(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158262
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04746 20160101AFI20241031BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20241031BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241031BHJP
B60K 11/02 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/04858
H01M8/0432
B60K11/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073315
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】飼沼 徹
【テーマコード(参考)】
3D038
5H127
【Fターム(参考)】
3D038AB04
3D038AC22
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA58
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB26
5H127BB37
5H127BB39
5H127BB40
5H127CC07
5H127DA01
5H127DA11
5H127DB47
5H127DC76
5H127DC90
(57)【要約】
【課題】燃料電池モジュールの起動時間の短縮を図る。
【解決手段】燃料電池モジュールFCMの終了時、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時、初期化完了フラグがオンである場合、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定し、燃料電池モジュールFCMの起動時、初期化完了フラグがオフである場合、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともにロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池モジュールであって、
燃料電池と、
前記燃料電池に供給される流体が流れる流路に設けられるバルブと、
前記燃料電池の発電及び前記バルブの開度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記燃料電池モジュールの終了時、前記バルブの開度を所定開度に変化させた後、初期化完了フラグをオンし、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として前記所定開度を設定し、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を前記所定開度に変化させた後、前記バルブの初期開度として前記所定開度を設定する
燃料電池モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記流体は、冷却水であり、
前記制御部は、
前記燃料電池モジュールの終了時、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記初期化完了フラグをオンし、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として0%を設定した後、前記燃料電池の温度に基づいて、前記バルブの開度を制御し、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記バルブの初期開度として0%を設定した後、前記燃料電池の温度に基づいて、前記バルブの開度を制御する
燃料電池モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載の燃料電池モジュールであって、
前記バルブの開度が0%に近づくほど、冷却水である前記流体がラジエタよりイオン交換器に多く流れ、前記バルブの開度が100%に近づくほど、前記流体が前記イオン交換器より前記ラジエタに多く流れる場合、
前記制御部は、
前記燃料電池モジュールの終了時、前記燃料電池の温度が閾値以下である場合、前記バルブの開度を0%に変化させた後、前記初期化完了フラグをオンするとともに全閉フラグをオンし、
前記燃料電池モジュールの終了時、前記燃料電池の温度が前記閾値より大きい場合、前記バルブの開度を100%に変化させた後、前記初期化完了フラグをオンするとともに前記全閉フラグをオフし、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記バルブの初期開度として0%を設定し、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグ及び前記全閉フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として0%を設定し、
