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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024158285
(43)【公開日】2024-11-08
(54)【発明の名称】印刷版、および印刷物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41N 1/24 20060101AFI20241031BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20241031BHJP
   H05K 3/12 20060101ALI20241031BHJP
【FI】
B41N1/24
B41M1/12
H05K3/12 610P
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073366
(22)【出願日】2023-04-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100195659
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 祐介
(72)【発明者】
【氏名】倉橋 元信
(72)【発明者】
【氏名】今西 豊
(72)【発明者】
【氏名】近藤 彩子
【テーマコード(参考)】
2H113
2H114
5E343
【Fターム(参考)】
2H113AA01
2H113AA02
2H113BA10
2H113BA13
2H113BA14
2H113DA04
2H113EA07
2H114AB04
2H114AB08
2H114DA04
2H114EA02
5E343AA02
5E343BB72
5E343DD02
5E343FF02
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】印刷パターンの形成精度を向上することができる印刷版を提供する。
【解決手段】印刷版であって、印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、第1貫通孔に接続された複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、印刷材料が供給される側から見た材料供給層には、同一の平行四辺形状の開口を有する第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域が含まれ、第1方向は、開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向と平行であり、第1方向と第2方向とのなす角度は、90度よりも小さく、材料供給層において開口の各々を画定している線形状部分のうち、2方向の一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の開口によって周囲が囲まれた交点は、T字状に交わっていることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷版であって、
被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、
前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続された複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、同一の平行四辺形状の開口を有する前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域が含まれ、
前記第1方向は、前記開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向と平行であり、
前記第1方向と前記第2方向とのなす角度は、90度よりも小さく、
前記材料供給層において前記開口の各々を画定している線形状部分のうち、前記2方向の前記一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の前記開口によって周囲が囲まれた交点は、T字状に交わっていることを特徴とする、印刷版。
【請求項2】
請求項1に記載の印刷版であって、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、さらに、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる形状の異形開口を有する前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域が含まれ、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする、印刷版。
【請求項3】
請求項2に記載の印刷版であって、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔には、前記異形開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さが、前記開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さよりも長い前記第2貫通孔が含まれることを特徴とする、印刷版。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の印刷版であって、
前記材料供給層上をスキージで掃引する掃引方向と前記開口の内角の二等分線とのなす角度は、22.5度以下であることを特徴とする、印刷版。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の印刷版であって、
