20241031BHJP
   B60N 2/235 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
A47C1/025
B60N2/235
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073314
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000109738
【氏名又は名称】デルタ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【弁理士】
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】増村 彰吾
【テーマコード(参考)】
3B087
3B099
【Fターム(参考)】
3B087BD03
3B099AA05
3B099BA04
3B099CA19
(57)【要約】
【課題】移動中のロックギヤの姿勢が安定するとともにロック状態のロックギヤのがたつきを抑えることが可能なリクライニング装置を提供する。
【解決手段】リクライニング機構6は、インターナルギヤ30の内歯32に噛合するロックギヤ60A~60Dと、当該ロックギヤを径方向に移動させるカム50と、当該ロックギヤを径方向に案内するガイド壁部25を有するガイドブラケット20と、カム50とロックギヤ60A、60Cの間に介在し、当該ロックギヤ60A、60Cを押圧するくさび部材80とを備える。カム50は、ロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間でくさび部材80に当接状態を維持してくさび部材80を径方向外側へ押圧する押圧面52a(くさび押圧部)と、ロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間で当該ロックギヤに対して隙間をあけた状態で対向する突起55(ロックギヤ対向部)とを有する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、
前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、
前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた複数のロックギヤであって、前記インターナルギヤの周方向に離間して配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘って前記ガイドブラケットに沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能な複数のロックギヤと、
前記ガイドブラケットに対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムであって、前記解除角度から前記ロック角度への回転によって前記複数のロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ径方向に動かすカムと、
前記解除角度から前記ロック角度へ向けて前記カムを回転付勢するロックスプリングと、
前記複数のロックギヤのうちの少なくとも1枚のロックギヤと前記カムとの間に介在し、当該ロックギヤを押圧するくさび部材と
を備え、
前記ガイドブラケットは、前記複数のロックギヤを前記径方向に案内する互いに対向する複数対のガイド壁部を有し、
前記くさび部材に押圧される前記ロックギヤは、前記径方向に対して傾斜する方向に延びるとともに前記くさび部材に当接するくさび当接面を有し、
前記くさび部材は、前記くさび当接面と前記ガイド壁部との間に挟まれた状態で配置され、
前記カムは、
前記ロックギヤが前記解除位置から前記噛合位置へ移動する間で前記くさび部材に当接状態を維持して当該くさび部材を径方向外側へ押圧するくさび押圧部と、
前記ロックギヤが前記解除位置から前記噛合位置へ移動する間で前記くさび部材に押圧される前記ロックギヤに対して隙間をあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部とを有する、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のリクライニング装置において、
前記ロックギヤ対向部は、前記カムの外周面から前記ロックギヤに向かって径方向外側に突出する突起を有し、
前記ロックギヤは、当該ロックギヤの径方向内側の端部において前記カムが前記解除角度にあるときの前記突起に最も近い位置に角部を有し、
前記角部は、面取りされている、
ことを特徴とするリクライニング装置。
【請求項3】
シートクッションと、
前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、
前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する請求項1または2に記載のリクライニング装置と
を備えている、
ことを特徴とするシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リクライニング装置、および当該リクライニング装置を備えたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両等のシートには、シートバック(背もたれ)がシートクッション(座部)に対して前後方向に傾動可能な構造において、当該シートバックを任意の傾斜角度で固定するリクライニング装置を備えたシートがある。
【0003】
例えば、特許文献1記載のリクライニング装置70は、図15に示されるように、ガイドブラケット72と、内歯76aを有するインターナルギヤ76と、3枚のロックギヤ180(ポール)と、カム90と、3個の押圧部材100とを備える。
【0004】
ガイドブラケット72は、シートクッションのフレームに固定された略円板状の部材であり、径方向に延びる互いに対になった3対のガイド壁73,74を有する。3対のガイド壁73、74は、ガイドブラケット72の周方向に互いに離間するように配置されている。