前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンであり前記全閉フラグがオフである場合、前記バルブの初期開度として100%を設定する
燃料電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池モジュールとして、燃料電池に供給される冷却水などの流体が流れる流路に設けられるバルブの開度を変化させることで、燃料電池の温度を調整するものがある。関連する技術として、特許文献1がある。
【0003】
ところで、バルブの現在の開度が何%であるかが分からない場合、燃料電池モジュールの起動時、バルブの開度を0%または100%に変化させた後にバルブの初期開度として0%または100%を設定する必要がある。
【0004】
そのため、上記燃料電池モジュールでは、バルブの現在の開度が何%であるかが分からない場合、起動時にバルブの開度を0%または100%に変化させるために時間を要するため、起動時間が増加するという懸念がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一側面に係る目的は、燃料電池モジュールの起動時間の短縮を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る一つの形態である燃料電池モジュールは、燃料電池と、前記燃料電池に供給される流体が流れる流路に設けられるバルブと、前記燃料電池の発電及び前記バルブの開度を制御する制御部とを備える。
【0008】
前記制御部は、前記燃料電池モジュールの終了時、前記バルブの開度を所定開度に変化させた後、初期化完了フラグをオンし、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として前記所定開度を設定し、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を前記所定開度に変化させた後、前記バルブの初期開度として前記所定開度を設定する。
【0009】
これにより、燃料電池モジュールの終了時においてバルブの開度を所定開度に変化させることが可能な場合、燃料電池モジュールの起動時においてバルブの初期開度の設定のためにバルブを所定開度に変化させる必要がないため、起動時間の短縮を図ることができる。
【0010】
また、上記燃料電池モジュールにおいて、前記流体を冷却水とし、前記制御部は、前記燃料電池モジュールの終了時、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記初期化完了フラグをオンし、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として0%を設定した後、前記燃料電池の温度に基づいて、前記バルブの開度を制御し、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記バルブの初期開度として0%を設定した後、前記燃料電池の温度に基づいて、前記バルブの開度を制御するように構成してもよい。
【0011】
また、上記燃料電池モジュールにおいて、前記バルブの開度が0%に近づくほど、冷却水である前記流体がラジエタよりイオン交換器に多く流れ、前記バルブの開度が100%に近づくほど、前記流体が前記イオン交換器より前記ラジエタに多く流れる場合、前記制御部は、前記燃料電池モジュールの終了時、前記燃料電池の温度が閾値以下である場合、前記バルブの開度を0%に変化させた後、前記初期化完了フラグをオンするとともに全閉フラグをオンし、前記燃料電池モジュールの終了時、前記燃料電池の温度が前記閾値より大きい場合、前記バルブの開度を100%に変化させた後、前記初期化完了フラグをオンするとともに前記全閉フラグをオフし、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオフである場合、前記バルブの開度を0%に変化させるとともに前記バルブの初期開度として0%を設定し、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグ及び前記全閉フラグがオンである場合、前記バルブの初期開度として0%を設定し、前記燃料電池モジュールの起動時、前記初期化完了フラグがオンであり前記全閉フラグがオフである場合、前記バルブの初期開度として100%を設定するように構成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、燃料電池モジュールの起動時間の短縮を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【