前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする、印刷版。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の印刷版であって、
前記連続配置領域内に配置された前記第2貫通孔の間の距離は、5μm以上50μm以下であることを特徴とする、印刷版。
【請求項7】
被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法であって、
請求項1または請求項2に記載の印刷版を使用して、前記被印刷物に前記印刷パターンを転写することを特徴とする、印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷版、および印刷物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の配線や電極等の印刷パターンの形成には、その配線や印刷パターンに対応して配置された貫通孔を有する印刷版が用いられることがある。例えば、特許文献1,2に開示されたメタルマスクは、貫通孔であるパターン開口が所望の印刷パターンに形成されたマスク版と、パターン開口に供給される印刷材料の供給量を調整する調整開口が形成されたスキージ版と、を備えた印刷版である。特許文献1,2において、これらメタルマスクでは、調整開口の対向する長辺部の開口周縁どうしを橋絡するように形成された調整リブ同士を互いに交差する状態で配置したり、調整リブの形成基端部と調整開口の開口内面との接続部分を丸めたりすることで、スキージ版の強度向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-059290号公報
【特許文献2】特開2021-104686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1,2のいずれの印刷版においても、スキージ版(印刷材料の供給量を調整する材料供給層)の強度向上については、なお改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、材料供給層の強度を向上することができる印刷版を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現できる。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、印刷版が提供される。この印刷版は、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続された複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、同一の平行四辺形状の開口を有する前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域が含まれ、前記第1方向は、前記開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向と平行であり、前記第1方向と前記第2方向とのなす角度は、90度よりも小さく、前記材料供給層において前記開口の各々を画定している線形状部分のうち、前記2方向の前記一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の前記開口によって周囲が囲まれた交点は、T字状に交わっている。
【0008】
この構成によれば、材料供給層において平行四辺形状の開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の当該開口によって周囲が囲まれた交点の数を増加させることができる。したがって、材料供給層の強度を向上することができる。また、材料供給層の強度向上によって印刷版を薄く形成することが可能となる。このように薄く形成された印刷版では、被印刷物に対して印刷材料を薄く塗布することができるため、厚さの薄い印刷パターンの形成精度を向上することができる。
【0009】
(2)上記態様の印刷版において、前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、さらに、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる形状の異形開口を有する前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域が含まれ、前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きくてもよい。
この構成によれば、外縁領域内の少なくとも一部の第2貫通孔の開口面積は、連続配置領域内の第2貫通孔の開口面積よりも大きい。このような外縁領域内の第2貫通孔に接続された第1貫通孔の部分へは印刷材料を円滑に供給できることから、当該部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンの端部周辺にかすれが生じることや印刷パターンの端部周辺の膜厚のばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、この構成によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0010】
(3)上記態様の印刷版において、前記外縁領域内の前記第2貫通孔には、前記異形開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さが、前記開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さよりも長い前記第2貫通孔が含まれてもよい。
この構成によれば、材料供給層上をスキージで掃引する掃引方向が一方の方向に近いほど、このような第2貫通孔に接続された第1貫通孔の部分へは印刷材料を円滑に供給でき、印刷パターンの端部周辺にかすれが生じることや印刷パターンの端部周辺の膜厚のばらつきが大きくなることをより一層抑制できる。
