(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158284
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】印刷版、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20241031BHJP
B41M 1/12 20060101ALI20241031BHJP
H05K 3/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B41N1/24
B41M1/12
H05K3/12 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073365
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 元信
(72)【発明者】
【氏名】今西 豊
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彩子
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
5E343
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA02
2H113BA10
2H113BA13
2H113BA14
2H113DA04
2H113EA07
2H114AB04
2H114AB08
2H114DA04
2H114EA04
5E343AA02
5E343BB72
5E343DD01
5E343FF01
5E343GG08
(57)【要約】
【課題】印刷パターンの形成精度を向上することができる印刷版を提供する。
【解決手段】印刷版であって、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、パターン形成層のうち印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、第1貫通孔に接続している複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、印刷材料が供給される側から見た材料供給層には、開口形状が同じ第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域と、連続配置領域内の第2貫通孔とは異なる開口形状の第2貫通孔が配置された、連続配置領域の外縁と第1貫通孔の外縁との間の外縁領域と、が含まれ、外縁領域内の第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、連続配置領域内の第2貫通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版であって、
被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、
前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続している複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、
開口形状が同じ前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域と、
前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる開口形状の前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域と、が含まれ、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする、印刷版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷版であって、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔の開口面積は、いずれも、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上であることを特徴とする、印刷版。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の印刷版であって、
前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする、印刷版。
【請求項4】
被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法であって、
請求項1または請求項2に記載の印刷版を使用して、前記被印刷物に前記印刷パターンを転写することを特徴とする、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版、および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の配線や電極等の印刷パターンの形成には、その配線や印刷パターンに対応して配置された貫通孔を有する印刷版が用いられることが知られている。例えば、特許文献1には、印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される材料供給層として、スクリーンメッシュを備えた印刷版が開示されている。特許文献2,3には、材料供給層として、貫通孔が形成された金属製の板状部材を備えた印刷版がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-24108号公報
【特許文献2】特開2019-206088号公報
【特許文献3】特開2021-104686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3のいずれの印刷版においても、印刷パターンの形成精度については、なお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、印刷パターンの形成精度を向上することができる印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、印刷版が提供される。この印刷版は、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続している複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、開口形状が同じ前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域と、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる開口形状の前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域と、が含まれ、前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きい。
【0008】
