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特開2024-158263作業支援装置、作業支援方法および作業支援プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158263
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】作業支援装置、作業支援方法および作業支援プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0635 20230101AFI20241031BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
G06Q10/0635
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073319
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 元彦
(72)【発明者】
【氏名】植村 英生
(72)【発明者】
【氏名】大石 憲児
(72)【発明者】
【氏名】坪田 孝志
【テーマコード(参考)】
3C100
5L049
【Fターム(参考)】
3C100AA22
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA59
3C100AA62
3C100BB13
3C100BB17
3C100BB29
3C100BB33
3C100CC02
5L049CC03
(57)【要約】
【課題】作業員の状態に応じて適切な作業環境を提示すること。
【解決手段】作業支援サーバ10は、作業支援装置であって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得し、複数の作業員の生体データに基づいて複数の作業員それぞれの状態を推定し、複数の作業員それぞれの状態を分析し、分析結果に基づき、作業支援装置による共通の作業への介入の要否を決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業支援装置であって、
プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得部と、
前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析部と、
前記分析部による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定部と、
を備える作業支援装置。
【請求項2】
前記共通の作業が実行される前記プラントに対する介入を実行する実行部、
をさらに備え、
前記決定部は、
前記分析部によって作業を行う作業員の異常が検出された場合には、前記プラントに対する介入手段を決定し、
前記実行部は、
前記介入手段に基づいて前記プラントに対する介入を実行する、
請求項1に記載の作業支援装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記プラントに設置されるプラント機器から収集される操業データと、前記複数の作業員それぞれが作業を行う前記プラントの環境に関する作業環境データと、前記複数の作業員それぞれが行う作業に関する作業内容データとをさらに取得し、
前記分析部は、
前記複数の作業員それぞれが装着する機器から収集された前記生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態として肉体的状態または精神的状態を推定し、共通する作業を行う前記複数の作業員のうち所定の状態を示す作業員の割合が閾値を超過した場合には前記異常を検出し、
前記決定部は、
前記複数の作業員それぞれの状態と前記操業データと前記作業環境データと前記作業内容データとを用いて、前記プラントに対する介入の履歴を示す対応関係データを参照することによって、前記介入手段を決定し、
前記実行部は、
決定された前記介入手段にしたがって、所定の作業員もしくは前記所定の作業員の関係者に対する通知、または前記プラント機器に対する制御を実行する、
請求項2に記載の作業支援装置。
【請求項4】
前記作業環境データと前記作業内容データとを用いて前記複数の作業員それぞれの作業工程を特定し、共通する前記作業工程ごとに前記複数の作業員を分類する分類部、
をさらに備え、
前記分析部は、
前記分類部による分類結果に基づき、共通する作業を行う前記複数の作業員それぞれの状態を分析する、
請求項3に記載の作業支援装置。
【請求項5】
前記生体データ、前記操業データ、前記作業環境データまたは前記作業内容データを含む時系列データの入力に応じて前記プラントの評価指標を出力する機械学習モデルを訓練する訓練部と、
前記介入の実行によって変更された前記生体データ、前記操業データ、前記作業環境データまたは前記作業内容データを、訓練済みである前記機械学習モデルに入力して得られる結果に基づき、前記介入を実行した時点からの前記評価指標の時間発展を予測する予測部と、
をさらに備える請求項3または4に記載の作業支援装置。
【請求項6】
前記決定部は、
前記対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、前記予測部によって予測された前記時間発展を用いて前記介入手段を決定する、
請求項5に記載の作業支援装置。
【請求項7】
前記決定部は、
前記対応関係データに含まれる複数の介入の履歴のうち、前記予測部によって予測された前記評価指標の時間発展に基づく介入の履歴から前記介入手段を決定する、
請求項5に記載の作業支援装置。
【請求項8】
前記決定部は、
前記対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、指定を受け付けた前記介入手段を決定する、
請求項3または4に記載の作業支援装置。
【請求項9】
作業支援装置によって実行される作業支援方法であって、
プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得工程と、
前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析工程と、
前記分析工程による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定工程と、
を含む作業支援方法。
【請求項10】
作業支援装置に処理を実行させる作業支援プログラムであって、
プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得手順と、
前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析手順と、
前記分析手順による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定手順と、
を実行させる作業支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業支援装置、作業支援方法および作業支援プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラントにおいて、作業員の生体データに基づく作業員へのフィードバック、プラントの操業データに基づくプラントに設置される装置や機器(適宜、「プラント機器」)へのフィードバックを実行する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6192885号公報
【特許文献2】特開2020-161187号公報
【特許文献3】特開2020-099019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、作業員の身体的、精神的な状態に応じて、より適切な作業環境を提示することは難しい。例えば、従来技術では、プラント機器の中には、その操作に危険が伴う場合や取扱いに十分な集中力を要するものがあるにも関わらず、作業員の操作対象は時間的に不変である。すなわち、従来技術では、作業員の状態に応じて、操作環境が作業員に適したように変更されることはない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、作業員の状態に応じて適切な作業環境を提示することができることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業支援装置であって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得部と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析部と、前記分析部による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定部と、を備える作業支援装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、作業支援装置によって実行される作業支援方法であって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得工程と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析工程と、前記分析工程による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定工程と、を含む作業支援方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、作業支援装置に処理を実行させる作業支援プログラムであって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得手順と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析手順と、前記分析手順による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定手順と、を実行させる作業支援プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業員の状態に応じて適切な作業環境を提示することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業支援システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る各装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る作業支援サーバの作業環境データ記憶部の一例を示す図である。
図4】実施形態に係る作業支援サーバの作業内容データ記憶部の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る作業支援サーバの生体データ記憶部の一例を示す図である。
図6】実施形態に係る作業支援サーバの操業データ記憶部の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る作業支援サーバの集合データ記憶部の一例を示す図である。
図8】実施形態に係る作業支援サーバの対応関係データ記憶部の一例を示す図である。
図9】実施形態に係る作業支援サーバの介入データ記憶部の一例を示す図である。
図10】実施形態に係る作業支援サーバの介入データ記憶部の一例を示す図である。
図11】実施形態に係る状態推定処理の具体例1を示す図である。
図12】実施形態に係る状態推定処理の具体例2を示す図である。
図13】実施形態に係る表示画面の具体例を示す図である。
図14】実施形態に係る作業支援処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。