【0011】
(4)上記態様の印刷版において、前記材料供給層上をスキージで掃引する掃引方向と前記開口の内角の二等分線とのなす角度は、22.5度以下であってもよい。
この構成によれば、スキージに掃引されて印刷材料が連続配置領域内の平行四辺形状の開口に押し付けられる際、掃引方向に沿って移動する印刷材料が押し付けられる平行四辺形状の開口の幅が徐々に大きくなるように、平行四辺形状の開口を材料供給層上に配置することができる。その結果、連続配置領域内の第2貫通孔に接続された第1貫通孔の部分へ印刷材料を円滑に供給できることから、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0012】
(5)上記態様の印刷版において、前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であってもよい。
この構成によれば、厚みが10μmより薄いことで材料供給層の強度が不足したり材料供給層に穴が開きやすくなったりすることや、厚みが100μmより厚いことで印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることをより一層抑制することができる。したがって、この構成によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0013】
(6)上記態様の印刷版において、前記連続配置領域内に配置された前記第2貫通孔の間の距離は、5μm以上50μm以下であってもよい。
この構成によれば、距離が5μmより短いことで連続配置領域における強度が不足することや、距離が50μmより長いことで連続配置領域内において平行四辺形状の開口が占める割合が小さくなることを抑制することができる。その結果、材料供給層において、強度の向上と印刷材料の円滑な通過を両立することができる。
【0014】
(7)本発明の他の形態によれば、被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法が提供される。この製造方法では、上記形態に記載の印刷版を使用して、被印刷物に印刷パターンを転写する。
この構成によれば、少なくとも材料供給層の強度向上によって薄く形成することが可能となった印刷版が印刷物の製造に使用されることから、厚さの薄い印刷パターンが精度良く転写された印刷物を製造することができる。
【0015】
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、印刷版、印刷版を含む印刷システム、印刷版に印刷材料を供給する装置および印刷版を含む印刷システム、およびこれらの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態の印刷版の構成を模式的に示す平面図である。
図2】中央板部の一部を拡大した平面図である。
図3図2のF3-F3線における断面図である。
図4】連続配置領域の一部を拡大した平面図である。
図5】設計段階における材料供給層の状態を示した説明図である。
図6】掃引方向に対する開口の傾きを説明する説明図である。
図7】比較例の印刷版における材料供給層の一部を拡大した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の一実施形態の印刷版1の構成を模式的に示す平面図である。図1には、相互に直交するXYZ軸が図示されている。このXYZ軸は、図1以降の各図においても共通する。印刷版1は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に用いられ、印刷パターンの形成に用いられる印刷材料を選択的に通過させる板状部材である。ここでいう印刷パターンとは、印刷版1を通過して被印刷物の表面に転写された印刷材料によって形成される模様のことである。図1において、印刷材料は、+Z軸方向側から-Z軸方向側に向けて印刷版1を通過することによって、印刷パターンを形成する。印刷版1は、フレーム10と、中央板部20と、を備えている。フレーム10は、金属製の枠状部材である。中央板部20は、フレーム10の内側に嵌められた板状部材である。図1に示す材料供給層24および第1貫通孔22Hは、以降の図2,3を用いて説明する。
【0018】
図2は、中央板部20の一部を拡大した平面図である。図3は、図2のF3-F3線における断面図である。図3に示すように、中央板部20は、パターン形成層22と、材料供給層24と、を備える。パターン形成層22は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に、被印刷物と対向する側に配置される層である。本実施形態では、パターン形成層22を構成する材料は、樹脂材料である。樹脂材料としては、乳剤、ポリイミド等が挙げられる。パターン形成層22は、複数の第1貫通孔22Hを有する(図1参照)。図1,2において、第1貫通孔22Hは、材料供給層24に隠れていることにより本来視認できないが、理解を容易にするために、図1では実線で図示し、図2では破線で図示している。第1貫通孔22Hの各々は、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置されている。ここで、第1貫通孔22hの各々が印刷パターンに対応して配置されているとは、第1貫通孔22hの各々を通過した印刷材料が所望の印刷パターンの各々を形成するよう、第1貫通孔22hの各々が配置されていることをいう。すなわち、第1貫通孔22hの各々は、印刷パターンの各々を画定するために配置されている。
【0019】