この構成によれば、外縁領域内の少なくとも一部の第2貫通孔の開口面積は、連続配置領域内の第2貫通孔の開口面積よりも大きい。したがって、外縁領域内の当該第2貫通孔に接続された第1貫通孔の部分へ印刷材料を円滑に供給できることから、当該部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンにかすれが生じることや印刷パターンの膜厚のばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、この構成によれば、印刷パターンの形成精度を向上することができる。
【0009】
(2)上記態様の印刷版において、前記外縁領域内の前記第2貫通孔の開口面積は、いずれも、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上であってもよい。
この構成によれば、外縁領域内には、基準開口面積よりも小さい開口面積の第2貫通孔は存在していない。このため、印刷材料が詰まることなく円滑に通過可能な開口面積が基準開口面積として設定されている場合には、外縁領域内の第2貫通孔のいずれにおいても、第1貫通孔に対して印刷材料を円滑に供給することができる。その結果、外縁領域内の第2貫通孔に接続された第1貫通孔の部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンにかすれが生じることや印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、この構成によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0010】
(3)上記態様の印刷版において、前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であってもよい。
この構成によれば、厚みが10μmより薄いことで材料供給層の強度が不足したり材料供給層に穴が開きやすくなったりすることや、厚みが100μmより厚いことで印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることをより一層抑制することができる。したがって、この構成によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0011】
(4)本発明の他の形態によれば、被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法が提供される。この製造方法では、上記形態に記載の印刷版を使用して、被印刷物に印刷パターンを転写する。
この構成によれば、外縁領域内の少なくとも一部の第2貫通孔の開口面積が連続配置領域内の第2貫通孔の開口面積よりも大きい材料供給層を備えることによって印刷パターンの形成精度が向上された印刷版が印刷物の製造に使用されることから、精度良く印刷パターンが転写された印刷物を製造することができる。
【0012】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷版、印刷版を含む印刷システム、印刷版に印刷材料を供給する装置および印刷版を含む印刷システム、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の印刷版の構成を模式的に示す平面図である。
【
図4】設計段階における材料供給層の状態を示した説明図である。
【
図5】第2実施形態の印刷版の一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態の印刷版1の構成を模式的に示す平面図である。
図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。このXYZ軸は、
図1以降の各図においても共通する。印刷版1は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に用いられ、印刷パターンの形成に用いられる印刷材料を選択的に通過させる板状部材である。ここでいう印刷パターンとは、印刷版1を通過して被印刷物の表面に転写された印刷材料によって形成される模様のことである。
図1において、印刷材料は、+Z軸方向側から-Z軸方向側に向けて印刷版1を通過することによって、印刷パターンを形成する。印刷版1は、フレーム10と、中央板部20と、を備えている。フレーム10は、金属製の枠状部材である。中央板部20は、フレーム10の内側に嵌められた板状部材である。
図1に示す材料供給層24および第1貫通孔22Hは、以降の
図2,3を用いて説明する。
【0015】
図2は、中央板部20の一部を拡大した平面図である。
図3は、
図2のF3-F3線における断面図である。
図3に示すように、中央板部20は、パターン形成層22と、材料供給層24と、を備える。パターン形成層22は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に、被印刷物と対向する側に配置される層である。本実施形態では、パターン形成層22を構成する材料は、樹脂材料である。樹脂材料としては、乳剤、ポリイミド等が挙げられる。パターン形成層22は、複数の第1貫通孔22Hを有する(
図1参照)。
図1,2において、第1貫通孔22Hは、材料供給層24に隠れていることにより本来視認できないが、理解を容易にするために、
図1では実線で図示し、
図2では破線で図示している。第1貫通孔22Hの各々は、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置されている。ここで、第1貫通孔22hの各々が印刷パターンに対応して配置されているとは、第1貫通孔22hの各々を通過した印刷材料が所望の印刷パターンの各々を形成するよう、第1貫通孔22hの各々が配置されていることをいう。すなわち、第1貫通孔22hの各々は、印刷パターンの各々を画定するために配置されている。
【0016】
図3に示すように、材料供給層24は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に、印刷材料が供給される側に配置される層である。すなわち、材料供給層24は、パターン形成層22のうち印刷材料が供給される側(
図1,2では+Z軸方向側)に積層されている。材料供給層24は、電気鋳造により形成されている。詳細には、材料供給層24は、ニッケル、もしくは、ニッケルおよびコバルト等の金属を電気鋳造で堆積させることによって形成されている。また、材料供給層24の厚み24T(
図3参照)は、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みである。なお、厚み24Tは、材料供給層24の平均厚みのことである。また、材料供給層24は、
図2に示すように、開口形状の異なる第2貫通孔24S、24Dを有している。ここで開口形状とは、印刷材料が供給される側から見た第2貫通孔24S、24Dの入り口にあたる開口の形状のことである。これら複数の第2貫通孔24S、24Dは、第1貫通孔22Hに接続している。
【0017】
図2に示すように、印刷材料が供給される側(+Z軸方向側)から見た材料供給層24には、連続配置領域CAと、外縁領域EAと、が含まれている。連続配置領域CAは、開口形状が同じ第2貫通孔24Sが互いに異なる第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置されている領域である(