図15】実施形態に係るデータ取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16】実施形態に係る作業員分類処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図17】実施形態に係るデータ分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図18】実施形態に係る介入決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図19】実施形態に係る介入実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図20】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る作業支援装置、作業支援方法および作業支援プログラムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、実施形態に係る作業支援システムの構成、各装置の構成、処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の効果を説明する。
【0013】
〔1.作業支援システム100の構成〕
図1を用いて、実施形態に係る作業支援システム100の構成を詳細に説明する。図1は、実施形態に係る作業支援システム100の構成例を示す図である。以下に、作業支援システム100全体の構成例、作業支援システム100の処理、参考技術の問題点を順に説明し、最後に作業支援システム100の効果について説明する。なお、実施形態では、プラントにおける作業支援処理を一例にして説明するが、機器や利用分野を限定するものではない。
【0014】
(1-1.作業支援システム100全体の構成例)
作業支援システム100は、作業支援装置である作業支援サーバ10、測定機器20、管理機器30、プラントの作業員W(WA、WB、WC、WD)が装着するウェアラブル機器40(40A、40B、40C、40D)およびプラント機器50(50A、50B、50C)を有する。ここで、作業支援サーバ10と、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50とは、図示しない所定の通信網を介して、有線または無線により通信可能に接続される。また、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50は、プラントに設置される。
【0015】
図1に示した作業支援システム100には、複数台の作業支援サーバ10、複数台の測定機器20または複数台の管理機器30が含まれてもよい。また、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50のうち1つ以上が統合された構成であってもよい。
【0016】
(1-2.作業支援システム100全体の処理)
上記のような作業支援システム100全体の処理について説明する。なお、下記のステップS1~S8は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS1~S8のうち、省略される処理があってもよい。
【0017】
(1-2-1.作業環境データ取得処理)
作業支援サーバ10は、プラントに設置された測定機器20から作業環境データを取得する(ステップS1)。例えば、作業支援サーバ10は、温度計、湿度計等の測定機器20から、プラント内の区域ごとの気温、湿度、音、明るさ、臭気等の作業環境データを取得する。
【0018】
(1-2-2.作業内容データ取得処理)
作業支援サーバ10は、管理機器30から作業内容データを取得する(ステップS2)。例えば、作業支援サーバ10は、PCやカメラ等の管理機器30から、作業員Wごとの勤務表、作業員ID、作業場所、操作機器、作業員Wの視線カメラの映像等の作業内容データを取得する。
【0019】
(1-2-3.生体データ取得処理)
作業支援サーバ10は、作業員Wが装着するウェアラブル機器40から生体データを取得する(ステップS3)。例えば、作業支援サーバ10は、スマートウォッチ等のウェアラブル機器40から、作業員Wごとの脈拍、心拍、皮膚電位、筋電位、眼電位、脳波、脳血流、表情、声色、血糖値等の生体データを取得する。
【0020】
(1-2-4.操業データ取得処理)
作業支援サーバ10は、プラントに設置されたプラント機器50から操業データを取得する(ステップS4)。例えば、作業支援サーバ10は、タンク、パイプ、炉等のプラント機器50から、流体や固体の圧力、流速、温度、液位等のプラントの制御に使用される物理的な操業データを取得する。
【0021】
(1-2-5.作業員分類処理)
作業支援サーバ10は、共通の作業を行う作業員Wを分類する(ステップS5)。例えば、作業支援サーバ10は、作業環境データや作業内容データから、作業員Wごとの作業工程を特定し、共通の作業工程ごとに作業員Wを分類する。図1の例では、作業支援サーバ10は、作業員WA、作業員WCおよび作業員WDを作業工程1に分類し、作業員WBを作業工程2に分類する。
【0022】
(1-2-6.データ分析処理)
作業支援サーバ10は、取得したデータを分析する(ステップS6)。例えば、作業支援サーバ10は、生体データから作業員Wごとの状態を推定し、共通の作業工程ごとに作業員Wの異常を検出する。図1の例では、作業支援サーバ10は、作業工程1に分類される作業員WA、作業員WCおよび作業員WDがすべて「焦り」の状態であった場合、作業工程1の作業員Wの異常を検出する。
【0023】
(1-2-7.介入決定処理)
作業支援サーバ10は、プラントへの介入を決定する(ステップS7)。例えば、作業支援サーバ10は、作業員Wの異常を検出した場合には、作業員Wに対して作業指示提示を行う通知や作業制限を行う通知による介入を決定する。このとき、作業支援サーバ10は、当該介入を実行した場合のプロセス値等の評価指標の時間発展を予測し、介入の要否や介入手段を決定することもできる。
【0024】
(1-2-8.介入実行処理)
作業支援サーバ10は、プラントへの介入を実行する(ステップS8)。例えば、作業支援サーバ10は、作業員Wのウェアラブル機器40に対して通知を実行したり、プラント機器50に対して安全側にプロセス値を変更する制御を実行したりする。図1の例では、作業支援サーバ10は、「焦り」の度合が低い作業員WAおよび作業員WCに対しては作業指示提示の通知、「焦り」の度合が高い作業員WDに対しては作業制限の通知による介入を決定するとともに、作業員WDが操作するプラント機器50Aへの制御を実行する。
【0025】
(1-3.参考技術の作業支援処理の問題点)
特許文献1~3に記載された参考技術としての作業支援処理の問題点について説明する。
【0026】
(1-3-1.特許文献1の作業支援処理の問題点)
特許文献1に記載された作業支援処理では、行動情報と生体情報を結び付けて、作業員の負荷の大小を把握し、警告する技術を提案している。しかしながら、上記の作業支援処理では、計測した生体情報は異常検出と警告表示に利用される限りであり、計測した生体情報をもとに作業員の操作環境を適切な方向に変更することができないという問題点がある。
【0027】
(1-3-2.特許文献2の作業支援処理の問題点)
特許文献2に記載された作業支援処理では、生体情報を用いて「健康度の維持または向上に寄与する可能性のある予防的介入行動」を行う技術を提案している。しかしながら、上記の作業支援処理では、生体情報を用いたフィードバックの対象がヒトであり、装置や機器へのフィードバックをすることができないという問題点がある。
【0028】
(1-3-3.特許文献3の作業支援処理の問題点)
特許文献3に記載された作業支援処理では、作業員の生体情報とその作業環境および火力発電所等の施設での操業データに基づいて、制御モードを変更する制御モード変更部を備える機器制御装置を提案している。しかしながら、上記の作業支援処理では、生体データは、膨大な説明変数を持つヒトを対象とするために、明確に特徴づけられた物理量の測定と比べて揺らぎが大きく、測定精度は劣る。そのため、上記の作業支援処理では、生体データに基づくフィードバックが誤っていた場合に多大な損失を生じうる場面において、生体データを判断材料にすることが躊躇されるという実運用面での問題点がある。
【0029】
(1-4.作業支援システム100の効果)
上述した参考技術の作業支援処理では、作業員の操作対象は時間的に不変であり、作業員の状態に応じて、操作環境が作業員に適したように変更されることはない。したがって、参考技術の作業支援処理では、作業員の身体的や精神的な状態に応じて、より適切な操作環境(作業環境)が提示される仕組みは提供されてこなかった。しかし、機器や装置の中には、その操作に危険が伴う場合や、取扱いに十分な集中力を要するものがある。そのため、利用者の集中度合いや注意度に応じて機器や装置の操作性を変えることによって、安全かつ快適な機器や装置の利用が可能になることが考えられる。例えば、利用者が注意力を欠いている場合に、不可逆的な操作を制限することや、機器の動作速度を低下させ事故等の危険な状況が生じないようにすること等が挙げられる。
【0030】
作業支援システム100では、作業員Wの身体的、精神的な状態を種々のウェアラブル機器40を用いて計測した生体データから推定することにより、即時的なヒトへのフィードバック、あるいは機器へのフィードバックという介入を行うことを提案する。
【0031】
作業支援システム100では、ウェアラブル機器40での測定対象としては、脈拍、心拍、皮膚電位、筋電位、眼電位、脳波、脳血流、表情、声色、血糖値等が挙げられるが、これに限らず身体的や精神的な状態を推定するためのあらゆる生体データを含むものとする。
【0032】
作業支援システム100では、操作環境の変更の例としては、以下が挙げられるが、これらは一例であり、作業環境の変更が以下の例に限られるわけではない。例えば、ロボットアームの操縦等の調整に注意力を要する操作の動作速度を遅くする、間違った判断により多大な損失をもたらす操作を制限あるいは複数回認証される仕様に変更する、ライン作業等を行う作業員の負荷を一時的に低減しその時点の作業員が処理可能な課題量に変更する。あるいは、例えば、作業員Wが集中している場合には通常の操作画面にしておき、注意散漫であるときには、不可逆的な操作を制限することや、操作画面をより単純なものに変更する。または、作業支援システム100では、これらの変更によって、正しい操作を誘導し、誤った操作を低減できることが期待される。
【0033】
上記の作業支援システム100では、人間の操作を必要とするあらゆる機器や装置に実装することができる。特に、作業員Wの1つのミスが、大きな損失につながるプラント等で作業支援システム100を導入することができる。
【0034】
上記の作業支援システム100に類する提案、つまり、操業データと生体データを用いたヒトへのフィードバック(作業支援やアラート等)、あるいは装置やシステムへのフィードバックにより最適な制御を実施することが提案されている。しかし、物理的な計測量に比べて、生体データはその曖昧さのために、誤った判断が重要な損失をもたらしうる場面では用いられていないのが現状である。つまり、生体データを用いた判断の確からしさを向上することが、上記のような場面で生体データを利活用する上で必要である。
【0035】
そこで、作業支援システム100では、操業データと生体データを用いた判断の確からしさを向上するために、以下の手法を提案する。第1に、作業支援システム100では、操業データと、同様の作業を行う複数の作業員Wの生体データを合議することによって、作業員Wの内面、および作業員Wが直面する環境を確度高く推定し、異常状態であると判断された場合には、ヒトへの適切なフィードバック、または装置やシステムへの適切なフィードバックを行う。第2に、作業支援システム100では、操業データと生体データとで決まる状態を用いた判断結果に対して、シミュレーションを行い(デジタルツイン、あるいは、過去の履歴から上記状態からの時間発展を予測)、操業状態をよい方向に遷移させる判断のみを採用する。第3に、作業支援システム100では、生体データを複数組み合わせて予測の精度を高める。上述してきたように、作業支援システム100では、作業員Wの身体的、精神的な状態に応じて、より適切な作業環境を提示することが可能となる。
【0036】
〔2.作業支援システム100の各装置の構成〕
図2を用いて、図1に示した作業支援システム100が有する各装置の機能構成について説明する。図2は、実施形態に係る各装置の構成例を示すブロック図である。以下では、実施形態に係る作業支援システム100全体の構成例を説明した上で、実施形態に係る作業支援サーバ10、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50の構成例について詳細に説明する。