【0005】
インターナルギヤ76は、シートバックに固定されたリング状の部分を有する部材であり、内周面の全周にわたって内歯76aが形成されている。
【0006】
3枚のロックギヤ180は、それぞれ、インターナルギヤ76の内歯76aに噛合可能な外歯82と、ガイド壁73,74に当接する一対の幅端部81とを有する。3枚のロックギヤ180は、インターナルギヤ76の周方向に離間して配置され、かつ、外歯82と内歯76aとが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘って径方向に延びるガイド壁73,74に沿って径方向に移動可能である。
【0007】
さらに、3枚のロックギヤ180は、それぞれ、外歯82と、当該外歯82の反対側、すなわち、径方向内側においてカム90に対向するカム対向部83とを有する。カム対向部83は、周方向に互いに離間する凸部83aおよびL字状のフック83bを有する。
【0008】
カム90は、ガイドブラケット72に対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能であり、解除角度からロック角度への回転によって3枚のロックギヤ180を解除位置から噛合位置へ径方向に動かす。
【0009】
カム90は、円板状の本体部91と、3枚のロックギヤ180のそれぞれに対向する位置で本体部91から径方向外側に突出する3組のL字状フック92および肩部93とを有する。フック92は、カム90が解除角度の位置のときに、ロックギヤ180のフック83bに係合する。肩部93は、カム90が解除角度からロック角度に(ロック方向Rに)回転する間、常時、ロックギヤ180のフック83bの外周面に当接しながらロックギヤ180を径方向外側へ押圧する。
【0010】
3個の押圧部材100は、それぞれ、ガイド壁74とロックギヤ180の凸部83aとカム90とに挟まれた位置に配置されている。押圧部材100は、カム90が解除角度からロック角度に回転するときにカム90のフック92の外周面に押されてガイド壁74に沿って径方向に移動する。これにより、押圧部材100は、ロックギヤ180の凸部83aへ径方向外側かつ周方向に傾いた向きの押圧力を与えることにより、ロックギヤ180を径方向外側へ押す。
【0011】
したがって、上記のリクライニング装置70では、カム90が解除角度からロック角度に(すなわちロック方向Rに)回転する間、カム90の肩部93がロックギヤ180を径方向外側へ押すととともに当該カム90のフック92の外周面が押圧部材100を径方向へ押すことによって、ロックギヤ180を径方向外側の噛合位置(すなわち外歯82と内歯76aとが噛み合う位置)への移動を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第5434969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、ロックギヤ180をスムーズに摺動させるために、ロックギヤ180の幅方向両端の幅端部81とガイドブラケット72のガイド壁73、74との間にはクリアランスが設けられている。上記の図15に示される従来のリクライニング装置70では、ロックギヤ180を径方向外側の噛合位置へ移動させるときに、カム90が先にロックギヤ180を押圧すると、クリアランスの存在によって押圧部材100が傾くため、移動中のロックギヤ180の姿勢が安定せず、不完全なロック状態(ハーフロック)になる懸念がある。
【0014】
また、ロックギヤ180等の部品のばらつきの原因により、噛合位置では押圧部材100がロックギヤ180を押し込む前にロックギヤ180の外歯82がインターナルギヤ76の内歯76aに噛み合ってしまい、ロック状態においてロックギヤ180のがたつきが発生する可能性がある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、移動中のロックギヤの姿勢が安定するとともにロック状態のロックギヤのがたつきを抑えることが可能なリクライニング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のリクライニング装置は、シートクッションおよびシートバックのうちの一方のフレームに固定されたガイドブラケットと、前記ガイドブラケットと対向する位置で前記シートクッションおよび前記シートバックのうちの他方のフレームに固定され、前記ガイドブラケットに対して相対的に回転可能なインターナルギヤと、前記インターナルギヤの内歯に噛合可能な外歯をそれぞれ備えた複数のロックギヤであって、前記インターナルギヤの周方向に離間して配置され、かつ、前記外歯と前記内歯とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘って前記ガイドブラケットに沿って前記ガイドブラケットの径方向に移動可能な複数のロックギヤと、前記ガイドブラケットに対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムであって、前記解除角度から前記ロック角度への回転によって前記複数のロックギヤを前記解除位置から前記噛合位置へ径方向に動かすカムと、前記解除角度から前記ロック角度へ向けて前記カムを回転付勢するロックスプリングと、 前記複数のロックギヤのうちの少なくとも1枚のロックギヤと前記カムとの間に介在し、当該ロックギヤを押圧するくさび部材とを備え、前記ガイドブラケットは、前記複数のロックギヤを前記径方向に案内する互いに対向する複数対のガイド壁部を有し、前記くさび部材に押圧される前記ロックギヤは、前記径方向に対して傾斜する方向に延びるとともに前記くさび部材に当接するくさび当接面を有し、前記くさび部材は、前記くさび当接面と前記ガイド壁部との間に挟まれた状態で配置され、前記カムは、前記ロックギヤが前記解除位置から前記噛合位置へ移動する間で前記くさび部材に当接状態を維持して当該くさび部材を径方向外側へ押圧するくさび押圧部と、前記ロックギヤが前記解除位置から前記噛合位置へ移動する間で前記くさび部材に押圧される前記ロックギヤに対して隙間をあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部とを有することを特徴とする。
