(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158278
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】再生紙とその製造方法
(51)【国際特許分類】
D21H 11/14 20060101AFI20241031BHJP
D21H 25/04 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
D21H11/14
D21H25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073350
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000205306
【氏名又は名称】大阪シーリング印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 純也
(72)【発明者】
【氏名】浅田 詩織
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AC09
4L055AG86
4L055AH38
4L055EA15
4L055EA28
4L055EA32
4L055EA40
4L055FA15
4L055GA15
(57)【要約】
【課題】原料に剥離紙を用いて製造された再生紙の、印刷用の紙としての実用性を高くする。
【解決手段】原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された処理前再生紙1を準備する準備工程S1と、準備工程S1で準備した処理前再生紙1にコロナ処理をする処理工程S2とを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された、処理前再生紙を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備した前記処理前再生紙にコロナ処理をする処理工程と
を含むことを特徴とする、再生紙の製造方法。
【請求項2】
前記剥離紙は、0重量%超え4重量%以下の離型剤を含有し、
前記処理工程において、前記処理前再生紙に対して40W・min/m2以上の放電量でコロナ処理をすることを特徴とする、請求項1に記載の再生紙の製造方法。
【請求項3】
離型剤を含有する再生紙であって、
一辺50mmの正方形領域の全体を塗りつぶすように印刷した際に、該正方形領域におけるインクのハジキにより形成される、寸法0.2mm以上のピンホールの数が3個以下であることを特徴とする、再生紙。
【請求項4】
一辺50mmの正方形領域の全体を塗りつぶすように印刷した際に、該正方形領域における前記ピンホールの数が0個であることを特徴とする、請求項3に記載の再生紙。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生紙とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、古紙パルプを10質量%以上含有するパルプ原料スラリーに対して、水酸化アルミニウムを添加し、抄紙して水酸化アルミニウムを3~15質量%内添させた紙を得る、再生紙の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の明細書段落0023に記載されているように、従来、再生紙の原料となるパルプには、例えば、新聞古紙、板紙古紙、雑誌古紙、段ボール古紙、OA古紙などの各種古紙が利用されてきた。再生資源を有効に活用するという観点から、上記で例示されたもの以外のものも、再生紙の原料となるパルプとして利用できることが望ましい。例えば、粘着シール又は両面テープの剥離紙(台紙)も、再生紙を製造するためのパルプとして利用したいという要請がある。
【0005】
しかし、上記原料に剥離紙を用いて製造された再生紙では、印刷するとインクのハジキによりピンホール(白抜きの斑点)が現れるため、意匠性が劣る。このことから、剥離紙を原料として製造された再生紙は、印刷用の紙としては実用上問題がある。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料に剥離紙を用いて製造された再生紙の、印刷用の紙としての実用性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、再生紙の製造方法に関し、原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された、処理前再生紙を準備する準備工程と、前記準備工程で準備した前記処理前再生紙にコロナ処理をする処理工程とを含むことを特徴とする。
【0008】