図3に示すように、材料供給層24は、被印刷物の表面に印刷パターンを形成する際に、印刷材料が供給される側に配置される層である。すなわち、材料供給層24は、パターン形成層22のうち印刷材料が供給される側(図1,2では+Z軸方向側)に積層されている。材料供給層24は、電気鋳造により形成されている。詳細には、材料供給層24は、ニッケル、もしくは、ニッケルおよびコバルト等の金属を電気鋳造で堆積させることによって形成されている。また、材料供給層24の厚み24Tは、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みである。なお、厚み24Tは、材料供給層24の平均厚みのことである。また、材料供給層24は、図2に示すように、開口形状の異なる第2貫通孔24S、24Dを有している。ここで開口形状とは、印刷材料が供給される側から見た第2貫通孔24S、24Dの入り口にあたる開口の形状のことである。これら複数の第2貫通孔24S、24Dは、第1貫通孔22Hに接続している。
【0020】
図2に示すように、印刷材料が供給される側(+Z軸方向側)から見た材料供給層24には、連続配置領域CAと、外縁領域EAと、が含まれている。連続配置領域CAは、同一の平行四辺形状の開口を有する第2貫通孔24Sが互いに異なる第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置されている領域である(図2に一点鎖線にて連続配置領域CAの外縁を図示)。すなわち、第2貫通孔24Sとは、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔のことである。また、第2貫通孔24Sの各々は、開口形状が互いに同じ平行四辺形状である。より詳細には、本実施形態では、第2貫通孔24Sの各々は、開口形状が互いに同じ正方形状である。なお、寸法公差によってわずかに開口形状が異なる場合も、同じ形状に含めるものとする。すなわち、同一の形状には、厳密な意味での同一の形状だけでなく、一見して同一の形状と認識できる程度の形状も含むものとする。第2貫通孔24Sが第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置されている状態とは、第2貫通孔24Sの開口中心(開口形状の重心)が第1方向D1および第2方向D2に沿って一定の間隔ごとに並べられている状態のことである。
【0021】
図2に示すように、第1方向D1は、第2貫通孔24Sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向と平行である。また、第1方向D1と第2方向D2とのなす角度αは、90度よりも小さい。図2においては、第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置された第2貫通孔24Sは、印刷材料が供給される側から見て、いわゆるランニングボンド状に配置されているともいえる。
【0022】
図4は、連続配置領域CAの一部を拡大した平面図である。距離Lは、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔24Sの間の距離を示している。本実施形態では、距離Lは、5μm以上50μm以下である。図4に示す部分P1,P2および線形状部分LNについては後述する。
【0023】
一方、図2に示すように、外縁領域EAは、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sとは異なる形状の異形開口を有する第2貫通孔24Dが配置された、連続配置領域CAの外縁と第1貫通孔22Hの外縁との間の領域である。すなわち、第2貫通孔24Dとは、外縁領域EA内に配置された第2貫通孔のことである。また、第2貫通孔24Dの各々は、開口形状が第2貫通孔24Sとは異なっていて、且つ、開口形状が互いに同じとは限らない。例えば、図2に示した第2貫通孔24Dのうち、第2貫通孔24D1と第2貫通孔24D2とは互いに形状が異なる。
【0024】
外縁領域EA内の第2貫通孔24Dのうち一部の開口面積は、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積よりも大きい。すなわち、第2貫通孔24Dには、第2貫通孔24Sの開口面積よりも開口面積が大きい第2貫通孔24D(図2に示す第2貫通孔24D1~4、6~11)と、第2貫通孔24Sの開口面積よりも開口面積が小さい第2貫通孔24Dと、が含まれる。また、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dには、その異形開口を一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に沿って画定している辺の長さが、第2貫通孔24Sの開口を一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に沿って画定している辺の長さよりも長い第2貫通孔24D(図2に示す第2貫通孔24D1~15)が含まれる。
【0025】
さらに、第2貫通孔24Dの開口面積は、いずれも、第2貫通孔24Sの開口面積に予め設定された設定割合r(r<1)を乗じた基準開口面積以上である。本実施形態では、設定割合rは、0.5であることから、基準開口面積は、第2貫通孔24Sの開口面積に0.5を乗じた面積である。すなわち、外縁領域EA内には、第2貫通孔24Sの開口面積の50%より小さい開口面積の第2貫通孔24Dは存在していない。
【0026】
図2にドット状で示される交点ISは、材料供給層24において第2貫通孔24Sの平行四辺形状(本実施形態では正方形状)の開口の各々を画定している線形状部分LN(図4参照)のうち、第2貫通孔24Sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向に沿った部分(図4に部分P1として図示)と他方の方向に沿った部分(図4に部分P2として図示)とが交わり、且つ、複数(図2,4では3つ)の第2貫通孔24Sの開口によって周囲が囲まれた交点である。交点ISは、線形状部分LNのうち部分P1と部分P2とがT字状に交わっている交点である。図2においては、連続配置領域CA内に含まれる交点ISのうちの一部のみを図示している。交点ISを用いた説明については後述する。なお、図2に示す交点INは、材料供給層24において第2貫通孔24Sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わる交点ではあるが、第2貫通孔24D2の開口および2つの第2貫通孔24Sの開口によって周囲が囲まれていることから、交点ISとは異なる。