【0037】
(2-1.作業支援システム100全体の構成例)
図2に示すように、作業支援システム100は、作業支援サーバ10、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50を有する。作業支援サーバ10は、測定機器20、管理機器30、ウェアラブル機器40およびプラント機器50と、所定の通信網によって通信可能に接続されている。
【0038】
(2-2.作業支援サーバ10の構成例)
まず、図2を用いて、作業支援装置である作業支援サーバ10の構成例について説明する。作業支援サーバ10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0039】
(2-2-1.入力部11)
入力部11は、当該作業支援サーバ10への各種情報の入力を司る。例えば、入力部11は、マウスやキーボード等で実現され、当該作業支援サーバ10への設定情報等の入力を受け付ける。
【0040】
(2-2-2.出力部12)
出力部12は、当該作業支援サーバ10からの各種情報の表示を司る。例えば、出力部12は、ディスプレイ等で実現され、当該作業支援サーバ10に記憶された設定情報等を表示する。
【0041】
(2-2-3.通信部13)
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、ルータ等を介して、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0042】
(2-2-4.記憶部14)
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部14は、作業環境データ記憶部14a、作業内容データ記憶部14b、生体データ記憶部14c、操業データ記憶部14d、集合データ記憶部14e、対応関係データ記憶部14f、介入データ記憶部14gおよび予測モデル14hを有する。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、図2の例では、記憶部14は、作業支援サーバ10の内部に設置されているが、作業支援サーバ10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0043】
(2-2-4-1.作業環境データ記憶部14a)
作業環境データ記憶部14aは、測定機器20から送信された作業環境データを記憶する。ここで、図3を用いて、作業環境データ記憶部14aが記憶するデータの一例を説明する。図3は、実施形態に係る作業支援サーバ10の作業環境データ記憶部14aの一例を示す図である。図3の例において、作業環境データ記憶部14aは、「区域」、「気温」、「湿度」、「音」、「明るさ」、「臭気」といった項目を有する。
【0044】
「区域」は、プラント内の作業を行う場所を識別するための識別情報を示し、例えばプラントの区画番号や作業工程の識別番号である。「気温」は、プラントの区域ごとの気温を示し、例えば摂氏℃で表わされる。「湿度」は、プラントの区域ごとの湿度を示し、例えば百分率%で表わされる。「音」は、プラントの区域ごとの音の大きさを示し、例えばデシベルdBで表わされる。「明るさ」は、プラントの区域ごとの明るさを示し、例えばルクスlxで表わされる。「臭気」は、プラントの区域ごとの臭いの強さを示し、例えば臭気濃度ppmで表わされる。
【0045】
すなわち、図3では、「区域#1」によって識別されるプラントの区域について、気温が「気温#1」、湿度が「湿度#1」、音が「音#1」、明るさが「明るさ#1」、臭気が「臭気#1」であって、「区域#2」によって識別されるプラントの区域について、気温が「気温#2」、湿度が「湿度#2」、音が「音#2」、明るさが「明るさ#2」、臭気が「臭気#2」であって、「区域#3」によって識別されるプラントの区域について、気温が「気温#3」、湿度が「湿度#3」、音が「音#3」、明るさが「明るさ#3」、臭気が「臭気#3」である例を示す。
【0046】
(2-2-4-2.作業内容データ記憶部14b)
作業内容データ記憶部14bは、管理機器30から送信された作業内容データを記憶する。ここで、図4を用いて、作業内容データ記憶部14bが記憶するデータの一例を説明する。図4は、実施形態に係る作業支援サーバ10の作業内容データ記憶部14bの一例を示す図である。図4の例において、作業内容データ記憶部14bは、「作業員」、「勤務時間」、「作業場所」、「操作機器」、「映像データ」といった項目を有する。
【0047】
「作業員」は、プラント内の作業を行う作業員Wを識別するための識別情報を示し、例えば作業員Wの識別番号である。「勤務時間」は、作業員Wの作業に従事する時間を示し、例えば始業時刻、休憩開始時刻、休憩終了時刻、終業時刻である。「作業場所」は、作業員Wの作業に従事する作業工程を示し、例えば作業工程の識別番号である。「操作機器」は、作業員Wの作業に従事する際に操作する機器を示し、例えばプラント機器50の識別番号である。「映像データ」は、作業員Wの作業状況を撮影した動画像データを示し、例えば作業員Wに装着されたカメラやプラント内に設置されたカメラによって撮影された動画像データである。
【0048】
すなわち、図4では、「作業員A」によって識別される作業員WAについて、勤務時間が「勤務時間1」、作業場所が「作業場所1」、操作機器が「操作機器1」、映像データが「映像データA」であって、「作業員B」によって識別される作業員WBについて、勤務時間が「勤務時間2」、作業場所が「作業場所2」、操作機器が「操作機器2」、映像データが「映像データB」であって、「作業員C」によって識別される作業員WCについて、勤務時間が「勤務時間1」、作業場所が「作業場所1」、操作機器が「操作機器1」、映像データが「映像データC」であって、「作業員D」によって識別される作業員WDについて、勤務時間が「勤務時間1」、作業場所が「作業場所1」、操作機器が「操作機器1」、映像データが「映像データD」である例を示す。
【0049】
(2-2-4-3.生体データ記憶部14c)
生体データ記憶部14cは、ウェアラブル機器40から送信された生体データを記憶する。ここで、図5を用いて、生体データ記憶部14cが記憶するデータの一例を説明する。図5は、実施形態に係る作業支援サーバ10の生体データ記憶部14cの一例を示す図である。図5の例において、生体データ記憶部14cは、「作業員」、「脈拍」、「心拍」、「皮膚電位」、「筋電位」、「眼電位」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」、「血糖値」といった項目を有する。
【0050】
「作業員」は、プラント内の作業を行う作業員Wを識別するための識別情報を示し、例えば作業員Wの識別番号である。「脈拍」は、作業員Wの作業に従事する際の脈拍を示し、例えば1分間当たりの脈拍数である。「心拍」は、作業員Wの作業に従事する際の心拍を示し、例えば1分間当たりの心拍数である。「皮膚電位」は、作業員Wの作業に従事する際の皮膚電位を示し、例えば作業中の皮膚電位図データである。「筋電位」は、作業員Wの作業に従事する際の筋電位を示し、例えば作業中の筋電位図データである。「眼電位」は、作業員Wの作業に従事する際の眼電位を示し、例えば作業中の眼電位図データである。「脳波」は、作業員Wの作業に従事する際の脳波を示し、例えば作業中の脳波図データである。「脳血流」は、作業員Wの作業に従事する際の脳血流を示し、例えば1分間当たりの脳血流の量である。「表情」は、作業員Wの作業に従事する際の顔の表情を示し、例えば作業員Wの顔の画像データである。「声色」は、作業員Wの作業に従事する際の声色を示し、例えば作業員Wの声の音声データである。「血糖値」は、作業員Wの作業に従事する際の血糖値を示し、例えば作業員Wの血液中のグルコース濃度である。
【0051】
すなわち、図5では、「作業員A」によって識別される作業員WAについて、脈拍が「脈拍A」、心拍が「心拍A」、皮膚電位が「皮膚電位A」、筋電位が「筋電位A」、眼電位が「眼電位A」、脳波が「脳波A」、脳血流が「脳血流A」、表情が「表情A」、声色が「声色A」、血糖値が「血糖値A」であって、「作業員B」によって識別される作業員WBについて、脈拍が「脈拍B」、心拍が「心拍B」、皮膚電位が「皮膚電位B」、筋電位が「筋電位B」、眼電位が「眼電位B」、脳波が「脳波B」、脳血流が「脳血流B」、表情が「表情B」、声色が「声色B」、血糖値が「血糖値B」であって、「作業員C」によって識別される作業員WCについて、脈拍が「脈拍C」、心拍が「心拍C」、皮膚電位が「皮膚電位C」、筋電位が「筋電位C」、眼電位が「眼電位C」、脳波が「脳波C」、脳血流が「脳血流C」、表情が「表情C」、声色が「声色C」、血糖値が「血糖値C」であって、「作業員D」によって識別される作業員WDについて、脈拍が「脈拍D」、心拍が「心拍D」、皮膚電位が「皮膚電位D」、筋電位が「筋電位D」、眼電位が「眼電位D」、脳波が「脳波D」、脳血流が「脳血流D」、表情が「表情D」、声色が「声色D」、血糖値が「血糖値D」である例を示す。
【0052】
(2-2-4-4.操業データ記憶部14d)
操業データ記憶部14dは、プラント機器50から送信された操業データを記憶する。ここで、図6を用いて、操業データ記憶部14dが記憶するデータの一例を説明する。図6は、実施形態に係る作業支援サーバ10の操業データ記憶部14dの一例を示す図である。図6の例において、操業データ記憶部14dは、「プラント機器」、「圧力」、「流速」、「温度」、「液位」といった項目を有する。
【0053】
「プラント機器」は、プラントに設置されたプラント機器50を識別するための識別情報を示し、例えばプラント機器50の識別番号である。「圧力」は、圧力計等のプラント機器50から送信された液体や気体の圧力データを示し、例えばパスカルPaで表わされる。「流速」は、流速計等のプラント機器50から送信された液体や気体の流速データを示し、例えばメートル毎秒m/sで表わされる。「温度」は、温度計等のプラント機器50から送信された液体や気体の温度データを示し、例えば摂氏℃で表わされる。「液位」は、液位計等のプラント機器50から送信された液体の境界面の高さのデータを示し、例えばメートルmで表わされる。
【0054】
すなわち、図6では、「プラント機器#1」によって識別されるプラント機器50について、圧力が「圧力#1」、流速が「流速#1」、温度が「温度#1」、液位が「液位#1」であって、「プラント機器#2」によって識別されるプラント機器50について、圧力が「圧力#2」、流速が「流速#2」、温度が「温度#2」、液位が「液位#2」であって、「プラント機器#3」によって識別されるプラント機器50について、圧力が「圧力#3」、流速が「流速#3」、温度が「温度#3」、液位が「液位#3」である例を示す。
【0055】
(2-2-4-5.集合データ記憶部14e)
集合データ記憶部14eは、分類部15bによって生成された集合データを記憶する。ここで、図7を用いて、集合データ記憶部14eが記憶するデータの一例を説明する。図7は、実施形態に係る作業支援サーバ10の集合データ記憶部14eの一例を示す図である。図7の例において、集合データ記憶部14eは、「時刻」、「工程」、「作業員」、「映像データ」といった項目を有する。
【0056】
「時刻」は、集合として分類される作業員Wの作業に従事している時間を示し、例えば時分で表わされる。「工程」は、集合として分類される作業員Wの作業に従事する作業工程を示し、例えば作業工程の識別番号である。「作業員」は、集合として分類される作業員Wを識別するための識別情報を示し、例えば作業員Wの識別番号である。「映像データ」は、集合として分類される作業員Wの作業状況を撮影した動画像データを示し、例えば作業員Wに装着されたカメラやプラント内に設置されたカメラによって撮影された動画像データである。
【0057】
すなわち、図7では、「時刻T」において、「工程1」によって識別される作業工程について、「作業員A」「映像データA」、「作業員C」「映像データC」、「作業員D」「映像データD」と分類され、「工程2」によって識別される作業工程について、「作業員B」「映像データB」と分類されるデータ例を示す。