【0017】
かかる構成では、カムは、ロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する間でくさび部材に当接状態を維持して当該くさび部材を径方向外側へ押圧するくさび押圧部と、ロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する間でくさび部材に押圧されるロックギヤに対して隙間をあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部とを有する。これにより、ロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する間、くさび部材がカムのくさび押圧部によって押圧された状態が維持される。
【0018】
くさび部材がくさび押圧部によって径方向外側へ押圧されることにより、ロックギヤは、径方向に対して傾斜したくさび当接面がくさび部材から受ける押圧力の周方向の分力によって、一対のガイド壁部のうちくさび部材と反対側のガイド壁部に常に押し付けられるため、噛合位置へ移動中のロックギヤの姿勢が安定する。
【0019】
また、ロックギヤが噛合位置へ移動完了後も、カムはロックスプリングによって解除角度からロック角度へ向けて回転付勢されているので、カムのくさび押圧部は、ロックギヤが噛合位置へ移動完了後もくさび部材を径方向外側へ押圧した状態を維持するとともにロックギヤ対向部はロックギヤとの間で隙間を維持する。すなわち、ロックギヤは噛合位置においてもカムのくさび押圧部のみによって押圧されているため、ロックギヤは部品ばらつきの影響を受けにくく、ロック状態のロックギヤのがたつきを抑えることが可能である。
【0020】
かかる構成では、ロックギヤが解除位置から噛合位置への移動中にくさび部材がロックギヤをガイド壁部へ向けて十分な押圧力で押圧し続けることが可能になり、移動中のロックギヤの姿勢がより安定する。
【0021】
上記のリクライニング装置において、前記ロックギヤ対向部は、前記カムの外周面から前記ロックギヤに向かって径方向外側に突出する突起を有し、前記ロックギヤは、当該ロックギヤの径方向内側の端部において前記カムが前記解除角度にあるときの前記突起に最も近い位置に角部を有し、前記角部は、面取りされているのが好ましい。
【0022】
かかる構成では、ロックギヤ対向部がロックギヤに向けて径方向外側に突出する突起を有する構成においても、ロックギヤの径方向内側の角部が面取りされているので、カムが解除角度からロック角度へ回転する間に角部が突起に接触することを回避することが可能である。
【0023】
本発明のシートは、シートクッションと、前記シートクッションの後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバックと、前記シートバックを任意の傾斜角度で固定する上記のリクライニング装置とを備えていることを特徴とする。
【0024】
かかる構成のシートでは、上記のリクライニング装置を備えているので、移動中のロックギヤの姿勢が安定するとともにロック状態のロックギヤのがたつきを抑えることが可能になる。その結果、シートバックのがたつきを抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のリクライニング装置およびシートによれば、移動中のロックギヤの姿勢が安定するとともにロック状態のロックギヤのがたつきを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るリクライニング装置を備えたシートの全体構成を示す斜視図である。
図2図1のコネクトロッドおよびリクライニング機構を分離した状態の斜視図である。
図3図2のリクライニング機構の分解斜視図である。
図4図3のカムの斜視図である。
図5図3のガイドブラケットを外面側から見た図である。
図6図3のインターナルギヤ、1対のメインロックギヤ、1対のサブロックギヤ、1対のくさび部材、カム、ガイドブラケット、および取付けリングを組み合わせたリクライニング機構の完成状態を示す図であって、(a)は取付けリングの外側から軸方向に見た図、(b)は(a)のA―A線断面図である。
図7図3のカム、1対のメインロックギヤ、1対のサブロックギヤ、1対のくさび部材、およびインターナルギヤの配置を示す図である。
図8図7の上側のメインロックギヤが噛合位置にある状態であって、メインロックギヤはカムと離間しているが、くさび部材はカムと接触している状態を示す拡大図である。
図9図7の上側のメインロックギヤが解除位置にある状態のメインロックギヤ、くさび部材、およびカムの位置を示す図である。
図10図7の上側のメインロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する途中の状態のメインロックギヤ、くさび部材、およびカムの位置を示す図である。
図11図7の上側のメインロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する途中の状態のメインロックギヤ、くさび部材、およびカムの位置を示す図である。
図12図7の上側のメインロックギヤが解除位置から噛合位置へ移動する途中の状態のメインロックギヤ、くさび部材、およびカムの位置を示す図である。
図13図7の上側のメインロックギヤが噛合位置にある状態のメインロックギヤ、くさび部材、およびカムの位置を示す図である。
図14図7の1対のメインロックギヤおよび1対のサブロックギヤが噛合位置にある状態を示す図である。
図15】従来のリクライニング装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の一形態について詳述する。
【0028】