【0027】
印刷版1を用いて被印刷物の表面に印刷パターンを形成する場合、材料供給層24のうち+Z軸方向側の面に供給された印刷材料は、スキージで第2貫通孔24S、24Dに向けて押し出されたのち第1貫通孔22Hを通過して、被印刷物の表面に転写される。第1貫通孔22Hは、被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置されていることから、第1貫通孔22Hを通過した印刷材料は、被印刷物の表面に配置される際には印刷パターンを形成する。
【0028】
図5は、設計段階における材料供給層24の状態を示した説明図である。図5に示す材料供給層24Vは、設計段階における仮想上の材料供給層24にあたる。また、図5に示す第2貫通孔24Pは、設計段階における仮想上の第2貫通孔である。設計段階において第2貫通孔24Pの配置や開口形状を検討している例として、図5には、第2貫通孔24Pを第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置した状態が示されている。この状態においては、印刷材料が供給される側(+Z軸方向側)から見て、第1貫通孔22Hに一部しか重なっていない第2貫通孔24Pが第1貫通孔22Hの外縁近傍に配置されている。図5では、そのような第2貫通孔24Pのうち上述した基準開口面積(第2貫通孔24Sの開口面積に0.5を乗じた面積)より小さい開口面積の第2貫通孔24Pが、第2貫通孔24P1~15として示されている。第2貫通孔24P1~15では、第1貫通孔22Hに向けて印刷材料を通過させる空間が比較的狭くなっていることから、印刷材料が詰まりやすくなっている。このため、設計段階において、このような第2貫通孔24P1~15の開口と、第2貫通孔24P1~15の近辺に配置された第2貫通孔24Pの開口と、がつなげられて、図2に示した第2貫通孔24D1~15が形成される(なお、第2貫通孔24D8は、第2貫通孔24P8a、8bとその間に配置された第2貫通孔24Pを用いて形成される)。このように図5で説明した過程を経て、第2貫通孔24D1~15を有する材料供給層24が設計される。
【0029】
図6(A)~(C)は、掃引方向SDに対する第2貫通孔24Sの開口の傾きを説明する説明図である。掃引方向SDは、材料供給層24上をスキージで掃引する際にスキージが移動する方向である。印刷版1においては、掃引方向SDと、第2貫通孔24Sの開口の内角の二等分線BIと、のなす角度βは、22.5度以下である。図6(A)(B)は、角度βが22.5度である場合の第2貫通孔24Sの配置を示している。また、図6(C)は、角度βが0度である場合の第2貫通孔24Sの配置を示している。図6(C)においては、角度βは0度であることから図示していない。また、二等分線BIは、掃引方向SDと重なっている。
【0030】
図6(A)~(C)における斜線のハッチング部分は、スキージに掃引されて第2貫通孔24Sの開口に近付いている印刷材料を示している。角度βが22.5度以下となるように第2貫通孔24Sの開口を配置することにより、スキージに掃引された印刷材料が第2貫通孔24Sの開口に押し付けられる際、掃引方向SDに沿って移動する印刷材料が押し付けられる第2貫通孔24Sの開口の幅(掃引方向SDに直交する方向に沿った長さ)が徐々に大きくなるように、第2貫通孔24Sの開口が材料供給層24上に配置される。
【0031】
図7は、比較例の印刷版1Cにおける材料供給層24cの一部を拡大した平面図である。印刷版1Cは、印刷版1が備える材料供給層24の代わりに、材料供給層24cを備える点が、印刷版1と異なる。
【0032】
材料供給層24cには、連続配置領域Caと、外縁領域Eaと、が含まれている。連続配置領域Caは、同一の平行四辺形状(図7では正方形状)の開口を有する第2貫通孔24sが互いに直交する方向d1および方向d2に沿って連続的に配置されている領域である(図7に一点鎖線にて連続配置領域Caの外縁を図示)。すなわち、方向d1と方向d2のなす角度γは、90度である。一方、外縁領域Eaは、連続配置領域Ca内に配置された第2貫通孔24sとは異なる開口形状の第2貫通孔24dが配置された、連続配置領域Caの外縁と第1貫通孔22Hの外縁との間の領域である。
【0033】
図7にドット状で示される交点Isは、材料供給層24cにおいて第2貫通孔24sの平行四辺形状(正方形状)の開口の各々を画定している線形状部分のうち、第2貫通孔24Sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向(方向d1)に沿った部分と他方の方向(方向d2)に沿った部分とが交わり、且つ、複数(図2,4では4つ)の第2貫通孔24sの開口によって周囲が囲まれた交点である。交点Isは、線形状部分のうち方向d1に沿った部分と方向d2に沿った部分とが十字状に交わっている交点である。図7においては、連続配置領域Ca内に含まれる交点Isのうちの一部のみを図示している。なお、図7に示す交点Inは、材料供給層24cにおいて第2貫通孔24sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わる交点ではあるが、第2貫通孔24dの開口および3つの第2貫通孔24Sの開口によって周囲が囲まれていることから、交点Isとは異なる。
【0034】
比較例である印刷版1Cの連続配置領域Ca内に含まれる交点Isの数と比べて、本実施形態の印刷版1によれば、図2に示すように、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔24Sの配置方向である第1方向D1と第2方向D2とのなす角度αが90度よりも小さいことから、連続配置領域CA内に含まれる交点IS(第2貫通孔24Sの開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の第2貫通孔24Sの開口によって周囲が囲まれた交点)の数を増加させることができる。したがって、材料供給層24の強度を向上することができる。