図2】第1実施例における燃料電池モジュールの終了時の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図3】第1実施例における燃料電池モジュールの起動時の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施例における燃料電池モジュールの終了時の制御部の動作を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施例における燃料電池モジュールの起動時の制御部の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて実施形態について詳細を説明する。
【0015】
図1は、実施形態の燃料電池モジュールの一例を示す図である。
【0016】
図1に示す燃料電池モジュールFCMは、例えば、フォークリフト、トーイングトラクタ、または無人搬送車(AGV:Automatic Guided Vehicle)などの車両Veに搭載され、その車両Veに搭載される負荷Loに電力を供給する。燃料電池モジュールFCMは、定置型発電機などに用いられ、接続される負荷に電力を供給してもよい。
【0017】
また、車両Veは、負荷Loの動作を制御する車両側制御部Cntvと、燃料タンクTと、ラジエタRと、イオン交換器IEと、蓄電装置Bと、電圧センサSvbと、電流センサSibとを備える。
【0018】
また、燃料電池モジュールFCMは、燃料電池FCと、インジェクタINJと、エアコンプレッサACPと、エア調圧バルブARVと、エアシャットバルブASVと、ウォータポンプWPと、ロータリーバルブRVと、インタークーラICと、DCDCコンバータCNVと、温度検出部Stと、電流センサSifと、電圧センサSvfと、記憶部Strと、制御部Cntとを備える。
【0019】
なお、燃料タンクT、ラジエタR、イオン交換器IE、蓄電装置B、電圧センサSvb、及び電流センサSibは、燃料電池モジュールFCM側に備えられていてもよい。
【0020】
燃料電池FCは、互いに直列接続される複数の燃料電池セルにより構成される燃料電池スタックであり、燃料ガス(水素ガスなど)に含まれる水素と酸化剤ガス(空気など)に含まれる酸素との電気化学反応により電気を発生させる。
【0021】
燃料タンクTは、燃料ガスの貯蔵容器である。燃料タンクTに貯蔵された燃料ガスはインジェクタINJを介して燃料電池FCに供給される。
【0022】
インジェクタINJは、燃料電池FCに供給される燃料ガスの流量を調整する。
【0023】
エアコンプレッサACPは、燃料電池モジュールFCMの周囲に存在する酸化剤ガスを圧縮しインタークーラIC及びエアシャットバルブASVを介して燃料電池FCに供給する。なお、酸化剤ガスの圧縮率は、燃料電池FCの下流に設けられるエア調圧バルブARVの開度を調節することで制御される。
【0024】
インタークーラICは、圧縮により高温になった酸化剤ガスをインタークーラICに流れる冷却水(流体)と熱交換させる。
【0025】
エアシャットバルブASVは、バタフライバルブなどにより構成され、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスを遮断する。
【0026】
エア調圧バルブARVは、バタフライバルブなどにより構成され、燃料電池FCに供給される酸化剤ガスの圧力や流量を調整する。
【0027】
ラジエタRは、燃料電池FCの発熱により温められた冷却水を外気と熱交換させる。
【0028】
イオン交換器IEは、冷却水から不純物イオンを取り除くことで冷却水の伝導率を下げ、燃料電池FC内の絶縁性を保つ。
【0029】
ウォータポンプWPは、ラジエタRにより冷却された冷却水やイオン交換器IEにより不純物イオンが取り除かれた冷却水を燃料電池FCに供給する。
【0030】
ロータリーバルブRVは、ステッピングモータなどにより開度が調整され、その開度に応じて燃料電池FCから出力される冷却水をラジエタRやイオン交換器IEに供給する。これにより、燃料電池FCからロータリーバルブRV、ラジエタR、及びウォータポンプWPを介して燃料電池FCに流れる冷却水の第1流路や燃料電池FCからロータリーバルブRV、イオン交換器IE、及びウォータポンプWPを介して燃料電池FCに流れる冷却水の第2流路が形成される。例えば、ロータリーバルブRVの開度が0~100%の間で制御部Cntにより制御されることで、燃料電池FCからラジエタRに供給される冷却水の量と燃料電池FCからイオン交換器IEに供給される冷却水の量との比が調整される。ロータリーバルブRVの開度が0%に近づくほど、冷却水がラジエタRよりイオン交換器IEに多く供給され、ロータリーバルブRVの開度が100%に近づくほど、冷却水がイオン交換器IEよりラジエタRに多く供給される。また、ロータリーバルブRVの開度が100%である場合、冷却水がラジエタRのみに供給され、ロータリーバルブRVの開度が0%である場合、冷却水がイオン交換器IEのみに供給される。
【0031】