図1に示されるように、本実施形態のシート1は、車両等のシートであって、着座者の臀部を支持するシートクッション2と、着座者の背中を支持するためにシートクッション2の後部に配置され、シートクッション2に対してシート1の前後方向Xに傾動可能なシートバック3と、シートクッション2の下部に取り付けられたスライド装置4と、リクライニング装置5とを備えている。
【0029】
スライド装置4は、シートクッション2をシート1の前後方向Xにスライド可能に案内するとともに当該シートクッション2を任意の位置で固定可能な構成を有している。なお、本発明のシートではスライド装置4は必須ではなく無くてもよい。
【0030】
リクライニング装置5は、主要な構成として、シートバック3を任意の傾斜角度で固定することが可能なリクライニング機構6を有する。
【0031】
具体的には、図1~2に示されるように、本実施形態のリクライニング装置5は、一対のリクライニング機構6と、一対のリクライニング機構6に連結されるコネクトロッド7と、コネクトロッド7の両側の端部の近傍に嵌合される一対の樹脂ブッシュ8とを備えている。なお、樹脂ブッシュ8は無くてもよい。
【0032】
一対のリクライニング機構6は、シート1の幅方向Yの両側の位置に配置されている。各リクライニング機構6は、シートバック3を任意の傾斜角度で固定するためのクラッチの役目をする機構である。
【0033】
リクライニング機構6は、図3および図6(a),(b)に示されるように、円板状のガイドブラケット20と、ガイドブラケット20に対向して配置され、内歯32を有するインターナルギヤ30と、内歯32に噛合可能な外歯63を有する4枚のロックギヤ60A~60D、すなわち、1対のメインロックギヤ60A、60Cおよび1対のサブロックギヤ60B、60Dと、これら4枚のロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に動かすカム50と、カム50を回転付勢する少なくとも1つ(本実施形態では2個)のロックスプリング40と、4枚のロックギヤ60A~60Dのうちの少なくとも1つのロックギヤ、本実施形態では、1対のメインロックギヤ60A、60Cのそれぞれとカム50との間に介在し、1対のメインロックギヤ60A、60Cのそれぞれを押圧する1対のくさび部材80と、インターナルギヤ30をガイドブラケット20に取り付ける取付けリング70とを備える。4枚のロックギヤ60A~60D、カム50、1対のくさび部材80、および2個のロックスプリング40は、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30との間に配置されている。
【0034】
図7に示すように、4枚のロックギヤ60A~60D、すなわち、1対のメインロックギヤ60A、60Cおよび1対のサブロックギヤ60B、60Dは、インターナルギヤ30の周方向に離間して配置され、かつ、これらの外歯63とインターナルギヤ30の内歯32と噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに亘ってガイドブラケット20に沿ってガイドブラケット20の径方向に移動可能である。具体的には、メインロックギヤ60A、60Cは、内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ有し、カム50によってくさび部材80を介して押圧されることにより、強固な噛合を行うロックギヤである。一方、サブロックギヤ60B、60Dは、内歯32に噛合可能な外歯63を有し、メインロックギヤ60A、60Cの強固な噛合(ロック強度)を補完するために内歯32に噛合するロックギヤである。本実施形態では、ロックスプリング40として、小型の渦巻ばねが採用されている。
【0035】
ここで、メインロックギヤ60A、60Cの「強固な噛合」とは、外歯63と内歯32とがそれぞれの歯面で接触して押し合う状態で噛み合うことをいう。一方、サブロックギヤ60B、60Dは、メインロックギヤ60A、60Cのような外歯63と内歯32とが押し合う強固な噛合までは要求されておらず、メインロックギヤ60A、60Cの強固な噛合(ロック強度)を補完するために噛み合っていればよい。
【0036】
ガイドブラケット20は、中央に円形のセンター穴22を有する板状の部材である。本実施形態のガイドブラケット20は、シートクッション2およびシートバック3のいずれか一方として、シートクッション2のフレーム2a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の後部付近に固定されている。
【0037】
ガイドブラケット20は、具体的には、図3図5図6(b)、図9に示されるように、中央に円形のセンター穴22が形成された円板状の本体部21と、ロックスプリング40をそれぞれ収容する2つの収容部23と、本体部21の外周に沿って設けられたフランジ部24とを有する。
【0038】
2個の収容部23は、それぞれ、ガイドブラケット20の外面21aに向かう方向に凹み、本体部21の内面21b側に開口するとともにセンター穴22に連通している。そのため、ロックスプリング40の渦巻き部分が収容部23に収容された状態で、外側端部41をセンター穴22の内部に突出させることが可能である。
【0039】
ガイドブラケット20は、さらに、図6(b)および図7に示されるように、本体部21の内面21b(上記の対向面)において、4枚のロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に案内する複数のガイド壁部25(ガイド部)を有する。複数のガイド壁部25は、センター穴22の周囲に互いに周方向に等間隔に離して設けられ、ガイドブラケット20の径方向にそれぞれ延びている。さらに具体的には、複数のガイド壁部25は、センター穴22を中心として一対ずつ組になって4方向に放射状に延びている。これにより、4対のガイド壁部25によって、4枚のロックギヤ60A~60Dをガイドブラケット20の径方向に案内することが可能である。
【0040】
インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20と対向する位置で、シートクッション2およびシートバック3の他方として、シートバック3のフレーム3a(図1~2参照)(具体的にはサイドフレーム)の下部付近に固定されている。