【0058】
(2-2-4-6.対応関係データ記憶部14f)
対応関係データ記憶部14fは、決定部15dによって参照される対応関係データを記憶する。ここで、図8を用いて、対応関係データ記憶部14fが記憶するデータの一例を説明する。図8は、実施形態に係る作業支援サーバ10の対応関係データ記憶部14fの一例を示す図である。図8の例において、対応関係データ記憶部14fは、「工程」、「生体データ解釈値」、「当事者介入」、「関係者介入」、「機器介入」といった項目を有する。
【0059】
「工程」は、作業員Wの作業に従事する作業工程を示し、例えば作業工程の識別番号である。「生体データ解釈値」は、作業員Wの肉体的、精神的な状態を示し、例えば状態の特徴、状態の数値等で表わされる。「当事者介入」は、異常が検出された当事者である作業員W1への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1に送信する通知である。「関係者介入」は、異常が検出された当事者以外の作業員W2への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1の管理者や、当事者である作業員W1と共通の作業工程に従事している作業員W2に送信する通知である。「機器介入」は、異常が検出された当事者である作業員W1が関与するプラント機器50への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1が操作しているプラント機器50への制御手段である。
【0060】
すなわち、図8では、「工程1」によって識別される作業工程について、生体データ解釈値「焦り1~3」の場合には、当事者介入「作業指示提示」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」の介入手段が選択され、生体データ解釈値「焦り4~6」の場合には、当事者介入「作業制限」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」の介入手段が選択され、生体データ解釈値「眠気1~3」の場合には、当事者介入「アラーム通知」、関係者介入「管理者に連絡」の介入手段が選択され、生体データ解釈値「眠気4~6」の場合には、当事者介入「作業制限」、関係者介入「管理者に連絡」の介入手段が選択されるデータ例を示す。
【0061】
(2-2-4-7.介入データ記憶部14g)
介入データ記憶部14gは、決定部15dによって生成される介入データを記憶する。ここで、図9および図10を用いて、介入データ記憶部14gが記憶するデータの一例を説明する。図9および図10は、実施形態に係る作業支援サーバ10の介入データ記憶部14gの一例を示す図である。図9および図10は、介入データ記憶部14gは、「作業員」、「工程」、「時刻」、「操業データ」、「生体データ解釈値」、「当事者介入」、「関係者介入」、「機器介入」といった項目を有する。
【0062】
「作業員」は、介入する作業員Wを識別するための識別情報を示し、例えば作業員Wの識別番号である。「工程」は、介入する作業員Wの作業に従事する作業工程を示し、例えば作業工程の識別番号である。「時刻」は、介入する作業員Wの作業に従事している時間を示し、例えば時分で表わされる。「操業データ」は、介入する作業員Wの作業に関連する操業データを示し、例えば作業員Wが操作するプラント機器50の計測値である。「生体データ解釈値」は、推定された作業員Wの肉体的、精神的な状態を示し、例えば状態の特徴、状態の数値等で表わされる。「当事者介入」は、異常が検出された当事者である作業員W1への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1に送信する通知である。「関係者介入」は、異常が検出された当事者以外の作業員W2への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1の管理者や、当事者である作業員W1と共通の作業工程に従事している作業員W2に送信する通知である。「機器介入」は、異常が検出された当事者である作業員W1が関与するプラント機器50への介入手段を示し、例えば当事者である作業員W1が操作しているプラント機器50への制御手段である。
【0063】
すなわち、図9では、「作業員A」によって識別される作業員WA(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「焦り2」であるので、当事者介入「作業指示提示」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」の介入が決定され、「作業員B」によって識別される作業員WB(工程「工程2」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ2」)について、生体データ解釈値「眠気3」であるので、当事者介入「アラーム通知」、関係者介入「管理者に連絡」の介入が決定され、「作業員C」によって識別される作業員WC(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「焦り1」であるので、当事者介入「作業指示提示」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」の介入が決定され、「作業員D」によって識別される作業員WD(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「焦り4」、当事者介入「作業制限」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」の介入が決定されるデータ例を示す。
【0064】
また、図10では、「作業員A」によって識別される作業員WA(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「平常」であるので介入が決定されず、「作業員B」によって識別される作業員WB(工程「工程2」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ2」)について、生体データ解釈値「平常」であるので介入が決定されず、「作業員C」によって識別される作業員WC(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「平常」であるので介入が決定されず、「作業員D」によって識別される作業員WD(工程「工程1」、時刻「時刻T」、操業データ「操業データ1」)について、生体データ解釈値「焦り4」であるので、当事者介入「アラーム通知」、関係者介入「作業員A、Bに連絡・支援依頼」の介入が決定されるデータ例を示す。
【0065】
(2-2-4-8.予測モデル14h)
予測モデル14hは、生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを含む時系列データの入力に応じてプラントの評価指標を出力する機械学習モデルである。例えば、予測モデル14hは、物理モデル等の決定論モデル、深層学習等を実行する統計的なモデルである。
【0066】
(2-2-5.制御部15)
制御部15は、当該作業支援サーバ10全体の制御を司る。制御部15は、取得部15a、分類部15b、分析部15c、決定部15d、実行部15e、訓練部15f、予測部15gおよび表示部15hを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0067】
(2-2-5-1.取得部15a)
取得部15aは、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員Wの生体データを取得する。例えば、取得部15aは、複数の作業員W(WA、WB、WC、WD)が装着するウェアラブル機器40(40A、40B、40C、40D)から送信された、脈拍、心拍、皮膚電位、筋電位、眼電位、脳波、脳血流、表情、声色、血糖値等の生体データを取得する。なお、取得部15aは、取得した生体データを生体データ記憶部14cに格納する。
【0068】
上記の生体データ取得処理では、1つ以上のウェアラブル機器40を用いて、作業員Wの生体データを取得することによって、作業員Wの状態をリアルタイムに取得することができる。このとき、取得した生体データは人間にとって解釈が容易な表現に加工され、人あるいは装置へのフィードバックのための判断材料となる。
【0069】
また、取得部15aは、プラントに設置されるプラント機器50から収集される操業データを取得する。例えば、取得部15aは、タンク、パイプ、炉等に設置された複数のプラント機器50(50A、50B、50C)から送信された、流体や固体の圧力、流速、温度、液位等の操業データを取得する。なお、取得部15aは、取得した操業データを操業データ記憶部14dに格納する。
【0070】
また、取得部15aは、複数の作業員それぞれが作業を行うプラントの環境に関する作業環境データを取得する。例えば、取得部15aは、プラントに設置された測定機器20から送信された、プラント内の気温、湿度、音、明るさ、臭気等の作業環境データを取得する。また、取得部15aは、プラント外部の作業環境データとして、気象情報等を取得してもよい。なお、取得部15aは、取得した作業環境データを作業環境データ記憶部14aに格納する。
【0071】
また、取得部15aは、複数の作業員それぞれが行う作業に関する作業内容データを取得する。例えば、取得部15aは、プラントに設置された管理機器30から送信された、作業員Wの勤務時間、作業場所、操作機器、映像データ等の作業内容データを取得する。具体的な例について説明すると、取得部15aは、勤務表データが保存されたPCから作業員Wの勤務時間、作業場所、操作機器等の作業内容データを取得し、プラントに設置されたカメラや作業員Wが装着するカメラから映像データ等の作業内容データを取得する。なお、取得部15aは、取得した作業内容データを作業内容データ記憶部14bに格納する。
【0072】
(2-2-5-2.分類部15b)
分類部15bは、作業環境データと作業内容データとを用いて複数の作業員Wそれぞれの作業工程を特定し、共通する作業工程ごとに複数の作業員を分類する。例えば、分類部15bは、時刻ごとに複数の作業員W(WA、WB、WC、WD)が作業に従事している作業工程を特定し、共通する作業工程ごとに複数の作業員W(WA、WB、WC、WD)を分類し、集合データを生成する。
【0073】
具体的な例について説明すると、分類部15bは、プラントの区域、勤務時間、作業場所、操作機器、映像データ等を用いて、時刻Tにおいて、作業員WA、作業員WCおよび作業員WDが工程1の作業工程に従事し、作業員WBが工程2の作業工程に従事していることを特定し、{工程1:作業員WA、作業員WC、作業員WD}、{工程2:作業員WB}に分類した集合データを生成する。なお、分類部15bは、生成した集合データを集合データ記憶部14eに格納する。
【0074】
上記の作業員分類処理では、分類部15bは、取得部15aで取得されたデータのうち、作業員Wの作業環境データおよび作業内容データに基づいて、作業員Wの作業工程を特定する。このとき、分類部15bは、作業工程特定処理は逐一(数秒から数分程度の時間単位で)更新することができる。したがって、上記の作業員分類処理では、あらかじめ決められた作業員スケジュールを記した勤務表等に基づくデータだけでなく、リアルタイムに取得する作業員Wの視線カメラの映像や、作業員Wの操作対象等の情報によって、より現実に即した作業内容の特定が可能になる。
【0075】
(2-2-5-3.分析部15c)
分析部15cは、複数の作業員Wの生体データに基づいて複数の作業員Wそれぞれの状態を推定し、複数の作業員Wそれぞれの状態を分析する。例えば、分析部15cは、複数の作業員Wそれぞれが装着する機器から収集された生体データに基づいて複数の作業員Wそれぞれの状態として肉体的状態または精神的状態を推定し、共通する作業を行う複数の作業員Wのうち所定の状態を示す作業員Wの割合が閾値を超過した場合には作業を行う作業員Wの異常を検出する。また、分類部15bによる分類結果に基づき、共通する作業を行う複数の作業員Wそれぞれの状態を分析する。
【0076】