DCDCコンバータCNVは、燃料電池FCの後段に接続され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを所定の電圧に変換する。DCDCコンバータCNVから出力される電力は、負荷Lo、エアコンプレッサACPやウォータポンプWPなどの各補機、及び蓄電装置Bに供給される。
【0032】
蓄電装置Bは、リチウムイオン電池またはリチウムイオンキャパシタなどにより構成され、DCDCコンバータCNVと負荷Loとの間に接続されている。DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、車両側制御部Cntvから要求される要求電力より大きい場合、その供給電力のうち、要求電力分の電力が負荷Loに供給されるとともに、残りの電力が蓄電装置Bに供給される。DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに電力が供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率(蓄電装置Bの満充電容量に対する残容量の割合[%])が増加する。また、負荷Loから燃料電池モジュールFCMに供給される回生電力が蓄電装置Bに供給されると、蓄電装置Bが充電され蓄電装置Bの充電率が増加する。また、DCDCコンバータCNVから出力される電力と、各補機にそれぞれ供給される電力の合計値との差に相当する供給電力が、車両側制御部Cntvから要求される要求電力より小さい場合、その供給電力が負荷Loに供給されるとともに、足りない分の電力が蓄電装置Bから負荷Loに供給される。蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されると、蓄電装置Bが放電され蓄電装置Bの充電率が減少する。
【0033】
温度検出部Stは、サーミスタなどにより構成され、蓄電装置Bの温度tを検出し、その検出した温度tを制御部Cntに送る。
【0034】
電流センサSifは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、燃料電池FCからDCDCコンバータCNVに流れる電流Ifを検出し、その検出した電流Ifを制御部Cntに送る。
【0035】
電圧センサSvfは、分圧抵抗などにより構成され、燃料電池FCから出力される電圧Vfを検出し、その検出した電圧Vfを制御部Cntに送る。制御部Cntは、電圧Vfと電流Ifとの乗算結果を燃料電池FCの発電電力とする。
【0036】
電流センサSibは、シャント抵抗やホール素子などにより構成され、DCDCコンバータCNVから蓄電装置Bに流れる電流Ibまたは蓄電装置Bから負荷Loに流れる電流Ibを検出し、その検出した電流Ibを車両側制御部Cntvに送る。
【0037】
電圧センサSvbは、分圧抵抗などにより構成され、蓄電装置Bの電圧Vbを検出し、その検出した電圧Vbを車両側制御部Cntvに送る。車両側制御部Cntvは、電圧Vbと蓄電装置Bの充電率との対応関係を示す情報や電流Ibの積算値などを用いて蓄電装置Bの充電率を求める。
【0038】
記憶部Strは、リテンションRAM(Random Access Memory)などにより構成され、後述する初期化完了フラグや異常フラグなどを記憶する。なお、初期化完了フラグ及び異常フラグのそれぞれの状態(オンまたはオフ)は、少なくとも燃料電池モジュールFCMの終了時から次回起動時までの間、保持されるものとする。
【0039】
制御部Cntは、マイクロコンピュータなどにより構成され、燃料電池FCの発電を制御する。
【0040】
例えば、制御部Cntは、ユーザによりキーオンの操作が行われることで、車両側制御部Cntvから送信される発電開始指令を受信すると、燃料電池モジュールFCMの起動処理を開始する。
【0041】
次に、制御部Cntは、起動処理を開始すると、燃料ガスの漏れや各補機及び各種センサの異常などをチェックする。
【0042】
次に、制御部Cntは、起動処理が終了し、発電制御処理を開始すると、燃料ガスが燃料電池FCに供給されるように各補機の動作を制御した後、酸化剤ガスが燃料電池FCに供給されるように各補機の動作を制御する。
【0043】
次に、制御部Cntは、発電制御処理中、車両側制御部Cntvから送信される蓄電装置Bの充電率と複数の閾値との比較結果に応じて目標発電電力Ptを段階的に変化させるとともに、PI(Proportional-Integral)制御などにより燃料電池FCの発電電力が目標発電電力Ptに追従するように、各補機の動作を制御する。このように、蓄電装置Bの充電率に応じて燃料電池FCの発電電力を段階的に変化させることにより、燃料電池FCの出力電圧の単位時間あたりの変動回数を抑えることができるため、燃料電池FCの劣化を抑制することができる。なお、目標発電電力Ptが大きくなるほど、燃料電池FCの発電電力が大きくなり、目標発電電力Ptが小さくなるほど、燃料電池FCの発電電力が小さくなるものとする。また、蓄電装置Bの充電率が50[%]付近に保たれるように燃料電池FCの発電電力が制御される場合、負荷Loから蓄電装置Bに電力が供給されることや蓄電装置Bから負荷Loに電力が供給されることに余裕をもって対応することができる。