【0041】
インターナルギヤ30は、図3および図6(a)、(b)に示されるように、インターナルギヤ30の軸方向から見て円形に形成されると共に断面略凹状に形成された凹状部31を有する。凹状部31の内周面31aには、当該内周面31aの全周にわたって内歯32が形成されている。インターナルギヤ30は、凹状部31の底面31bをガイドブラケット20の本体部21の内面21b(対向面)に対向させて配置される。凹状部31の中央には、貫通孔33が形成されている。貫通孔33は、図2に示されるように、シートバック3のフレーム3aの貫通孔3bに重なるように配置される。貫通孔33を通して、コネクトロッド7および樹脂ブッシュ8のそれぞれの端部がリクライニング機構6の内部に挿入される。
【0042】
図3および図6(b)に示されるように、ガイドブラケット20とインターナルギヤ30の凹状部31とが対向した状態で、凹状部31の周縁部がガイドブラケット20の段差部26(すなわち、図6(b)に示される本体部21とフランジ部24との間の段差部26)に嵌合される。これにより、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対しての径方向の位置決めがなされる。
【0043】
さらに、取付けリング70がフランジ部24に溶接などで固定されてインターナルギヤ30の軸方向への抜け止めがなされる。これによって、インターナルギヤ30は、ガイドブラケット20に対して相対的に回転可能に連結されている。
【0044】
4枚のロックギヤ60A~60Dは、図3に示されるように、インターナルギヤ30の内歯32に噛合可能な外歯63をそれぞれ備えた平面視で略長方形の形状を有する部材(いわゆるロックプレート)である。ロックギヤ60A~60Dは、ガイドブラケット20の内面21bに沿って、当該内面21bに形成された上記のガイド壁部25によってガイドブラケット20の径方向に案内されながら移動可能に配置されている。これにより、ロックギヤ60A~60Dは、外歯63と内歯32とが噛合する噛合位置とこれらの噛合が解除される解除位置とに変位することが可能である。各ロックギヤ60A~60Dの内周面には、カム50の周方向に延びるように略円弧状に切り欠かれた被係合溝61が形成されている。被係合溝61は、後述のカム50の係合突起52と係合するための溝である。また、上記のように周方向に延びる被係合溝61が形成されることにより、ロックギヤ60A~60Dの内周面には、被係合溝61よりも径方向内側に略L字状の係合突起64が形成されている。
【0045】
L字状の係合突起64は、図8~12に示されるように、内周側において、カム50に対向する外面64aと、被係合溝61と反対側の角部64bとを有する。外面64aは、メインロックギヤ60A、60Cのロック状態(噛合位置)(図12参照)では、カム50の突起55と離間した位置で対向している。角部64bは、カム50が解除位置から噛合位置へ回転中に突起55との接触を避けるために面取りされている。
【0046】
図3および図7に示されるように、1対のメインロックギヤ60A、60Cは、カム50を挟んで直線的に並ぶように上下方向に対向配置されている。
【0047】
1対のサブロックギヤ60B、60Dは、1対のメインロックギヤ60A、60Cに対してカム50の周方向に90度離間するとともにカム50を挟んで直線的に並ぶように対向配置されている。
【0048】
図3および図7~8に示されるように、上下方向に並んで互いに径方向に対向する1対のメインロックギヤ60A、60Cは、上記の外歯63および係合突起64を有する点ではサブロックギヤ60B、60Dと共通するが、図8に示されるくさび当接面67を有する点で異なる。
【0049】
くさび当接面67は、メインロックギヤ60A、60Cの内周側において径方向に対して傾斜する方向に延びる斜面であり、くさび部材80に当接する面である。くさび当接面67は、係合突起64と周方向に並んだ位置に配置されている。すなわち、くさび当接面67は、一対のガイド壁部25A、25Bのうち一方のガイド壁部25Aに近い位置に配置され、係合突起64は他方のガイド壁部25Bに近い位置に配置されている。
【0050】
くさび部材80は、本実施形態では、略三角形にとがったくさび形の形状を有し、メインロックギヤ60A、60Cのくさび当接面67とガイド壁部25(さらに詳しくは、図8のくさび部材80側のガイド壁部25A)との間に挟まれた状態で配置されている。
【0051】
くさび部材80は、図8~9に示されるように、カム50(具体的には、後述の係合突起52の外周面である円弧状の押圧面52a)に接触する円弧状の接触面80aと、ガイド壁部25Aに当接するガイド壁当接面80cと、メインロックギヤ60A、60Cのくさび当接面67に当接するロックギヤ当接面80bとを有する。
【0052】
図8に示されるように、カム50の回転軸方向(図8の紙面垂直方向)から見た場合におけるガイド壁当接面80cとロックギヤ当接面80bの間の角度θは、くさび部材80がメインロックギヤ60A、60Cをくさび部材80と反対側のガイド壁部25Bへ向けて十分な押圧力で押圧するために必要な角度として、30~6070度の範囲に設定されている。
【0053】
一対のサブロックギヤ60B、60Dは、上記のメインロックギヤ60A、60Cと異なり、上記のくさび部材80と一体化した形状を有する。すなわち、サブロックギヤ60B、60Dは、その径方向内側において、上記くさび部材80に対応する径方向内側に突出する突起65を有する。突起65は、径方向内側の面でカム50(具体的には、後述の係合突起52の外周面である円弧状の押圧面52a)に接触することが可能である。
【0054】
カム50は、ガイドブラケット20に対して所定のロック角度と解除角度との間で相対的に回転可能なカムである。カム50は、図3~4、および図6(b)に示されるように、本体部51と、本体部51からガイドブラケット20に向かって当該カム50の軸方向に突出してガイドブラケット20のセンター穴22に挿入された軸部Sとを有する。
【0055】