推定される状態の具体的な例について説明すると、分析部15cは、取得部15aによって取得された生体データについて、事象関連電位の解析、周波数解析、波形解析や、深層学習等の機械学習の解析手法を用いて分析し、作業員Wの状態の特徴付けや分類を実行する。このとき、分析部15cは、作業員Wの肉体的状態または精神的状態として、「平常」、「焦り」、「眠気」等の特徴を推定し、状態の度合を示す数値を推定する。
【0077】
上記のデータ分析処理では、分析部15cは、取得された未加工の生体データを、人間が解釈可能な形に加工することによって、判断材料として利用可能な状態とする。
【0078】
検出される異常の具体的な例について説明すると、分析部15cは、作業工程である工程1の作業に従事する作業員WA、作業員WCおよび作業員WDのうち、例えば8割以上が「焦り」の状態を推定した場合には、工程1に従事する作業員Wの異常を検出する。このとき、分析部15cは、すべての作業員Wが「焦り」の状態を推定した場合(AND条件合致)には、工程1に従事する作業員Wの異常を検出し、直ちに異常に対する介入を開始してもよい。一方、分析部15cは、一部の作業員Wのみが「焦り」の状態を推定した場合(AND条件不合致)には、工程1に従事する作業員Wの異常を検出せず、状況確認の後に介入することもできる。
【0079】
(具体例1)
ここで、図11を用いて、分析部15cが実行する状態推定処理の具体例1について説明する。図11は、実施形態に係る状態推定処理の具体例1を示す図である。なお、具体例1に示す処理は、あくまで状態推定処理の一例であり、特に限定されるものではない。
【0080】
図11の例に示すように、状態推定処理の具体例1では、分析部15cは、生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「皮膚電位(発汗)」、「筋電位」、「眼電位(瞬き頻度)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」、「血糖値」等を用いて、各生体データへの該当、非該当の2段階評価(チェックあり:該当、チェックなし:非該当)を実行することによって、作業員Wの肉体的状態または精神的状態として、「焦り」、「眠気」、「緊張」、「集中」、「リラックス(平常)」等の特徴を推定する。
【0081】
図11の例で示すように、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「皮膚電位(発汗)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」が所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「焦り」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「眼電位(瞬き頻度)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「眠気」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「皮膚電位(発汗)」、「筋電位」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「緊張」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「皮膚電位(発汗)」、「眼電位(瞬き頻度)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「集中」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「リラックス」であると推定する。
【0082】
このとき、分析部15cは、各生体データの閾値からの超過した数値をもとに、状態の度合を示す数値を推定してもよい。例えば、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「皮膚電位(発汗)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」が所定の閾値を超過し、かつ各生体データの閾値から超過した数値がすべて各生体データで設定された設定値以上だった場合には、作業員Wの状態および度合が「焦り4」であると推定する。
【0083】
(具体例2)
また、図12を用いて、分析部15cが実行する状態推定処理の具体例2について説明する。図12は、実施形態に係る状態推定処理の具体例2を示す図である。なお、具体例2に示す処理は、あくまで状態推定処理の一例であり、特に限定されるものではない。
【0084】
図12の例に示すように、状態推定処理の具体例2では、分析部15cは、生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「皮膚電位(発汗)」、「筋電位」、「眼電位(瞬き頻度)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」、「血糖値」等を用いて、各生体データへの該当2段階、非該当の3段階評価(二重丸印:顕著に該当、丸印:該当、印なし:非該当)を実行することによって、作業員Wの肉体的状態または精神的状態として、「焦り」、「眠気」、「緊張」、「集中」、「リラックス(平常)」等の特徴を推定する。
【0085】
図12の例で示すように、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「皮膚電位(発汗)」(二重丸印)、「脳波」(丸印)、「脳血流」(丸印)、「表情」(丸印)、「声色」(丸印)が所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「焦り」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「皮膚電位(発汗)」(丸印)、「眼電位(瞬き頻度)」(丸印)、「脳波」(二重丸印)、「脳血流」(丸印)、「表情」(丸印)、「声色」(丸印)それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「眠気」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」(二重丸印)、「皮膚電位(発汗)」(二重丸印)、「筋電位」(丸印)、「脳波」(丸印)、「脳血流」(丸印)、「表情」(丸印)、「声色」(丸印)それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「緊張」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」(丸印)、「皮膚電位(発汗)」(丸印)、「眼電位(瞬き頻度)」(二重丸印)、「脳波」(丸印)、「脳血流」(丸印)、「表情」(丸印)それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「集中」であると推定する。また、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」(丸印)、「脳波」(丸印)、「脳血流」(丸印)、「表情」(丸印)それぞれが所定の閾値を超過した場合には、作業員Wの状態が「リラックス」であると推定する。
【0086】
このとき、分析部15cは、各生体データの閾値からの超過した数値をもとに「顕著に該当(二重丸印)」、「該当(丸印)」を判定し、さらに二重丸印の数をもとに状態の度合を示す数値を推定してもよい。例えば、分析部15cは、作業員Wの生体データとして、「脈拍,心拍(自律神経)」、「眼電位(瞬き頻度)」、「脳波」、「脳血流」、「表情」、「声色」が所定の閾値を超過し、かつ「顕著に該当(二重丸印)」と判定された生体データが1つだった場合には、作業員Wの状態および度合が「眠気2」であると推定する。
【0087】
(2-2-5-4.決定部15d)
決定部15dは、分析部15cによる分析結果に基づき、作業支援装置である作業支援サーバ10による共通の作業への介入の要否を決定する。例えば、決定部15dは、分析部15cによって作業を行う作業員Wの異常が検出された場合には、プラントに対する介入手段を決定する。また、決定部15dは、複数の作業員Wそれぞれの状態と操業データと作業環境データと作業内容データとを用いて、プラントに対する介入の履歴を示す対応関係データを参照することによって、介入手段を決定する。なお、決定部15dは、決定した介入手段である介入データを介入データ記憶部14gに格納する。
【0088】
上記の介入決定処理で参照する対応関係データは、分類部15bで生成された各々の集合に含まれる作業員Wの生体データ解釈結果(作業員Wの状態)、作業環境データ、作業内容データ、プラントの操業データで定められる状態に対応して、プラントの操業状態の悪化を回避する、あるいは状況を最適な方向に遷移させることが期待される介入手段を、表形式等で格納されたデータである。上記の対応関係は、あらかじめ記憶されていてもよく、過去に取得部15aで取得されたデータおよび過去の介入結果に基づいて、都度、管理者等が入力もしくは設定してもよい。すなわち、上記の対応関係データを用いた介入決定処理では、生体データ解釈結果と操業データに応じて、経験や実績に基づいて適切と判断されている介入案を選び出すことができる。
【0089】
(具体例1)
具体例1について説明すると、決定部15dは、図8に示す対応関係データを参照し、「焦り2」と推定された作業員WAに対する介入手段として、当事者介入「作業指示提示」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」を決定し、「眠気3」と推定された作業員WBに対する介入手段として、当事者介入「アラーム通知」、関係者介入「管理者に連絡」を決定し、「焦り1」と推定された作業員WCに対する介入手段として、当事者介入「作業指示提示」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」を決定し、「焦り4」と推定された作業員WDに対する介入手段として、当事者介入「作業制限」、関係者介入「管理者に連絡」、機器介入「安全側にプロセス値を変更する操作」を決定し、図9に示す介入データを生成する。
【0090】
上記の具体例1では、決定部15dは、共通する作業工程である工程1に従事する作業員WA、作業員WCおよび作業員WDのいずれもが焦り状態にあることから、何らかの異常に直面して、作業員Wが焦り状態にある確率が高いと判断し、当事者、関係者および機器に行う介入手段を決定する。ここで、関係者とは、状態を推定された作業員W1の業務の管理者、作業員W1の作業に関連する作業員W2を含む。
【0091】
(具体例2)
具体例2について説明すると、決定部15dは、対応関係データを参照し、作業員WDの状態が「焦り4」と推定された場合であっても、共通する作業工程である工程1の作業員WAおよび作業員WCの状態が「平常」である場合には、作業員WDに対する介入手段として、当事者介入「アラーム通知」、関係者介入「作業員A、Bに連絡・支援依頼」を決定し、図10に示す介入データを生成する。
【0092】
上記の具体例2では、決定部15dは、共通する作業工程である工程1に従事する作業員WA、作業員WCおよび作業員WDのうち、作業員WDのみが焦り状態にあることから、作業員WDの作業のみに異常が生じている、または作業員WDにおいて焦り状態が誤って検出されている偽陽性の可能性があるので、共通する工程1を行う作業員WA、作業員WCに対して作業員WDの作業内容や状態を確認する等の支援を依頼する介入手段を決定する。
【0093】
上記の具体例1および具体例2の介入決定処理では、決定部15dは、分類部15bで生成された各々の集合に応じて、作業員集合の生体データ解釈結果、作業内容、プラントの操業データおよび作業環境を、対応関係データに対して照合することによって、当該集合に含まれる個人の作業員W、当該集合に含まれるすべての作業員W、上記作業内容に関連する1人以上の作業員W、上記作業の管理者、上記作業において制御される機器や装置、その他の装置に、状況の悪化を防ぐため、状況を最適な方向に遷移させることが期待される介入手段を決定する。なお、決定部15dは、同一とみなされる作業を行う複数の作業員Wの、生体データ解釈結果の一致度に応じて、上記の作業員W、管理者、装置・機器への介入の程度を変更する。
【0094】