【0035】
従来、厚さの薄い印刷パターンを形成するために印刷版中の材料供給層の厚さを薄くすると、印刷版の強度が弱くなって厚さの薄い印刷パターンを精度良く形成できない場合があった。その点、本実施形態の印刷版1によれば、材料供給層24の強度向上によって印刷版1を薄く形成することが可能となる。このように薄く形成された印刷版1では、被印刷物に対して印刷材料を薄く塗布することができるため、厚さの薄い印刷パターンの形成精度を向上することができる。すなわち、本実施形態の印刷版1を使用して印刷物を製造した場合、厚さの薄い印刷パターンが精度良く転写された印刷物を製造することができる。
【0036】
また、本実施形態の印刷版1では、図2に示すように、外縁領域EA内の第2貫通孔24D1~4、6~11の開口面積は、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積よりも大きい。このような外縁領域内の第2貫通孔24Dに接続された第1貫通孔22Hの部分へは印刷材料を円滑に供給できることから、当該部分への印刷材料の供給が不足して印刷パターンの端部周辺にかすれが生じることや印刷パターンの端部周辺の膜厚のばらつきが大きくなることを抑制できる。したがって、本実施形態の印刷版1によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0037】
また、本実施形態の印刷版1では、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dには、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口よりも長く一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に沿って伸びた形状の開口を有する第2貫通孔24D1~15が含まれる。材料供給層24上をスキージで掃引する掃引方向SDが一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に近いほど、このような第2貫通孔24D1~15に接続された第1貫通孔22Hの部分へは印刷材料を円滑に供給でき、印刷パターンの端部周辺にかすれが生じることや印刷パターンの端部周辺の膜厚のばらつきが大きくなることをより一層抑制できる。
【0038】
また、本実施形態の印刷版1では、掃引方向SDと、第2貫通孔24Sの開口の内角の二等分線BIと、のなす角度βは、22.5度以下である。このため、スキージに掃引されて印刷材料が第2貫通孔24Sの開口に押し付けられる際、掃引方向に沿って移動する印刷材料が押し付けられる第2貫通孔24Sの開口の幅(掃引方向SDに直交する方向に沿った長さ)が徐々に大きくなるように、第2貫通孔24Sの開口を材料供給層24上に配置することができる。その結果、連続配置領域EA内の第2貫通孔24Sに接続された第1貫通孔22Hの部分へ印刷材料を円滑に供給できることから、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0039】
また、本実施形態の印刷版1では、材料供給層24の厚み24Tは、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みである。このため、厚みが10μmより薄いことで材料供給層24の強度が不足したり材料供給層24に穴が開きやすくなったりすることや、厚みが100μmより厚いことで印刷パターンの厚さのばらつきが大きくなることをより一層抑制することができる。したがって、本実施形態の印刷版1によれば、印刷パターンの形成精度をより一層向上することができる。
【0040】
また、本実施形態の印刷版1では、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔24Sの間の距離Lは、5μm以上50μm以下である。このため、距離Lが5μmより短いことで連続配置領域CAにおける強度が不足することや、距離Lが50μmより長いことで連続配置領域CA内において第2貫通孔24Sの開口が占める割合が小さくなることを抑制することができる。その結果、材料供給層24において、強度の向上と印刷材料の円滑な通過を両立することができる。
【0041】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
上記実施形態では、パターン形成層22を構成する材料は、樹脂材料であったが、これに限られない。例えば、パターン形成層22を構成する材料は、金属材料であってもよい。さらに、パターン形成層22は、電気鋳造により形成されていていてもよい。このような構成の印刷版によれば、パターン形成層22における第1貫通孔22Hの配置を精度良く調整できる。また、パターン形成層22の膜厚のばらつきを小さくできることから、印刷パターンの厚さが大きくばらつくことや、印刷パターンにかすみやにじみが生じることをより一層抑制することができる。さらに、パターン形成層22が材料供給層24と共に電気鋳造により一体成形されている印刷版では、剛性を高くすることができる。
【0043】
上記実施形態では、材料供給層24には、連続配置領域CAと、外縁領域EAと、が含まれていたが、これに限られない。例えば、材料供給層24には、連続配置領域CAのみが含まれていてもよい。すなわち、印刷材料が供給される側から見た材料供給層24には、同一の平行四辺形状の開口を有する第2貫通孔24Sのみが互いに異なる第1方向D1および第2方向D2に沿って連続的に配置されており、第2貫通孔24Dが配置されていなくてもよい。
【0044】