本体部51は、4枚のロックギヤ60A~60Dのそれぞれを径方向に動かす複数の操作部分である4つの係合突起52を有する。4つの係合突起52は、4枚のロックギヤ60A~60Dのそれぞれの被係合溝61(図3参照)に係合可能な方向に延び、さらに詳細に言えば、円周方向に等間隔に略円弧状で角状(略L字状)に延びる。
【0056】
図7~8に示されるように、カム50は、ロックスプリング40の回転付勢力によって解除角度からロック角度へ回転するにしたがって、4枚のロックギヤ60A~60Dにそれぞれ接触して当該4枚のロックギヤをカム50の径方向外側へ押圧して噛合位置へ移動させる4つの押圧面52aを有する。4つの押圧面52aは、4つの係合突起52の外周面によって構成され、1対のメインロックギヤ60A、60Cに隣接するくさび部材80および1対のサブロックギヤ60B、60Dの突起65にそれぞれ接触して全てのロックギヤ60A~60Dをカム50の径方向外側へ押圧して噛合位置へ移動させる。押圧面52aは、それぞれ円弧状の曲面を含む。
【0057】
すなわち、4つの押圧面52aのうちのくさび部材80に当接する2つの押圧面52aは、メインロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間でくさび部材80に当接状態を維持して当該くさび部材80を径方向外側へ押圧するくさび押圧部となる。また、残り2つの押圧面52aは、サブロックギヤ60B、60Dが解除位置から噛合位置へ移動する間で突起65に当接状態を維持して当該突起65を径方向外側へ押圧する突起押圧部となる。
【0058】
また、カム50は、外周面において4つの係合突起52の間にそれぞれ突起55を有する。4つの突起55のうち2つの突起55は、メインロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間でメインロックギヤ60A、60C(具体的には係合突起64)に対して隙間gをあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部の構成部分になる。また、残り2つの突起55は、サブロックギヤ60B、60Dが解除位置から噛合位置へ移動する間でサブロックギヤ60B、60Dの係合突起64に対して隙間をあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部になる。
【0059】
図7に示されるように、4つの押圧面52aのそれぞれは、カム50が所定のロック角度にあるときに噛合位置の4枚のロックギヤ60A~60Dに接触してロックギヤ60A~60Dを噛合位置に維持するように押圧する押圧部分として接触点P1、P2(図7参照)を含む部分を有する。
【0060】
押圧面52aの押圧部分である接触点P1を含む部分は、カム50がロック角度を越えても1対のメインロックギヤ60A、60Cに隣接するくさび部材80を径方向外側に押圧可能となるように形成されている。ロック角度を超えても押圧するとは、ロックギヤ60A、60Cが噛み合い始めてからメインロックギヤ60A、60Cの幅方向端面のうちくさび部材80とは反対側の端面がガイドブラケット20のガイド壁部25Bに当接するまでの押し込みのことをいう。押圧面52aの接触点P1を含む部分は、カム50が所定のロック角度よりもさらにロック方向R(図10~13参照)へ進角したときにメインロックギヤ60A、60Cのくさび部材80を押し込むことが可能な角度になるように、当該メインロックギヤ60A、60Cにおける押圧部分との接触部分に対して傾斜している。
【0061】
なお、押圧面52aの接触点P2を含む部分は、噛合位置のサブロックギヤ60B、60Dの突起65に接触して噛合状態を維持するように構成されていればよい。例えば、押圧面52aの接触点P2を含む部分は、カム50が所定のロック角度よりもさらにロック方向Rへ進角してもサブロックギヤ60B、60Dへの押圧力の増加を抑えるように当該サブロックギヤ60B、60Dの突起65の外周面と法線方向が一致する向きを向いている。
【0062】
なお、カム50のその他の構成は、以下の通りである。
【0063】
図2~4に示されるように、カム50の本体部51は、中央にロッド係合孔54が形成されている。ロッド係合孔54には、上記のインターナルギヤ30の貫通孔33を通して、コネクトロッド7の端部が係合している。コネクトロッド7を手動などで回転操作することによって、リクライニング機構6の内部のカム50を回転操作することが可能である。
【0064】
カム50の軸部Sは、図4に示されるように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接する外周面S1と、ロックスプリング40の外側端部41が係合される被係合部(後述の係合端部53b)とを有する。
【0065】
本実施形態では、軸部Sは、本体部51から軸方向に突出する複数(本実施形態では2個)の凸部53で構成されている。外周面S1は、2個の凸部53における(カム50の径方向で見て)径方向外側の面53aで構成されている。径方向外側の面53aは、当該カム50の軸方向から見て円弧状に湾曲する面である。凸部53は、カム50を成形する際に半貫形状に形成されるのが好ましい。
【0066】
また、上記の被係合部は、本実施形態では、2個の凸部53のそれぞれにおいてカム50の周方向の一方の端部である係合端部53bで構成されている。係合端部53bは、凸部53の周方向両側の端部53b、53cのうち、カム50の周方向において係合突起52が4個のロックギヤ60A~60Dの被係合溝61に係合する回転方向(図4において時計回り)の側の端部である。
【0067】
ロックスプリング40の外側端部41が凸部53の係合端部53bに係合することにより、ロックスプリング40は、カム50を前記解除角度から前記ロック角度へ向けて所定の方向(図10~13のカム50のロック方向R)に回転付勢させる。具体的には、図10~13に示されるように、カム50の4つの係合突起52が1対のメインロックギヤ60A、60Cを押圧する1対のくさび部材80および1対のサブロックギヤ60B、60Dの突起65をカム50の半径方向外方に押圧して、これらのロックギヤ60A~60Dの外歯63をインターナルギヤ30の内歯32に噛み合う噛合位置へ移動させる方向に、ロックスプリング40はカム50を回転付勢させる。