【0044】
そして、制御部Cntは、ユーザによりキーオフの操作が行われることで、もしくは、ユーザにより非常停止ボタンが押されることで、もしくは、車両Ve内の装置や部品に異常が発生することで、車両側制御部Cntvから送信される発電停止指令を受信すると、または、燃料電池モジュールFCM内の装置や部品に異常が発生すると、発電制御処理から停止処理に移行する。
【0045】
また、制御部Cntは、発電制御処理中、起動時に設定したロータリーバルブRVの初期回路を基準として、温度検出部Stにより検出される温度tに基づいて、ロータリーバルブRVの開度を制御する。例えば、制御部Cntは、温度tが高くなるほど、ロータリーバルブRVの開度を上げ、温度tが低くなるほど、ロータリーバルブRVの開度を下げる。
【0046】
ところで、上述したように、燃料電池モジュールFCMの起動時にロータリーバルブRVの現在の開度が何%であるかが分からない場合、燃料電池モジュールFCMの起動時にバルブの開度を所定開度(0%または100%)に変化させる必要があるため、燃料電池モジュールFCMの起動時間が増加するという懸念がある。
【0047】
そこで、実施形態の燃料電池モジュールFCMでは、燃料電池モジュールFCMの終了時、ロータリーバルブRVの開度を所定開度に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時、初期化完了フラグがオンである場合、ロータリーバルブRVの初期開度として所定開度を設定する。
【0048】
これにより、燃料電池モジュールFCMの終了時においてロータリーバルブRVの開度を所定回路に変化させることが可能な場合、燃料電池モジュールFCMの起動時においてロータリーバルブRVの初期開度の設定のためにロータリーバルブRVを所定開度に変化させる必要がないため、起動時間の短縮を図ることができる。
【0049】
<第1実施例>
図2は、第1実施例における燃料電池モジュールFCMの終了時のロータリーバルブRVに対する制御部Cntの制御動作を示すフローチャートである。なお、初期化完了フラグはオフになっているものとする。
【0050】
まず、制御部Cntは、燃料電池モジュールFCMの停止処理を開始すると、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させる(ステップS11)。これにより、燃料電池モジュールFCMの次回の起動時において、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させる工程を無くすことができるため、その分起動時間を短縮することができる。
【0051】
次に、制御部Cntは、初期化完了フラグをオンにする(ステップS12)。
【0052】
なお、制御部Cntの配線の断線や短絡または制御部Cntに電力を供給する電源の異常などにより制御部Cntに電力が供給されなくなることで停止処理が実行される前に制御部Cntが急に停止してしまう場合、初期化完了フラグがオフのまま記憶部Strに記憶されるとともに、ロータリーバルブRVの開度が0%に変化していない状態で燃料電池モジュールFCMが停止するおそれがある。この場合、燃料電池モジュールFCMの次回の起動時において、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともに、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する必要がある。
【0053】
図3は、第1実施例における燃料電池モジュールFCMの起動時のロータリーバルブRVに対する制御部Cntの制御動作を示すフローチャートである。なお、制御部Cntは、起動処理を開始すると、燃料ガスの漏れや各補機及び各種センサの異常などをチェックした後、
図3に示すフローチャートを実行し、その後、起動処理から発電制御処理に移行する。
【0054】
まず、制御部Cntは、初期化完了フラグがオンしているか否かを判断する(ステップS21)。
【0055】
次に、制御部Cntは、初期化完了フラグがオンしていると判断すると(ステップS21:Yes)、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させずに、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する(ステップS22)。例えば、制御部Cntは、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を記憶部Strに記憶する。
【0056】