上記実施形態では、第2貫通孔24Sの各々は、開口形状が互いに同じ正方形状であったが、これに限られない。例えば、第2貫通孔24Sの各々は、同一の矩形状であってもよいし、同一の菱形状であってもよいし、同一の平行四辺形状であってもよい。
【0045】
上記実施形態では、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dのうち一部(図2に示す第2貫通孔24D1~4、6~11)の開口面積が、連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積よりも大きかったが、これに限られない。第2貫通孔24Dのうち全ての開口面積が連続配置領域CA内の第2貫通孔24Sの開口面積より大きくてもよい。
【0046】
上記実施形態では、外縁領域EA内の第2貫通孔24Dには、その開口を一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に沿って画定している辺の長さが、第2貫通孔24Sの開口を一方の方向(第1方向D1と平行な方向)に沿って画定している辺の長さよりも長い第2貫通孔24D(図2に示す第2貫通孔24D1~15)が含まれていたが、そのような第2貫通孔24Dが外縁領域EA内に含まれていなくてもよい。
【0047】
上記実施形態では、掃引方向SDと、第2貫通孔24Sの開口の内角の二等分線BIと、のなす角度βは、22.5度以下であったが、これに限られない。なす角度βは、22.5度よりも大きくてもよい。むろん、なす角度βは、印刷材料を円滑に供給できる観点から、22.5度以下である方が好ましい。
【0048】
上記実施形態では、材料供給層24の厚み24Tは、10μm以上100μm以下の範囲内の厚みであったが、これに限られない。材料供給層24の厚み24Tは、10μmより小さくてもよいし、100μmより大きくてもよい。
【0049】
上記実施形態では、連続配置領域CA内に配置された第2貫通孔24Sの間の距離Lは、5μm以上50μm以下であったが、これに限られない。距離Lは、5μmより短くてもよいし、50μmより大きくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、基準開口面積を算出するための設定割合rは、0.5であったが、これに限られない。設定割合rは、印刷版1に供給される印刷材料の粘性等の性状に応じて、その印刷材料が詰まることなく円滑に通過可能な開口面積が基準開口面積となるように設定される限り、任意の値が設定されてよい。
【0051】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【0052】
本発明は、以下の形態としても実現することが可能である。
[適用例1]
印刷版であって、
被印刷物に形成される印刷パターンに対応して配置された複数の第1貫通孔を有するパターン形成層と、
前記パターン形成層のうち前記印刷パターンの形成に用いられる印刷材料が供給される側に積層され、前記第1貫通孔に接続された複数の第2貫通孔を有する材料供給層と、を備え、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、同一の平行四辺形状の開口を有する前記第2貫通孔が互いに異なる第1方向および第2方向に沿って連続的に配置されている連続配置領域が含まれ、
前記第1方向は、前記開口を画定している辺が伸びる2方向の一方の方向と平行であり、
前記第1方向と前記第2方向とのなす角度は、90度よりも小さく、
前記材料供給層において前記開口の各々を画定している線形状部分のうち、前記2方向の前記一方の方向に沿った部分と他方の方向に沿った部分とが交わり、且つ、複数の前記開口によって周囲が囲まれた交点は、T字状に交わっていることを特徴とする、印刷版。
[適用例2]
適用例1に記載の印刷版であって、
前記印刷材料が供給される側から見た前記材料供給層には、さらに、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔とは異なる形状の異形開口を有する前記第2貫通孔が配置された、前記連続配置領域の外縁と前記第1貫通孔の外縁との間の外縁領域が含まれ、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔のうち少なくとも一部の開口面積は、前記連続配置領域内の前記第2貫通孔の開口面積よりも大きいことを特徴とする、印刷版。
[適用例3]
適用例1または適用例2に記載の印刷版であって、
前記外縁領域内の前記第2貫通孔には、前記異形開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さが、前記開口を前記一方の方向に沿って画定している辺の長さよりも長い前記第2貫通孔が含まれることを特徴とする、印刷版。
[適用例4]
適用例1から適用例3までのいずれかに記載の印刷版であって、
前記材料供給層上をスキージで掃引する掃引方向と前記開口の内角の二等分線とのなす角度は、22.5度以下であることを特徴とする、印刷版。
[適用例5]
適用例1から適用例4までのいずれかに記載の印刷版であって、
前記材料供給層の厚みは、10μm以上100μm以下であることを特徴とする、印刷版。
[適用例6]
適用例1から適用例5までのいずれかに記載の印刷版であって、
前記連続配置領域内に配置された前記第2貫通孔の間の距離は、5μm以上50μm以下であることを特徴とする、印刷版。
[適用例7]
被印刷物に印刷パターンが転写された印刷物の製造方法であって、
適用例1から適用例6のいずれかに記載の印刷版を使用して、被印刷物に印刷パターンを転写することを特徴とする、印刷物の製造方法。
【符号の説明】
【0053】
1…印刷版
10…フレーム
20…中央板部
22…パターン形成層
22H…第1貫通孔
24…材料供給層
24D,24S…第2貫通孔
CA…連続配置領域
EA…外縁領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7