通常、再生紙を製造する工程では、原料となるパルプが洗浄され、インクやその他の添加剤が除去されると考えられる。しかし、原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された再生紙には、離型剤が除去しきれず残留している場合がある。本願発明者らは、剥離紙から製造された再生紙に印刷をした際に再生紙にピンホールが発生する原因は、再生紙に残留している離型剤にあることを突き止めた。そして、上記再生紙にコロナ処理をすることにより、ピンホールの発生が抑制される。第1の発明では、原料に剥離紙を用いて製造された再生紙にコロナ処理がされて処理後再生紙が得られる。コロナ処理により、インクのハジキによるピンホールの発生が抑制される。したがって、第1の発明により製造される処理後再生紙は、印刷用の紙としての実用性が高い。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、前記剥離紙は、0重量%超え4重量%以下の離型剤を含有し、前記処理工程において、前記処理前再生紙に対して40W・min/m2以上の放電量でコロナ処理をすることを特徴とする。
【0010】
この第2の発明では、原料に、0重量%超え4重量%以下の離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された処理前再生紙に対して、40W・min/m2以上の放電量でコロナ処理をするので、得られる処理後再生紙に印刷した際のインクのハジキによるピンホールの発生が各段に抑制される。したがって、第2の発明により製造される処理後再生紙は、印刷用の紙としての実用性が極めて高い。
【0011】
第3の発明は、離型剤を含有する再生紙であって、一辺50mmの正方形領域を塗りつぶすように印刷した際に、該正方形領域におけるインクのハジキにより形成される、寸法0.2mm以上のピンホールの数が3個以下であることを特徴とする。
【0012】
この第3の発明では、原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された、印刷用の紙として問題なく利用できる再生紙が得られる。
【0013】
第4の発明は、第3の発明において、一辺50mmの正方形領域の全体を塗りつぶすように印刷した際に、該正方形領域における前記ピンホールの数が0個であることを特徴とする。
【0014】
この第4の発明では、離型剤を含有する再生紙において、インクのハジキによるピンホールの発生が第3の発明よりも更に抑制されている。すなわち、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された、高品質の再生紙が得られる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によると、原料に剥離紙を用いて製造された再生紙の、印刷用の紙としての実用性が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る製造方法を示すフロー図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る製造方法の処理工程を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0018】
(実施形態)
図1は本発明の実施形態に係る、再生紙1の製造方法Mを示している。この製造方法Mは、準備工程S1と、処理工程S2とを含む。
【0019】
準備工程S1では、原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された、再生紙1(以下「処理前再生紙」という。)を準備する。「離型剤を含有する剥離紙」とは、離型剤を含有しているものであれば特に限定されない。例えば、粘着シール、両面テープ等における粘着面から剥離される剥離紙(台紙)が挙げられる。そのような剥離紙には、シール又はテープの粘着面から剥離しやすいように、離型剤が塗布されている。古紙パルプを製造するための剥離紙における離型剤の含有量は、剥離紙(離型剤を含む)100重量%に対して、例えば0重量%超え4重量%以下である。離型剤の成分は限定されないが、例えば、離型剤は熱硬化付加型又はUV硬化付加型のシリコーンを含む。
【0020】
準備工程S1は、処理前再生紙1を準備できればよい。準備工程S1では、処理前再生紙1を以下のように製造してもよい。まず、粘着シール、粘着テープ等を使用したあとに残る剥離紙を回収する。次いで、回収された剥離紙の繊維をほぐし、洗浄のための薬品等を加えて洗浄し、脱水することにより古紙パルプに加工する。なお、このとき、適宜添加剤を加える。次いで、加工された古紙パルプを原料として、処理前再生紙1を製造する。
【0021】
古紙パルプは、剥離紙以外の紙に由来するパルプを含有していてもよい。ここで、再生資源を有効に利用するという観点から、剥離紙に由来するパルプのみで構成されていることが好ましい。また、処理前再生紙1の原料としては、古紙パルプ以外にも、木材を砕いて加工された木材パルプを含有していてもよいが、上記と同様の観点から、剥離紙に由来するパルプのみで構成されていることが好ましい。
【0022】
処理工程S2では、準備工程S1で準備した処理前再生紙1にコロナ処理をする。処理工程S2は、
図2に示すように、ロール状に巻かれた処理前再生紙1を繰り出して行う。繰り出された処理前再生紙1は、表面にコロナ処理機2によりコロナ処理がされるとともに、2つのローラR,Rにより搬送され、再びロール状に巻かれる。このようにして、コロナ処理された再生紙3(以下「処理後再生紙」という。)が得られる。
【0023】