一方、制御部Cntは、初期化完了フラグがオフしていると判断すると(ステップS21:No)、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させた後(ステップS23)、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する(ステップS22)。例えば、制御部Cntは、ロータリーバルブRVの開度が0%側に変化するように、ロータリーバルブRVの開度を調整するためのステッピングモータのロータを「最大ステップ数(ロータリーバルブRVの開度が0%から100%まで変化させるために必要なステップ数)」回転させることで、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させる。または、制御部Cntは、ステッピングモータのロータを「最大ステップ数」及び「最大ステップ数の数%(例えば、5%)」回転させることで、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させる。
【0057】
次に、制御部Cntは、ロータリーバルブRVに異常が発生しているか否かを判断する(ステップS24)。例えば、制御部Cntは、ロータリーバルブRVの開度を調整するためのステッピングモータの配線や端子の断線または短絡によりステッピングモータを駆動させることができないと判断すると、ロータリーバルブRVに異常が発生していると判断する。
【0058】
次に、制御部Cntは、ロータリーバルブRVに異常が発生していると判断すると(ステップS24:Yes)、異常通知を車両側制御部Cntvに送信した後(ステップS25)、起動処理を中止する。例えば、車両側制御部Cntvは、異常通知を受信すると、車両Veを停止させる。
【0059】
一方、制御部Cntは、ロータリーバルブRVに異常が発生していないと判断すると(ステップS24:No)、起動処理から発電制御処理に移行する(ステップS26)。
【0060】
なお、
図3に示すフローチャートでは、ステップS21~ステップS23からなる初期開度設定処理が実行された後に、ステップS24~ステップS25からなる異常判断処理が実行される構成であるが、初期開度設定処理と異常判断処理が並行して実行されてもよい。
【0061】
また、
図2及び
図3に示すフローチャートでは、燃料電池モジュールFCMの終了時において、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時において、初期化完了フラグがオンである場合にロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する構成であるが、燃料電池モジュールFCMの終了時において、ロータリーバルブRVの開度を100%に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時において、初期化完了フラグがオンである場合にロータリーバルブRVの初期開度として100%を設定するように構成してもよい。
【0062】
このように、第1実施例の燃料電池モジュールFCMは、燃料電池モジュールFCMの終了時、ロータリーバルブRVの開度を0%または100%に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時、初期化完了フラグがオンである場合、ロータリーバルブRVの初期開度として0%または100%を設定する構成である。
【0063】
これにより、燃料電池モジュールFCMの終了時においてロータリーバルブRVの開度を0%または100%に変化させることが可能な場合、燃料電池モジュールFCMの起動時においてロータリーバルブRVの初期開度の設定のためにロータリーバルブRVを0%または100%に変化させる必要がないため、起動時間の短縮を図ることができる。
【0064】
<第2実施例>
図4は、第2実施例における燃料電池モジュールFCMの終了時のロータリーバルブRVに対する制御部Cntの制御動作を示すフローチャートである。なお、初期化完了フラグ及び全閉フラグはオフになっているものとする。
【0065】
まず、制御部Cntは、燃料電池モジュールFCMの停止処理を開始すると、温度検出部Stにより検出される温度tを取得する(ステップS31)。
【0066】
次に、制御部Cntは、ステップS31で取得した温度tが閾値th以下である場合(ステップS32:Yes)、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させた後(ステップS33)、初期化完了フラグをオンするとともに全閉フラグをオンする(ステップS34)。
【0067】
一方、制御部Cntは、ステップS31で取得した温度tが閾値thより大きい場合(ステップS32:No)、ロータリーバルブRVの開度を100%に変化させた後(ステップS35)、初期化完了フラグをオンするとともに全閉フラグをオフする(ステップS36)。
【0068】
なお、制御部Cntの配線の断線や短絡または制御部Cntに電力を供給する電源の異常などにより制御部Cntに電力が供給されなくなることで停止処理が実行される前に制御部Cntが急に停止してしまう場合、初期化完了フラグ及び全閉フラグがオフのまま記憶部Strに記憶されるとともに、ロータリーバルブRVの開度が0%に変化していない状態で燃料電池モジュールFCMが停止するおそれがある。この場合、燃料電池モジュールFCMの次回の起動時において、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともに、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定する必要がある。