すなわち、上記の具体例1の介入決定処理では、作業員集合の生体データ解釈結果の一致度が高い場合には、上記集合に含まれる、同じ工程を行う作業員Wが、生体データ解釈結果に基づく状態に置かれている可能性が高いと判定し、確度の高い作業員Wの状態に関する情報に基づいて、より効果的な介入を行うことを期待できる。例えば、特定の作業を行う複数の作業員Wが、等しく通常から逸脱した状態にあることがわかれば、上記作業に異常が生じ、作業員Wがその対応に苦慮している場面を想定することができる。この場合、事態はより緊急性・重要度が高いと考えられ、上位の管理者への優先的な連絡あるいは、その時の操業状態によっては、管理者の判断を待たずに、作業対象の装置・機器を安全側に移行させる介入を行うことが望ましい。
【0095】
一方、上記の具体例2の介入決定処理では、作業員集合の生体データ解釈結果の一致度が低い場合には、上記工程にあたる特定の作業員W1の作業のみに異常が生じている、または上記特定の作業員W1の状態が誤って判定されている可能性(偽陽性)があることが考えられる。その場合は、上記作業員W1に異常状態を緩和するためのフィードバックを音声によって行う、あるいは、作業員W1と同じ工程にある別の作業員W2の作業内容の確認・支援を依頼する等、不可逆的な事態を招く可能性の少ない、低コストで予防的な介入を行うことができる。
【0096】
すなわち、介入は何らかのコストを伴うことが予想されるが(例えば、事故予防のため、工場・プラント機能の一部を停止させるという介入を行った場合、本来生産できたものが生産できないという機会損失が生じる)、上記の介入決定処理では、高コストの介入ではなく、低コストの介入を行うことができる。一方、上記の介入決定処理では、高コストの介入判断の精度を向上させることもできる。
【0097】
(介入決定処理1)
決定部15dは、対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、予測部15gによって予測されたプラントの評価指標の時間発展を用いて介入手段を決定する。例えば、決定部15dは、作業員Wの状態が「焦り」と推定された場合において、対応関係データを参照することによって複数の介入手段を選択し、選択された介入手段を実行した場合のプラントの評価指標の時間発展を予測し、最も好ましい予測結果が得られる「作業指示提示」を作業員Wに対する介入手段として決定する。具体的な例を挙げて説明すると、決定部15dは、選択した複数の介入手段のうち、所定期間経過後のプロセス値が最大の介入手段、もしくは所定期間経過後のプロセス値の減少量が最小の介入手段を決定する。
【0098】
(介入決定処理2)
決定部15dは、対応関係データに含まれる複数の介入の履歴のうち、予測部15gによって予測された評価指標の時間発展に基づく介入の履歴から介入手段を決定する。例えば、決定部15dは、対応関係データに記憶されるすべての介入手段を実行した場合のプラントの評価指標の時間発展を予測し、所定値以上の好ましい予測結果が得られる複数の介入手段が含まれる対応関係データを抽出し、抽出した対応関係データから作業員Wに対する介入手段を決定する。具体的な例を挙げて説明すると、決定部15dは、対応関係データに記憶されるすべての介入手段を実行した場合の所定期間経過後のプロセス値を予測し、所定値以上のプロセス値が得られる複数の介入手段が含まれる対応関係データを抽出し、抽出した対応関係データから作業員Wに対する介入手段を決定する。
【0099】
上記の介入決定処理1および介入決定処理2は、シミュレーションモデル・デジタルツインを用いて望ましい経過が得られるフィードバックのみを行う処理である。すなわち、上記の介入決定処理1および介入決定処理2は、決定部15dが提示した装置や機器への介入が、プラントの操業状態に経時的にいかなる変化をもたらすかをシミュレーションし、上記介入が望ましい結果を導かない場合には介入を実行しないことによって、効果的な介入を選別することができる。
【0100】
(介入決定処理3)
決定部15dは、対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、指定を受け付けた介入手段を決定する。例えば、決定部15dは、対応関係データを参照することによって複数の介入手段が選択可能に提示された場合には、提示された複数の介入手段のうち、プラントの管理者の指定を受け付けることによって作業員Wに対する介入手段として決定する。
【0101】
上記の介入決定処理3は、決定部15dによる決定に対してプラントの管理者等の判断を入力として受け取り、当該判断を介してフィードバックを行う処理である。上記の介入決定処理3では、決定部15dが提示した介入に対して、判定者がその是非を判定することで、上記介入が望ましい結果を導かない介入を実行せず、効果的な介入のみを実行することができる。上記の介入決定処理3は、操業実績の短いプラントや、作業実績の短い作業員がいる場合等、操業状態をつぶさに監視することが望ましい場合や、シミュレーションやデジタルツイン、あるいは対応関係データを作成するためのデータが十分蓄積されていない場合に利用することができる。
【0102】
(2-2-5-5.実行部15e)
実行部15eは、共通の作業が実行されるプラントに対する介入を実行する。例えば、実行部15eは、決定部15dによって決定された介入手段に基づいてプラントに対する介入を実行する。また、実行部15eは、決定された介入手段にしたがって、所定の作業員もしくは所定の作業員の関係者に対する通知、またはプラント機器に対する制御を実行する。
【0103】
具体的な例について説明すると、実行部15eは、決定部15dによって作業員W1に対する当事者介入「作業指示提示」が決定された場合には、作業員W1のウェアラブル機器40に対して「○○操作を実行してください」等の異常時のマニュアルに基づく操作指示を通知する。また、実行部15eは、決定部15dによって作業員W1の作業関係者に対する関係者介入「管理者に連絡」が決定された場合には、作業員W1の管理者の端末装置に対して「工程1で異常が検知されました」等の異常の発生を通知する。
【0104】
(2-2-5-6.訓練部15f)
訓練部15fは、生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを含む時系列データの入力に応じてプラントの評価指標を出力する機械学習モデルを訓練する。例えば、訓練部15fは、プラントにおける複数の作業員Wの生体データ、操業データ、作業環境データおよび作業内容データについて時系列関係を保持した時系列データを用いることで、予測モデル14hを構築する。具体的な例について説明すると、訓練部15fは、上記の時系列データを、決定論モデル(物理モデル等)の時間発展方程式やパラメータ選定、あるいは統計的なモデル(深層学習等)作成のための訓練データとして用いて、デジタルツインの予測モデル14hを構築する。
【0105】
(2-2-5-7.予測部15g)
予測部15gは、介入の実行によって変更された生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを、訓練済みである機械学習モデルに入力して得られる結果に基づき、介入を実行した時点からの評価指標の時間発展を予測する。例えば、予測部15gは、介入の実行によって変更された生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを、プラントの操業に関わるプロセス値等のKPI(Key Performance Indicator)を出力する予測モデル14hに入力することによって、所定の初期状態に摂動(介入)を与えた時点からのKPIの時間発展を予測する。
【0106】
(2-2-5-8.表示部15h)
表示部15hは、分類部15bによって生成された集合データを表示する。例えば、表示部15hは、分類部15bによって分類された作業工程ごとに作業員Wの映像データ等の作業状況を、プラントの管理者の端末装置に表示する。
【0107】
(表示画面の具体例)
図13を用いて、表示部15hが出力する表示画面の具体例について説明する。図13は、実施形態に係る表示画面の具体例を示す図である。図13に示すように、表示部15hは、分類部15bによって生成された集合データを参照し、選択された表示条件に応じて、プラントの操業状況を表示する。例えば、表示部15hは、表示条件として、「工程別表示」、「作業員別表示」、「操作機器別表示」等を選択可能なラジオボタン等を表示することができる。
【0108】
図13の例では、表示部15hは、「プラント操業状況」として、「工程1」の作業工程に従事する「作業員A」、「作業員C」および「作業員D」の映像データを表示し、「工程2」の作業工程に従事する「作業員B」の映像データを表示する。
【0109】
上記の集合データ表示処理は、プラントの作業員全体に対して、同一とみなされる作業(個々の操作機器は異なるが、上位層の目的が同一とみなされる作業を含む)を行う作業員Wごとに分けることによって、各作業に当たる作業をリアルタイムに明らかにすることができる。また、上記の作業を表示可能とすることによって、作業の管理者や、関連の作業を行う作業員W2が、特定の作業に現在関与する作業員W1を直ちに視認することができ、プラント操業の状況認識が、容易になることが期待される。また、各作業に携わる作業員Wの状態をも表示することによって、プラント操業に関わる作業員Wの状態を、容易に把握することが可能となることが期待される。例えば、特定の作業を行う特定の作業員W1の状態が、作業遂行上望ましくないことが、別の作業員W2に容易に認識され、その現状確認や支援等の行動が促進されることが期待される。
【0110】
(2-3.測定機器20の構成例)
図2を用いて、測定機器20の構成例について説明する。例えば、測定機器20は、プラントに設置される温度計、湿度計、騒音計、光度計、臭気測定器等の機器であって、プラント内の気温、湿度、音、明るさ、臭気等の作業環境データを収集する。また、測定機器20は、プラント外部の作業環境データとして、気象情報等を収集することもできる。
【0111】
(2-4.管理機器30の構成例)
図2を用いて、管理機器30の構成例について説明する。例えば、管理機器30は、プラントに設置されるPCやカメラであって、作業員Wの勤務時間、作業場所、操作機器、映像データ等の作業内容データを収集する。
【0112】
(2-5.ウェアラブル機器40の構成例)
図2を用いて、ウェアラブル機器40の構成例について説明する。例えば、ウェアラブル機器40は、作業員Wが装着する、イヤフォン型のウェアラブル脳波計、ディスポ電極、ウェア型電極、ベルト電極等の電極を使用した心拍計、スマートウォッチやスマートグラス等であって、作業員Wの脈拍、心拍、皮膚電位、筋電位、眼電位、脳波、脳血流、表情、声色、血糖値等の生体データを収集する。
【0113】
(2-6.プラント機器50の構成例)
図2を用いて、プラント機器50の構成例について説明する。例えば、プラント機器50は、プラントのタンク、パイプ、炉等に設置された測定機器であるセンサ機器等であって、流体や固体の圧力、流速、温度、液位等の操業データを収集する。
【0114】
〔3.作業支援システム100の処理の流れ〕
図14図19を用いて、実施形態に係る作業支援システム100の処理の流れについて説明する。以下では、作業支援システム100の処理全体の流れを説明した上で、各処理の流れを説明する。
【0115】
(3-1.作業支援システム100の処理全体の流れ)
図14を用いて、作業支援システム100の処理全体の流れについて説明する。図14は、実施形態に係る処理全体の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS101~S105は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101~S105のうち、省略される処理があってもよい。
【0116】
第1に、作業支援サーバ10の取得部15aは、データ取得処理を実行する(ステップS101)。第2に、作業支援サーバ10の分類部15bは、作業員分類処理を実行する(ステップS102)。第3に、作業支援サーバ10の分析部15cは、データ分析処理を実行する(ステップS103)。第4に、作業支援サーバ10の決定部15dは、介入決定処理を実行する(ステップS104)。第5に、作業支援サーバ10の実行部15eは、介入実行処理を実行し(ステップS105)、処理を終了する。