コロナ処理機2は、放電のための電極を備えている。コロナ処理は、離型剤の含有量が0重量%超え4重量%以下である場合には、下記のピンホールの発生を抑制するという観点から、処理前再生紙1に対して40W・min/m2以上の放電量で行うことが好ましく、55W・min/m2以上の放電量で行うことがより好ましい。なお、ここでいう「放電量」とは、例えば、コロナ処理の電力量(W)をX、処理前再生紙1が搬送される搬送方向に垂直な方向に沿った電極の長さ(m)をY、及び処理前再生紙1が搬送される速度(m/min)をZとすると、X/(Y×Z)により算出される量である。
【0024】
なお、処理工程S2は、準備工程S1よりあとに行えばよい。このため、準備工程S1で準備した処理前再生紙1を一旦保管しておき、印刷する直前に、処理前再生紙1に対して処理工程S2を行ってもよい。例えば、印刷機が、印刷直前に処理工程S2を行うコロナ処理部を備えていてもよい。
【0025】
以上説明した製造方法Mにより得られる処理後再生紙3は、古紙パルプとして用いた剥離紙に由来する離型剤を含有している。処理後再生紙3は、一辺50mmの正方形領域の全体を塗りつぶすように印刷した際に、該正方形領域におけるインクのハジキにより形成される、寸法が0.2mm以上のピンホールの数が3個以下であることが好ましく、そのようなピンホールの数が0個であることがより好ましい。なお、ここで言う「寸法」とは、ピンホールが円形である場合には、ピンホールの直径を意味し、ピンホールが円形でない場合には、ピンホールの外形輪郭上にある任意の2つの点を結ぶ線分のうち、最も長い線分の長さをいう。例えば、ピンホールが楕円形状である場合は、上記「寸法」は長軸の長さを意味する。
【0026】
以上説明した、本実施形態に係る再生紙の製造方法Mでは、原料に、離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された処理後再生紙3において、インクのハジキによるピンホールの発生が抑制される。
【0027】
また、本実施形態に係る再生紙の製造方法Mでは、原料であるパルプとして、剥離紙に由来する古紙パルプのみを用いて、処理後再生紙3を製造できるので、再生資源を有効に利用できる。
【0028】
また、本実施形態に係る再生紙の製造方法Mでは、原料に、0重量%超え4重量%以下の離型剤を含有する剥離紙を用いて製造された処理前再生紙1に対して、40W・min/m2以上の放電量でコロナ処理をするので、得られる処理後再生紙3に印刷した際のインクのハジキによるピンホールの発生が各段に抑制される。したがって、製造される処理後再生紙3は、印刷用の紙としての実用性が極めて高い。
【実施例0029】
以下に、本発明によりピンホールの発生が抑制される効果を検証した実施例について説明する。
【0030】
(評価試験)
実施例1では、まず、粘着層を有するシール(大阪シーリング印刷社製)の剥離紙から古紙パルプを製造し、この古紙パルプから処理前再生紙(坪量140g/m
2)を製造した。剥離紙には離型剤としての熱硬化付加型のシリコーンが塗布されていた。次いで、製造した処理前再生紙を
図2のように繰り出しかつ10m/minの搬送速度で搬送しながら、汎用のコロナ処理機を用いてコロナ処理をした。コロナ処理機の電極は、処理前再生紙の搬送方向に垂直な方向の長さ(以下「電極長さ」という。)が0.26mであった。コロナ処理の放電電力は1000Wであり、放電量は、385W・min/m
2であった。実施条件については表1にも示す。
【0031】
【0032】
次いで、コロナ処理された処理後再生紙に、青色インクで印刷を行った。印刷後の処理後再生紙において、50mm×50mmの正方形領域に、インクのハジキにより形成されたピンホールの個数を確認した。以上説明した、処理後再生紙の製造、印刷及びピンホールの個数確認を2回ずつ行った。なお、表1に示すピンホールの個数は、2回の実施の平均値である。
【0033】
実施例2は、電極長さが1.2mであり、放電電力が4000Wであり、放電量が333W・min/m2であったという点を除き、実施例1と同じである。実施例3は、電極長さが1.2mであり、放電電力が2000Wであり、放電量が167W・min/m2であったという点を除き、実施例1と同じである。実施例4は、電極長さが1.2mであり、放電量が83W・min/m2であったという点を除き、実施例1と同じである。実施例5は、処理前再生紙の搬送速度が40m/minであり、放電電力が600Wであり、放電量が58W・min/m2であったという点を除き、実施例1と同じである。実施例6は、電極長さが1.2mであり、放電電力が500Wであり、放電量が42W・min/m2であったという点を除き、実施例1と同じである。比較例は、コロナ処理をしなかったという点を除き、実施例1と同じである。
【0034】
(結果)
表2に示すように、比較例で得られた再生紙では、25個ものピンホールが発生していた。これに対して、実施例1~5で得られた処理後再生紙のピンホールの数は0個であり、実施例6で得られた処理後再生紙のピンホールの数は3個であった。
【0035】
このように、本発明に係る再生紙の製造方法により、インクのハジキによるピンホールの発生が抑制される。このため、本発明に係る再生紙の製造方法により製造される再生紙は、印刷用の紙としての実用性が高いといえる。