【0068】
カム50は、軸部Sの外周面S1がガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aに当接することにより、当該ガイドブラケット20に対して回転可能に支持されている。
【0069】
このように、ガイドブラケット20のセンター穴22の内周面22aと凸部53の径方向外側の面53a(すなわち、軸部Sの外周面S1)とが当接することにより、カム50は、ガイドブラケット20に対して径方向の位置決めがなされる。
【0070】
2個のロックスプリング40は、図3に示されるように、ガイドブラケット20の本体部21の内面21b側において、上記の収容部23に収容されることにより、センター穴22の周囲に周方向に均等に配置、すなわち、本実施形態では、センター穴22の両側に配置されている。
【0071】
本実施形態のロックスプリング40は、帯状の金属薄板が渦巻状に巻かれた渦巻ばねであり、外側端部41と、内側端部42とを有する。内側端部42は、ガイドブラケット20の収容部23の凹部内に設けられた係合凸部(図示せず)に係合している。
【0072】
外側端部41は、上記のカム50の凸部53の係合端部53bに係合している。これにより、2個のロックスプリング40は、それぞれ、4枚のロックギヤ60A~60Dを解除位置から噛合位置へ変位させる方向にカム50を回転付勢することが可能である。
【0073】
上記のリクライニング機構6では、通常のロック状態では、図13~14に示されるように、カム50は、ロックスプリング40からの回転付勢力によりロック方向Rへ付勢されている。この状態では、カム50の2つの係合突起52のそれぞれの押圧面52aは、1対のメインロックギヤ60A、60Cのそれぞれとカム50との間に介在する1対のくさび部材80を押圧することにより、1対のメインロックギヤ60A、60Cを径方向外側へ強く押し込んで噛合位置に維持しているので、これらの外歯63がインターナルギヤ30の内歯32に強固に噛合しているのみならず(図14の押圧力F11参照)、メインロックギヤ60A、60Cの幅方向のクリアランスも小さくする(詰める)ことができ(図13の分力F2参照)、がたつきが抑制される。
【0074】
カム50の突起55は、ロックギヤ60A~60DのL字状の係合突起64から常時離間している。図8および図13に示されるように、ロック状態においても、突起55の外面55aとL字状の係合突起64の外面64aとの間には隙間gが形成されている。したがって、メインロックギヤ60A、60Cは、カム50から押圧されず、くさび部材80からのみ常時押圧される。
【0075】
ロックギヤ60A~60Dのロック状態にあるときに、リクライニング装置5の外部から大荷重が入力された場合には、突起55は、L字状の係合突起64に接触することにより、ロックギヤ60A~60Dの噛合が外れることを防止することが可能である。
【0076】
一方、コネクトロッド7に回転操作力が入力されたときには、ロックスプリング40の弾性力に抗して、カム50が逆方向(図10~13のロック方向Rと反対方向)へ回転することによって4枚のロックギヤ60A~60Dが中心方向に変位する。すなわち、図10~13に示されるカム50がロック方向Rと反対方向に回転すると、カム50の4個の係合突起52が4枚のロックギヤ60A~60Dの各被係合溝61(図3参照)に係合して、4枚のロックギヤ60A~60Dをカム50の中心方向に引き寄せる。これにより、4枚のロックギヤ60A~60Dを径方向内側へ引き込んで上記の噛合位置から解除位置へ変位させてロック解除状態になる。ロック解除状態では、シートバック3を任意の角度に変更することが可能になる。シートバック3を任意の角度に変更後は、コネクトロッド7への回転操作力を無くせば、ロックスプリング40の回転付勢力により上記のロック状態に復帰する。
【0077】
(本実施形態の特徴)
(1)
本実施形態のリクライニング装置5の主要部であるリクライニング機構6では、カム50は、くさび部材80に押圧されるメインロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間でくさび部材80に当接状態を維持して当該くさび部材80を径方向外側へ押圧するくさび押圧部である係合突起52の押圧面52aと、ロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間でロックギヤ60A、60Cに対して隙間をあけた状態を維持して対向するロックギヤ対向部の構成部分である突起55とを有する。
【0078】
これにより、図10~13に示されるように、メインロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置へ移動する間、メインロックギヤ60A、60Cを押圧するくさび部材80がカム50のくさび押圧部である係合突起52の押圧面52aによって押圧された状態が維持される。
【0079】
くさび部材80は、カム50のくさび押圧部である係合突起52の押圧面52aによって径方向外側へ押圧されることにより、メインロックギヤ60A、60Cは、径方向に対して傾斜したくさび当接面67がくさび部材80から受ける押圧力F0の周方向の分力F2によって、一対のガイド壁部25のうちくさび部材80と反対側のガイド壁部25Bに常に押し付けられるため、噛合位置へ移動中のメインロックギヤ60A、60Cの姿勢が安定する。
【0080】
また、メインロックギヤ60A、60Cが噛合位置へ移動完了後もカム50はロックスプリング40によって解除角度からロック角度へ向けてロック方向Rへ回転付勢されているので、カム50のくさび押圧部である係合突起52の押圧面52aは、メインロックギヤ60A、60Cが噛合位置へ移動完了後もメインロックギヤ60A、60Cを押圧するくさび部材80を径方向外側へ押圧した状態を維持するとともにロックギヤ対向部である突起55はロックギヤ60A、60Cとの間で隙間を維持する。すなわち、メインロックギヤ60A、60Cは噛合位置においてもくさび押圧部である押圧面52aのみによって押圧されているため、メインロックギヤ60A、60Cはカム50の当接前に外歯63が内歯32と噛合うといった部品ばらつきの影響を受けにくく、ロック状態のメインロックギヤ60A、60Cのがたつきを抑えることが可能である。