【0069】
図5は、第2実施例における燃料電池モジュールFCMの起動時のロータリーバルブRVに対する制御部Cntの制御動作を示すフローチャートである。
【0070】
まず、制御部Cntは、燃料電池モジュールFCMの起動処理を開始すると、初期化完了フラグがオンしているか否かを判断する(ステップS41)。
【0071】
次に、制御部Cntは、初期化完了フラグがオンしていると判断すると(ステップS41:Yes)、ロータリーバルブRVの開度を変化させず、初期化完了フラグがオフしていると判断すると(ステップS41:No)、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させる(ステップS42)。
【0072】
次に、制御部Cntは、全閉フラグがオンしていると判断すると(ステップS43:Yes)、ロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定し(ステップS44)、全閉フラグがオフしていると判断すると(ステップS43:No)、ロータリーバルブRVの初期開度として100%を設定する(ステップS45)。
【0073】
次に、制御部Cntは、ロータリーバルブRVに異常が発生していると判断すると(ステップS46:Yes)、異常通知を車両側制御部Cntvに送信した後(ステップS47)、起動処理を中止する。
【0074】
一方、制御部Cntは、ロータリーバルブRVに異常が発生していないと判断すると(ステップS46:No)、起動処理から通常発電制御処理に移行する(ステップS48)。
【0075】
なお、
図5に示すフローチャートでは、ステップS41~ステップS45からなる初期開度設定処理が実行された後に、ステップS46~ステップS47からなる異常判断処理が実行される構成であるが、初期開度設定処理と異常判断処理が並行して実行されてもよい。
【0076】
このように、第2実施例の燃料電池モジュールFCMは、燃料電池モジュールFCMの終了時、ロータリーバルブRVの開度を0%または100%に変化させるとともに初期化完了フラグをオンし、燃料電池モジュールFCMの起動時、初期化完了フラグがオンである場合、ロータリーバルブRVの初期開度として0%または100%を設定する構成である。
【0077】
これにより、燃料電池モジュールFCMの終了時においてロータリーバルブRVの開度を0%または100%に変化させることが可能な場合、燃料電池モジュールFCMの起動時においてロータリーバルブRVの初期開度の設定のためにロータリーバルブRVを0%または100%に変化させる必要がないため、起動時間の短縮を図ることができる。
【0078】
また、第2実施例の燃料電池モジュールFCMでは、燃料電池モジュールFCMの終了時、温度tが閾値th以下である場合、ロータリーバルブRVの開度を0%に変化させるとともに全閉フラグをオンし、温度tが閾値thより大きい場合、ロータリーバルブRVの開度を100%に変化させるとともに全閉フラグをオフし、燃料電池モジュールFCMの終了時、全閉フラグがオンである場合、初期開度として0%を設定し、全閉フラグがオフである場合、初期開度として100%を設定する構成である。
【0079】
これにより、燃料電池モジュールFCMの終了時から次回の起動時までの時間が比較的短く、燃料電池FCの温度変化が比較的小さい場合、燃料電池モジュールFCMの起動時において、温度tが閾値th以下のままであるときに、すなわち、燃料電池FCの温度が比較的低いときにロータリーバルブRVの初期開度として0%を設定することができるとともに、温度tが閾値thより大きいままであるときに、すなわち、燃料電池FCの温度が比較的高いときにロータリーバルブRVの初期開度として100%を設定することができるため、起動処理から発電制御処理への移行時においてロータリーバルブRVの開度の調整時間の短縮を図ることができる。
【0080】
なお、実施例1や実施例2により開度が制御されるバルブは、エア調圧バルブARVやエアシャットバルブなどロータリーバルブRVに限定されない。
【0081】
また、本発明は、以上の実施の形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
FCM 燃料電池モジュール
Lo 負荷
FC 燃料電池
T 燃料タンク
INJ インジェクタ
ACP エアコンプレッサ
ARV エア調圧バルブ
ASV エアシャットバルブ
R ラジエタ
WP ウォータポンプ
IC インタークーラ
CNV DCDCコンバータ
B 蓄電装置
St 温度検出部
Sif 電流センサ
Svf 電圧センサ
Sib 電流センサ
Svb 電圧センサ
Str 記憶部
Cnt 制御部
Ve 車両
Cntv 車両側制御部