【0117】
(3-2.データ取得処理の流れ)
図15を用いて、取得部15aによるデータ取得処理の流れについて説明する。図15は、実施形態に係るデータ取得処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS201~S204は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS201~S204のうち、省略される処理があってもよい。
【0118】
(3-2-1.作業環境データ取得処理)
取得部15aは、作業環境データ取得処理を実行する(ステップS201)。例えば、取得部15aは、複数の作業員W(WA、WB、WC、WD)が装着するウェアラブル機器40(40A、40B、40C、40D)から送信された、脈拍、心拍、皮膚電位、筋電位、眼電位、脳波、脳血流、表情、声色、血糖値等の生体データを取得する。
【0119】
(3-2-2.作業環境データ取得処理)
取得部15aは、作業内容データ取得処理を実行する(ステップS202)。例えば、取得部15aは、タンク、パイプ、炉等に設置された複数のプラント機器50(50A、50B、50C)から送信された、流体や固体の圧力、流速、温度、液位等の操業データを取得する。
【0120】
(3-2-3.生体データ取得処理)
取得部15aは、生体データ取得処理を実行する(ステップS203)。例えば、取得部15aは、プラントに設置された測定機器20から送信された、プラント内の気温、湿度、音、明るさ、臭気等の作業環境データを取得する。
【0121】
(3-2-4.操業データ取得処理)
取得部15aは、操業データ取得処理を実行する(ステップS204)。例えば、取得部15aは、プラントに設置された管理機器30から送信された、作業員Wの勤務時間、作業場所、操作機器、映像データ等の作業内容データを取得する。
【0122】
(3-3.作業員分類処理の流れ)
図16を用いて、分類部15bによる作業員分類処理の流れについて説明する。図16は、実施形態に係る作業員分類処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS301~S304は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS301~S304のうち、省略される処理があってもよい。
【0123】
(3-3-1.作業環境特定処理)
分類部15bは、作業環境特定処理を実行する(ステップS301)。例えば、分類部15bは、作業環境データを用いて作業員Wごとに作業環境を特定する。
【0124】
(3-3-2.作業内容特定処理)
分類部15bは、作業内容特定処理を実行する(ステップS302)。例えば、分類部15bは、作業内容データを用いて作業員Wごとに作業内容を特定する。
【0125】
(3-3-3.集合生成処理)
分類部15bは、集合生成処理を実行する(ステップS303)。例えば、分類部15bは、作業員Wごとに特定した作業環境と作業内容とに基づいて、共通する作業工程ごとに作業員Wを分類することによって、集合データを生成する。
【0126】
(3-3-4.集合データ表示処理)
表示部15hは、集合データ表示処理を実行する(ステップS304)。例えば、分類部15bは、生成した集合データをプラントの管理者の端末装置に表示する。
【0127】
(3-4.データ分析処理の流れ)
図17を用いて、分析部15cによるデータ分析処理の流れについて説明する。図17は、実施形態に係るデータ分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS401~S403は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS401~S403のうち、省略される処理があってもよい。
【0128】
(3-4-1.状態特徴推定処理)
分析部15cは、状態特徴推定処理を実行する(ステップS401)。例えば、分析部15cは、「平常」、「焦り」、「眠気」等の状態の特徴を推定する。
【0129】
(3-4-2.状態数値推定処理)
分析部15cは、状態数値推定処理を実行する(ステップS402)。例えば、分析部15cは、「焦り2」、「眠気4」等の状態の特徴の度合を示す数値を推定する。
【0130】
(3-4-3.異常検出処理)
分析部15cは、異常検出処理を実行する(ステップS403)。例えば、分析部15cは、共通する作業工程に従事する作業員Wの全員が「焦り」の状態と推定した場合には、当該作業工程の異常を検出する。
【0131】
(3-5.介入決定処理の流れ)
図18を用いて、分析部15cによるデータ分析処理の流れについて説明する。図18は、実施形態に係る介入決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS501~S511は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS501~S511のうち、省略される処理があってもよい。
【0132】
(3-5-1.予測モデル訓練処理)
訓練部15fは、予測モデル訓練処理を実行する(ステップS501)。例えば、訓練部15fは、生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを含む時系列データの入力に応じてプラントの評価指標を出力する予測モデル14hを訓練する。
【0133】
(3-5-2.介入決定処理1)
決定部15dは、以下のような流れで介入決定処理1を実行する。介入決定処理1は、予測モデル14hを使用する処理であって、シミュレーション後に介入データを生成する処理である。
【0134】
(3-5-2-1.時間発展予測処理)
決定部15dは、予測モデル14hを使用し(ステップS502:Yes)、データ生成前にシミュレーションを実行する場合(ステップS503:データ生成前)、時間発展予測処理を実行する(ステップS504)。例えば、決定部15dは、対応関係データの全介入手段を実行した場合のプロセス値を予測し、当該プロセス値が所定値以上の介入手段を抽出する。
【0135】
(3-5-2-2.介入データ生成処理)
決定部15dは、介入データ生成処理を実行する(ステップS505)。例えば、決定部15dは、ステップS504の処理で抽出したプロセス値が所定値以上の介入手段から介入データを生成する。
【0136】
(3-5-3.介入決定処理2)
決定部15dは、以下のような流れで介入決定処理2を実行する。介入決定処理2は、予測モデル14hを使用する処理であって、介入データを生成後にシミュレーションを行う処理である。
【0137】
(3-5-3-1.介入データ生成処理)
決定部15dは、予測モデル14hを使用し(ステップS502:Yes)、データ生成後にシミュレーションを実行する場合(ステップS503:データ生成後)、介入データ生成処理を実行する(ステップS506)。例えば、決定部15dは、対応関係データを参照し、複数の介入手段を含む介入データを生成する。
【0138】
(3-5-3-2.時間発展予測処理)
決定部15dは、時間発展予測処理を実行する(ステップS507)。例えば、決定部15dは、ステップS506の処理で生成した介入データの介入手段を実行した場合のプロセス値を予測し、当該プロセス値が最大の最適となる介入手段を選択する。
【0139】
(3-5-4.介入決定処理3)
決定部15dは、以下のような流れで介入決定処理3を実行する。介入決定処理3は、予測モデル14hを使用しない処理であって、管理者の判断を受け付ける処理である。
【0140】
(3-5-4-1.介入データ生成処理)
決定部15dは、予測モデル14hを使用しない場合(ステップS502:No)、介入データ生成処理を実行する(ステップS508)。例えば、決定部15dは、対応関係データを参照し、複数の介入手段を含む介入データを生成する。
【0141】
(3-5-4-2.判断受付処理)
決定部15dは、プラントの管理者の判断がある場合(ステップS509:Yes)、判断受付処理を実行する(ステップS510)。例えば、決定部15dは、対応関係データを参照し、複数の介入手段を含む介入データのうち、プラントの管理者が指定する介入手段を受け付ける。
【0142】
(3-5-5.介入決定処理4)
決定部15dは、以下のような流れで介入決定処理4を実行する。介入決定処理4は、予測モデル14hを使用しない処理であって、管理者の判断を受け付けない処理である。
【0143】
(3-5-5-1.介入データ生成処理)
決定部15dは、予測モデル14hを使用しない場合(ステップS502:No)、介入データ生成処理を実行する(ステップS508)。例えば、決定部15dは、対応関係データを参照し、複数の介入手段を含む介入データを生成する。また、決定部15dは、プラントの管理者の判断がない場合(ステップS509:No)、ステップS511の処理に移行する。
【0144】
(3-5-6.介入データ決定処理)
決定部15dは、ステップS505、S507、S509またはS510の処理終了後に、介入データ決定処理を実行する(ステップS511)。例えば、決定部15dは、生成した介入データのうち、条件を満たす介入データを決定する。
【0145】
(3-5-7.その他)
決定部15dは、介入決定処理1または介入決定処理2の実行後に、介入決定処理3を実行することもできる。すなわち、決定部15dは、予測モデル14hを使用する処理を介して生成した介入データを、管理者の判断を受け付けて承認した介入手段のみを実行することもできる。
【0146】
(3-6.介入実行処理の流れ)
図19を用いて、分析部15cによるデータ分析処理の流れについて説明する。図19は、実施形態に係る介入実行処理の流れの一例を示すフローチャートである。なお、下記のステップS601~S605は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS601~S605のうち、省略される処理があってもよい。
【0147】
(3-6-1.介入実行処理1)
実行部15eは、以下のような流れで介入実行処理1を実行する。介入決定処理1は、作業関係者を介入対象とする処理である。
【0148】
(3-6-1-1.当事者通知処理)
実行部15eは、介入対象が作業関係者である場合(ステップS601:作業関係者に介入)、当事者通知処理を実行する。例えば、実行部15eは、異常が検出された作業員W1に対してアラーム通知を送信する。
【0149】
(3-6-1-2.関連作業員通知処理)
実行部15eは、関連作業員通知処理を実行する。例えば、実行部15eは、異常が検出された作業員W1と共通する作業工程に従事する作業員W2に対して、作業員W1の支援依頼通知を送信する。
【0150】
(3-6-1-3.管理者通知処理)
実行部15eは、管理者通知処理を実行する。例えば、実行部15eは、異常が検出された作業員W1の管理者に対して異常検出通知を送信する。
【0151】
(3-6-2.介入実行処理2)
実行部15eは、以下のような流れで介入実行処理2を実行する。介入決定処理2は、機器を介入対象とする処理である。
【0152】
(3-6-2-1.機器制御処理)
実行部15eは、介入対象が機器である場合(ステップS601:機器に介入)、機器制御処理を実行する。例えば、実行部15eは、異常が検出された作業員W1の操作機器に対して安全側にプロセス値を変更する制御を実行する。
【0153】
(3-6-3.その他)
実行部15eは、作業関係者を介入対象とする介入実行処理1および機器を介入対象とする介入実行処理2を実行することもできる。
【0154】
〔4.実施形態の効果〕
最後に、実施形態の効果について説明する。以下では、実施形態に係る処理に対応する効果1~6について説明する。
【0155】
(4-1.効果1)
第1に、上述した実施形態に係る処理では、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得し、複数の作業員Wの生体データに基づいて複数の作業員Wそれぞれの状態を推定し、複数の作業員Wそれぞれの状態を分析し、分析結果に基づき、共通の作業への介入の要否を決定する。このため、本処理では、作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0156】