図2に一点鎖線にて連続配置領域CAの外縁を図示)。すなわち、第2貫通孔24Sとは、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔のことである。また、第2貫通孔24Sの各々は、開口形状が互いに同じである。なお、寸法公差によってわずかに開口形状が異なる場合も、同じ形状に含めるものとする。本実施形態では、第2貫通孔24Sの開口形状は矩形状である。第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置されている状態とは、第2貫通孔24Sの開口中心(開口形状の重心)が第1方向D1および第2方向D2に沿って一定の間隔ごとに並べられている状態のことである。
【0018】
一方、外縁領域EAは、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔24Sとは異なる開口形状の第2貫通孔24Dが配置された、連続配置領域CAの外縁と第1貫通孔22Hの外縁との間の領域である。すなわち、第2貫通孔24Dとは、外縁領域EA内に配置された第2貫通孔のことである。また、第2貫通孔24Dの各々は、開口形状が第2貫通孔24Sとは異なっていて、且つ、開口形状が互いに同じとは限らない。例えば、
図2に示した第2貫通孔24Dのうち、第2貫通孔24D1と第2貫通孔24D2とは互いに形状が異なる。
【0019】
第2貫通孔24Dのうち一部の開口面積は、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積よりも大きい。すなわち、第2貫通孔24Dには、第2貫通孔24Sの開口面積よりも開口面積が大きい第2貫通孔24D(
図2に第2貫通孔24D1~17として図示)と、第2貫通孔24Sの開口面積よりも開口面積が小さい第2貫通孔24Dと、が含まれる。また、第2貫通孔24Dの開口面積は、いずれも、第2貫通孔24Sの開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上である。本実施形態では、設定割合rは、0.5であることから、基準開口面積は、第2貫通孔24Sの開口面積に0.5を乗じた面積である。すなわち、外縁領域EA内には、第2貫通孔24Sの開口面積の50%より小さい開口面積の第2貫通孔24Dは存在していない。
【0020】
印刷版1を用いて被印刷物の表面に印刷パターンを形成する場合、材料供給層24のうち+Z軸方向側の面に供給された印刷材料は、スキージで第2貫通孔24S、24Dに向けて押し出されたのち第1貫通孔22Hを通過して、被印刷物の表面に転写される。第1貫通孔22Hは、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置されていることから、第1貫通孔22Hを通過した印刷材料は、被印刷物の表面に配置される際には印刷パターンを形成する。
【0021】
図4は、設計段階における材料供給層24の状態を示した説明図である。
図4に示す材料供給層24Vは、設計段階における仮想上の材料供給層24にあたる。また、
図4に示す第2貫通孔24Pは、設計段階における仮想上の第2貫通孔である。設計段階において第2貫通孔24Pの配置や開口形状を検討している例として、
図4には、矩形状の第2貫通孔24Pを第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置した状態が示されている。この状態においては、印刷材料が供給される側(+Z軸方向側)から見て、第1貫通孔22Hに一部しか重なっていない第2貫通孔24Pが第1貫通孔22Hの外縁近傍に配置されている(そのような第2貫通孔24Pのうち第1貫通孔22Hの外縁より外に配置された部分は不図示)。
図4では、そのような第2貫通孔24Pのうち上述した基準開口面積(第2貫通孔24Sの開口面積に0.5を乗じた面積)より小さい開口面積の第2貫通孔24Pが、第2貫通孔24P1~17として示されている。第2貫通孔24P1~17では、第1貫通孔22Hに向けて印刷材料を通過させる空間が比較的狭くなっていることから、印刷材料が詰まりやすくなっている。このため、設計段階において、このような第2貫通孔24P1~17の開口と、第2貫通孔24P1~17の近辺に配置された第2貫通孔24Pの開口と、がつなげられて、
図2に示した第2貫通孔24D1~17が形成される。このように
図4で説明した過程を経て、第2貫通孔24D1~17を有する材料供給層24が設計される。
【0022】
以上説明したように、本実施形態の印刷版1によれば、
図2に示すように、外縁領域EA内の第2貫通孔24D1~17の開口面積は、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積よりも大きい。したがって、第2貫通孔24D1~17に接続された第1貫通孔22Hの部分へ印刷材料を円滑に供給できることから、当該部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンにかすれが生じることや印刷パターンの膜厚のばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、本実施形態の印刷版1によれば、印刷パターンの形成精度を向上することができる。
【0023】
また、本実施形態の印刷版1では、第2貫通孔24Dの開口面積は、いずれも、第2貫通孔24Sの開口面積に予め設定された設定割合rを乗じた基準開口面積以上であることから、外縁領域EA内には、基準開口面積よりも小さい開口面積の第2貫通孔24Dは存在していない。このため、印刷材料が詰まることなく円滑に通過可能な開口面積が基準開口面積として設定されている場合には、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dのいずれにおいても、第1貫通孔22Hに対して印刷材料を円滑に供給することができる。その結果、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dに接続された第1貫通孔22Hの部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンにかすれが生じることや印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、本実施形態の印刷版1によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0024】
また、本実施形態の印刷版1では、材料供給層24の厚み24Tは、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みである。このため、厚みが10μmより薄いことで材料供給層24の強度が不足したり材料供給層24に穴が開きやすくなったりすることや、厚みが100μmより厚いことで印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることをより一層抑制することができる。したがって、本実施形態の印刷版1によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。すなわち、本実施形態の印刷版1を使用して印刷物を製造した場合、精度良く印刷パターンが転写された印刷物を製造することができる。