【0081】
(2)
本実施形態のリクライニング機構6では、図8に示されるように、くさび部材80は、ガイド壁部25Aに当接するガイド壁当接面80cと、メインロックギヤ60A、60Cのくさび当接面67に当接するロックギヤ当接面80bとを有する。
【0082】
カム50の回転軸方向から見た場合におけるガイド壁当接面80cとロックギヤ当接面80bの間の角度θは、30~60度の範囲に設定されている。この構成では、メインロックギヤ60A、60Cが解除位置から噛合位置への移動中にくさび部材80がメインロックギヤ60A、60Cをガイド壁部25Bへ向けて十分な押圧力で押圧し続けることが可能になり、移動中のメインロックギヤ60A、60Cの姿勢がより安定する。
【0083】
(3)
本実施形態のリクライニング機構6では、図8に示されるように、カム50のロックギヤ対向部は、カム50の外周面からメインロックギヤ60A、60Cに向かって径方向外側に突出する突起55を有する。
【0084】
メインロックギヤ60A、60Cは、当該メインロックギヤの径方向内側の端部においてカム50が解除角度にあるときの突起55に最も近い位置に角部64bを有する。
【0085】
角部64bは、カム50が解除角度からロック角度へ回転する間に突起55との接触を回避するために面取りされている。
【0086】
かかる構成では、ロックギヤ対向部がメインロックギヤ60A、60Cに向けて径方向外側に突出する突起55を有する構成においても、メインロックギヤ60A、60Cの径方向内側の角部64bが面取りされているので、カム50が解除角度からロック角度へ回転する間に角部64bが突起55に接触することを回避することが可能である。
【0087】
(4)
本実施形態のシート1は、シートクッション2と、シートクッション2の後部に配置されてシート前後方向に傾動可能なシートバック3と、シートバック3を任意の傾斜角度で固定する上記の構成のリクライニング機構6とを備えている。これにより、移動中のメインロックギヤ60A、60Cの姿勢が安定するとともにロック状態のメインロックギヤ60A、60Cのがたつきを抑えることが可能になる。その結果、シートバック3のがたつきを抑えることが可能になる。
【0088】
(変形例)
(A)
なお、上記の実施形態では、カム50のロックギヤ対向部の構成部分として突起55を有する例が示されているが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明のロックギヤ対向部は、メインロックギヤ60A、60Cに対して隙間をあけた状態を維持して対向するように構成されていればよく、突起55を有しない形状、すなわち、カム50の本体部51の滑らかな円周面で構成された形状であってもよい。
【0089】
(B)
上記の実施形態では、複数のロックギヤとして4枚のロックギヤ60A~60Dを有し、互いに径方向に対向する1対のメインロックギヤ60A、60Cがくさび部材80を有する構成を示しているが、本発明はこれに限定するものではない。本発明では、複数のロックギヤのうち少なくとも1枚のロックギヤがくさび部材を有していればよい。
【0090】
(C)
上記実施形態では、くさび部材80は、略三角形状を有しているが、本発明はこれに限定されるものではない。くさび部材80は、図8に示されるように、カム50の押圧面52aに接触する接触面80aを有し、かつ、くさび当接面67とガイド壁部25Aとの間に挟まれることが可能な形状であれば種々の形状が採用される。したがって、本発明のくさび部材は、三角形状だけでなく、円形、台形、略五角形の形状でもよく、これらの形状のくさび部材であっても、メインロックギヤ60A、60Cをガイド壁部25Bに押し付けながらぐらつかずに径方向外側へ移動させることが可能である。
【0091】
(D)
上記実施形態では、2個のロックスプリング40がガイドブラケット20の周方向に均等に配置されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも1つのロックスプリングを備えていればよい。したがって、上記のリクライニング機構6は、1個のロックスプリングを備えた構成でも、3個以上のロックスプリングを備えた構成でもよい。また、ロックスプリングとしては、上記実施形態のように渦巻ばねを採用するだけでなく、種々の形状のばね(板ばね、コイルスプリング、ゴムばね、空気ばねなど)を採用してもよい。
【0092】
(E)
上記実施形態では、ガイドブラケット20がシートクッション2のフレーム2aに固定され、インターナルギヤ30がシートバック3のフレーム3aに固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、ガイドブラケット20およびインターナルギヤ30を入れ替えた配置であってもよい。すなわち、インターナルギヤ30がシートクッション2のフレーム2aに固定され、ガイドブラケット20がシートバック3のフレーム3aに固定されていてもよい。
【符号の説明】
【0093】
1 シート
2 シートクッション
2a フレーム
3 シートバック
3a フレーム
4 スライド機構
5 リクライニング装置
6 リクライニング機構
7 コネクトロッド
20 ガイドブラケット
30 インターナルギヤ
32 内歯
40 ロックスプリング
50 カム
51 本体部
52 係合突起
52a 押圧面(くさび押圧部)
55 突起(ロックギヤ対向部)
60A、60C メインロックギヤ
60B、60D サブロックギヤ
63 外歯
65 突起
67 くさび当接面
70 取付けリング
80 くさび部材
80a 接触面
80b ロックギヤ当接面
80c ガイド壁当接面
P1、P2 接触点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15