(4-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る処理では、作業を行う作業員Wの異常が検出された場合には、プラントに対する介入手段を決定し、当該介入手段に基づいて共通の作業が実行されるプラントに対する介入を実行する。このため、本処理では、作業員Wの状態に応じて精度よく異常を検出し、適切な作業環境を提示することができる。
【0157】
(4-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る処理では、プラントに設置されるプラント機器50から収集される操業データと、複数の作業員Wそれぞれが作業を行うプラントの環境に関する作業環境データと、複数の作業員Wそれぞれが行う作業に関する作業内容データとをさらに取得し、複数の作業員Wそれぞれが装着する機器から収集された生体データに基づいて複数の作業員Wそれぞれの状態として肉体的状態または精神的状態を推定し、共通する作業を行う複数の作業員Wのうち所定の状態を示す作業員Wの割合が閾値を超過した場合には作業員Wの異常を検出し、複数の作業員Wそれぞれの状態と操業データと作業環境データと作業内容データとを用いて、プラントに対する介入の履歴を示す対応関係データを参照することによって、介入手段を決定し、所定の作業員W1もしくは所定の作業員W1の関係者に対する通知、またはプラント機器に対する制御を実行する。このため、本処理では、作業員Wの状態に応じて精度よく異常を検出し、適切な作業環境を効果的に提示することができる。
【0158】
(4-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る処理では、作業環境データと作業内容データとを用いて複数の作業員Wそれぞれの作業工程を特定し、共通する作業工程ごとに複数の作業員Wを分類する。このため、本処理では、共通する作業工程に従事する作業員Wを特定することによって、より効果的に作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0159】
(4-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る処理では、生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを含む時系列データの入力に応じてプラントの評価指標を出力する機械学習モデルを訓練し、介入の実行によって変更された生体データ、操業データ、作業環境データまたは作業内容データを、訓練済みである機械学習モデルに入力して得られる結果に基づき、当該介入を実行した時点からの評価指標の時間発展を予測する。このため、本処理では、介入後のプラントの状況をシミュレーションすることによって、より効果的に作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0160】
(4-6.効果6)
第6に、上述した実施形態に係る処理では、対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、予測した評価指標の時間発展を用いて介入手段を決定する。このため、本処理では、介入データを生成した後にプラントの状況をシミュレーションすることによって、より効果的に作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0161】
(4-7.効果7)
第7に、上述した実施形態に係る処理では、予測した評価指標の時間発展を用いて選択した対応関係データを参照することによって、介入手段を決定する。このため、本処理では、プラントの状況をシミュレーションした後に介入データを生成することによって、より効果的に作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0162】
(4-8.効果8)
第8に、上述した実施形態に係る処理では、対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、指定を受け付けた介入手段を決定する。このため、本処理では、対応関係データが十分に蓄積されていなくても管理者の判断を受け付けることによって、より効果的に作業員Wの状態に応じて適切な作業環境を提示することができる。
【0163】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0164】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0165】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0166】
〔ハードウェア〕
次に、情報処理装置である作業支援サーバ10のハードウェア構成例を説明する。なお、その他の装置も同様のハードウェア構成とすることができる。図20は、ハードウェア構成例を説明する図である。図20に示すように、作業支援サーバ10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図20に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0167】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0168】
プロセッサ10dは、図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、作業支援サーバ10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、取得部15a、分類部15b、分析部15c、決定部15d、実行部15e、訓練部15f、予測部15g、表示部15h等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部15a、分類部15b、分析部15c、決定部15d、実行部15e、訓練部15f、予測部15g、表示部15h等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0169】
このように、作業支援サーバ10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、作業支援サーバ10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、作業支援サーバ10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0170】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【0171】
〔その他〕
開示される技術特徴の組合せのいくつかの例を以下に記載する。
【0172】
(1)作業支援装置であって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得部と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析部と、前記分析部による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定部と、を備える作業支援装置。
【0173】
(2)前記共通の作業が実行される前記プラントに対する介入を実行する実行部、をさらに備え、前記決定部は、前記分析部によって作業を行う作業員の異常が検出された場合には、前記プラントに対する介入手段を決定し、前記実行部は、前記介入手段に基づいて前記プラントに対する介入を実行する、(1)に記載の作業支援装置。
【0174】
(3)前記取得部は、前記プラントに設置されるプラント機器から収集される操業データと、前記複数の作業員それぞれが作業を行う前記プラントの環境に関する作業環境データと、前記複数の作業員それぞれが行う作業に関する作業内容データとをさらに取得し、前記分析部は、前記複数の作業員それぞれが装着する機器から収集された前記生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態として肉体的状態または精神的状態を推定し、共通する作業を行う前記複数の作業員のうち所定の状態を示す作業員の割合が閾値を超過した場合には前記異常を検出し、前記決定部は、前記複数の作業員それぞれの状態と前記操業データと前記作業環境データと前記作業内容データとを用いて、前記プラントに対する介入の履歴を示す対応関係データを参照することによって、前記介入手段を決定し、前記実行部は、決定された前記介入手段にしたがって、所定の作業員もしくは前記所定の作業員の関係者に対する通知、または前記プラント機器に対する制御を実行する、(2)に記載の作業支援装置。
【0175】
(4)前記作業環境データと前記作業内容データとを用いて前記複数の作業員それぞれの作業工程を特定し、共通する前記作業工程ごとに前記複数の作業員を分類する分類部、をさらに備え、前記分析部は、前記分類部による分類結果に基づき、共通する作業を行う前記複数の作業員それぞれの状態を分析する、(3)に記載の作業支援装置。
【0176】
(5)前記生体データ、前記操業データ、前記作業環境データまたは前記作業内容データを含む時系列データの入力に応じて前記プラントの評価指標を出力する機械学習モデルを訓練する訓練部と、前記介入の実行によって変更された前記生体データ、前記操業データ、前記作業環境データまたは前記作業内容データを、訓練済みである前記機械学習モデルに入力して得られる結果に基づき、前記介入を実行した時点からの前記評価指標の時間発展を予測する予測部と、をさらに備える(3)または(4)に記載の作業支援装置。
【0177】
(6)前記決定部は、前記対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、前記予測部によって予測された前記時間発展を用いて前記介入手段を決定する、(5)に記載の作業支援装置。
【0178】
(7)前記決定部は、前記対応関係データに含まれる複数の介入の履歴のうち、前記予測部によって予測された前記評価指標の時間発展に基づく介入の履歴から前記介入手段を決定する、(5)に記載の作業支援装置。
【0179】
(8)前記決定部は、前記対応関係データを参照することによって選択した複数の介入手段から、指定を受け付けた前記介入手段を決定する、(3)~(7)に記載の作業支援装置。
【0180】
(9)作業支援装置によって実行される作業支援方法であって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得工程と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析工程と、前記分析工程による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定工程と、を含む作業支援方法。
【0181】
(10)作業支援装置に処理を実行させる作業支援プログラムであって、プラントの操業に関して共通の作業を行う複数の作業員の生体データを取得する取得手順と、前記複数の作業員の生体データに基づいて前記複数の作業員それぞれの状態を推定し、前記複数の作業員それぞれの状態を分析する分析手順と、前記分析手順による分析結果に基づき、前記作業支援装置による前記共通の作業への介入の要否を決定する決定手順と、を実行させる作業支援プログラム。
【符号の説明】
【0182】
10 作業支援サーバ
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
14a 作業環境データ記憶部
14b 作業内容データ記憶部
14c 生体データ記憶部
14d 操業データ記憶部
14e 集合データ記憶部
14f 対応関係データ記憶部
14g 介入データ記憶部
14h 予測モデル
15 制御部
15a 取得部
15b 分類部
15c 分析部
15d 決定部
15e 実行部
15f 訓練部
15g 予測部
15h 表示部
20 測定機器
30 管理機器
40 ウェアラブル機器
50 プラント機器
100 作業支援システム
図1
図2
図3
図4
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