【0025】
<第2実施形態>
図5は、第2実施形態の印刷版1Aの一部を拡大した平面図である。第2実施形態の印刷版1Aは、第1実施形態の印刷版1と比べて、第1実施形態の材料供給層24とは異なる材料供給層24aを有する点が異なる。
【0026】
材料供給層24aには、第1実施形態の印刷版1における材料供給層24と同様に、連続配置領域Caと、外縁領域Eaと、が含まれている。連続配置領域Caは、開口形状が同じ第2貫通孔24sが互いに異なる第1方向d1および第2方向d2に沿って連続的に配置されている領域である。第1施形態では、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口形状は矩形状であったのに対して、第2実施形態では、連続配置領域Ca内の第2貫通孔24sの開口形状は六角形状である。一方、外縁領域Eaは、第2貫通孔24sとは異なる開口形状の第2貫通孔24dが配置された、連続配置領域Caの外縁(
図5に一点鎖線にて図示)と第1貫通孔22Hの外縁との間の領域である。第2貫通孔24dのうち一部(
図5に第2貫通孔24d1~8として図示)の開口面積は、連続配置領域Ca内の第2貫通孔24sの開口面積よりも大きい。また、第2貫通孔24dの開口面積は、いずれも、第2貫通孔24sの開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上である。本実施形態でも、設定割合rは、0.5であることから、外縁領域Ea内には、第2貫通孔24sの開口面積の50%より小さい開口面積の第2貫通孔24dは存在していない。
【0027】
以上のような第2実施形態の印刷版1Aによっても、第1実施形態と同様に、第2貫通孔24d1~8に接続された第1貫通孔22Hへ印刷材料を円滑に供給できることから、当該部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンにかすれが生じることや印刷パターンの膜厚のばらつきが大きくなることを抑制できる。また、外縁領域Ea内には、基準開口面積よりも小さい開口面積の第2貫通孔24dは存在していないことから、印刷材料が詰まることなく円滑に通過可能な開口面積が基準開口面積として設定されている場合には、外縁領域Ea内の第2貫通孔24dのいずれにおいても、第1貫通孔22Hに対して印刷材料を円滑に供給することができる。
【0028】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0029】
上記実施形態では、パターン形成層22を構成する材料は、樹脂材料であったが、これに限られない。例えば、パターン形成層22を構成する材料は、金属材料であってもよい。さらに、パターン形成層22は、電気鋳造により形成されていていてもよい。このような構成の印刷版によれば、パターン形成層22における第1貫通孔22Hの配置を精度良く調整できる。また、パターン形成層22の膜厚のばらつきを小さくできることから、印刷パターンの厚さが大きくばらつくことや、印刷パターンにかすみやにじみが生じることをより一層抑制することができる。さらに、パターン形成層22が材料供給層24と共に電気鋳造により一体成形されている印刷版では、剛性を高くすることができる。
【0030】
上記実施形態では、材料供給層24の厚み24Tは、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みであったが、これに限られない。材料供給層24の厚み24Tは、10μmより小さくてもよいし、100μmより大きくてもよい。
【0031】
上記実施形態では、第2貫通孔24S、24sの開口形状は、それぞれ矩形状や六角形状であったが、これに限られない。第2貫通孔24S、24sの開口形状は、楕円形状や多角形状であってもよいし、直線部分と湾曲部分とを共に含む形状であってもよい。すなわち、開口形状が互いに同じである限り、第2貫通孔24S、24sの開口形状は任意の形状であってよい。
【0032】
上記実施形態では、第2貫通孔24D、24dのうち一部(第2貫通孔24D1~17や第2貫通孔24d1~8)の開口面積が連続配置領域CA、Ca内の第2貫通孔24S、24sの開口面積よりも大きかったが、これに限られない。第2貫通孔24D、24dのうち全ての開口面積が連続配置領域CA、Ca内の第2貫通孔24S、24sの開口面積より大きくてもよい。
【0033】
上記実施形態では、基準開口面積を算出するための設定割合rは、0.5であったが、これに限られない。設定割合rは、印刷版1,1Aに供給される印刷材料の粘性等の性状に応じて、その印刷材料が詰まることなく円滑に通過可能な開口面積が基準開口面積となるように設定される限り、任意の値が設定されてよい。
【0034】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0035】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
印刷版であって、
被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、
前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続している複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、
開口形状が同じ前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域と、
前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる開口形状の前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域と、が含まれ、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする、印刷版。
[適用例2]
適用例1に記載の印刷版であって、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔の開口面積は、いずれも、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上であることを特徴とする、印刷版。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の印刷版であって、
前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする、印刷版。
[適用例4]
被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法であって、
適用例1から適用例3のいずれかに記載の印刷版を使用して、被印刷物に印刷パターンを転写することを特徴とする、印刷物の製造方法。
【符号の説明】
【0036】
1,1A…印刷版
10…フレーム
20…中央板部
22…パターン形成層
22H…第1貫通孔
24,24a…材料供給層
24D,24S,24d,24s…第2貫通孔
CA,Ca…連続配置領域
EA,Ea…外縁領域